7月24~28日(教養講座:丘浅次郎の人類評論)
~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年7月24日号(転送禁止)~~~
HPにアップしました→ 7月17~21日(教養講座:10年前の芥川賞) – 長谷川キャリア文章塾 (hasegawa-cwa.com) 7月24日からの教養講座は「丘浅次郎の人類評論」 – 長谷川キャリア文章塾 (hasegawa-cwa.com)
***デイウッチ(21~23日)
◎侯氏「中国と交流強化」 最大野党候補、決起集会―台湾:時事ドットコム (jiji.com) 頼氏、政権維持へ団結呼び掛け 与党が党大会―台湾総統選まで半年:時事ドットコム (jiji.com) →来年1月の台湾総統選挙がスタート。過去は与党・民進党と野党・国民党の争いだったが、第三の民衆党が登場し、混とんとした三つ巴の争いだ。焦点は中国との距離。台湾有事の行方にも影響し、目が離せない。
◎特捜検事、供述を誘導か…河井元法相の大規模買収事件で市議に不起訴を示唆 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) 特捜部検事、法廷証言も誘導か…不起訴を示唆された市議に「カンニングペーパー」 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) 供述誘導疑惑、市議の受領否認部分を意図的に記録せず…検事が自白と矛盾する内容を除外か : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) →読売新聞がリードして報道している。「闇の司法取引」だ。袴田事件の有罪立証と合わせて、検察の体質は何も変わっていないと感じさせる。
◎記録的猛暑、7月は「数千年ぶり」の可能性も NASA – 日本経済新聞 (nikkei.com) →恐ろしくなるような予測。当面は今年の被害がさらに出るかどうか。地球の寒冷期との関係はどうなのだろうかとも思ってしまう。
◎バイデン大統領“AI生成動画か識別する対策開発へIT各社合意” | NHK | AI(人工知能) →「ディープフェイク」と呼ばれる識別が難しい偽情報が出回らないようAI利用を明記するなどが柱。望ましい一歩だ。しかし、当面は企業の自主性に委ねるので、強制力がない。試行錯誤しながら改善することが重要だろう。
*** 「今日の名言」
◎江藤淳(文芸評論家。1999年7月21日、66歳で自殺)
「(明治の作家について)その生活と思想のほとんどあらゆる位相を圧倒的な西欧文化の影響下に曝した最初の日本の知識人であったにもかかわらず、というよりむしろその故に、常に日本人としての文化的自覚を失わず、一種強烈な使命感によって生きていた人々であった。(大正・昭和の知識人は)ナショナリストであった明治作家に背を向けて、少なくとも主観的にはコスモポリタンとしての自己を誇りはじめた」 「(昭和23年になっても)依然として、日本人の心に占領者の望むような形で『ウォー・ギルト(戦争の罪悪感)』が定着してはいなかった。(戦争についての罪悪感を日本人の心に植え付ける)プログラム以後、東京裁判などの節目々々の時期に合わせて展開していった事実は看過できない」 「平成日本はいつ滅びるかわからない。ますます滅びそうだと思っている。人が死ぬ如く、国も亡ぶのであり、いつでもそれは起こりうる」 「僕は電球も取り替えられないんだ。(妻が自分に)尽くしてくれた時間を返したい」 「夜はまだいい。周りが闇に閉ざされているから。昼は光が入って、家の隅々、庭まで見えてしまう。そこに、それまで居た人がいない。この空白感が耐え切れない」 「(遺書で)心身の不自由が進み、病苦が堪え難し。去る6月10日、脳梗塞の発作に遭いし以来の江藤淳は形骸に過ぎず、自ら処決して形骸を断ずる所以なり。乞う、諸君よ、これを諒とせられよ」
*** きょうの教養 (丘浅次郎①)
丘浅次郎(1868~1944)は、ダーウィンの「進化論」を広く日本に紹介した生物学者だ。東京高等師範学校(現筑波大)で教鞭を取り、「人類は過去に優勢だった生物同様、強みが弱みに転化してやがて滅びる」といった社会評論で知られ、戦前は著名だった。環境問題が深刻化する今、人類の未来を予測した丘の評論を紹介する。
◎人類とは
「人類はほかの動物に比べてどんな点が優れて打ち勝ち、今日の地位を占めるに至ったのだろうか。おそらく誰にでもすぐに気がつくことであろうが、思考力、推理力の器官である脳髄が発達していること、自由自在に動かせる手を持っていることである。人間は機械を使う動物と定義しても差し支えない。どんな器官も一足飛びに発達するものではなく、順序をへて進むもので、人類の脳も手と機械を通じて得た経験に伴って発達した。ここに関係しているのは言語で、人類は言語を有する動物という定義もできる」
「絶対優勢の動物を滅亡させる原因はなんだろうか。いずれの場合にもその種族を勃興させた原因と同一である。たとえばある動物は体が大きく筋肉が強いことによってほかの種族に打ち勝ったが、それは大量生活に大量の食物が必要で成長に多くの年月がかかり、繁殖が遅く、敏捷性を欠いていることでもある。一定の度を超えれば、体の大きさが生存上不利になる。国にたとえれば多くの海陸軍を作った貧乏国が、武器を維持するために重税を課する結果として、すべての面で疲弊し最後は国が滅ぶことだ。筋力で天下を取った種族は、自己の種族内で相互に筋力を持って争う。牙で優位を占めた種族は、相互に牙で争う。ほかの種族に優位に立った性質を際限なく突き進めないと止まらない状態になる」
「人間社会に貨幣が登場した後、自然淘汰の動きが中断した。本来なら身体の健全さと精神の優秀さを基準とした淘汰があるはずだが、人類は金銭的な貧富によって生存が決まるようになった。淘汰が止まれば、淘汰の基準であった点が退化し始めるのは生物学上動かせない事実である。 淘汰の現象がさらに進んだ場合、人類の身体、精神、社会にどんな変化が生まれるだろうか。第一に影響をこうむるのは、性欲に関する面である。生活の費用が高くなるにつれて、結婚して一家を支え妻子を養うことは簡単ではなくなる。相応の資産を持った後でなければ結婚できなくなる。自然に晩婚の風が生まれ、中年以後まで結婚しない者がだんだん多くなる」
~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年7月25日号(転送禁止)~~~
***デイウッチ(24日)
◎札幌ススキノ男性遺体 29歳の女の容疑者と父親の2人を逮捕 | NHK | 事件 →札幌ススキノのホテルで首なし遺体が見つかった奇怪な事件。29歳の女性と父で精神科の医師が逮捕された。遺体の遺棄に関与したのだろうか。殺された男性と容疑者の女性は知人で、容疑者宅から頭部らしきものが見つかったという。何があったのだろうか。
◎オデッサにミサイル、大聖堂破壊 ロシアが連日攻撃、20人死傷―ウクライナ:時事ドットコム (jiji.com) モスクワ中心部にドローン落下 ウクライナ、オデッサ攻撃に報復か―クリミアでも被害:時事ドットコム (jiji.com) →ウクライナとロシアの戦闘が激しさを増している。クラスター爆弾も使われている。一進一退の様相で、今後の帰趨を決める重要な段階に差し掛かっているのかもしれない。
◎Twitter、ロゴを「X」の暫定デザインに 多機能化を象徴 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →イーロン・マスクが何をしたいのかよくわからない。ツイッターの顧客基盤を活用して決済などの機能を加えたいようだが、信頼を失うのではないか。テスラでEVに専念すればいいと思うが、天才はそれができないのだろうか。
◎(核心)多くの振り子が揺れている 論説委員長 藤井彰夫 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →24日付の日経新聞有料記事(添付)だが、今の世界を俯瞰する大変面白いコラムだった。「メトロノームの同期現象」が紹介されている。動く台に複数のメトロノーム乗せて振り子を動かすと、いずれ同じ方向に動くという。社会にも似た現象がありだ。以下のURLに実験がある。
*** 「今日の名言」
◎児玉源太郎(日露戦争で勝利に貢献した陸軍大将。1906年7月23日は命日)
「何事をなすにも必ず困難が伴うものだ。その困難に打ちかって大事をなすことこそ、男子の本懐というもの。男らしく、正々堂々とやりたまえ」 「初めから他人の助けを当てにするような人間は、決して成功せん」 「(台湾総督を兼務する際)同じアジア人として、台湾近代化に尽くす」 「(日露の緊張が高まる中、財界の大物、渋沢栄一を訪ねて)今なら何とかやれる。日本はここで、国運を賭して戦う以外に道はない(感極まった児玉の両目から涙がどっと流れ落ちたのを見た渋沢は「児玉さん、私も一兵卒として働きます。どんな無理をしても戦費調達をやりましょう」と応諾したという)」 「戦争を始めるものは、戦争を終わらせることを考えておかなければならぬ」 「十二分に勝算のない限り、戦争などすべきでない」 「第一線の状況に暗い参謀は、物の用に立たない」 「(旅順攻略に苦戦し、児玉に指揮権を委譲した乃木希典の面目を保つため)乃木がいなかったら、旅順は落ちていなかった」
*** きょうの教養 (丘浅次郎②)
◎人間とは
「人間同士の競争が激しくなると、生活が困難になってくる。生活できるかどうかわからなくなり、個人が苦しむようになると健康を害する。神経系統に疲労起こすことになる。およそ人間の体に何が一番悪いかというと、明日はどうしようかという生活の心配ぐらい体に悪いものはない。長い間に身体を弱らせるものは、生活上の心配がもっともはなはだしい。生活の心配が続けば、神経衰弱を起こす。神経が疲労すれば、はじめは過敏になり、後には刺激に耐えられなくなって麻痺してしまう。些細なことでも気にかけるようになり、くだらないことでも心配でたまらないようになる。神経に異常をきたす者もたくさんでる」
「人間がほかの生物に打ち勝つ時に有力であった武器が、仲間同士で争う武器になり、武器がだんだん発達する。個人にとっては有益だが、種族全体にとっては不利益になる程度まで発達し、ついにそのために種族が滅亡するのである。人類も同じ運命をもって、ついにはなくなると考える。いつかといえばもとより長い後のことで、近いうちに起こるわけではないけれど、地質学の次の代ぐらいではないかと考える。反対の説を持つ人もいるだろう。しかし、過去現在から推測して考えると、この事実に符合する可能性が高い」
「遊んでも贅沢に暮らしていける少数者と、いくら働いても生活が困難な多数の貧者がいる。少数の富者は金の力をよく知り、金の力で道徳を破って平気でいる。生活難の多数者は、団体全体の利益などは考えない。根本は利益の分配の不公平で、私有財産があることである。人間は道具を用いて他の動物に打ち勝ったが、全盛を終えて下り坂に向かう時、道徳が退化するのは当然である」
~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年7月26日号(転送禁止)~~~
***デイウッチ(25日)
◎ビッグモーター社長が引責辞任 「深くおわび」、経営陣の関与否定―保険不正請求で初会見:時事ドットコム (jiji.com) ビッグモーターに37人出向 修理担当部長も―損保ジャパン:時事ドットコム (jiji.com)→ビッグモーター社長がやっと記者会見をし、辞任を表明した。経営陣の関与を否定したが、ノルマを課していたのだから罪は大きい。損保ジャパンなどが出向者を出しており、広がりが出てきた。
◎そごう西武労組 スト権確立 投資ファンドへ売却で雇用維持要求 | NHK →経営判断に対して労組がスト権をたてに交渉する珍しい構図。圧倒的な賛成はコミュニケーションを欠いた経営陣の怠慢も物語る。チェック役としての労組の影響力は落ちていたが、働く人の権利のためには大切な存在だ。展開次第では、他業界や他社への影響は小さくない。
◎中国 秦剛外相が退任 後任には王毅政治局委員 | NHK | 中国 →秦外相はちょうど1か月の不在だったが、やっと人事が動いた。しかし、理由はわからない。政府を代表する人物だけに説明が必要だろう。中国のこういうところが世界から信頼されない大きな理由だ。
◎日本人、全都道府県で減少 前年比80万人、幅最大―総務省:時事ドットコム (jiji.com) →唯一増えていた沖縄県も減少に転じた。外国人頼みが鮮明になってきた。
◎ロッテ 佐々木朗希 左脇腹肉離れで1軍登録抹消“全治約2か月” | NHK | プロ野球 →これまで大事に育てられてきたが、突然のアクシデント。最悪、今シーズンは難しそうだ。ゆっくり直すしかない。
*** 「今日の名言」
◎芥川龍之介(小説家。1927年7月24日は命日)
「どうせ生きているからには、苦しいのはあたり前だと思え」 「幸福とは、幸福を問題にしないときをいう」 「人生を幸福にするためには、日常の瑣事を愛さなければならぬ」 「我々はしたいことのできるものではない。ただ、できることをするものである」 「人生は一箱のマッチに似ている。重大に扱うのは、ばかばかしい。重大に扱わねば危険である」 「私は不幸にも知っている。時には、嘘によるほかは語られぬ真実もあることを」 「あらゆる社交は、おのずから虚偽を必要とするものである」 「天才の一面は、明らかに醜聞を起し得る才能である」 「完全に自己を告白することは、何びとにもできることではない。同時にまた、自己を告白せずにはいかなる表現もできるものではない」 「文を作るのに欠くべからざるものは、何よりも創作的情熱である」 「運命は、偶然よりも必然である」 「周囲は醜い。自己も醜い。そしてそれを目のあたりに見て生きるのは苦しい」 「阿呆はいつも、彼以外のものを阿呆であると信じている」 「僕らの性格は、不思議にも大抵、首筋に現れている」 「道徳は、常に古着である」 「恋愛は、ただ性欲の詩的表現を受けたものである。少なくとも、詩的表現を受けない性欲は恋愛と呼ぶに値しない」
*** きょうの教養 (丘浅次郎③)
◎教育
丘は教育に関する評論もたくさん書いている。ここでは、受け身の「他力教育」と主体的な「自動教育」に関する文章を紹介する。
「他力教育とは、教える側があらかじめ生徒に信ずるべきことを定めておき、これを生徒の頭に押し込もうと努める流儀をいう。これは上に立つ者が困難なく下々治めようと欲する場合に用いる常套手段である。太平の続く間、教育はことごとく他力教育である。異端の教育が頭を持ち上げるのは、治める側の権力が揺らいだ時で、革命の起こる前兆だった。教育は元来、手本を示して生徒に真似をさせることだった。鳥は飛ぶことを見せて子供に教えている。かつては他力教育だけだったが、今のように学科が多くなると他力に用いて都合の良い学科とそうでない学科が出てくる」
「自動主義とは、生徒自ら動かしめる主義である。筋肉だけでなく脳髄も動かしめるから、他力教育の正反対である。だんだん自由に考える人が増えれば世間も自動主義に傾き、教育界でも最近主張されはじめた。何事も自分で考えれば、独立自尊の思想が養成され、独力で自由に考える。本に何と書いてあっても自分で信じた価値以外は信じなくなる。他力教育が成功すれば、世の中は凝り固まりの信者だけとなる。自動教育が成功すれば、自由思想家が次々と現れる。教育が複雑になり、一人の生徒が受ける教育でこの二つが行われれば、二者の間で暗闘が起きる。この争いがどうなるか考えると、自由に傾くことは時勢の影響であり、自動主義が勝つと思われる。しかし治める側に立つ者が、剣の力によって他力教育を守れば存続する。自由に考える人が多数になった時には、サーベルで他力教育を支えるほかに道はない。他力教育を存続しようとすれば、人々の反感を増すことになるだろう」
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***デイウッチ(26日)
◎ビッグモーター不正請求問題 国交省が会社幹部から聴取開始 | NHK | 国土交通省 ビッグモーター “LINEアカウント削除 すべての社員に指示” | NHK | 自動車 →いろいろな意味で、しばらくニュースの中心になりそうだ。辞めた兼重社長は山口県岩国市出身で、自衛隊を経てビッグモーターを創業した立志伝中の人物。ソニー創業者盛田氏の自宅があった土地を購入し、豪邸を建てた。会見で「ゴルフを愛する人への冒涜」と言ったが、「顧客か車を愛する人への冒涜だろう」とネットで沸騰中。
◎米FRB 利上げ再開 0.25%決定 インフレ抑制を重視 | NHK | 金融 →6月は見送ったが、今月は再利上げに踏み切り、22年ぶりの高い金利水準に。これで打ち止めかどうかが焦点。
◎サッカー女子W杯【詳しく】なでしこ×コスタリカ 猶本 藤野 ゴール | NHK | サッカーW杯(女子) →ランキング下のチームに連勝した。藤野選手のゴールは、男女のワールドカップで10代による初めての得点という。勢いがついている。
◎国民 前原代表代行 “9月の党代表選 立候補を検討” | NHK →分裂で影響力低下の野党だが、トップ人事は関心事。前原氏は玉木代表より野党色が強いようだ。何をしたいのか、国民民主党。有権者は見ている。
◎豊昇龍が大関昇進 「気魄一閃の精神で」―大相撲:時事ドットコム (jiji.com) →静かな昇進。本来ならもっと華々しいはずだが、最近の大関がパッとしないからか、朝青龍のおいが引っかかるのか。大関は強くないとファンも相撲協会も困る。
*** 「今日の名言」
◎無着成恭(教育者、禅僧。1904年7月21日、96歳で死去)
「形(かた)を持つ人が形を破るのが型破り。形がないのに破れば形無し」 「『人間としての資格』と書いてごらんなさい。最初と最後を読めば『人格』でしょう。それは人間の欲をコントロールすることです」 「命の尊さを分からせる。出来る子供を作るのではなく、分かる子供を作るのが教育の一番の根幹」 「つまり人と人との関係が人格を作るんです。でもいまは子どもと関係を築けない親が多いと感じます。だから畜生のまま、いや餓鬼に落ちる人もいる。イヌ、ネコは畜生として生まれて畜生のまま死ぬ。畜生なら食べれば食欲はなくなるし、性欲も出せばおさまる。けれど人間は畜生よりも劣る餓鬼にもなる」 「株価を気にするイヌやネコなんて聞いたことがありますか? けど、ヒトの欲には切りがない。餓鬼の欲望には際限がありません。いまは世界中が餓鬼になりはじめている気がします。日本の教育もそうです。欲望に忠実な経済優先主義、儲け主義の教育で、餓鬼を育てているような気がします」 「国の政策の問題はもちろんですが、教師にも責任がある。人間とは一体何か。畜生とは、餓鬼とは何か。突き詰める教師が減ったからではないかと思います。なぜ教師になったのか?その理由を自分でも分かっていない人が多い」 「月給をもらうだけなら教師じゃなくてもいいわけです。子どもに何かを伝えたいから教師になるわけでしょう。教師自身が疑問を持たなくなってしまっているのだから、子どもの質問がつまらなくなるのも当然です。そう、いつの頃からか子どもたちの質問がつまらなくなった」
*** きょうの教養 (丘浅次郎④)
◎自然
「自然を征服したことは人類の最も誇りとするところである。人類は自然を征服したことを、何よりの手柄と心得、文明の進んだことを得意として今後ますます競って自然を征服しようと努めている。しかし、ここに一つの疑問がある。自然は人類に征服されるだけで、人類に復讐を企てることはないだろうか。我々が自然を征服したと得意になっている間に、あたかもシロアリが寺を食べるように見えないところで仇討ちをしようとしていることはないだろうか」
「自然には一定の理法があって、これを破る者は必ず罰せられる。例えば森林の樹木を全部切ってしまえば、山が丸裸になって雨水を吸収しなくなり、雨降りの度に洪水になってしまう。工場から汚物を川に流せば、その先で魚が獲れなくなって土地の産業は絶えてしまう。これらは知識が足りず先見の明がないために起こったもので、人智が進めば同じ過ちを避けることができる。結果を取り消すことも不可能ではない。自然の復讐としては軽いものである」
「自然の復讐の最も残酷なものは、人間の社会生活の不条理に起因するものである。蒸気機関も水力発電も人間のなしえた自然の征服としては立派なものであるが、後から見れば貧富の格差を激しくするために作られたかの感がある。欧州諸国で貧富の差が生まれたのは、蒸気機関が工場に導入されて以来であり、蒸気機関は貧民製造機関ということもできる。蒸気機関で多数の貧困者が出るのは、社会の制度に不条理な点が存在するからだ。富者が富み、貧者が貧しくなれば、富者は自然の生活に飽きて不自然なことを試みる。貧者は生活の困難なためにやむを得ず不自然なことを行うであろうが、これに対して自然は必ず復讐する。多くの社会問題が起こったのは、人間が身分も顧みず無謀に征服して勝ち誇ったため、激しい復讐を被っているともいえる」
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***デイウッチ(27日)
◎日銀、金利操作を柔軟運用 上限0.5%超え容認案 – 日本経済新聞 (nikkei.com) 日銀 金融政策決定会合開催 今の金融緩和策を修正するかが焦点 | NHK | 日本銀行(日銀) →いま修正に動かなければ、いつ動くのかという状況。植田総裁の胆力が問われている。結果はきょう昼すぎにわかるが、日経新聞がきょうの朝刊で修正を予想している。的中するかどうか。
◎ビッグモーター店舗前の街路樹 各地で枯れる 除草剤成分検出も | NHK | 自動車 →ビッグモーターの不正と思われる事案がまた明らかになった。企業としてキャラが立ってきた様子で、これから何が出るかわからない。損保ジャパンをはじめとした損保各社への波及も焦点だが、沈黙している。
◎国家公務員の選択的週休3日拡大 25年度から育児・介護以外も―人事院:時事ドットコム (jiji.com) →官が動かないと、社会も一気に動かない日本の悲しい現実。旧東京銀行、マッキンゼー出身の川本裕子人事院総裁が奮闘している。
◎赤根ICC裁判官を指名手配 プーチン氏の逮捕状発付で―ロシア:時事ドットコム (jiji.com) →日本人の国際刑事裁判所(ICC)裁判官を指名手配とは、何となくおどろおどろしい。プーチン大統領はなんでもやる。赤根氏は検察官で、函館地検検事正などを歴任。初の日本人ICC裁判官という。すでに歴史に名を残している。
*** 「今日の名言」
◎中野孝次(作家。2014年7月16日は命日)
「日本には、自らの思想と意志によって積極的に作りだした簡素な生の形態としての清貧の思想がある」 「物の過剰の中で、我々の生が決して充実しないことを知った現在こそ、生産とか所有とかを根本から見直す好機だろうと、私は思っている」 「これほど多くの人が、物の過剰な時代に生きたというのは、日本の歴史始まって以来のことだ。所有を放棄すること、少なくとも世を捨てることに悦びを見出した西行や兼好や良寛の動機を解しうる立場にある。我々は、一度は物の過剰の中の生を体験したのだから」 「(『清貧の思想』がヒットした理由を聞かれて)私自身も含めて大半の日本人が空気の底にある何かがおかしいと感じていたときに、時代の流れとは逆のメッセージを打ち出したのが刺さったのでしょう」 「人間をダメにするのは、窮乏よりも過剰である」 「思想とは何よりもまず、自分の頭でものを考え、判断する力を持つということだ」 「自分を全面的に出して文章を書くことは、敵を作ることでもある」 「人間、何かを捨てないと、新しいものを拾うことはできない。好きな人間とわずかな本があればいい。私の場合は捨てることで、大きな自由、さっぱりした気分を手に入れた」
*** きょうの教養 (丘浅次郎⑤)
◎戦争
「私は何事も生物学的に考えるが、生物の世界に絶対の平和は到底ありえない。瞬間の平和は至るところに見出されるが、長く平和が続くことは生物学上不可能である。私の主張は事実を述べるだけであって、こうあって欲しいというわけではない。私は主戦論者ではなく、戦争の悲惨さを痛切に感じている。戦争を好む者は戦争で巨万の富を得ようという実業家か、国民に一致団結を強いて国内の政敵の攻撃を鈍らせようという政治家の他にいないだろう」
「平和論が実行できるかどうかは、人間は意思次第で何事もできるかどうか、で決まる。人間はほかの動物と違って自由の意思がある。すべての人間が戦争しないと決心すれば、戦争がなくなると考えている人にとって、平和論は実行できる真面目な議論である。しかし意志は自由といっても一定の際限があり、人間はほかの生物と同様、どこかで競争は免れないと考えるものから見ると、平和論は現実性の乏しい夢と思われる」
「人間の生存競争の単位は、国家社会と個人で、それぞれ争っている。国家同士の戦争が始まれば、挙国一致となって個人間の競争は力を失う。戦争が終わって平和な時代になれば、個人間の競争が激しくなる。競争単位として国家社会が主になるか、個人が主になるかは、時計の振り子のように一方に行き過ぎたと思うと、元に戻る状態だ。個体を生存競争の単位とする個人主義が盛んになると、必ずそこに国家社会を生存単位とする国粋主義が現れ、暴力を用いてもこれを破ろうとする。海岸の波は寄せたり返したりしている間に潮が次第に満ちてくるように、人間の生存競争は国家社会と個体の間を彷徨しながら次第に個体間に傾いて行くであろう」