マイクロソフトと対話型AIへの危惧
対話型AIをめぐる議論が活発になっている。とりわけ、マイクロソフトの提供する「チャットGPT」が話題の中心だ。人類にとっての功罪が議論されているが、技術そのもの以上に、サービスを提供する企業の姿勢こそ重要ではないか。そう感じる体験をした。
4月上旬、マイクロソフトのアウトルックメールが不具合になった。いつも使っているアドレスから発信できず、めったに使わない別アドレスからは発信できる。受信はすべて迷惑メールになる。どうも変則的な不具合だ。パソコンの電話サービスを利用しているトレンドマイクロにアドバイスを求めた。しかし改善せず、「マイクロソフトに連絡するしかないですね」と言われた。
マイクロソフトに電話すると、「マイクロソフトの電話サポートは有料で、登録していないと受けられない」という。やむなく年間1万2984円を払うことにしたが、これは「オフィス2021」から「オフィス365」に変更し、それに伴って電話サポートを提供するものだ。「2021」は今回削除したので、ずっとサブスクになり負担が発生する。
3回担当者が代わり、そのたびごとに面倒な本人確認があった。やっとアウトルック担当者にたどり着いたところ、「調べてみたが、サーバーの問題だろう」という。「サーバー担当者につないで欲しい。不自然な不具合なので、原因を教えて欲しい」と言ったが、「それはできない。メールでお願いするしかない」という。
担当者には限られた権限しかないようで、担当外は何もできない様子だ。どうも変だ。ここに至って、ふと考えた。「マイクロソフトはサブスクに代えさせるため、意図的に不具合を起こしているのではないか」と。半日ほどすると、自然と直ったが、原因の連絡はない。
後日、再びマイクロソフトの窓口に問い合わせると口ごもってしまい、「原因の開示はしていない」と言うばかりだ。しかし、思わぬ負担増を強いられた身としては、納得できない。大企業にとっては取るに足らない顧客なのだろう。「やりとりは録音しているわけだから、マイクロソフトの日本法人社長に聞かせて欲しい。原因を早急に教えて欲しい」と訴えておいたが、5月7日現在、返信はない。
問題は、こちらが聞きたいことに対して誠実に対応せず、「ブラックボックス」にしていることだ。対話型AIに対しても同様の指摘がされている。恐らく、マイクロソフト社内でもブラックボックスが多いのではないだろうか。ブラックボックスが相互に作用して暴走し、人類にマイナスを及ぼす可能性がないとはいえない。大げさかもしれないが、取り返しがつかなくなっては困る。
技術の安全性は、技術そのものと同時に、技術を管理する組織のあり方にも深く関わっている。別の米国系IT企業とは、知らないうちに無料期間が過ぎたとして、クレジット会社から請求が来て困惑したこともあった。日本法人はなく、行政の消費者窓口とも相談し、教えてもらった英文を参考にメールを送って、請求を撤回してもらった。日本の大企業ならこうしたことはまずない。どうも釈然としない。