1月16~20日(教養講座:五木寛之の思想)
~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年1月16日号(転送禁止)~~~
*** きょうの時事解説(日米首脳会談で防衛協力を強化)
岸田首相とバイデン米大統領による日米首脳会談が日本時間14日、ワシントンで開かれ、「日米関係を現代化する」という共同声明を発表した。米国と日本が攻守を分担する戦後の安保政策を転換し、台湾有事を念頭に日米一体で抑止力を強化する内容だ。米国は覇権衰退で西側各国へ防衛負担の肩代わりを求めており、岸田首相は国内合意を飛び越して米国が歓迎する方針を打ち出した。
岸田首相は昨年5月、東京でバイデン大統領と会談した際、防衛力の抜本的強化を約束。昨年12月に敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を打ち出した安保3文書を改定。増税も視野に防衛費の大幅増も決め、今回の首脳会議で説明した。バイデン大統領は「日本の安保戦略に基づき、我々は軍事同盟を現代化している」と高く評価した。米国内ではハト派とみられた岸田首相が軍事力強化に積極的に取り組んでいることに驚く空気もある。
今後の焦点は、日本国内の合意に加え、軍事同盟強化の色彩の強い一連の対応が、東アジアの安定に本当につながるかどうかだ。米国は中国の台頭で覇権が交代することを強く警戒して対決姿勢を強めているが、望ましい米中関係の構想はほとんど打ち出していない。中国側も経済力の向上に応じて軍事力を強化してきたが、中国が望む国際秩序の表明はできてない。中国の経済的な存在感の大きさを念頭に、対立を単にエスカレートさせるのではなく、米中日の関係を健全に管理する行動を具体化すべきだという指摘も強まっている。
*** きょうの教養(五木寛之の下山の思想①風に吹かれて)
今週は五木寛之の著書「元気に下山 毎日を愉しむ48のヒント」から抜粋して紹介します。五木は1932年生まれの作家で、今も書き続けています。「下山」は人生の後半という意味に加え、高度経済成長を終えた後の日本の姿も意味しています。若い人にも参考になるはずです。味わってみましょう。
「風に吹かれて」=風向きを感じながら、今日は西へ、明日は東へ。昨日言ったことと今日言うことが違ってもいい。
世の中には、お悩み相談にしても、健康法にしても、「これで大丈夫」と言い切るものが多々ある。私は断定的な言葉を信じません。シンプルで力強い断定は魅力的ですが、人間の心や体、社会のあり方はそんなに単純ではありません。
人は様々な場面で「あれか、これか」という選択を迫られます。私のようにいい加減な人間にとって、ひとつを選ぶのは大変な苦痛でした。あるとき、ふとこう考えました。「あれも、これも、両方とも抱え込んでしまったら、どうなるだろう」。
浄土真宗の教えに「真俗二諦」(しんぞくにたい)という言葉あります。仏教の真理と俗世間の両方を大事にして使い分けようという考え方です。「真理はひとつだ」と非難する人もいますが、私は「それもありかな」と共感しています。人生には一筋だけでなく、二筋も三筋もあっていいだろうと考えてきました。
~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年1月17日号(転送禁止)~~~
*** きょうの時事解説(中国がコロナ死者5.9万人と発表)
中国は14日、昨年12月8日から1月12日に亡くなった新型コロナウイルス関連の死者が5万9938人だったと発表した。独自基準で1日ゼロ人か数人としていたが、公開の基準を突如変えた。しかし、中国のSNS上には「このデータを誰が信じるのか」と疑問視する書き込みが相次いでいる。ゼロコロナ政策で感染の危険性を十分に警告せず、ワクチン接種率が低く、高品質の外国製ワクチンを使わなかったツケが大きい。一方、中国が日本人に対するビザ発給の停止問題で、一部の商用ビザで申請を認めていることがわかった。対外的な批判に柔軟に対応しているのか、混乱しているのか不明で、世界は注視している。
「死者が過少に報告されている」としていた世界保健機関(WHO)の指摘を受けて方針転換したとみられる。これまではコロナの直接感染を死者としてきたが、発表ではコロナ起因は5503人、基礎疾患との合併症は5万4435人としている。中国版ツイッターには「私の親戚は明らかに新型コロナで死亡したのに、死亡証明書には気管支炎と書かれていた」「入院していた人だけ発表されたが、家で死亡した人は病院より多い」といった書き込みがある。各地の火葬場で車の長い列が確認されるなどの情報も伝えられている。
中国の歴代王朝は国民の大多数を占める農民の不満が高まった時に崩壊・交代してきた。「天が人民に命じて革命を起こさせる」という易姓革命の理論が伝統的に浸透している。共産党の習近平政権は、ゼロコロナ政策や過少発表の方針を柔軟に転換したが、それだけ国民の不満に直面しているとも言える。新型ウイルスが発生した場合、中国は検査やゲノム解析に力を入れておらず、医療体制もぜい弱で、死者は100万人を超すという見方もある。国内不満が高まった場合、習政権は目をそらずため、台湾問題などで強硬姿勢を示す可能性もある。
*** きょうの教養(下山の思想②やりたいからやる)
「努力が報われるかどうかより、やりたいからやる」=人生は、思い通りにいかないものです。「こうするべき」とはっきりとした答えが出ないのが正直なところです。
こうありたいと理想の人生を思い描き、計画を立て、努力するのは大事なことです。しかし、努力が報われるとはかぎらない。私は「努力は報われない」という考えで生きてきました。人生は、自分の意志ではどうにもならず、運命や天命に従って、ただ流されるだけでした。私がいろいろやってきたのは、やりたいからやる、ただそれだけのことでした。つまりは道楽なのです。
ナチスの強制収容所の有名な体験記に「夜と霧」があります。著者のフランクルは、収容所仲間と笑いたくなる話をお互い披露し、笑うことが過酷な日々を生きていくうえで不可欠だったと述べています。人間を生かす力は偉大な信仰や思想だけでなく、ちょっとした心のあり方でもあると感じました。
~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年1月18号(転送禁止)~~~
*** きょうの時事解説(中国人口が大幅に減少)
中国は17日、2022年末の人口が前年末比85万人減の14億1175万人だったと発表した。人口減は大躍進政策の失敗で餓死者が増えた1961年末以来、実に61年ぶり。1979年から2015年まで「一人っ子政策」を実施し、人口増加を抑えてきたが、現在は急速に少子高齢化が進んでいる。インドに抜かれたという指摘もある。中国は高い経済成長もピークを超え、同日発表された22年の国内総生産(GDP)は3.0%増にとどまり、政府目標の「5.5%前後」に届かなかった。中国はコロナ対応でも迷走しており、多くの面で大きな曲がり角を迎えている。
減った最大の要因は少子化で、22年の出生数は106万人減の956万人。6年連続で前年を下回っており、2年連続で1949年の建国以来の最少を記録した。一人っ子政策はすでに廃止し、すべての夫婦に3人目の出産を認めているが、多くの中国人は養育費の高さから出産をひかえる傾向が強くなっている。出生数は直近のピークだった16年から5割も減っている。死亡者数は27万人増の1041万人だった。
中国のこれまでの成長は、「人口ボーナス」と呼ばれる人口増に支えられた面がある。今後は逆の「人口オーナス」の時代に入り、成長には足かせとなる。23年からの10年間で生産年齢人口は約9%減る見通しという。コロナ対応と相まって国内の不満が高まり、生活苦で少子化がさらに進む悪循環に陥る可能性がある。また、日本や韓国も急速に少子高齢化が進んでおり、世界の成長センターと言われたアジアも転換点を迎えている。
*** きょうの教養(下山の思想③いかに下山するか)
「いかに下山するか」=人生100年時代。前半の50年で山の頂を目指し、後半の50年でゆっくり下山をしていく。明治時代、日本人の平均寿命は43歳くらい、終戦直後でも50歳くらい。しかし、将来は100歳に延びる日がすぐそこに来ています。
そんな時代、どう生きていけばいいか、わかりません。いくら考えても、答えは見つからないと思います。できることがあるとすれば、「覚悟」を決めることでしょうか。次に従来の常識や考え方、システムをご破算にする必要があるのではないでしょうか。
私が一貫して言い続けてきたことは、「いかに下山するか」です。ゆっくりした下山は、寂しげな印象があるかもしれませんが、下山にこそ人生を幸福にする本質的な何かがある、と訴えてきました。自分の歩んできた道や下界の景色を楽しみ、登りでは見えなかったものが見え、人生を豊かにしてくれるのではないでしょうか。
~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年1月19号(転送禁止)~~~
*** きょうの時事解説(日銀が大規模緩和を維持)
日銀は17~18日に開いた金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の維持を決めた。市場では先月に続き緩和縮小に踏み切るとの観測が広がっていたが、見送った。黒田東彦総裁は2013年4月に就任して異次元の金融緩和を実行し、アベノミクスの象徴的存在だった。日銀が国債を大量に引き受ける手法で、当初からあった「国の借金が膨らむ」という批判が最近強まっている。任期は4月8日までで、後任に注目が集まっている。
市場の関心が集まったのは、長期金利の許容上限で、12月に0.25%から0.5%に引き上げて緩和策を部分的に修正した。今回さらに引き上げるかが焦点だったが、0.5%に維持した。黒田総裁は記者会見で、維持について「長期金利の変動幅をさらに拡大する必要があるとは考えていない」と大規模緩和策を続ける考えを強調した。為替市場では日米の金利差が拡大するとの見通しから円が売られ、円安ドル高が進んだ。
日銀総裁は日銀OBか財務省OBが就任しており、「物価の番人」と呼ばれ、中立性と独立性が重視される。黒田総裁は元財務官僚で、安倍元首相の強い信任を得て就任。2%のインフレ目標を掲げ、強力な緩和策を打ち出した。当初は円安になって日本の景気も上向いたが、インフレ目標の達成が不可能になっても緩和を続け、政府の意向に沿って大量の国債購入を続けた。最近では「政府に配慮して緩和し過ぎだ。財政規律を失わせた」「市場との対話が不十分で混乱を与えている」と評価が厳しくなっている。後任には日銀OBで副総裁を経験した雨宮氏と中曽氏らの名が挙がっている。近く岸田首相が決断する。
*** きょうの教養(下山の思想④市井の人)
「市井(しせい)の人」=人は歳をとると名誉や権力、勲章が欲しくなる。そうしたものからは離れ、市井の人として生きたいと思います。
好きな言葉に「入鄽垂手(にゅうてん・すいしゅ)」があります。禅の世界で悟りに至るための過程を10枚の絵と詩で表現した「十牛図(じゅうぎゅうず)」に出てきます。修業の最後は、明鏡止水の境地で世俗を離れるのではなく、再び世俗に戻るのです。市井の雑踏に舞い戻り、人々と触れ合い、教えを授けていく。その境地を示した言葉です。
仏教の世界に限った言葉ではありません。高名な哲学者や作曲家、陶芸家らでこの言葉のように生きた人を知っています。それぞれの世界で横綱を張れるような人ですが、晩年期は普通の勤め人や若者と自然体で付き合っていました。歳をとると名誉が欲しくなりますが、偉ぶることなく、風のように飄々としている。そんな生き方を私は素敵だと思います。
~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年1月20日号(転送禁止)~~~
*** きょうの時事解説(政府、コロナ5類を検討)
政府は、感染症法上の分類で「2類」となっている新型コロナウイルスについて、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」への変更を検討する。20日にも岸田首相が加藤厚生労働相らと協議して、4~5月ころに5類に変更することを想定している。感染者で7日間、濃厚接触者で5日間の隔離がなくなり、マスク着用は原則不要になる。4年目に入ったコロナ禍は大きな転換点を迎える。
新型コロナは、感染症法の「新型インフルエンザ等感染症」に分類され、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)の対象にもなっている。特措法は、政府や都道府県のコロナ対策本部の設置、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の根拠となっている。5類になれば特措法の対象ではなくなり、こうした措置はとれなくなる。入院勧告、感染者・濃厚接触者への外出自粛の要請といった、感染症法に基づく措置もなくなることが想定される。
一方、新型コロナの感染力は依然強く、今後も流行を繰り返して医療を逼迫(ひっぱく)させる可能性がある。このため、医療機関がコロナ病床を確保するための財政支援などは直ちになくさず、段階的に見直しを進めるよう求める声もある。政府はこうした意見も踏まえ、新たな医療体制のあり方を示すことも検討している。
*** きょうの教養(下山の思想⑤マジックワード)
「マジックワード」=ストレスを受け入れ、かわすためのマジックワードに「命までとられるわけではない」という言葉あります。生きることは、ストレスの連続です。人間関係や仕事のノルマ、気候の変化もストレスとなって自律神経のバランスを乱し、体を悪化させます。
成功や幸せを求めることは悪いことではないのですが、強迫観念にとらわれたように、執着しすぎるのもストレスにつながります。本来、成功や幸せの基準は一人ひとり違うはずなのに、メディアを通じた情報に惑わされ、期待値が高まってしまう。
大きな仕事の締め切り前など私もストレスが強くなりますが、そんな時は、「命まで取られるわけはない」という言葉を言い聞かせます。不思議なことに気持ちが和らぎ、リラックスした気分になります。高望みせず、ほどほどで満足する。ささいなことでも「ありがたい」と感謝する。かなりのストレス解消になります。