「傾読」の価値を見つけた!

2023.07.27コラム

人の意見をよく聞くことを「傾聴」と言います。カウンセリングの世界では、人の声に耳を傾けることで、相手は心を開くと言われています。5月から始めた東証スタンダード企業の管理職3か月コースがこのほど終わりました。人の作文をよく読む「傾読」の価値を見つけました。

国家資格のキャリアコンサルタントを持っていますが、傾聴に徹すると相談相手は自分を認められていると思い、自分自身と対話し始めると教わりました。例えば、上司の悪口ばかり言っている人の声に耳を傾けて「そうですね」「不満なのですね」と伝え返していくと、相手はだんだん上司のことを考え始め、変わっていくのです。

「上司も上司なりに考えているんだろう」「そういえば、この間言っていたことは、我々のことを思ってのことだろうか」……。相談者は少し前向きになり、同僚に悩みや不満を話すとか、場合によっては上司に提案をするとか、改善に向けた手を打つことがあるそうです。

作文講習では、まず赤字で添削し、続いてA4判2枚の「講評」を書きます。ポイントは2点あり、基本的なルールを守っているか、内容はどうか、です。内容では出題の狙いを最初に書きます。例えば、「こんな人生を送りたい」の出題なら、「今回は個人そのものに関わるテーマです。自らの経験を具体的に踏まえながら、これからどんな人生を歩みたいかについて、説得力を持って書かれているかどうかがポイントになります。読み手を感動させれば、なおいいです」といった具合です。

続いて、筆者がどんな風に書いてきたかを客観的に振り返ります。最後に面白かった点、わかりにくい点、こう改善したらもっと良くならないか、といったコメントを書きます。ていねいに読むよう心がけており、作文を受け取ってから5回は読みます。受講した管理職の皆さんは、ふだん作文を書く機会がほとんどありません。当然のことながら、よく読んでもらうこともありませんでした。

最後の出題で感想を書いてもらいました。「最初は面倒だと思ったけど、毎回どう講評されるか興味が湧いてきて、楽しくなった」という声がたくさん寄せられました。確かに逆の立場だったら、「よく読んでもらっているな。そういう書き方もあるか」と感じると気がつきました。

受講者は作文を通じ、自分の内面と対話し、いろいろと考え始めています。平日毎朝のメルマガでニュースや教養を発信していますが、よく読んでいて、関心の幅を広げています。僭越ですが、仕事に対する姿勢でも、一人の人間としても、成長していると感じました。やりがいのある3カ月間でした。