6月2~6日(教養講座:五木寛之の作家交遊)

~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年6月2日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(5月30~6月1日)

イトーヨーカ堂、備蓄米の店頭販売開始 500袋すぐ完売 – 日本経済新聞 →備蓄米が31日、スーパーの店頭に並んだ。5キロ税込み2160円で、通常の半額程度だ。今後、順次出回るが、全体のコメ価格が下がるかどうかは、まだはっきりしない。それにしても民間の活力とスピード感はすごい。それを引き出した小泉農水相の手腕にも注目が集まっている。元農水相の苦言にも強く反論している→小泉進次郎農相、野村哲郎元農相の苦言に反論 備蓄米「党に諮れば大胆な判断できず」 – 日本経済新聞

パリ ヨーロッパチャンピオンズリーグのパリサンジェルマン優勝で 一部ファンが車に火をつけるなど暴徒化 | NHK | フランス →パリのサッカーチームが欧州の大会で優勝したのに、ファンが暴徒化し、2人が死亡した。社会に対する何らかの不満があると考えられる。グローバル化で世界がつながっていることを考えれば、トランプ大統領登場による世界的な変動も無縁ではないだろう。

赤澤経済再生担当大臣 日米閣僚交渉は進展を確認 | NHK 石破首相 合意へ最優先かつ全力で交渉を”指示 | NHK →関税をめぐる日米交渉は、はかばかしくないようだ。進展を強調しているが、具体的な前向き情報は聞こえてこない。USスチール問題も決着していない。6月15~17日にカナダで開かれるG7サミットが時期的な節目になっている。

台湾有事「壊滅的結果招く」 米国防長官、軍事介入を示唆―国防費増額も要求・アジア安保会議:時事ドットコム →米国のヘグセス国防長官が、シンガポールで開かれた会議で、台湾有事をあおっている。中国は現時点で軍事侵攻してもメリットは考えられず、本格的有事の可能性は極めて低い。危機をあおって、日本や韓国の軍事費増加、米国製武器の購入を狙っているのだろうか。

水産物の対中輸出再開へ 37道府県、手続き合意:時事ドットコム →中国の水産物輸入再開は、トランプ大統領の誕生で中国が日本に接近していることが背景にある。福島県産品などの輸入解禁が次の焦点だが、中国国内の反応をみながら軟着陸を図るとみられる。日本は危機をあおる米国の動きに乗らず、東アジアの新しい秩序を模索すべきだろう。

*** 「今日の名言」

◎ジョン・ケネス・ガルブレイス(カナダ出身の経済学者。2006年5月29日死去、97歳

「バブルがいつ崩壊するか予測するのは誰にもできない。ただ、過去のバブルは例外なくはじけている」 「経済学の世界では、決まって多数派が間違える」 「私たちは、真理を自分に好都合なことと結びつける」 「金持ちは最も注目される階級だが、最も学がない」 「富には多くの利点がともなう。それを否定する意見も数多いものの、確固たる説得力のあるものはいまだかつてない」 「政治の世界においては、記憶力の悪さほど称賛に値するものはない」 「考え方を変えるか、あるいはその必要がないことを証明するかという選択を迫られた場合、ほとんどの人は証明するほうに飛びつくものだ」 「単純化することを恐れてはいけない」 「伝統的な考え方は、考えるという苦痛を伴う仕事から我々を守ってくれる」 「日本は、銀行家や企業の経営者を責めるのを避けたいため、政府や官僚が悪かったという結論を出しがちだ」 「対話は、励ましの力、希望の光、勇気の泉、生命蘇生の新風となる。そして人間の心と心に橋を架ける」

*** 今週の教養講座(五木寛之の作家交遊①)

作家の五木寛之さんは現在92歳。地方紙に連載されたコラムをまとめた「新・地図のない旅」(平凡社、2023)から、先輩作家との交遊を書いた5編を紹介する。本人は「雑文」というが、深い観察と繊細な描写、力の抜け方が独特だ。

◎井伏鱒二さんの葉書  大学時代のロシア語の先生は、横田瑞穂さんだった。痩せた小柄な方で、大学教授というより村の小学校の先生のような風貌だった。1950年代初めの頃である。学生も貧しかったが、先生も貧しかった。片道15円のバス代が払えず、学生に混じって駅から大学まで歩いて通っておられたのを見かけたことがある。授業中に一休みされるのが常だった。タバコを半分にちぎって、煙管に詰めて火をつける。それを大事そうに最後まで吸われる。当時の大学の給料では、1本のタバコさえ節約する必要があったのだろう。

横田さんは、アルバイトにかまけて授業をサボりがちで私に、いつも気を使ってくださった。「ちゃんと食ってるかね」と。小声で声をかけたりする。お互い生きて行くのは大変だよな、という感じの口調だった。私が作家としてデビューした時に、誰よりも喜んでおられたのが横田さんだった。駆け出しの私に井伏鱒二さんを紹介してくださったのも横田さんだった。若い頃からの友人とあって、井伏さんは横田さんのことをとても大事にされていたようだ。おかげで私までいろいろと気にかけて下さったことは忘れられない思い出である。

井伏鱒二さんは、文壇の人たちに非常に尊敬されていた。井伏さんを慕う若い作家たちもたくさんいた。その反面、「井伏さんは怖い」という評判があった。弟子たちの中には、厳しく叱責されたり、出入り禁止になったりした人もいる、という話も聞いた。私が井伏さん恐ろしいと感じなかったのは、横田さんの弟子という立場だったからかもしれない。

新宿の「くろがね」という店では、何度かごちそうになったし、雑誌で対談させていただいたこともある。やがて私がしばらく仕事を休んで、京都に起こすことにしたとき、井伏さんから一通の葉書をいただいた。その文中に「京都は◯が悪いから気をつけるように」という1行があった。どういうわけか、その一字のインクがにじんで、どうしても読めないのである。

自慢半分に、いろんな人に読めない◯の部分を推理してもらった。新聞社の記者や出版社の編集者などである。答えはさまざまだった。「水、じゃないかな」という人もおり、「女、だろう」という人もいた。しかし結局のところ、納得のいく答えは見つからなかった。今でもその謎が解けない。古い葉書を眺めながら、過ぎし日を思いつつ夜がふけてゆく。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年6月3日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(2日)

元横綱 白鵬の宮城野親方が日本相撲協会を退職へ 現役時代に史上最多の45回優勝 | NHK | #大相撲 →白鵬は独善的な言動で煙たがられていた。将来のモンスター化を恐れた相撲協会が、退職に追い込んだのが真相だろう。白鵬は「日本の誇る相撲文化を次の世代へ伝えていくため、協会の外から発展に貢献していく」とコメントを発表した。強い意志力を生して政治家にも向いていそうだ。

内閣不信任案なら解散検討 首相、森山氏と方針共有 立憲の動き牽制 [石破政権]:朝日新聞 →有料の独自記事。終盤国会の焦点は、立憲が内閣不信任を提出するかどうか。石破首相は、提出された段階で衆院を解散するという。そうなれば、参議院とのダブル選挙で、争点は消費税減税の是非か。まだ政局レベルの観測だが、22日の会期末に向けて駆け引きは激化しそうだ。

農政抜本改革へ閣僚会議 コメ高騰で、「減反」見直し焦点―政府:時事ドットコム →石破首相がコメ問題の閣僚会議を設置する。価格問題は短期的な課題だが、中長期的な農政改革を議論する。農林族の森山自民党幹事長は、来年度予算で農業分野に2.5兆円規模を別枠で確保することを求めた。秋以降、コメの作柄もからんで農政改革が大きな焦点になりそうだ。

コメ店頭価格3週ぶり下落 5キロ4260円、なお前年比2倍 – 日本経済新聞 →コメ価格が3週間ぶりに下がった。随意契約の安い備蓄米が売られ始めた心理的影響もあるだろう。それでも前年比2倍の水準。コメ価格はしばらく、ニュースの中心だ。

静岡県浜松市 東名高速 車転落事故 同乗の2人は交際女性の子どもか | NHK | 事故 →浜松市で車が東名高速道路に転落、運転していた男が、子ども2人を置き去りにして逃げる事件が起きた。その後、逮捕されたが、無免許運転で、交際女性の子どもを乗せていたという。当初はナゾのような出来事だったが、全容がわかると、無責任なひどい男と言うしかない。

*** 「今日の名言」

◎織田信長(戦国大名。1582年6月2日、本能寺の変で死去、49歳

「必死に生きてこそ、その生涯は光を放つ」 「攻撃を一点に集約せよ、無駄なことはするな」 「器用というのは、他人の思惑の逆をする者のことだ」 「臆病者の目には、敵は常に大軍に見えるものだ」 「理想を持ち、信念に生きよ。理想や信念を見失った者は、戦う前から負けている。廃人と同じだ」 「仕事とは自ら探し、創り出すものだ」 「生まれながらに才能のある者は、それを頼んで鍛錬を怠る、自惚れる。生まれつきの才能がない者は、何とか技術を身につけようと日々努力する。心構えがまるで違う。これが大事だ」 「人を使う者は、新参者か古くからいるかではなく、能力で判断すべきだ」 「組織に貢献してくれるのは、優秀な者よりも、能力は並の上だが忠実な者の方だ」 「およそ勝負は時の運によるもので、計画して勝てるものではない」 「絶対は、絶対にない」 「(本能寺で明智光秀の軍に囲まれ)是非に及ばず(いたしかたない)」

*** 今週の教養講座(五木寛之の作家交遊②)

◎井上ひさしさんと靴下   故・井上ひさしさんとは、直木賞の選考会の帰りに、よく2人でコーヒーを飲んだ。文学賞の選考会は、はたで思うほど気楽ではない。候補となった作家の将来を左右する可能性もあるのだ。緊張するし、終わった後の徒労感も大きい。終わって先に座を立つのは井上さんだった。どうやら下戸なのだろうと思っていた。なんとなく自然に会場出るのが一緒になる。

「どこかでコーヒーでも飲もうか」と、どちらからともなく誘い合って馴染みの喫茶店に出かけた。当世風のカフェではなく、古風な珈琲店である。「タバコ吸っていいですか」と、井上さんが遠慮がちに聞く。「どうぞ、どうぞ、僕は副流煙が好物でね」「え、嘘でしょ」「いや、本当。若い頃はタバコ吸っていたから、人の煙を吸うと懐かしくて」。やがて運ばれてきたコーヒーを飲みながら、たあいのない雑談が始まる。「五木さんはロック座派ですか、それともフランス座のほう?」「僕は池袋のフランス座だ」などと劇場の思い出話から、話題は当日の選考会の結果に移るのが常だった。

「正直言って、僕は今回の選考結果には今一つ釈然としないところもあるんだけど」と井上さん。「でも、多勢に無勢だしなあ」「そういう顔してたよね」「でも――」と、井上さんは体を乗り出して、惜しくも受賞を逸した作品について滔々と語り始めるのだ。井上さんは舞台もやる人なので、作品に対しては徹底的に理詰めで批評する。私は直感型なので、井上さんの分析を聞いて目からウロコの刺激を受けることが多かった。

直木賞の選考会は1年に2回ある。芥川賞、直木賞とも年に1回でいいのではという意見もないではない。しかし私にとっては同業の作家たちと議論をしたり、未知の新人の作品に触れたりできる得難い機会だった。たぶん、2人が重なって選者を務めたのは27年間ほどの歳月ではあるまいか。

最後に井上さんと会った時、どこが少し疲れたような顔をしていた。別れ際にふと立ち止まって、こんなことを言った。「五木さんは、片脚で立って靴下をはけますか?」「え、どういうこと」「僕、最近、どうしても片脚立ちで靴下がはけないんだよね」。それに対して私がどう返事したか覚えていない。だが、いつも座って靴下をはくたびにそのときのことを思い出すのだ。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年6月4日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(3日)

長嶋茂雄さん 死去 肺炎で 89歳 「ミスタープロ野球」 巨人の終身名誉監督 王貞治さんとの「ON」で一時代 | NHK | 訃報 →3日のテレビニュースは、長嶋さん死去一色だった。選手時代は高度成長、監督では解任の苦労もし、脳梗塞のリハビリでは多くの人に勇気を与えた。時代を背負ったスターだった。昨年3月、出身地の千葉・佐倉を訪れた。朝日小学生新聞に掲載している「天声こども語」の取材だったが、子ども語では長嶋さんに触れず、HPのコラムで母校の佐倉高校を訪れた様子をまとめた。テレビでは報じられていない長嶋さんの一面がわかる →長島茂雄の佐倉に感動した! 天声こども語紀行 – 長谷川キャリア文章塾

韓国大統領選挙 イ・ジェミョン氏が勝利 4日大統領に就任へ | NHK | 韓国 →革新系の最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)候補が、事前の予想通り当選した。任期は5年。保守系のユン前大統領が発令した非常戒厳への批判が強く、SNSを駆使した若者向けの戦術も効果的だった。東アジア情勢にどう影響するか。かつての対日強硬派の顔を見せていないが、本音はどうか。

兵庫 斎藤知事 給与を3か月間減額50%の処分案 議会からは反発  | NHK →兵庫県の斎藤知事が、情報漏えいの責任をとって、3ヶ月間50%の給与カットを決めた。県議会で条例改正をする必要があるが、議会側は「甘すぎる」「辞職以外にない」「幕引きを図ろうとしている」と反発しており、成立は見通せない。斎藤知事がいる限り、兵庫県はごたごたしそうだ。

イスラエル軍、ガザ配給での発砲認める 国連は独立調査要求:時事ドットコム →ガザの支援物資配給所でイスラエル軍が発泡した。イスラエル軍の攻撃は相変わらず容赦ない。グテレス国連事務総長は「がくぜんとしている。パレスチナ人が食料のために命を危険にさらすことは許容できない」とイスラエル軍から独立した調査が必要だと訴えている。

25年世界成長、2.9%に下げ トランプ関税で不透明感―OECD予測:時事ドットコム →トランプ関税が世界経済に影を落としている。今年の世界の成長率は、0.2ポイント下げて2.9%に下方修正した。アメリカは0.6ポイント低い1.6%、日本は0.4ポイント低い0.7%とした。現在の関税措置が続くと仮定しており、関税の行方によって影響される構図になっている。

*** 「今日の名言」

◎方正(中国のアスリート、民主活動家。1989年6月4日、天安門事件で戦車にひかれて両足を失う

「私は事件の当事者であり、戦車で両足を失った被害者でもある」 「中国政府はデモを暴乱とし、武力行使を正当化しているが、実際には、学生たちは反体制の目的ではなく中国を良くしたいという思いで天安門広場に集まったのだ」 「足を失ってからもアスリートを続け、障害者スポーツのやり投げと円盤投げで全国優勝したが、政府は私を表舞台に出さないために世界大会への出場権を奪った。その後も繰り返し政府による弾圧を受けたため、2009年に米サンフランシスコへ移住した」 「言論弾圧のほか、教育や情報の統制により、事件を知らない若い人が増えていることを懸念している。これは中国共産党との記憶の戦争だ」 「私は中国の真実を伝え、同じ考えを持つ仲間を増やすことで、中国を平和で民主的な政治に変えていけると信じている。そのためには国際社会の応援は不可欠であり、日本の皆さんにもご協力いただけると大変ありがたい」

*** 今週の教養講座(五木寛之の作家交遊③)

◎遠藤周作さんの忠告  「きみ、風呂には入るか」。突然、私に指をつきつけてたずねたのは遠藤周作さんだった。いうまでもなく「沈黙」など、キリシタン弾圧の歴史小説の名作を書かれた有名作家である。ご本人も独特なカトリック信徒でいらした。洗礼名をパウロという。遠藤さんには狐狸庵というもう一つの筆名があった。もっぱら戯文・雑文を書かれる時の仮の名である。突飛なイタズラがお好きで、様々なゴシップの種を振りまいたトリック・スターでもあった。独特な、というのはそういう意味だ。

そんな遠藤さんからの不意うちの質問であるから、こちらも緊張する。「えーと、風呂に入りますけど。それが何か」「体を洗うかね」「はい。一応」「ない、体を洗う? そりゃあ大変だ!」「体を洗ってはいけないんでしょうか」「いかん、いかん、絶対にいかん!」。よく意味がわからない。あわててつけ加えた。「洗うといっても、石鹸を使ったりはしません。湯の中でなんとなく手でこするくらいで」「そうか。それで安心した」と、遠藤さんは胸をなでおろすしぐさをした。

ある日、偶然にどこかのレストランで出会った時のことである。「どうして風呂で体を洗ってはいけないんでしょうか」とおそるおそるたずねると、急に深刻な表情になって、「実は、告白することがある」。カトリックの作家に告白と言われれば、私もさらに緊張する。遠藤さんは私の肩を抱いて、「これは秘密だからな」とささやくような声で言った。私も無言でうなずく。

「先日、縁日で生きたウナギを買ってきたんだ。あの黒くてニュルニュルしたやつ」「はあ」「洗面器に入れて、体を洗ってやったんだよ。きれいに体を拭いてやって、ひと晩置いたら、翌朝――」「どうしました」「死んでいた」。目を閉じてうなだれると、一瞬おいて、「つまり生物はむやみに体を洗ってはいけない。垢もあぶらも洗い流してしまうと大変なことになる。覚えておきたまえ。風呂で体を洗っちゃいかんよ、イツキくん」。

あの時の遠藤さんの深刻そうな表情を思い出すと、今も笑いがこみ上げてくるのだ。重い作品を書いたパウロ・遠藤さんは、そんな罪のないイタズラで心のバランスをとっていたのではあるまいか。私は今でも風呂で体を洗わない。べつに遠藤さんの言葉にこだわっているわけではないのだが。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年6月5日号(転送禁止)~~~

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***デイ・ウォッチ(4日)

去年の出生数68万6061人 初の70万人割れ 出生率は1.15 | NHK →去年の出生数は初めて70万人を下回った。ピークだった1949年の4分の1。出生率も1.15で過去最低。子育て支援の充実が叫ばれているが、結婚する人が少なくなっているので、流れは変わらない。価値観や文化的背景、社会のスリム化など、新しい発想の取り組みが求められていないだろうか。

韓国 イ・ジェミョン新大統領が演説 日米韓の協力進める方針強調 | NHK | 韓国 →当選後、すぐに就任した韓国の李大統領が記者会見。「分断の政治を終える大統領になる」と述べ、日本との関係では「問題があっても共通の利害関係を持っている。経済や安全保障、文化交流など双方が役立つことを探していける」と語った。現実政治家とも言われ、すぐにぎくしゃくすることはなさそうだ。

アメリカのトランプ大統領 プーチン大統領と電話会談 “和平つながらず” | NHK  プーチン大統領 “誰がテロリストと交渉するのか”停戦応じず | NHK  →プーチン大統領は、トランプ大統領、ローマ教皇と相次いで電話会談した。和平に向けた進展はなく、プーチン大統領は「テロリストとは交渉しない」とゼレンスキー大統領を交渉相手と認めない。和平が進まない根源はプーチン氏にある。

天皇ご一家 沖縄訪問初日 糸満で犠牲者を慰霊 遺族などと懇談 | NHK | 皇室 →日本で皇室に対して最も複雑な感情を持っている地域が沖縄。日本に帰属したのは明治時代で、太平洋戦争中は激しい地上戦となった。平成天皇は沖縄を重視し、今の天皇も一家として初めての訪問となった。足を運んで交流することが大切だ。

今年も集会開催なし 天安門追悼を厳重警戒―香港:時事ドットコム →4日は天安門事件から36年。中国の民主化要求が弾圧された事件で、香港では最近まで追悼集会が開かれていた。2年前から親中国派の物産展に代わり、今年は最大規模。中国共産党は事件を歴史から抹殺したいようだが、自由を求める心は人間の本質でもある。長い目で見れば、中国を測るリトマス試験紙だ。

立花孝志氏を書類送検 SNS投稿で名誉毀損容疑など―兵庫県警:時事ドットコム →NHK党の立花党首は違法行為すれすれの選挙活動をしているが、昨年の兵庫県知事選にからんで、書類送検された。100条委員会委員長の県議に対して、SNSや街頭演説で名誉毀損や脅迫した容疑。「悪貨は良貨を駆逐する」。良識を欠く行為には超党派、市民一体で正すしかない。

*** 「今日の名言」

◎レイ・ブラッドベリ(米の小説家、詩人。2012年6月5日死去、91歳

「崖から飛び降りるんだ。落ちていく間に翼を作る。それがリスクを取るということだ」 「あなたの中のヒーローやヒロインが望んでいることを見つけ、それが見つかったら、その望みに1日従ってみよう」 「考えてはいけない。考えることは創造の邪魔になる。それは自分を意識しすぎだ。ただ、やる必要がある」 「もし自分がやっていることが好きじゃないなら、やめてしまえ」 「愛はすべてに対する答えであり、何かをするための唯一の理由だ。君がだれかを愛するストーリーを思い描かなければ、他者がだれかを愛するストーリーを思い描かないならば、君はなにかを成し遂げることはできないだろう」 「本を焼却するよりも悪い犯罪がある。その1つは本を読まないことだ」 「私たちは、信じられないような宇宙に生まれた、あり得ない存在だ」 「科学者になるということは、子どもになることだ」 「最高の科学者は、経験したことをオープンに受け入れ、空想から始めるものだ」 

*** 今週の教養講座(五木寛之の作家交遊④)

◎若山富三郎という人  「勝新太郎と若山富三郎とではどちらが好きですか」と聞かれたことがある。「どっちもいい役者だよね。両方とも好きだな」と答えたら、「ずるい。どちらかに決めてください」と、後へは引かない。「個人的に記憶に残っているのは、若山富三郎さんの方かな」「え?個人的にって、お知り合いなんですか」「一度だけ会ったことがあるんだよ。そのことがひどく印象に残っているもんだから」「ひどく、なんて言わないでください。すごくでしょ? 最近の作家は言葉遣いがひどい」「失礼しました。すごく印象に残っていることがあってね」。

あれはいつごろのことだろうか。私の原作の映画化に彼が出演してくれたとき、ロケ先に雑誌の取材で会いに行ったことがあった。ちょうど撮影の休憩時間だったのだろうか、若山氏は衣装をつけたまま。木の椅子に腰をおろして腕組みをし、目をつぶって何かを考えている様子だった。私が挨拶をすると、無言のまま丁重に頭を下げ、そばに控えている付き人に分厚い声でこういった。

「先生にまんじゅうをお出ししなさい」。私は一瞬、何のことだかわからずに首をかしげた。なんといっても豪快な大スターである。いきなりウイスキーでも出されても不思議ではない。すすめられた椅子に腰をおろしたところへ付き人がお盆をささげてやってきた。皿の上には確かにまんじゅうがのっていた。「どうぞ」と若山さんは真面目な顔で言った。ハッタリもケレン味もない実直な口調だった。その日どんな会話をしたのかはほとんど覚えてない。ただ、「先生にまんじゅうを――」と付き人に命じた厚みのある声だけが耳に残っている。

若山さんが甘党であることを後で知った。そのことを知らなかったので、私は一瞬あっけにとられたものだった。若山富三郎という名前を聞いて、一升瓶を抱えてゴクゴクと飲み干すようなキャラクターを連想する人も少なくないことだろう。私も恥ずかしながらその1人だった。人を先入観で見てはいけない、とは、いつも思うことである。しかし、この歳になっても後で後悔するばかりだ。若山富三郎さんの名前を聞くと、必ずその時のことを思い出すのである。

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***デイ・ウォッチ(5日)

フジテレビ 港元社長らを提訴へ 元編成部長ら5人処分 中居正広氏めぐる対応などで | NHK | テレビ局 →フジテレビが港前社長と大多元専務を提訴する方針を決めた。監査役が外部の弁護士を選んで調査を進め、法的責任を追求することになった。社員の性被害をプライベートなトラブルと扱った責任を問う。今月は株主総会もあるが、スポンサーはいつ戻ってくるか。

米中首脳が電話会談 追加関税引き下げ協議 近く代表会合で一致 | NHK | 米中対立 →米中首脳の電話会談が公表されるのは、2期目のトランプ大統領では初めて。関税の引き下げ協議再開で合意し、相互訪問も呼びかけた。国務長官が打ち出した共産党と関係のある中国人留学生のビザ取り消しも「受け入れる」と方針転換したようだ。緊張緩和は歓迎だが、大国主導も気になる。

証券口座乗っ取り、5240億円に拡大 不正売買止まらず – 日本経済新聞 →証券口座の乗っ取りが止まらない。金融庁の発表によると、5月の不正売買は2094億円もあり、累計で5240億円に拡大した。証券各社はログイン時の本人認証を強化しているが、被害は拡大している。IDやパスワードを入力させる手口だが、いかに多くの人をだましているか驚く。

ハーバード大留学生の入国認めず 米政権が圧力強化、日本人にも影響か:時事ドットコム →トランプ政権がハーバード大学への締めつけをさらに強化している。留学生の入国を認めない方針を決めた。留学生は学生の4分の1を占め、大きな収入源になっている。大学は裁判に訴えるとみられ、対立は泥沼状態だ。

日本郵便、運送許可取り消しへ トラック2500台、不適切点呼で―国交省:時事ドットコム →不適切点呼の日本郵便に対し、国土交通省がトラック2500台の認可を5年間取り消す方針を通知した。昔に比べれば、日本郵便の配達の遅さは気になる。どんな影響が出るのだろうか。不適切点呼は今も続いているといわれている。

アベノマスク文書不開示は違法 購入契約巡り、決定取り消し―国に11万円賠償命令も・大阪地裁:時事ドットコム →安倍元首相時代は情報の改ざんや隠ぺいが相次いだが、アベノマスク文書の非開示は違法という判決が出た。長期政権はこうした民主的プロセス無視と一体だった。安倍首相時代の功罪をしっかり見極め続ける必要がある。

*** 「今日の名言」

◎西田幾多郎(哲学者。1945年6月7日死去、75歳

「善とは一言でいえば、人格の実現である」 「花が花の本性を現したときに最も美しいのと同様、人間が人間の本性を現したときは、美の頂上に達する」 「知は愛であり、愛は知である」 「涙をもってパンを食うたことのない人の人生観は、いかほどの価値のあるものであろうか」 「苦悩なき者は、深き精神的趣味を理解することはできない」 「衝突や矛盾のあるところに精神があり、精神のあるところには矛盾や衝突がある」 「罪悪や苦悩は、人間の精神的向上の要件である」 「愛は統一を求める情である。自己の統一の欲求が自愛であり、自他統一の欲求が他愛である」 「ただ一つの思想を知ることは、思想を知らないことと同じである」 「生命なき事業は虚栄であり、生命なき道徳は偽善である」 「なぜ宗教が必要であるか? かかる問いを発するのは、自己の生涯が真面目でないことを示すものである」 「宗教は己の生命を離れて存在するのではない。生命そのものの要求である」

*** 今週の教養講座(五木寛之の作家交遊⑤)

◎菊池俊輔さんのこと  昭和のメロディーが終わった、と感じたのは、作曲家の菊池俊輔さんの訃報を聞いた時だった。先に筒美京平さんが去り、菊池俊輔さんが逝き、小林亜星さんも亡くなった。ひとつの懐かしい時代が音もなく幕を下ろしたような気がした。

菊池さんとご縁ができたのは40数年も昔のことである。「海峡物語」という私の原作のテレビドラマの挿入歌の作曲をお願いしたのだ。寺山修司や長部日出雄など、津軽に縁のあるアーチストは、それぞれヒトクセある個性的な人物が多い。だから弘前出身の菊池さんに初めてお会いする時は少し緊張した。しかし、菊池さんは強烈な個性を表に表すというより、相手の姿勢に応じて受け止める柔軟さを感じさせるスケールの大きな音楽家だった。

そのとき私は立原岬という筆名で詞を書いていた。その歌の作曲を菊池さんにお願いしたのだ。思い切り古風な演歌調の「旅の終わりに」という挿入歌だった。歌謡曲は1番と3番が歌われることが多い。2番は省略されるのが定番である。しかし、私はなぜか2番目の歌詞が好きだった。作詞家の思いがそこに込められているような気がするからである。「旅の終わりに」というその歌も、2番はほとんど歌われたことがない。私がその歌詞を見せたとき、菊池さんは「僕はこの、2番目の歌詞が好きです」と、言ってくれたのだ。この人は信用できる、と私は思った。それは、こんな歌詞だった。

春にそむいて 世間にすねて ひとり行くのも 男のこころ 誰にわかってほしくはないが なぜかさみしい 秋もある

まるきりベタな演歌であるが、菊池さんは笑わずに本気で曲を書いてくれた。私には一つだけ注文があった。歌い出しの最初の音を、全体のいちばん低い音にしてほしい、という変な注文だった。ようやくカラオケが普及し始めた頃で、アカペラで歌う人も少なくなかった時代だったからである。最初の音が決まっていると、それより低い音は必要ないので素人にも歌うのがとても楽なのだ。

「変わった注文ですね」と、菊池さんは首をかしげていたが、出来上がった曲は、ちゃんとそうなっていた。冠二郎という当時は無名の新人歌手が歌ったが、「2番が好きだ」という人が多かった。その後も、いろんな歌手がカバーしていて、私は藤圭子が歌った「旅の終わりに」はとても気に入っている。その古い演歌を聞くたびに、菊池さんのことを思い出す。