ブラボー! ナガトモ、モリヤスさん
2022.12.06コラム
サッカーワールドカップで6日、日本代表がクロアチアにPK戦で敗れ、悲願の8強はならなかった。しかし、ドイツとスペインを撃破する歴史を作った。選手のヒーローは試合ごとに生まれたが、森保一監督も鈍く光る。地味なたたずまいだが、ただモノではない。
大会前、森保監督を伝えるいくつかの記事が目を引いた。
サンフレッチェ広島の監督時代、心の病を発症した選手がいた。元五輪代表の選手だ。森保監督に相談すると、「何かあればいつでも言って。24時間、扉は空いているから」と言われた。朝のランニングに付き合って欲しいというと、朝7時から数十回付き合ってくれた。「いつもしんどい」と伝えると、「しんどいと思っている自分を好きになってみたら」と言われた。選手は気持ちが楽になった。
森保監督の母の実家は静岡県掛川市。叔父は理髪店を営む。日本代表監督になった甥を「遠くに行ってしまった」と思うが、森保監督は毎年顔を出し、先祖の墓に手を合わせる。メッセージを送ると、「楽しんでいるよ」「プレッシャーは好きだから」と前向きな返事だけが来る。
森保監督にはなじみの理髪店が広島にある。選手時代からの付き合いで、広島に行くと、店に寄って散髪をする。店主は「いつだって愚痴ることはなかった。日本代表監督になっても何も変わらない」。妻と娘が広島駅まで車で送ると、森保監督は姿が見えなくなるまで手を振っていた。
森保監督の誠実さは、チームの活躍と底流でつながっているだろう。しかし、誠実さは弱さになる可能性もあり、指導者にとってもろ刃の剣。自分らしさを突き詰め、統率力にまで進化させたことは、ただモノではない。素晴らしい、ブラボー!
今年の流行語大賞は「村神様」だが、決まるのが少し早すぎた。「ブラボー!」だろう。