2026年5月25~29日(教養講座:高市現象の研究)

~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年5月25日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(22~24日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう

カンヌ映画祭 最優秀女優賞に岡本多緒さん 日本人初 | NHKニュース  →岡本多緒さんが日本人初の最優秀女優賞に輝いた。千葉県出身の41歳。14歳でモデルデビューし、2006年にフランスにわたって国際的に活躍してきたので、国内での知名度は高くない。受賞作は濱口竜介監督の「急に具合が悪くなる」。6月19日から公開される。

競馬「オークス」 今村聖奈騎手が日本人の女性騎手初のG1制覇 | NHKニュース  →こちらも日本人女性初。G1制覇騎手が誕生した。今村聖奈さんは、滋賀県出身の22歳。父親が元騎手で、子どものころから騎手を志した。2022年、中央競馬で10人目の女性騎手としてデビューした。G1レース挑戦は3回目。オークスは牝馬のレースだが、「これからも彼女と楽しく走りたい」と話した。

トランプ大統領 イランと「最終調整の段階」詰めの協議続くか | NHKニュース  →手こずったイランから手を引き、キューバに注力しようということではないか。トランプ氏は大統領として名を残したい願望が強い。オバマ大統領のイラン核合意を廃棄したが、レガシー作りに失敗した。のど元のキューバを友好国にする試みは誰もできなかった。何でも武力で解決しようという最近の姿勢が恐ろしい。今朝の投稿では「急いで合意しなくてもいいと指示した」という。また発砲事件があった。周囲も騒々しい →ホワイトハウス近くで発砲 容疑者の男死亡 大統領に影響なし | NHKニュース

辺野古沖転覆 “高校の教育内容は政治的中立性に違反” 文科省 | NHKニュース →岸田政権や石破政権ではこうした対応はしなかっただろう。安全対策は徹底すべきだが、「教育の政治的中立性」は分けて慎重に考えた方がいい。特定政党の支持を求めたわけではない。政府に反対する異論は許さない姿勢に見える。不倫の文科相が責任者でいいのかという意見も聞こえそうだ。

大相撲夏場所 小結 若隆景が優勝 令和4年春場所以来2回目 | NHKニュース →上位陣不在の春場所は、31歳の若隆景が4年ぶりに優勝した。大関の霧島が場所を引っ張ってきたが、決定戦で簡単に負けた。来場所、横綱2人は出場できるかどうか、安青錦は大関を陥落して関脇でどうなるか。今場所のような状態が続くと、大相撲も苦しい。

兵庫 たつの 母娘殺害事件 42歳容疑者を公開手配 娘殺害容疑 | NHKニュース  兵庫 母娘殺害事件 容疑者「人殺した」も警察 事件把握できず | NHKニュース  →兵庫県たつの市の母娘殺人事件で、警察は隣に住んでいた42歳の男を指名手配した。殺人の発覚前、男は警察に「人を殺した」と話していたが、警察は事件を把握できず逮捕できなかった。動機が焦点だが、奇妙な事件だ。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎吉野源三郎(編集者、児童文学者。1981年5月23日死去、82歳)

「尊敬せずにはいられない美しい心根や、やさしい気持ちのあることを知ったのは、君にとって、本当によい経験だった」 「もしも君が、学校でこう教えられ、世間でもそれが立派なこととして通っているからといって、いわれたとおりに行動し、教えられたとおりに生きてゆこうとするならば、君はいつまでたっても、1人前の人間にはなれないんだ」 「僕たちは、自分で自分を決定する力をもっている」 「自分ばかりを中心にして物事を判断してゆくと、世の中の本当のことも、ついに知ることができないでしまう」 「ひとつのわかりきったことを、どこまでも追いかけて考えてゆくと、ものごとの大事な根っこにぶつかることがあるんだ」 「人間として、自尊心を傷つけられるほど厭な思いのすることはない」 「世間には、悪い人ではないが、弱いばかりに、自分にも他人にも余計な不幸を招いている人が決して少なくない」 「肝心なことは、自分が本当に感じたことや、真実心を動かされたことから出発して、その意味を考えてゆくことだ。何かしみじみと感じたり、心の底から思ったりしたことを、ゴマ化してはいけない」

*** 今週の教養講座(高市現象の研究①)

 日本記者クラブは、「高市現象と日本の政治」というタイトルで、有識者を招いた講演シリーズを開いています。これまでの男性首相にはないスタイルを貫いています。タカ派政策に対する警戒感がある一方で、高い支持率を維持しています。これまでの日本政治であまりみられなかった現象です。5人の講演(要約)を紹介します。動画のURLも併記したので、関心のある方はご覧ください。

【1】米重克洋JX通信社代表取締役 「勝ち馬を推すネット地盤」 動画→「高市現象と日本の政治」(1) 米重克洋・JX通信社代表取締役 2026.4.3

今回の衆院選を考えるうえで重要なのは、自民党の大勝を「高市人気」だけで説明しないことである。自民党の比例得票率は高かったが、小泉郵政選挙の水準を上回ったわけではない。にもかかわらず議席が大きく伸びたのは、複数の票の移動が同時に起きたためである。

第1に、自民党は無党派層を最も多く獲得した。高市政権の発足により、自民党に勢いが生まれた。第2に、公明党票の多くは自民党から野党側へ移った。第3に、国民民主党や参政党に流れていた保守層の一部が、自民党に戻った。第4に、立憲民主党の支持層の4割から5割ほどが中道改革連合に投票しなかったと見られる。結果として、自民党には入ってくる票が多く、公明票が抜けても大きな打撃にならなかった。一方、中道改革連合は足場が崩れ、野党第一勢力としての存在感を十分に示せなかった。

自民党の勝因の1つは、若い世代、現役世代の支持を取り戻したことである。岸田政権後期から石破政権にかけて、自民党は若年層の支持を大きく失っていた。その主因は政治と金の問題だけではなく、物価高や経済政策への不満だったと考えられる。若い世代ほど生活や将来への不安が強く、経済政策への関心が高い。そこに高市政権が登場し、安倍政権を支持していた層が自民党へ回帰した。

もう1つの大きな要因は、ネット地盤である。テレビや新聞中心の情報空間から、スマートフォン、SNS、YouTube中心の情報空間へ移行が進んでいる。とくに50代以下では、ネット利用時間がテレビ視聴時間を上回る。従来の地域組織や人間関係に基づく「リアルな地盤」だけではなく、SNS上の発信力やインフルエンサーの影響力による「ネット地盤」が、選挙結果を左右するようになった。

高市総理は、このネット地盤に強い政治家である。YouTube上では高市氏に好意的な動画が多く再生され、人柄やキャラクターへの好感が広がった。一方、中道改革連合については、ネット上で否定的な情報が多く流れた。立憲支持層が中道にまとまらなかったのは、創価学会や公明党への拒否感だけでなく、中道改革連合を積極的に選ぶ理由を見いだせなかったことが大きい。

今回の選挙は、メディア環境の変化が政治の構造を動かした選挙である。今後の政治分析では、世論調査や出口調査に加え、ネット上の情報接触と有権者の動きを見ることが欠かせない。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年5月26日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(25日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう

セブン&アイ 鈴木敏文名誉顧問が死去 日本のコンビニ礎築く | NHKニュース  →「小売の神様」と言われ、コンビニを定着させた鈴木敏文氏が亡くなった。24時間営業、おにぎり・弁当・サンドイッチ、ATMや公共料金支払いなどで、日本人のライフスタイルを変えた。先見性に優れ、反対を押し切る執念も並外れていた。戦後を代表する経営者だ。「今日の名言」参照。

中東情勢で3兆円強規模の補正予算案を来週にも提出 高市首相 | NHKニュース →高市首相が3兆円の補正予算案提出などを発表した。電気・ガス料金補助を7~9月に実施する。赤字国債を発行するが、前年度分の減額で総額は増えないという。「ガソリン170円」は状況を見ながら検討する。毎度のことだが、全国民が対象でバラマキ感は拭えない。

中低所得層に給付制度 みらい、国民会議へ独自案:時事ドットコム →チームみらいが、食品消費税減税の対案を発表した。年収540万円を上限に、最大1人年6万円程度の現金給付を見込む。公金受取口座など既存の仕組みを使い、対象世帯は成人全体の7割弱、財源は年約4.6兆円。最近は富裕層も含めたバラマキが目立つが、ターゲット絞った賢明な政策だ。

日経平均株価 終値 6万5000円台で最高値を更新 | NHKニュース  →東京株が終値で6万5000円台を突破、過去最高を更新した。イラン情勢の好転を見込み、AI・半導体株が高騰した。こんな状況で補正予算が必要かと思わせるほどの相場だ。株式市場が異常なのか、景気を心配し過ぎなのか。なかなかの難問だ。

高市首相、中国主席に哀悼メッセージ:時事ドットコム →高市首相が中国山西省の炭鉱で起きたガス爆発事故で中国の主席・首相に哀悼のメッセージを送った。トランプ大統領から「習主席があなたを非難したので、かばっておいた。もっと自分から中国にアプローチしなさい」と言われたのではないか。隣国とは無駄に対立しないほうがいい。中国は高市首相への非難発言を否定している→ 高市氏巡る報道「状況符合せず」 米中首脳会談で中国外務省:時事ドットコム

プロ野球 巨人の阿部慎之助監督逮捕 その後釈放 18歳の長女に暴行した疑い | NHKニュース  →巨人の阿部監督が逮捕された。姉妹のけんかを止めに入る際、長女を押し倒して暴行、長女が児童相談所に連絡した。すぐに釈放されたが、逮捕されるほどのことかという気がする。監督職はどうなるのだろうか。きょうから始まる交流戦では、コーチが監督代行を務める。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎鈴木敏文(セブン&アイ・ホールディングス元会長、2026年5月18日死去、93歳)

「セブンイレブンを作った時も、銀行を始めた時も、業界内やマスコミから総スカンを食った。うまくいくなんて誰も言わなかった。でも私はそれをやってきた」 「セブンイレブンの創業以来、他社のものまねは絶対にしなかった」 「過去のデータは百害あって一利なし」 「おいしいものほど、顧客は飽きる」 「売り手には不便なことが、実はお客様には便利なことなのだ」 「お客様の立場で見れば、需要は必ず伸びる」 「人は挑戦しない限り、成功はあり得ない」 「心理で動く顧客に、理屈で接してはならない」 「変化はチャンスになる。工夫次第で成長は可能だ」 「ニーズに応えていけば飽和はあり得ない」 「今の日本のどこが多様化なのか。私が商売を通じて見る日本人の姿は、明らかに画一化の時代だ」 「流れに乗って、変化を先取りしていくことが重要だ」 「顧客に本当に満足してもらおうと思ったら、競争相手に勝つのでなく、既存の常識を打ち破らなければならない。なぜなら、真の競争相手は同業他社ではなく、絶えず変化する顧客ニーズだから」 「変化はリスクを伴うが、今の時代、変化しないほうが、リスクが高い」

*** 今週の教養講座(高市現象の研究②)

【2】中北浩爾・中央大学教授 「日本政治、多極型多党制へ」 動画→「高市現象と日本の政治」(2) 中北浩爾・中央大学教授 2026.4.8

日本政治は現在、ポスト55年体制の歴史的変容の中にある。1994年の政治改革は、政権交代可能な民主主義と、首相・官邸主導の政治を目指したものだった。衆議院に導入された小選挙区比例代表並立制は、二大政党制ではなく、多党制を前提にしながらも、選挙協力を通じて2つのブロックへ収れんする制度である。

この制度に最も適応したのが自民党と公明党の連立だった。自民党は地域組織や業界団体、公明党は創価学会を基盤とする固定票を持ち、候補者調整と相互推薦によって議席を最大化してきた。これに対抗して民主党も社民党、国民新党などとの協力を進め、2009年前後には2ブロック型の多党制に最も近づいた。しかし民主党政権の分裂や野党共闘の挫折により、非自民ブロックは解体していった。

その一方で、自公ブロックも2025年に解体した。維新が公明党の代わりになり得るかといえば、組織票の交換という点で自公ほどの安定性は見込みにくい。したがって、日本政治は1ブロック優位の多党制から、多極型の多党制へ踏み込んでいる。

この変化を強めているのがSNSの影響力である。近年、石丸伸二氏、国民民主党、斎藤元彦氏、参政党などに見られるように、SNSは選挙で大きな動員力を持つようになった。今回の自民党圧勝も、自民党そのものの復活というより、高市総理への評価が保守層や無党派層を引き寄せた結果と見るべきである。高市総理は、女性、非世襲、庶民的な言葉や振る舞いなど、アウトサイダー性を持ち、それがポピュリズム的な人気につながった。

背景には、組織政党の弱体化がある。労働組合、業界団体、創価学会、共産党など、従来の組織票は高齢化や社会の個人化によって低下している。政党が市民社会から切り離され、国会議員中心の集団に見えるようになると、有権者は既得権集団として政党を見やすくなる。そこにSNSを通じた反エリート主義、すなわちポピュリズムが広がっている。

高市政権の勝利は、組織力に支えられた安倍政権型というより、無党派人気に支えられた小泉政権型に近い。ただし、その支持は安定的とは限らない。今回の選挙は、自民党の勝利であると同時に、野党、とりわけ中道改革連合や国民民主党の敗北でもあった。今後の日本政治を考えるには、歴史感覚と現場感覚の双方が重要である。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年5月27日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(26日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう

プロ野球 巨人の阿部慎之助 監督辞任で会見 娘に暴行の疑いで逮捕 娘が生成AI使い児童相談所に連絡 | NHKニュース  →長女への暴行容疑で逮捕された巨人の阿部監督が辞任した。人気商売なので、そのまま続けることはできないとはいえ、どこにでもありそうな家族内のけんかで辞めてしまうのは、違和感も拭えない。きっかけは、長女が「どうしたらいいか」とチャットGPTに質問し、児童相談所への相談をアドバイスされたことだ。長女は逮捕に驚き、反省し、仲直りしたと手紙で明らかにした。いろいろな意味で現代的で、さまざまな視点で長く議論されそうな出来事だ。試合はソフトバンクに負けた→【プロ野球結果】阿部監督辞任の巨人 ソフトバンクに敗れ5連敗 | NHKニュース | プロ野球、野球

ローマ教皇 就任後初の重要文書 AIの軍事利用に懸念示す | NHKニュース →ローマ教皇がAIの軍事利用に懸念を示す重要文書を発表した。昨年5月に就任して以来、重要文書は初めて。AIについて「武装解除されなければならない。強い表現だと承知しているが、人類の進むべき道を示すことのできることばだ」と述べた。人類はどこまで賢いか、宗教はどこまで力があるか。

岡本多緒さん「現実感ない」 日本人初のカンヌ女優賞:時事ドットコム →カンヌ女優賞を受賞した岡本多緒さんが帰国し、「全く現実感が湧かない。一生湧くことがないのでは」と語った。濱口監督については「せりふがずばぬけて素晴らしい。撮影中は本当に役者を見てくださっていた」と感謝した。「りくりゅうペア」に次いで、知る人ぞ知る存在から一躍スターになった。

ジャズサックスの巨匠 ソニー・ロリンズ氏死去 | NHKニュース  →日本でも人気があったジャズサックスのソニー・ロリンズが亡くなった。95歳。ジャズミュージシャンとしては異例の長命だ。長尺のソロや、リズミカルで力強い演奏が特徴で、代表曲の「セント・トーマス」は多くのミュージシャンにカバーされた。2001年と2006年にはアメリカ音楽界で最も権威があるグラミー賞を受賞した。

世界に誇るレストラン10選 気仙沼のフカヒレ料理など―ジャパンタイムズ:時事ドットコム →ジャパンタイムズが、世界に誇ることができる地方のレストラン10店を発表した。炉ばたとワインK(北海道釧路市)▽フカヒレの「気仙沼クロモリ」(宮城県気仙沼市)▽ウキタム(山形県南陽市)▽レストラン オオツ(水戸市)▽ツキヒ(福井県越前市)▽ノウトリ(山梨県忍野村)▽マノ(長野県軽井沢町)▽る川(滋賀県高島市)▽セン(奈良県天川村)▽レストラン プレザージュ(佐賀県唐津市)。メディアが地方を元気にする好企画といえそうだ。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎マルティン・ハイデッカー(独の哲学者。1976年5月26日死去、86歳)

「人はいつか必ず死が訪れることを思い知らなければ、生きていることを実感することもできない」 「人は死から目を背けているうちは、自己の存在に気を遣えない。死というものを自覚できるかどうかが、自分の可能性を見つめて生きる生き方につながる」 「人間は、時間的な存在である」 「良心は、ただただ常に沈黙という形で語る」 「経験を積んだ人は、物事がこうであるということを知っているが、なぜそうであるかということを知らない」 「大きな成果をあげる者は、その成果と同じくらい悩んだり失敗を重ねたり苦労をしている。苦労から目をそらさず、たくさん悩んだ者こそが成功できる」 「偉大に思索する者は、偉大に迷うに違いない」 「小さな悩みを抱えている者は、小さな迷いで終わる。悩みの規模が大きければ大きいほど、迷いの規模も大きくなる」 「単純なものこそ、時代を経ても変化することなく存在し続けている」

*** 今週の教養講座(高市現象の研究③)

【3】伊藤昌亮・成蹊大教授 「対立軸が新旧・上下に変化」 動画→「高市現象と日本の政治」(3) 伊藤昌亮・成蹊大学教授 2026.4.9

高市現象は、単なる政治現象ではなく、社会現象として見る必要がある。背景には、ショート動画、自己啓発、若者世代や現役世代の現実感がある。今回の動きは突然起きたものではなく、2024年の東京都知事選、衆院選、兵庫県知事選、自民党総裁選、参院選など、一連の選挙を通じて積み重なってきたものである。

特に重要なのは、SNSの中心がテキストから動画へ移ったことである。かつてはインフルエンサーがフォロワーに向けて文章を発信する形が中心だった。しかし現在は、30秒から1分程度のショート動画が、アルゴリズムによって次々に流れてくる。そこでは、切り抜き職人が作る動画が大きな役割を果たしている。高市氏の場合も、公式動画より、第三者が作った膨大な切り抜き動画の影響が大きかった。

その動画で消費されたのは、政策よりもキャラクターである。高市氏は、元気で、頑張っていて、打たれ強く、前向きで、時にかわいらしい存在として描かれた。感動的な音楽を背景に、努力、挑戦、後悔しない人生といった自己啓発的な言葉が重ねられた。中には本人の発言かどうか分からないものもあるが、それでも「自分を勇気づけてくれる人」として受け取られた。政治家が政策を語るというより、一人ひとりの生き方を後押しする存在として消費されたのである。

この構図は石丸現象にも見られた。石丸氏の場合はロジカル思考、高市氏の場合はポジティブ思考が強調された。いずれも、低成長の時代に、自分を成長させてくれる言葉を求める人々に響いた。若者だけでなく、非正規雇用や不安定な立場に置かれた中年世代にも、「頑張れ」と言ってくれる存在は重要になっている。

さらに、現在の対立軸は、従来の左右対立だけでは捉えられない。むしろ、新旧対立と上下対立が強まっている。新旧対立では、オールドメディア、古い政治、旧来型の組織に対して、SNS、若者、改革するリーダーが対置される。高市氏は、右派というより「新しい存在」として見られた。一方、中道改革連合は古い男性政治家の連合に見えた面がある。

上下対立も、単なる富裕層と貧困層の対立ではない。現役世代には、税や社会保険料を取られすぎているという感覚がある。外国人問題への反応も、右翼イデオロギーというより、生活不安や負担感から出ている面が強い。したがって、今の政治では、左右対立の軸が見えにくくなり、新旧対立と新しい上下対立が前面に出ている。高市現象は、その変化を象徴する出来事である。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年5月28日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(22~24日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう

「国家情報局」設置法成立 「対外情報庁」など検討加速 政府 | NHKニュース  →国家情報局が夏に設置されることになった。インテリジュンスを強化する組織が必要だといわれれば、「そうかな」と思う。しかし今後、対外情報庁やスパイ防止法が控えている。こうした法律は拡大解釈されて国民の権利を侵害しかねない。歴史が証明していることだ。高市首相はかなり前から、国家権力の強化や国旗損壊罪のような踏み絵的法案に熱心で、危うさがつきまとう。

米中間選挙予備選 注目のテキサス州でトランプ支持候補勝利 | NHKニュース  →米国の中間選挙に向けた共和党の予備選挙で、トランプ支持派が相次いで勝利している。日本から見ると、なぜそこまで支持されるのか不思議でもある。米国有権者の動きは、日本の希望的観測ではなく、冷静に見なければならないだろう。

JAL(日本航空) 客室乗務員の責任者ら2人が飲酒 出発便に遅れ | NHKニュース →日本航空でまた飲酒不祥事が起きた。なぜ子ども向けのような基本的ルールを守れないのだろうか。日本企業はがんじがらめのようなコンプラインス制度をつくったが、人間が追いついていない。自律した社員を育てる教育が必要だろう。再発したら社長や役員の辞職も必要ではないか。

強殺容疑で40代男に逮捕状 夫婦に指示か、中国へ出国―栃木女性殺害・県警:時事ドットコム →栃木県の強盗殺人事件で、指示役の40代の男を割り出し、逮捕状を取った。事件の数日後、中国に出国した。現代の脅威として浮上したトクリュウ犯罪を根絶するには、犯人を逮捕し、事件は割に合わないことを徹底するしかない。

米アンソロピック「ミュトス」1万件のぜい弱性検出と発表 | NHKニュース →常識外れの能力が注目されている新型AIのミュトス。開発したアンソロピック社が、システム解析の依頼を受けたほとんどの企業から合計1万件の脆弱性が見つかったと発表した。各国政府と使い方を協議しているが、暴走させない歯止めを作らないと、人類も先が危うい。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎堀辰雄(小説家。1953年5月28日死去、48歳)

「風立ちぬ、いざ生きめやも」(風が立ったが、生きられはしないなあ=『風立ちぬ』は結核で入院した長野県の療養所での体験をもとにした小説で、そこで婚約者を失うという悲しい経験がもとになっている。宮崎駿監督により映画化され、堀辰雄の名前が再び知られることになった) 「僕はこうしてお前と一緒にならない前から、何処かの淋しい山の中へ、お前みたいな可哀らしい娘と二人きりの生活をしに行くことを夢みていたことがあったのだ」 「幸福の思い出ほど幸福を妨げるものはない」 「おれは人並以上に幸福でもなければ、また不幸でもないようだ」 「昔の記憶が、今の自分の邪魔をする」 「先生の仕事を模倣しないで、その仕事を終わったところから出発する者のみが真の弟子であるだろう」 

*** 今週の教養講座(高市現象の研究④)

【4】朴喆熙・国際文化会館特別顧問、前駐日韓国大使 「東アジアへの影響は」 動画→「高市現象と日本の政治」(4) 朴喆熙・前駐日韓国大使 2026.4.15

高市現象は、自民党の組織的回復というより、高市首相個人の人気に支えられた面が大きい。自民党支持率は3割前後にとどまる一方、高市内閣の支持率は6割を超えており、その差は高市氏への期待である。初の女性首相、非世襲議員、「働いて、働いて、働く」という姿勢、SNS発信が有権者に響いた。

一方で、今回の大勝は野党分裂の結果でもある。立憲民主党と公明党が中道改革連合を結成しても、票は単純に合流しなかった。昨日まで戦っていた政党が急に一緒になっても、現場の支持者はすぐには動かない。自民党が圧倒的に伸びたというより、小選挙区制の下で、野党票が分散したことが議席増につながった。

外交面では、時代の流れは従来型のリベラルに有利ではない。米中対立、ウクライナ戦争、イランとアメリカの緊張、北朝鮮の軍事的脅威、ロシアと北朝鮮の接近など、国際環境は厳しさを増している。平和を願うだけでは対応できず、現実主義を持つ必要がある。こうした環境の中で、55年体制以来の保守対革新、護憲対改憲という対立軸は通用しにくくなっている。

日中関係は、緊張が長引く可能性が高い。中国にとって台湾問題は核心的利益であり、日本側も高市政権の下で対中強硬姿勢を取っても国内的に大きなマイナスにはなりにくい。したがって、双方が簡単に引くことは難しい。ただし、高市政権が長期化するなら、中国も日本とまったく向き合わないわけにはいかない。一定の緊張を保ちながら、落としどころを探る展開になる。

アメリカとの関係では、高市首相は比較的うまく対応している。トランプ氏は強いリーダーを尊重する傾向があり、その点は高市政権にとって有利に働く。投資、防衛協力、安全保障能力の強化などでも、相対的には対応できている。ただし、アメリカに一方的に頼ればよい時代ではない。

そのため、日本と韓国の協力は重要になる。米中対立、北朝鮮、中国、ロシア、イランの連携を考えれば、日韓は国際秩序に適応するため協力せざるを得ない。韓国も日本もアメリカとの同盟関係を持っており、アメリカに背を向ける選択は現実的ではない。アメリカとは緩やかに協力しながら、他の国とも協力する戦略が必要である。

高市政権の安定は、当面の日米・日韓関係にはプラスに働いている。ただし、高市人気が下がれば政局は不安定になる可能性があり、大勝後の慢心には注意が必要である。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年5月29日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(28日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう

在仙台カンボジア名誉領事が無申告 3億7000万円余の申告漏れ | NHKニュース  →「名誉総領事」という聞き慣れない人物の脱税が発覚した。仙台駐在の田井進・カンボジア名誉総領事が、コンサルタント料を申告せず、キックバックもしていた。「名誉総領事は非課税だと思った」と言っており、コンサル会社には節税策があると誘っていた。名誉領事は、大使館や領事館がない地域で、その国の国民の保護・支援、日本と交流する仕事。国内に約200人おり、基本的にボランティアという。

日フィリピン首脳会談 軍事情報包括保護協定の交渉開始で合意 | NHKニュース  →高市首相とフィリピンのマルコス大統領が会談し、高市首相は「二国間関係を包括的・戦略的パートナーシップに格上げできることをとてもうれしく思う」と述べた。高市政権は対中包囲網として重視しているが、東南アジア各国はそれぞれ中国と独自の関係もある。複眼的な視点が重要だ。

ソニー生命元社員、顧客から1億円超授受 投資持ち掛けなどで:時事ドットコム →不正が浮上していたソニー生命で、4人の元営業社員が顧客14人に投資を持ち掛けるなどして計約1億2000万円を不正に受け取っていたことがわかった。プルデンシャル生命同様、独立した営業社員が不正を働いていた。ソニーの名が泣いている。

広陵高野球部での暴行認定 前監督の不適切発言も―第三者委:時事ドットコム →広陵高校の第三者委員会は部員の暴行を認定した。中井前監督の「高野連への連絡は不利になる」という発言も不適切だとした。学内で中井氏の影響力は大きく、今も参与職にある。報告を受けて、どうなるか。強豪校もしばらくは振るわないだろう。永久に沈んでしまうか。

ラグビー・ホンダ所属選手を逮捕 豪国籍、妻への傷害容疑―三重県警:時事ドットコム →ホンダ所属のラグビー選手が妻への傷害容疑で逮捕された。長女に暴行した阿部巨人監督の辞任があったばかりで、生々しい。オーストラリア国籍のホゼア・トレバー・トゥオロ・チャールズ容疑者で、馬乗りになって両腕をつかみ、打撲などのけがをさせたという。本人は否認している。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎ヴォルテール(仏の哲学者。1778年5月30日死去、83歳)

「私はあなたの意見には反対だ。だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」 「人間は言うことがなくなると、必ず悪口を言う」 「大衆とは、モノを書かない批評家である」 「悪い政府の元で正しくあることは危険だ」 「歴史とは、犯罪と災難の記録にすぎない」 「神は現世における心配事の償いとして、希望と睡眠を与えた」 「常識とは、それほど一般的なものではない」 「人を判断するには、どのように答えるかより、どのような問いをするかを見よ」 「男がありとあらゆる理屈を並べても、女の一滴の涙にはかなわない」 「寛容の精神は我々すべてを兄弟にする。不寛容の精神は人間を野獣にする」 「労働はわれわれを三つの大きな悪から逃れしめる。退屈、悪徳、欲求から」 「医術は患者を慰めることにあり、自然が病気を治すのだ」 「真実を愛せ。ただし過ちは許せ」 「教育はさまざまな能力を伸ばしはするが、創り出すことはない」

*** 今週の教養講座(高市現象の研究⑤)

【5】ヴァレリー・ニケ仏戦略研究財団(FRS)インド太平洋コンソーシアムディレクター 「欧州と連携し発言力確保を」 動画→「高市現象と日本の政治」(5) ヴァレリー・ニケ 仏戦略研究財団(FRS)インド太平洋研究コンソーシアムディレクター、同日本プログラムディレクター 2026.4.17

高市現象は、単なる国内政治の変化ではなく、日本を取り巻く国際環境の悪化と結びつけて理解する必要がある。現在の日本は、複数の危機が同時に重なり合う状況に置かれている。イランをめぐる戦争は、日本から遠い中東の出来事に見えるが、日本の原油輸入の約9割がホルムズ海峡を通る以上、エネルギー安全保障に直結する。中東の不安定は、価格高騰、保険料上昇、不確実性の増大を通じて、日本の行動余地を狭める。

次の課題はアメリカである。日米同盟は日本の安全保障の基盤であり、代替は存在しない。しかし、アメリカが欧州、中東、インド太平洋で同時に対応を求められる中、常に十分な注意力と軍事資源を日本周辺に割けるとは限らない。さらに、日本がアメリカの判断や誤算によって危機に巻き込まれるリスクもある。日本は、同盟を維持しながらも、その論理に完全に飲み込まれず、より能動的に同盟を管理する必要がある。

第3の課題は中国である。中国はもはや単なる重要な隣国や経済相手ではなく、軍事的圧力、経済的レバレッジ、政治的影響力を組み合わせる戦略的問題として見られるようになっている。尖閣周辺での活動、ロシアとの共同軍事行動、情報戦や世論への働きかけなど、中国の対日圧力は多層的である。目的は、日本がアメリカや有志国と連携を深めることを思いとどまらせることにある。

ただし、日本は中国と完全に切り離すことはできない。中国は依然として日本の重要な貿易相手であり、多くの企業にとって生産拠点であり市場でもある。したがって必要なのは全面的なデカップリングではなく、依存が戦略的な脆弱性になる分野を見極め、東南アジア、インド、国内生産などへ分散することである。

台湾問題は、この緊張が最も明確に表れる領域である。台湾有事は、日本の南西諸島、米軍基地、海運、半導体、金融市場に直結する。したがって高市首相が台湾危機を存立危機事態に関わる問題として述べたことは、過剰なレトリックではなく、戦略的現実の認識と見るべきである。ただし日本は、抑止を強めながらも、制御不能なエスカレーションを避け、外交の余地を残さなければならない。

今後の日本外交を規定するのは、抑止、強靱性、多角化である。アメリカとの同盟を基盤にしつつ、欧州、豪州、インドなどとの連携を広げる。問われるのは、同盟を弱めず、地域を不安定化させずに、どこまで戦略的自立を高められるかである。