衆院議員は4年間働こうよ

2023.06.06コラム

「与党で早期解散観測が相次いでいる」という。新聞にたびたび載っている。「解散風」というヤツである。解散は政府と国会がニッチもサッチも行かず、いわば国論が二分しているような時にするものではないか。日本ほど解散が「選挙の道具」になる国はない。衆議院の皆さん、4年間働きましょうよ。

今の国会が6月21日に会期末を向けることが一つの背景にある。もっともそれ以前から、「支持率が上がったから解散か」「広島サミット後だ」とメディアがはやしている。「議員が先か、メディアが先か」という問題はあるが、解散風が吹けば議員はそわそわし、そのエネルギーと関心は選挙活動に割かれる。もっと腰を据えて仕事をしようよ。

解散を選挙の道具にはっきりと使うようになったのは、安倍晋三政権だ。2017年、「国難突破解散だ」と言って総選挙に打って出た。当時は森友・加計学園問題で責任を問われ、野党が追及のため憲法で定められた臨時国会の召集を求めていた。それを無視しての解散で、世論調査では70%が疑問を呈していた。選挙では与党が勝ったので、「勝てば官軍」の風情と相成った。

日本が手本とする英国でも、かつて解散は自由に行われた。それでも任期5年のうち4~5年目が通例だった。2011年には議会任期固定法という法律ができ、下院3分の2の同意が必要になった。2019年にジョンソン首相が解散を提案したが、3回否決された例もある。同法は廃止されたが、英国には野党を尊重する風土があり、これも日本との違いという。選挙目当ての安易な解散は世界の非常識なのである。

巨人と阪神は野球では対決するが、野球を盛り上げようという立場はまったく同じだ。与党も野党も、相手に勝つだけでなく、政治を盛り上げる、健全な民主主義を育てる、という発想が必要だろう。野党が内閣不信任決議案を出せば、解散の大義名分になる。野党の準備不足は明らかで、建前の大義で意地を張ることはないだろう。国民はおおむねしっかり働いている。衆院議員も腰をすえて働こうよ。