9月25~29日(教養講座:中高生のための哲学入門)
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HPにアップしました→ 9月25日からの教養講座は「中高生のための哲学入門」 – 長谷川キャリア文章塾 (hasegawa-cwa.com)
***デイ・ウォッチ(22~24日)
◎全米自動車労組 スト対象を41か所に拡大 経済全体への影響も | NHK | アメリカ →米国内の物価高で生活が苦しくなる人が増え、労組の動きが活発になっている。UAWは規模が大きく、影響力も大きい。EV化で雇用が不安定化するのはどこも共通している。長い目で見て、世界に波及しそうな注目されるストだ。
◎中国 習主席 日中韓の首脳会議 適切な時期の開催歓迎の意向 | NHK | 中国 →東アジアをめぐる外交ニュースは最近、軍事に傾き過ぎている。トップが顔を会わせないと、疑心暗鬼も募りかねない。定期的な会談は3カ国の国民に歓迎されるだろう。武力衝突になれば、不利益を被るのは一般国民だ。
◎大相撲秋場所 大関 貴景勝4回目の優勝 熱海富士との決定戦制す | NHK | 大相撲 →私事で恐縮ですが、熱海富士は私と同じ静岡県出身。優勝なら大相撲史上、県勢初の快挙で、初土俵から最速記録より重かった。それにしても決定戦で、貴景勝がかわしての叩き込みはないよな。熱海富士はしぐさが面白く、素直で、人気者になりそうだ。楽しみが増えた。
◎ウクライナ、「攻撃成功」と発表 ロシア黒海艦隊司令部が損傷―高官ら数十人死傷か:時事ドットコム (jiji.com) ウクライナ軍 南部クリミアへの攻撃“幹部会議の最中狙った” | NHK | ロシア →久しぶりのウクライナの戦果。全体への影響はわからないが、膠着状態に変化は生まれるか。
◎糖尿病の新たな呼称「ダイアベティス」とする案発表 | NHK | 医療・健康 →学会や患者団体などが発表した。糖尿病は悪化すると腎臓病や失明、神経障害などにつながる恐ろしい病気で、国内患者は約1000万人。糖が尿に出ない患者も多く、「尿」ということばが不潔なイメージにつながり誤解や偏見を生んでいるのが理由。「認知症」もかつて「痴ほう症」だったことを思い出した。
*** 「今日の名言」
◎ジャン・シベリウス(フィンランドの作曲家。1957年9月20日、91歳で死去)
「批評家の言うことなど、気にする必要はない。これまでに批評家の銅像など、建てられたためしはない」 「自然はこんなにも美しい。人生に別れを告げるなんて、考えられないよ」 「世界を理解するならば、そのさまざまな見かけの不協和音の根底に、調和の論理があることに気付くだろう」 「芸術とは、文明の指標である」 「音楽と同じ内容を言葉で表現することもできるが、音楽は自律的で豊かなものだ。音楽は、言葉の可能性が終わるところから始まる。だから私は音楽を書くのだ」 「音楽とは私にとって、神がまとめた美しいモザイクのようなものだ。我々はそれらを神の手で世界に投げ込み、その絵を作品として再現する必要がある」 「交響曲の構成は、環境や状況とは関係なく、それにしたがうことを余儀なくされるほど強力なものでなければならない」 「芸術家と理解し合うのは非常に難しい! 芸術家が話すのはお金のことばかりだ。話をするには、ビジネスマンを選んだほうがいい」 「私はよく寝ている最中に、オーケストラを指揮している。私のオーケストラはとても巨大で、ビオラなどは地平線の彼方にあるほどだ。そして、そのすべてが非常に素晴らしいんだ」
*** きょうの教養 (中高生のための哲学入門①)
今週は「中高生のための哲学入門」(ミネルヴァ書房、2022年)から紹介します。著者の小川仁志さんは山口大教授ですが、京大法学部、名古屋市立大大学院などを卒業し、伊藤忠商事に入社。体質にあわずに退職して、フリーター、名古屋市役所勤務という異色の経歴を持った人です。引きこもりの時期もありました。本の第4章「自分なりの答えを見つけ、育ててみよう」から抜粋します。平易な言葉に触れて、哲学してみて下さい。
◎与えられた答えを疑う 最初は疑うことから始まります。常識や思い込みを疑うのです。そうしてはじめて私たちは考え始めます。逆に言うと、普段私たちは考えずに過ごしているのです。何を見ても何を扱うにしても、その対象を直接受け入れるか、素通りするかです。考えるためには対象の前で立ち止まり、その周りをぐるぐると巡る必要があるのです。考える時、私たちは「ちょっと待てよ」と言うのです。
忙しい日常の中で私たちは、考えることを忘れてしまっているのです。小さい頃は自然にやっていたはずなのに。きれいな花を見つけたら、わざわざそこに戻って、きょろきょろと見つめる。私たちの周りには考える材料がたくさんあります。子供にとって自然はまさに考える素材の宝庫です。人工的なものは生活を便利にするために作られたものです。だからできるだけ考えなくていいように設計されています。誰でも楽に使えるというのはそういうことです。それで考える機会が失われてしまいます。自然に返ると、アナログな道具を使うと、私たちは必然的に考えざるを得なくなるのです。
人間は眼に見えないものを見ることができると思っています。想像するということです。哲学者の鷲田清一さんは著書で「意識的に視界をこじ開けなければ、世界が見えるようにはならない」と書いています。どうすれば本物の本当の姿が見えるのでしょうか。鷲田さんは対象の背景にあるものを想像することによってできるといいます。想像するためには、具体的にはいろんなことを知ることで可能になります。想像するといっても元になる素材がなければ不可能です。素材が多ければ多いほど、想像しやすくなるのです。似て非なるものを発見するトレーニングも重要です。日頃から、何に似ているか、誰に似ているかということを探すようにしていれば、想像するセンスが磨かれていきます。違うものを同じように見るには想像力がいります。話し方でも絵でも真似がうまい人は想像力もあります。
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***デイ・ウォッチ(25日)
◎物価高対応・賃上げ加速 経済対策5本柱、岸田首相表明―来月策定、補正編成へ:時事ドットコム (jiji.com) →物価高対策は必要だが、バラマキや過度に市場をゆがめる経済対策は逆効果だ。しっかり吟味すべきだが、最近の野党は与党以上にバラマキ気配もある。アベノミクス以降、選挙目当ての経済対策が目立ち、コロナ禍でタガがはずれた。費用対効果を踏まえた経済対策は昔話か。
◎“上海ガニ”の代表的な産地 中国 江蘇省でカニの出荷始まる | NHK | 中国 →原発処理水の影響で、中国では上海ガニなど近海海産物の消費を控える傾向が強まっているという。三陸沖のさかなも中国船が漁をすれば、当然ながら禁輸にはならない。禁輸はブーメランのように自国にも跳ね返ってくる。グローバル化して相互依存した経済の奥深く面白いところだ。
◎ジャニーズ問題「社名」 日本テレビ社長“再検討を” | NHK | ジャニー喜多川氏 性加害問題 →ジャニーズと関係が深いにも関わらず、横並びで沈黙気味だったテレビ業界で、日本テレビが抜け出した。他局が追随するかどうか。注目される問題は最近、SNSの普及もあって批判がスパイラル状に高まる傾向にある。謙虚な対応が問われている。
◎日本学術会議の梶田会長「何も進展なく次期会長に引き継ぐ」「会議側に瑕疵はない」 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) →学術会議問題は結局、うやむやのまま会長が交代する。「戦争は異論を封じる文化戦争から始まる」と言われる。本当に戦争につながるかどうかは別にして、一歩になりうる印象はぬぐえない。理由も言わずに学問の自由に介入する政治は危うい。
◎太宰治の症状伝える井伏鱒二の書簡発見 「人間失格」原体験が詳しく | 毎日新聞 (mainichi.jp) →毎日新聞デジタルが「スクープ」として配信していた。
*** 「今日の名言」
◎道元(曹洞宗の開祖。1253年9月22日、53歳で死去)
「日々是好日」 「我が身が愚鈍であったとしても、卑下してはならない」 「貧しくあるべきだ。なまじ財が多くなれば、必ずその志を失う」 「学びの道に努めることで他のことを忘れれば、病気にもならないことが分かる」 「広く学び博識になろうと思っても、なかなかそうはいかない。一つのことに思いを定め、そのことに留るべきである」 「一法を通ずるものは、万法を通ず」 「人はなぜ生まれ、どう生きるべきかを明らかにすることが、一番大切なのだ」 「志のある人は、人間は必ず死ぬということを知っている。志のない人は、人間が必ず死ぬということを本当の意味では知らない。そこに差がある」 「自己を知るとは、自己を忘れることである」 「何事も一心不乱にやれば、宇宙の真理を体で感じとることができる」 「時間は怒涛のように流れもするし、飛躍もすれば、逆回りもする。過去現在未来というふうに流れはしない」 「行雲流水(行く雲のように、流れる水のように自由に場所を変え、とらわれることなく生きてゆこう)」
*** きょうの教養 (中高生のための哲学入門②)
◎視点を変えれば不可能が可能になる 視点を変えるには、複数な思考回路が必要になります。人間は通常、一つの思考回路で考えます。道を一つ選んで、そこをずっと歩いているかのようです。視点を変えるとは、今歩いている道から別の道に移ることです。私たちが視点を変えようとしないのは、メリットを感じないからだと思います。視点を変えれば得をすることがいっぱいあります。メリットを教えてくれる学問が哲学です。日本では一部の人しか哲学を学びません。それも視点を変える思考法ではなく、歴史上の哲学者の言葉を分析するものです。
哲学で一番大事なものは、この視点を変えることだと思います。普段とは別の見方をすることで、初めて本質が見えてくるのです。別の見方をするだけで答えが立ち現れてくることもあるのです。入り口が塞がっている時、裏口に気づけば、それだけで問題は解決します。私の好きな言葉にカルタゴの名将ハンニバルの名言があります。あっと驚く戦術で勝ち続けてきた将軍ですが、「視点を変えれば不可能が可能になる」といっています。
視点を変えるにはどんな方法があるでしょうか。究極は神様でしょう。神様には全部見えているはずです。神を信じるかどうかという意味ではなく、あらゆる物事を知る存在があるとして、それを神と呼ぶという話です。私は常に神様を想像し、神様ならどう見ているかと考えるのです。すると無数の視点が浮かび上がってきます。長い時間をかけていろんな視点で物事を見る経験を積み重ねたことで、視点のストックができ、神様の想像ができるようになりました。ドイツの哲学者ヘーゲルは「絶対知」という言葉を使いました。人間が経験を経ることで神様のような知に達することができるということです。
~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年9月27日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(26日)
◎日中韓首脳会談、12月開催を調整 11月にも外相会談―高官協議:時事ドットコム (jiji.com) →とんとん拍子で進み、12月開催で調整する。日韓の連携、中国の経済低迷が背景にあるのは間違いないが、機会があれば会い、言いたいことを言い合って、違いを認めて歩み寄る。東アジアを緊張の地域から対話による外交の場にしよう。みんな幸せになる。
◎麻生氏の「がん」発言が波紋 自公に新たな火種か:時事ドットコム (jiji.com) →失言癖の麻生氏。吉田茂首相の孫が売り物だが、失言を聞くたびに世の中をなめているような気がするのは私だけだろうか。公明党はもっと怒ってもいいだろう。「麻生さんだから」で放置すると、それが常識になってしまう。まねをする政治家も出てくる。
◎北陸新幹線 営業用車両「W7系」が初めて試験走行|NHK 福井県のニュース →営業用車両が初めて、金沢・福井・敦賀を走った。開業は来年3月。福井の発展につながるか。大阪から金沢に行く時、今は在来線の特急があるが、開通後は敦賀で乗り換えとなる。在来線特急がなくなると、福井・石川県の地元は不便になる。
◎テレビ朝日社長 ジャニーズ事務所に社名変更検討など申し入れ | NHK | ジャニー喜多川氏 性加害問題 →日本テレビが先頭に立ち、テレビ朝日が追随した。定例会見の順番という背景もあるのだろうが、沈黙を横並びで破る。内容もほぼ同じで、日本的な光景だ。
◎NHK記者が経費不正請求の疑い 第三者委を設置 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →経費の不正請求は不正に違いないが、数万円という。ちょっと大げさな気もする。実態はもっと巨額か、悪質な何かがあるのか。背景が気になる。
*** 「今日の名言」
◎ジークムント・フロイト(オーストリアの心理学者・精神科医。1939年9月23日、83歳で死去)
「人の強さは、その人の弱さから生まれる」 「人は自分の外側に力や自信の源を探してきたが、本当は自分の内側にあるものだ。自分の中にしか存在しえない」 「人は自分のコンプレックスを取り除こうと努めるべきではなく、それと調和を保つように努めるべきだ」 「愛情を与えることをケチってはいけない。元手は使うことによって取り戻せるものだ」 「愛されているという確信をもつ人間は、どれほど大胆になれることか」 「人間として大事なことは、愛することと、働くことである」 「あらゆるものの中心に愛を置き、愛し愛されることに至上の喜びを見出せたとき、幸福は訪れる」 「自分に完全に正直でいることが、よい自己修練となる」 「自分に対してとことん正直になることで、それが心身によい影響を与える」 「沢山の失敗を重ねてみて、初めて真実の全体像が見えてくる」 「生きる意味や価値を考え始めると、我々は気がおかしくなってしまう。生きる意味など、存在しないのだから」 「偉大なるレオナルド・ダヴィンチは、生涯を通じて、実際に子供のままでいたようだ。大人になっても、遊ぶことをやめなかった」
*** きょうの教養 (中高生のための哲学入門③)
◎言葉は世界の設計図 哲学のプロセスの締めくくりは、言語化です。いろいろな視点で捉えたものをある程度似たような内容ごとにまとめて言葉にする。恣意的に好きなものや面白いものを集めて再構成する。本質が偏ってしまうと思うかもしれませんが、物事を捉え直すことは別の見方をすることに過ぎないのです。本質を捉えるとは、これまでより広い視野から眺めた上で、別の切り取り方をすると思えばいいでしょう。好きなように切り取ればいいのです。捉え直した新しい世界を新しい言葉で表現する、それが哲学だと思うのです。考え抜いて世界を新しい言葉で捉え直す。気楽にやってみればいいでしょう。
新しい言葉で捉え直すことは、違う世界に住むことを意味します。一つの物を新たな言葉でとらえ直した瞬間から、世界は別の世界に変わるのです。例えばペン。単なる筆記用具ではなく、「心をかたちするもの」ととらえ直せば、素晴らしい変化になります。人生がほんの少し良くなったような感覚を覚えます。世界は言葉でできています。周りには、机、ペン立て、消しゴム、パソコン、カバン、ドア、窓、本があり、それぞれの言葉がある。だから私たちはそれぞれのものを区別できるのです。
名前が同じなら、同じものになります。フランスでは蝶も蛾も「パピヨン」という同じ名前ですから、両者を区別することはありません。私たちはモノではなく、名前で区別しているのです。哲学した結果、その物事をどんな言葉で表現するかがすごく重要になります。言葉のセンスが要求されるのです。いい言葉は外見も中身も整っていることになります。哲学は概念の再定義をします。
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***デイ・ウォッチ(27日)
◎救済法対象外の原告らを「水俣病」と認定 国やチッソに賠償命じる:朝日新聞デジタル (asahi.com) →最近には珍しく「民」に寄り添った判決。公害病のような認定で線引きをすると、どうしても不合理で納得できない区別が生まれる。疑わしきは弱きものの利益に。判決を出したのは達野ゆき裁判長。
◎「寒暖差疲労」に注意 あす東京などで季節外れの暑さ予想 | NHK | 健康 →地球は沸騰し、日本では秋と春がなくなりつつある。最近、夏から一気に冬に向かうようだったが、日本人のDNAはついていけない。29日は猛暑というから高齢者はきつい。
◎“核のごみ” 処分地調査受け入れず 長崎 対馬市長が表明 | NHK | 長崎県 →原発を稼働させた以上、最終処分場は必要になっているが、経済的に苦境にあるからといって、処分場の経済効果に頼るのも情けない。漁業や観光など土地固有の資源で生きていこうという選択は賢明だろう。
◎NHK、ジャニーズタレント新規起用停止 「紅白」ゼロも – 日本経済新聞 (nikkei.com) →NHKがジャニーズの新規起用を停止した。紅白歌合戦もジャニーズ抜きになるかもしれない。テレビ局が雪崩を打っている。
◎日本ハム 新庄監督 来季の続投決定 “3年目で結果を出す” | NHK | プロ野球 →我慢強く見守った球団は立派だが、新庄監督もそろそろ結果を出さないと。「優勝させることはもちろんだが、チームの土台づくりと、ファンに野球の楽しさを伝えることが使命なので、自分を出しながら、『新庄剛志はこのままでは終わらないぞ』と見せつけたい」と優勝宣言をした。
*** 「今日の名言」
◎西郷隆盛(幕末から明治の政治家。1877年9月24日、49歳で死去)
「人を相手にせず、天を相手にせよ。天を相手にして、自分の誠を尽くし、人を咎めたりせず、自分の真心が不足していることを認識すべきなのだ」 「命もいらぬ、名もいらぬ、官位も金もいらぬというような人物は処理に困るものである。このような手に負えない人物でなければ、困難を共にして、国家の大業を成し遂げることはできない」 「何度も何度もつらく苦しい経験をしてこそ、人の志は初めて堅くなる。真の男は、玉となって砕けることを本懐とし、志を曲げて瓦となって生き長らえることを恥とせよ。人を言いくるめて、陰でこそこそ事を企てる者は、たとえそれがうまくいったとしても、物事を見抜く力のある者から見れば醜いことこの上もない」 「人に提言するときは、公平かつ誠実でなければならない。公平でなければ、すぐれた人の心をつかむことはできないものだ」 「今の人は、才能や知識があれば、事業というのは思いのままにできると思っているが、才能にまかせて行うことは、危なっかしくて見ておられない」
*** きょうの教養 (中高生のための哲学入門④)
◎哲学的対話をしてみよう 哲学は対話から生まれました。対話によってより効果を発揮します。対話は複数の視点を提供してくれます。自分で別の視点を引っ張り出してくるのは難しいですが、他者との対話の場合、基本的に相手の答え、存在そのものが別の視点なのです。
対話は相手としているようで実は自分としているのです。対話を言葉のキャッチボールに例えますが、正確にいうと、思考のキャッチボールであり、餅つきのようなものでしょう。キャッチボールする時のボールは変化しませんが、対話で交換する思考は変化していきます。発展し、進化し、完成に近づいていくのです。2人でつくお餅のようです。ひとりが杵をつき、もう一人が合いの手を入れて餅をひっくり返します。そうした作業を繰り返すことで、初めてお餅が出来上がるのです。
対話で思考を発展させていくためには、相手の返答に切り込みを入れます。相手は切り込まれた口をふさいだり、もっと開いたりして中身を説明します。いい対話は切れ込みの入れ具合が見事です。大きく分けると①ひっくり返す②深める③分割する④付け足す⑤まとめる、という5つの切り込みがあるように思います。①は否定したり、反対のことを言ったりする。②は具体的に聞いたり、別のものにあてはめたりする。③は場合分けする。④は内容を付け足し、⑤は抽象的に表現するということも含まれるでしょう。こうした切り込み方をすることで、相手は反応せざるを得なくなります。
私は長年哲学カフェを続けていますが、3つのルールを設定しています。「難しい言葉を使わない」「人の話をよく聞く」「全否定しない」です。難しい言葉を使うと、他者の視点を生かすことはできません。よく聞かないと意味がありません。全否定すると、そこで話が終わってしまいます。盛り上がらないと思考は発展しません。
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速報=ラグビーW杯で、日本がサモアを28-22で破る。 ラグビー【速報中】日本がサモアを破り1次リーグ突破へ前進 | NHK | ラグビーW杯 2023
***デイ・ウォッチ(28日)
◎トランプ氏 ミシガン州で自動車産業の労働組合員などへ演説 | NHK | アメリカ大統領選 米大統領選へ 共和党 2回目候補者討論会 トランプ氏欠席の中で | NHK | アメリカ大統領選 全米自動車労組スト バイデン大統領が現地訪問 組合員支持示す | NHK | アメリカ →アメリカ大統領選の動きが活発になっている。「バイデン対トランプ」なら代わり映えしないが、労組取り込みが新しい。ストのUAWに追い風。
◎“岸田首相 連合の定期大会への出席を調整” 官房長官 | NHK | 物価高騰 →日本でも岸田首相が連合に接近する。いつも投票に行くのは、政党のコア支持者か労組員くらい。有権者の2割程度の支持で政権を取ることができる。無党派層が投票に行かないと、政治はますます少数者のものになってしまう。
◎日朝、東南アジアで今春に2回秘密接触 高官の平壌派遣も一時検討:朝日新聞デジタル (asahi.com) →朝日新聞朝刊の特ダネ。今は北朝鮮のロシア接近で動きが止まっているという。
◎航空自衛隊 来月から東京 港区の高層ビルに“宇宙オフィス” | NHK | 防衛省・自衛隊 →「東アジアの安全保障環境の変化」という大義名分で、防衛省・自衛隊への追い風が吹いている。「中国軍が宇宙に進出しているから危ない。日本も」ということだろうが、「何でも中国に対抗しないといけないのか。日本なりの道はあるだろう」と最近いつも感じる。
◎11月請求分の電気料金 大手10社中8社で値下がり 燃料価格下落受け | NHK →10月はすべて上がったが、11月は関電などを除いて少し下がる。上がるよりいいが、少額で一喜一憂するのもむなしい。
*** 「今日の名言」
◎小泉八雲(ラフカディオ・ハーン、ギリシャ生まれの作家。1904年9月26日、54歳で死去)
「文章はあなたの話、あなたの言葉、あなたの考えでなければいけません」 「諸君が困難に遭い、どうしてよいかまったくわからないときは、いつでも机に向かって何かを書きつけるのがよい」 「日本人ほど、お互い楽しく生きていく秘訣を心得ている国民は、ほかにちょっと見当たらない」 「この微笑は、日本人の精神の豊かさを表すとともに、日本の文明は、物質的には発展途上国だが、それだけ道徳面では、西洋文明より遥かに進んでいる」 「自然と人生を楽しみ、愛すという点で、日本人の魂は、古代ギリシャ人の精神と不思議に似ているところがある」 「外国人の旅行者にとっては、古いものだけが新しいのであって、それだけがその人の心をひきつけるのである」 「いったい、日本の国では、どうしてこんなに樹木が美しいのだろう。西洋では梅が咲いても、桜がほころびても、格別なんら目を驚かすこともないのに、それが日本の国だと、まるで美の奇跡になる。その美しさは、いかほど前にひょっとしたら、この神ながらの国では、樹木は遠い世の昔から、この国土によく培われ、人によく労わり愛されてきたので、ついには樹木にも魂が入って、樹木もまた心を入れて、礼心を表すものだろう」
*** きょうの教養 (中高生のための哲学入門⑤)
◎自分なりの考えを持つ 哲学はものごとの本質を探求する学問で、答えは人によって変わってきます。もし誰もが同じ答えしか持たなかったらどうなるでしょうか。それぞれが考えた結果、偶然同じ答えを持つというならいいでしょう。誰かに仕組まれたり強制されたりして同じ答えを持つのは問題です。歴史上、実際に起こりました。全体主義と呼ばれます。そんな体制が出来上がってしまうと、誰も止められません。最初は恐怖によって同じ答えを持つようにされ、次第に誰も疑問を持たなくなって当たり前になってしまうからです。戦前、ナチスドイツや日本もそうだったのです。常に何らかの否定の契機がないと、物事が発展しないのです。反対の契機をアンチテーゼと呼びます。哲学者ヘーゲルの弁証法では、アンチテーゼという反対の事柄や問題を克服して物事が発展すると考えます。
民主主義に置き換えると、少数者の声に耳を傾けることです。それぞれが異なる答えを持つべきで、意見が社会を変えてきました。誰も言わなければ何も変わりません。誰もが口をつぐんでしまったら、永遠に変わるきっかけを持つことさえないでしょう。自分が言わなければ変わらないということを肝に銘じておくべきです。その際、人と同じ事を言っても意味がありません。議論するときはほんの少しでも異なることを言う必要があります。人生も違えば体も違いますから、全く同じ考えにはならないはずです。意見は「異見」であるべきだというのはまさにその通りです。
全体主義では議論の機会は一切ありません。きちんと議論する機会が確保されれば、おかしなことにはならないのです。議論はあらゆる可能性について検証するプロセスでもあるからです。多数決は時間が限られていることからやむを得ず取られる技術的な措置にすぎません。時間が許せば、議論するべきなのです。そのためにも自分の意見を持つことは永遠に求められるといっていいでしょう。