5月29日~6月1日(教養講座:未来の年表・処方箋)

2023.06.02メルマガ

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年5月29日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウオッチ(26~28日)

米債務上限引き上げ、原則合意 妥協案に反発も 予断許さず(毎日新聞) – Yahoo!ニュース →最悪の事態は、とりあえず避けられた模様。国内の政治的対立で世界経済を混乱に追いやるのはやめて欲しい。来年の大統領選に向けて、民主・共和両党の対立はことあるごとに深まる見通しで、迷惑は続く。

「孤独ばかにされた」 青木容疑者、思い込みか―4人死亡立てこもり・長野:時事ドットコム (jiji.com) →一方的に恨みを募らせたというやりきれない動機。「大学で独りぼっちだといじめられて対人関係が苦手になった」という。「独りぼっち」がキーワードになったようだ。4人殺人との落差がはなはだしい。

役所広司さん男優賞 日本人2人目、カンヌ映画祭―坂元裕二さん、是枝作品で脚本賞:時事ドットコム (jiji.com) →役所さんの受賞作は「パーフェクト・デイズ」で、ドイツのヴェンダース監督が東京で撮ったドラマ。渋谷の公共トイレ清掃員・平山の小さな喜びと美しさに満ちた日々を丹念に追っていく。無口な平山の胸の内を表情と佇まいのみで表現したという。「役所は現代の笠智衆」の声も。

トルコ大統領選、エルドアン氏が勝利宣言 経済低迷・強権批判を退け(朝日新聞デジタル) – Yahoo!ニュース →首相時代を含めトルコのトップを25年務めることになる。強権への批判が根強いが、今の期待はロシアとウクライナへの影響力だろう。

米助言会社グラスルイス、トヨタ会長の取締役選任議案に反対を推奨 (newspicks.com) →豊田章男会長の取締役再任反対理由は、独立社外取締役が不足しているという理由。これ以外にも、オランダなど欧州の助言3社が、温暖化ガスの排出削減に関する報告書の作成を求めて株主提案を出し、賛成する海外会社も出ている。6月14日のトヨタの株主総会は荒れ模様だ。

*** 「社会人キーワード」

◎スマート化 技術の進化を賢く(スマートに)取り入れ、仕事や生活を洗練させること。大規模なところでは、発電所の供給側と、事業者や家庭など需要側の電力需給を自動的に制御し、効率的な電力使用を目指すスマートグリッドがある。事業者や家庭にはスマートメーターを取り付けることになる。身近な場面では、コピー機の用紙が少なくなった時に事前に知らせ、自動的に補充すれば無駄な時間は減らせる。会議室予約ではうまく調整できるソフトを使って最適なスケジューリングを図ったり、トイレの使用状態を示す仕組みを作り、お互いが快適に利用できたりする仕組みがある。ちょっとした不便は、センサーやアプリ、スマホなどの組み合わせで改善することができる。そうした知恵が多くの場面で求められている。

*** きょうの教養 (未来年表・処方箋①)

今週は「未来の年表・処方箋」を紹介する。5月15日の週に「未来の年表」(河合雅司著)から、今後の人口減少で生まれる現象を予測した。悲観的な内容が多いが、手をこまぬいているわけにはいかない。本では10の処方箋が提案されている。今週はその具体案をみていく。賛否はあるだろうが、新しい発想や常識が求められていることは確かだ。

◎序論 「戦略的に縮む」=日本は、出生数の減少、高齢者の増加、勤労世代の減少、という要因の異なる3つの課題に同時に立ち向かわなければならない。政府は対策として①外国人労働者②AI③女性④高齢者を選択肢とする。①への依存と②への過度な期待は人口増時代の発想だ。③と④は長年の労働慣行の打破が不可欠で、スムーズにいくだろうか。「戦略的に縮む」ことを提案したい。20世紀型成功体験を捨てることであり、10の処方箋を提案したい。

【1】高齢者を削減する=65歳以上を高齢者にしたのは19世紀のドイツ首相ビスマルクという。最近では「75歳以上にしたらどうか」という提案もある。65~74歳の高齢者は、データでも昔より肉体的に若返っている。子どもは現在、「14歳以下」だが、中学校卒で就職する人は少ない。「19歳以下」にすれば、子どもは増える。高齢者1人を支える人数は今より増える。年金に税金を投入するより、老後の費用を減らすため、低家賃の高齢者住宅を行政が整備すればいい。空き家を活用すれば予算も少なくて済む。今は50年で勤労世代が40%も少なくなる国家の非常事態だ。ルールや慣習の大胆な見直しが必要だ。

【2】24時間社会からの脱却=便利すぎる社会、過剰サービスを見直し、不要な労働をなくして、社会全体の労働時間を短くしたい。24時間営業のコンビニやレストランが多いが、やめる店も出ている。通販の拡大で急増する宅配も見直しの動きがある。ポイントは顧客の意識だ。便利さは誰かの必要以上の頑張りの上に成り立っていることを忘れてはならない。どんな仕事にも程度や頃合いがある。昔、商店は正月3が日は休んでいた。不便さを楽しむくらいの社会の余裕を持ちたい。

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年5月30日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウオッチ(29日)

岸田首相の長男、翔太郎秘書官を更迭 公邸内の不適切行動に批判 – 産経ニュース (sankei.com)→「やはり野に置けレンゲソウ」。息子の勘違い体質を見抜けなかった親の責任も大きい。広島サミットの支持率上昇も吹き飛んだ。世襲に対する世間の反感が予想以上に大きいことも示している。

九州北部から東海が梅雨入り 近畿や中国など大雨注意―気象庁:時事ドットコム (jiji.com) →うっとうしい梅雨がやってきた。地球温暖化による集中豪雨で今後、大きな被害が出ないことを祈るばかり。

北朝鮮、31日以降ミサイル発射 「衛星」と通報、南西諸島通過か―浜田防衛相、自衛隊に破壊命令:時事ドットコム (jiji.com) →北朝鮮は許せないが、「国連安保理決議違反だっ。国民の安全に万全を期すぞっ」と構える日本政府の反応も予定調和的。いつまでこうした状態が続くのか。

ベラルーシ大統領に再び重病説 ウクライナ情勢に影響の可能性も(毎日新聞) – Yahoo!ニュース →30年近くベラルーシのトップにいるルカシェンコ大統領。何が起きたのか、ロシア・ウクライナ情勢への影響は? 気になることが多い。

*** 「社会人キーワード」

◎サブスクリプション 定額課金モデル。「サブスク」の略称でよく聞かれるようになった。本来は、雑誌や新聞の定期購読の意味もあるが、最近ではモノやサービスを買い切るのではなく、パッケージ化された利用権を定額で買うモデルで使われる。所有しなくても好きな時に使えれば十分という意識の変化と、それを実現するシェアリングエコノミーの代表例となっている。コンピューターソフトや雑誌や漫画の読み放題から自動車まで幅広く普及している。ユーザー側のメリットは、買い取るというリスクがなく気軽に使えることだ。提供側は安定収入を獲得できる。デジタル商材の場合、一定の水準を超えればコストはほとんどかからないため、高い収益が期待できる。ユーザーがサブスクの存在を忘れ、使わなくなっても料金を払うこともあり、提供企業側のチェックとモラルも問われている。

*** きょうの教養 (未来年表・処方箋②)

【3】非居住エリアを明確化=人が住む地域とそうでない地域に国土を色分けし、コンパクトで効率的な国に作り替える。人々が思い思いの土地に住み続ければ、公共インフラのコストがかかるし、買い物難民や医療難民を増やしてしまう。居住エリアに指定した市街地では自家用車がなくても用事を済ませられるかがポイントとなる。商業施設、公共施設、病院を再配置し、地域内に拠点を設けて公共交通機関で移動できるようにする。

ただ、住民の合意形成が難しく、住み慣れた土地を離れることに抵抗のある人もいる。非居住エリアから居住エリアに移転を決めた人には費用を支援する。非居住エリアに住み続ける人には受益者負担として負担増を求める。追い込まれる前に国土の戦略的活用が必要だ。

【4】都道府県を飛び地合併=参院選で2つの合区が設けられ、「地域の声が国政に届かない」と反発が出た。本質は参議院議員がいなくなることではなく、人口が激減する県が行政機関として成り立つかにある。地方創生は市町村を残すことではない。人口減社会では従来の枠組みにとらわれず、住民の生活圏に即した対応、遠く離れた鉄道沿線を一つのエリアと考える柔軟さ、強みと弱みを補完する発想も必要だろう。

例えば、東京都と島根県、千葉県と佐賀県が合併するといった選択もある。都市部と地方が結びつけることが重要だ。大都市では介護施設が足りないが、地方では空き病床もでているので補完できる。自治体同士で人材や財政を相互に協力することもできる。自分の土地や故郷に愛着を持つのは自然な感情で、地域への思い入れが多様性や奥深さを生んできたが、地域を大切にすることと今の行政区分を維持することは一致しない。自治体の権限や役割を根源から考え直すことが不可欠だ。

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年5月31日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウオッチ(30日)

日野自動車、三菱ふそうと経営統合へ 電動車など次世代技術で協力:朝日新聞デジタル (asahi.com) →日野はトヨタ系、三菱ふそうはダイムラー系で、系列を超えた合併だ。日野のデータ不正と電動化の技術開発で再編が加速した。脱炭素に動く自動車メーカーは、トラックまで手が回らない。日野はトヨタの連結子会社から外れる見通しで、トヨタは身軽になる。

同性婚を認めないのは「違憲」 国への賠償請求は棄却 名古屋地裁:朝日新聞デジタル (asahi.com)  裁判官の口から「違憲」 同性婚巡る訴訟、傍聴した当事者たちも涙:朝日新聞デジタル (asahi.com) →同種訴訟の判決は4件あり、違憲判決は2件目。6月8日に福岡地裁で判決が出る。自民党保守派はイデオロギー的に反対するが、司法はどんどん結論を出し始めている。

ゼレンスキー氏「決定下された」 近く反攻着手を示唆 – 産経ニュース (sankei.com) →ウクライナの反攻をゼレンスキー大統領が表明した。結果は遠からずわかる。

花粉発生、30年後に半減目標 スギ人工林の伐採加速―政府:時事ドットコム (jiji.com) →花粉症患者には朗報。ただし、30年後に半減というからかなり先だ。取り組みが遅すぎないか。

*** 「社会人キーワード」

◎レコメンデーション 本来の意味は「推奨・推薦」だが、顧客のデータを解析し、好みそうな製品やサービスを案内して購買を促す手法として使われている。主にネット通販で使われ、いろいろなアルゴリズムがある。例えば、Aという本を購入した人が、Bという本も買う傾向があった場合、まだBを買っていない人にレコメンデーションする。これは単純な例だが、複合的に解析することで高度なマーケティングができる。企業側にとっては効率的に売上を計上することができ、顧客にとっては情報収集の手間が省け、ウィンウィンの関係を築くことができる。単純な手法では、事前に興味があるキーワードや分野を登録してもらい、関連した情報を提供する手法もある。一方、欲求を機械に先回りして掘り起こされている面があり、過剰なレコメンデーションは逆効果になることもある。

*** きょうの教養 (未来年表・処方箋③)

【5】国際分業の徹底=人口減少時代は日本の得意分野に資源を絞り込む。日本人自身の手でやらなければいけない仕事と、他国に委ねる仕事を思い切って分けてしまうのである。日本はほとんどの分野に国産品があるが、今後は得意な分野に集中し、世界をリードする産業として発展させるのが賢明だ。産業構造の変化を予測し、育成分野を決めて投資をし、人材育成を図る。

過去の日本は規模を競ってきた。「大量生産・大量販売」は途上国型ビジネスモデルで、若い豊富な労働力を前提としていた。日本は加工貿易のイメージがあるが、巨大な国内マーケットに支えられてきた。人口が減れば、国内マーケットは縮小する。途上国型に固執する限り、賃金の安い国と勝負するので、日本人の賃金はどんどん切り下げられる。

【6】「匠の技」を活用=豊かさを維持するアイデアを示したい。匠の技を活用した高付加価値の製品作りだ。生産性の向上には、「少量生産・少量販売」のビジネスモデルを選択する必要があり、量から質への転換が不可欠だ。成功しているのがイタリア。小さな村にも独自のデザインや技術で世界の圧倒的シェアを占める製品がある。世界中からバイヤーら関係者が集まる。ポイントは玄人をうならせる「こだわりの逸品」であり、それを支える職人技だ。

日本には世界に通用する匠の技がある。開発段階から輸出先の国と連携し、買い手の使い勝手のいいものをめざす。買い手が好む色やデザインを把握することが重要になる。地元出身の学生が都市部の大学で学んだ知識やスキルを生かすことができれば、優秀な人材が地元に還流する。関連産業ができ、雇用も生まれる。

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***デイ・ウオッチ(5月31日)

原発の運転期間が60年超へ 改正法が成立、福島事故後のルール変更(朝日新聞デジタル) – Yahoo!ニュース →原発再稼働について岸田政権は、安倍・菅政権よりかなり積極的だ。経産事務次官経験者が秘書官にいるためと思われる。経産官僚は原発推進というより、電力の供給停止を恐れている。法律が成立しても実際の再稼働は別。規制委員会はどう動くか。

北朝鮮、「衛星打ち上げ」失敗 事実上の弾道ミサイル―「早期に2回目」表明:時事ドットコム (jiji.com) →北朝鮮の暴挙には違いないが、どうしようもない事態に対して、政府やメディアが決まりきった大騒ぎを続けることに違和感を抱く人は少なくない。知恵を絞って北朝鮮を動かす手は本当にないのだろうか。近々また発射するという。

新大関「霧島」が誕生 師匠もしみじみ―大相撲:時事ドットコム (jiji.com) →新大関誕生の明るい話題。またもモンゴル出身なので日本人の奮起を期待したいが、懐かしいしこ名「霧島」が復活する。来場所は朝乃山が上位に来るので、にぎやかになりそうだ。

*** 「社会人キーワード」

◎ICO  企業や個人が暗号通貨で資金調達すること。「Initial Coin Offering」の略。企業が資金調達する場合、株による出資、銀行借り入れや社債による借金という手段がある。しかし、株や社債の発行や銀行借り入れには、面倒な手続きや審査がある。株を発行すれば、株主に議決権が生じる。ICOは主にベンチャー企業が利用しているが、面倒な手続き抜きに素早く、低い手数料で資金を調達できるメリットがある。議決権も関係なく、成長資金を得やすいと注目されている。一方、投資する側からみると、情報の非対称性があり、「投資して本当に大丈夫か」というリスクがある。裏返せば、知名度や信用度の高い企業や個人でないと利用しにくく、暗号通貨特有の価値変動リスクもある。なお通常の株式公開はIPO(Initial Public Offering)と呼ばれる。

*** きょうの教養 (未来年表・処方箋④)

【7】国費学生制度で人材育成=人口減少社会ではイノベーションが不可欠で、それを担う人材育成が必要だ。日本はイノベーションにつながるアイデアを持っているが、事業に結びついていないと言われる。起業を増やし、失敗を恐れず挑戦できる「転職しやすい社会」が重要だ。学校教育の段階から起業家精神を育む戦略的な人材育成が求められる。

社会を機能させるため、どの分野にどれくらいの数が必要かという長期計画をつくる。政府は大学進学者に一律に支援するのではなく、国として確保したい分野で学ぶ学生に優先配分する。選抜試験で成績優秀者を選び、「国費学生」として費用をすべて負担する。大学に対してもイノベーションへの取り組みや人口減少で役立つ人材を育成している大学に補助金を優先配分する。一方で、大学以外で専門技能や知識が身につく進路も充実させる。

【8】中高年の地方移住推進

お手本は米国にある。大学と連携した移住コミュニティが全米に広がっている。元気なうちに都会から移住し、大学キャンパスで学び直し、学生生活を楽しむ。医療や介護が必要になったら、キャンパス内の大学病院や施設で暮らす。日本向けにアレンジするなら、50歳代が対象だ。企業内での先も見え、新しいことを始める最後のチャンスとなる。いきなり永住は難しいだろうから、期間限定のお客さんから始める。住居は空き家をリフォームする。学び直しや若者たちとの交流で楽しさを見つける。老後のメリットとして、都会で懸念される医療・介護難民のリスクが減ることもある。

生活資金の確保が難問だが、都会の自宅を定期借地権で貸す選択もある。都会の賃料を生活費にあてるのだ。これだけで地方の人口減少が解決するわけではないが、有効な手段の一つだろう。国民が楽しみながら行動に移せる政策が欠かせない。

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年6月2日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウオッチ(1日)

少子化対策、2030年代初頭に予算倍増 政府素案 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →児童手当の所得制限撤廃など各種盛り込まれた。問題は常に財源だが、本質的に先送り。歳出改革を進めるというが、どこまで確保できるか。最後は消費税しかないというのが専門家の常識だが。

藤井聡太竜王が最年少名人&史上2人目の七冠達成 渡辺明名人に4勝1敗 20歳10カ月でダブル快挙/将棋・名人戦七番勝負(ABEMA TIMES) – Yahoo!ニュース →最年少の名人、史上2人目の7冠達成も最年少。藤井聡太か、大谷翔平か、というほどの若手ホープ。最近の明るいニュースはこの2人が提供している。

面接解禁、対面が増加 内定7割との調査も―24年春卒就活:時事ドットコム (jiji.com) →面接解禁。しかし、すでに内定7割という現実。対面が復活し、売り手市場が続く。頑張れ、就活生!

警護計画、実効性に不備 接近許す、屋内優先など対策―岸田首相襲撃、警察庁が検証報告:時事ドットコム (jiji.com) →前首相の暗殺、現首相への襲撃を受けて、警察は身構えている。屋内優先の演説、入場管理の厳格化、金属探知機の設置などが対策にあがっているが、過剰警備は避けられそうもない。有権者との距離が広がり、政治家が遠くなる。

自民・伊吹氏「私利私欲の解散勝てず」:時事ドットコム (jiji.com) →解散風を吹かす自民党だが、「私利私欲では勝てない」という良識派はいる。多数派になるかどうかがポイント。

*** 「社会人キーワード」

◎SFA  営業部門の自動化。「Sales Force Automation」の略。典型的なシステムは、営業のプロセスや顧客のステータスを見える化し、その情報に基づいて分析して営業に最適な手法を決定する。見える化される情報は、顧客の情報、案件の担当者・意思決定者・予算、商談の進捗スケジュール、日報などがある。営業プロセスを標準化することで、経験の浅い担当者でも戦力化して効率が上げることができる。担当者の行動を把握して、ノルマを達成した後のサボりを防いだり、トラブルの発見で問題解決を早めたりすることも可能だ。このほか、予算と実績の差の分析、顧客の収益性分析、問い合わせや商談計画の自動化による人件費抑制も期待される。今後はAIを使って、売り手にも買い手にも最適な活動がわかり、社会全体で最適行動が実現すると予測する声もある。

*** きょうの教養 (未来年表・処方箋⑤)

【9】セカンド市民制度を創設=セカンド市民制度は、第二の居住地を選び、住民登録する制度だ。帰省先を持たない都会住民にとって第二の故郷になる。地方自治体は定住人口の増加を狙って、他の自治体と綱引きをしている。定住人口を狙うのは住民税を納めてくれるからだが、発想を転換して、交流人口にターゲットを絞るのだ。

自治体は空き家や古民家を改修し、安く泊まれるゲストハウスを整備する。月1回程度は無料の直通バスを手配する。セカンド市民として便宜を図る一方、町おこしのアイデアやイベントへの参加を求める。訪問やイベント参加をデジタル技術でカウントし、それに応じて住民税を本当の居住地とセカンド市民の自治体に配分する。セカンド市民が定期的に行きたくなる魅力作りが必要だ。

退職した大学教授らの蔵書を地方に移す「知の巨人村」もある。都会の教授は大学研究室にある本をどこに移すか悩んでいる。地方は書庫や施設を用意し、教授OBに定期的に来てもらう。同じ分野の教授を集めれば、価値も高まる。地元の人と交流すれば新しい知の空間が生まれる。

【10】第3子以降に1000万円給付=結婚や出産は個人の選択でセンシティブな問題だが、少子化を改善するには出生数を増やすしかない。第1子対策は結婚支援が重要で、雇用を確保し、出会いの機会をつくる。第2子対策は長時間労働の是正だ。だが、こうしたありきたりの対策では大きな効果はない。出生奨励策としては、第3子以降に1人1000万円を給付したい。

問題は財源だが、国の有事に対応する趣旨から税金で負担すべきだ。消費税引き上げを期待する声もあるが、なかなか上げられない。そこで「社会保障費循環制度」と名付ける制度を提案したい。誰でも生涯を通じて税や国債などでまかなわれた社会保障サービスを受けている。これを国からの貸与と位置付ける。一方、日本では亡くなる際、高額な貯金を残す人も多い。貯蓄からそれまでに受けたサービス分を国に返すのだ。残りは相続すればいい。これなら将来世代に負担を残さない。

◎処方箋はいかがだったでしょうか。突飛と思われる提案もありますが、人口減少は猛スピードで進んでいます。発想の転換をしない限り、予想できないようなひずみが生まれかねません。大きなシステム転換に向け、タブーのない国民的な議論が必要でしょう。