2026年8月17~21日(教養講座:高階秀爾の近代絵画史)

2026.08.17メルマガ

~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年8月17日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(9~16日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう

ロシア プーチン大統領 北方領土初めて訪問 択捉島に ロシア大統領府発表 | NHKニュース  ロシア、択捉島周辺の演習通告 外務省が抗議:時事ドットコム →プーチン大統領が13日、北方領土を訪問。高市首相が強く抗議した。突然の訪問だが、9月の下院選挙に向けた国内アピールの狙いがありそうだ。高市政権を新型軍国主義と批判する中国との連携も背景にあり、中ロの駐日大使が共同声明を発表した。ウクライナ侵攻もあり、早期の日ロ関係の改善は絶望的だ。どう考え、どう動くか。難しい時代になっている。択捉島周辺での演習の通告もあった。

高市首相、靖国神社を遥拝 玉串料奉納、参拝は見送り:時事ドットコム 高市首相「反省」再封印 初の式辞、戦争主体曖昧に―終戦記念日:時事ドットコム 天皇陛下、戦没者追悼式でおことば 「深い反省」 「苦難語り継ぐ」:朝日新聞 中国、日本側に「強烈な抗議」 閣僚らの靖国参拝:時事ドットコム 韓国、靖国参拝を非難 「歴史の忘却」と論評:時事ドットコム →高市首相の誕生で、終戦記念日の風景も変わった。「反省」の言葉がなくなり、靖国神社に遠くから祈りを捧げる「遥拝」をした。自民党幹部はそろって参拝。中国と韓国は非難した。一方、天皇陛下はこれまで通り、「深い反省」「苦難を語り継ぐ」と述べた。皇室典範改正以来、高市政権と天皇との差が際立っている。どちらが国益にかなっているか。考えてみたい。

千葉豪雨 死者10人 千葉市で車約2500台が路上に残る | NHKニュース →13日、千葉県で線状降水帯が発生し、10人が死亡した。熊本地震では酷暑の災害で多くの課題を残したが、千葉では浸水した自動車に閉じ込められた4人が亡くなった。放置された自動車は千葉市だけで2500台にのぼった。車の中に水が入ってきたら、いち早く車から離れるべきだという教訓を残した。

秋篠宮さま、皇室典範改正に「思うところある」 パラグアイ訪問前会見で:時事ドットコム 石破氏「皇室典範再改正を」 養子案への世論異論踏まえ:時事ドットコム →皇室典範に対し皇室からまた疑問の声が出た。秋篠宮さまが「生身の人間であり、いろいろと思うところはあります」と述べた。天皇陛下に続く「異論」で、石破元首相も「再改正を」と援護射撃をした。男系男子と養子案は火種となって残り続ける。

奥田碩氏が死去 93歳 トヨタ自動車社長や経団連会長など歴任 | NHKニュース  →創業家以外で初めてトヨタ自動車社長になった奥田碩さんが亡くなった。豪放磊落過ぎてフィリピンに左遷されたが、後に社長になる豊田章一郎氏が娘夫婦と孫がいた同地をたびたび訪れて知り合い、引き上げられた。副社長止まりのはずだったが、当時社長だった豊田達郎氏が病気で倒れ、急きょ社長に就任。ハイブリッド車のプリウスを強引に前倒しして世に出し、その後、経団連会長など公職を歴任した。剛腕・強運、細心さもあった経営者だった。

「韓国サッカー協会が外国人審判員に性的接待」韓国メディア | NHKニュース →韓国の複数のメディアは、文化体育観光省報告書の内容として、2011年と2012年に韓国で開催された男子サッカー代表チームの国際試合など合わせて7試合を担当した外国の審判員などに対し、韓国のサッカー協会が「性的な接待を行っていた」と報道した。日本審判員も含まれている。その成果かどうかは不明だが、韓国は5勝2分だった。FIFAが象徴的だが、サッカー界は根本的におかしいのではないか。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎釜本邦茂(サッカー選手。2025年8月10日死去、81歳)

「ノーマークなら俺にパスしろ。1人マークがいても俺にパスしろ。2人いたら…やっぱ俺やな」 「ストライカーは撃ち続けることですよ。失敗を気にしていたら、商売にならない。撃ったシュートすべてが決まっていたら、1万点決めているだろう」 「入って来るな、ペナルティエリアは俺の仕事場だ!」 「フォワードがここにこういうボールをくれと言うのが当たり前にならないといけない」 「フォワードは点を取ってなんぼや。どうすりゃええか1日24時間考えた」 「シュートいうのは、ボールひとつ通れる幅があったらええわけやから」 「ペレを目標にはできない。どう頑張っても追いつけない。何せ、すべての能力を兼ね備えているんだから」 「俺を土台にして超えてゆけ」 「教えられる姿勢よりも、学ぶ心構えの方がずっと効果がある」 「創意工夫し、自分だけのものを作れ」 「戦術眼は、多くの修羅場をくぐって養われる」

*** 今週の教養講座(高階秀爾の近代絵画史①)

絵画は人間の創造性が発揮される基本的な領域です。中世以降、宗教画や宮廷画が主流でしたが、19世紀から劇的な変化が起きました。美術評論家で2年前に亡くなった高階秀爾氏の名著「近代絵画史」(中公新書)を参考に、印象派からピカソに至る変容をたどり、近代絵画は何を変えたのかを探ります。

【1】印象派――「もの」ではなく「見え方」を描く

19世紀後半、フランスで登場した印象派は、西洋絵画の歴史を大きく転換させた。重要なのは、それまでの絵画が何を目指していたかを知ることである。ルネサンス以来、西洋絵画は遠近法や明暗法を発達させ、3次元の現実世界を2次元の画面にできるだけ正確に再現しようとしてきた。歴史画や宗教画では、物語を分かりやすく伝えることも重視された。

そこに大きな変化をもたらしたのがマネである。パリで育った都会っ子のマネは、「草上の昼食」などで伝統的な主題や遠近法などの立体表現を離れ、絵画が平らな画面であることを意識させた。そしてモネ、ルノワール、ピサロ、シスレーらは、その革命をさらに進めた。彼らは伝統的な官学・アカデミー派からは激しい非難を受けたが、関心を持ったのは、対象そのものよりも、対象が「その瞬間、どのように目に映るか」という問題だった。

モネの《印象・日の出》が象徴で、港、船、水面、朝日が細密に描かれているわけではない。光と色の断片が画面に置かれ、それを見る者の目の中で風景が成立する。印象派という名称そのものが、この作品に由来している。彼らはアトリエを出て戸外で制作した。太陽の光は刻々と変化する。同じ木や建物でも、朝と夕方、晴天と曇天ではまったく違って見える。モネがルーアン大聖堂や積みわらを繰り返し描いたのはそのためである。重要なのは大聖堂という「もの」ではなく、その表面に現れては消える光だった。

ここで絵画の目的が変わる。画家は「世界はこうである」と描くのではなく、「私には今、世界がこう見える」と描くようになったのである。近代絵画における「個人」の登場といってよい。しかし印象派が光の追求を徹底すればするほど、新たな問題も生まれた。光は一瞬で変化する。その瞬間だけを追い続ければ、画面から形や構造、さらには人間の感情まで失われてしまうのではないか。印象派が切り開いた自由は、次の世代に新しい問いを残した。その問いに答えようとしたのが、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャンらである。近代絵画はここから、1つの道を全員で進むのではなく、複数の方向へ分岐し始める。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年8月18日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(17日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう

横浜高校野球部の元監督 渡辺元智さん死去 81歳 春夏計5回優勝 | NHKニュース →横浜高校野球部を50年近く指導し、全国有数の強豪校に育てた。松坂大輔投手を擁して春夏連覇を達成したほか、合計5回の全国優勝を飾った。涌井、成瀬、筒香、近藤ら多くのプロ野球選手を育てたことも特筆される。「人生の勝利者になれ」と野球以外の指導にも力を入れ、全国の高校野球部のお手本的な存在になった。横浜高校はきょう準々決勝で花巻東と対戦する。

実質GDP、年1.1%増 3期連続プラス、原油輸入減―4~6月期:時事ドットコム →4~6月のGDPが、年率換算で1.1%増となり、3期連続でプラスになった。輸入の減少や政府支出の拡大が寄与したが、内需の柱である個人消費は前期比0.02%減で、8期ぶりにマイナスに転じた。賃上げはしているが、物価高で消費マインドが冷えているようだ。

トランプ大統領 米韓合同軍事演習“縮小を指示” | NHKニュース  →トランプ大統領が米韓軍事演習の縮小を指示した。「北朝鮮のキム総書記とは良好な関係にある」と投稿しており、北朝鮮に配慮した模様。演習は予定通り行われているという情報もあるが、トランプ大統領と中朝の関係は注視する必要がある。

福岡県議会 議長の辞職勧告決議案 採決行われず 中止動議受け | NHKニュース  →金銭授受で揺れる福岡県議会で、蔵内議長に対する辞職勧告決議案の採決が中止された。「重大な決断を下すには提案内容も時間も不十分」と緊急動議が出され、自民党が賛成した。蔵内議長は第三者委の調査のメドなどがたてば辞職する考えを表明した。本当に辞めるのか、どこまで信じられるか。県民の不信が高まっている。

高市首相、病院に6時間滞在 「手などの検査」:時事ドットコム →高市首相が東京・信濃町の病院に6時間滞在した。リウマチの持病がある手の検査という。6日も杉並区の歯科医院に3時間滞在している。詳細を明らかにしないので、はっきりした事情はわからない。言えない何かがあるかもしれない。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎松岡正剛(編集者、著述家。2024年8月12日死去、80歳)

「誰にでもできることを、誰もやらないくらい続ける」 「我々が好きなものに面と向かって総力をあげる気がなくて、どうして人生の切実と豊穣に向かえるというのだろう?」 「迷わない人生なんてあるのだろうか。人間はきっと、迷う生き物」 「矛盾や葛藤は人間意識の輝かしい勲章なのである」 「半端でケッコー、中途でオーケー。何だってそこから始まるのだ」 「いろいろ欲しいと思うものも、さまざま望みたい出来事も、あれこれ交わしたい人物もいるだろう。しかし、たった今のこの時には手元に残ったもので工夫するべきだ」 「難儀なものこそ、いとおしい」 「混乱しなさい。世界や社会や家庭なんて、それから会社だって、ろくに経営できないということを知りなさい」 「知に優れたリーダーは、既知と未知の両方の知の積み重ね方が非常にうまいはずです」 「幼児の連想力にこそ、100パーセント加担したい」 「たとえば1万冊の書斎に新しく1冊が加わるだけで、一万冊の全体が揺れ動く」 「よく遊び、よく学び、よく編集せよ」

*** 今週の教養講座(高階秀爾の近代絵画史②)

【2】セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン――印象派を超える3つの道

印象派以後の絵画を考えるとき、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャンという3人は決定的に重要である。3人とも印象派から多くを学びながら、それだけでは満足しなかった。そして興味深いことに、3人が進んだ方向はまったく異なっていた。

セザンヌが求めたのは「認識」である。印象派の画面では、光によって物体の輪郭が溶けていく。だがセザンヌは、自然の背後には変化しない秩序があると考えた。山、家、木、リンゴなどを、円筒、球、円錐などの基本的な形として捉えようとしたのである。とりわけ《サント=ヴィクトワール山》の連作では、山や木々は単なる風景ではない。色面が組み合わされ、画面全体が1つの建築物のように構成されている。さらに、1つの固定した視点だけで対象を捉えないという試みも見られる。後にピカソとブラックが展開するキュビスムは、このセザンヌの問題意識を受け継ぐことになる。

ゴッホが求めたものは「感情」であり、「愛・激情・情念」が特徴だった。彼にとって色彩は、現実を忠実に再現するためだけのものではない。黄色い空、激しくうねる青、燃え上がるような糸杉。実際の色から離れていても、自分の内面を表現できればよかった。《星月夜》の夜空は、天文学的に正確な夜空ではない。それはゴッホ自身の心を通過した夜空なのである。

一方、ゴーギャンは異国という「想像」の世界へ向かった。文明化されたヨーロッパ社会から離れ、ブルターニュやタヒチに、自分が失った原初的な世界を求めた。彼の絵では遠近法や自然な色彩は重視されない。大きな色面と明確な輪郭によって、現実と神話、記憶と夢が同じ画面に共存する。

3人の違いを整理すると分かりやすい。セザンヌは「認識を通じた構造」、ゴッホは「心の感情」、ゴーギャンは「想像と象徴」を追求したのである。ここに20世紀絵画へ向かう3本の道が生まれた。セザンヌからキュビスムへ、ゴッホからフォーヴィスムや表現主義へ、ゴーギャンから象徴主義や抽象的表現へと道が開かれていく。印象派が「見えるもの」を解放したとすれば、この3人は「画家が感じ、考え、構成する世界」を解放したのである。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年8月19日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(18日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう

長期金利 2.945%に上昇 インフレ加速か 国債売る動き強まる | NHKニュース 米30年債、5.3%台に 19年ぶり高水準  日本の金利上昇波及、財政・AIにも懸念 – 日本経済新聞 →世界的に金利の上昇傾向が強まっている。米国では30年債が5.3%と19年ぶりの高水準。日本の10年債が一時、ほぼ30年ぶりの2.945%になった。日本の財政状況に対する懸念が日本の金利高を招き、米国金利に波及している面がある。日本の財政金融政策が世界の金融市場の焦点になりつつある。

ロシア外務省が日本大使に抗議 日本大使館「立場 適切に説明」 | NHKニュース  →ロシア外務省が、モスクワ駐在の武藤大使を呼び出して抗議した。プーチン大統領が北方領土を訪問し、茂木外相が駐日ロシア大使を外務省に呼んで抗議しており、その対抗措置とみられる。日中関係に次いで、日ロ関係も悪化してきた。

クロマグロ漁獲枠、25%拡大 関係国・地域、国際会議で合意:時事ドットコム →日本のクロマグロ漁獲枠が、中西部太平洋で25%拡大する。最近は日本近海で豊漁が続き、漁獲枠を守るため、取れたマグロを放流している。今後、価格が下がることが予想される。消費者には朗報だ。

米トランプ政権 ICC=国際刑事裁判所 赤根所長を制裁対象に | NHKニュース  →トランプ政権はアフガニスタンで戦闘に加わったアメリカ兵の戦争犯罪の捜査を承認したり、イスラエルのネタニヤフ首相らに戦争犯罪などの疑いで逮捕状を出したりしたことを非難し、悪意を持って権限を乱用しているとして、赤根智子所長を制裁対象に加えた。米国の資産が凍結される。トランプ政権は国際機関を攻撃し続けており、戦後の国際協調体制が大きく揺らいでいる。

自衛隊の戦闘機 那覇空港滑走路上で停止 トラブルか | NHKニュース  →自衛隊のF15戦闘機が、那覇空港で停止した。機体が煙や火を出しており、車輪付近にトラブルがあった模様。2本ある滑走路の1本が閉鎖され、民間航空機40便の発着が遅れた。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎山崎正和(劇作家、評論家。2020年8月19日死去、86歳)

「1970年代から80年代にかけて産業構造が変わり、人間の生き方や考え方も変わっていく。自著の『柔らかい個人主義の時代』でそう主張しましたが、大筋は書いた通りになりました」 「私が考えたのが『時間消費』という概念です。当時、外食産業やホテル、旅行業者が人気を集めていました。旅行は風光明媚な景勝地に長く滞在し、外食はごちそうを味わって時間をかけて食べることを楽しむ」 「人間は自分の心に映っているものについて、外に描くことによってよく見るのであり、歌うことによって聞くのであり、語ることによって知るのであり、つまりは表現することによって認識するのである」 「ポピュリズムは第一に、民衆の感情を刺激し、理性よりも情念に訴えるという形をとり、しかもその情念は、反感あるいは嫉妬という点に絞られ、その対象として敵を必要とする」 「芝居は金の苦労が7、もめごとの心配が2、残り1割が芸術です」 

*** 今週の教養講座(高階秀爾の近代絵画史③)

【3】色彩の解放――ゴッホからフォーヴィスム、マティスへ

20世紀初頭になると、近代絵画の変化は一段と激しくなる。その最初の大きな爆発がフォーヴィスムである。「フォーヴ」とはフランス語で「野獣」を意味する。批評家が、マティス、ドラン、ヴラマンクらの激しい色彩を見て、彼らを「野獣」と呼んだことからこの名称が生まれた。

なぜ彼らの絵がそれほど衝撃的だったのか。それは、色が現実から独立したからである。伝統的な絵画では、木は緑、空は青、肌は肌色というように、色は基本的に対象に従属していた。印象派はそこから一歩進み、光によって変化する色を描いた。しかしフォーヴィスムでは、さらに大胆な飛躍が起きる。顔を緑にしてもよい。木を赤くしてもよい。空を黄色くしてもよい。画家が必要だと思えば、現実とは違う色を自由に置くことができる。

この道を準備したのがゴッホとゴーギャンだった。彼らはすでに、色彩には対象を説明する以上の力があることを示していた。色そのものが感情や精神を表現できるのである。その可能性を最も洗練された形で展開したのがアンリ・マティスである。マティスの作品では、赤、青、緑などの鮮やかな色彩が画面全体を支配する。《赤い部屋》を見ると、壁とテーブルの境界さえ曖昧になり、赤い色面の上に模様や人物が配置されている。ここでは、3次元の部屋を正確に再現することよりも、画面全体の色彩の調和が重要になっている。

これは西洋絵画の長い伝統から考えれば大事件であった。絵画は「窓」のように現実世界を映すものではなくなりつつあったのである。1枚のキャンバスという平面の上に、色と線と形を組み合わせて独自の世界をつくる。その考え方が前面に出てきた。

同じころドイツでは表現主義が登場する。彼らもまた、現実の正確な再現より人間の不安、孤独、欲望などの内面を重視した。20世紀初頭のヨーロッパには、都市化、科学技術の発達、社会的不安など大きな変化が押し寄せていた。絵画もまた、安定した世界を描くことができなくなっていたのである。

こうして色彩は現実の束縛から解放された。しかし、もう1つ残された問題があった。「形」である。その形を徹底的に解体しようとした人物が、パブロ・ピカソであった。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年8月20日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(19日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう

米ICC制裁に衝撃 日本政府、対応に苦慮:時事ドットコム →米国が赤間智子ICC所長を制裁対象にし、日本政府に衝撃が走った。「法の支配」は国際社会で弱者を守る最低限のルールで、日本もことあるごとに強調している。しかし、同盟国の米国が、今回のように国際法をたびたび無視するような行動を起こしている。本来なら米国を非難すべきだが、高市首相は「残念」と述べるにとどまっている。日本の矜持が問われている。ICCは米国を敢然と非難している→ICC「司法の独立への攻撃」 赤根所長制裁、米を非難:時事ドットコム

トランプ大統領 秋にも米朝首脳会談を側近らに要求 米報道 | NHKニュース  「米韓合同軍事演習 規模を大幅縮小へ」韓国メディア | NHKニュース  →トランプ大統領が北朝鮮のキム総書記との会談を模索している。時期は11月に中国で開かれるAPEC前後とみられる。イラン問題が難航しており、新たな外交的な成果を狙っているという観測が出ている。これにあわせるように、米韓軍事演習を大幅に縮小した。北朝鮮に対してどんな「土産」を考えているのだろうか。

護憲リベラル「ゴリラ」結成へ 立民系、現職含め16人参加意向:時事ドットコム →2月の総選挙で落選した旧立憲民主党の前衆院議員が「護憲リベラル共生」を結成する。略称は党名をもじって「ゴリラ」。リベラル勢力の結集を目指すが、参院の立憲と公明党が中道改革連合への合流を協議しており、遠心力は働かせる狙いともみられている。野党が結集しないと日本の政治は変わらない。どんなインパクトを与えられるのか。

万博工事費水増しし自宅改修か 竹中工務店社員 背任容疑で逮捕 | NHKニュース  →関西万博で大屋根リングなど会場工事の現場責任者だった竹中工務店社員(61)が背任容疑で逮捕された。下請け会社に水増し請求させ、自宅のリフォーム工事をさせていた。背任額は1300万円余り。セコイ。

俳優の岸惠子さん死去 93歳 映画「君の名は」など出演 | NHKニュース →岸恵子さんは1953年公開の映画「君の名は」で人気になった。フランスの映画監督と結婚し、パリと日本を行き来して独自の存在感を発揮した。エッセイストや作家としても知られ、2013年に不倫をテーマにした小説「わりなき恋」がベストセラーになった。多才な女優だった。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎久坂玄瑞(幕末の長州藩士。1864年8月20日死去、24歳)

「世の中がどうなろうと、自分が信じた道をひたすらに踏みしめて進むのがよし」 「自分は意志が弱く、何かことをなすような人間ではない。しかしそこで自分を駄目だと思って敢えて何もしなければ、すなわち、できることもできなくなってしまう」 「怪しげな雲のごとく異国がやってきて、我が国も穏やかではない。今は天皇を護ることもむずかしい激動の時代である。もし天皇が吉夢をみるのであれば、かつて後醍醐天皇が金剛山に籠った楠木正成を見つけ出したように、野山獄の松陰先生を見つける夢を見るべきである」 「大名や公家はあてにならない。本当に力を発揮するのは、草莽の志士の連中だけだ」 「諸藩大名も、公家も頼りにならない。身分の隔たりなく、藩の垣根なく団結して立ち上がる以外に策はない」 「(辞世の句)ほととぎす 血に泣く声は 有明の 月より他に 知る人もなき(私の志とその想いは夜明けに輝く月のほかに知る人はいない)」

*** 今週の教養講座(高階秀爾の近代絵画史④)

【4】セザンヌからピカソへ――形を壊したキュビスム

ピカソへの道を理解する鍵はセザンヌにある。セザンヌは自然を単に目に映る印象として描くのではなく、その背後にある構造を捉えようとした。この問題をさらに押し進めたのがピカソとブラックであり、そこからキュビスムが生まれた。

転換点となった作品が、ピカソの《アヴィニョンの娘たち》である。5人の女性が描かれているが、その身体は自然な人体表現から大きく離れている。顔は仮面のようで、身体は鋭い線によって分割され、背景と人物の境界さえ不安定である。そこにはセザンヌだけでなく、アフリカ彫刻など西洋以外の造形から受けた衝撃も反映されていた。

キュビスムが問い直したのは、「見る」とは何かという問題だった。例えばコップを正面から見れば円形の口は楕円に見える。しかし私たちは、それが本当は円形であることを知っている。人間を見る場合も同じで、正面からは見えない横顔や後頭部が存在することを知っている。それなら、1つの固定された視点だけから描くことが、本当に対象を捉えることなのだろうか。

ピカソとブラックは、1つの対象をさまざまな角度から見て、それらを1枚の画面に同時に組み込もうとした。その結果、人物や楽器、瓶などは細かな面に分解され、再構成される。ルネサンス以来の遠近法が前提としていた「1人の人間が、1つの場所から、一瞬に世界を見る」という仕組みそのものが崩されたのである。

ここでセザンヌとのつながりが明確になる。印象派が「瞬間の視覚」を追求したのに対し、セザンヌはその背後の構造を求めた。ピカソはさらに進み、対象をいったん分解し、画家の認識によって組み立て直した。つまり絵画は、目に見える世界を写すものから、世界を「考える」ものへ変わったのである。

これは写真の普及とも無関係ではない。現実を正確に記録するだけなら写真がある。ならば絵画にしかできないことは何か。近代の画家たちはその問いに直面した。ピカソの答えの1つが、「見たものを写すのではなく、知っているもの、考えたものを画面上に再構成する」という方法だった。キュビスムによって、絵画は現実の再現という長い役割から大きく解放されたのである。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年8月21日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(20日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう

栃木 東武日光線の駅で特急と接触の作業員4人全員の死亡を確認  | NHKニュース  →東武日光線の新鹿沼駅(栃木県)で、除草作業中の4人が特急列車と接触し、死亡した。当時、10人が作業しており、見張り員として3人が配置されていた。特急の運転士は作業員の待避が終わったという合図を受けてホームに入ったと説明している。情報のやり取り・共有が不十分だった可能性が高い。亡くなったのは50~60歳代で、協力会社に所属していた。

防衛予算8.9兆円要求 過去最大、さらに上積みへ:時事ドットコム →防衛省の概算要求が過去最大の見通しだ。年内に安保3文書の改定を控えており、金額を示さない「事項要求」が多い。反撃能力(敵基地攻撃能力)の強化、長距離飛行が可能な攻撃型無人機の開発を盛り込む。退職自衛隊員らを支援する「退職自衛隊員・家族支援庁」の新設、国際政策を所管する「国際政策局」など3局の増設も明記する。

北朝鮮、「日本が間違った選択すれば、生存不可にせん滅」と威嚇 金与正氏「軍事的目標と見なす認識強まる」と言及も:時事ドットコム →北朝鮮が日本を激しく非難した。台湾有事発言をきっかけとした中国、大統領が北方領土を訪問したロシア、そして北朝鮮の連携が推測される。タカ派色の強い高市政権への反発が底流にあるとみられる。防衛費増を目指す一部勢力には追い風だが、知らず知らずの間に対立がエスカレートしている。

首都圏新築マンション平均価格 7月は約1億6500万円 過去最高に | NHKニュース  →7月の首都圏新築マンション価格は、前年同月比64%増の1億6493万円で過去最高を記録した。東京23区は港区で高額物件が売り出された影響もあって同96%増の2億6520万円となった。とんでもない価格で、もはや真っ当な日本人サラリーマンには届かない。完全なバブルだ。

韓国サッカー協会の性接待疑惑、日本人審判7人巡り「報道された事実は確認できず」…日本サッカー協会 : 読売新聞 →日本サッカー協会は、韓国サッカー協会の性接待疑惑について、「確認できなかった」と発表した。「なかった」と断言できないのがつらい。当事者にヒアリングをしても正直に言うかどうか。それとも誰かの捏造情報か。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎タモリ(タレント。8月22日は81歳の誕生日)

「来年は新しい戦前になるんじゃないでしょうか」 「座右の銘は、現状維持」 「この俺なんか、毎日が上出来」 「向上心なんてなかったですからねぇ。今もないし」 「人生成功せにゃいかん。ナンバー1にならなきゃいかん。ダメだよ、それじゃあ。苦しくなるから」 「好きな言葉は適当。コツはね、張り切らないこと。頑張ると、疲れる」 「ハングリー精神なんて邪魔。お笑いなんか、人間の精神の余分なところでやっているわけでしょ」 「仕事も何でも反省はしない。反省ばかりしていると馬鹿バカしくて」 「テレビは基本的にあんまり見ないね」 「(批判は気になりますか?)ものすごく気になります」 「他人に期待しなければ、感情的にならずにすむ。そうすれば人間関係に波風も立たなくなり、円満にだれとでも付き合える」 「目標を持つと、達成できないと嫌だし、達成するためにやりたいことを我慢するなんて馬鹿みたい」

*** 今週の教養講座(高階秀爾の近代絵画史⑤)

【5】印象派からピカソへ――「見る絵」から「考える絵」へ

印象派からピカソまでの約半世紀を振り返ると、近代絵画の歴史は、単に新しい流派が次々に登場した歴史ではないことが分かる。それは「絵画とは何か」という問いを、画家たちが次々に深めていった歴史である。

出発点となった印象派は、伝統的な絵画の約束事から画家の目を解放した。モネたちは、物には固定された色があるのではなく、光によって絶えず変化して見えることを発見した。重要なのは「何がそこにあるか」から「どのように見えるか」へ移った。

しかし、その革命には次の問題が生まれた。瞬間的な光だけを追いかけて、絵画は成り立つのか。そこでセザンヌは構造を、ゴッホは感情を、ゴーギャンは想像と象徴を求めた。この3方向への分岐が、20世紀美術を準備する。さらにマティスらフォーヴィスムは、色彩を現実から解放した。木が赤くても、顔が緑でも構わない。色は対象の色ではなく、画家が画面をつくるために選ぶ色となった。

そしてピカソとブラックは形を解放する。対象を1つの視点から描くというルネサンス以来の原則を捨て、複数の視点から見た形を分解し、再構成した。ここに至って絵画は、現実世界を忠実に再現するという使命から決定的に離れていく。

この流れを一本の線として捉えると理解しやすい。「対象を描く」から「光を描く」へ。「光を描く」から「感情や構造を描く」へ。「現実の色」から「画家の色」へ。「見える形」から「考えられた形」へ。近代絵画の歴史とは、画家が1つずつ自由を獲得していく歴史だったともいえる。

新しい画家は突然現れるのではない。印象派の問題の中からセザンヌが生まれ、セザンヌの問題からピカソへと道が開かれる。一方、ゴッホやゴーギャンの問題意識はフォーヴィスム、表現主義、象徴的な芸術へつながっていく。二十世紀美術の多様な運動は、印象派で頂点に達した写実の追求を、それぞれ異なる方法で乗り越えようとしたものなのである。したがって、ピカソの絵を見て「なぜこんな形に描くのか」と戸惑う必要はない。そこには印象派以来、半世紀にわたって積み重ねられた問いがある。

近代絵画を見る面白さは、完成した作品を見るだけでなく、「前の世代の何に不満を感じ、何を変えようとしたのか」を考えることにある。そうして見ると、モネからセザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、マティス、そしてピカソへと続く道筋が、1つの壮大な「見ること、考えることの歴史」として浮かび上がってくる。