2026年7月21~24日(教養講座:AI時代のビジネスの視点㊦)

~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年7月21日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(17~20日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう

スペインが優勝 4大会ぶり2回目 アルゼンチンとの延長制す メッシは無得点 | NHKニュース  →スペインの堅守がメッシを封じ込んだ。この日も無得点に抑え、大会を通じて1失点。アルゼンチンはレッドカードによる退場が響いた。長い大会もこれで終わるが、目立ったのは商業主義。五輪もそうだが、アメリカが絡むとおかしくなる。FIFA会長の報酬は大会収益に連動するという。それでトランプ大統領にゴマをすりまくっていたのか、と納得。日本の優勝にはスパースターが不可欠と感じた。

衆院本会議 今国会の会期 25日まで8日間延長を議決 | NHKニュース  →皇室典範や国旗損壊罪など国論を二分する法案が次々と成立したが、維新がこだわる副首都法案が積み残しとなった。会期を25日まで延長する。維新の希望通りに成立するかどうか。皇室典範は評判が悪く、早くも改正を求める声も出ている。「静謐な火種」だ。

内閣支持率53%に下落 :朝日新聞 厳しさ増す有権者の目 高市内閣支持率が急落 毎日新聞世論調査 | 毎日新聞 →高市内閣の支持率が急落している。朝日は前月比7ポイント減の53%、毎日は同10ポイント減の41%で初めて5割を割った。いずれもあわせて聞いた皇室典範改正の評価が低い。皇室典範にこだわってきた麻生氏は、高市首相を支える理由もなくなった。その他の法案や党内や維新、国民民主など情勢をにらみながら、次の仕掛けを考えるだろう。

米 9日連続イラン攻撃 イラン外相「世界はイランの強さ認識」 | NHKニュース  →米国とイランの戦闘が1週間以上も続いている。イランのアラグチ外相は「世界はイランの強さを認識した」と余裕の口ぶり。米国はベトナムやイラクの教訓から学んでいるのだろうか。オバマ大統領の実績を上回りたいというトランプ大統領のエゴが混乱を招いている。

英労働党のバーナム党首 イギリスの新首相に就任 国王が任命 | NHKニュース | イギリス →日本やイタリアのように首相がよく変わる英国。次の首相にバーナム氏が就任した。マンチェスターの前市長で、労働党の下院議員。人気の秘密は「どこまでも親しみやすい人柄」と『イングランド北部の王』として「地方重視の政治姿勢」だったという。国政で力を発揮できるか。

高校野球 去年全国制覇の沖縄尚学 北北海道の白樺学園 宮崎の日南学園 3校が甲子園出場決定 | NHKニュース  →夏の甲子園に早くも3校が名乗りを上げた。沖縄尚学は2連覇を目指す。センバツ優勝の大阪桐蔭は敗退した。今後、続々と決まるが、酷暑も本格化するので、心配になってくる。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎河合隼雄(心理学者。2007年7月19日死去、79歳)

「視野を広げるために一番大事なものは、道草、ゆとり、遊び」 「ゆっくりと寄り道をすればいい。道草の途中には、きっと小さな幸せが落ちています」 「幸福のために頑張っても幸福は逃げ、目の前の一人の人のために一生懸命になると幸福が訪れる。それが幸福の面白さなんですね」 「自分の持っている器量とか決断力をもっと信じなきゃ。信じて開発しなきゃ」 「今の人は、みんな何かしなければと思い過ぎる」 「『右もダメ、左もダメ』と思ったときには、『いっぺん、ボーっとするか』というくらいのつもりでいると、答えが生まれてくることもあるのではないでしょうか」 「会社という道。家庭という道。それぞれが別の道であることをもっと意識することです」 「愛情とは、関係を断たぬことである」 「人を信用できないのは、つまりは自分を信用していないから」

*** 今週の教養講座(AI時代のビジネス視点⑤)

第5回 デジタル・ツイン経営― 「もう一つの会社」をAI空間につくる時代

「未来を正確に予測できたら」と考えたことがない企業経営者はいないだろう。新工場を建設したら生産性はどう変わるのか。新商品を発売したら売れ行きはどうなるのか。社員を増やしたら利益は伸びるのか。これまでは経験や勘、過去のデータをもとに判断するしかなかった。しかしAI時代には、その意思決定の方法が大きく変わろうとしている。その中心となる考え方が「デジタル・ツイン経営」である。

「デジタル・ツイン(Digital Twin)」とは、現実の世界をデジタル空間に忠実に再現し、その仮想空間でさまざまなシミュレーションを行う技術を指す。「ツイン」とは「双子」という意味であり、現実世界とデジタル世界に2つの会社が存在するようなイメージである。

この考え方はもともと航空宇宙産業で発展した。エンジンや人工衛星の状態をリアルタイムでデジタル空間に再現し、故障を予測したり、最適な運用方法を検討したりするために活用された。その後、IoTやAIの進歩によって製造業へ広がり、現在では物流、医療、都市計画、小売業など幅広い分野で導入が進んでいる。

例えば工場では、設備の稼働状況や温度、振動、電力消費などのデータをリアルタイムで収集し、デジタル空間に「もう一つの工場」を再現する。AIはそのデータを分析し、「この部品は2週間後に故障する可能性が高い」「生産ラインを変更すれば生産性が5%向上する」といった予測を行う。従来のように故障してから修理するのではなく、故障する前に対策を講じられるため、生産効率と品質が大きく向上する。

近年では、「会社全体」をデジタル・ツイン化しようという動きも始まっている。営業活動、在庫、財務、人事、顧客動向などを統合し、AIが企業全体の状況を分析するのである。もし新規出店したら利益はどう変わるか、価格を変更したら売上はどう動くか、採用人数を増やしたら将来の人件費はどうなるか――こうした経営判断を事前にシミュレーションできる時代が近づいている。

この技術は経営者にとって極めて大きな意味を持つ。従来は「経験豊富な経営者ほど判断力がある」と言われてきた。しかしAI時代には、経験だけでなく、膨大なデータをもとに複数の未来を比較検討できるようになる。もちろん最終判断は人間が行うが、その判断材料は飛躍的に充実する。

デジタル・ツイン経営にも課題がある。現実を正確に再現するには、高品質なデータが欠かせない。不正確なデータを入力すれば、AIが導き出す結論も誤ったものになる。また、市場の急激な変化や消費者心理のように、数値だけでは捉えきれない要素も少なくない。AIは未来を「予言」するのではなく、「可能性」を示す存在であることを理解する必要がある。

歴史を振り返れば、企業は会計帳簿によって過去を記録し、統計分析によって現在を把握してきた。AI時代には、デジタル・ツインによって未来を予測する時代へと歩み始めている。これは経営学における大きな転換点と言える。

今後、競争力を持つ企業とは、勘だけで経営する企業ではない。現実世界とデジタル世界の双方を活用し、複数の未来を比較しながら最適な意思決定を行う企業である。デジタル・ツイン経営とは、「未来を見える化する経営」であり、AI時代を象徴する新しい経営思想である。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年7月22日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(22日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう

岐阜 愛知で40度超 初の「酷暑日」  | NHKニュース  気象庁3か月予報 8月は「高温傾向」猛暑日多くなる可能性も | NHKニュース→岐阜県と愛知県で初の「酷暑日」を記録した。気温40度を超えた日を今年から酷暑日と呼ぶことになったが、予想ではきょうから頻発しそうだ。気象庁の3か月予報も暑い夏を予想している。もはや嘆いても仕方ない。万全の自衛策を講じ、9月末まで耐えるしかない。

「強い経済」へ経済財政運営を抜本転換 高市政権 初の骨太方針 | NHKニュース  →高市内閣として初めての骨太の方針を決めた。「責任ある積極財政」を合言葉に財政再建は後景に退いた。財政単年度主義を転換し、運営目標を基礎的財政収支(プライマリーバランス)から債務残高のGDP比の低下に改めた。「市場はどう評価するか」「放漫財政に陥らないか」が焦点。早速、円安になった→ 円相場 一時1ドル=163円台に値下がり 約39年半ぶりの円安水準 | NHKニュース

中国艦艇が日本のEEZ内で機関銃射撃訓練実施 防衛省が確認 | NHKニュース  →中国とロシアの艦艇が小笠原海域を航行、中国艦艇は機関銃の射撃訓練をした。国際法上は合法だが、こうした動きが増える可能性もある。歴史をみると、こうした行為が世論を硬化させ、ささいなことで小競り合いに発展することもある。外交を通じた政府間のコミュニケーション、国民の冷静な反応が重要だ。

高市首相「久々に5時間も睡眠」…3連休最終日の夜にX投稿 : 読売新聞 →高市首相が「首相就任以来、0~3時間の睡眠が常態化」とXに投稿した。社長が資料を読み込んで眠っていないとなれば、「何かあったら大変です。我々が支えますからしっかり寝てください」となるだろう。「働いて、働いて」はいいが、トップが健全な判断をできなければ、元も子もない。本当に大変なら、辞めるという賢明な選択もある。

首都圏新築マンション平均価格 上半期初めて1億円超に | NHKニュース  →首都圏の新築マンションの価格上昇が止まらない。上半期で初めて1億円を超えた。エリア別では、東京23区が1億4249万円と9.1%上昇、千葉県が8997万円で56.8%、神奈川県が8346万円で20%増となった。23区が最も高いが、伸び率は千葉、神奈川の方が大きい。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

無着成恭(教育者。2023年7月21日死去、96歳)

「命の尊さを分からせる。出来る子どもを作るのではなく、分かる子どもを作るのが教育の一番の根幹」 「人の欲には切りがない。餓鬼の欲望には際限がありません。いまは世界中が餓鬼になりはじめている気がします。日本の教育もそうです。欲望に忠実な経済優先主義、儲け主義の教育で、餓鬼を育てているような気がします」 「国の政策の問題はもちろんですが、教師にも責任がある。人間とは一体何か。畜生とは、餓鬼とは何か。突き詰める教師が減ったからではないかと思います。なぜ教師になったのか?その理由を自分でも分かっていない人が多い」 「わからないことを子どもはパソコンやインターネットでパパッと調べる。すると大人との会話もなくなる。関係性が築けない。悪循環です」 「まずは型を学ばなければなりません。私は禅宗の寺で育てられたから、箸の置き方からはじまり、お膳の上の食器の並べ方、箸の使い方を徹底的に躾けられました。身体を美しくすると書いて躾。そこが基本だと思います」

*** 今週の教養講座(AI時代のビジネス視点⑥)

第6回 コンポーザブル・ビジネス― 「組み立てる企業」が変化の時代を制する

企業は長い間、「大きく、強く、安定した組織」を目指してきた。部門ごとに役割を明確に分け、規則を整え、効率的に運営することが優れた経営と考えられてきた。しかし、AIの進化、市場の急変、地政学リスク、気候変動など、先行きを予測しにくい時代になると、「大きくて安定した組織」が、かえって変化への対応を遅らせる原因にもなっている。

そこで近年注目されているのが、「コンポーザブル・ビジネス(Composable Business)」という考え方である。「コンポーザブル」とは、「自由に組み立てられる」という意味だ。レゴブロックを思い浮かべると分かりやすい。1つひとつは小さな部品だが、組み合わせ方を変えれば、家にも車にも橋にもなる。企業も同じように、業務や組織を柔軟な部品として設計し、状況に応じて組み替えられるようにしようという発想である。

この考え方が生まれた背景には、デジタル技術の進歩がある。以前は、新しい事業を始めるたびに大規模なシステム改修が必要だった。しかし、クラウドやAI、API(異なるシステムをつなぐ仕組み)の普及によって、必要な機能だけを組み合わせ、新しいサービスを短期間で立ち上げられるようになった。企業そのものも、「固定された組織」ではなく、「組み替え可能な組織」へと変わり始めているのである。

例えば、新しい生成AIサービスを導入するとしよう。従来なら、情報システム部門が数か月かけて環境を整備し、全社展開するのが一般的だった。しかしコンポーザブル・ビジネスでは、営業部門や企画部門が必要な機能を選び、小さく導入し、効果を確認しながら全社へ広げていく。この「小さく始めて、素早く組み替える」考え方が特徴である。

この理論は組織にも当てはまる。従来の組織は、営業部、開発部、人事部など縦割りで運営されることが多かった。しかしAI時代には、一つの課題に対して必要な人材を集め、プロジェクトごとにチームを編成し、役割が終われば再び組み替えるという働き方が増えている。固定的な部署よりも、目的に応じて柔軟に編成できる組織のほうが、変化への対応力が高いからである。

世界の先進企業では、この考え方を実践する例が増えている。クラウドサービスを活用し、社内システムを小さな機能単位に分けることで、新しいAIサービスや業務アプリを短期間で追加できる仕組みを整えている企業も少なくない。これにより、市場の変化に合わせて事業モデルを迅速に修正できるようになっている。

日本企業にも、この理論は大きな示唆を与える。日本企業は品質や安定性に強みを持つ一方、組織変更や意思決定に時間がかかるという課題が指摘されてきた。AI時代には、「完成してから動く」のではなく、「まず試し、改善しながら組み替える」姿勢が求められる。コンポーザブル・ビジネスは、そのための組織設計の考え方なのである。

もちろん、柔軟性だけを追求すればよいわけではない。企業理念やブランド、品質基準など、変えてはならないものもある。重要なのは、「変えるべきもの」と「守るべきもの」を明確に区別することである。企業の価値観は一貫させながら、組織や業務の仕組みは柔軟に組み替える。このバランスこそが、AI時代の競争力を生む。

歴史を振り返れば、大量生産の時代には「標準化」が企業を強くした。情報化の時代には「効率化」が競争力の源となった。そしてAI時代には、「柔軟性」が新たな競争力になる。市場の変化に合わせて素早く組み替えられる企業ほど、新しい技術を取り込み、顧客のニーズに応えやすくなるからである。

コンポーザブル・ビジネスとは、「会社を変える」のではない。「会社を、いつでも変えられる状態にしておく」という経営思想である。不確実性が高まるAI時代において、この発想は企業の生存力を左右する重要な考え方になるだろう。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年7月23日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(22日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう

「副首都」構想法案 参議院特別委員会で質疑 論戦本格化 | NHKニュース →副首都法案の審議が始まった。与党は「大阪ありきではない」というが、維新主導は明白。議員立法のため中身はスカスカで、整備のための計画や費用はきまっていない。どの道府県も手を上げることができるというが、たくさん立候補したらどうするのだろうか。この法案も2日程度で可決してしまうのだろうか。

高市首相 中傷動画報道で秘書による陳述書を国会に提出 | NHKニュース  →なかなか出なかった秘書の陳述書がやっと出た。基本的にこれまでの高市首相の答弁通り。オンライン会議には出たが、自称動画制作者との接触については記憶にないという。24日に高市首相が出席して予算委員会で集中審議をするが、危機管理が甘かったのは事実。誠実に答弁しないから混乱が続いている。

全国の熱中症搬送急増 1週間でことし初1万人超 前週の2倍以上 | NHKニュース  三重 静岡 岐阜で40度以上の「酷暑日」に  | NHKニュース  →酷暑が続き、テレビは熱中症特集のような雰囲気だ。東海地方では22日も40度超えが相次いだ。

高木美帆さんに国民栄誉賞授与へ オリンピックで10個のメダル獲得 | NHKニュース →高木美帆さんに国民栄誉賞が授与される。オリンピックで10個のメダルはすごい。ただし、金は2018年の団体パシュートのみ。個人種目で取りたかっただろう。栄誉賞はこれまで27人と1団体が授与されている。現在32歳だが、特別なアスリートになる。多方面での活躍に期待。

編集者・評論家の山田五郎さんが死去、67歳…「出没!アド街ック天国」「タモリ倶楽部」など出演 : 読売新聞 →豊富でマニアックな知識で知られた評論家の山田五郎さんが亡くなった。67歳。最近まで「アド街ック天国」に出演していたが、2024年にがんを公表していた。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎フランシスコ・ザビエル(スペインの宣教師。1549年7月22日鹿児島に上陸)

「この国の人々は今までに発見された国民の中で最高であり、日本人より優れている人々は異教徒の間では見つけられない。彼らは親しみやすく、一般に善良で、悪意がない。驚くほど名誉心の強い人々で、他の何ものよりも名誉を重んじる」 「キリスト教の国であっても、そうでない国であっても、盗みについてこれほど節操のある人々を見たことがない」 「日本人は大部分の人が貧しいが、武士もそういう人々も貧しいことを不名誉とは思わない」 「人類の救いは物質的な成功に左右されないので、疲れなしで祈る必要があります。イエス一人だけに対して」 「(栃木県足利市にあった足利学校について)日本国中、最も大きく最も有名な東日本の大学である」 「彼ら日本人は予の魂の歓びなり」 「(スペイン国王に対して)日本を占領することを企てないように」 「世界は誤った理論で毒されており、正気な教説を教える必要がある。しかし、曲がったものをまっすぐにすることは困難だ」 

*** 今週の教養講座(AI時代のビジネス視点⑦)

第7回 エコシステム経営― 「競争」から「共創」へ AI時代の勝者は生態系をつくる企業である

20世紀の経営学は、「競争」を中心に発展してきた。いかに競合企業より優れた商品を作るか、いかに市場シェアを拡大するか、いかに競争相手に勝つかが経営戦略の中心だった。しかしAI時代に入ると、その前提が変わり始めている。優れたAIを1社だけで開発し、維持し、世界へ広げることは極めて難しいからである。そこで注目されているのが、「エコシステム経営」という考え方である。

エコシステムとは、本来、生物学で「生態系」を意味する言葉である。森林には樹木だけでなく、昆虫や鳥、動物、微生物などが互いに影響し合いながら生きている。同じように企業も、1社だけで存在しているのではない。部品メーカー、ソフトウェア企業、大学、研究機関、販売会社、スタートアップなど、多様な組織がつながり合うことで、新しい価値を生み出している。この全体を「生態系」と考えるのがエコシステム経営である。

AI産業は、その典型例と言える。生成AIを開発するには、高性能な半導体、クラウドサービス、大規模なデータ、高度な研究者、AIソフトウェア、さらには利用企業からのフィードバックが必要になる。どれか1つが欠けても、優れたAIは育たない。つまり、競争力の源泉は「自社だけの力」ではなく、「どれだけ強いネットワークを築けるか」に移っているのである。

例えば、NVIDIAは半導体を供給し、Microsoftはクラウド基盤を提供し、OpenAIはAIモデルを開発する。それぞれが異なる役割を担いながら連携することで、世界中の企業がAIを利用できる環境が整えられている。競争しているように見える企業同士が、同時に協力関係にもある。

この考え方は、自動車産業や医療分野でも広がっている。自動運転車は、自動車メーカーだけでは完成しない。半導体企業、通信会社、地図データ会社、AI開発企業など、多くの企業が協力して初めて実現する。医療AIでも、病院、大学、製薬会社、IT企業がデータを共有しながら新しい診断技術を開発している。

日本企業にとって、重要な示唆を与えている。これまで日本企業は、「自前主義」に強みを持ってきた。研究開発から製造、販売までを自社で完結させることで、高品質な製品を生み出してきた。しかしAI時代には、自社だけですべてを抱え込むことが、かえって変化への対応を遅らせる場合がある。必要な技術は外部と協力し、自社は自社の強みに集中する。その発想が求められている。

エコシステム経営は「仲良く協力する」という意味ではない。企業はそれぞれ利益を追求しながらも、「協力したほうが全体の価値が高まる分野」では積極的に連携する。これを「競争的協調(Co-opetition)」と呼ぶこともある。競争と協力は対立する概念ではなく、AI時代には両立するものである。

この理論は個人にも当てはまる。AI時代には、1人であらゆる知識を身につけることは難しい。専門家同士がつながり、AIも活用しながら価値を生み出す人ほど、大きな成果を上げやすい。企業も個人も、「孤立して強くなる」のではなく、「つながることで強くなる」時代へと変わっている。

歴史を振り返れば、産業革命では工場が競争力を決め、情報革命ではITシステムが競争力を決めた。そしてAI革命では、「誰とつながり、どのような生態系を築くか」が競争力を決める時代になったのである。

経営者にとって重要なのは、「競争相手を増やさないこと」ではない。「価値を共につくる仲間を増やすこと」である。自社だけの成功を目指す企業よりも、多様な企業や研究機関、顧客とともに新しい価値を創造する企業のほうが、変化の激しい時代には持続的な成長を実現できる。

エコシステム経営とは、「勝者がすべてを手にする経営」ではない。「多くの主体が価値を分かち合いながら、ともに成長する経営」である。この発想こそ、AI時代の競争戦略を象徴する新しい経営理論と言えるだろう。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年7月24日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(23日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう

セブン-イレブン キャラ商品を販売日前買い占めなど不適切事例 | NHKニュース  →セブンイレブンで商売道にもとる行為が発覚した。オーナーやスタッフが、キャラクター商品が当たるくじやトレーディングカードを、販売前に大量に買い占めたり、知人用に取り置いたりしていたことがわかった。1年間で複数の店舗で数件確認され、ルール厳守を求める内部文書を出した。セブンの栄光も色あせたか。セブンはPayPayと顧客IDを統合し、最大級の経済圏を作るニュースも流れていた→ セブン、PayPayと顧客データ統合 集客向上へ決済の利用者狙う – 日本経済新聞

小泉防衛相 核めぐり“タブーなく議論を” | NHKニュース  →小泉防衛相が核兵器をめぐり「タブーなく議論を」とコメントした。最近の与党は防衛政策を根本的に変革しようとする動きを加速させている。中立派とみられた小泉氏だが、防衛相就任後、タカ派的言動が目立つ。防衛問題を勉強すると、「日本にはあれもない、これもない」と思いがち。無思想なないものねだりで現状追認をするより、なくても済む世界を目指すべきだろう。あれもこれも持つと、かえって不自由になる。

EU欧州委、グーグルに過去最高1660億円の制裁金…検索機能で自社サービス優遇 : 読売新聞 →欧州と米国の火種となるか。欧州委員会がグーグルに過去最高の8.9億ユーロ(1660億円)の制裁金を課した。検索機能で自社サービスを優遇しているとして、2024年から適用しているデジタル市場法(DMA)違反と認定した。これまでアップルとメタも同法違反で制裁金を課されている。

元プロテニスの平木理化容疑者逮捕 特殊詐欺関与か、容疑否認―高知県警:時事ドットコム →平木容疑者は1997年の全仏オープン混合ダブルスで優勝した54歳。「身に覚えがない」と否認しているが、現金を引き出している様子が防犯カメラに写っていたという。4年以上前の話で、別の特殊詐欺事件の捜査から関与が浮上した。

大岩剛氏の監督就任決定 森保一監督が半年間続投―サッカー日本代表:時事ドットコム →大岩氏の知名度が高くないが、清水市立商業、筑波大を経て、名古屋、磐田、鹿島でプレーした54歳。監督は鹿島で務め、2028年のロサンゼルス五輪を目指す21歳以下の監督。どんな手腕を発揮するか。森保監督は半年間続投し、アジアカップ優勝を目指す。選考にあたって、技術委員会ではなく、宮本・日本協会会長主導の不透明さを指摘する声もある。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎芥川龍之介(小説家。1927年7月24日自殺、35歳)

「どうせ生きているからには、苦しいのはあたり前だと思え」 「幸福とは、幸福を問題にしないときをいう」 「人生を幸福にするためには、日常の瑣事を愛さなければならぬ」 「我々はしたいことをできるものではない。ただ、できることをするものである」 「お母さんを慈しみ愛しなさい。でもその母への愛ゆえに、自分の意志を曲げてはいけない。そうすることが後に、あなた方のお母さんを幸せにすることなのだから」 「人生の競技場に踏みとどまりたいと思う者は、創痍を恐れずに闘わなければならぬ」 「人生は一箱のマッチに似ている。重大に扱うのは、ばかばかしい。重大に扱わねば危険である」 「創作は常に冒険である。しょせんは人力を尽した後、天命に任せるより仕方はない」 「私は不幸にも知っている。時には、嘘によるほかは語られぬ真実もあることを」 「あらゆる社交は、おのずから虚偽を必要とするものである」 「天才の一面は、明らかに醜聞を起し得る才能である」

*** 今週の教養講座(AI時代のビジネス視点⑧)

第8回 AI時代のリーダーシップ― 「答えを知る人」から「問いを創る人」へ

「優れたリーダーとは、どのような人か」。この問いに対する答えは、時代とともに変わってきた。産業革命の時代には、多くの人を統率する力が求められた。情報化社会では、豊富な知識と迅速な判断力が重視された。生成AIが普及した現在、リーダーに求められる能力は再び大きく変わろうとしている。

生成AIは、膨大な知識を瞬時に整理し、文章を書き、企画を提案し、データを分析する。知識量や情報処理能力だけなら、人間はAIにかなわない場面が増えていく。リーダーの価値は「答えを知っていること」ではなく、「何を問うべきかを考えること」へ移り始めている。

優れたAIは、優れた質問に対して初めて力を発揮する。目的が曖昧であれば、AIも曖昧な答えしか返せない。逆に、本質を突いた問いを投げかければ、人間では思いつかないような視点や選択肢を提示してくれる。AI時代のリーダーは、自らすべての答えを出す人ではなく、組織全体が考えるべき問いを示す人なのである。

例えば、「売上を伸ばすにはどうするか」という問いと、「私たちは顧客にどのような価値を提供したいのか」という問いでは、導かれる答えはまったく異なる。AIはどちらの質問にも答えられるが、どちらを問うかを決めるのは人間である。この「問いを設計する力」が、これからの経営者や管理職にとって最も重要な能力になる。

AI時代のリーダーには、「人間らしさ」を引き出す役割も求められる。AIは情報を整理し、分析し、予測することは得意である。しかし、人を励まし、信頼関係を築き、組織に理念や使命感を与えることはできない。困難な状況で「一緒に頑張ろう」と語りかける力、異なる価値観を持つ人々をまとめる力、未来への希望を示す力は、人間のリーダーだけが持つ価値である。

実際、世界の企業でもリーダー像は変わり始めている。以前は、経験豊富で、すべてを知っている経営者が理想とされた。しかし現在は、多様な専門家やAIの知見を引き出し、チーム全体の力を最大化するリーダーが高く評価されるようになっている。リーダー自身が「最も賢い人」である必要はない。最も良い意思決定ができる環境をつくる人こそが、優れたリーダーなのである。

この変化は、教育にも影響を与えている。これまで学校では、正しい答えを早く出す力が重視されてきた。しかしAIが答えを提示できる時代には、「何が本当の問題なのか」「どのような視点で考えるべきか」を探究する力が重要になる。企業研修でも同じである。知識を覚えること以上に、問いを立て、対話し、AIを活用しながらより良い結論を導く力が求められる。

忘れてはならないのは、AIはあくまで「手段」であり、「目的」ではないということである。企業には利益を追求するだけでなく、社会に価値を提供し、人々の暮らしを豊かにする使命がある。その使命を定めることはAIにはできない。経営理念を掲げ、どのような未来を目指すのかを示すことこそ、リーダーの本質的な役割である。

このシリーズでは、各種の新しい理論や視点を紹介してきた。それぞれ内容は異なるが、1つの共通点がある。それは、「AIは人間を不要にする技術ではなく、人間の役割を変える技術である」ということである。AI時代において最も価値を持つのは、知識そのものではない。知識を組み合わせ、新しい意味を見いだし、未来への問いを立て、人と人をつなぎ、社会に新たな価値を生み出す力である。これこそが、人間だけが担える役割であり、リーダーシップの本質でもある。

AIは経営の方法を変える。しかし、経営の目的までは決めてくれない。企業は何のために存在するのか。どのような社会を築きたいのか。最後に答えを出すのは、いつの時代も人間である。AI時代のリーダーとは、答えを知っている人ではない。未来への問いを創り、人々をその問いへ導く人なのである。