2026年5月18~22日(教養講座:米中関係の深層)

~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年5月18日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(15~17日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎トランプ大統領 “台湾への武器売却は有効な交渉材料” | NHKニュース →米中首脳会談で、トランプ大統領が台湾問題で大幅に譲歩したという見方が強まっている。台湾への武器輸出はこれまで、米国が自律的に判断してきたが、今回は交渉カードとして差し出した。米議会の大幅反発は必至。関税などカネをめぐるディールならまだしも、「安全保障=命」に関わる取引は深刻だ。日本への影響も小さくない。高市首相は急きょ、訪韓する。米中首脳会談も話題になるだろう→ 韓国大統領府 高市首相19日から訪韓を発表「中東情勢も議論」 | NHKニュース
◎栃木県 上三川町 強盗殺人事件 横浜市の20代夫婦を逮捕 指示役か | NHKニュース 「トクリュウ」対策強化 変わる警察の捜査体制 | NHKニュース →栃木県の強盗殺人事件で、横浜市に住む20代の指示役夫婦が逮捕された。神奈川県に住む高校生4人も逮捕された。トクリュウ犯罪とみられる。警察は全国から捜査員200人を集め、略称「T3」というチームを作って対策を強化しているという。
◎サッカー日本代表 メンバー発表:長友佑都ら26人…三笘薫は落選 : 読売新聞 →6月から始まるサッカーW杯のメンバー26人が発表された。エースの三笘は直前のけがで落選。39歳の長友が5大会連続で選ばれた。選手に寄り添う森保監督のスタイルは、サーバントリーダーシップと呼ばれ、ビジネスの世界でも注目されている。大胆な目標の「優勝」を実現すれば、日本も変わるだろう。
◎東京大学の五月祭 爆破予告で16日のすべての企画を中止 | NHKニュース →東京大学の5月祭イベントに爆破予告のメールがあり、16日の企画がすべて中止された。参政党の神谷代表の講演が予定されていた。参政党の政策は差別的と批判されることもあるが、爆破予告はいたずらでも犯罪になる。すべての企画中止は過剰反応のような気もする。危うい時勢である。
◎トランプ氏、第1四半期に少なくとも2億2000万ドルの金融取引 | ロイター →トランプ大統領の株売買など今年第一四半期の金融取引が公表された。エヌビディア、アップルなどのIT企業、ゴールドマンサックスなど金融機関が含まれる。過去の大統領は取引を凍結するのが一般的だ。大統領という最大のインサイダーが、ディールを振りかざして私腹を肥やしている、と思われても仕方ない。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎佐藤愛子(小説家、2026年4月29日死去、102歳)
「いまの世の中を一言で言えば『いちいちうるせえな』。これに尽きますよ」 「人生の困苦に際して力を持つものは、金でも名でもない。精神の強さ」 「自分の性質の嫌さを分析して嘆くよりも、他人に配慮する努力をすればよろしい」 「夫婦喧嘩も性行為も挑まれればいつでも受けて立つべきものである。それが夫婦のエチケットである。夫婦円満の秘訣はそこにあるのである」 「苦労が自分を育ててくれた」 「私は、私の欠点を引きずりながら誠心誠意生きてきた」 「他人に対する理解力や洞察力や思いやりは、知識や勉強からでなく、苦労の積み重なりによって養われるものだ」 「この世で起こることは、すべて修業だと思えばいい。 力一杯生きて『ああ、面白かった』と言って死ねれば、それがいちばん」 「何のマイナスもない人生を歩いていたら、考えない人間ができちゃう」 「書くことは、深く考えること」 「良い経験も悪い経験も、多ければ多いほどいいと考えている」 「人に好かれようとしたことがない」
*** 今週の教養講座(米中関係の深層①)
米中首脳会談が終わった。日本から見ると、「米中対立」に目が行きがちだが、両大国の長い交流は多元的で、単純ではない。日本では現在、中国を語るときに「媚中派」「嫌中派」と好き嫌いで論じがちだ。しかし、米中の歴史、それに関係した日本の立ち位置を考えると、もっと深い洞察が必要になる。レッテル貼りにとどまっていては、本質を見誤る。両国の歴史について、「日本から見た盲点」という見方を交えながら考えてみたい。
第1回 出会いと最初の誤解――米中関係の始まりと日本の盲点
アメリカ合衆国と中国の関係は、18世紀末の貿易から始まった。独立直後のアメリカは、中国の茶、絹、陶磁器を求めて広州へ船を送った。当時の中国は清王朝の時代であり、巨大な人口と長い文明を持つ世界有数の大国だった。日本では「アメリカと中国はもともと対立していた」という印象を持ちやすい。しかし実際には、最初の関係は貿易と相互利益から始まっている。ここが最初の盲点である。
19世紀、中国は欧米列強の圧力を受けた。1840年のアヘン戦争後、イギリスは中国へ不平等条約を押し付ける。アメリカも1844年に望厦(ぼうか)条約を結び、中国市場への進出を進めた。
ただし、アメリカはイギリスほど露骨な植民地支配を目指してはいなかった。むしろ「門戸開放政策」を掲げ、中国を特定国が独占せず、各国が平等に貿易できるよう主張した。そこには理想だけでなく打算もあった。しかし重要なのは、アメリカが早い段階から「中国市場の重要性」を理解していた点である。
一方、中国側には「外国勢力への屈辱」の記憶が残った。19世紀後半、中国は欧米列強や日本の圧力を受け、「半植民地化」の時代を経験する。この歴史意識は現在の中国政治にも深く影響している。日本では現在、中国の強硬姿勢だけが強調されやすい。しかし中国には、「かつて弱かった中国を2度と繰り返さない」という強い歴史感覚が存在する。この点を理解しないと、中国の行動原理は見えにくい。
20世紀初頭、中国では辛亥革命が起き、清王朝が崩壊する。孫文はアメリカ型民主主義にも関心を持っていた。当時、中国知識人の間では、「欧米の科学や制度を学び、近代国家を作るべきだ」という意識が強まっていた。ここにも日本の盲点がある。歴史的に中国は、長くアメリカの技術や教育、制度から学ぼうとしてきた。アメリカもまた、中国市場や中国文明に強い関心を持っていた。
米中関係の出発点は、「敵対」でなく、「期待」と「憧れ」が存在していたのである。その後、日本の中国進出や日中戦争によって、アメリカと中国は接近する。第二次世界大戦では、中国はアメリカと共に日本と戦う連合国の一員となった。ここで日本人が忘れやすいのは、「中国にとってアメリカは、日本と戦った時代の同盟国だった」という事実である。現在の中国では抗日戦争の記憶が非常に重視されている。その中でアメリカは、「日本と戦った支援国」として記憶されている面もある。
米中関係を理解するには、「今の対立」だけを見るのでは不十分である。両国は長い歴史の中で、協力、憧れ、利益、屈辱、警戒を複雑に積み重ねてきた。そして日本は、その歴史の外側ではなく、常に深く関わってきたのである。
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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年5月19日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(18日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎AI「Claude Mythos」脆弱性対策、民間・海外と協力 政府が関係省庁会議 – 日本経済新聞 →「危険すぎる」と言われる高性能の新型AI「ミュトス」をめぐる政府の会議が初めて開かれた。アンソロピック社が開発したコンピュータシステムの脆弱性を見つけるAIだが、悪用されればインフラがマヒしかねない。各国政府はサイバー攻撃対策で連携を深めている。しかし、技術は自律的に発展するから、同様のAIが開発される可能性が高い。AIが人類の脅威になるという動きが現実になりつつある。セキュリティー会社は繁盛している→「ミュトス」影響でセキュリティー会社に問い合わせ相次ぐ | NHKニュース
◎大分 兵庫でことし全国初の猛暑日に 300地点超では真夏日に | NHKニュース →大分県日田市と兵庫県豊岡市で35.3度を記録し、日本で今年初めての猛暑日となった。30度以上を記録したのは300地点あまりにのぼった。今年の夏は例年にない暑さという予測が多い。自衛策を講じる必要がある。やれやれ。
◎高市氏陣営による中傷投稿報道 「秘書とやり取り」と男性が証言 [高市早苗首相][高市早苗首相 自民党総裁]:朝日新聞 →高市陣営による中傷動画問題で、作成を主導した人物がユーチューブ番組に出演し、秘書とやり取りしたと認めた。一般紙の朝日新聞が報じ、週刊文春だけの追及報道から新しい段階に入った。首相が知っていたかどうかは別にして、関与の責任は避けられないだろう。
◎イラン アメリカからの提案に返答 トランプ大統領は軍事的選択肢も検討か | NHKニュース →イランと米国の協議が再び難航し、トランプ大統領が武力行使をにおわせ始めた。ネタニヤフ首相も動いており、停戦になると都合が悪い人物がいるようだ。長引くと不利になるのは、中間選挙を控えたトランプ大統領ということは明白。妥協こそが政治だ。
◎補正予算案含め検討を指示 夏の電気・ガス支援も 高市首相 | NHKニュース ガソリン「170円」維持に否定的 自民・萩生田氏:時事ドットコム →原油は足りていると節約を訴えない高市首相。長引いた場合を想定して補正予算の検討を指示し、夏の電気・ガス料金補助を再開する。ガソリン170円を維持するかも焦点だが、萩生田氏は否定的なコメントをした。補正などで財政出動となれば、金利上昇は避けられない。政府の経済運営は難局に入りつつある→長期金利 一時2.8%に上昇 29年ぶりの高い水準 | NHKニュース
◎参政 “国保逃れ”で市議8人を離党勧告の処分 | NHKニュース →参政党の地方議員8人が、国保逃れをしていたとして離党勧告処分を受けた。維新でも発覚したが、便宜的に一般社団法人の役員に就任し、保険料が高い国民健康保険から、低く抑えられる社会保険に切り替えて支払いを逃れる手口だ。あまりにセコく、政治家の資格はない。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎エマニュエル・トッド(仏の歴史学者。1951年5月16日誕生、75歳)
「日本のように完璧な状態を追い求めることは、社会にとって重荷にもなる。だから人口減少が起きている」 「あるレベルになると、社会的格差より人口収縮が深刻な問題になりうる。日本は人口問題を何とかするしかない」 「日本は移民を受け入れなければならない。老いていく高齢者たちを支えるためにも必要だ」 「人口減少対策として必要なのは、女性の地位向上だ。日本に不可欠なのは、女性が普通に仕事をして、子供を産める環境が整うこと。男女の関係に大変革が訪れることである」 「自由貿易が利益になる段階はあるが、行き過ぎると格差が生まれ、最先進国での工員の給与を抑制し、最終的に世界的な需要不足につながる」 「予測不能で大きなリスクとなり得るのが米国の行動だ。プーチンを中心とするロシアとは対照的に、中枢がないからだ」 「日本の安全保障に日米同盟は当面、不可欠だとしても、米国に頼りきっていいのか。米国の行動はどこまで信頼できるのか」
*** 今週の教養講座(米中関係の深層②)
第2回 戦争と冷戦――「敵」と「味方」が入れ替わった時代
20世紀前半、アメリカ合衆国と中国の関係は大きく変化した。協力関係から敵対関係へ、さらに再接近へと、劇的に動いた時代である。日本では現在、「米中対立」が当たり前のように語られる。しかし歴史を振り返ると、両国は長く協力関係にもあった。この点は、日本から見ると意外に見落とされやすい。
1937年、日中戦争が始まる。中国では蒋介石率いる国民党政府が日本軍と戦っていた。アメリカは当初中立的だったが、日本の勢力拡大を警戒し、次第に中国支援へ傾いていく。当時のアメリカ社会には、「苦しむ中国を助けるべきだ」という世論が存在した。中国は「侵略に抵抗する被害者」として見られていたのである。宣教師やジャーナリストの影響もあり、中国への同情は広がっていた。
そして第二次世界大戦が始まると、中国はアメリカと共に日本と戦う連合国となった。ここにも日本人が忘れやすい重要な視点がある。現在の日本では、「中国とアメリカは根本的に価値観が違う」という説明が多い。しかし実際には、両国は「反日」で一致していた時代があった。中国にとってアメリカは、日本軍と戦った重要な同盟国だったのである。この歴史は、中国人の歴史認識にも影響している。中国では抗日戦争の記憶が非常に重視される。その中でアメリカは、「かつて日本と戦った国」として一定の複雑な位置を占めている。
しかし戦後、状況は急変する。中国では国民党と共産党の内戦が再燃し、1949年に毛沢東が中華人民共和国を建国した。ここでアメリカは、中国共産党政権を承認しなかった。背景には冷戦がある。アメリカはソ連を中心とする共産主義勢力を最大の脅威と考えていた。1950年、朝鮮戦争が始まると、米中は直接戦うことになる。中国軍は北朝鮮を支援し、アメリカ軍は韓国側として参戦した。ここで米中関係は完全な敵対関係へ入る。
日本では、この時代の記憶が比較的強い。そのため、「中国は昔からアメリカの敵だった」という印象を持ちやすい。しかし実際には、日中戦争期には米中は同盟関係にあったのである。さらに1960年代、中国では文化大革命が進み、アメリカから見る中国は「閉鎖的で危険な共産国家」と映った。一方、中国でも「アメリカ帝国主義打倒」が強く叫ばれた。
ところが1970年代になると、再び大転換が起きる。中国とソ連が対立し始めたのである。アメリカはこの変化を利用し、キッシンジャー特使が秘密裏に中国との接近を進めた。1972年、ニクソン大統領が訪中する。これは世界史的事件だった。長年敵対していた米中が和解へ向かったのである。ここにも日本の盲点がある。日本では「民主主義対共産主義」という価値観対立で世界を理解しやすい。しかし現実の国際政治では、理念だけでなく「共通の敵」が関係を変えることがある。
アメリカは民主主義国家でありながら、中国共産党政権と手を結んだ。それはソ連への対抗という現実的判断からだった。つまり米中関係は、「善悪」や「価値観」だけでは説明できない。協力と対立は、常に国益と国際情勢によって変化してきたのである。そして日本は、その変化の影響を最も強く受ける立場にある。だからこそ、日本には歴史全体を踏まえた冷静な視点が求められている。
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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年5月20日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(19日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎アメリカ国務省 新たにキューバ政府高官などに制裁科すと発表 | NHKニュース →イランで手詰まり感のあるトランプ政権が、キューバへの圧力を強めている。キューバ政府高官や内務省の団体に制裁を科すと発表した。イランの次の攻撃対象とも言われる。キューバのディアスカネル大統領は「非道徳的かつ違法で、犯罪だ」と非難している。イランと似た対決構図だ。
◎日韓首脳 エネルギー協力立ち上げで一致 具体的な行動を検討へ | NHKニュース →日韓首脳がシャトル外交を展開している。半年あまりで4回目の会談で、今回は高市首相がイ大統領の故郷のアンドンを訪問した。イラン情勢をにらんでエネルギー協力を目玉にした。革新派大統領と友好関係を築いているのは成果だが、日韓蜜月を中国との関係改善につなげる戦略も必要だ。
◎高市首相、中傷動画作成「一切ない」 関与証言の男性、面識も否定:時事ドットコム →高市陣営の中傷動画作成で、高市首相は「私も秘書も会ったことがない」とコメントした。動画作成者はSNSで連絡を取ったとしており、この点は符合する。問題は中傷動画の作成と秘書との関係だ。具体的な指示をしたのか、黙認したのか。真相究明が必要だ。
◎関電社員、法廷内で無断録音 複数が関与、14年ごろから:時事ドットコム →関西電力が民事裁判の法廷で無断録音をしていたと発表した。どの裁判かは明らかにしていない。九州電力、中部電力でも同様の行為が発覚している。口を開けばコンプライアンスを強調する電力会社だが、組織のためなら法令を破るのが実態。原発でも似た事案が多い。
◎「完全養殖」ウナギのかば焼き 初めて一般向け販売へ | NHKニュース →卵から育てた完全養殖のウナギが試験的に市販される。大分県の会社が国の研究機関の支援を受けて取り組んできた。高値の花になっているウナギが養殖で食べられるとなれば朗報だが、天然のシラスウナギから育てる現在の養殖コストに比べて3~4倍も高い。「今後に期待」の段階だ。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎北村透谷(評論家。1894年5月16日死去、25歳)
「熱意は力である。必ず到着したい所を目指させる、一種の引力である」 「人生に意味があるのは、熱意がある故である」 「人が世に生まれるとき、一つの約束を持って生まれてくる。人に愛されることと、人を愛することである」 「明日は永遠の始まりであり、明日という名の希望は永遠の希望なのである」 「世界は意味なく成立しているものにあらず。必ず何らかの希望を蓄えて進んでいくものである」 「自分があくまでも清いと思い込み、自分がどこまでも善人であると信じている者ほど、罪多き者はいない」 「我々のほとんどすべての支出は、他人に真似ようとすることの表れである」 「恋愛は人生を解く鍵である。恋愛から遠ざかれば、人生に何の色彩があろうか」
*** 今週の教養講座(米中関係の深層③)
第3回 経済――「対立しても離れられない」米中の現実
現在のアメリカ合衆国と中国を考える上で、最も重要なのが経済関係である。政治や軍事では対立していても、経済では深く結びついている。この複雑さは、日本では意外に理解されにくい。日本では米中対立が強調され、「中国包囲網」「新冷戦」「経済安全保障」といった言葉がよく聞かれる。しかし現実には、アメリカ企業は今も中国市場で巨額の利益を上げている。
出発点は1978年、鄧小平による改革開放政策だった。中国は市場経済を部分的に導入し、外国企業を積極的に受け入れた。アメリカ企業はそこへ大量に進出する。理由は明確だ。安い労働力、巨大な人口、成長する市場など、中国には巨大な経済的魅力があった。1990年代から2000年代、中国は「世界の工場」と呼ばれるようになる。衣類、家電、電子機器など、世界中の商品が中国で生産された。
特に2001年の中国WTO加盟は大きかった。中国は世界経済へ本格参加し、輸出を急増させる。アメリカの大型スーパーには、中国製品が大量に並ぶようになった。ここに日本の盲点がある。日本では「アメリカは中国を危険視している」という面だけが強調されやすい。しかしアメリカ社会には、「中国で利益を得てきた」という現実も存在する。例えばAppleは、中国の巨大工場と市場なしには現在の規模になれなかったとも言われる。多くのアメリカ企業が、中国の安価な生産力を利用して利益を拡大してきた。中国の経済成長を支えたのは、中国自身の努力だけではない。アメリカ企業とアメリカ市場も大きな役割を果たしていた。
一方、中国側にもアメリカへの強い依存があった。輸出先としてのアメリカ市場、先端技術、ドル決済体制がなければ、中国経済の急成長は難しかった。しかし、この成功はアメリカ国内で大きな不満も生んだ。工場の海外移転によって、アメリカ中西部では製造業の雇用が減少した。「中国に仕事を奪われた」という感覚が広がったのである。その象徴が、ドナルド・トランプの登場だった。トランプは「中国は不公正な貿易をしている」と批判し、高関税を発動した。いわゆる「米中貿易戦争」である。
ただし、ここでも単純な対立では終わらない。関税をかけても、アメリカ企業は簡単に中国市場から撤退できなかった。中国側もまた、アメリカ市場を必要としていた。つまり現在の米中経済は、「戦いながら依存する関係」なのである。近年は「デカップリング(切り離し)」という言葉も使われる。特に半導体やAIなど安全保障に直結する分野では、アメリカは中国への技術流出を強く警戒している。しかし現実には、完全な切り離しは難しい。両国経済は深く結びついているからである。
ここで日本はどう考えるべきか。日本では「アメリカに合わせて対中関係を考える」傾向が強い。しかし、アメリカ自身は中国と経済的につながり続けている。日本だけが感情的に「脱中国」を進めれば、自国経済を傷める危険もある。もちろん、安全保障上の警戒は必要である。しかし同時に、中国は日本最大級の貿易相手でもある。重要なのは、「安全保障」と「経済」を分けて考える冷静さである。米中経済関係の本質は、「完全な敵対でも完全な協力でもない」という点にある。日本に求められるのは、その複雑な現実を感情ではなく、戦略として理解する姿勢である。
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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年5月21日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(20日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎中国 習近平国家主席とロシア プーチン大統領 首脳会談 協力強化で結束誇示 | NHKニュース →習近平主席とプーチン大統領が会談し、米中会談ではなかった共同声明を出し、結束を強調した。習主席は米国を念頭に「一方的な覇権主義が横行」、日本を念頭に「ファシズムや軍国主義を復活させようとする挑発的な行為に反対する」と述べた。米中ロの関係はどうなっていくのか。米国の覇権衰退を受けて、世界の陣取り合戦は激しく流動化している。日本はどうするのだろうか。
◎【高市早苗陣営「ネガキャン動画」問題】67通の証拠メールが暴く「国会答弁のウソ」《独占スクープ第3弾》 | 週刊文春 →高市首相陣営の中傷動画問題で、週刊文春は秘書と動画制作者がやりとりしたメールの存在を明らかにした。全部で67通あり、衆院選ではショートメールで立憲幹部について次のように送っている。「安住のポケットに手を突っ込んだ演説、足を組んでの食事、とても日本人の道徳心とは思えません。皆さんに知らしめてやって下さい」。秘書が深く関わっていることがわかる。首相の次の弁明が焦点。
◎高市首相 中東情勢などの対応で補正予算案検討 野党と党首討論 | NHKニュース →今国会初めての党首討論。高市首相は対面の情報発信が少なく、「何を考えているのかわからない」という声も多いが、党首討論ならそれなりの人柄も伝わる。議会答弁と比べて多少はフランクで、本音も出しやすい。しかし、野党6人で合計45分はいかにも少ない。もっとやるのが国益にかなう。
◎グーグル 「AIエージェント」機能を個人ユーザー向けに拡充へ | NHKニュース →企業向けのサービスがこれから本格化する「AIエージェント」について、グーグルが個人向けに拡充すると発表した。予想以上に早いスピードだ。使い方はいろいろ言われるが、具体的なイメージになると今ひとつ。納得感のある小さな成功例の積み重ねが普及のカギか。
◎スポーツを見る機会の確保のあり方 有識者会議が初会合 | NHKニュース →今年のWBCがネットフリックスの独占中継になったことを受けて、スポーツ庁と総務省が有識者会議を設置し、初会合を開いた。国民の関心の高いスポーツイベントを地上波でどう放送するかがポイント。高額化する放映権料などの課題があるが、やはり地上波で見たい。民間企業の交渉で決着すれば話は早い。
◎北陸電力社員も 一部裁判の法廷内で無断録音 | NHKニュース | 裁判 四国電力社員も 民事裁判の法廷内のやりとりを無断で録音 | NHKニュース →民事裁判の無断録音を北陸電力と四国電力も行っていたことが明らかになった。業界団体の電事連で情報交換をしていたのだろうか。みんなで渡れば怖くないという業界の体質だ。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎松本清(マツモトキヨシ創業者、元松戸市長。1973年5月21日死去、64歳)
「人間、なにか1ついい所があればいいんだ」 「君が思い悩み、迷ったことは少しも気にすることはない。何かをつかんだはずだ」 「なにをやったかではない。今からなにをやるかだ」 「失敗を恐れるな。試行錯誤、大いに結構」 「なんでもいいから、日本一になれ」 「仕事は好きな者には敵わない。能力でもない、学歴でもない」 「だれでもアイデアはある。それを実行するか、しないかだ」 「人のふんどしで相撲を取れ。自分のふんどしなら、だれでも取れる」 「言葉で行動を律せよ。ホラの効用も、誓いの効用となる」 「損をすることを知らない者は、成功しない」 「いつも心の中に、前かけをしろ。昔の商人が、腰をかがめて前かけをかけた姿を心に留めよ」 「ふんぞり返るは下る人生。威張ってふんぞり返らず、坂道を登る前かがみの姿勢で人生を生きよ」 「どんなに調子が良くても、のぼせてはいけない。いつも自己規制せよ。毎日、毎晩、これでいいのか、あれで良かったのかと自省せよ」 「真似ることは学ぶことである。いいと思ったらすぐに真似ろ」
*** 今週の教養講座(米中関係の深層④)
第4回 軍事――台湾と太平洋をめぐる米中の力学
現在のアメリカ合衆国と中国の対立で、最も緊張感が高いのが軍事分野である。台湾海峡、南シナ海、東シナ海では、両国の軍事的競争が年々激しくなっている。日本では、「中国の軍事的脅威」が強く語られる。しかし、ここにも見落とされやすい点がある。それは、中国側には「過去の屈辱を繰り返したくない」という歴史意識が強く存在していることである。
19世紀、中国は欧米列強や日本に軍事的敗北を重ねた。アヘン戦争、日清戦争、列強の租界支配などで、中国ではこの時代を「百年国恥」と呼ぶ。現在の中国指導部には、「弱い中国に戻ってはならない」という強い意識がある。そのため、中国の軍事力強化は、単なる覇権主義だけではなく、「国家再建」の意味も持っている。
1949年、中華人民共和国成立後、中国は軍事力強化を国家目標に掲げた。1950年の朝鮮戦争では、中国軍は北朝鮮支援のため参戦し、アメリカ軍と直接戦った。ここで中国は、「アメリカ軍を押し返した」という強い自信を持つ。一方、アメリカ側では、「中国は将来の軍事的脅威になる」という認識が強まった。その後、中国は核兵器開発を進め、1964年には核実験に成功する。アメリカにとって、中国はソ連に続く核保有大国となった。
1970年代、米中関係は改善する。しかし軍事的な不信感は消えなかった。特に最大の火種となったのが台湾問題である。中国は台湾を「中国の一部」と位置づけ、統一を国家目標としている。一方、アメリカは台湾関係法に基づき、台湾防衛能力を支援している。ここに日本の大きな盲点がある。日本では台湾問題を、「民主主義国家台湾を中国が脅かしている」という構図で理解しやすい。その面はあるが、中国側から見れば、台湾問題は「国家分裂を終わらせる問題」でもある。中国共産党にとって台湾統一は、単なる外交問題ではなく、国家統一と政権正統性に関わる極めて重要な問題なのである。台湾問題は双方にとって「譲れない問題」になっている。
1996年の台湾海峡危機では、中国が軍事演習を行い、アメリカが空母を派遣した。この時から、「台湾有事」が現実的危機として意識されるようになった。2000年代以降、中国は急速に軍事力を近代化した。空母建造、ミサイル開発、宇宙技術、サイバー戦能力など、多方面で強化を進めている。特に海軍力の拡大は大きい。中国は南シナ海に人工島を建設し、軍事拠点化を進めた。アメリカは「航行の自由」を掲げて軍艦を派遣し、対抗している。現在の米中軍事関係は、「太平洋の主導権争い」とも言える。
アメリカは第二次世界大戦後、太平洋で圧倒的な海軍力を維持してきた。しかし中国は、「自国周辺海域でアメリカ軍に自由に行動されたくない」と考えている。ここで日本は極めて難しい立場に置かれている。日本の安全保障は日米同盟に大きく依存している。そのため、中国の軍事的拡大には警戒が必要である。しかし同時に、日本は中国のすぐ隣に存在する国家でもある。もし米中軍事対立が激化すれば、日本は最前線となる可能性が高い。特に沖縄や南西諸島は重要拠点となる。
だからこそ、日本には冷静な戦略が必要である。中国脅威論だけを叫ぶのではなく、「なぜ中国が軍事力を強化しているのか」「どこまでが防衛で、どこからが拡張なのか」を見極めなければならない。重要なのは、抑止力を維持しつつ、偶発的衝突を防ぐ外交努力である。米中軍事対立は今後も続くだろう。しかし、日本に必要なのは単純な敵味方論ではない。地理と歴史を踏まえた、現実的で長期的な安全保障観なのである。
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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年5月22日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(15~17日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎高市政権政策推進で議員連盟発足 自民党所属議員の8割超入会 | NHKニュース →高市政権の政策推進を図る「国力研究会」が発足した。自民党所属議員の8割超が参加する。発起人には麻生氏の他、小泉、茂木、加藤氏ら総裁選出馬経験者も多く名を連ね、最終的には非主流派も「抱きつき戦略」で多く入会した。「高市応援団」と言われたが、実態は党との意思疎通を欠く高市首相を取り込む組織ではないか。党の意向を反映した政策実行を迫りながら議席維持を図る狙いだろう。うまくいくのかどうか。党外から見れば、大政翼賛会そのものだ。
◎トランプ大統領 台湾総統と協議の意向 中国が「断固反対」 | NHKニュース →トランプ大統領が台湾への武器売却で台湾総統と協議する意向を示した。米国が台湾と断行して以来、両国トップの会談はない。中国は「断固反対」と猛反発している。トランプ大統領が、台湾への武器売却を交渉カードにしたのに続き、台湾総統との協議をほのめかしたのは、常識的には失態だ。
◎東京電力も法廷内で無断録音 電力業界で相次ぐ | NHKニュース →東京電力も法廷で無断録音をしていた。これで10電力会社のうち、北海道、東北、沖縄を除く7電力会社がしていたことになる。残り3社も時間の問題か。原発そのものの是非以前に、言動不一致で建前ばかりの日本の電力会社に原発を運営させて大丈夫か、という深刻な問題がある。
◎ロシア軍が無人機攻撃に劣化ウラン使用、残骸から自然の60倍以上の放射線…ウクライナ北部 : 読売新聞 →ウクライナは、ロシア軍が無人機攻撃に劣化ウランを使っていると発表した。ミサイルの残骸から自然放射線の60倍以上の放射線が測定されたという。核兵器などを作る濃縮過程で生まれる廃棄物で、破壊力が大きい。保有国は多く、2023年に米国がウクライナへの供与を初めて発表した際、ロシアは「犯罪行為」と非難していた。
◎京都・八幡市の川田翔子市長、産休取得へ 現職女性首長で全国初か – 日本経済新聞 →京都府八幡市の川田翔子市長(35)が、産休を取得する。現職女性市長では初めてとみられる。育休も検討している。休職中は副市長を職務代理者とし、重要案件はオンラインで対応する。川田氏は京大を卒業し、京都市職員、参院議員秘書を経て、2023年11月の市長選で初当選した。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎ヴィクトル・ユーゴー(仏の詩人・小説家。1885年5月22日死去、83歳)
「大きな悲しみには勇気をもって立ち向かい、小さな悲しみには忍耐をもって立ち向かえ」 「不運は人物を作り、幸運は怪物を作る」 「友よ、逆境にあっては、常にこう叫ばねばならない。希望、希望、また希望と」 「財布が空っぽであることほど、人生を冒険で満たすものはない」 「人は強さに欠けているのではない。意志を欠いているのだ」 「人生最大の幸福は、愛されているという確信である。自分のために愛されている、否、さらに正確には、こんな自分であるのに愛されているという確信である」 「愛すること、それは行動することだ。信じることである」 「生きている者とは、闘っている者だ」 「流れるビールは、泡を立てないものだ。急ぐなかれ」 「毎朝、その日の行動計画を立て、それを実行していく者は、多忙な人生の中で迷路に迷い込んだとしても、出口につながる魔法の糸を手にしている」 「強く辛辣な言葉は、根拠が弱いことを示している」 「人は軍隊の侵入には抵抗するが、思想の侵入には抵抗しない」 「女性が話しかけてきたときは、彼女の目が発する言葉に耳を傾けることだ」
*** 今週の教養講座(米中関係の深層⑤)
第5回 文化と交流――対立の奥にある「もう一つの米中関係」
アメリカ合衆国と中国は、政治や軍事では激しく対立してきた。しかし、その一方で、文化や人的交流では非常に深く結びついてきた。この側面は、日本では意外に見落とされやすい。日本では現在、「米中対立」が強調されるため、両国は互いを嫌い合っているように見える。しかし現実には、教育、科学、映画、スポーツ、ITなど、多くの分野で長年交流が積み重ねられてきた。
19世紀、中国に渡ったアメリカ人宣教師たちは、学校や病院を作った。西洋医学や近代教育が中国へ広がる上で、アメリカ人の役割は小さくなかった。20世紀初頭、中国知識人の間では「欧米の科学や民主主義を学ぶべきだ」という考えが強まった。特にアメリカは、技術、教育、経済の面で大きな影響を与えた。ここに日本の盲点がある。日本では「中国は反米国家」という印象が強い。しかし実際には、中国の近代化は長くアメリカとの交流に支えられてきた面がある。
たとえば、中国の多くのエリート層はアメリカ留学経験を持つ。北京にある清華大学は、義和団の乱で清が米国に払った賠償金が返還され、米国留学の予備校として設立された。北京大学と双璧に難関校で、習近平主席らが卒業生だ。改革開放以降、何十万人もの中国人学生がアメリカへ渡り、科学技術や経営を学んだ。現在でも、アメリカの大学には多数の中国人留学生が在籍している。特に理工系分野では、中国系研究者の存在感は非常に大きい。
一方、アメリカ社会もまた、中国文化の影響を強く受けてきた。中国料理は完全にアメリカ社会へ定着し、中国系移民はIT、医学、大学研究などで重要な役割を果たしている。特にGoogleやMicrosoftなどの先端企業には、多くの中国系技術者が働いている。つまり現在のアメリカ社会は、中国系人材なしでは成り立たない部分もあるのである。
映画や娯楽の世界でも交流は深い。ハリウッド映画は中国市場を強く意識するようになった。中国市場で上映できるかどうかは、映画会社にとって大きな問題となっている。また、スポーツ交流も象徴的である。1971年の「ピンポン外交」は、米中和解のきっかけとなった。近年ではNBA人気が中国で非常に高く、多くのアメリカ文化が中国へ浸透している。ここでも日本は、「対立」という面だけを見ると、現実を見誤る可能性がある。現在の米中関係は、単なる敵対関係ではない。「競争しながら深く交流している関係」なのである。
もちろん近年は緊張も強まっている。アメリカでは「技術流出」や「スパイ活動」への警戒が高まり、中国人研究者への監視も問題化している。中国側でも、愛国主義教育が強まり、「アメリカ文化への警戒」が広がっている。しかし、それでも交流は完全には止まっていない。経済、大学、研究、芸術、人材移動など、多くの分野で両国はつながり続けている。ここに、日本が学ぶべき点がある。日本では近年、「中国と距離を置くべきだ」という感情的な意見が強まっている。しかし、アメリカ自身は対立しながらも、中国との交流を断っていない。
アメリカは、「警戒すべき相手」と「交流すべき相手」を同時に抱えているのである。日本に必要なのも、この複眼的視点だろう。安全保障上の警戒は必要である。しかし同時に、中国を理解し、人材交流や文化交流を維持する努力も重要である。相手を知らなければ、恐怖や感情論だけが強くなる。米中関係の歴史が示しているのは、対立する国家同士でも、人間同士の交流は続くという事実である。そしてその交流こそが、最終的には衝突を防ぐ土台になる。隣国である以上、すべての行動は国益に関わり、好悪を超えた功利的な思考が不可欠だ。
