3月13~17日(教養講座:若松英輔の言葉)

2023.03.18メルマガ

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年3月13日号(転送禁止)~~~

*** 「デイ・ウオッチ」(10~12日)

来店・乗車、マスクなしOK 従業員は継続、13日から緩和―新型コロナ:時事ドットコム (jiji.com) →13日からマスク規制が緩和される。周囲に同調か、自分で判断するか。日本人の主体性の強さがわかりそうで興味深い。

李強氏を首相に選出 習氏、側近で基盤強化―中国全人代:時事ドットコム (jiji.com) 李克強氏、静かに首相退任 習氏に嫌われた秀才―中国:時事ドットコム (jiji.com)→習近平国家主席が初の3期目、李強首相起用で一強完成。日本の知人は「李首相は日本人以上に浪花節で義理堅い」という。中国はイランとサウジアラビアの外交正常化を仲介した。習路線はハードか、ソフトか。世界が注目する。

「特別な日」に日の丸背負って 佐々木投手、伝えた希望―野球WBC:時事ドットコム (jiji.com)  日本、4戦全勝で準々決勝へ 大谷が3ラン、豪州に快勝―WBC:時事ドットコム (jiji.com) →3.11に登板した侍ジャパンの佐々木投手。東日本大震災を風化させない天命を担ったような快投だった。4戦全勝で16日の準々決勝でイタリアと対戦へ。

米SVB傘下行が経営破綻 預金流出、金融危機後で最大:時事ドットコム (jiji.com) →シリコンバレーの銀行が破たんした。IT企業不振で預金が流出。保有債券を売却したが、金利高で損失が表面化した。銀行の経営ミスと金融環境の変化が引き金を引いた。リーマンショック後最大の破たんで、週明けの影響に注目。

*** 「社会人キーワード」

◎クリティカル・シンキング  「批判的思考」と言われる思考方法。「最適解」を導き出すため、見えている事象や情報を鵜呑みにせず、「本当に正しいのか」という疑問を持ち、じっくり考察した上で結論を出す。実践方法として、①目的は何かを常に意識する②誰にも『思考の癖がある』ことを前提に考える③常に問い続ける、という不可欠な3要素がある。かつて米国教育界で、知識の詰め込みではなく、クリティカル・シンキングを活用して客観的に判断、決断できるよう方向転換した時期がある。日本ではビジネスの世界で実践的に用いられるようになっている。類似する言葉に「ロジカル・シンキング」がある。物事に筋道を立て、各段階、各要素別に分類・分解して思考することだが、クリティカル・シンキングは、物事の前提の正誤を検証後、その事象の本質を見極めていく点で違う。

*** きょうの教養(若松の言葉①根を探す)

今週は若松英輔さんの著書「言葉の贈り物」(2016年刊)を取り上げる。若松は1968年生まれの批評家・随筆家。小林秀雄の評論や詩集で各種の賞を受賞し、言葉を大切にしていることで知られる。各コラムから一部を紹介する。

「根を探す」から ・慢性的な疲労に苦しむとき、服用するとよい薬草がある。化学的な薬品ではない。伝統的に用いられてきた薬用植物である。

薬草は、現代の医薬品とは異なる働き方をする。医薬品の場合、どう働くかは物質が決める。だから効き方も鋭いが副作用もある。しかし薬草は、どう働くかを身体と対話しながら探っていく。薬草は、私たちのうちにあって小さくなっている生命の火に、息を吹き込むように作用する。身体に眠っている力を呼び覚ますのである。

植物には部位がある。葉ばかりでなく茎、花、果実を使うこともある。同じ植物でも葉と果実ではまったく作用が違う。そして、忘れてならないのは根だ。疲労に効果のある植物は、根の部分を使うことが少なくない。根を取り出すために私たちは、大地を掘らなくてはならない。探している植物は土のなかに隠れている。土にふれることなく、根を手にすることはできない。

・旅するべき場所は、私たちの心のなかにも広がっている。私たちは自分の心に何が秘められているかを知らないのではないだろうか。その未知なるものの典型は、内なる言葉、生命のコトバなのである。

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年3月14日号(転送禁止)~~~

*** 「デイ・ウオッチ」(13日)

袴田事件、再審開始決定 着衣隠匿「捜査機関の可能性」―第2次請求差し戻し審・東京高裁:時事ドットコム (jiji.com) →浜松勤務時代、街中を少し前かがみ散歩する袴田さんをよく見かけた。やっと高裁の再審判断が出た。検察の各種抗告で延び延びになっていたが、こうした検察の抗告は海外にない。検察の先延ばしは、もはや人権問題。静岡県警の強引な捜査も同様だ。

岸田首相「脱マスク」へ率先垂範 着用続ける議員も:時事ドットコム (jiji.com)  「やっと」「使い続ける」 脱マスク初日、慎重派が多数―花粉症も影響か・東京、大阪:時事ドットコム (jiji.com) →首相が率先垂範。政治の指導力か、政府が旗を振らないと変わらない日本人の情けなさか。

大江健三郎さん死去 ノーベル文学賞作家、88歳:時事ドットコム (jiji.com) →著名人が3人亡くなった。日本人2人目のノーベル文学賞受賞者となった大江氏のほか、ヨーカ堂創業者の伊藤雅俊さん(98)、元女優で参院議長の扇千景さん(89)。

総務省側、大臣レク実施の「可能性高い」 高市氏なお文書否定―参院予算委:時事ドットコム (jiji.com) →高市氏の旗色が悪くなっている。安倍政権によるテレビ番組介入という本質を忘れてはならない。

*** 「社会人キーワード」

◎デザインシンキング  デザイン思考とも言われる。デザイナーがデザインを考案する際に用いるプロセスを、ビジネス上の課題解決のために活用する考え方。ユーザー視点に立って、サービスや製品の本質的な課題やニーズを発見し、課題解決を図る。20数年前に生まれた。コンピューターが苦手としている領域を扱い、人間ならではの価値が出しやすいとも言われる。最も代表的な方法として、ハーバード大学デザイン研究所のハッソ・プラットナー教授が提唱した5つのプロセスがある。「観察・共感」「定義」「着想」「試作」「テスト」で、具体的には、①ユーザーを深く理解し、共感する②問題を明確にし、定義する③多くのアイデアを出す④試作品を作る⑤試作品を用いてユーザーにテストする、と続く。顧客の潜在ニーズに踏み込み、思い込みを排除して問題解決を目指す。

** きょうの教養(若松の言葉②働く意味)

「働く意味」 ・多くの成功物語の筆者は、成功の要因が自分にあると信じて疑わない。だが当然ながら、どんな優秀な経営者でも一人で会社を動かすことはできない。むしろ仕事とは、一人でできないことを他者と共に実現しようとする営みなのである。だから自分だけで仕事をしていると思い込んでいる人は、利潤を上げることはできても仕事はできていない、ともいえる。

・仕事とは文字どおり「事」に仕えることだから、人生の避けがたい何かに直面しそれを生き抜こうとする者たちは皆、働き、「仕事」をしている。たとえば、病を背負ったとき人は、その試練を生きることが誇り高き仕事になる。

・人は、この世の生が終わるまで「働く」ことができる。むしろ、働かざるを得ない。それは避けがたい宿命でもあるが、私たちの朽ちることのない尊厳の証でもある。人は、何も生産することがなくても「働いて」いる。

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年3月15日号(転送禁止)~~~

*** 「デイ・ウオッチ」(14日)

米市場、信用不安収まらず 金融株下落、懸念払拭に躍起―米銀破綻:時事ドットコム (jiji.com) →シリコンバレーの銀行破たんが予想外の影響を及ぼしている。金融当局はノーマーク状態で、あわてて保護の対象でない預金者も保護すると異例の表明をした。監査法人も標的になっている。世界の市場は大荒れで、しばらく目が離せない。

米無人機とロシア軍機が衝突 黒海上空の国際空域―米発表、対立激化も:時事ドットコム (jiji.com) →詳細はまだわからないが、米ロの対立が激しくなり、ウクライナ戦争拡大の懸念もある。

山口公明代表、LGBT法案で自民に苦言:時事ドットコム (jiji.com)→ 自民党の思想が問われるLGBT法案。自民党は統一地方選の保守票を意識して先送りしたいようだが、公明党がじれている。国政選挙や国民民主など野党との協力で、自公の間にすきま風が強まっている。長く続く自公与党だが、崩壊の可能性もゼロではないだろう。

東京で桜開花、全国一番乗り 最も早い記録に並ぶ―気象庁:時事ドットコム (jiji.com) →なぜか東京が一番乗り。温暖化に加え、都市化の影響もありそうだという。平年より10日早く、2020、21年の最も早い記録に並んだ。

社内にIT人材「いない」7割、人材育成「難しい」6割 全研本社経営者アンケート:時事ドットコム (jiji.com) →DXの掛け声ばかり勇ましいが、実態はお寒い。現場の実感だろう。

*** 「社会人キーワード」

◎D&I  ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂、包含)の略。前者は「状態」、後者は「行動」と言える。似た属性や背景を持った人だけでは、社会のニーズをつかんだり、変化に応じて変わったりすることができず、時に倫理的な判断も誤ってしまうことがある。企業の生き残りに不可欠な考え方となっている。単に多様な人がいるだけでなく、企業に自分の意見をしっかり伝えられる状態も重視している。帰属意識が高く、自分らしさを発揮している状態を「インクルージョン」といい、「固有の価値のある組織内の人」として扱われている。帰属意識のみが高い状態を順応圧力がある「同化」、自分らしさのみが高い場合を「区別」、両方低い場合は「排他的」と区分することもある。

*** きょうの教養(若松の言葉③読まない本)

 「読まない本」 ・同僚が、ぽつりと「読めない本は、読める本より大事なのかもしれない」といった。読めない本を買うときの方が、読みたいと思う気持ちが強いのではないか、というのである。

 このときの衝撃を忘れることができない。読書観ばかりか、世にある物との関係にも大きな変化をもたらす経験となった。

 確かに本は、読む者のためだけに存在しているのではない。むしろ、それを読んでみたいと願う者のものである。通読しなくてはならない、という決まりがあるわけでもない。書物自体を愛しく感じることができるなら、またそこに一つの言葉を見出すことができれば、それだけでも手に取った意味は十分にある。

 人は、いつか読みたいと願いながら読むことができない本からも影響を受ける。そこに記されている内容からではない。その存在からである。私たちは、読めない本との間にも無言の対話を続けている。それは会い、話したいと願う人にも似て、その存在を遠くに感じながら、ふさわしい時機の到来を待っている。

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年3月16日号(転送禁止)~~~

*** 「デイ・ウオッチ」(15日)

◎ 春闘ベア、歴史的高水準 物価高で「満額」相次ぐ―大手製造業が集中回答:時事ドットコム (jiji.com) →日本経済を浮揚する起点は賃金。歴史的な高額回答になった。焦点は物価上昇を上回るか、中小企業に波及するか、来年も続くか。高額回答は結構だが、経営側が政府に背中を押された結果で、横並び感も強い。日本の経営者には自らの英断で未来を切り開く気概が欲しい。

ガーシー氏、議員資格失う 参院で除名決定、欠席で初:時事ドットコム (jiji.com) →一連の騒動が決着した。72年ぶりの除名とNHK党の名称変更が歴史に残った。選挙で選ばれた議員の地位は重いが、同情論は自党以外にほとんどなかった。後味が悪いが、電子採決導入の是非は今後の課題になる。

米市場、混乱一服 地銀株反発、「危機は終わらず」:時事ドットコム (jiji.com) →銀行破たんをきっかけにした米国市場の動揺は一服した。しかし、金利上昇で債券の評価損を抱える銀行があり、要注意は続く。

*** 「社会人キーワード」

◎モチベーション3.0  米国の作家ダニエル・ピンクが提唱した。ゴア副大統領のスピーチライターだった人物で、モチベーションをコンピューターのOSに例えて説明している。「1.0」は人類が生まれた時点で備えているOSで、生理的欲求(食べたい、寝たいなど)に根ざす。「2.0」は、人類が集団で生活をするようになった時のOSで、人が人を使う上で必要なインセンティブに根ざす。外発的動機付けといえる。人は人を使うことが容易になり組織の統率ができるようになった。「3.0」は、人は認められたいとか、自分の能力を高めたいといった自己実現に根ざす欲求で、内発的動機付けといえる。長続きしやすく、創造的な仕事に向いている。「4.0」を提唱する人も現れている。自分の命さえ惜しまないモチベーションとか、Z世代を念頭に社会や世界とのつながりを重視する動機などがあがっている。

*** きょうの教養(若松の言葉④書けない日々)

「書けない日々」 ・人は単に考えを書くのではなく、むしろ書いてみてはじめて、自分が何を考えているのかを知るのである。

何か文章を書きたい、そんな衝動が湧き上がることは誰にでもある。でも、なかなか思うようにはいかない。もがき、悩み、苦しむ。やはり書けない。そうしているうちに、書くべきことなどなかったのだ、と思い込んでペンを手放す。一般論ではない。私の経験である。大学を卒業してから、そうした日々を十五年以上も過ごしていた。

しかしよく考えてみれば分かることだが、書くべきことがなければ人は書けないとくやしがることもないのである。だから、書けない、そう感じた瞬間が書くことの始まりの合図になる。

・華美な文章や流麗な文章など書かなくてもよい。それは人を驚かせるが、私たちの日常には寄り添ってくれない。一見するとまぶしいが、生活の場を息苦しくもする。私たちがどうしても見出さなくてはならないのは、自らの心によって裏打ちされた、古い、しかし本当の言葉である。

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年3月17日号(転送禁止)~~~

*** 「デイ・ウオッチ」(16日)

日韓首脳、関係正常化で合意 徴用工「解決」、岸田首相が評価―シャトル外交12年ぶり再開へ:時事ドットコム (jiji.com) 政府、半導体輸出規制解除へ 4年ぶり、韓国はWTO提訴取り下げ:時事ドットコム (jiji.com) →韓国大統領の単独来日は11年3か月ぶり、共同記者会見は11年5か月ぶり。隣国はどこでも難問を抱えるが、北朝鮮や中国との間で緊張を抱えることを考えれば異常な状態だった。やっと正常化し、東アジアの緊張緩和への道筋作りが問われる。

袴田事件、特別抗告の方向 再審開始に不服、検察側協議―審理15年、さらに長期化:時事ドットコム (jiji.com) →「まさか」の動き。東京高裁の再審決定は捜査当局の捏造まで指摘している。誰のため、何のための検察か。言いたいことがあれば、再審で主張すればいいはず。

信用不安拡大、疑心暗鬼に クレディ・スイス急落で―欧米株安:時事ドットコム (jiji.com)  米大手金融が4兆円 ファースト・リパブリック銀支援で:時事ドットコム (jiji.com)→金融引き締めの影響は意外に大きい。シリコンバレーからスイスに飛び火し、米国では危ない金融機関を支援する動きも。日本の財務相は「影響は限定的」としているが、地銀などの経営は厳しくなっており、油断はできない。

侍ジャパン4強入り イタリア下し、舞台は米国へ―WBC:時事ドットコム (jiji.com) 村上、お目覚め WBC:時事ドットコム (jiji.com) →WBC日本チームは日本時間21日の準決勝へ。

ガーシー前議員に逮捕状 脅迫容疑、国際手配へ―暴露系動画投稿巡り・警視庁:時事ドットコム (jiji.com) →除名が決まるとすぐに警視庁が動いた。SNSでの暴露投稿の是非が焦点で、ネットでの情報発信のあり方に一石を投じそうだ。

*** 「社会人キーワード」

◎MECE   「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」の略で、「ミーシー」または「ミッシー」と読む。それぞれの意味は、Mutually(お互いに)、Exclusive(重複せず)、Collectively(全体に)、Exhaustive(漏れがない)。日本語で「モレなく、ダブりなく」という。 物事を考える時、必要な要素を網羅しながら、それらが重複しないようにする考え方を指す。ロジカルシンキング(論理的思考)で必要となる基本概念。基本的に①大きな目的を設定する②要素を洗い出す③洗い出した要素を細分化する、の3つのステップで分析することができる。これらのステップ上で、重複するものがないよう注意しながら順番に分析すると、問題を細分化できる。さまざまな角度から問題を洗い出すことで、意識していなかった要素も浮き彫りになる。訓練することで幅広い場での活用ができるとされる。

** きょうの教養(若松の言葉⑤未知なる徳)

「未知なる徳」 ・よい仕事をするには、自己の能力を高めるだけでは足りない。自分をねぎらい、いたわることを忘れてはならない。それが労働という言葉の本当の意味だろう。「労わる」と書いて「いたわる」と読み、「労う」と書いて「ねぎらう」と読む。

仕事はいつも他者との間に生まれる。働くとは、他者と共に生きていくことである。いたわりとねぎらいが、自己だけでなく他者にも向けられなくてはならないことを、「労働」という言葉は教えてくれる。

そう考えると当然のようにも思われるが、仕事の規模ではなく質を大切にする人は、同様のことを大切にする仲間の近くにいる。ひたすら規模を求める人にとっての目的は量的な成果だが、仕事の質を愛する人は道程を大切にする。この差が何を意味するのか、「仕事」を「人生」に替えてみれば一目瞭然だろう。

 ・働いていれば、つらいと感じることは幾度もある。だが振り返ってみると、そうした苦痛の経験が新しい何かへと導いてくれることは珍しくない。そうした試練のとき、私たちは期せずして、未知なる徳にふれているのではないだろうか。