5月15~19日(教養講座:未来の年表)
~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年5月15日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウオッチ(12~14日)
◎平和記念公園でG7首脳出迎え 岸田首相表明「被爆の実相伝える」―広島サミット会場を視察:時事ドットコム (jiji.com) その悲惨さに立ちすくみ、体震える 核兵器と向き合った赤十字の言葉集:時事ドットコム (jiji.com) →ロシアとウクライナの戦争で「HIROSHIMAサミット」の歴史的意義が高まっている。百聞は一見に如かず、各国首脳の体感が重要。赤十字の言葉集も貴重だ。
◎ジャニーズ事務所が性被害告発に公式見解「行為自体は決して許されることではない」(ENCOUNT) – Yahoo!ニュース →やっと真正面から向き合った。沈黙気味だった民放も報じた。直接関与していない現経営陣としては苦しい対応になったが、人気ビジネスで犯罪になる可能性もあることを考えれば、対応は遅すぎた。
◎関電など5社、改善計画提出 不正閲覧問題で経産省に:時事ドットコム (jiji.com) 関電、子会社合わせ24人処分 営業自粛は解除:時事ドットコム (jiji.com) →懲りない電力会社の一つの節目。民間企業とは言え、長く地域独占でやってきたので競争意識がほぼゼロ。特に関西電力の不祥事は特筆して多い。
◎マイナ保険証、別人とひも付け 個人情報閲覧の可能性―過去にも誤り7300件・厚労省:時事ドットコム (jiji.com) →お寒い日本政府のDX。入力ミスらしいが、人の健康情報で診察を受けたら、命に関わる事態になりかねない。問題が拡大すれば、マイナンバーと保険証のリンクの見直しを求める声が高まりそうだ。
◎米誌タイムに外務省抗議 記事見出し「軍事大国化」:時事ドットコム (jiji.com) →先週金曜日のメルマガで触れたタイム誌の「日本軍事大国化」の見出しだが、政府の申し入れを受けて見出しを変更した。おいおい、いい加減なのか、柔軟なのか。
*** 「社会人キーワード」
◎ディープラーニング 日本語では深層学習という。機械学習の一種で、2016年に世界最強レベルの囲碁棋士を負かした「アルファ碁」もこの技術を使っている。自動運転などAIを応用した分野で広く使われている。人間の脳の神経細胞(ニューロン)を模したネットワークで形成されている。最大のメリットは、精度の高さと学習速度の速さ。画像処理に強い高度のCPU(中央処理装置)によって実現している。また、学習すべき注目ポイント(「特徴量」という)を機械自らが新たに判断して、学習を進める能力もある。人間が言語化しにくい分野で威力を発揮するといわれる。例えば「これから活躍しそうな人材をカオ写真から判断」する場合、人間なら「自信がありそうな顔」といった情報で判断するが、機械が独自の評価基準を定め、新しい要素を発見する。
*** きょうの教養 (未来年表①2017~20年)
未来の日本社会を予測した「未来の年表」(河合雅司著、2017年刊)を紹介する。人口減少で何が起きるか数字の根拠を示してまとめている。少子化は刊行時より進んでいるので、現実はもっと厳しい。今週は「人口減少カレンダー」を特集する。数字は極力少なくし定性的に紹介するが、当該年に実現するという訳ではなく、大きな方向性を示している。5月29日からの週で「処方箋」を掲載する。
2017年「おばあちゃん大国」に変化=日本は他国に比べて高齢化の早さで群を抜いている。65歳以上を高齢者というが、今後は高齢者の高齢化が進む。その主役は女性で、夫に先立たれて一人暮らしが増える。経済的に余裕があればいいが、窮乏化し、孤独死も増える。
2018年「国立大学が倒産の危機へ」=18歳人口は急減し、40%超の私立大学が定員割れをする。将来、私立大学が半減してもおかしくない。建学の精神も色あせる。深刻なのは地方大学だ。国立大学も例外ではない。就職したい地元有力企業が少なく、地域の展望も描けない。
2019年「IT技術者が不足し始め、技術大国の地位が揺らぐ」=技術者の不足と高齢化が進む。原子力技術者の不足は廃炉への不安になる。IT人材が手薄になり、成長の足かせとなる。高度成長期に作られた社会インフラが老朽化する。特に水道が心配で、値上げは必至だ。税収減で自治体の職員不足も起きる。
2020年「女性の2人に1人が50歳以上になる」=少子化対策が功を奏して出生率が倍増しても母親となる女性が減っているので出生数は増えない。1組の夫婦が5~6人の子どもを持つ多産社会に戻るなら別だが、成熟国家の日本では難しい(2020年にこの予測は現実になった)。
~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年5月16日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウオッチ(15日)
◎北朝鮮、日本から仮想通貨980億円奪取 世界被害額の3割 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →有料記事なのでこのURLではすべて読めないかもしれないが、日経新聞の特報。サイバー攻撃のハッキングで北朝鮮の年間輸出額の8倍以上にあたる980億円を奪取していたという。ミサイルの開発資金に使われた可能性もある。まさに「悪の枢軸」。
◎文化庁、京都で本格稼働 事実上の2拠点体制に(共同通信) – Yahoo!ニュース →ほぼ半分は東京に残るので、形だけの移転に近い。日本では1990年前後、東京一極集中是正のため首都移転論議が盛り上がったが、今は形もない。明治維新で中央集権となった日本人の意識改革には、首都移転のようなインパクトは効果的だろう。
◎トルコ大統領選、28日に決選投票 現職エルドアン氏と野党統一候補―議会は与党連合過半数:時事ドットコム (jiji.com) →エルドアン氏は20年も権力の座にいるが、どうなるか。ロシアのプーチン氏は大統領・首相20年以上。絶対権力は腐敗する、どんな人間も堕落する。米国大統領のように任期を8年に区切るのは、人類の知恵だろう。国家主席10年を超えた習近平氏も危うい。
◎反軍革新系が第1党 野党で過半数、与党議席減―タイ総選挙、連立調整へ:時事ドットコム (jiji.com) →タイの人たちは「軍政にノー」を意思表示した。しかし、政権作りはこれから。完全な民政に戻るのかどうか、注目だ。
*** 「社会人キーワード」
◎ブロックチェーン 電子データの取引記録を複数の分散コンピューターで管理する仕組み。今までは特定の企業や組織が管理していたが、分散して管理することで改ざんが不可能になり、管理者が不要になる。分散型台帳技術とも言われる。基本技術は、①自律分散型のピア・トゥー・ピア(P2P)ネットワーク②複数コンピューターでデータを管理するコンセンサスアルゴリズム③暗号技術の3つ。暗号は数値で示す「ハッシュ」という技術、解読には二つのカギを使う「電子署名」を活用した。応用分野では、仮想通貨(暗号通貨)で先行した。このほか、小売業などのサプライチェーン、市場取引の自動化、民泊などのシェアリングなどが想定されている。デメリットとしては、管理者がいないので問題が生じたときの責任者や訴える相手の不在、法整備の遅れなどが指摘されている。
*** きょうの教養 (未来年表②2021~24年)
2021年「介護離職が大量発生する」=50代になるころから親の介護に直面する人は増えるが、団塊ジュニアの先頭が50代になる。介護保険の利用者が伸び、制度の見直しを進めているものの、介護スタッフの離職率の高さという問題もある。家族による介護が増え、介護離職が増えるだろう。介護休業がもっと利用され、企業は50歳代の管理職不足になる。
2022年「ひとり暮らし社会が本格化する」=団塊世帯の先頭である1947年生まれが75歳になる。夫がなくなりひとり暮らしになる女性が増加する「ひとり暮らし社会元年」だ。理由は、子どもと同居しない、未婚者の増加、離婚の増加だ。家族の消滅である。会社人間だった男性のひとり暮らしは厄介だ。孤立が懸念される。
2023年「企業の人件費がピークを迎え、経営を苦しめる」=労働力人口は減り続けるが、バブル世代、団塊ジュニア世代が、人件費が最も高い50歳代になる。ポストは少なく、処遇やモチベーション維持が課題になる。10年後には企業の退職金負担が重くなる。
2024年「3人に1人が65歳以上の超高齢者大国へ」=団塊世代全員が75歳以上になる。高齢化は地方が先行したが、大都市部で急速に進む。政府は医療・介護を地域で完結させるため地域包括ケアシステム構想を描いているが、自宅で老老介護は多くなる。晩婚・晩産で育児と介護をする女性が増え、離職の可能性も増える。未婚女性も同様だ。
~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年5月17日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウオッチ(16日)
◎家庭の電気代値上げ、6月から14~42% 東電など7社 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →電気料金の6月からの値上げが決まった。申請より削り込んだ値上げ幅は、7社でかなり幅がある。東京電力は半分に削られた。中部電力はすでに値上げしている。エアコンフル回転の夏を前にして家計にのしかかる。
◎日経平均は4日続伸、半導体株高がけん引 TOPIXバブル後高値(ロイター) – Yahoo!ニュース →実感なき株高。TOPIXが33年ぶりの高値をつけた。半導体関連株が上昇し、主に外国人が買っているという。日本買いを続ける著名投資家・ウォーレン・バフェット氏の存在感もあるようだが、日銀の買いで底上げされている面もあり、一般人にはピンとこない。
◎核融合発電で日本連合 三菱商事など16社、新興に出資 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →日経新聞の特報。エネルギーを海外に頼る日本としては大いに期待したい動き。大企業が参加するニッポン連合だが、大企業のイノベーション力は衰退している。寄り合い所帯の弱さも予想される。指導力が重要になる。
◎ジャニーズ事務所はどうなる? 藤島ジュリー景子社長が迫られる“選択”(ITmedia ビジネスオンライン) – Yahoo!ニュース →ジャニーズ事務所の今後について、ITメディアが長行の解説。沈黙気味だった大手メディアは報道を始めたが、一転して厳しいバッシング風も。事務所の責任は重いが、現経営陣の関与はなく、一般企業に比べれば小規模な事務所であり、報道に工夫の余地もある。
*** 「社会人キーワード」
◎エコシステム 生態系を意味する生物学の用語だが、企業や人が集積して経済的な価値を生んでいる状態をいう。ネットワークの経済性が働きやすいIT業界で顕著。グーグルやアマゾンなどが典型で、自社が中心に位置し、サポート環境を提供することでパートナー企業が自然に集まるように仕向け、さら価値を増殖していく。顧客にも関係しており、特定のプラットフォームに参加することで多くのサービスを享受でき、企業も改善のヒントを得られて「ウィン・ウィンの関係」になる。IT企業が集まるシリコンバレーも独自のエコシステムを形成している。スタンフォード大学を核に企業と人材が集まり、資金提供の場ともなっている。日本ではクラスターと呼ばれるが、シリコンバレーには及ばない。良いエコシステムの条件として、①低コストで新商品につなげる生産性②環境変化に耐えるたくましさ③新しさが継続的に生むニッチの創出が指摘されている。
*** きょうの教養 (未来年表③2025~30年)
2025年「ついに東京都も人口減少へ」=未来年表刊行後、ピーク予想は2030年に先送りされたが、いずれ減少することは避けられない。東京都はビジネス中心の街づくりをしてきたので、介護・医療基盤が弱い。地方から東京に高齢の親を呼び寄せるケースも多く、不安に拍車をかける。
2026年「認知症患者が700万人規模に」=認知症は高齢者の5人に1人が発症する国民病になっている。根治できる薬物療法はなく、老老介護ならぬ「認認介護」も登場している。介護する側は疲弊しやすい。十分な医療体制を確保できるか、ベッド数は十分か、質はどうか、という問題がある。
2027年「輸血用血液が不足する」=献血している人の76%が50歳未満、使用する患者の85%が50歳以上だ。けがに使われるのはわずか3.5%で、約80%は病気に使われ、半分はがん患者だ。血小板製剤は採血後4日しか使えず、備蓄できない。献血者が減れば、病院に行っても助からない事態になりかねない。
2030年「百貨店も銀行も老人ホームも地方から消える」=存在確率という数字がある。どの程度の人口規模なら成立するかという数字で、80%なら存続できそうとされる。人口規模で銀行なら9500人、有料老人ホームなら12.5万人、ハンバーガー店なら5.25万人。人口がこの水準を下回れば、地域から消えかねない。
~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年5月18日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウオッチ(17日)
◎二輪も脱炭素 ヤマハ発など4社、水素エンジン共同研究 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →2輪も脱炭素の時代。未来技術を共同で研究するので期待をしたいが、お互い競争しなくていいのか、独禁法上はどうなのか、相乗りでうまくいくのか、とも思ってしまう。
◎柏崎刈羽原発への運転禁止命令を解除せず…原子力規制委が決定(読売新聞オンライン) – Yahoo!ニュース →先が見えない東京電力の柏崎刈羽原発。値上げ申請にはこの原発の再稼働を見込んでいたが、値上げ幅は半分に削られた。関西電力などと違って反競争的な不正行為はないが、原発の運転管理の甘さが響いている。
◎最大野党、侯氏擁立を決定 主要3党候補出そろう―台湾総統選:時事ドットコム (jiji.com) →かつてなく注目を集める台湾総統選。国民党は中国政府ともっとも友好的で、選挙戦の結果は台湾有事の行方も左右する。
◎元特捜部長、有罪確定へ 車暴走死亡事故―最高裁:時事ドットコム (jiji.com) →納得するまで裁判で争うのは国民の権利だが、地検元特捜部長が「車の不具合」と最高裁まで争った。東京・池袋で母子を死亡させ、逮捕されずに争い「上級国民」と言われた元工業技術院院長を思い出す。
*** 「社会人キーワード」
◎カスタマージャーニー 顧客が、製品やサービスの出会いから購入、継続利用に至る行動の経過。現代のマーケティングでは、購入の顧客像(ペルソナ)をいくつか設定し、カスタマージャーニーを時系列にしたマップを使って手を打つことが求められている。顧客との接点では、「真実の瞬間」(MOT:モーメント・オブ・トゥルース)が重要となる。顧客の経験に大きなインパクトを集める瞬間で、期待を大きく超えるサプライズや感動を与えれば、継続的な顧客になる可能性が高くなる。マップでは横軸に時間、縦軸に顧客の思考や感情を置き、接点ごとにKPI(重要業績評価指標)を設定し、運用しながら新しい打ち手を講じるのが理想。注意点としては、ビッグデータが取りやすくなったことで過剰に精緻になり、マーケティングを混乱させることだと言われる。
*** きょうの教養 (未来年表④2033~40年)
2033年「全国の住宅の3戸に1戸が空き家になる」=単身高齢者が施設に入って管理できない住宅が増えている。6割のマンションで管理組合が成り立たない。一戸建ては倒壊の危険があり、犯罪を増やす。新築志向が一因で、政府も景気浮揚を狙っているので、空き家対策は置き去りだ。
2035年「未婚大国が誕生する」=男性は3人に1人、女性は5人に1人が生涯未婚となる。1970年には男性1.7%、女性3.3%に過ぎなかった。2011年の調査では、未婚が多いのは男性で年収300万円未満、女性で600万円以上。日本では婚外子が少なく、結婚と出産を一体で考える人が多いので、少子化は進む。
2039年「深刻な火葬場不足に陥る」=2016年の年間死亡者は130万人で過去最多だが、39年ころには160万人レベルの多死社会になり、火葬場がひっ迫する。特に首都圏で深刻だが、住民の反対や死者はいずれ減少するという見込みから、火葬場建設は進まない。無縁遺骨や無縁墓の増加、納骨堂や霊園の不足も予想される。
2040年「自治体の半数が消滅の危機に」=戦後は一貫して少子化傾向だったが、平均寿命の伸びが覆い隠してきた。しかし、消滅する自治体も出る。地方にとって若い女性が都会に流出するのは大きな痛手だが、東京都でも多摩地区や都心から遠い23区でも人口が減る。医療や介護の危機が深まる。退職後に東京から地方に移住するのも有力な選択肢になる。
~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年5月19日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウオッチ(18日)
◎首脳声明案、対中ロで「国際秩序堅持」 広島サミット19日開幕―米大統領、原爆資料館訪問へ:時事ドットコム (jiji.com) 米マイクロン、5000億円投資 海外半導体、相次ぎ計画表明―岸田首相、会合で呼び掛け:時事ドットコム (jiji.com) →「HIROSHIMA」ならではの普遍的メッセージをどこまで発信できるか。世界に広島の様子が伝えられるが、「HIROSHIMA」の教訓、人類の愚かさをどこまで届けられるか。半導体の対日投資発表はヒット。
◎搬送された市川猿之助さん、命に別条なし…死亡の両親は外傷なく布団かけられた状態 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) 【スクープ】市川猿之助が共演者やスタッフに“過剰な性的スキンシップ”のセクハラ・パワハラ「拒否した途端に外された」|NEWSポストセブン (news-postseven.com) →人気歌舞伎俳優の自殺・無理心中とみられる謎の行動。断定できないにしても女性セブンがこの日、「セクハラ、パワハラ疑惑」(URL)を報じており、関係しているとみるのが自然だ。NHKなどセブン誌報道を伝えないメディアもある。ジャニーズ疑惑と似た構図。歌舞伎は庶民の芸能が起源だが、自分たちは特別だと勘違いする役者も時に出る。
◎自公、LGBT修正案を提出 野党は対案、成立見通せず:時事ドットコム (jiji.com) →LGBT法案を出すだけの自公与党。超党派法案を勝手に変えたので、野党が反発するのは当然だが、廃案にするのも賢明とはいえない。伝統的家族観に固執する自民保守派の存在は、ジェンダー平等、LGBT理解、ひいては天皇制存続の障害ともなっている。背景に旧統一教会などの存在を見ざるを得ない。
◎維新、梅村氏の法務委員更迭 「ハンスト」発言巡り:時事ドットコム (jiji.com) →確信犯的に人権侵害発言をする若手政治家が時にいる。政治家は基本的に弱い立場にいる人に寄り添ったうえで、社会全体の公益を考える職業のはずだ。維新も更迭するしかなかった。
*** 「社会人キーワード」
◎HRテック 人的資源管理(ヒューマン・リソース・マネージメント)の課題をテクノロジーで解決すること。新卒採用では、かつては学歴だけを見ている企業も少なくなかったが、エントリーシートを数値化して絞り込んだり、志望動機をAIで採点したりする動きもある。米国では面接の表情から将来の活躍を推測するサービスもある。配置では、社員の記録と仕事の特性を蓄積しておき、ふさわしい仕事を探すこともできる。労務管理ではタイムカードを押した時間などを分析して、辞職の可能性を探る研究もある。メンタルヘルスでは、ウェアラブルからのデータを参考に健康指導をすることもできる。「エドテック」と呼ばれる教育の分野では、オンライン教育の提供や学習履歴の蓄積、社員の言動から周りが気づいていない潜在力を知ることもできる。昇進昇格にAIを活用しようという動きもある。技術的な可能性は高いが、人のやる気や感情が関わる分野でもあり、運用の信頼性が重要になる。
*** きょうの教養 (未来年表⑤2042~65年)
2042年「高齢者人口が約4000万人とピークに」=団塊ジュニア世代がすべて高齢者になり、最大ピンチの年だ。高齢者向けサービスの絶対量もこの年にあわせないと間に合わない。非正規労働者も多く、貧しい高齢者が増えていく。年金保険料の納付も少ないので低年金になる。親に依存していた人は、親が亡くなり破たんしかねない。
2045年「東京都民の3人に1人が高齢者に」=高齢者の増加は地方から始まったが、都市部では遅れて大量に増える。自治体は財源問題を解決するため、税金と社会保険料を引き上げる一方、行政サービスをカットする。地方では高齢者が増えないので既存の施設を活用すればいいが、東京では負担ばかりが増える。住みやすい地方に移動する高齢者が増えそうだ。
2050年「世界的な食糧争奪戦に巻き込まれる」=高齢化で農業人口が減っていく。耕作放棄地は増える。しかし世界では人口が増えて2050年には97.3億人と予測され、食糧争奪戦となる。海外で水不足になれば食糧の輸出量が減り、日本の輸入は減る。食糧確保が困難になれば、国の安全保障問題と直結する。
2065年~「外国人が無人の国土を占拠する」=現在の居住地域の約20%が誰も住まない土地になる。離島の10%が無人化する可能性があり、スカスカの列島になる。若い力が必要な自衛隊、警察、消防などで人集めに苦労する。国防や治安、安全安心に大きな影響を与える。
(これまでは悲観的な数字や動きを多く紹介してきた。再来週5月29日から「処方箋」を特集する)