9月11~15日(教養講座:ショーペンハウアーの自分の頭で考える)

2023.09.15メルマガ

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年9月11日号(転送禁止)~~~

HPにアップしました→ 点描・ジャニーズ事務所記者会見 – 長谷川キャリア文章塾 (hasegawa-cwa.com)  9月11日からの教養講座は「ショーペンハウアーの自分の頭で考える」 – 長谷川キャリア文章塾 (hasegawa-cwa.com)

***デイ・ウォッチ(8~10日)

モロッコ地震 死者これまでに2000人超 救助活動が続く | NHK | 地震 →現場付近では1900年以降、マグニチュード6以上の地震はなかったという。被災地は山間部で救助の遅れが心配される。死者は現時点で2000人超だが、今後大きく増えそうだ。

ラグビーW杯 日本代表 チリに勝利【詳しく】3大会連続白星発進 | NHK | ラグビーW杯 2023 →4年前は日本開催。初のベスト8で大いに盛り上がった。今回はフランス開催で、初戦はチリ。先制されたが、すぐに追いつき、突き放して快勝した。ランキングは日本14位、チリ22位で、順位通りの結果になったが、勢いがついた。

損保ジャパン、白川儀一社長の辞任発表 ビッグモーター問題で引責 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →白川氏が社長に就任したのは昨年4月だが、「金融機関最年少の51歳」「役員37人抜き」と華々しかった。慎重さを欠いた判断ミスが命取りとなった。

濱口竜介監督作品に銀獅子賞 ベネチア国際映画祭 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →題名は「悪は存在しない」。題名だけで話題になりそうだが、日本では来年公開予定という。世界3大映画祭とアカデミー賞を受賞したことになり、黒澤明監督以来の快挙という。

G20サミット閉幕 ウクライナ侵攻の事態打開の難しさ浮き彫りに | NHK | G20 →議長国インドが主導して初日に首脳宣言を採択する異例の展開。ロシアを名指しで非難することができなかった。世界は複雑に多極化している。

*** 「今日の名言」

◎エリザベス女王(イギリス女王。昨年9月8日、96歳で死去)

「命ある限り、私はこの身を捧げてあなた方の信頼に応えられるよう努めます」 「勇敢な者は上手くいかなかったときに倒れて敗北を認めたりはしない。そんなときこそ、より良い未来のためにさらに力を振り絞るものだ」 「憎むことや壊すことはたやすいこと。築いていくことや慈しむことがはるかに困難なのです」 「平和が訪れたら、明日の世界をより良く、より幸せな場所にするのは、今日の子供たちであることを忘れないでください」 「夫(フィリップ王配)はどんなときも私の強さであり支えです。彼が考えるよりもずっと多くの恩を彼から受けています」 「すべての素晴らしい家族がそうであるように、我が家にだって衝動的で言うことを聞かない若者や、家族間の意見の不一致といった変なところはあります」 「差別は未だに存在する。自分の信仰が脅威にさらされていると感じる人もいれば、見知らぬ文化に対して不満を持つ人もいます。そんな人が知らなければならないことは、他者に歩み寄ることで得られるものがたくさんあるということ、そして多様性とは脅威でなく、確かな強さであるということです」 「私はただ、マーガレット(妹)や私がそうだったように、子ども達を公平で愛に満ちた幸せな環境で育てられればとだけ思っているのです」 「世間の仲の良い家族がそうであるように、私たちの家族はみんな少し変わっていました」

*** きょうの教養 (ショーペンハウアー①)

ショーペンハウアー(1788~1860)は、ドイツの哲学者です。「自分の頭で考える」という文章を紹介します。同質性が高く、同調圧力や忖度意識の強い日本は、自分の頭で考えることが苦手ではないでしょうか。旧制高校生の学生歌に「デカンショ、デカンショで半年暮らす」という歌詞がありますが、「デカルト、カント、ショーペンハウアー」の名前をつなげたもので、存在感のある人物でした。自分の頭で考えるという意味は、どういうことでしょうか。自分の頭で考えてみましょう。

◎知識と脳  たくさんあって整理されていない蔵書より、程よい数できちんと整理されている蔵書の方がずっと役に立つ。同じことが知識についてもいえる。いかに大量にかき集めても、自分の頭で考えずに鵜呑みにした知識より、量はずっと少なくとも、じっくり考え抜いた知識のほうが、はるかに価値がある。なぜなら、一つの真実をほかの真実とつき合わせ、自分が知っていることをあらゆる方面から総合的に判断して、はじめて知識を完全に自分のものにし、意のままにできるからだ。とことん考え抜いて初めて信じることができる。

本を読むこと、学ぶことならいつでも思いのままに取りかかれるが、考えることはそうはいかない。対象に対する何らかの興味をかき立てられ、考え続けねばならないからだ。一身上の出来事、プライベートな事柄なら、主観的興味を持てるが、純粋に客観的な興味をかきたてられるのは、生まれながら考える脳みその持ち主だけだ。息をするのと同じくらい自然に考えるタイプで、そういう人物は滅多にない。ほとんどの学者も同じで、考える脳みその持ち主は滅多にない。

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年9月12日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(11日)

北朝鮮 “キム総書記 プーチン大統領と会談へ” 朝鮮中央通信 | NHK | ロシア →武器や軍事技術の相互提供、核兵器、対立する日米韓への作戦会議になることは間違いない。核兵器をめぐるやりとりはかなり危うい。軍事優先の指導者で得をするのは取り巻きと軍需産業だけ。どの国も庶民大衆は被害者だ。

処理水、安全基準満たす IAEAトップ、監視状況説明:時事ドットコム (jiji.com)  東京電力、福島第一原発処理水の初回放出終了 7800トン異常なし – 日本経済新聞 (nikkei.com) →今の段階で安全基準を満たしていなければ大問題だが、初回の放出終了で一応の節目。約30年間、設備が順調に稼働し、安全をずっと維持できるかが問題だ。

囲碁 仲邑菫女流棋聖が来年から活動拠点を韓国に移す意向 | NHK | 囲碁 →日本人棋士の韓国移籍は初めて。韓国の実力が上で、より鍛えられるという。日本のタイトル戦には出られないので、寂し気もするが、世界に羽ばたくと考えれば応援したくなる。

中古車ネクステージ、浜脇浩次社長が辞任 広田靖治会長が社長復帰 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →ビッグモーターから同業他社に転じた社長がひっそりと辞任した。理由はやや不明確だが、不正案件とその体質を持ち込んだようだ。

*** 「今日の名言」

◎湯川秀樹(理論物理学者、日本人初のノーベル賞。1981年9月8日、74歳で死去)

「未来を過去のごとくに考えよ。科学は絶えず進歩している。常に明日の飛躍が約束されている」 「一日生きることは、一歩進むことでありたい」 「メルヘンといいますか、子供の世界というんですか、そういうところへ戻りたいという気持ちがいつもある」 「現実のほかにどこに真実があるかと問うことなかれ。真実はやがて現実となるのである」 「理論物理学という学問は、簡単にいえば私たちが生きているこの世界の根本に潜んでいるものを探そうとする学問である。本来は哲学に近い学問だ」 「取り返しのつかない大きな失敗をしたくないなら、早い段階での失敗を恐れてはならない」 「独創的なものは、初めは少数派である。多数というものは独創ではない」 「新しい真理の発見のときはつねに少数派である。それが正しければ多数派になる」 「アイデアの秘訣は執念である」 「中間子の発見は、まだまだ大きい宇宙の中の一つの星を見つけたようなもの」 「自分の能力は、自分で使ってみなければわからない」 「ただ流行を追っているというのは、つまらない生き方です」 「地に空に平和を」 「人類の利益になる研究を続けていくのは喜びです。しかし日本にはあらゆるものが不足しており、科学研究も劣っています」

*** きょうの教養 (ショーペンハウアー②)

◎読書と脳  自分で考えることと本を読むことでは、精神に及ぼす影響に大きな開きがある。読書は、読み手の精神に、その瞬間の傾向や気分に全くなじまない異質な思想を押し付ける。読み手の精神は徹底的に外からの圧迫をこうむり、あれやこれや考えねばならない。これに対して、自分で考えると、その瞬間は下界や何らかの記憶に多少左右されることがあっても、精神は自らの衝動に従う。目の前に広がる世界は、読者の時のようにただ一つの特定の考えを押し付けたりせず、ただ本人の性質やその時の気分にふさわしい題材と考えるきっかけを与える。

重圧を与え続けると、バネの弾力がなくなるように、多読に走ると、精神のしなやかさが奪われる。自分の考えを持ちたくなければ、その絶対確実な方法は、1分でも空き時間ができたら、すぐさま本を手に取ることだ。これを実践すると、生まれながら凡庸で単純な多くの人間は、博識が仇となってますます精進のひらめきを失う。学者、物知りとは書物を読破した人のことだ。だが思想家、天才、世界に光をもたらし、人類の進歩を促す人とは、世界という書物を直接読破した人のことだ。

真実と生命は、もともと自分の根っこにある思想にだけ宿る。私たちが本当に完全に理解できるのは、自分の考えだけだからだ。本から読み取った他人の考えは、人様の食べ残し、見知らぬ客の脱ぎ捨てた古着のようなものだ。私たち自身の内部からあふれ出る考えを、いわば咲き誇る春の花とすれば、本から読み取った他人の考えは、化石に痕をとどめる太古の植物のようなものだ。

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年9月13日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(12日)

岸田首相 きょう内閣改造へ 初入閣11人 女性入閣5人は過去最多 | NHK | 内閣改造・自民党役員人事 →主要ポストは留任が多い。目玉は最多タイの5人の女性閣僚で、上川陽子外相が目立つ。支持率アップにどう影響するか。小渕氏を自民党選挙対策委員長に起用し、茂木幹事長との確執始まると永田町スズメはにぎやか。焦点の安倍派処遇は留任が多いが、萩生田氏一歩リードか。

ジャニーズ起用見直す動き マクドナルドやサントリー – 日本経済新聞 (nikkei.com) →企業のジャニーズ離れが激しい。信念としての人権重視か、企業イメージを優先した早い逃げ足か。ジャニーズ事務所への経営的な影響は小さくない。番組スポンサーに左右されるテレビ局に拡大すれば、波紋は広がる。

臨時国会召集せず違憲の裁判 判断せず上告退ける 最高裁 | NHK →憲法53条は衆参いずれかで議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は臨時国会の召集を決定しなければならないと規定している。素直に読めば「違憲」だが、最高裁が判断もしないのでは司法消極主義も極まっている。1人だけ違憲判断をした宇賀克也氏は元東大教授。学者だけまともだった。

中国の李尚福国防相、2週間動静不明 汚職など臆測呼ぶ – 日本経済新聞 (nikkei.com) →中国は情報を公開しないので、本当によくわからない国だ。「アガサクリスティの小説『そして誰もいなくなった』のようだ」とエマニュエル駐日米国大使がSNSに投稿した。何かが起きている。

日産、野球部復活を発表 「強いチームとして」:時事ドットコム (jiji.com) →日産の復活を印象づける2つの野球部復活。地元の神奈川・横須賀と福岡・苅田町は「都市対抗野球に」と期待している。「たかが野球、されど野球」の感。

*** 「今日の名言」

◎石橋正二郎(ブリヂストンタイヤ創業者。1976年9月11日、87歳で死去)

「禍は口からと言う。言葉を慎み、自分の偉さを表そうとせず、気取られなければ、かえって人に尊敬され、親しまれ、自分も楽しみが多い。威張り、虚勢をはる人は他からも嫌われ、孤立し、人望を失うに至る」 「事業は良い計画を立て、時を活かすことにより成功する。先の先を見透かして事業を始める。気は長く持つが、行うときは気短でなければならぬ」 「一個人としていかに優秀でも、他人と仲良く働くことのできぬ人は、集団生活においていちばん厄介な人である」 「時世の変化を洞察して時勢に一歩先んじ、より良い製品を創造して社会の進歩発展に役立つように心がけ、社会への貢献が大きければ大きいほど事業は繁栄する」 「生活向上に役立ち、人の幸福を増す製品をつくることが成功の基である」 「ちっぽけな仕事を飛躍させるには思い切ったことをやらねばならぬ」 「ゴムに手を染めた以上、将来非常に大きくなるのは何だろうかと頭を痛めた。当時、自動車は日本中で3~4万台だった。米国などの状況からいろいろ判断して、将来100万台にはなるだろう。100万台になったら大変なものだ。アジアに目を向けても大きな市場がある。そうだ、自動車タイヤだと結論が出るようになったわけだ」 「逆境こそ事業革新のとき」

*** きょうの教養 (ショーペンハウアー③)

◎思索の手綱  読書は自分で考えることの代わりにしかならない。自分の思索の手綱を他人に委ねることだ。多くの書物は、いかに多くの誤った道があり、道に迷うといかにひどい目にあうかを教えてくれるだけだ。けれども自ら自発的に正しく考える者は、正しき道を見出す羅針盤を持っている。だから読書は、自分の思索の泉が湧き出てこない場合のみ行うべきだ。自分の思想を追い払って本を手にするのは、神聖なる精神への冒涜に等しい。

さんざん苦労して、時間をかけて自分の頭で考え、総合的に判断して真理と洞察にたどり着いたのに、ある本を見たらそれが完璧な形でさらりと書かれていた。そんなこともあるかもしれない。だが自分の頭で考えて手に入れた真理と洞察には、百倍の値打ちがある。というのも自分の頭で考えてたどり着いた真理や洞察は、私たちの思想体系全体に組み込まれ、全体を構成するのに不可欠な部分、生き生きした構成要素となり、見事に緊密に全体と結びつき、そのあらゆる原因と結果と共に理解され、私たちの思考方法全体の色合いや色調、特徴を帯びるからだ。

つまり自分で考える人は、まず自説をたてて、あとから権威筋・文献で学ぶわけだが、それは自説を強化し補強するために過ぎない。しかし、博覧強記の愛書家は、文献から出発し、本から拾い集め、他人の意見を用いて全体を構成する。それは異質な素材を寄せ集めて作られた自動人形のようなものだ。これに対して自分で考える人は、生きた人間を生み出しているに等しい。すなわち思索する精神が下界からの刺激で受胎し、それが月満ちてこの世に生まれ出たようなものだ。自分で考え、獲得した真理は本当に私たちの血となり肉となる。考える人と、単なる物知りとの違いは、ここにある。

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年9月14日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(13日)

ロ朝、制裁下で軍事協力 プーチン、正恩両氏が会談―極東の宇宙基地で:時事ドットコム (jiji.com)  ロ朝関係、日本打倒で構築 「共闘」演出―プーチン氏:時事ドットコム (jiji.com) →首脳会談は4年半ぶり。金正恩氏は会談の冒頭で「対ロ関係が最優先」と述べた。中国よりロシアということか。ロシアのウクライナ侵攻で両国の関係は緊密化している。ロシアは北朝鮮から武器供与を受けるというが、そこまで困っているのか。窮鼠は何をするかわからない。「政治家が歴史を語る時は危ない」と言った歴史学者がいた。政治指導者は歴史より現実を見るべきだろう。

中国外務省、安定した関係構築を メディアは外相交代注視―第2次岸田再改造内閣:時事ドットコム (jiji.com) 韓国紙、上川外相に注目 「関係重視」と評価―第2次岸田再改造内閣:時事ドットコム (jiji.com) →女性閣僚が目玉だが、外交経験の少ない上川陽子外相の手腕に注目。主要閣僚が留任する中で、岸田派の林外相が辞めた。首相候補とも言われるが、罰点がついたのだろうか。小渕優子氏、涙こらえ「忘れることない心の傷」 政治資金問題 – 産経ニュース (sankei.com) →小渕氏の涙が想定外だった。 官房長官か続投か、萩生田氏に打診 消せなかった旧統一教会への懸念 [岸田政権] [自民]:朝日新聞デジタル (asahi.com)→首相が萩生田氏の官房長官を考えていたという。

ジャニーズ事務所 被害補償と再発防止策を発表 出演料の対応も | NHK | ジャニー喜多川氏 性加害問題 →何となく動きが遅いジャニーズ事務所。出演料をすべてタレント本人に渡すというが、意味がよく見えない。補償こそ急ぐべきだろう。企業のジャニーズ離れも進んでいる。

ノーベル文学賞作家 大江健三郎さん お別れの会 | NHK | 東京都 →文章塾らしくノーベル文学賞作家に敬意を表して掲載。池澤夏樹や平野啓一郎ら作家、黒柳徹子がお別れの言葉を述べた。

*** 「今日の名言」

◎乃木希典(陸軍大将。1912年9月13日、明治天皇の大喪の礼の当日夜、62歳で自刃)

「口を結べ。口を開いているような人間は、心にも締まりがない」 「勉強忍耐は、才力智徳の種子なり」 「恥を知れ。道に外れたことをして、恥を知らないものは、禽獣(きんじゅう)に劣る」 「決して贅沢をするな。贅沢ほど、人を馬鹿にするものはない」 「人に教える際は、その行いをもってして、言葉や物事をもってしないこと」 「武士道とは、身を殺して、仁をなすものである」 「武士道は、言葉ではない」 「健康のときは、無理をできるよう体を鍛錬せよ。けれども、いったん病気になったら医者のいうことをよく聞け」 「社会主義は平等を愛するというが、武士道は自分を犠牲にして人を助けるものであるから、社会主義より上である」 「(日露戦争後、戦死者遺族を訪問して)乃木があなた方の子弟を殺したにほかならず、その罪は割腹してでも謝罪すべきですが、今はまだ死すべき時ではないので、他日、私が一命を国に捧げるときもあるでしょうから、そのとき乃木が謝罪したものと思ってください」  「(辞世にあたって)この世からかけがえのない尊い神がお隠れになってしまいました。我が神であられる明治大帝の御威徳をお慕い申し上げ、私もお供いたします」

*** きょうの教養 (ショーペンハウアー④)

◎学のない強み  本を読むとは、自分の頭ではなく、他人の頭で考えることだ。絶えず本を読んでいると、他人の考えがどんどん流れこんでくる。自分の頭で考える人にとって、マイナスにしかならない。なぜなら他人の考えはどれをとっても、違う精神から発し、違う体系に属し、違う色合いを帯びているので、決して思想・知識・洞察・確信が自然に融合して一つにまとまっていくことはなく、むしろ頭の中にバベルの塔の様な言葉の混乱をそっと引き起こすからだ。他人の考えがぎっしり積み込まれた精神は、明晰な洞察力をことごとく失い、いまにも全面崩壊しそうだ。

この状態は多くの学者に見受けられる。良識や正しい判断、場をわきまえた実際的行動の点で、学のない多くの人の方が優れている。学のない人は、経験や会話、わずかな読書によって外から得たささやかな知識を、自分の考えの支配下において吸収する。人生を読書に費やし、本から知識を組み立てた人は、たくさんの旅行案内書を眺めて、その土地に詳しくなった人のようなものだ。こうした人は雑多な情報を提供出来るが、結局のところ土地の実情についての知識はバラバラで、明確でも綿密でもない。

これに対して、人生を考えることに費やした人は、その土地に実際に住んでいたことがある人のようなものだ。そういう人だけがそもそも語るべきポイントを心得、関連の事柄に通じ、真に我が家に居るように精通している。

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***デイ・ウォッチ(14日)

阪神 タイガース リーグ優勝 18年ぶり6回目 巨人戦で【速報中】 | NHK | プロ野球 →圧倒的な優勝。阪神ファンではないが、優勝すると関西が異様に盛り上がるのが面白い。私事で恐縮ですが、岡田監督は同じ大学の同学年。東京6大学で通算打率と打点は今でも1位のスター選手で、楽しませてもらった。優勝インタビューで「選手が頑張った」と何度も讃え、指揮官ぶりも光った。

首相補佐官に矢田稚子氏 元国民参院議員、異例の登用:時事ドットコム (jiji.com) →岸田首相が野党・国民民主党に手を突っ込んだ。元参議院議員だが、電機連合や連合に近く、自民と接近することになる。国民党の与党入りの布石か、公明や維新への揺さぶりか。自民党らしい老獪さだ。

財務省文書改ざん 検察に提出の文書開示の訴え退ける 大阪地裁 | NHK | 森友学園問題 →大阪地裁が開示を退けた理由は「捜査に影響が出るから」。裁判所は捜査機関の下請けなのか、どこを向いて審理をしているのか。裁判官はもっと娑婆の空気を吸って研修をした方がいい。

自転車ヘルメット 着用率に地域差 愛媛は59.9% 新潟は2.4% | NHK | 新潟県 →こんなに地域差があるとは思わなかった。ヘルメットの効果は歴然だという。ヘルメット特需を生みそうなニュースだ。

リビア洪水 道路寸断などで被害全容わからず 救助や支援に課題 | NHK | 気象 →「フラッシュフラッド」が発生した可能性があるという。乾燥地帯特有の干上がった川に大量の雨水が集中し、短い時間で氾濫に至る現象で、記録的な大雨が原因という。死者は約5000人というが、大幅に増えそうだ。これも地球沸騰の影響だ。

*** 「今日の名言」

◎臼井儀人(漫画家。代表作は「クレヨンしんちゃん」。2009年9月11日、51歳で死去)

「どんなひどいことになっても、家族が一緒にいさえすれば、乗り越えられる!」 「後悔するのは選ぶ自由があったから。面倒臭がるのはやりたいことが沢山あるから。寂しくなるのは大切な人がいるから。悔しいと思うのは自分に誇りがあるから。言いたいことが口から出ないのは想いで詰まっているから」 「足が臭くなっても、汗水垂らして働いた金で家族と飯が食えるなら、なんぼでも働いてやるわ!」 「夢は逃げない。逃げるのはいつも自分だ」 「一人の女をずっと愛せるなんてカッコイイじゃねえか。それを馬鹿にする奴らなんか気にするな」 「一握りのエリートの後ろには何千何万という俺達のような人間がいるんだ!そして社会の歯車、使い捨て、操り人形などと言われながらも、自分の夢だったり家族や恋人の幸せだったり、みんな、ぞれぞれの守るべき大切なモノのために毎日歯を食いしばって必死に頑張っているのさ!」 「努力をすることというのは、うんこをすることと同じだ。1.踏ん張ること。2.毎日すること。3.水に流すこと。4.その姿は決して人には見せないこと」 「何でもプラス思考、それがオレたち野原一家だろう?」 「俺、今、家族と楽しくワイワイ笑ったり、時にはケンカしたりしながらさ、このままずっと一緒に元気で暮らしたいと思ってる。それが今の俺の夢と言えば夢かな。俺さ、その夢のために今、毎日一生懸命働いてる。結構楽しいよ」

*** きょうの教養 (ショーペンハウアー⑤)

◎自分のアタマ  自分の頭で考える人と、ありきたりの博覧強記の愛書家で本から得た知識を愛する人との関係は、現場の目撃者と歴史研究家との関係に似ている。博覧強記の愛書家は、この人はこう言った、あの人はこういう意見だなどと報告する。彼らはこうしたことを比較検討し、批判し、物事の真相を突き詰めようとし、その点で批判的な歴史著述家によく似ている。

読書と同じように、単なる経験も思索の代わりにはなれない。単なる経験と思索との関係は、食べることと消化吸収の関係に等しい。もしも経験が、自分がいろいろ発見したおかげで人知を促進できたのだと胸を張るなら、それは口が人体を維持できるのは、ひとえに自分のおかげだと自慢するに等しい。真に能力ある人物の著作を、その他大勢の作品と区別する特徴は、決然たる明確さ、並びに、そこから生まれる明快・明晰さだ。こうした人物は、自分が何を表現したいのかいつも的確にはっきりと分かっているからだ。凡人の作品には、決然たる明晰さが欠けていて、すぐさま見分けがつく。

第一級の人物に特有の際立った特徴は、判断を全て自分で直接下すことだ。こうした人物が持ち出せるのは、どれも皆、自分の頭で考えた結果であり、それは話しぶりの至るところにあらわれる。彼らは君主のように、精神の王国に属している。しかし凡庸な人間は、こうした精神の王国の直接支配を阻まれた存在で、それは本人の特徴が刻まれていない文体からもわかる。

真に価値があるのは、自分自身のために考えたことだけだ。思索者は第一に自ら思索するタイプ、第二に他者を指向するタイプに分けられる。第1のタイプは真の思想家だ。自分の頭で、自分のために考える人だ。本来の哲学者、知を愛する者だ。彼らだけが真剣に問題と向き合っている。彼らの生きる喜びと幸せは、まさしく考えることにある。第2のタイプはソフィスト、詭弁家だ。「~~らしさ」を求め、他人の目に哲学者らしく映ることに幸福を求める。かれらはこれを真剣に追求している。二つのタイプにどちらのどちらに入るかは、やり方全般を見ればほどなく気づく。