3月20~24日(教養講座:SDGs不平等をなくそう)

2023.03.25メルマガ

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年3月20日号(転送禁止)~~~

*** 「デイ・ウオッチ」(17~19日)

ウクライナ和平案も協議か 中ロ首脳会談の概要判明:時事ドットコム (jiji.com) →20日から中ロ首脳会議が始まる。事前の事務レベル調整も進んでいる模様で、ウクライナ和平を協議する見通し。中国が武器供与をすれば、西側の反発は必至。世界の関心が集まる。

プーチン氏に逮捕状 子供連れ去りで戦争犯罪の疑い―「責任追及の合理的根拠」・国際刑事裁:時事ドットコム (jiji.com) →驚きのニュース。海外に出れば逮捕される可能性もある。実効性は薄いというが、ロシアの国際的孤立はより鮮明に。満州事変のリットン調査団報告書で孤立した日本を思い出させる。

プーチン大統領、占領地マリウポリ訪問 侵攻後初、ウクライナ反発必至:時事ドットコム (jiji.com) →電撃訪問で、こちらも驚き。狙いは不明だが、20日からの中ロ首脳会議も関係か。

藤井、最年少六冠 史上2人目、棋王も奪取―将棋:時事ドットコム (jiji.com) →羽生善治九段以来、史上2人目。20歳8カ月での達成で羽生九段の24歳2カ月を更新。全タイトルの8冠を目指す。野球の大谷か、将棋の藤井かという存在感。

*** 「社会人キーワード」

◎ビッグデータ  英国の調査会社ガートナー社の定義した「3V」が有名だ。データ量が巨大な「ボリューム」、速度が速く、リアルタイムで更新できる「ベロシティ」、文章が画像、動画などデータが多様性な「バラエティ」。注目された背景には、AIの進化で格段に上がった機械の処理速度、IoTの発達で様々なデータを活用して価値向上やコストダウンを図ろうとする機運、センサーの性能向上などがある。ポイントは、すべてのデータを瞬時に把握できるようになって分析の質が向上し、顧客の行動分析を始めとするビジネスへの応用ができることだ。一方、処理速度の能力不足、プライバシーデータの流出や、企業を超えた不適切利用などのセキュリティ問題もある。バランスの取れた活用が重要だ。

*** きょうの教養(SDGs不平等①不平等とは)

今週はSDGsの「不平等」を取り上げる。10番目の目標で、「人や国の不平等をなくそう」と訴える。まず「不平等」について考えてみたい。

不平等に近い言葉に「格差」と「差別」がある。格差は客観的な違いを示す中立的な言葉と言える。「差別」は偏見を背景に特定の人を不当に区別することで、否定的なニュアンスがある。差別は国際条約で禁止されている。明確に禁止されていないという意味で、不平等は格差に近い。

国同士では先進国と途上国の間に不平等がある。国内でも年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、貧富などの理由で生まれる不平等がある。どちらもなくそうというのがSDGsの目標だ。

不平等をなくすために重要な言葉が「ソーシャルインクルージョン」だ。日本語では「社会的包摂」といい、誰をも包み込み、追い出したり排除したりしない考え方だ。どんな人も自分の能力を発揮し、活躍する必要がある。そのためには不平等があってはうまくいかない。

不平等をなくす利点が及ぶのは、差別されていたり、困窮していたりする人たちだけではない。社会全体が豊かで健康で文化的な生活につながるという視点が必要だ。

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年3月21日号(転送禁止)~~~

*** 「デイ・ウオッチ」(20日)

袴田さん再審無罪へ 検察が特別抗告断念―57年経て、静岡地裁で公判:時事ドットコム (jiji.com) →当然の結論だが、「検察が特別抗告へ」という誤報があった。読売新聞、時事通信、共同通信などだ。予想されていなかったことを特ダネとして報じ、事実でなかった場合の衝撃は大きい。人々の記憶にも残る。現場検事は「特別抗告すべき」と主張しがちだが、検事総長ら首脳陣がどう判断するかは別。検察首脳への取材が不十分だったための誤報の可能性が高い。当該社は検討が必要だ。検察が特別抗告を要望した場合、法務大臣の指揮権発動の事態だった。スピーディーな再審審理が求められる。

日米欧の6中銀、ドル資金供給を強化 信用不安に対応、スイスも参加:時事ドットコム (jiji.com) クレディ・スイス買収合意 UBSが救済、4300億円―金融危機回避へ当局主導:時事ドットコム (jiji.com) →世界的な金融危機を封じ込めようと、各国当局が懸命の努力をしている。正常化を期待する声が強いが、その通りにいかないのが市場の恐さ。当局と市場の緊迫の攻防が続く。

途上国支援で連携強化 モディ氏、広島サミット参加―日印首脳会談:時事ドットコム (jiji.com) 広島サミット、韓国大統領ら招待 国連事務総長も―岸田首相:時事ドットコム (jiji.com) →岸田首相が必死のようだ。広島サミット成功のため、各国要人を招いている。何か大技を考えているのだろうか。

高市氏「質問しないで」発言撤回 委員長異例の注意、謝罪応ぜず―総務省側、文書「捏造認識ない」・参院予算委:時事ドットコム (jiji.com) →高市発言は泥沼の様相で、本人も孤立を深めている。潔く対応しないので、ずるずると突っ込まれ、時間がかかって有権者の印象を悪くしている。高市氏の地元・奈良知事選への思惑も絡んでいるので、まだ尾を引きそうだ。

*** 「社会人キーワード」

◎ロボティクス  「ロボット工学」の意味で、ロボットテクノロジーともいう。「RPA」(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、ロボットによる業務の自動化を指す。先行しているのは、倉庫や工場などモノを扱う分野。アマゾンの倉庫には「アマゾン・ロボティクス」(AR)というシステムが導入されている。床に埋め込まれたバーコードを読み取り、配送作業を効率化する。オフィスの効率化を目指し、資料作成などを自動化するホワイトカラーのRPAも進みつつある。今後期待されるのは、介護や清掃などより複雑な場面での活用だ。目の前の人やゴミの状況に応じて動く必要があり、微妙な動きや形状、においなどを判断する働きが求められる。課題はどこまで多機能化できるかだ。ロボットの仕事を増やすとどんどん大きくなってしまう。また、故障は避けられず、巨大システムでは影響が大きくなる課題もある。

*** きょうの教養(SDGs不平等②格差の理由)

SDGs目標「人や国の不平等をなくそう」の2回目は、世界で格差が広がる理由について考える。

世界全体の経済は成長しているが、主に恩恵を受けているのは一部の人たちだ。10億ドル以上の資産を持つ人は10年で倍増し、上位2000人の資産が最貧困層46億人の資産を上回っていると言われる。一部の豊かな人はより豊かに、多くの貧しい人はより貧しくなるのが世界の現状だ。

途上国では劣悪な労働環境で働いている人も多い。先進国に輸出されるバナナやコーヒー豆など産地は貧しい地域に多く、労働者の権利保護も不十分だ。こうした人たちに適切な賃金を支払うようにする「フェアトレード」という取り組みが注目されている。先進国はただ安い商品を輸入するのではなく、公正な取引に関心を持ち始めている。

平等には機会平等と結果平等の二つがある。前者は誰でも同じ機会を与え、後者は同じ結果を与える意味だが、政府の政策では前者を求めることが多い。全員に同じ結果を保証するのは困難で、結果が同じなら誰も努力せず活力がなくなるという理由だ。ただ、不平等はそれ自体好ましくなく、拡大すれば社会が不安定になる。所得の再分配を強化し、結果平等を求める政策も併用される。国際間での経済援助が代表例だ。

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年3月22日号(転送禁止)~~~

*** 「デイ・ウオッチ」(21日)

プーチン氏、中国の和平仲介を評価 ウクライナ巡り連日会談:時事ドットコム (jiji.com)  中国とロシア首脳会談始まる ウクライナ情勢への方針が焦点 | NHK | 中国 →中ロ首脳会談が始まった。詳細はまだ不明だが、中国は和平仲介で歴史的成果を狙い、米中対立を優位に展開したい思惑があるのは確実。時間をかけてでも和平実現を狙うとみられる。

岸田首相、ゼレンスキー氏と会談 広島サミット参加表明 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →岸田首相がインドからウクライナを電撃訪問。ゼレンスキー大統領は広島サミットにオンライン参加するという。中ロ首脳会議をにらんだやりとりもありそうで、表に出ない動きにも注目。

侍ジャパン、「敵地」克服し決勝へ 最高の舞台で米と対戦―WBC:時事ドットコム (jiji.com) →侍ジャパンが感動的なサヨナラ勝ち。祝日の朝で多くの人が釘づけになった。全員野球でムードは最高潮。今朝の決勝で新たな物語が生まれそうだ。

*** 「社会人キーワード」

◎ネットワークの経済性  SNSや電子メール、電話などのネットワーク型サービスで、参加者が増えるほど顧客獲得が有利になり、最終的に開発コストが急激に下がること。ネットワーク効果、ネットワークの外部性とも言われ、米国の電話会社AT&T社長のセオドア・ヴェイル氏らによって提唱された。経営戦略では、ファースト・ムーブ・アドバンテージ(先行者利得)といわれる。特にネットビジネスで顕著とされる。安くサービス基盤を提供しやすく、スピード勝負になるためで、早くプラットフォームを構築することで独り勝ちも可能になる。10億人を超えるユーザーがいるフェイスブックが代表的で、クリティカルマス(臨界点)を超えると劇的に効果が表れる。インスタグラムは、フェイスブックとの明確な差別化を図り、成功した事例だ。一方、交通事故による渋滞のように、ネットワークの巨大化が小さなきっかけで混乱する課題も指摘されている。

*** きょうの教養(SDGs不平等③不平等の種類)

「人や国の不平等をなくそう」の3回目は、どんな不平等があるのか考える。無意識に差別していることもあり、何が不平等かを具体的に深掘りすることが重要だ。

まず男女の不平等がある。「ジェンダーの平等」は目標5でも掲げられているが、日本では男女の賃金格差が先進国では最も大きい。世界的に見ると、教育を受けられなかったり、子どもでも結婚させられたりという地域がまだある。先進国でも「ガラスの天井」という言葉があるように社会進出に関する男女差がなお大きい。

人種や民族への偏見もある。人種差別撤廃条約が1965年に採択されたが、肌の色や言葉、習慣の違いによる差別は残る。マイノリティーと呼ばれる社会的少数派への迫害もある。南アフリカはかつて、アパルトヘイトと呼ばれる人種隔離政策を取っており、1991年に撤廃したが、差別は残っている。黒人の失業率は白人よりはるかに高い。

移民への差別も似ている。欧州の先進国では「移民が失業増加や治安悪化の一因」と感じる人も多く、移民政策をめぐって社会の分断も起きている。先進国の経済低迷が中間層をやせ細らせ、分断に拍車をかけている面も見逃せない。

障害者への差別や血筋による差別もある。不平等は深刻な人権問題であり、各人の意識にまで踏み込んだ対応が必要だ。

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*** 「デイ・ウオッチ」(22日)

◎ 大谷、二刀流で世界一 同僚トラウト封じる―WBC:時事ドットコム (jiji.com) 14年ぶり栄冠、列島歓喜 「夢のよう」「感動した」―侍ジャパン優勝でファンら・WBC:時事ドットコム (jiji.com) →WBCで侍ジャパンが優勝した。最後は大谷が米国主将でエンゼルス同僚のトラウトを空振り三振に打ち取った。新聞号外に大勢の人が殺到し、奪い合いになった。どちらもかつてない光景だった。

米、0.25%利上げ インフレ抑制を優先―年内あと1回引き上げ・FRB:時事ドットコム (jiji.com) →金融不安対応よりインフレ退治を優先する姿勢が鮮明だ。

対ロ非難、即時撤退要求 日ウクライナ首脳声明―エネルギー支援に600億円:時事ドットコム (jiji.com) ウクライナに「対話」迫る 中ロ首脳、共同声明署名―習氏、プーチン氏の訪問招請:時事ドットコム (jiji.com) →日本とウクライナ、中国とロシアの首脳会談が重なった。いずれも自国に有利な情報を発信している。戦闘と外交・情報戦がより複雑に絡まり始めた。

公示地価、2年連続上昇 コロナ回復顕著に―地方住宅地、28年ぶり・国交省:時事ドットコム (jiji.com) →地価もポストコロナ時代に入った。上昇率トップは、日本ハムの新球場ができる北海道北広島市。WBCで注目された栗山監督、ダルビッシュ、大谷の出身チーム。2年目の新庄監督にも関心が集まる。

*** 「社会人キーワード」

◎CSV  「クリエイティング・シェアード・バリュー」の略で、「共通価値の実現」という意味。ハーバード大教授のマイケル・ポーター氏の提唱した概念で、企業の社会貢献が競争優位を築く上で重要になっているという。CSR(コーポレート・ソーシャル・リスポンシビリティー)との対比で語られる。CSRは、利益とは関係のないいわば「善行」で、業績が悪くなると見直される。CSVは、利益の最大化や競争に不可欠という位置づけ。企業と地域社会が共同で価値を創出するため、企業活動の根本に組み込んでいく。企業は自社らしさを意識し、環境や社会の持続可能性に貢献し、社会とウィンウィンの関係を作ることで利益をあげる。背景には社会や消費者の意識の変化がある。企業は、製品や市場の見直し、バリューチェーンの再定義、地域を支援する産業クラスター作りなどを検討することになる。

*** きょうの教養(不平等④日本の格差)

「人や国の不平等をなくそう」の4回目は、日本国内の格差について考える。世界第3位の経済大国だが、相対的貧困率の高さが問題になっている。

相対的貧困率を上げる一つの要因が、少子高齢化だ。高齢者の収入は、年金に依存し、現役時代より少ない。医療の発達で長寿化が進んでいるが、かさむ医療費への不安も小さくない。子どもが少なくなり、支える人が減っている。個人的にも社会的にも日本が抱える最大級の課題だ。

20年ほど前から関心を集めてきた格差が、非正規雇用の低賃金だ。正規雇用は定年まで働けるが、非正規は派遣や契約社員、アルバイトなどで、雇用が不安定で、賃金が低い。好んで非正規を選ぶ人もいるが、企業は人件費削減で非正規を増やしており、望まない非正規も多い。政府は「同一労働同一賃金の原則」で格差解消に動いている。しかし、すぐには解消されず、問題は将来に及ぶ。

親の所得差による教育格差も拡大している。所得の低い家庭は、塾や習い事など学校外の教育に費用をかけられず、スポーツや文化など体験学習も限られる。親の貧困が将来に連鎖することになる。

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*** 「デイ・ウオッチ」(23日)

9知事選に33人立候補 来月9日投開票―統一選前半戦:時事ドットコム (jiji.com) →ほぼ1か月にわたる統一地方選が始まった。告示された9知事選で、国政の与野党対決は北海道のみ。地域の課題への対応が中心テーマだが、旧統一教会との関係も忘れてはならない。下がる傾向にある投票率も問題だ。後半には5つの国政選挙補選もある。

東芝、2兆円買収受け入れ 国内ファンドが7月にTOB―非上場化で再建へ:時事ドットコム (jiji.com) →迷走してきた東芝の経営問題が非上場化で決着しそうだ。国内きっての名門企業で優秀な学生を多く採用してきたが、2000年代からはパソコンの利益水増しから始まり、上層部の内紛、原発大手ウエスティングハウス買収の失敗、大型不正の発覚、海外株主との泥沼化した確執と続いた。失敗の研究には事欠かない。

岸田首相「ウクライナ対応を主導」 中間国と協調、制裁回避阻止―電撃訪問、国会で説明:時事ドットコム (jiji.com) →岸田首相がウクライナ訪問を国会で説明した。極秘訪問で事前の承認を得なかった事情もある。海外では同時期にロシアを訪問した中国の習近平国家主席との対比で様々に論評された。

*** 「社会人キーワード」

◎「イノベーションのジレンマ」 ハーバードビジネススクールのクリステンセン教授の提唱した概念。業界のトップ企業がイノベーションに立ち遅れて失敗してしまうという見解で、「偉大な企業はすべて正しく行うが、失敗する」という。一旦は特定の業界で高いシェアを獲得し成功したとしても、安定したポジションでいられるとは限らず、顧客のニーズを把握しようと高い技術や品質を求めて努力する。本来ならさらに成功を収める要素となり得るが、安い市場を狙った破壊的な技術が生まれて市場を席巻し、優良企業は新技術を甘く見てイノベーションに立ち遅れ、失敗に陥る。同教授はハードディスク業界を分析した。カメラがフィルムからデジタルへ、音楽がレコードからCDを経てネット配信へ、電話が携帯からスマホへ、車がエンジンから電気へと急激に変化しており、どの業界でも想定できる。

*** きょうの教養(不平等⑤どうすべきか)

「人や国の不平等をなくそう」の最終回は、目標達成のためにどうしたらいいかを考える。SDGsのどの目標もそうだが、まず現状を知ることから始めなければならない。不平等は人の意識にもかかわる問題でもあり、各人が社会の多様性を尊重する必要がある。そのうえで、政府や国際機関の役割が問われる。

国際的な支援では、先進国が政府開発援助(ODA)や投資で途上国のインフラ整備を進めている。飢餓や貧困に苦しむ国は146あるとされる。生活や教育関連の施設、道路などのインフラ、就労支援など産業自立策などが求められる。途上国の貿易を促す取り組みや債務を軽減する仕組みも大切だ。ハードとソフト両面の支援が重要になる。新型コロナウイルスではワクチン接種の75%が10か国に集中していると報告された。途上国は取り残されたのだ。

支援の主体となる先進国では「支援疲れ」という言葉も聞かれる。先進国経済が低迷し、国際紛争があれば、支援の効果も限られる。移民が増えているが、自らの職を奪われるとして排斥する動きも見られる。しかし、移民が経済発展に貢献する例があることも事実だ。粘り強い活動が人類の未来を開くと考えられるかどうか。地球に住む一人一人の意識や覚悟も問われている。