9月4~8日(教養講座:10代のための古典名句名言)
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◎HPにアップしました→9月4日からの教養講座は「10代のための古典名句名言」 – 長谷川キャリア文章塾 (hasegawa-cwa.com)
***デイ・ウォッチ(1~3日)
◎旧統一教会への解散命令、請求の方針 10月中旬で調整 過料も検討:朝日新聞デジタル (asahi.com) →朝日新聞が3日朝刊で独自に報じた。解散請求は難しいという見方も出ていたが、被害の広がりを考えれば、請求しかないというのが国民感情。岸田政権は内閣支持率も意識してのことだろう。請求して裁判所の判断を仰げばいい。
◎【詳細】バスケ男子日本代表 パリ五輪出場決定 W杯最終戦勝利 | NHK | バスケットボール →日本男子バスケがパリ五輪出場を決めた。自力出場は1976年以来。W杯が開かれたのが沖縄で、中継や報道の量も多くなり、バスケ人気が盛り上がった。本番での活躍に期待。8日からはラグビーW杯が開幕し、日本は10日に初戦を迎える。暑さも少し和らいで、スポーツの秋、本番。
◎国民民主党、代表に玉木雄一郎氏再選 与党と協力路線を継続 – 日本経済新聞 (nikkei.com)→与党との協調路線を掲げる玉木代表の圧勝だった。政権交代が日本政治の後景に退き、よほどの失政がない限り、自民党中心の政治が続くことになりそうだ。
◎ インド宇宙研究機関 “太陽観測衛星 打ち上げ成功” | NHK | インド→インドが宇宙大国にのし上がった。8月の月面着陸に続いて太陽観測へと進んだ。9日に首都ニューデリーで始まるG20を前に強烈にアピールしている。
◎日大、甘かった判断 2度目の無期限活動停止―アメフト部薬物問題:時事ドットコム (jiji.com) →日大がアメフト部2回目の無期限活動停止にした。当初は個人の犯罪と認定したが、警視庁の捜査で複数の関与が浮かんでいる。林真理子理事長は会見以降、公式に姿を見せない。ガバナンスが問われている。先駆的な危機管理学部を創設したが、役に立たないようだ。
*** 「今日の名言」
◎ミハイル・ゴルバチョフ(ソ連最後の共産党書記長、ノーベル平和賞。昨年8月30日、91歳で死去)
「何より大切なのは、自分が成功しようとしまいと、悠然として自信を失わないこと。家族や友人、そして自分を信じて、権力や名誉などなくとも立派に生きていけることを確信してゆくこと」 「君は隠れた大きな力の持ち主である。まず君自身が持っている隠れた力を自覚することだ」 「いつの場合も、引っ込み思案は敵、積極果敢は味方だ」 「人間は、試練に立ち向かう強い心を常に持たなければならない。不幸や敗北に屈しない勇気と頑強さ、そして困難のときこそ、自身を試すという決意なくして、本当の人生を生き抜くことは難しい」 「心から泣くことを知らない者は、笑うことも知らない」 「我々は自分の経験から、何もしないことの誤りを知っている」 「自分の間違いを認めることは非常に難しい。しかしそれをしなければ先には進めない」 「いままで使ってきた方法や手段で今後も問題を解決できると思っているとしたら、その考えは甘いと言わざるを得ない」 「外交には敵も味方もない。あるのは国家利益だけだ」 「平和とは似た者が団結することではない、異なった者が違いを認め合って団結することだ」 「国民は自由の空気を吸ったのであり、もはや誰もそれを奪えない。指導幹部の登用について、自分の意見に固執した私が間違っていた」 「ペレストロイカの最大の障害は軍産複合体だった。その特権的、独占的立場を突き崩さない限り、いかなる改革も不可能だった」
*** きょうの教養 (10代の名言①)
今週は「10代のための古典名句名言」(岩波ジュニア新書、2013年刊)から5編紹介します。解説は理論物理学の佐藤文隆京大名誉教授、ドイツ文学の高橋義人京大名誉教授。「歴史の中で語り継がれてきた言葉に接して、多彩な人物や考え方に気づくきっかけに」と10代の読者に呼びかけています。大人も十分に味わえます。最後に解説した人の名前を記しました。
◎金子みすゞ 「みんなちがって、みんないい」(「私と小鳥と鈴と」から)
この言葉は短い詩の最後の一つである。詩の流れは次のようになっている。私は空を飛べないが、小鳥は私のように地べたを速く走れない。私が体をゆすっても鈴のようにきれいな音は出ないが、鈴は私のようにたくさんの歌を知らない。そしてこれに続く最後の締めくくりが「鈴と、小鳥と、それから私、みんなちがって、みんないい」となっている。
私たちは物心がつき、生活の範囲が広がるにつれて、一生懸命にあたり見回して、自分の立ち位置を知ろうと必死になる。絶対的な存在である母親のもとで、まずおもちゃは自分の支配下のものになる。小さい時には、自分と同じようなものと思って飼っている犬や猫が人間ではないことに気づく。小さい時は、家族や親戚など限られた安全圏の中の人々が大きな存在だったが、学校に行くと、同世代の正体不明のたくさんの人たちに取り囲まれる。自分が何者であるかを必死に探ろうとする。同級生はみんな自分より立派に見える。しかし、友達になって交わっていくと、みんなも他人のことをそう思っていることに気づくのである。
この詩は外の世界に恐れをいだいて不安をもつ人々に、優しく、「みんなちがって、みんないい」んだよ、と語りかけているのである。違ったみんなが楽しい毎日を織りなしているのだ。金子は山口県で小さな本屋を手伝いながら大正時代から昭和の初めにかけて多くの詩を発表したが、1930年に26歳の若さで命を絶った。数年間の間に、時代を超えて人々の心に届く多くの詩をほとばしるように紡ぎ出したのである。彼女が残した多くの優しさ溢れる詩に接して欲しい。(佐藤文隆)
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***デイ・ウォッチ(4日)
◎辺野古工事めぐる裁判 沖縄県の敗訴確定 最高裁が上告退ける | NHK | 沖縄県 →今の日本で、政府の方針と地域の民意が最も激しく対立しているテーマ。政府は「辺野古しかない」「ていねいに説明する」というが、現場は軟弱地盤だし、ていねいに説明しているとも思えない。新しい発想に立った政治的構想力が問われている。しかし、政府にその気がないので押しくらまんじゅうが続く
◎水産業支援へ総額1007億円 中国禁輸で対策強化―政府:時事ドットコム (jiji.com) 風評・賠償対応に1000人 東電が体制強化―処理水放出:時事ドットコム (jiji.com)→中国の全面禁輸は想定外で、早くも水産業支援で想定外の207億円を追加する。北海道のホタテ業者らが対象だが、いずれ全国の水産業者支援となる。東電も賠償体制を強化するというが人とカネは大丈夫か。電気料金に上乗せするのだろうか。
◎経団連などの代表団、来年1月訪中 十倉会長「非常に意義ある」:時事ドットコム (jiji.com) →経済的に日本は中国なしにやっていけない関係になっている。対立ばかりしていては誰も得をしない。経済界の訪中団の役割は大きい。本音で対話をして緊張緩和につながるか。
◎サザンオールスターズ“神宮外苑再開発への思い表現”新曲歌詞 | NHK | 東京都 明治神宮外苑再開発 “作家や俳優ら78人 計画の見直しに賛同” | NHK | 東京都 →神宮外苑再開発は、文化人総動員で反対する様相になってきた。辺野古もそうだが、最近の行政は民意を無視することこそ尊いと思っていないだろうか。知恵がないのかもしれないが、「過ちては改むるにはばかることなかれ」という。
*** 「今日の名言」
◎蔡英文(中華民国総統。8月30日は67歳の誕生日)
「社会と民主主義は、性別よりも個々の政治家の質と価値を重視するほど成熟しています。女性リーダーがいるのが格好いいと思う人もいますが、私をこの国のリーダーに選んだ理由は、私の方針や価値観が今日の台湾のニーズに合っているからだと信じています。私たちは、社会に変化をもたらしたいと願う人々を代表しているのです」 「世代や民族が異なれば、中国に対する見方も異なります。しかし、人々はみんな一つのことに同意しています。それが民主主義です」 「中国が台湾に圧力をかけようとして経済的措置を講じる場合、彼らは自らが支払うことになる対価を考えなければならないでしょう。なぜなら、周辺国は中国が台湾に対してどのような対策をとるか、非常に注意深く見ているからです」 「我々のエネルギーと資源はきわめて限られています。経済はパワーに欠け、受託生産の古い生産モデルは、すでにボトルネックに直面しています。国全体が、新しい経済発展のモデルをきわめて必要としています」 「改革の第一歩は、経済の活力と自主性を強化し、世界および地域とのつながりを深め、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)などの多国間および二国間による経済連携および自由貿易交渉への積極的な参加を図っていきます。同時に新南向政策を推進し、対外的な経済の形態および多元性を強化し、従来の単一市場に依存し過ぎた経済構造と決別します」 「民主主義は一つのプロセスであり、どの時代の政治家も、自身が背負う責任をはっきりと認識しなければなりません。民主主義は後退することがありますが、前進もします。後退は我々の選択肢ではないということです。新政権の責任は台湾の民主主義を次のステージへと推し進めることです」
*** きょうの教養 (10代の名言②)
◎寺田寅彦 「正当にこわがることはなかなかむつかしい」(「小爆発二件」より)
2011年に日本を襲った東日本大震災、福島第一原発事故は、私たちの生活が何か非常に不安定なものの上に営まれていることを実感させた。確かにあれほど強力な地震や津波が平安時代の末に起こっているのだから、それに備えて居住地の選定や危険性を孕む原発の設置の是非を決定すべきであったという議論が急に出てきた。1000年に1回の確率にせよ、その規模の地震や津波が自然現象としておこるのなら、それを考慮した判断をすべきだとなる。想像力の不足だったと反省されているのも当然と言える。
しかし、この想像力をどんどん拡大していくと、対面通行での自動車の正面衝突、新幹線の脱線、飛行機の墜落、ウイルス感染など世はまさに恐怖だけである。そしてまた、世界を見渡せば、相当頻繁に実際起こっている。 いくつもの潜在的な事故・災害に、毎日毎日想像力を働かせて生きていくのは大変である。身動きがとれなくなってしまうだろう。
そこにこの言葉を言われると、何か行動の指針があるのかと期待してしまう。この言葉は関東大震災の調査で活躍した東大教授の寺田寅彦(1878~1935)がそれからずっと後に書いた文章に登場する。前後は「ものをこわがらなさすぎたり、こわがりすぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしいことだと思われた。○○の〇〇〇に対するのでも△△の△△△に対するのでも、やはりそんな気がする」である。
「小爆発二件」と題したこの随筆は、軽井沢滞在時に遭遇した浅間山の小爆発の顛末記である。この文章は駅で立ち聞きした人々の会話への感想であり、人によってあまりにも違う受け取り方があることを述べたものだ。○○や△△は、1935年発表のこの文章にも検閲があったらしく、たぶん、政治に触れた部分が伏せ字にさせられたのであろう。関東大震災後、寺田は津波や火災による大災害についていくつもの文章を残している。(佐藤文隆)
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***デイ・ウォッチ(5日)
◎京アニ放火殺人事件初公判 被告は起訴内容を認める 弁護士は無罪主張 | NHK | 事件 →死者32人で戦後最悪という殺人事件。被告は「やり過ぎたと思っている」といった。弁護側の「善悪を区別する能力が欠けていた。心神喪失による無罪か心神耗弱による減刑」という主張には違和感がぬぐえないが、責任能力が焦点になる。判決は来年1月25日と早い。
◎習近平氏が北戴河会議で激怒 G20欠席、発端は長老の諫言 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →習主席のG20欠席のきっかけは、長老からの諫言・忠告という興味深い日経編集委員の分析記事。国内経済の低迷で国内に不満が渦巻き、政治闘争が始まる可能性があるという。中国を日中の二国間関係だけで考えると、見誤る。カギは国内の経済と生活で、そこから対外姿勢が派生する。
◎令和6年度の概算要求 一般会計総額114兆3000億円余 過去最大に | NHK | 来年度(新年度)予算 →110兆円超えは3年連続。コロナ禍が終息しても財政拡大は止まらない。防衛費、少子化対策、ガソリン代・光熱費補助、処理水対策など、性質や金額は違うが、岸田政権は懸案を財政出動で処理しようという傾向が強い。
◎そごう・西武の全店舗と雇用維持 米ファンド、改装に600億円:時事ドットコム (jiji.com) →そごう・西武買収で、米国ファンドは雇用と店舗を維持するという。当面、手荒なことはなさそうだが、詳細や将来はわからないと見ておいた方がいいだろう。百貨店は地域文化の象徴でもあり、関係者との対話が重要だ。
*** 「今日の名言」
◎岡倉天心(明治期の思想家。1913年9月2日が命日)
「自己の内側の大いなるものの小ささを感じることができぬ者は、他人の内側の小さなものの大きさを見逃しやすい」「日々の暮らしぶり、そのなにげない仕草のうちに、内心の動きはあらわれる」 「古いものが解体されて初めて、再創造は可能となる」 「禅が世に広まって以降、日本の美意識は、完成や重複といった左右対称の表現を避けてきた」 「教育とは、強固な幻想を維持するために一種の無知を奨励するものにほかならない。人は真に徳のある人間として教育されるのではなく、ただ、きまりに外れないよう振る舞うことを教えられるだけなのである」 「現代の芸術家は、技術に溺れるあまり、滅多に自身を超えるということがない」 「アジアは一つなのである」 「我々が文明国たるためには、血なまぐさい戦争の名誉によらなければならないとするならば、むしろいつまでも野蛮国に甘んじよう」 「見せびらかすのではなくて、ほのめかすといふこと、これが、無限なるものの秘訣なのだ」 「日本は鎖国によって深く自国の文化を顧みることになり、茶道の発達を大きく促すことになった。日本人の住居、習慣、衣服や料理、陶磁器、漆器、絵画、そして文学にいたるまで、すべて茶道の影響を受けていないものはない」 「変化こそ唯一の永遠である」
*** きょうの教養 (10代の名言③)
◎プルースト 「幸福は身体にとってよいことだ。だが精神を鍛えるのは、幸福ではなく心の痛みである」「人が苦悩を忘れられるのは、それを苦悩することによってのみである」(「失われた時を求めて」)
苦悩することは人間、特に青年に与えられた特権である。苦悩することによって人は精神的に成長する。苦悩が大きければ大きいほど、人は精神的に飛躍する。苦悩の最中にあるときは、ああ、こんな苦しみが耐えられない、早く逃げ出したい、と思い、自殺さえ考えるかもしれない。しかし、プルースト(1871~1922)が言うように、苦悩を忘れられるのは苦悩を深めることによってのみである。苦悩を底の底までなめ尽くすと、不思議なことにそれまでの苦しみは急に消え、心も体も突如として軽くなり、青空の青が突き抜けるほど美しく見えてくる。反対に苦悩を忘れようとしていると、苦悩はいつまでも付きまとって離れず、青空も全く見えないものだろう。
ひとたびそうやって苦悩に耐えきると、次に苦悩が訪れた時、それに耐えることもより容易になる。そして苦悩に耐え、苦悩を乗り越えるたびに自分が精神的に成長してゆくのを知ると、苦悩こそは生きがいであるとさえ感じるだろう。ニーチェに「運命愛」という有名な言葉がある。苦悩はある日、運命のように突然現れる。その苦悩を進んで引き受けることは、運命を愛するに等しい。今私を襲っている苦悩や運命は、私自身だから、「運命愛」とは自分自身から逃れず、自分自身を真に愛し、忠実に生きることにほかならない。
プルーストの「失われた時を求めて」には様々な美しさが書かれている。物がありあると美しく見えるのは、その前に深い苦悩があったからだ。花の美しさは、苦悩を突き抜けた人にこそよく見える。晴朗なる心の世界は、暗いトンネルをくぐり抜けた後でなければ決して訪れない。長大なプルーストの「失われた時を求めて」を読む楽しさは、苦悩とそれからの解放の間を何度も往復する心の旅にあるのだ。(高橋義人)
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***デイ・ウォッチ(6日)
◎旧統一教会に「過料」 裁判所に求める方針 文科相表明 | NHK | 旧統一教会 →質問の2割、100項目以上の回答が不十分だったという。過料は10万円以下で、象徴的な意味合いが強いが、岸田政権は強い姿勢を示している。解散請求に踏み切る可能性が高い。
◎岸田首相「処理水で中国が突出行動」 李首相は日本批判 – 日本経済新聞 (nikkei.com) 岸田首相 中国の李強首相と立ち話 処理水放出に理解求める | NHK | 日中関係 中国 最新地図の尖閣諸島の表記 日本側の抗議受け入れない考え | NHK | 中国 →今後、各国首脳が集まる国際会議が注目されそうだ。何かがすぐに動くわけではないが、ホットテーマをめぐる各国の立場が鮮明になる。原発処理水はジャブの応酬程度。
◎秋本真利 衆院議員 東京地検特捜部 近く本格捜査へ | NHK | 事件 →NHKが夜7時のニュースで「独自」で放送したが、各社も夜の段階で流した。一般的に「本格捜査」は「逮捕」の意味。今朝の段階では「きょう逮捕へ」と報じている。
◎円下落、一時147円台後半 口先介入で下げ幅縮小―TOPIX、33年ぶり高値:時事ドットコム (jiji.com) →マーケットが動き出している。10か月ぶりの円安になる一方、株高が進み、TOPIXは33年ぶりの高値。円安はエネルギー価格の上昇につながる。財務相の口先介入で下げ幅は縮小したが、新たな均衡点を求めて市場がしばらく流動化しそうだ。
*** 「今日の名言」
◎黒澤明(映画監督。1998年9月6日、88歳で死去)
「昔、映画会社は夢の工場と呼ばれていた。純粋で生き生きとした活気に溢れた映画の門戸を、若者たちに開いてあげたい」 「最初はどんな仕事も分からないし、できなけりゃ面白くないのが当たり前だ。続けていると、ある日突然見えてくる。そうするとやる気がでる。そこでもう一押し頑張ってみると、なるほどそうだ、ともっと具体的に何をしたらいいか見えるんだ」
「自分を飽きさせずに、面白く働かせるコツは、一生懸命努力して、しつこく踏ん張るしかないんだ」 「悪魔のように細心に、天使のように大胆に」 「人間は集中して夢中になっているときが、一番幸せで楽しいもんだよ。子どもが遊んでいるときの無心な顔は素敵だ。声をかけても聞こえないほど、自意識がない状態。あれが、幸せというもんだね」 「自分の与えられた人生、何もかも潔く責任をとるしかないんだ。本当に優しいというのは、そういう強さだと思うね」 「恥をかいてもいいから、ズカズカ踏み込むんだ」 「悪いところは誰でも見つけられるけれど、いいところを見つけるのは、そのための目を磨いておかないとできない」 「自分の人生経験だけでは足りないのだから、人類の遺産の文学作品を読まないと人間は一人前にならない」 「何もないところからものを創り出していると思っているのは、人間の驕りだよ。生まれてから今までのどこかで、耳にし、目にした何かが、知らず知らずに入り込んだ記憶が、何かのきっかけで呼び覚まされて動き出す。そうやって、創造していくんだと思うよ」
*** きょうの教養 (10代の名言④)
◎山中伸弥 「野球の打率は3割もあれば大打者ですが、研究は1割でも大成功です。僕の研究室を希望する学生には、実験を繰り返しても9割はうまくいかないことに耐えられますかと問うています」「研究では何十回トライしても失敗することはしょっちゅう。泣きたくなることもあるが、家に帰ると笑顔で迎えてくれる家族の支えがなければ研究を続けられなかった。研究でいろいろあっても家に帰って子供の笑顔を見られることが支えだった」(ノーベル賞受賞決定会見)
山中伸弥(1962~)は学問研究の成功率を野球の打率に例えていた。その模様をテレビで見ながらさすがにうまいことを言うものだと思った。と同時に学問を志す若い人たちは山中の言葉の意味が分かっているだろうか、1割の成功率でも大成功だというのはiPS細胞の話に限られるとでも思っていないだろうか、と気になった。山中の言葉は自然科学にも人文社会科学にもあてはまる。
自然科学の研究では成否の結果が人文・社会科学より分かりやすい。しかし、人文・社会科学でも実は9割が失敗なのだ。実に面白い着想だと初めのうちに思い始めても、ふと気づいてみるとその着想が間違っていたり、きちんと立証されていなかったり、すでに先人が同じ着想を持っていたりする。残念なことに学生はそのことに気づかず、指導教員も学生にそう指導してあげられないことが実に多い。出発点が間違っているにもかかわらず、そのことに気づかないまま違った道を歩み続けたら、中途半端な学者に終わってしまうしかない。
学生は自分の着想は間違っているかもしれないと、何度も検証してみなければならないし、教える側も学生の研究の多くについて「それは間違いだ」「零点である」「大幅な修正を必要とする」と指摘する厳しさを持たなければならない。そう指摘するには、教える者自身が自分に対して厳しく処せなければならない。学問の第一歩は失敗を失敗であると悟ることにある。(高橋義人)
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***デイ・ウォッチ(7日)
◎【詳報】ジャニーズ事務所 東山紀之氏らが会見 性加害問題で | NHK | ニュース深掘り 代表取締役で残留の藤島ジュリー景子氏(57)と東山紀之新社長(56)がキムタク(50)と極秘会合していた!《ジャニーズ事務所が記者会見》 (msn.com) 東京海上、ジャニーズと契約解除検討 相葉さんを広告に起用―「タレントに非はない」の声も・企業対応:時事ドットコム (jiji.com) →性加害を認めた謝罪と社長交代以外は具体性に乏しい内容。実務力の欠如を東山氏と井ノ原氏の演技力でこなした。今後は補償の内容と社名の変更が焦点。テレビ局や企業の契約解除の動きが広がれば、再生も難しくなる。予断は許さない。
◎秋本衆院議員を逮捕 6000万円受託収賄容疑―洋上風力事業巡り・東京地検:時事ドットコム (jiji.com) →贈収賄は証拠が残りにくいので、微妙な捜査になる。職務に関連してカネが動き、要求・約束があれば犯罪は成立するが、具体的な要求・約束はあったのか。検察は贈賄側に「賄賂」と認めさせており、今後は収賄側に不利な情報を流して有罪の流れを作る見通し。
◎茂木敏充幹事長・麻生太郎副総裁続投へ 内閣改造13日にも – 日本経済新聞 (nikkei.com) デジタル行革へ司令塔新設 岸田首相、担当相も検討:時事ドットコム (jiji.com) →政局記事が出始めた。デジタル行革担当相が浮上しているが、デジタル庁をつくったばかりでは。焦点は安倍派の誰を処遇するか、それが安倍派にどう影響するかだろう。
◎住友生命 個人年金保険の予定利率 38年ぶりに引き上げへ | NHK | 金融 →金利復活時代のさきがけになるか。金利復活は借金には不利だが、預貯金の金利をあてにする人や各種基金には恩恵。金利の意味を実感できない日本人が増えてしまった。
◎キヤノン、初の女性取締役に伊藤明子氏 元消費者庁長官、来春就任:時事ドットコム (jiji.com) →キヤノンは経団連会長を務めた87歳の御手洗会長が居座り、女性取締役がいなかった。女性登用の遅れを理由に御手洗会長は株主総会でぎりぎりで再任されていた。伊藤氏は国交省初の女性局長として住宅局長も務めた。
*** 「今日の名言」
◎松本人志(お笑いタレント。9月8日は60歳の誕生日)
「日本で売れるためにはオバチャン連中に受けないとダメ。オバチャンは、自分がすべて把握できる未完成のものが好き」 「家は貧乏、勉強最悪、スポーツ苦手、そんなオレを助けてくれたのが『笑い』なのである。俺から笑いを取ったら何も残らない」 「子供の頃からずっと一番になりたいという気持ちで、クラスの中で一番面白くなりたい、学年の中で一番、学校で、大阪で、そして日本で一番面白くなりたいって。そんな思いはずっとありますね」 「「みんな俺を自信過剰だと言うけども、自分に自信持たな、どうすんねん」 「お前は金を見て笑顔になりたいから仕事しとる。俺は皆の笑顔を見たいから仕事しとる。それが俺とお前の違いや」 「まわりは何かと言うかもしれんけど、そんなまわりの意見なんか気にせんでいい。やりたいことやったらええから」 「人の見方はそれぞれ違うから批判なんか気にしない。最初から問題用紙が違うから解答も違うに決まっている」 「オチとプロポーズだけは死んでも噛むな」 「素人とプロの違いはいろいろあるけれど、いちばんはやっぱり声の大きさだ。素人は喉でしゃべるが、プロは腹でしゃべる。だから、プロはどれだけ大きな声で何時間喋っていても、喉をつぶさな」 「世界で一番面白くない人は、実は一番面白い」 「人生なんて楽しいもんやないんや。だから楽しまな、アカンねん」 「幸せとは自分が不幸せなことに気付いていないことだ」
*** きょうの教養 (10代の名言⑤)
◎佐藤一斎 「春風をもって人に接し、秋霜をもって自らを粛(つつし)む」(「言志四録」から)
言っている内容はありきたりのことでも、語呂がいいとか、口調がいいとか、詩的に想像が膨らむような句は長く愛誦される。江戸時代の終わりごろに書かれた佐藤一斎(1772~1859)のこの句は、そういうものの一つである 。他人には春風のような暖かい心で接し、自分には秋の霜のような厳しさでもって慎まなければならないということである。このように他人と自分と両方を同時に見据えた心の余裕を持って物事に対処したいものである。とかくすると、我々は一方にだけ気を取られてしまいがちだ。
この句が愛誦された大きな理由は、一遍の詩を構成していることである。心のあり方を春風と秋霜という日本の豊かな自然にこと寄せて表現している。日本のように四季が明確にあるような国は世界の中でも珍しい。佐藤は湯島聖堂にあった儒学の学校・昌平坂学問所の校長のような役目を長くやった。幕末から明治維新にかけて活躍した多くの人物に精神的影響を及ぼした教育者として有名である。彼の語録を集めた「言志四録」は、明治維新後も青年の間でよく読まれ、明治や大正時代の精神的態度の形成に大きな影響を与えた。しかし、その後は西欧の文化が日本で大きな位置を占めるに伴って、影響は少なくなっている。
しかし、内容は同じようなものでも文語調の中国古典に起源を持つ名句や日本産の名句には口調や詩的発想において、今でも心に響くものがある。長く受け継がれてきたこういう名文を暗唱して受け継いでいくことも、日本の文化にとって大事なことである。自然の多様な姿にもかかわらず、自然はまた同一のものであるという認識は、風土に根ざした日本の一つの精神文化であるといえる。(佐藤文隆)