2026年8月31日から9月4日(教養講座:国際機関とアメリカ)

~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年8月31日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(28~30日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎【被害まとめ】福井県内 道路冠水や住宅浸水の情報相次ぐ | NHKニュース 【大雨被害 動画】福井県内の上空からの映像 | NHKニュース →今度は福井県内でレベル5の記録的大雨があり、住宅の浸水や道路の冠水などの被害が出ている。福井市、勝山市、大野市などが中心で、全容はまだよくわからない。NHKの空からの映像では浸水地域は広範囲に及んでいる。先週大雨被害のあった石川、富山の被災地では復旧作業が続いているが、31日の北陸地方は猛暑日が予想されている。
◎ネパール土石流 768人死亡 3000人以上不明 6歳女児をがれきの下から救出 | NHKニュース →ネパールの土石流被害は拡大し、死者768人、行方不明3000人以上にのぼっている。多くの映像が流れているが、すさまじい光景だ。被害はさらに拡大しそうだ。氷河崩壊が原因との見方が強まっており、地球温暖化が関係していそうだ。日本では大雨被害が顕著だが、被害は世界各地で拡大している。人類は戦争や対立をしている場合ではない。結束して気候変動問題に取り組まないと・・・。
◎立憲民主党 中道改革連合 公明党 3党が党首会談 立憲民主党が合流しない方針を伝達 | NHKニュース →政治でも経済でも競争が望ましいが、野党がさらにバラバラになる。喜ぶのは自民党という構図が続く。急ごしらえの中道改革連合は、今年2月の総選挙で惨敗したといえ、比例区で1043万票、18.2%の得票を獲得した。自民党の半分で、議席数ほどの差はない。この票の受け皿がなくなる。野党は細かな差異にこだわりすぎだ。
◎国民民主党 代表選挙 討論会で党運営や組織のあり方めぐり論戦 | NHKニュース →注目度は低いが、国民民主党の代表選挙が続いている。投票は9月6日。玉木代表の続投は確実視されているが、当選2回・30歳・元航空自衛官の橋本氏が論戦を挑んでいる。玉木代表は自民党とも近いが、橋本氏はもっと対峙するように訴えている。健全な競争だ。
◎横浜市の山中市長が辞職届 各党が選挙準備加速へ | NHKニュース →パワハラを指摘された横浜市の山中市長が辞表を提出した。改心したとしても職員は忘れておらず、さすがに続投は無理だった。10月までに市長選があるが、出馬については「まったく未定」としている。ということは、立候補の可能性はゼロではない。市長を選ぶのは職員ではなく市民で、福祉を向上させたそれなりの実績もある。横浜市はどうなるのだろうか。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎ダグラス・マッカーサー(連合国軍最高司令官。1945年8月30日、厚木基地に降り立った)
「日本人は戦争以来、現代史上で最も偉大な改心を経験した」 「科学、美術、宗教、文化などの発展の観点からみて、アングロサクソン民族が45歳の壮年に達しているとすれば、ドイツ人はそれとほぼ同年齢である。しかし、日本人はまだ児童の時代で、12歳の少年である。ドイツ人が現代の道徳や国際道義を守るのを怠けたのは、それを意図的にやったのであり、無知のためではない。ドイツが犯した失敗は、日本人の失敗とは趣を異にする。日本人はドイツ人と違う。日本人は新しいモデル、新しい考え方を受け入れることができる。日本に基本的概念を植え付けることは可能である」 「(朝鮮戦争で)30発から50発の原子爆弾を満州の頚状部に投下すれば、10日以内に勝利できる。そうすれば、少なくとも60年間は北から朝鮮を侵攻する余地がなくなる」(マッカーサーは原爆を使いそうだという印象をトルーマン大統領に抱かせたため、ソ連による原爆投下の報復を恐れ解任されたといわれている)。
*** 今週の教養講座(国際機関とアメリカ①)
筆者は今年7月、「10歳からの図解でわかる国際機関」(メイツ出版、1720円)を出版した。小中学生向けだが、執筆して改めて感じたことは、アメリカ第一主義を掲げるトランプ大統領の登場で、国際協調主義が大きく揺らいでいることだ。国際機関の多くは、第二次世界大戦の反省で設立された。そこには「戦争はごめんだ。世界各国は仲良く協力しよう」という合意があった。戦後80年が過ぎ、国際協調をリードしてきたアメリカは、なぜ変質したのだろうか。国際機関の現状と課題を5分野に分けて解説する。初回は赤根所長に対する経済制裁が大きなニュースになっている国際司法分野のICC(国際刑事裁判所)を取り上げる。
【1】ICC=国際刑事司法――力ではなく法による国際社会へ
国際刑事裁判所(ICC)は、戦争犯罪や人道に対する罪、集団殺害など、国際社会全体に関わる重大犯罪をした個人を裁くための裁判所である。2002年に設立され、本部はオランダのハーグにある。国家間の争いを扱う国際司法裁判所(ICJ)とは異なり、大統領や軍人など「個人」の刑事責任を追及するところに特徴がある。
ICCが生まれた背景には、第二次世界大戦やその後の地域紛争への反省がある。国家の指導者であっても、重大な犯罪をすれば責任を問われるべきだという考え方である。「勝った国なら何をしてもよい」「大国の指導者は裁かれない」という世界から、国際法に基づく世界へ一歩進もうとする試みだった。
ただしICCには大きな弱点がある。米国、ロシア、中国などの大国が加盟していないことである。ICCには独自の警察もなく、容疑者の逮捕などは加盟国の協力に頼らざるを得ない。それでも国際社会が重大犯罪を放置しないという意思を示す点で重要な役割を持っている。
トランプ政権はICCに極めて批判的である。米国はそもそもICC加盟国ではなく、自国民が米国の同意なしに国際的な裁判所の捜査や裁判の対象になることは国家主権を侵害すると考えている。さらにICCの捜査には政治的な偏りがあるとして、関係者への制裁も行ってきた。ICCはプーチン大統領やネタニヤフ首相に逮捕状を出し注目されたが、米国はこのほど赤根智子所長を経済制裁の対象にした。
国際裁判所には公正さが求められるが、自国に不都合な判断をする国際司法機関に経済制裁を加えることが常態化すれば、より大きな問題が生じる。国際法より国家の力が上位に置かれてしまうからである。とりわけ重要なのは、すべての国に同じルールを適用することである。弱い国の指導者だけが裁かれ、強い国やその同盟国は責任を問われないのであれば、国際司法への信頼は生まれない。強国が国際司法そのものを拒絶すれば、「力のある国は例外」という考え方を固定することになる。
ICCには制度上の限界があり、改革も必要といえるが、目指している理念は重要だ。戦争や大量虐殺を最終的に「力」で決着させるのではなく、「法」によって責任を問う。その仕組みを育てられるかどうかは、人類が戦争の時代からどこまで前進できるかという問題でもある。ICCをめぐる米国との対立は、国家主権を優先する世界と、国家を超える法を育てようとする世界とのせめぎ合いといえる。赤根所長への制裁に対しては、欧州各国をはじめ中小規模の国々は一斉に非難している。「法の支配」を強調してきた日本政府にとっても大きな試金石である。
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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年9月1日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(31日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎来年度予算案 概算要求 総額は過去最大 143兆円前後の見通し | NHKニュース →世界の金融市場が注視している高市政権の財政政策。31日に締め切った概算要求は過去最大の143兆円の見通しとなった。投資枠に上限を設けず、当初と補正の予算を一体で編成するというが、どうなるかはわからない。財務省がしっかり査定できるかという懸念もある。長期金利はこの日、2.95%まで上昇しており、市場との緊迫した攻防は年末まで続きそうだ→ 長期金利、2.950%に上昇 30年ぶり高水準:時事ドットコム
◎米財務長官 G20前に「植田総裁は正しいことをする」 | NHKニュース →ベッセント財務長官が利上げで日銀に露骨な援護射撃をしている。9月に利上げする可能性が高まっている。高市首相は積極財政、金融緩和を目指してきたが、米国と齟齬が生じている。高市政権の米国依存はかねて指摘されているが、外交政策も財政政策も自ら招いて手詰まりになっており、さらなる米国依存の悪循環に陥っていると見ることができる。
◎核のごみ最終処分地の文献調査 茨城 常陸大宮市に申し入れ 市長「個人的には非常に前向き」 | NHKニュース →常陸大宮市は茨城県の北西部にあるが、大電力消費地である関東地方の一角。日本で原発を稼働した以上、最終処分地は必要になる。「原発は必要、地元に関連施設は反対」では筋が通らない。消費地の人間が原発を我が事として考えるきっかけになるか。調査地は4か所目、国が申し入れたのは小笠原村に続けて2例目。経産省は今後、他の候補地にも申し入れる方針。
◎中道 立民 公明が党首会談 3党合流断念 中道は新形態目指す | NHKニュース | 国会 →野党3党の合流断念が党首会談で正式に決まった。中道改革連合は事実上解体し、野党はますます細切れになる。喜ぶのは高市政権。失政をしても追及する勢力が弱く、最後は国民につけが回る。何回も書いているが、野党は自民党のまとまる力、融通無碍に学ぶべきだろう。自民党内では国家観や政策に差がある。違いを包み込む知恵と懐の深さが必要だ。
◎来年の年賀はがきの発行枚数 前年比25%減 | NHKニュース →来年発行の年賀状枚数は前年比25%減の5億5593万枚。ピークは2004年の44億5000万枚だったので、8分の1になる。電子メールやSNSの普及で需要が落ち込んでいる。若い人は出す習慣がなく、シニアは年賀状じまいを急ぐ。正月の風物詩も今は昔か。
◎旧統一教会総裁に懲役2年判決 尹前政権に金品提供―韓国地裁:時事ドットコム →旧統一教会総裁に実刑判決が出た。ユン前政権から便宜を受けるために金品を提供した罪。自らの勢力維持のための政界工作だが、求刑の懲役13年からはかなり減刑された。保守系政党に信者を集団入党させたとして別の裁判も進んでいる。日本でも自民党に接近して「反日集金マシン」となっていた。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎ミハイル・ゴルバチョフ(ソ連最後の共産党書記長。2022年8月30日死去、91歳)
「握り締めた拳では、握手はできない」 「何より大切なのは、自分が成功しようとしまいと、悠然として自信を失わないこと。家族や友人、そして自分を信じて、権力や名誉などなくとも立派に生きていけることを確信してゆくこと」 「君は隠れた大きな力の持ち主である。まず君自身が持っている隠れた力を自覚することだ」 「いつの場合も、引っ込み思案は敵、積極果敢は味方だ」 「人間は、試練に立ち向かう強い心を常に持たなければならない。不幸や敗北に屈しない勇気と頑強さ、そして困難のときこそ、自身を試すという決意なくして、本当の人生を生き抜くことは難しい」 「心から泣くことを知らない者は、笑うことも知らない」 「自分の間違いを認めることは非常に難しい。しかしそれをしなければ先には進めない」 「いままで使ってきた方法や手段で今後も問題を解決できると思っているとしたら、その考えは甘いと言わざるを得ない」
*** 今週の教養講座(国際機関とアメリカ②)
【2】国連=世界平和――大国もルールに従う世界をつくれるか
国際連合(国連)は、第二次世界大戦が終わった1945年に設立された。2度の世界大戦を経験した人類が、国家間の争いをできるだけ話し合いで解決し、再び世界大戦を起こさないためにつくった組織である。現在はほぼすべての国が加盟し、本部はニューヨークに置かれている。
国連の中心的な目的は国際平和と安全の維持である。安全保障理事会では、戦勝国の米国、中国、ロシア、英国、フランスの5か国が常任理事国となり、特別な拒否権を持っている。このほか国連は、難民支援、人権、開発、食料、教育など幅広い問題に取り組んでいる。国連本体は加盟国の分担金を中心に運営され、国連機関や各種事業では任意拠出金も大きな役割を果たしている。
米国は国連創設を主導した国であり、長年最大の資金負担国でもあった。しかしトランプ政権は、国連をはじめとする多国間協力に批判的だ。米国ばかりが大きな費用を負担している、官僚組織が肥大化して非効率である、米国の価値観や国益に反する活動まで支援する必要はない、というのが主な主張である。
国連に改革が必要なのは確かである。安全保障理事会では常任理事国が拒否権を使えば重要な決定ができず、ロシアによるウクライナ侵攻などをめぐって機能不全が表面化した。80年前につくられた常任理事国の構成が、現在の世界を適切に反映しているのかという問題もある。
だからといって国連を軽視すればよいわけではない。国際社会には国内社会の政府に相当する存在がない。敵対する国同士でも同じ場所に集まり、最低限のルールに基づいて話し合う場が必要になる。国連が戦争を完全に防げないから無意味なのではない。対話の回路を残し、紛争の拡大を防ぎ、人道支援を続けること自体に意味がある。
特に問題なのは、最も強い国が国際協調から離れることである。小さな国には国際的なルールを守るよう求めながら、大国は自国の利益を優先して自由に行動するとなれば、国際秩序への信頼は失われる。「力の強い国が勝つ」という世界に逆戻りしかねない。
国連は決して完全な組織ではない。拒否権、財政、官僚主義など改革すべき課題は多い。それでも必要なのは国連を弱くすることではなく、より機能する組織に変えることである。自国の利益と世界の安定は本来、対立するものではない。世界最大級の力を持つ米国が国際協調を支えるのか、それとも距離を置くのか。国連だけでなく、戦後80年の国際秩序の行方を左右する問題である。
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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年9月2日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(1日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎長期金利3%超 約30年ぶり 日銀の早期利上げ観測など背景 | NHKニュース →長期金利が3%を超えた。日米の利上げムードや日本の財政政策など複合的な要因だが、米国が神経をとがらせている。米国債が売られないように「ドル防衛」に動いている気配もある。日本の政策選択の幅はますます狭くなっている→片山財務相 ベッセント財務長官と会談 秩序だった円相場不可欠 | NHKニュース
◎住宅ローン「フラット35」 長期金利上昇で過去最高 | NHKニュース 住宅ローン変動金利 大手2行が9月からの引き上げを発表 | NHKニュース →住宅ローン金利も上昇している。金利高を受けた流れで、ローンを抱えている人やこれから借りようとする人には厳しい。株価には引き下げ圧力になる。しかし、どんな経済現象もプラス・マイナスの影響がある。預金者には恩恵で、金利収入をあてにする団体には朗報だ。多角的に経済現象を見る目を養いたい。
◎鈴木農相 政府備蓄米21万トン買い戻しを表明 価格への影響焦点 | NHKニュース →政府が備蓄米21万トンを買い戻す。鈴木農水相は「ことしの作柄は平均を上回る見込み。コメの供給量は十分以上に確保されることが確認された」と述べた。価格にどう影響するか。昨年来のコメ価格の乱高下は何だったのだろうか。最近は新米が昨年産より安い現象も起きている。コメ農政の哲学がはっきりしない限り、コメ騒動の再来は避けられないだろう。
◎米陸軍長官が辞表提出 国防長官と対立か―報道:時事ドットコム →アメリカの陸軍長官が辞表を提出した。制服組トップの参謀総長も4月に解任された。いずれもヘグセス国防長官と対立していた。最近、日本も含む世界各地で、上司と対立するとすぐに解任する動きが相次いでいるように見える。「部下を使いこなすのもリーダーの器量」という教えは昔話なのだろうか。
◎「生活道路」で速度取り締まり 時速60キロから30キロに―警視庁:時事ドットコム →中央線がない幅5.5メートルの生活道路の最高速度が時速30キロになった。これまで60キロだったというが、知らなかった人も多いのではないか。60キロで走れば、危険極まりない。規制強化は遅すぎると感じるが、違反を躍起になって摘発されるのも困る。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎岡倉天心(明治期の思想家。1913年9月2日死去、50歳)
「人は己を美しくして初めて、美に近づく権利が生まれる」 「自己の内側の大いなるものの小ささを感じることができぬ者は、他人の内側の小さなものの大きさを見逃しやすい」 「日々の暮らしぶり、そのなにげない仕草のうちに、内心の動きはあらわれる」 「日本は鎖国によって長く世界から孤立してきた結果、その分、深く自国の文化を顧みることになり、これが茶道の発達を大きく促すことになった。私たち日本人の住居、習慣、衣服や料理、陶磁器、漆器、絵画、そして文学にいたるまで、すべて茶道の影響を受けていないものはない。日本文化を学ぼうとするなら茶道の存在を知らずにはすまされない」 「現代の芸術家は、技術に溺れるあまり、滅多に自身を超えるということがない」 「面白いのは、行為そのものではなくて、その行為にいたる経過だ」「芸術鑑賞に必要なのは心と心が共感し、通い合うことだが、そのためには、たがいに謙譲の気持ちを持ち合わねばならない」
*** 今週の教養講座(国際機関とアメリカ③)
【3】WHO=保健――感染症に国境はない
世界保健機関(WHO)は、世界の人々の健康を守るため、1948年に設立された国連の専門機関である。本部はスイスのジュネーブにあり、ほぼすべての国が加盟している。感染症の監視や情報共有、予防接種の普及、途上国の医療支援などが主な仕事である。新型コロナウイルスの流行では、世界的な感染状況を把握し、各国に情報や指針を示す役割を担った。
WHOが必要なのは、感染症に国境がないからである。航空機で世界が結ばれた現在、1つの国で発生した感染症は短期間で世界へ広がる。自国の医療体制を整えるだけでは国民を守れない。各国が患者の発生状況や病原体の情報を共有し、協力して対策を取らなければならない。その調整役がWHOである。
ところが、トランプ米大統領は2025年1月、就任直後にWHOからの脱退を表明し、米国は2026年1月に正式離脱を公表した。トランプ政権は、WHOが新型コロナへの対応を誤った、中国の影響を受けすぎている、米国の資金負担が大きすぎるなどと批判している。国際機関の効率性や透明性を検証し、改革を求めること自体は必要だろう。WHOにも改善すべき点はある。
しかし、米国の離脱にはより大きな問題がある。米国は長年、WHOを資金面で支える最大級の国であると同時に、医学や感染症研究で世界をリードしてきた。その米国が離れることは、単なる財政問題にとどまらない。世界的な感染症監視や研究協力、途上国支援などの力が弱まり、結果として国際社会全体の安全性が低下する恐れがある。
ここで考えたいのは、「途上国を助けること」と「自国民を守ること」は対立しないという点である。医療体制の弱い国で感染症が広がれば、新たな変異株が生まれ、やがて米国や日本にも到達する可能性がある。海外への医療支援は単なる慈善ではなく、自国を守るための投資でもある。
もちろんWHOにも改革すべき課題はある。新型コロナへの対応を検証し、情報公開や意思決定を改善し、特定の大国に左右されない組織にしていく必要がある。しかし問題があるから脱退するのではなく、加盟国が協力して改革することが国際協調の基本ではないだろうか。
WHOをめぐる問題が示しているのは、「自国第一」と「国際協調」を単純な二者択一にしてはいけないということだろう。感染症、気候変動、紛争など一国で解決できない問題は増えている。自国民を守るためにも世界と協力する必要がある。 WHOの危機は、その当たり前の原則を国際社会が維持できるのかを問いかけている。
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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年9月3日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(2日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎米軍、革命防衛隊へ攻撃 結婚式会場も被弾で死者―イランは報復、「海峡封鎖強化」:時事ドットコム →米国とイランの軍事衝突が再燃している。米中央軍は1日、イランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」を標的に攻撃を行ったと発表した。イランメディアは、少なくとも12人が死亡し、結婚式をしていた住宅が被弾。子どもを含む5人が犠牲になったと報じている。米国とイランの対立は、世界的インフレの根源だけに先行きが心配だ。
◎上皇さまの意向受け 将来の葬儀の規模大幅縮小へ | NHKニュース | 皇室 →NHKの夜7時のニュースは災害報道が多かったが、2日はこのニュースをトップで8分間も報じた。上皇さまは簡素な葬儀を希望し、宮内庁もその方向で動いている。昭和天皇の大喪の礼は新宿御苑を2か月半も閉鎖したが、皇居での開催を望んでいる。国民の間でも家族葬が増えており、簡素化は象徴天皇にふさわしい。高市官邸は了解しているのだろうか。
◎ベセント財務長官、片山さつき財務相に不満ぶちまけ 高市政権の経済政策に2時間以上、5月訪日時に―報道:時事ドットコム →日本の経済政策に対するベッセント財務長官の不満はかなり以前からあった。5月に来日した際、片山財務相に不満をぶちまけていたとニューヨークタイムズが報じた。「高市首相の経済顧問がなぜ円安の利点を説いているのか」「なぜ日銀に独立性が与えられていないのか」などと批判した。日本にいら立つ同長官の最近の発言はこの延長線上にある。
◎「聖闘士星矢」作者が横領被害 元マネジャーらに28億円の賠償請求:朝日新聞 →漫画家の車田正美さんが、元マネジャーの男性らに28億円を横領されたとして賠償を求める訴訟を起こした。男性は出版社の元担当編集者で、著作権の管理など事務を任せていたという。国税局の指摘で発覚した。車田さんは「怒りを通り越して、やるせなさを感じている」と憤っている。
◎プロ野球 ヤクルト 現役最年長の石川が今季かぎりでの引退表明 | NHKニュース →46歳でプロ野球現役最年長のヤクルト石川雅規投手が、引退を表明した。身長167センチで、通算188勝。最長の24年連続勝利を達成している。秋田商業から青山学院大を経て入団。「体の大きな選手には負けたくない」と抜群のコントロールで投球術を磨き、お手本的な存在だった。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎オーギュスト・コント(仏の社会学者、哲学者。1857年9月5日死去、59歳)
「総合的な精神は共感を発達させる」 「腹蔵なく、生一本(きいっぽん)になって生きていけ」 「人類は、生者よりも死者で成り立っている」 「予知するために予見する。予見するために観察する」 「男と女、こうも違ったしかも複雑な2人の人間が、互いによく理解し愛し合うためには、一生を費やしてもまだ長すぎはしない」 「愛の本質は、個人を普遍化することである」 「人間とは、パラドックスの体現であり、矛盾の塊である。幾何学者にも天文学者にも科学者にもなりたいわけではない大衆は、すべて基本の科学のそれぞれの主要諸観念を絶えず同時的に求めている」 「生者は元来、しかも、ますます、死者に支配されるものである」 「人間の思考は学問研究でも日常生活の思考でも、神学的、形而上学的、実証的という3つの段階を経て発展する」
*** 今週の教養講座(国際機関とアメリカ④)
【4】WTO=貿易――関税の応酬を防ぐために
世界貿易機関(WTO)は、国際貿易の共通ルールをつくり、貿易をめぐる国同士の争いを解決するための国際機関である。1995年に発足し、本部はスイスのジュネーブにある。第二次世界大戦前、各国が自国産業を守ろうと関税を引き上げ、それが世界経済の分断を深めた。その反省から戦後、GATTを中心とする自由貿易体制がつくられ、発展させる形でWTOになった。
基本的な考え方は、できるだけ自由で公平な貿易を実現することである。例えば、ある国の商品だけを不当に優遇・差別しないことや、約束した水準を超えて勝手に関税を引き上げないことをルールとしてきた。紛争が起きた場合も、経済力による報復ではなく、WTOの手続きによって解決することを目指す。
これに対し、トランプ政権はWTOを重視する従来の米国外交から距離を置いている。特に問題視するのが中国である。中国は2001年にWTOへ加盟したが、国有企業への補助金、技術移転、知的財産権などをめぐり、米国は「中国が自由貿易の利益を享受しながら、公平な競争をしていない」と批判してきた。また、WTOの制度は意思決定が遅く、現在の中国のような国家主導型経済に十分対応できないという不満もある。
こうした問題提起には検討すべき点がある。しかし、米国が一方的に高い関税をかけ、相手国も報復関税で対抗するようになれば、WTOが目指してきた「力ではなくルールによる貿易」が揺らぐ。経済大国ほど自国の力を使って有利な条件を要求できるようになり、中小国は不利な立場に置かれる。
さらに関税は相手国だけを苦しめるものではない。輸入品の価格が上昇すれば、自国の消費者や企業にも負担が及ぶ。世界中に広がったサプライチェーンが分断されれば、企業活動も不安定になる。1930年代の世界恐慌後、保護主義が広がり、国際対立を深めた歴史も忘れてはならない。
自由貿易にも問題はある。安い輸入品によって国内産業が衰退し、雇用を失う人もいる。自由貿易の利益を社会全体にどう分配するかという課題に、各国政府が十分対応してこなかった面もある。だからこそ必要なのはWTOを捨てることではなく、改革することである。中国の国家補助、デジタル貿易、経済安全保障など新しい問題に対応できるルールを整える必要がある。自国の利益を守ることは当然である。しかし各国が「自国第一」で関税を武器にすれば、最後にはすべての国が損をする。WTOの危機は、世界経済を「力」で動かすのか、「ルール」で動かすのかという選択を私たちに迫っている。
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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年9月4日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(3日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎鈴木俊一自民幹事長続投へ、麻生太郎副総裁も留任…高市首相意向 : 読売新聞 →高市首相は自民党の鈴木幹事長と麻生副総裁を留任させる意向だと読売新聞が報じた。高市首相と麻生副総裁は微妙な関係だが、高市首相は現状維持の無難な路線を選ぶようだ。高市首相は8月上旬、読売新聞主筆を官邸に呼び、8月29日付で独占インタビューを書いてもらった。言い分をそのまま載せる「広報記事」だが、そのお土産の人事情報とみられる。政権の骨格は維持し、維新の入閣だけの小幅人事の見通しだ。
◎日中友好議連 超党派若手が9月訪中を検討 関係改善糸口探る | NHKニュース →対中関係改善の糸口が見え始めた。超党派の国会議員が今月中の訪中を検討している。日中友好議員連盟の若手で、連盟会長の森山前幹事長が明らかにした。中国外務省報道官は「日本国内の一部の見識ある人々は、関係改善の努力をしたいと考えている。両国関係を重視するのであれば、相互理解と信頼を深めたい」と好意的。いつまでも対立している意味はない。高市首相の本気度が問われている。
◎熊本 八代 日本製紙八代工場「解体中の煙突から火」 | NHKニュース →熊本地震で大きな被害を受けた八代市の日本製紙工場で、解体中の煙突から出火した。火は一時、猛烈な勢いで燃え上がった。近くに従業員がいたが、すぐに逃げ、けが人はいない。地震では3本あった煙突のうち1本が倒壊し、残り2本も大きく損傷している。
◎「まんじゅうや」は無効票 茨城・神栖市長の当選認めず―東京高裁:時事ドットコム →「事実は小説より奇なり」とまではいかないが、茨城県神栖市長選がもめている。現職と新人が同数となり、くじ引きで新人が当選。和菓子店の息子で「まんじゅうや」と書かれた票が有効と判断された。しかし、現職が取り消しを求め、県選管と高裁が無効票と判断した。最高裁が認めれば、市長は交代するが、新人は「私は『まんじゅうや』と呼ばれていた」と譲らない。「茨城まんじゅう論争」は続く。
◎ノーベル化学賞の白川英樹氏が死去、90歳…電気通すプラスチック開発で2000年に受賞 : 読売新聞 →当時の常識を打ち破って「電気を通すプラスチック(導電性ポリマー)」を開発し、IT産業を発展させる起爆剤となった。東工大理工学部を卒業し、筑波大学教授を務めた。ノーベル化学賞受賞は2000年だが、日本人の化学賞は福井謙一さん以来、19年ぶり。その後、5人の化学者が受賞し、日本化学の名が高まった。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎黒澤明(映画監督。1998年9月6日死去、88歳)
「人間は弱いものだからね。平穏無事に生きている時は大していい考えなんか出てこないのさ。ここを踏み外したら真っ逆さまだぞと追い詰まったとき、やっとこさっとこ、頭がフル回転し始める」 「生きているのは苦しいとかなんとか言うけれど、それは人間の気取りでね。生きているのはいいものだよ。とても面白い」 「些細なことだといって、一つ妥協したら、将棋倒しにすべてが壊れてしまう」 「自分の人生経験だけでは足りないのだから、人類の遺産である文学作品を読まないと一人前にならない」 「世界中の優れた小説や戯曲を読むべきだ。それらがなぜ名作と呼ばれるのか、考えてみる必要がある」 「ハッキリと言わなければ、かえって人を傷つけることもある」 「何もないところからものを創り出していると思っているのは、人間の驕りだよ。どこかで耳にし、目にした何かが、知らず知らずに入り込んだ記憶が、何かのきっかけで呼び覚まされて動き出す。そうやって、創造していくと思うよ」 「昔、映画会社は夢の工場と呼ばれていたんだ」
*** 今週の教養講座(国際機関とアメリカ⑤)
【5】UNFCCC=環境――地球温暖化は一国では止められない
気候変動は、国際協調が最も必要とされる問題の1つである。その中心的な枠組みが、1992年に採択された国連気候変動枠組条約(UNFCCC)である。各国が毎年集まるCOPもこの条約に基づく会議で、2015年のCOP21では、世界の気温上昇を抑えるための「パリ協定」が採択された。
気候変動の特徴は、一国だけで解決できないことである。日本が温室効果ガスを減らしても、他国で大量に排出されれば地球全体の気温は上昇する。反対に、自国だけが対策をしなければ、他国の努力に「ただ乗り」することになる。そのため各国が共通の目標を持ち、それぞれの事情に応じて排出削減に取り組む仕組みが必要になる。
トランプ大統領はこうした国際的な気候変動対策に強い疑問を示してきた。第1次政権でもパリ協定からの離脱を決め、第2次政権でも再び離脱した。さらに2026年にはUNFCCCそのものから離脱する方針を打ち出した。背景には、厳しい環境規制が米国の石油、天然ガス、製造業などを弱くし、雇用や経済成長を損なうという考え方がある。中国などにも同等の負担を求めるべきだという不公平感もある。
確かに、気候変動対策には費用がかかる。環境規制によって打撃を受ける産業や地域も存在する。先進国と途上国のどちらがどれだけ負担するのかという問題も簡単ではない。国際的な取り決めが実際に守られているのかを検証する仕組みも重要である。気候変動は国内の景気や選挙の周期よりはるかに長い時間軸で考える必要がある。猛暑、干ばつ、洪水、海面上昇などは国境を越えて社会や経済に影響する。対策を先送りすれば、将来必要となる費用がさらに大きくなる可能性もある。
米国は世界有数の温室効果ガス排出国である。技術力、経済力でも大きな影響力を持つ。その米国が国際的な枠組みから離れれば、他国にも「自国も努力しなくてよい」という空気が広がりかねない。必要なのは、環境保護か経済成長かという二者択一から脱することである。脱炭素技術への投資を新しい産業や雇用につなげ、負担を公平に分かち合う制度をつくる必要がある。地球の大気には国境線がない。だからこそ気候変動は、「自国第一」だけでは解決できない問題の典型なのである。
