2026年6月29~7月3日(教養講座:アメリカ建国250周年と未来)

~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年6月29日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(26~28日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎週明け国会、正常化焦点 カギ握る予算委・党首討論―維新は会期延長要求へ:時事ドットコム →国論を二分する政策に突き進む高市政権だが、与党が二分しつつある。7月17日の国会会期末向けて、皇室典範、議員定数、副首都、消費減税、中傷動画と難問が山積み。高市首相・維新ラインと、麻生氏を中心に茂木・岸田・国民民主党のラインができつつある。麻生ラインは、維新と組んで強引さが目立つ首相の政権運営に対し批判的。麻生氏は皇室典範を最優先しており、それまでは静観の構えだが、その後は茂木首相実現に向けて動く可能性がある。野党も中傷動画と定数削減で硬化している。うまく整理できないと、高市首相が暴発して大技を繰り出す可能性もある。会期末に向けて「一寸先は闇状態」になりそうだ。
◎日本代表 対 スウェーデンは引き分け 次は30日にブラジル戦 2位で決勝トーナメントへ | NHKニュース →サッカー日本代表はスウェーデンと引き分けた。30日午前2時からブラジルと戦う。けが人続出や長い移動距離で大変だが、優勝を目指す限り、どこかで戦う可能性のある相手。森保ジャパンの真価が問われる。ブラジルは過去優勝5回。青森・三沢高校が松山商業に挑むイメージ・・・ちょっと古いか →日本とブラジルに移動の差 長距離と短距離の一戦―W杯サッカー:時事ドットコム
◎山梨で震度6弱 高市首相「被害状況把握と救命救助などに総力」 | NHKニュース 台風8・7号、相次ぎ関東接近 いずれも温帯低気圧に―気象庁:時事ドットコム 青森、岩手で震度5弱 津波なし:時事ドットコム →週末は災害に見舞われた。山梨を震源とする震度6弱の地震があり、ダブル台風も来た。日曜未明にはまた青森で地震があった。大きな被害がなかったのは幸いだ。ベネズエラの地震では少なくとも1400人超が亡くなっている→ ベネズエラ、地震の死者1400人超 72時間経過も捜索続く:時事ドットコム
◎歌手で俳優の美輪明宏さん死去「ヨイトマケの唄」など知られる | NHKニュース 作家の庄司薫さん死去 ベストセラー「赤頭巾ちゃん気をつけて」:朝日新聞 →美輪明宏と庄司薫が亡くなった。異彩を放った2人だが、対照的な生き方だった。美輪は長崎で被爆し、日雇い工だった友人の母を回顧する「ヨイトマケの唄」で著名。人生相談など様々な分野で長く活躍した。庄司は、当時、東大入学者1位の都立日比谷高校を卒業し、東大に進学。学生運動を背景にした都会の若者の心情をつづった「赤頭巾ちゃん気をつけて」で脚光を浴びた。ピアニストの中村紘子と結婚し、バブル期に盛んに不動産投資をしたが、小説は発表せず、公の場に出ることもなかった。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
美輪明宏(歌手、俳優、演出家。2026年6月20日死去、91歳)
「野に咲く花にも役目があります。この世に必要でない人はいません。それに気付くかどうか。それが大事なのです」 「苦労をした人にはそれと同じ量の喜び、ご褒美がくる。楽あれば、苦あり。苦あれば、楽あり」 「不幸な家庭に育った人は強く生きる能力を持つ人。あながち不幸ではない」 「せめて自分ぐらい自分を褒めて認めてあげないと自分が救われない。自分の味方になれるのは自分だけ」 「運が良くなりたければ、微笑んでいれば良い。人に優しくすれば良い。思いやりと優しさで、運は開ける」 「悪口を言われたら柳に風と受け流す。自分が清らかで優しければ、『念返し』で悪い念は相手に戻る」 「言葉が足りないのは本を読まないから。美しい言葉に触れ素敵な表現を自分の中にストックする。意思の疎通は言葉ありき」 「清き川に清き水は流れる。心が美しい人と付き合いたければ、まず自分の心を磨くこと」 「いつも素敵な音楽を聴いて、素敵な本を読んで、素敵な人と出会って、常にいいものに触れていると、その人が歩いているだけで自然にものすごいオーラが放たれているものです」 「遊びや文化は人生に欠かせない必要なムダ。芸術に親しむゆとりを持てば、心が解き放たれて楽になる。みんながブランドになる可能性をもっているのよ。自分がブランドになれば、ブランドものなんて邪魔でしょうがない」
*** 今週の教養講座(アメリカ建国250周年と未来①)
7月4日、アメリカは建国250周年を迎えます。イギリスからの独立宣言を採択した日で、全米各地で各種イベントが開かれます。トランプ大統領に率いられた米国の行方は、世界秩序に波及します。高市首相はトランプ大統領と極めて近い立場にいるため、同盟関係にある日本は大きな影響を受けることになります。アメリカの未来について、5つの視点から考えてみます。
第1回 アメリカは衰退していくのか
近年のアメリカを見ると、政治的な対立の激化、格差の拡大、財政赤字の膨張、治安問題など不安材料は少なくない。トランプ大統領の特異な個性とも関係している。一方で、経済力や技術力、軍事力などを見ると、依然として世界最大の影響力を持つ国であることも事実だ。アメリカは衰退していくのだろうか。
まず、経済面。アメリカの国内総生産(GDP)は世界最大規模であり、存在感は圧倒的である。金融市場は世界の資金を集め、ドルは中心通貨として使われている。時価総額上位企業を見ると、アメリカ企業が多数を占めている。経済力ではなお世界の中心に位置しているといえる。
次に技術力。生成AIブームの主役はアメリカ企業である。AI、半導体、宇宙開発、バイオテクノロジーなど、未来を左右する分野で先頭を走っている。これまで世界中から優秀な研究者や技術者が集め、新しい産業を生み出す力は抜きん出ている。挑戦を評価する文化や起業家精神が、国の活力を支えている。
軍事力では、世界最大の軍事予算を持ち、各地に軍事拠点を展開している。総合的な軍事力では依然として他国を大きく引き離している。日本を含む同盟国の安全保障も大きく依存している。
深刻な課題も抱えている。最大は社会の分断である。共和党と民主党の対立は激しく、選挙結果さえ受け入れない状況も生まれた。都市部と地方、高所得者と低所得者、白人と非白人など、さまざまな対立が複雑に絡み合っている。財政赤字や政府債務の増加も懸念材料で、重い影を落としている。教育格差や医療格差も大きく、多くの社会問題を抱えている。
アメリカは「世界最強でありながら、多くの内部矛盾を抱える国」といえる。大まかにいえば、かなりは必然的な流れであり、かなりはトランプ大統領の強引な政治運営にある。格差を拡大するような大統領の言動がまかりとおっているのは異常だ。次の指導者がどんな人でも、言動は今よりましになるだろう。
歴史を振り返れば、南北戦争や世界恐慌、ベトナム戦争など何度も危機に直面しながら、アメリカは再生してきた。建国250周年を迎えた今、問われているのは、危機を克服し、再び活力を取り戻せるかどうかだろう。国民の選択、指導者の振る舞いに大きく依存する。アメリカの未来は、同時に世界の未来でもあり、日本にとっても他人事ではない。他国は注視し、必要な忠告や働きかけをする必要がある。
♦
~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年6月30日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(29日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎【速報中】日本がブラジルに逆転負け 決勝トーナメント1回戦で敗退 佐野海舟が先制点 | NHKニュース →ブラジルの壁は高かった。これで決勝トーナメントは5戦全敗。前半29分、佐野のシュートで先制した。後半11分に同点にされ、6分間のアディショナルタイム5分、ゴール前でボールを奪われて失点した。ブラジルは一瞬のスキを逃さない。選手たちは「力不足」「まだ力の差はある」、森保監督は「力は上がっているが、努力しなければいけない。選手を讃えて欲しい」とコメント。解説の本田圭佑は「選手は言わないけど、くじ運もあった」と悔しがっていた。日本代表のレベルアップとチームワークはだれもが認めるところ。4年後に大輪の花が咲くか。
◎与党、定数削減法案の審議入り強行 野党欠席、国会不正常に:時事ドットコム →野党が結束して29日の審議を拒否した。与党側は譲らない姿勢だが、対決が深まれば、参院で法案を可決できない事態もありうる。衆院で再可決という選択もあるが、どこまで強行できるか。難問山積で、与野党とも問題ごとに利害関係が錯綜している。迷走必至だ。
◎中曽根弘文氏、皇位巡る発言「反省」 「愛子さまの継承あり得ぬ」:時事ドットコム →失言は状況次第で波紋が大きく広がる。中曽根弘文氏が「愛子さまの継承はあり得ない」「(天皇になれば)結婚する人はいない」と発言し、翌日、「不適切だった」と反省した。男系男子に限っている皇室典範を説明したはずみだが、各方面への火種になりそうだ。
◎中国、対日禁輸措置を拡大 リストに20団体追加:時事ドットコム →石橋湛山は戦前、中国に進出する日本政府に対し「米国との対立を深め、戦争に発展する」と早くから警鐘を鳴らし続け、その通りになった。日本は今、中国の脅威に対する抑止力を高める目的で軍備増強に動くが、中国は強く警戒しており、抑止になっていない。習近平政権が日本を「新型軍国主義」と非難するのは本気とみていい。日本人が気づかないうちに日中関係は泥沼に向かっている。湛山のような先見性と危機感が必要だ。
◎近鉄京都線 京都駅で列車が脱線 一部区間 終日運転できず | NHKニュース →近鉄京都駅近くで奈良方面行きの普通列車が脱線した。何かとぶつかったわけではなく、なんとも不思議。復旧には時間がかかりそうで、運転再開のメドはたっていない。地元だけでなく、観光にも影響が出そうだ。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎小倉昌男(ヤマト運輸創業者。2005年6月30日死去、80歳)
「宅急便は一企業の事業ではなく、社会的なインフラになるし、そうしたいと思っていた。私の志だった」 「デメリットのあるところに、ビジネスチャンスがある」 「宅急便はだれもやっていないからこそできた。重要なのは新しい行動を起こそうという意欲を経営者がもつかどうか」 「仕事の価値は、収入の多寡で決まるわけではない」 「宅急便は一生懸命にお客様にサービスしようという精神があったから伸びた。おかげで過疎地の営業所でも1年たつと必ず黒字になる。過疎地ほど荷物が出る」 「リーダーとしての責任を果たすためには、多少の遠回りは覚悟の上で、自分の頭で考えられる部下を育てなければいけない」 「能力主義とは、能力の高い人のみを求め育てることではない。人それぞれ、自分の能力に合った仕事を受け持ち、自分の持っている能力を全部さらけだして、思う存分仕事をやることだ」 「リーダーが考えるべきは、部下に仕事を任せること」 「自分に合った理想の仕事を探すのではなく、目の前にある仕事に惚れることが大事」
*** 今週の教養講座(アメリカ建国250周年と未来②)
第2回 分断国家アメリカの行方
アメリカが抱える最大の課題は「分断」だ。近年は、政治、経済、文化などあらゆる分野で対立が深まり、「1つの国の中に2つのアメリカが存在する」とまで言われている。国内の分断は海外に暴発となって影響する可能性もある。アメリカは分断を乗り越えることができるのだろうか。
最も目立つのは政治的な分断だ。共和党と民主党の対立は年々激しくなり、相手を「国家を危うくする存在」とみなす傾向が強まっている。かつては党派を超えた妥協や協力も見られたが、現在は対立が常態化している。背景には経済格差の拡大がある。グローバル化やIT化によって大都市や先端産業は大きな利益を得た。一方で、製造業の衰退に苦しむ地方や中西部の地域では、雇用の減少や所得の停滞が続いた。豊かになる人と取り残される人の差が広がっている。
文化や価値観の対立も深刻である。移民問題、銃規制、中絶、LGBTQをめぐる議論などでは、国民の意見が大きく分かれている。都市部では多様性や個人の権利を重視する考え方が支持される一方、地方では伝統的な価値観や宗教観を重視する人が多い。
短期の政治状況と長期の構造問題がある。短期の象徴は、トランプ大統領だ。自己愛が強く、他人への批判や攻撃を躊躇しない。2期目で顕著になっている。統治ノウハウに習熟し、政権をイエスマンで固めた。任期は今期で終わるが、同様なことを別の政治家がすぐにできるとは思えない。バンス副大統領ら似た個性の政治家が就任しても、実況力やスタイルは変わるだろう。単純に今のアメリカが続くと考える必要はないように思える。
長期的には、経済構造の改革による格差縮小が焦点だろう。産業の再編、所得分配政策の強化が不可欠だ。包摂的な市民生活優先の政策を実行しているマムダニ・ニューヨーク市長の取り組みがどこまで支持されるかも注目される。SNSの普及も分断を深めている。誤情報や陰謀論が広がる土壌も生まれ、社会の信頼を損なう要因となっている。規制強化やリテラシー向上の行方も注目される。
アメリカは分断の歴史でもあった。独立直後から連邦政府のあり方をめぐる対立があり、19世紀には奴隷制をめぐって南北戦争が起きた。1960年代には人種差別に反対する公民権運動が社会を揺るがした。アメリカは常に対立や葛藤を抱え、それを乗り越えて発展してきた国でもある。
異なる意見を持つ人々が共存できる仕組みが問われる。民主主義とは本来、多様な意見を認めながら合意を形成していく制度である。分断を乗り越えられれば、新たな活力を得て次の時代へ進むことができるだろう。対立がさらに激化すれば、国としての結束は弱まり、世界における影響力の低下は免れない。
♦
~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年7月1日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(30日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎高市内閣、皇室典範改正案を臨時閣議で決定 今国会での成立めざす :朝日新聞 →皇室典範の改正案を閣議決定した。維新が反対していたが、麻生氏との協議で折れた。与党は強行可決しそうだが、野党には「だまし討ちの男系男子案だ」と強い反対がある。天皇が懸念した「国民の理解」は不十分だろう。皇室典範を最優先する麻生氏は、可決されれば高市下ろしに動くかもしれない。
◎【詳しく】国旗損壊罪法案 衆院本会議で可決 全野党が欠席 | NHKニュース 衆議院政治改革特別委員会 定数削減法案で質疑 野党は引き続き欠席 | NHKニュース →国論を二分する法案が、野党不在でスイスイと進んでいる。独裁的で前代未聞の異常事態だ。きょう衆院議長と野党が協議するが、打開の可能性は低そう。当面の止め役は、与野党伯仲で良識の府とされる参議院。本来なら世論がもっと怒ってもいいが、野党の数が少なく、迫力を欠く。代わって、市場が円安で抗議しているようだ。
◎円安進行、一時162円台半ば 39年半ぶり水準―東京市場:時事ドットコム →162円台半ばは、1986年12月以来。39年半ぶりというから驚きだ。国力の反映であり、介入してもほとんど意味がない。「責任ある積極財政」という名の放漫財政で、市場の疑念は高まっている。さらなる円安の可能性は高い。
◎サッカーW杯 熱戦一夜明け 日本代表ゆかりの人やファンからねぎらう声 | NHKニュース →30日はブラジルに敗退した余韻が長く残った。選手ゆかりの土地はどこも涙と感動で揺れた。「ドーハの悲劇」からよくここまで強くなった。当面の焦点は、森保監督の処遇だろう。4年後まで任せて優勝を狙うのか、もう8年と長いので思い切って交代するのか。注目の人事だ。
◎日本航空 “空飛ぶクルマ”研究めぐり補助金を不正受給 | NHKニュース →日本航空でまた不祥事が起きた。空飛ぶクルマなどの研究で国から補助金を受け取ったが、勤務実態を確認できなかったという。3.2億円のうち2.8億円を返還するというから、何もやっていなかったに等しい。再建を請け負った稲盛和夫氏の嘆きが聞こえる。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎明石家さんま(タレント。7月1日は71歳の誕生日)
「優しさ持った人は、それ以上の悲しみを持っている」 「落ち込みやすい体質とは、感謝の足りない姿勢が原因なんや」 「自分だけ大変だと思ってる奴、多すぎるよな」 「神様にはお願いしない」 「生きてるだけで、丸儲け」 「生きるっていうよりも、生かされてると思ったほうが、楽に生きれますよ、人生は」 「努力って皆、普通にするもんや。努力って言葉を努力不足の奴が作りよった。」 「オレが友達にしてあげた1番のこと言うたら、笑わしてあげたことやね」 「高校時代、毎日毎日、何やって笑かそうばっかり考えてた」 「母の顔も覚えてないからね(母親は2歳の時に他界)」 「実力がつくと運も寄ってくる」 「神様に何回も裏切られてきた」 「師匠から収入の明細は見るなと教わりまして。自分の収入をほとんど知らない」 「バラエティに感動の涙は要らんねん!芸人は笑わせて涙流させな!」 「やっぱり色々と失敗してきた人間の方がオモロいね」 「俺たちは、奇跡を生きてんねん」 「何とも思われないよりは、嫌われるほうがマシ、好きに変わる可能性が残っているから」
*** 今週の教養講座(アメリカ建国250周年と未来③)
第3回 アメリカの軍事力と世界秩序の未来
軍事力の観点から見ると、アメリカは依然として世界最強の国家である。むしろ現在の国際秩序は、アメリカの軍事力を土台として維持されていると言っても過言ではない。懸念されるのは、去年まで「戦争はしない」と言っていたトランプ大統領の変身だ。秋の中間選挙が終われば、世論を気にする必要もなくなり、けん制する力が働きにくいことだ。軍事力が漂流し、世界が無法地帯になりかねない。
アメリカ軍の特徴は、強力な軍隊に加え、「世界規模で戦力を展開できる唯一の国家」である点にある。中国やロシアも大規模な軍事力を保有しているが、世界各地に基地を持ち、必要な時に兵力を迅速に投入できる能力ではアメリカに及ばない。ヨーロッパではNATO、中東では湾岸諸国、アジアでは日本や韓国、オーストラリアとの同盟網が存在する。こうした同盟国との連携こそが、アメリカ軍事力の真の強みである。
海軍力も圧倒的である。複数の空母を常時運用し、世界の主要海域に展開している。世界貿易の大半は海上輸送によって支えられているが、その安全を事実上保障しているのはアメリカ海軍である。日本が中東から石油を輸入できるのも、太平洋やインド洋の航路が安定しているからであり、背後にはアメリカの存在がある。
しかし、アメリカの軍事的優位は以前ほど絶対的ではなくなっている。最大の挑戦者は中国である。中国は急速な軍拡を進め、海軍艦艇数ではすでにアメリカを上回ったとも言われる。特に台湾周辺や南シナ海では、中国が地域的な軍事優位を確立しようとしている。現在は中国との競争を前提に戦略を考えなければならなくなった。
ロシアも依然として重要な軍事大国である。ウクライナ戦争によって軍の弱点が露呈した一方、世界最大級の核戦力を維持している。さらに北朝鮮もミサイル技術や無人機技術を発展させており、アメリカは複数の脅威に同時に対応しなければならない時代を迎えている。
技術力の比重が高まっているのも最近の特徴だ。AI、無人機、ドローン、サイバー戦、宇宙空間の利用など、新しい戦争の形が急速に発展している。第二次世界大戦が戦車と航空機の時代だったとすれば、21世紀後半はAIとデータの時代になるだろう。この分野では現在もアメリカが優位に立っているが、中国も国家を挙げて追い上げている。
世界秩序との関係で見ると、最も重要なのは「アメリカが世界に関与し続ける意思を持つか」である。アメリカ軍が存在するからこそ、同盟国は安心し、国際貿易も維持されている。もしアメリカが内向きになり、海外への関与を縮小すれば、各地域で勢力争いが激化する可能性が高い。東アジアでは中国、欧州ではロシア、中東では地域大国がより大きな影響力を持つだろう。
当面はトランプ大統領の動向が最大の焦点だ。当初は経営者出身らしく平和志向だったが、25年以降は、イランの核施設攻撃、ベネズエラの大統領拘束、イラン攻撃など「力の行使」に傾斜している。しっかりした戦略はなく、場当たり的だから恐ろしい。2026年秋までは中間選挙があるので世論にも配慮したが、中間選挙後の任期は2年以上ある。政権や共和党に歯止め役になる人物はいない。中国やロシアなど大国の指導者とは友好的なムードで接しているが、今後何に関心を抱くのか。最大のリスク要因だ。
♦
~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年7月2日号(転送禁止)~~~
【お知らせ広告】 「江戸歩き案内人」(元朝日新聞記者の作家黒田涼さん)の歴史散策に参加しませんか? 大河ドラマゆかりの地、都内の軍遺跡、足腰が弱くても楽々コースなど多彩なメニュー。初回は当メルマガ購読者特典で1500円引き。「長谷川塾メルマガで見た」と明記を。散策スケジュール一覧・お申込みはこちら→散策はエンタテインメントだ! 黒田涼の歴史散策案内スケジュール|歩いて、探して、歴史を発掘する黒田涼
***デイ・ウォッチ(1日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎皇室典範改正案 与野党が協議へ 与党は定数削減法案成立も図る | NHKニュース →異常事態の国会を打開するため、衆院議長が乗り出した。焦点は法案の優先順位で、衆院議長は麻生氏がこだわる皇室典範の審議優先を求め、与野党で協議する。維新は議員定数・副首都法案の成立を強く求めている。どの法案も問題含みで、すべての成立は困難とみられる。最終的にはインドから戻った高市総裁の決断に委ねられそうだ。激動の予感。
◎高市首相 インドに向け出発 経済安全保障など協力進展目指す | NHKニュース →高市首相がインド訪問に出発した。内政・国会より、外交が好きなようだ。中傷動画問題の国会審議に及び腰と自民党内でも言われているが、「これまで通り、国会の要請があれば出ます」と笑顔で語った。このあたりの振る舞いは、政治家特有で常人の理解を超える。週刊文春電子版の発売日だったが、中傷動画問題の記事はなかった。ネタ切れか、打ち止めか、仕込み中か。
◎トランプ氏、暗号資産で2300億円の収入…普及促進に前向きな自身の政策通じ巨額収入か : 読売新聞 →トランプ大統領はビジネスの一環で大統領になったのではないか。暗号資産の規制緩和をし、自分も2300億円の収入を得ていた。どんな問題でも投稿や発言がころころ変わるが、金融市場の変動で利益を得ていたという見方もある。本人は悪いと思っていないのではないか。
◎中部電、不正隠しか 調査開始後にデータ上書き―浜岡原発地震動問題・規制委:時事ドットコム 山中規制委員長「倫理観の喪失」 中部電に不満あらわ:時事ドットコム →中部電力の不正がまた明らかになった。調査開始後にもデータを書き換えていた。山中規制委員長は「倫理観の喪失。許しがたい」と口を極めて批判した。電力会社の視線は恐ろしく内向きで、社会常識を欠いている。
◎「路線価」全国平均 過去最大の上昇率 観光地で大幅上昇目立つ | NHKニュース →路線価が発表された。5年連続で上昇し、上昇率2.9%は、2010年代以降で最大となった。都道府県別では36都道府県で去年を上回り、上昇率が最も高かったのは、東京都9.4%、沖縄県6.6%、大阪府5.1%。観光地の上昇も目立った。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎チャールズ・ルイス・ケーディス(GHQ民政局次長。1946年7月2日、新憲法の基本原則を決定)
「憲法9条の戦争放棄は私が書きました」 「9条の目的は、日本を永久に非武装にしておくことでした」 「(「マッカーサーノート」と呼ばれる憲法草案の指示には)自国の安全保障のためでも戦争を放棄するとありました。私は道理に合わないと思いました。すべての国は自己保存のための固有の権利をもっているからです。だからその部分を削除しました」 「日本政府から戦争放棄を憲法前文に盛り込んだらどうかとの提案もありました。しかし、GHQ拒否しました。天皇への敬意もあって、第1条は象徴天皇としての地位としました。第1条と第9条は一体であり、不可分だった」 「天皇を国の象徴とか国民統合の象徴とする表現は、私たちがふっと考えて作り出したものです」 「アメリカ政府としてはすぐに日本に憲法を改正してほしかったが、むずかしかった。私も日本はとっくに改憲をすべきだったと思う」 「米上院を含め戦勝諸国には天皇を東京裁判で裁くべきだとの意見が強かったが、マッカーサー元帥は天皇家(ダイナスティー)は保持されるべきだと判断していた」
*** 今週の教養講座(アメリカ建国250周年と未来④)
第4回 AI・IT革命はアメリカを再び強くするか
アメリカがいま、世界に影響を与えているのが、AI(人工知能)とIT革命である。18世紀の独立、19世紀の工業化、20世紀の大量生産と情報化に続き、21世紀はAIが社会を大きく変える時代になるといわれている。AI・IT革命はアメリカを再び強くするのだろうか。
注目すべきは、世界的なIT企業の多くはアメリカで生まれていることである。インターネット、スマートフォン、クラウドコンピューティング、SNSなど、現代社会を支える技術の多くはアメリカ発である。近年の生成AIブームでも、主要な技術開発やサービス提供の中心はアメリカ企業であり、世界中の人々がその影響を受けている。
強さの背景には、大学、企業、投資家が連携する独特の仕組みがある。大学で生まれた研究成果がベンチャー企業によって事業化され、それを投資家が支援する。成功すれば世界市場に広がり、さらに新たな研究や投資を生み出す。この循環が、アメリカの技術革新を支えてきた。失敗を恐れず挑戦する文化も大きな強みである。
AI革命は経済面でも大きな可能性を持っている。企業は業務の効率化を進め、生産性を高めることができる。医療分野では診断支援や創薬、教育分野では個別学習、製造業では自動化が進むだろう。人間が担っていた多くの作業をAIが補完することで、新しい産業や雇用も生まれると期待されている。
一方で、課題も少なくない。高性能になりすぎて人類の脅威になる可能性が懸念され、規制の動きがある。格差の拡大も大きな問題である。AIを開発し活用できる企業や人材には巨額の利益が集まる一方、単純作業を中心とする職種は仕事を失う可能性がある。これまで以上に「持つ者」と「持たざる者」の差が広がる恐れがある。
情報の信頼性もある。生成AIは便利な一方で、誤った情報や偽画像、偽動画を簡単に作り出すことができる。SNSによる発信で、選挙や世論形成に悪影響を与える危険性も指摘されている。民主主義の基盤である「事実の共有」が揺らげば、信頼が溶解して社会が空洞化し、人々は漂流しかねない。
中国との技術競争も激しさを増している。20世紀の冷戦では軍事力が中心だったが、21世紀はAIや半導体が国家競争の最前線となっている。アメリカは依然として優位に立っているものの、中国も巨額の投資を行い、急速に力をつけている。AI競争の結果は、経済だけでなく国際政治や安全保障にも大きな影響を与えるだろう。
アメリカは鉄道、自動車、航空機、コンピューターなど、歴史上の主要な技術革新を通じて国力を高めてきた。AI革命もその延長線上にある。しかし、技術そのものが国を強くするのではない。技術を社会全体の利益につなげられるかどうかが重要である。自由なアメリカは技術の社会実装を主導してきた国でもある。その成否は、技術力を使いこなすソフトパワー=社会の知恵にもかかっている。トランプ大統領はアメリカのソフトパワーを破壊しているようにも見える。
♦
~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年7月3日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(2日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎自民 “皇室典範の優先審議を” 中道 “定数削減など撤回を” | NHKニュース →国会終盤に向けて与野党の協議が緊迫している。自民は皇室典範の優先審議を求め、中道はその前提として定数削減法案などの撤回を求めた。これまでも書いてきたが、この選択は、高市首相が麻生氏・自民党本流と維新のどちらを選ぶかを意味する。ここに来て、皇室典範改正案の評判が悪い。「隠れた男系男子案だ」「養子はおかしい」「だまし討ち手続きだ」と散々で、国民の理解にほど遠い。
◎日印首脳会談 戦略的協力関係深めることで合意 2兆円投資も | NHKニュース →日印首脳会談には日本企業の多数の経営者も同行した。130件の企業間協力文書を結び、2兆円規模の投資が決まった。経済が前面に出ているが、高市首相の本音は対中包囲網を作ることだろう。インドは中国と国境紛争を抱えている。しかし、対立一辺倒というわけでもない。日本経済にとって中国は不可欠。高市首相は対中緊張緩和を模索し、もっと柔軟な外交を展開すべきだろう。
◎サッカー森保監督が会見「未来に必ず世界一とれる」 去就は明言せず :朝日新聞 →サッカー日本代表が帰国し、森保監督が会見をした。「未来は必ず世界一をとれる日がくる。戦いの中で感じることができた」と話した。今後については明言しなかったが、サッカー協会は契約期間1年で打診しているという情報がある。本田圭佑さんが監督への意欲をXに投稿した。本田はやっぱりスケールが違う。
◎ロシア損失、ウクライナの8倍 無人機で死傷者急増―米シンクタンク:時事ドットコム →ウクライナが無人機でロシアに攻勢をかけている。ロシアの人的被害はウクライナの8倍という推計を米国のシンクタンクが発表した。背景にはロシア軍の連携不足や米スペースX社のスターリンクへのアクセス制限があるという。プーチン大統領の姿勢が変化し、和平交渉に進むか。一方、ロシアの攻撃も続く→ ウクライナ政府 ロシア軍の攻撃 被害の深刻さを各国大使に訴え | NHKニュース
◎2025年度の税収 84兆円台 6年連続で過去最高の見通し | NHKニュース →2025年度の税収が6年連続で過去最高の見通しとなった。賃金の増加や好調な企業業績を背景に所得税や法人税が伸びた。財政運営に余裕が生まれるが、借金総額は大きく、返済に充てるのがスジ。インフレの結果という面もある。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎アーネスト・ヘミングウェイ(米の小説家。1961年7月2日死去、61歳)
「毎日が新しい日なんだ」 「何と多くの人が財布の中身を考え、他人の思惑を考え、家庭を考え、つまらない人生に甘んじてしまうことか」 「心の底からやりたいと思わないのなら、やめておけ」 「人生について書きたいなら、まず生きなくてはならない」 「これをやるために俺は生まれてきたんだ、と思えることだけを考えていればよい」 「だれかを信頼できるかを試すのに一番良い方法は、彼らを信頼してみることだ」 「宗教は人間の心をしびれさせる阿片である。音楽もそうである。経済学も、成功も、酒はもちろん、ラジオも、賭博も、野心も優れた人の阿片である。だが最高の阿片はパンである。そのために人間は見境もなくわめき立て、奪い合う」 「知的な人々の中に幸福を見いだすことは滅多にない」
*** 今週の教養講座(アメリカ建国250周年と未来⑤)
第5回 多極化時代にソフトパワーをどう使うのか
第二次世界大戦後、アメリカは経済力、軍事力、技術力、文化力を背景に国際社会を主導し、「アメリカの世紀」と呼ばれる時代を築いた。しかし近年、中国やインドなど新興国の台頭によって、「アメリカ後の世界が始まるのではないか」という議論が盛んになっている。
21世紀の画期的なできごとは、中国が急速な経済成長によって世界第2位の経済大国となり、軍事力や技術力も向上させたことだ。インドも人口世界一となり、将来の成長が期待されている。中東やアフリカ、東南アジアなどの新興国も発言力を強めている。
その結果、世界は「多極化」の方向へ向かっているといわれる。1つの超大国が支配するのではなく、複数の大国が影響力を競い合う時代である。国際会議でも、中国やインド、ブラジルなどの意見を無視して物事を決めることは難しくなった。アメリカ一極支配は確かに弱まっている。
しかし、それはアメリカの時代の終焉を意味するのだろうか。現在でもアメリカの影響力は極めて大きい。世界の基軸通貨は依然としてドルであり、世界有数の大学や研究機関もアメリカに集中している。AIや半導体、宇宙開発などの先端技術分野でもアメリカ企業は大きな存在感を持つ。日本やヨーロッパ、オーストラリアなどとの同盟網は、中国やロシアにはない強みである。
注目すべきは、アメリカの文化的影響力である。映画、音楽、スポーツ、インターネットサービスなどを通じて、アメリカ文化は世界中に浸透している。国際社会で人々が共有する価値観やライフスタイルの多くにも、アメリカの影響を見ることができる。この「ソフトパワー」は、軍事力や経済力だけでは測れない大きな資産である。
問題は、アメリカ自身が自らのソフトパワーを意識し、今後も国際秩序を支える意思を持ち続けるかどうかである。トランプ大統領に代表されるように、近年は「アメリカ第一主義」を掲げる政治勢力が支持を集めている。国内問題を優先すべきだという考え方だが、トランプ大統領は軍事力のハードパワーで世界を動かそうとしている。
こうした流れが強まれば、国際社会におけるアメリカの信頼はさらに低下し、役割は縮小する可能性が大きい。自由とソフトパワーに乏しい中国やロシアがその空白を埋めるとは考えにくい。その結果、不安定な多極化が進むのだろうか。日本にとって、この問題は極めて重要である。高市首相は、世界で最右翼のトランプ大統領支持者だが、賢明な立ち位置とは言えない。歴史的な視点を持ちながら、アメリカとどう向き合い、ミドルパワー諸国とどう連携し、どんな世界を望むのかという主体的な意思が問われている。
