2026年24~28日(教養講座:北方領土問題の起源)

2026.08.24メルマガ

~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年8月24日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(21~23日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう

震度5弱を茨城 東京 埼玉 千葉で観測 気象庁“今後1週間程度は注意” | NHKニュース  専門家 “関東の地下にある「地震の巣」で発生 備え確認を” | NHKニュース  →23日未明、関東で震度5弱を記録した。震源は茨城県南部で、陸側のプレートの下に海側からフィリピン海プレートと、太平洋プレートという2枚の岩盤が沈み込んでいる。複雑な力がかかり、「地震の巣」と言われる。気象庁は「1週間程度注意を」と呼びかけている。

カナダ、米国に3.2兆円規模の報復関税を発動へ 「米が不合理な条件」 – 日本経済新聞 →カナダがトランプ政権の50%追加関税に報復関税を発動すると発表した。これまで通り米国の対応は理不尽だ。カーニー首相は安易な妥協をしないように野党から突き上げられていることもあり、「米国は経済的に不合理で不公平、かつカナダの国益を損なう新たな条件を示した」と説明している。言うべきは言う姿勢を日本も見習いたい。

智弁和歌山が優勝 5年ぶり4回目 健大高崎に逆転勝ち | NHKニュース →夏の高校野球は智弁和歌山が健大高崎を破り、5年ぶり4回目の優勝を飾った。序盤は智弁の圧勝ムードもあったが、健大高崎は粘り、8回に3対2と逆転した。しかしその裏、智弁がスクイズと暴投で2点をあげ、逃げ切った。横浜・織田の剛腕が注目を浴びた大会だったが、智弁の総合力が上回った。

高市首相 SNSで政策発信強化 理解広めるねらいも | NHKニュース  →高市首相が「X」への投稿を強化している。数が多く、内容も細かく、これまでの首相と比べると、異例の対応。国民に直接呼びかける新しいやり方とも言えるが、即答を求められる国会や記者会見での発信は乏しい。投稿だけでは建前が多くなり、本音がわからない。「国民生活軽視」「休日は公邸にいるだけ」という批判に焦っているという見方もあり、反論する狙いもありそうだ。

パワハラ認定の横浜 山中竹春市長 国際会議の参加見送り | NHKニュース →横浜市の山中市長は、第三者委員会に「重大なパワハラがあった」と認定され、総スカン状態だ。本人は続投を希望しているが、来月2日から同市主催で開かれる循環型社会の国際会議に参加しないことを決めた。このままでは市政の停滞は確実。市議や市職員の反発も強く、辞任しかないだろう。

りくりゅうペア婚約発表 三浦璃来さんと木原龍一さん フィギュアスケートペア オリンピックで日本初の金 | NHKニュース  →予想されたようにめでたくゴールインとなった。SNSで「うれしい時も、つらい時も、たくさんの時間を共に過ごし、支え合いながら歩んできました。ようやく皆様にご報告できることを、心からうれしく思います」とコメントした。ペア種目の普及を見据えアイスショーをプロデュースするなどの活動をしている。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎稲盛和夫(京セラ・KDDI創業者。2022年8月24日死去、90歳)

「すべて人生は心に描いた通りになる。どのような厳しい状況に置かれようと、否定的なことを心に浮かべるべきではない。まじめに前向きに努力していけば決して悪いことがあろうはずがないと確信して、常に堂々と明るく進まなければならない」 「人生とは『今日一日』の積み重ね、『いま』の連続にほかならない」 「人間の進歩は、素直であるかないかで決まる。自分の非を認めて学ぶ素直な心がないと人間の進歩はない」 「他人に良かれと動き、仲間のために汗をかくとき、売上は爆発的に伸びる」 「経営とは、人として正しい生き方を貫くこと」 「会社に不燃性の人は要らない。勝手に燃えてくれる自燃性であってほしい」 「商売の極意とはお客様の尊敬を得ること。売る側に高い道徳観や人徳があれば、たとえ他の会社が安い価格を提示しても買って下さる」 「動機善なりや、私心なかりしか(動機が善であり、私心がなければ、結果は問う必要がない、必ず成功する)」 「経営に権謀術数は一切不要」

*** 今週の教養講座(北方領土問題の起源①)

プーチン大統領が北方領土を初めて訪問しました。高市首相が抗議したのは当然の措置ですが、ナショナリズムをぶつけ合っているだけで解決しないのも厳しい現実です。2国間関係にとどまらない国際的な視点、国家の論理だけでなく住民の論理も必要でしょう。北方領土問題の歴史的な起源と現実を考えます。

1回 北方領土とはどんな島だったのか――海とともに暮らした人々

北方領土という言葉を聞くと、まず「日本とロシアが争っている島」というイメージを持つ人が多いだろう。しかし、領土問題として考える前に知っておきたいことがある。そこにはかつて、多くの人々の日常生活があったという事実である。

北方領土と呼ばれるのは、北海道の北東に位置する歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島である。四島の総面積は約5003平方キロで、福岡県とほぼ同じ広さを持つ。最も北海道に近い歯舞群島の貝殻島は、根室半島の納沙布岬からわずか3.7キロほどしか離れていない。遠い異国の島というより、北海道東部のすぐ沖合に連なる島々なのである。

1945年8月15日の時点で、四島には1万7291人の日本人が暮らしていた。最も人口が多かったのは国後島の7364人で、歯舞群島5281人、択捉島3608人、色丹島1038人だった。そこには漁師だけでなく、その家族、商店を営む人、学校の教師、役場の職員など、さまざまな人が暮らしていた。

島の生活を支えていたのは海である。周辺はサケ、マス、カニ、昆布などに恵まれた豊かな漁場だった。国後島では漁業のほか、カニなどを加工する缶詰工場や林業も盛んだった。国後島から根室まで、船によって約3時間半で結ばれていたという。北方四島は孤立した土地ではなく、根室をはじめとする北海道東部との経済的、人的なつながりを持つ生活圏だった。

一方、この地域には日本人が暮らす以前からアイヌの人々が生活し、千島列島一帯を移動しながら漁猟や交易を行ってきた歴史がある。ロシアは18世紀以降、シベリアから太平洋側へ進出した。この地域の歴史を日本とロシアという2つの国家だけで説明するのではなく、それ以前から存在した人々の暮らしを考える必要もある。

近代国家としての日露両国が国境を明確にしたのは1855年の日露和親条約だった。択捉島とウルップ島の間を国境とすることが確認され、国後島と択捉島は日本側、ウルップ島以北はロシア側とされた。日本政府は現在、この歴史を北方四島に対する領有権主張の重要な根拠としている。 一方、ロシアは1945年の第二次世界大戦の結果として四島がソ連領となったという立場を取っており、現在も認識は一致していない。

しかし、1945年以前の島民にとって、毎日の生活の中心が「領有権」だったわけではない。漁に出て、魚を加工し、子どもが学校へ行き、家族が暮らす。それが普通の日常だった。北方領土問題を冷静に考えるためには、この点から出発したい。国家にとって島は国境であり領土である。しかし、そこに住む人にとって島は家であり、仕事場であり、学校であり、墓のある故郷である。1945年、その日常が大きく変わることになる。次回は、日本の敗戦前後、北方の島々にソ連軍が進出した数週間に何が起きたのかを、人々の視点から追っていく。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年8月25日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(24日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう

売春めぐり相手方も規制を 法務省検討会が報告書案 | NHKニュース | 法務省 →売春をした側だけが処罰される現行法について、相手方にも規制を設ける報告書案が法務省検討会で示された。現在はない処罰規定も論点となったが、処罰すると売春行為が地下に潜る懸念が示された。今後法制化を検討する。女性を支援している団体は「歓迎するが、女性の境遇改善も必要」としている。

「日本の反応は段違いに弱い」 ICC制裁めぐり、超党派議連が声明 [高市早苗首相 自民党総裁]:朝日新聞 →ICCの赤根所長が米国から制裁を受けたことについて、自民党から共産党の議員で構成する人権外交を考える超党派議連が、非難声明を議決した。高市首相が「残念」と述べるにとどまったことも問題視している。赤城所長は26日、日本メディア向けにオンライン会見をする予定。クレジットカードやメール使用に支障が出る可能性があるといわれている。

超党派議員が北京へ 中国共産党関係者と会談 関係改善糸口探る | NHKニュース  →超党派議員3人が中国共産党関係者と会談するため訪中した。自民党、中道、公明党の議員。大物とは言えないが、政府間関係が悪化していれば、議員交流が不可欠。日中友好を主張する議員を「媚中派」と批判する一部勢力もいるが、戦前の「鬼畜米英」に等しい行為だ。食料やエネルギーを海外に依存する日本にとって全方位外交が基本的国益だ。

福岡県議会 藏内勇夫議長が議員辞職願を提出 | NHKニュース  →福岡県議会のドン蔵内勇夫議長が一転して議員辞職願を提出した。これまで議長辞任を公表していたが、議員辞任は否定していた。「若い議員に迷惑をかけられない」と本人は周囲に語っているようだが、第三者委員会の発足を受けた対応とみられる。これからは「もう民間人だから」と追及をかわす狙いではないか、という見方も出ている。

スズキ軽EV、航続310キロ 最長レベル、試作車ウェブ公開:時事ドットコム →スズキが航続310キロの最長レベルを記録した軽自動車EVを発表した。今年度中に発売する。軽EVには中国のBYD社も参入している。有望市場とみられる地方の需要をめぐって、国産勢と激しい競争が展開されそうだ。スズキの価格は未定で、国内最低価格にできるかどうかが焦点。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎フリードリッヒ・ニーチェ(ドイツの哲学者。1900年8月25日死去、55歳)

「孤独を味わうことで、人は自分に厳しく、他人に優しくなれる。人格が磨かれる」 「善にも強ければ、悪にも強いというのが、いちばん強力な性格である」 「もし君が悩む友を持っているなら、君は彼の悩みに対して安息の場所となれ。いうならば、堅い寝床、戦陣用の寝床となれ。そうであってこそ、君は彼にとって最も役立つものとなる」 「人生は常に頂上に近づくほど困難が増してくる。寒さは厳しくなり責任は重くなる」  「孤独な者よ、君は創造者の道を行く」 「君の魂の中にある英雄を投げ捨ててはいけない」 「忘却は、よりよき前進を生む」 「昼の光に、夜の闇の深さが分かるものか」 「怪物と戦う者は、その際自分が怪物にならぬように気をつけるがいい。 長い間、深淵をのぞきこんでいると、深淵もまた、君をのぞきこむ」 「愛せなければ通過せよ」 「本をめくることばかりしている学者は、ついにはものを考える能力をまったく喪失する。本をめくらないときには考えない」

*** 今週の教養講座(北方領土問題の起源②)

2回 1945年夏、北方の島々で何が起きたのか――ソ連軍の侵攻

1945年8月15日、日本では昭和天皇の玉音放送が流れ、多くの人が「戦争が終わった日」と記憶している。しかし、日本列島の北方では、その後も戦闘とソ連軍の進出が続いた。北方領土問題を理解するには、この8月から9月にかけて何が起きたのかを時間の流れに沿って見る必要がある。

当時、日本とソ連の間には1941年に締結された日ソ中立条約があった。有効期間5年の条約だったが、ソ連は1945年4月、翌年以降は延長しないと日本に通告していた。一方、2月のヤルタ会談では、米英ソ首脳がソ連の対日参戦について秘密裏に合意していた。日本はヤルタ協定の当事国ではなく、この協定だけで領土帰属が法的に確定したわけではない問題も残るが、ドイツ降伏から約3か月後の8月8日、ソ連は日本に宣戦を布告し、翌9日、満州、南樺太などで攻撃を開始した。

日本政府は8月14日にポツダム宣言受諾を決め、15日、国民に敗戦が伝えられた。しかし、広大な戦場ですべての軍事行動が同時に止まったわけではなかった。北方では、むしろこの後に大きな戦闘が起きる。8月18日未明、ソ連軍は千島列島最北端の占守島への上陸を開始した。カムチャツカ半島のすぐ南にある島である。日本はすでに降伏を決め、現地部隊も武装解除に向かう状況にあったが、ソ連軍の上陸によって戦闘が発生した。戦車部隊も投入され、日ソ双方に多数の死傷者が出た。8月15日を過ぎてから日本軍とソ連軍が本格的に戦ったという事実は、「終戦」が一瞬で実現したものではなかったことを示している。

その後、ソ連軍は千島列島を南下した。8月28日には択捉島へ進駐し、9月1日に国後島と色丹島、9月3日には歯舞群島に達し、9月5日までに四島全体を占領した。島民にとって、事態は国家間の外交問題ではなく生活そのものの激変だった。日本が降伏したと聞いて安堵した人もいただろう。しかし間もなく外国の軍隊が島に現れた。言葉の通じない兵士を目にし、「これから自分たちはどうなるのか」「家や漁場は守られるのか」と不安を感じたことは想像に難くない。一部の住民は自ら船で北海道へ脱出したが、多くは島に残った。

ソ連側から見れば、対日参戦は第二次世界大戦最後の軍事作戦であり、南樺太や千島列島への進出は連合国間のヤルタ協定を背景とする戦後処理の一環だった。現在のロシアも、四島の領有を第二次世界大戦の結果として位置づけている。一方、日本側は、択捉、国後、色丹、歯舞は日本が戦争によってロシアから獲得した領土ではなく、ソ連による占領によって初めて日本の統治から離れたと考える。ここに両国の歴史認識の大きな隔たりがある。

国家の論理とは別の論理もある。国境や支配する国家が変わるとき、最も直接的な影響を受けるのは、そこに暮らす普通の人々だということである。 1945年夏、北方の島々に暮らしていた約1万7000人の日本人は、その現実に突然直面した。やがて彼らの多くは、長年暮らした家や漁場、墓を残して島を離れることになる。次回は、その「故郷喪失」の過程を見ていきたい。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年8月26日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(25日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう

中野ブロードウェイの店舗で高級時計盗まれる 被害2億円相当か | NHKニュース  →「時計の聖地」といわれる東京・中野のブロードウェイにある時計店で、計2億円相当の腕時計4本が盗まれた。2人組の男がショーケースをハンマーで割り、犯行は10秒ほど。現場から300メートルほど離れた遊歩道で、逃走に使われたとみられる電動キックボードと衣服が見つかった。犯行も大胆だが、時計の値段もスゴイ。

高市首相 ICC赤根所長への制裁は日本の立場と相いれず | NHKニュース →米国が赤根ICC所長を制裁対象にしたことについて、高市首相は「日本の立場と相いれるものではなく、大変深刻に受け止めている」と述べた。当初は「残念だ」のコメントにとどまり、弱腰だと批判する声が出ていた。「アメリカに対して制裁対象にしないようぎりぎりまで働きかけを続けた。今後も必要なタイミングで必要な支援をする」という。ふだん威勢はいいが、トランプ大統領を説得できるか。

アメリカ経済制裁 イランと中国反発 パキスタンはイランと協議 | NHKニュース →ベッセント財務長官がイランに対する大規模な経済制裁を強い調子で表明した。デジタル資産やテクノロジー、金、航空、海運の5つの分野が重点対象。「単なる脅し」という見方も根強く、イラン側は「報復を覚悟すべきだ」と強く非難し、中国も反発している。米国とイランの対立は真相がわかりにくいが、無理を通せばドル離れも進みかねない。

高市首相 自民 麻生副総裁と会談 政権運営めぐり意見交換か | NHKニュース  →高市首相が政局のキーマンである麻生副総裁と2人で会談した。9月の政府・自民党人事をめぐる話題が話し合われたのは確実。麻生氏が高市支持を見直す可能性が常に取りざたされている。情報はこれからじわりじわりとにじみ出る。

競泳本多灯被告、危険運転認める 「結果出ず」、拘禁刑1年求刑―東京地裁支部:時事ドットコム →危険運転罪に問われた東京五輪バタフライ銀メダリスト本多灯被告の初公判が開かれた。法定速度30キロの一般道を100キロ前後で走行、男性にけがをさせた。前を走るスポーツカーに離されたくないと速度を上げてカーブで衝突。「負けたくない、絶対について行ってやろうと思った。競技で結果が出ず、冷静な判断ができなかった。二度と運転をしない」と述べた。何となく悲しい。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎ジェームズ・ワット(イギリスの発明家。1819年8月25日死去、83歳)

「人生を恐れるな。人生は生きる価値があると信じなさい。そうすれば、君の信念が現実に変わることに役立つだろう」 「あらゆる時代を通じて最大の発見は、人間は自分の態度を変えることで、自分の人生を変えることができるということだ」 「自らの行動が違いを生むと信じて、そのように振る舞うことだ」 「我々人間は、海に浮かぶ島のようなもので、表面では離れているように見えるが、深い海底ではつながっているのだ」 「蒸気機関を3か国だけで製造するのは時間の無駄だ。しかし、全世界のためにそれを作るのであれば、非常に価値があると思う」 「機械技術の分野にいちばん必要なのは、挫折の歴史である。私はヘマな失敗例を集めた書物がほしい」 「企業は失敗する。企業は死ぬ。企業は忘れられる。だが、革命が死ぬことはない。であれば、企業ではなく、革命を始めたほうがよい」 

*** 今週の教養講座(北方領土問題の起源③)

3回 故郷を失った17000人――島民の引き揚げと戦後

1945年8~9月、ソ連軍が択捉、国後、色丹、歯舞群島へ進出したことで、島民の生活は大きく変わった。しかし、日本人住民が占領と同時に全員島外へ追い出されたわけではない。しばらくの間、日本人と新たに入ってきたソ連側の人々が同じ島で暮らす時期があった。この過程を見ると、領土問題がそこに住む人々に何をもたらすのかが見えてくる。終戦時、北方四島には1万7291人の日本人が暮らしていた。漁業を中心に、商店や工場、学校、役場などがあり、家族の日常が営まれていた。ソ連軍が進駐すると、日本の行政機構は次第に機能を失い、島々はソ連側の統治へ移っていった。

占領直後の状況は島や地域によって異なった。日本人住民はそのまま自宅で生活する場合もあれば、ソ連兵や新しく移住してきた住民との同居を求められる場合もあった。言葉も制度も違う人々が突然同じ地域で生活することになったのである。一方で、住民とソ連側の人々の間に日常的な交流が生まれた例も伝えられている。占領という政治的事実と、そこに生きる個人同士の関係は必ずしも同じではなかった。

将来を不安に思い、ソ連軍の本格的な統治が進む前に島を脱出した人もいた。小さな漁船などで根室方面を目指す航海には危険が伴った。それでも北海道へ渡ったのは、今後も島で暮らせる保証がなかったためである。残った住民も、やがて島を離れることになる。1946年以降、ソ連は北方四島を自国の行政制度に組み込み、ロシア人を中心とするソ連国民の移住が進んだ。日本人住民の多くは1947年から1948年にかけて、樺太での収容生活などを経て日本本土へ引き揚げたり、強制退去されたりした。北方四島で続いてきた日本人社会は姿を消した。

引き揚げれば、それで生活が元に戻るわけではない。北海道に着いた人々の中には、家も仕事も財産も失い、一から生活を立て直さなければならない人がいた。漁業者にとって海や漁場を失うことは、住居を失うだけでなく生計の手段を失うことでもあった。さらに先祖の墓を島に残した人も多かった。「領土を失う」という国家の言葉は、個人に置き換えれば、家、仕事、地域社会、思い出を失うことでもあった。

その後、元島民たちは北方領土返還を求める運動を続けた。また、墓参や故郷訪問を望む声も強かった。1990年代以降には、日本人と四島在住のロシア人とのビザなし交流なども行われた。そこでは領有権を争う国家とは別に、かつて島に暮らした人と現在暮らす人が直接顔を合わせる機会が生まれた。現在、四島にはロシア人住民の生活がある。彼らの多くにとっても、島は政治的な「領土」以前に、生まれ育ち、家族と生活する故郷である。この事実も無視することはできない。

北方領土問題には、異なる時代を生きた人々の2つの「故郷」が重なっている。日本の元島民が故郷を失った歴史を記憶すると同時に、現在そこで生活するロシア人の存在も見る。国家の領有権と、そこに暮らす人間の生活を分けて考えることが、領土問題をナショナリズムだけで捉えないための大切な視点なのではないだろうか。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年8月27日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(26日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう

ICC赤根所長 トランプ政権の制裁発表後 初めての会見 さらなる制裁措置に危機感 日本政府の役割に期待 | NHKニュース  →ICCの赤根所長が日本メディアとオンラインで会見。「ICCのみの問題ではなく、法の支配の危機だ」「ICCは決して負けない」「正義は勝たなければならない」と強い言葉で訴え、日本政府や市民の支援も求めた。世界が「法の支配」を守れるか、日本は米国に正論を言えるかどうか。ICCも日本も正念場だ。

中部電力 浜岡原発の廃炉めぐる不適切事案 きょう公表へ | NHKニュース  →中部電力の浜岡原発でまた不祥事が明らかになった。1号機、2号機の廃炉作業をめぐり、資金を管理する「使用済燃料再処理・廃炉推進機構」に費用を請求する際、実際より作業が進んだように報告するなど不適切な手続きをしていた疑いがある。データ捏造に続く不正だが、恐らく担当部署は違う。不正体質が蔓延していることになる。

米CIA長官のモスクワ訪問、目的は「NATO挑発行為」エスカレートへの警告か…露側「情報機関による接触」 : 読売新聞 →世界はいよいよ物騒になっている。米国のCIA長官がモスクワを訪問し、NATO加盟国を挑発しないようにロシア政府に警告した模様。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、米政府の情報として、プーチン大統領がNATOの結束力を試すため、欧州の加盟国にサイバー攻撃や限定的な地上侵攻を数年以内に仕掛ける可能性があると報じている。

辺野古転覆事故 同志社理事長の辞任と校長の解任を発表 | NHKニュース  →辺野古転覆事故のあった同志社国際高校の校長が解任され、学校法人の理事長が辞任した。安全確認の不十分さが指摘されていた。亡くなった生徒の両親は「重く受け止めています。私たちが求めてきたのは、どなたかが職を退くことではなく、2度と同じことが起きない仕組みが作られることです」とコメントを発表した。

ドリー・パートンさん死去 グラミー賞11回、「オールウェイズ・ラブ・ユー」:時事ドットコム →歌手で俳優のドリー・バートンさんは「カントリーの女王」と言われ、米国で絶大な人気を誇った。テネシー州の貧しい家に生まれ、グラミー賞を10回受賞。ヒット曲「ジョリーン」で知られた。生涯で約3000曲を作詞作曲した。子どもの識字率向上のため本の寄贈など慈善活動も行った。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎エドワード・サイデンステッカー(米の日本学者、翻訳家。2007年8月27日死去、86歳)

「(戦後、米軍の日本語将校として佐世保に進駐して)日本の人々は、やがて必ず世界に決して恥ずかしくない国民となるだろう」 「ちゃんと日本語を勉強しよう。これは一生涯を懸けて勉強するに値する国だ」 「親鸞の『なぜ生きる』は、厳粛にして深遠な書である」 「現代文学の中で死ぬまで読み続ける作家は、夏目漱石、谷崎潤一郎、川端康成の3人以外に見当たらない」 「日本という国ほど、自然をひどく壊している国はまず外にないと言わなければならないと思います」 「知人に対しては細やかな礼を尽くす日本の同じ人物が、 電車では空席が十分ありそうな場合でも、躍起になって荒々しく人々を掻き分け、席を確保しようとしている」 「花見会場で桜の木の下の信じがたい多量のごみを目にしたことのある者なら、日本人は自分で出したごみが後から花見に来る人々の感受性に与える効果にまったく無関心であることを知るだろう」 「私にとって、日本語は外国語ではない」

*** 今週の教養講座(北方領土問題の起源④)

4回 なぜ80年以上たっても解決しないのか――日本とロシア、異なる2つの論理」

北方領土問題が難しいのは、日本とロシアが単純に「同じ島を欲しがっている」からではない。両国がそれぞれ異なる歴史を出発点として、自国の主張には根拠があると考えているからである。問題を冷静に見るには、どちらか一方の物語だけでなく、双方が何を根拠としているのかを知る必要がある。

日本側が重視する出発点は1855年の日露和親条約である。この条約では択捉島とウルップ島の間に国境が定められ、択捉島より南は日本側となった。1875年の樺太千島交換条約では、日本が樺太への権利を放棄する代わりにウルップ島以北の千島列島を得た。このため日本政府は、国後・択捉は戦争によってロシアから奪った土地ではなく、もともと日本領だったと主張している。

ロシア側が重視するのは1945年である。第二次世界大戦末期、米英ソはヤルタ協定で、ソ連の対日参戦と引き換えに「千島列島をソ連に引き渡す」ことなどを合意した。ソ連軍は8月に対日戦争へ入り、その後北方四島を占領した。ロシアは、これを第二次世界大戦の結果として確定した領土変更と位置づけている。ロシアにとって対独戦を中心とする第二次世界大戦の勝利は、膨大な犠牲を払った歴史と結びついており、戦後国境の見直しには強い抵抗がある。

問題を複雑にしたのが1951年のサンフランシスコ平和条約だった。日本はこの条約で「千島列島」に対する権利を放棄した。しかし、その千島列島に国後・択捉が含まれるのか、さらに放棄された島々がどの国に帰属するのかについて、後に争いが残った。しかもソ連はこの条約に署名しなかった。日本政府は北方四島を放棄した千島列島には含めない立場で、とりわけ国後・択捉が「千島列島」に含まれるかについて、歴史的・法的議論が続いた。

それでも両国は一度、解決に近づいた。1956年の日ソ共同宣言で国交を回復し、ソ連は平和条約締結後に歯舞群島と色丹島を日本へ引き渡すことに同意した。しかし国後・択捉について合意できず、平和条約は締結されなかった。その後も日本とソ連、さらにロシアとの交渉は繰り返されたが、最終的な解決には至っていない。

ここで注意したいのは、「どちらが絶対に正しいか」という問いだけで歴史を見ないことである。国際政治では、歴史的経緯、条約の解釈、戦争の結果、安全保障、国内世論などが複雑に絡む。日本には、1945年まで日本人が生活していた故郷を取り戻したいという感情がある。一方、現在の島にはロシア人社会が形成され、すでに何世代にもわたって生活している人々がいる。

さらに領土問題はナショナリズムと結びつきやすい。「一寸たりとも譲れない」という主張は国内では支持を得やすいが、相手国にも同じような感情があるため、外交上の妥協を難しくする。北方領土問題を理解するために必要なのは、相手の主張に同意することではない。自国の主張を知ると同時に、なぜ相手も自国が正しいと考えるのかを理解することである。2つの歴史認識を並べて初めて、80年以上解決できなかった理由が見えてくる。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年8月28日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(27日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう

沖縄県知事選挙6人が立候補 基地負担や経済振興で論戦へ 与野党も注力 | NHKニュース  →現職・玉城氏と元那覇市副市長・古謝氏の事実上の一騎打ち。立憲民主、共産などは玉城氏、自民、維新、国民民主などは古謝氏を推す。沖縄県民は辺野古への基地移設に反対の意思を表明し続けているが、代替案がなく、国が強行している。基地負担の軽減や経済振興が焦点。今回はどんな意思を示すのだろうか。

ネパール・中国の国境地帯で土石流“日本人5人と連絡取れず” | NHKニュース →ネパールと中国の国境地帯で大規模な土石流が発生した。少なくとも1400人以上が行方不明になり、外国人観光客数百人が含まれている。日本人5人と連絡が取れていない。詳細な被害や原因はわかっていないが、崩れた氷河が引き起こしたという見方がある。気候変動と関係がありそうだ。

富山、石川に一時大雨特別警報 線状降水帯発生、河川氾濫や土砂崩れも―前線の影響、浸水など警戒:時事ドットコム →富山、石川県に警報レベル5の大雨警報が出た。河川の氾濫が相次ぎ、広範囲に浸水や停電、断水の被害が出た。千葉豪雨の記憶が生々しいが、死者が出ていないのが救い。教訓は何だろうか。人口が密集していないからか、千葉の夕方以降と違って、昼前後だったからか。

超党派議員団、中国共産党幹部と会談 日中関係悪化後初:時事ドットコム →訪中している超党派国会議員団が、中国共産党で外交を担う中央対外連絡部(中連部)の陸慷副部長と会談した。昨年11月の高市発言以来、日本の国会議員と共産党幹部の会談は初めて。陸氏は台湾を巡る高市氏の発言や認識が変わらない限り「中国としては政策を変えるつもりはない」と表明したという。

芸術家 草間彌生さん死去 97歳 水玉モチーフの作品で知られる | NHKニュース  →森美術館元館長の南條史生さんは「日本最大級の作家で、世界の美術史にも多大な影響を与えてきた」と悼んだ。長野県松本市で生まれ、子どものころから体験していた幻覚や幻聴をもとにした絵を描き始めた。1957年にアメリカに渡り、前衛的な絵画や彫刻、鏡や電飾を使った作品を発表して注目された。ベトナム戦争を背景にアメリカでヒッピー文化が広がるなか、裸の男女に水玉をボディペインティングする「ハプニング」と呼ばれるパフォーマンスを展開し、話題を呼んだ。世界的スケールの文化勲章受章者だった。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎ミヒャエル・エンデ(ドイツの児童文学者。1995年8月28日死去、65歳)

「戦争は市場を創設するという意味で、現在の経済構造に積極的に組み込まれている。私が現在の構造を批判する理由の1つもそこにある」 「想像する力は不断に磨いておかねばならない。子どもたちは誰でも、想像する能力を潜在的に持っているが、最近の教育はそれを殺すことに一生懸命だ。とても残念で、不幸なことだと思う」 「どう考えてもおかしいのは資本主義体制下の金融システムではないでしょうか。個人の価値観から世界像まで、経済活動と結びつかないものはありません。問題の根源はお金にあるのです」 「私は日本の考え方にはある危険性があると思います。どの問題においても思考を日本の関心事に限定しています。それは日本の国家的なエゴイズムのようなものです」 「日本では従来の古い美徳観念が、近代的工業社会の原理と混ざり合いました。連帯意識や領主に対する忠誠心は、今日では企業に捧げられています。これはこの先、葛藤を生むと思います。この2つは本来相容れないものです」

*** 今週の教養講座(北方領土問題の起源⑤)

第5回 北方領土をこれからどう考えるか――必要な多角的視点

北方領土問題は現在、日本とロシアだけを見ていても全体像を理解できない。背後には米国、中国、ウクライナ情勢など大きな国際政治がある。四島の将来は、日露関係だけでなく、東アジアの力関係によっても左右される問題なのである。

歴史的にも第三国は深く関係してきた。1945年のヤルタ会談では、米国のルーズベルト、英国のチャーチル、ソ連のスターリンが、ソ連の対日参戦と引き換えに千島列島をソ連へ引き渡すことなどを合意した。1956年の日ソ交渉でも、日本の背後には冷戦と日米関係があった。北方領土問題は最初から純粋な二国間問題ではなかったのである。

現在も最も重要な第三国は米国である。日本は米国と安全保障条約を結び、国内に米軍基地がある。ロシアから見れば、島の帰属が変わる可能性を考える際、日米同盟を無視することはできない。特に択捉、国後周辺は太平洋とオホーツク海を結ぶ位置にある。ロシアはオホーツク海を戦略原子力潜水艦の重要な活動海域としており、その周辺の防衛を重視している。

そこへ中国という要素が加わる。近年、中国とロシアは軍事面を含め戦略的な連携を強め、日本周辺でも両国の軍事活動が行われている。日本の防衛白書も、中国との戦略的連携を伴うロシアの軍事動向を安全保障上の強い懸念としている。日本から見ればロシアは北、中国は西南に位置する。このため北方領土問題も、日米同盟、中露関係、東アジア全体の安全保障という大きな構図の中に置かれるようになった。

さらに2022年のロシアによるウクライナ侵略が状況を変えた。日本はG7諸国と歩調を合わせてロシアへの制裁を実施した。これに対しロシアは同年3月、日本との平和条約交渉を継続しないと表明し、四島交流なども停止した。現在、領土交渉再開の見通しは立っていない。

国際政治だけを見ていると忘れがちなのが、人々の時間である。元島民は高齢化している。「もう一度故郷へ行きたい」「墓参をしたい」という願いには残された時間が少ない。一方、現在の四島には、そこで生まれ育ったロシア人とその家族の生活がある。北海道の漁業者にとっては、周辺海域で安全に漁ができるかどうかも切実な問題である。日本政府も、領土問題とは別に墓参や漁業など隣国間で対処すべき問題があるとしている。

将来を考えるとき、「四島か二島か」「返還か現状維持か」だけでは十分ではない。米国との同盟、中国とロシアの関係、ロシアの安全保障、現在の島民の生活、元島民の故郷への思いなどを同時に考える必要がある。

領土問題は、ともすれば「われわれの土地」と「彼らの土地」という感情を刺激する。しかし歴史を学ぶ目的は、感情を強めることだけではない。なぜ日本は返還を求めるのか、なぜロシアは応じないのか、なぜ米国や中国を含む国際情勢が影響するのか。その3つを同時に考えることが重要である。北方領土は、国境とは何か、戦争の結果を後世はどう扱うべきか、そして国家の利益と人々の生活をどう両立させるかを考えさせる難問でもある。