2月6~10日(教養講座:SDGs貧困)

2023.02.11メルマガ

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年2月6日号(転送禁止)~~~

 今週から「今日の時事解説」を「デイ・ウオッチ」として試行します。「知っておきたいニュース」を選び、コメントを付けます。「知っておきたいニュース」とは、これから話題や焦点になる出来事、今の社会の本質に関わる出来事、と考えています。ニュースにはURLをつけます。本数は日によって違います。狙いは、カバー範囲を広げ、コメント機能強化による当欄の価値向上です。

*** デイ・ウオッチ(3~5日) ニュースの多い週末でした。

「岸田首相、差別発言で荒井秘書官を更迭」 荒井秘書官、LGBTは「嫌」 岸田首相「言語道断」、更迭へ―政権打撃:時事ドットコム (jiji.com) →岸田首相は「言語道断」というが、同性婚を認めれば「社会が変わってしまう」と自身が国会で答弁していた。失言ではなく、官邸中枢の本音が露見。日本社会の根深い差別意識を示し、広島サミットに向けて国際的にも響きそうだ。

◎「中国が米上空に偵察機級、米国務長官の訪中延期」 米上空気球、新たな火種に 軍事情報収集か、中国は「研究用」主張:時事ドットコム (jiji.com) →米中対立は世界の行方を決め、我々にも直接関係する大きな焦点。「対立」より「管理」が求められるが、こうした小競り合いはしばらく続きそうだ。日本の立ち位置もずっと問われる。

◎「性犯罪規定、大幅見直し」 性交同意年齢16歳に 性犯罪要件を具体化―時効5年延長、盗撮処罰・法制審要綱案:時事ドットコム (jiji.com)  →関係者による問題提起の成果。性犯罪やジェンダー平等に関わる問題は、人権や人間の尊厳に関わるという認識が必要になっている。

◎「米IT大手5社が減益決算」  米巨大IT5社、そろって減益 景気に減速懸念、高成長曲がり角:時事ドットコム (jiji.com) →GAFAMが転機を迎えているのは間違いない。しかし、メディアは目先の動きを強調しがちなので、変化の底流を注視する必要がある。リストラされた技術者が新天地で活躍し、新たに躍動する可能性もある。

◎「横浜銀行が神奈川銀行買収」 横浜銀行、神奈川銀行買収を発表 TOB、82億円で完全子会社化:時事ドットコム (jiji.com) →首都圏でも「一県一行体制」が進む。地銀は約100行あるが、地域経済の衰退や低金利で苦境にある。かつて地域一の就職先だった地銀も多いが、様変わりしている。

*** きょうの教養(SDGs貧困①貧困とは何か)

「SDGs」という言葉はもはや一般的になっている。2015年に国連が決めた「持続可能な開発目標」で、17の目標から構成されるが、どこまで詳しく知っているだろうか。世界の社会課題を考える基本と言えるので、折に触れて紹介したい。

今週は目標1「貧困をなくそう」について深めたい。まず「貧困とは何だろうか」。 貧困には絶対的貧困と相対的貧困がある。前者は極度の貧困で、1日1.9ドル未満で生活しなければならない状態だ。日本円にして300円弱。ほとんどはアフリカだ。2015年の統計で最貧国はマダガスカルで、国民の77%が絶対的貧困の状態にある。

相対的貧困は、その国の平均所得の半部以下の所得の状態で、年200万円が平均なら100万円以下の人たちだ。先進国で苦しい生活をしている人たちも含まれる。

国の豊かさは「GDP」で示される。「国内総生産」の頭文字で、一国で生産されたモノやサービスの合計額だ。1位はアメリカで、2010年に中国が2位に浮上した。3位日本、4位ドイツ、5位イギリスの順だ。一方、アフリカは人口の16%を占めるが、GDPはわずか3%。特にサハラ砂漠以南の国々は貧しく、絶対的貧困に苦しむ人が4割以上もいる。

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年2月7号(転送禁止)~~~

 今週から「今日の時事解説」を「デイ・ウオッチ」として試行します。これから焦点や話題になる出来事、今の社会の本質に関わる出来事を中心にお伝えします。

*** デイ・ウオッチ(6日)

「日銀総裁を雨宮氏に打診の報道、円安・株安へ」  円急落、132円台前半 日銀総裁人事巡る思惑で―東京市場:時事ドットコム (jiji.com) →日経新聞が6日朝刊で「日銀総裁、雨宮副総裁に打診」と1面で報じた。中曽前副総裁と並ぶ有力候補だが、官邸側は否定。「金融緩和が続く」と円安、株高になった。5年に1回の総裁人事をめぐり、しばらく神経戦の様相。

◎「公明委員長、秘書官更迭で苦言と提案」  公明党の山口代表「当事者の声を聞いて」 差別発言、岸田首相に要望:時事ドットコム (jiji.com) →山口委員長は首相秘書官のLGBT差別発言で「首相らは当事者の声を聞いて。LGBT法の整備を」と注文。法案は超党派議連がまとめたが、自民党保守派の反対で未提出。差別発言は国際的な波紋を生み、法制定が焦点に浮上の可能性。

◎「トルコで地震、死者1500人以上」 トルコとシリアで強い地震 建物倒壊、両国で死者1500人超か:朝日新聞デジタル (asahi.com) →被害の拡大、国際協力の行方、国際政治への影響に注目。

◎「宅見さんがグラミー賞、仲邑さんが女流囲碁で最年少タイトル」 宅見将典さんが米グラミー賞 ビヨンセさん、歴代最多受賞:時事ドットコム (jiji.com)  仲邑三段が最年少タイトル 13歳11カ月、女流棋聖―囲碁:時事ドットコム (jiji.com) 宅見さんはアルバム「Sakura」で受賞。2018年に亡くなった西城秀樹さんのおい。仲邑さんは中学2年生。将棋の藤井聡太のような人気者になるか。

*** きょうの教養(SDGs貧困②英米中の状況)

貧困の2回目は、英国、米国、中国の歴史と現状を見ていきたい。日本は3回目で考える。

英国の歴史は各国の参考になる。18~19世紀の産業革命で優位に立ち、覇権を握った。第二次世界大戦後、米国に抜かれたが、「ゆりかごから墓場まで」を目指して福祉国家を完成。しかし、経済は停滞し「イギリス病」と呼ばれた。サッチャー首相の新自由主義的改革で一時立て直したが、最近は失業や移民流入、EU離脱で混迷している。

移民国家の米国は、昔から格差が大きかった。「ゲットー」と呼ばれる低所得者地域がある一方、高所得者が壁に囲まれて住む「げーテッドタウン」がある。職種間、人種間の格差は依然として大きく、最近は政治的に民主党と共和党の深刻な分断が指摘されている。

中国は改革開放政策で経済規模は拡大したが、国内格差は大きくなっている。新富裕層と呼ばれる実業家や起業家が多く生まれる一方、大学を卒業しても安定した職に就けない「蟻族」(ありぞく)、地方から都会に出て厳しい生活を強いられる「鼠族」(ねずみぞく)がいる。

格差拡大は、中間層の不在を意味し、政治的に不安定になりやすい。国際協調による経済の安定が重要だが、冷戦崩壊直後比べて、そうした気運は乏しい。

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年2月8日号(転送禁止)~~~

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*** 「デイ・ウオッチ」(7日)

「ルフィ事件の2人を移送、逮捕」  比拘束の2人逮捕、詐欺団幹部か 残る2人、9日に移送―全国連続強盗と関連も・警視庁:時事ドットコム (jiji.com) →直接の容疑は特殊詐欺だが、IT時代の大型犯罪となった連続強盗事件の全容解明も急務。身柄引き渡しには大統領訪日前の政治的判断があった模様。テレビ局は現地に記者を派遣し映像を逐一伝えており、報道が過剰気味だ。

◎「日の丸ジェットの開発断念」 三菱重工、国産ジェットから撤退発表 凍結2年、事業化めど立たず―官民構想が頓挫:時事ドットコム (jiji.com) →既定路線だが、正式に発表された。ホンダは小型ジェット開発で成功しているが、三菱重工はなぜ失敗したのか。真因の解明が必要だ。ゼロ戦の伝統か、今後は戦闘機開発に力を入れるという。

◎「トルコ地震の死者増加、支援続々」 トルコ・シリアへ支援続々 ロシア侵攻のウクライナも:時事ドットコム (jiji.com) →トルコ・シリア地震の死者が増え続け、5000人を超えている。支援表明も相次ぎ、欧州、米国、中東などに加え、ロシアも名乗りを上げている。被災地のトルコやシリアと関係が深いためだが、各国の接触を通じてウクライナ和平の機運が高まることも期待したい。

◎「LGBT理解増進法案が焦点に」 同性婚法制化、今国会で 立民・安住氏「お茶濁すな」:時事ドットコム (jiji.com) →LGBT法案について、公明党委員長に続き野党幹部も制定を求めた。自民党保守派とその他勢力の対立構図が生まれている。「差別」に関する文言の取り扱いが対立点になりそうだ。国際的非難をかわす思惑ではなく、根源的な議論が求められている。

*** きょうの教養(SDGs貧困③日本の相対的貧困)

3回目は日本国内の相対的貧困を考える。

日本のGDPは、米国、中国に次いで3位になっている。これを人口で割った国民1人当たりでみると、日本は2018年の統計で26位。1位はルクセンブルクの11万5536ドルで、以下スイス、マカオ、ノルウェー、アイルランドと続く。日本は3万9303ドルで、ルクセンブルクの3分の1弱だ。理由は1人当たりの生産性が低く、高齢化で働いていない人が多いなどのためだ。GDP2位の中国は、1人当たりでは70位にとどまっており、豊かとはいえない。

日本では、基本的な生活を保障する生活保護制度があるため、絶対的貧困はほとんどみられない。しかし、相対的貧困率は15.7%で、先進国が加盟するOECD(経済協力開発機構)で10位の高さにある。最高は米国の17.8%、最低はアイスランドの5.4%。英独仏は8~11%台だ。

格差を表す指標として「ジニ係数」がある。イタリアの統計学者ジニが考案した数値で、0から1の間の数字で示される。1に近づくほど格差が大きくなるが、日本は先進国で高い位置にある。生活保護世帯もここ30年で3倍近くに増えており、日本はかつてほど豊かな国とは言えない。

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*** 「デイ・ウオッチ」(8日)

「五輪談合で組織委と電通幹部ら逮捕」  組織委元次長ら4人逮捕 五輪談合、電通関係者も―独禁法違反容疑・東京地検:時事ドットコム (jiji.com) →五輪疑惑は贈収賄から談合事件に発展した。今回はテスト大会だが、本大会も談合の疑惑が浮上している。2030年に冬季五輪を誘致している札幌市長は「影響は避けられない」。政府に検証・改善の動きがまだまったくない。

◎「首相、LBGT法案に前向き答弁」 岸田首相陳謝「差別あってはならず」 LGBT法案に前向き―衆院予算委:時事ドットコム (jiji.com) →安倍派を中心とした自民党内保守派の対応が今後の焦点。岸田首相は安倍派に配慮した政権運営を続けている。同派との関係はLGBT法案にとどまらず、防衛や社会保障、日銀総裁人事などすべての政策に影響するので、要注目。

◎「対話AIで米2社が激突」 対話AI、競争本格化 米グーグルとMS、検索に活用へ:時事ドットコム (jiji.com) →検索は対話型AIの時代に入った。検索で圧倒的なシェアを持つグーグルにマイクロソフトが挑む構図。人員削減が話題になる米IT大手だが、底力は別格だ。こうしたサービスは使ってみないとピンとこない。日本企業の名前が出ないのが寂しい。

*** きょうの教養(SDGs貧困④世界の絶対的貧困)

4回目は世界の絶対的貧困の原因を考える。戦争や内戦、事故や病気、異常気象など多くの要因がある。

戦争や内戦による貧困は、生命の危機に直結し、支援が届きにくい状況も加わる。もっとも悲惨だ。働き手の命が奪われれば、家族の収入がなくなる。電気やガスといったインフラも破壊され、難民として国外に逃れる人も生まれる。国連は難民支援に力を入れているが、最近ではシリア、ウクライナからの難民が深刻だ。 

新型コロナウイルスのような感染症の影響は経済力の弱い国でより大きくなる。不衛生な環境が拍車をかける。熱波や日照りなどの異常気象、台風や地震などの自然災害も弱い部分を直撃する。国や個人にのしかかる重い借金も足を引っ張る。

人類共通の課題として、地球温暖化を緩和するために二酸化炭素の削減などを進めているが、国同士の利害が衝突する。課題解決には国際的な協調行動が不可欠だが、その機運は後退している。ロシアのウクライナ侵攻で、世界は民主主義を標榜する国と権威主義的な国に分裂している。

人間の生活を大きく左右するのは、教育費や医療費、社会保障費だ。しかし世界ではそれ以前の段階で足踏みしている国が多い。

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年2月10日号(転送禁止)~~~

 今週から「今日の時事解説」を「デイ・ウオッチ」として試行します。これから焦点や話題になる出来事、今の社会の本質に関わる出来事を中心にお伝えします。

*** 「デイ・ウオッチ」(9日)

◎「公取委、グーグルとアップルの寡占を指摘」 スマホOS、2社寡占を問題視 自社アプリ優遇防止へ法整備提言―公取委:時事ドットコム (jiji.com) →欧州、米国に続いて日本でも独占禁止当局が巨大IT企業の規制に動き始めた。OSとアプリストアについて、寡占状態にあると分析。法律による事前規制に踏み込む構えだ。

「海外での臓器移植を初摘発」  臓器移植を無許可あっせん疑い NPO理事を逮捕―初摘発、両罰規定で法人も・警視庁:時事ドットコム (jiji.com) →1997年に施行された臓器移植法は、移植を目的とした臓器売買を禁止している。海外での臓器移植を望む人がいるのは、国内の深刻なドナー不足が理由。昨年末で移植希望者は1.6万人いるが、移植は455件にとどまっている。

◎「ウクライナ大統領が欧州電撃訪問」  ウクライナ大統領、独仏首脳と会談 英首相、戦闘機供与「排除せず」:時事ドットコム (jiji.com) →西側社会には負けられない戦争になっている。理念と現実のはざまで、支援のレベルが上がっていく。「ご意見コーナー」に投稿が寄せられた。

◎「米ディズニーが7000人削減」  ディズニー、物言う株主に「防戦」 7000人削減・復配も: 日本経済新聞 (nikkei.com) →IT大手だけでなく、エンターテインメント最大手も全社員の3%を削減へ。動画配信の赤字が響いている。アクティビストと呼ばれる「物言う株主」の圧力がある。

*** きょうの教養(SDGs貧困⑤何ができるか)

貧困の最後は、私たちに何ができるかを考える。SDGsは、2030年までに極度の貧困を終わらせ、各国の貧困者の割合を半分に減らすことをターゲットにしている。何ができるかは、政府や企業、団体など立場によって違うが、一般個人に求められることはまず、貧困の実態・原因・悪影響を知ることだ。

日本では2012年に子ども貧困率が過去最高の16.3%になった。7人に1人が相対的貧困で、仲間外れになったり、いじめられたりする例もある。親のリストラや失業、離婚なども背景にある。子どもの貧困は将来に連鎖する。見過ごせない問題だ。

最近では子ども食堂が注目されている。2012年に東京都大田区の青果店主が始めたと言われている。必要な子ども達に食事を提供するのが第一の目的だが、最近では子ども同士や地域の大人の交流拠点としての意義も高まっている。個人レベルでは、募金やボランティア活動も重要だ。

政府レベルでは途上国への開発援助、税制改正による分配の公平化などが柱になる。国際的には戦争停止、気候変動への対応などで、狭い国益ではなく人類益を意識した行動が求められる。貧困はすべての課題の核心でもある。取り組みの真剣さに人類の将来がかかっている。