10月2~6日(教養講座:河合隼雄の心理療法序説)
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HPにアップしました→ 10月2日からの教養講座は「河合隼雄の心理療法序説」 – 長谷川キャリア文章塾 (hasegawa-cwa.com)
***デイ・ウォッチ(29~1日)
◎ロシア寄り左派第1党 ウクライナ支援暗雲、連立協議へ―スロバキア総選挙:時事ドットコム (jiji.com) →連立協議はこれからだが、ヨーロッパでウクライナ支援疲れが表面化した。生活苦を感じる人が増えており、こうした動きが広がれば、ウクライナに停戦交渉を促すことになるだろう。小さな動きだが、注目。
◎旧統一教会の解散請求へ 霊感商法「組織的に継続」―宗教審に近く諮問・文科省方針:時事ドットコム (jiji.com) →政府は長期間調べてきたので、請求するしかない。12日の宗教法人審議会に諮問する見通しで、裁判所の判断が次の焦点。解散となれば法人格を失い税法上の優遇がなくなるが、宗教団体としては活動できる。まだまだヤマ場は多い。
◎細田衆議院議長 体調不良で辞任の意向伝える | NHK | 衆議院 →統一教会も、セクハラも、何も説明なし。議長の対応は政治不信を高め、他の政治家も見習いかねないという意味で、問題は大きい。党を離れているとはいえ、長く自民党にいたわけだから、しっかり指導すべきだろう。説明できないからしないのでは、社会の規律が緩む。
◎神宮外苑 樹木伐採など年明け以降にずれ込む予定 都の要請受け | NHK | 環境 →単なる延期か、抜本的見直しへの一歩か。東京の象徴のような場所で、これだけ反対が強いと、三井不動産のブランドに対するダメージも大きいだろう。稼ごうと焦るより、民意に寄り添った方がいいだろう。都も様子見を止めたらどうだろうか。
◎プロ野球2軍にハヤテ223、新潟アルビレックスBC参入へ どう変わる? | NHK | プロ野球 →スポーツが地域に与える効果への期待が高まっている。プロ野球2軍は、サッカーJ2より注目度は低い。さてどうなるか。ずっと2軍しかないのなら、効果は限られそうだと思うが。
*** 「今日の名言」
◎山崎豊子(小説家。2013年9月29日、89歳で死去)
「もし神様が一つ願いをかなえてくれるなら、私の青春時代を返して欲しいと伝えたい。そして、もっと勉強をしたかった」 「先の戦争で、大学生だった私は軍需工場へ動員されました。そのときの辛さ、悲しさが私の作家としての原点でもあります」 「不条理に立ち向かい、虐げられた側の心を書き残すのが作家の使命」 「私には、若くして死んでいった人間たちへの責任があります。だから半世紀も作家を続けてこられたのです」 「私には青春を奪った横暴な国家というものを許さん、という思いがしみこんでいます。泣き虫ですが気が強いんです」 「『大地の子』だけは、私は命をかけて書いてきました。自分の血で描いているという思いがあります」 「取材で得た事実を羅列しただけでは小説にはなりません。テーマをどう構成し、人間ドラマを形作って行くか、考えに考え抜き、ディテールにもこだわります。そうしてこそ作品に厚みが出て、真実というものが表現できるのではないでしょうか」 「特別な秘訣なんてありません。私はいつも、ただ良い小説を書こうとしているだけです。ただ、そのための時間と労は惜しみません」
*** きょうの教養 (河合隼雄の心理療法序説①)
今週は心理学者の河合隼雄氏(1928~2007)が書いた「心理療法序説」(1992、岩波書店)を紹介する。河合氏は京都大学理学部を卒業し、ユング心理学を日本に導入した人で、臨床心理士の資格整備にも貢献した。本書は心理療法の名著とされている。エッセンスを紹介するが、心理療法は個別性が強くあいまいな部分があり、理論で一刀両断できる分野ではない。詳しく知りたい人は、2009年に刊行された岩波現代文庫版を読んで欲しい。
◎心理療法とは 心理療法は、人間の心、人間存在全体に関わってくる。人間の生き方や人生全般まで考えないとできない。心理療法の目的は人生の目的を考えることである。悩みや問題解決のために対談した人に対して、専門的な訓練を受けた者が、主として心理的な接近法によって、可能な限り来談者の全存在に対する配慮を持ちつつ、来談者が人生の過程を発見的に歩むのを援助することである。
例えば不登校の生徒がいる。両親や本人が登校を望んでいるかもしれないが、すぐに登校を目標とするのではなく、生徒の生き方全体を見ていく。家族何代かにわたる重荷がわかれば、登校を焦るより、本人やそれを避けてきた両親もともに重荷に直面していくことが必要となってくる。このようなことは実に多い。
心理療法のモデルとしてまず医学モデルがある。症状があり、検査をし、病因を除去して治癒する。自然科学的な思考で、因果関係を把握して治療するから、非常にわかりやすい。次に教育モデルがある。問題を設定して面接し、原因を発見して除去する。この考え方も因果律で、いかなる問題も原因があると考える。二つのモデルはあまり有効ではない。
第3のモデルとして成熟モデルがある。悩みを聞き、相談者の自己成熟過程が促進され、解決が期待される。多くの身体の病気も本人の自己治癒の力によって治るだから、似たようなことと言っていいかもしれない。心理療法は自己成熟の力に頼っている。人間の心には意識の支配を超えた自律性が潜在している。一般にはある程度抑えられているが、治療の場という自由にして保護された空間を与えることによって、心の奥にある自律的な力に頼り、生き方の新しい方向性を見出そうとするのである。
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***デイ・ウォッチ(2日)
◎新型コロナワクチンにつながる技術 2氏にノーベル生理学・医学賞:朝日新聞デジタル (asahi.com) →メッセンジャーRNAワクチンの開発は去年も本命だった。カリコ氏はハンガリーの肉屋の生まれで、苦労して渡米したが、研究資金が乏しく、注目もされなかった。新型コロナウイルスの感染爆発がなければ、ワクチンもノーベル賞もなかった。数奇な運命も話題になりそうだ。
◎ジャニーズ事務所 社名変更し将来廃業へ 新会社設立し社名公募 | NHK | ジャニー喜多川氏 性加害問題 →ジャニーズ事務所は「スマイルアップ」社になり補償に専念。タレントマネジメント会社を新設する。まさに補償とタレント業の行方が今後の焦点。補償の詳細はこれからだが、2つの焦点が順調に推移すれば、ジャニーズのニュースもヤマ場を超える。順調に推移するか。
◎大谷翔平 大リーグでホームラン王を獲得 日本選手初の快挙 かぶとも | NHK | 大谷翔平 →今年の明るいニュースはいつも大谷だった。「大リーグでこれまで活躍された偉大な日本選手たちのことを考えると、大変恐縮であり光栄。協力してくれたチームメート、コーチングスタッフ、ファンに感謝」とコメントも大谷らしい。来年は三冠王に期待。
◎「四谷大塚」盗撮、元講師と法人を書類送検…被害女児の個人情報がSNSに : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) →塾も学校も犯罪が相次いでいる。親は安心できない。コンプライアンスばやりだが、システムだけではうまくいかない。人間性を回復・発揮させる何かが必要ではないか。
◎佐賀県庁職員「ミス・ジャパン」に 全国大会でグランプリ輝く | NHK | 佐賀県 →佐賀県はもともと地味な県だが、県職員が「ミス・ジャパン」の快挙。公務員が大会に出るだけでも驚きだが、これから県職員でおさまるのだろうかといらぬ心配をしてしまう。
*** 「今日の名言」
◎すぎやまこういち(作曲家。2021年9月30日、90歳で死去)
「ゲームと違って、人生には決まった攻略法はありません」 「ゲーム音楽は何回聴いても飽きない曲でないといけない」 「音楽は心のタイムマシン。音楽を聴くことによって、その音楽に初めて触れたとき、音楽で何かを感じたとき、そのときの気持ちに、それが10年前であろうと20年前であろうと一瞬にしてパンとその人をその時の気持や情景に送り込むことができる」 「苦労しないでフッと浮かんだ曲が結果的にいい曲になる。ほっといて、浮かんでくるのを待つ」 「目の前の困難から逃げてばかりではダメです。ゲームも人生も、逃げたら経験値は上がりません」 「健康法にとらわれないことが、健康の秘訣」 「巨匠というよりは若手と言ってほしいですね。新進気鋭と(笑)」 「ドラゴンクエストのスライムは可愛いんだよね。これで僕の基本的な音楽の方向性も決まったなぁという感じ」 「煮詰まったらドラクエをやる。基本的にすべてのキャラクターは、レベル99まで上げます」
*** きょうの教養 (河合隼雄の心理療法序説②)
◎心理療法と現実 大学生が「自分の目と目の間のくぼみがひどく陥没している。変な顔で、気になって外出できない。整形外科に行ったが、心理療法をすべきだと言われた」とやってきた。心ではなく、顔の形が問題だと言うが、ごく普通の顔である。顔の訴え以外に特に奇異な点がないので、神経症の一種と判断をすることができる。
心理療法では「唯一の正しい現実」が存在すると考えるより、現実を人間がどう認知するか、認知の仕方はその人にどのような意味を持ち、周囲の人とどう関係するかということに関心を払う。人間の意識は層構造を持つと考えることが、現実認識のあり方を考える上で好都合である。現実が層構造を持つから意識も層構造をなしている、あるいはその逆かと因果的に理解するのではなく、両者の対応の存在を認めた上で、心のあり方に注目するというのが妥当であろう。
意識には大きく分けて表層と深層があるが、表層意識のイメージは経験的な日常生活での具体的事物と密着している。深層意識のイメージは、表層とは独立に働くところが特徴的である。自律的で、時に「妄想」とか「幻覚」といわれて異常扱いされる。表層意識からみればそうであるが、深層意識ではそれ自身の意味を持っている。そこには無欲も欲も共存している。深層意識にうごめいているイメージは全く無秩序というのではなく、それなりの形を持つ。イメージについて、古来語られている神話・昔話や夢の内容など比較すると、共通した原型(アーキタイプ)が認められる。
現実は各人のファンタジーによって創造されている。各個人が一瞬一瞬現実を創造し、認知していると言える。例えば一つの糸杉を見て、「そびえ立つ糸杉」「孤立する糸杉」「燃え上がる糸杉」と認知する。それぞれの認知に個人が実現したいイメージが関係している。相談者は苦悩を通じてどんな現実を実現したいのか。ともに考える態度が重要になる。
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***デイ・ウォッチ(3日)
◎円相場 一時1ドル=150円台 その後円買い戻しの動きで乱高下に | NHK | 株価・為替 →円安が進み、1年ぶりに1ドル150円の円安になった。米経済の好調が要因だが、日本が市場介入した模様で、一時147円に戻して乱高下した。米国の下院議長の解任動議が史上初めて可決され、米議会の混乱も伝わっている。神経質な動きが続きそうだ。
◎JR西日本、芸備線存廃で協議会要請 全国初、自治体・国と議論:時事ドットコム (jiji.com) →赤字鉄道の存廃について、国が積極的に関与する。当事者同士でまとまるのが一番いいが、うまくいかない地域がある。対話を通じて合理的で納得できる対策をまとめられるか、民主主義の試金石ともいえる。
◎維新 鈴木宗男参院議員 党に無断で渡航中止勧告のロシア訪問 | NHK | ロシア →無断で行ったのが悪いのか、行った事自体が悪いのか。鈴木宗男氏側は「連絡をしなかったのは単なるミス」と言っているが、真相は不明。侵攻したロシアとはいえ、政治がいろいろなパイプを持つのは必要だ。鈴木氏だけに何をするかわからない雰囲気さもある。
◎「窓ぎわのトットちゃん」続編 42年ぶり刊行 黒柳徹子さん会見 | NHK | エンタメ →刊行の弁は「ウクライナの問題で子どもたちはどうしているのだろうと思ったとき、戦争のときに子どもだった自分はどうだったか思い出しました」。タモリは「徹子の部屋」で日本は「新しい戦前」と言ったが、有力タレントがきな臭さも漂う風潮に敏感に反応している。
◎袴田巌さんの再審を前に 日本プロボクシング協会が検察に要請 | NHK | 静岡県 →再審は今月27日から始まる。プロボクシング協会が元プロボクサーの袴田さんを支援し、検察に有罪立証を求めないように要望した。元身内の応援というより国民の声だろう。検察や裁判所の対応が焦点だ。
*** 「今日の名言」
◎さいとうたかお(漫画家。2021年9月24日、84歳で死去)
「5年生のときに、まさに窮鼠猫を噛むで、ヤケクソになってガキ大将にかかっていったら、それがなんかコロッと勝ってしまって。それからは、もう猿山のボス同然でね」 「中学時代に知らない間にどんどん部下が増えてはいきましたけどね。幹部連中が鉛でバッジ作って、それを全然知らんヤツが持ってたりして」 「外でどうしようもない悪ガキで暴れまくっても、帰ってきたら少女が涙するような詩を書いたりして。すごい二重人格でね、そういう意味では(笑)」 「私は理屈っぽかったから、必ず教室の後ろで窓開けてタバコ吸ってました。みんなに迷惑かけたくないって」 「正義なんて人間のご都合主義で生まれるでしょ?人間に都合が良かったら正義と呼ぶし、悪かったら悪と呼ぶ。本質的にはそんなもんないわけ。正義とか悪とかいうものは、みんなで決めたただのルールですから」 「手塚先生の描き方はこの世界では中途半端だ、と。たとえば、指の関節がどこにあるかわからんような手でノブ持ったって、リアル感は出てこない。私はリアルなドラマを書きたかったですからね。だからあの絵には限界がある。どこまでリアルな絵を描けばいいか研究しないと。ああいうディズニー調の絵ではダメだということを盛んに言ったわけです」
*** きょうの教養 (河合隼雄の心理療法序説③)
「心理療法序説」では、心理療法と科学性、教育、宗教、技法、訓練など多岐にわたって論じている。残り3回は「心理療法と文化・社会的要因」に絞って紹介する。
◎個人と社会・文化 1959年にアメリカに留学した時、「相談者が17年間も同じ会社に勤めているのは何か問題がある」と聞いて、「日本では一般に終身雇用だ」と言ったら全員が驚き、文化について話しあったことがある。 個人は生きる環境に強い影響を受けている。日本人であれば日本語で考え、感情を表現しているだけで、日本語の持つ性格で思考や感情も規定されている。どこの文化も同様である。育つ時に家族の影響を受けることも当然であり、相談者の家族関係を非常に重要視する。
個人の中にある家族、文化、社会を考えざるを得なくなってくる。例えば不登校の子どもと会っていると、母親が子どもを抱きしめて自立の力を奪ってしまっている感じを強く受ける。ところが、自立してゆく男性のモデルとなるべき父親のイメージがひどく弱い。与えられた環境の中で相談者がいかに自分の生きる道を自主的に歩み出していくかを援助するのが私の仕事だ。相談者と会っていると、一人の人の重みを痛感する。自分だけ変わることは極めて難しく、自分が変わるためには周囲を変えていかなければならない。一人を引き受ける時、家族を引き受けているという覚悟がいる。
本人の悩みが、家族や文化の悩みに通じていると明らかにするとよい場合もある。さもなければ相談者は、家族の中で「自分だけが悪い」とか「弱い」と思って、罪悪感や劣等感を持ってしまうことがある。劣等感は優越感と隣り合わせているので、前述のようなことを言った途端、相談者は「自分が家族のためを国のためにこんな風になっている」と周囲と軋轢を起こすことがある。ある程度の戦いや対決が生じてこそ人間が変わっていくのだから、軋轢も避けがたいこともある。
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***デイ・ウォッチ(4日)
◎NTTドコモ、マネックス証券を子会社化へ…485億円出資 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) →国内通信市場の縮小をにらんで、ドコモが証券業に参入する。NISAの普及で証券界は注目されている。他の携帯キャリアは証券会社を持っており、遅れての参入となる。dポイントの利用者は9400万人超といわれ、ポイント経済圏の争いが激しくなる。
◎ジャニーズ事務所会見 会場に質問指名の「NGリスト」 | NHK | ジャニー喜多川氏 性加害問題 →NHKの独自だね。司会者の持っていたNG記者のリストがテレビカメラに映っていた。記者会見の運営を委託された会社にしてみれば、「それくらい当然やるよ」が本音だと思うが、公式にはとても言えない。真摯に解決に取り組むというジャニーズ事務所には想定外の伏兵。
◎辺野古地盤改良工事 玉城知事“4日までに承認は困難” | NHK | 基地問題 →政府と沖縄県庁の関係は煮詰まっている。国はきょうにも代執行をする。民意無視の政府の無策で、押しくら饅頭がなお続く。
◎侍ジャパン新監督に井端弘和氏、選考6要件を満たす…「身に余る大役」「全てを注ぐ」 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) 巨人の原辰徳監督が退任、17年で9度のリーグ制覇…後任は阿部慎之助コーチが昇格 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) →クライマックスシリーズはこれからだが、プロ野球は早くも人事の秋。勝てば官軍、負ければ退陣。勝敗が明快に出るスポーツの世界はわかりやすい。
*** 「今日の名言」
◎アントニオ猪木(プロレスラー。2022年10月1日、79歳で死去)
「夢を持て!でかければでかいほどいい。とにかく、夢を持て。大ぶろしきをひろげておさまりがつかなくなってみろ、やらざるを得なくなるではないか」 「元気が一番、元気があれば何でもできる!
自らに満足している人間は、それで終わり」 「さあ、やるんだ。やり抜くのだ」 「人は歩みを止めたときに、そして挑戦をあきらめたときに、年老いていく」 「いつ何時、誰の挑戦でも受ける」 「テメエの力で勝ち取ってみろ。やれるのか、おい!どですか? お客さん」 「コンプレックスをバネに飛躍することができる」 「落ちたら、またはい上がってくればいいだけ」 「姑息なことはするな!」 「道はどんなに険しくとも、笑いながら歩こうぜ!」 「子供に夢を持たせたければ、大人こそ夢を持て」 「馬鹿になれ。とことん馬鹿になれ。恥をかけ。とことん恥をかけ」 「一生懸命やっている人を小馬鹿にするのは、自分が敵わないから、笑うことで逃げている」 「小っちゃなケンカをする度に、スケールが小さくなる」 「悩みながらたどり着いた結論は、やはりトレーニングしかない」 「ルールを決めた以上はルール違反を犯さずに堂々と闘う」
*** きょうの教養 (河合隼雄の心理療法序説④)
◎日本人の特性 文化理解のための軸として、父性原理と母性原理の対立がある。前者は「切る」機能、後者は「包む」機能を特徴とする。ともに存在してバランスをとることが必要であるが、どの文化もどちらかが優勢である。欧米と日本の比較では、欧米は父性原理、日本は母性原理が優勢であると考えるとわかりやすい。
母性原理は「包む」働きによって子どもを守り育てるポジティブな面と、飲み込んで殺してしまうネガティブな面とを持っている。日本文化では母性のポジティブな面が強調され、母のイメージは絶対的な価値を持っていた。しかし、西洋との接触で西洋近代の自我の確立の考えに影響されてくると、ネガティブな面が意識されるようになった。
日本人の心のあり方のモデルとして、日本神話からヒントを得て「中空構造」と私は考えるようになった。日本神話の構造の特徴は、中心が「無為」の神によって占められ、周辺にいろいろな神がうまく配置されて均衡を取り合いながら存在している。中心に全体を統合する原理や力を持った神が存在するのではなく、中心は「無」なのである。唯一の神を持つキリスト教を「中心統合型」と呼ぶのに対し、日本は「中空均衡型」と呼ぶことにした。
中心が空であるため、善悪や正邪の判断を相対化する。対立するものでも全体的平衡を保つ限り、共存できるのが特徴的である。中心統合型では中心が絶対化され、相容れぬものは周辺に追いやられるか、排除されてしまう。中空型は対立するものが共存できる妙味があるが、時にはどうしようもない悪を抱え込んだり、すべてのことがあいまいになったりする欠点を持つ。日本人の生き方を見ているとよく感じられる。中心に「無為」の人を長として象徴的に担いでおくという形をとる時もある。このような形を好む時、有能な人は長にはなれない。
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***デイ・ウォッチ(5日)
◎参議院選挙:参院徳島・高知補欠選挙が告示、前衆院議員と前高知県議が立候補…事実上の与野党一騎打ちに : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) →22日投開票で2つの国政補選がある。参院徳島・高知補選が告示された。10日告示の衆院長崎4区とともに与野党対決。岸田首相は内閣改造でも支持率は上向かず、明るい材料は少ない。野党も似た状態。コア支持者だけが投票に行けば与党勝利となるが。
◎細田衆院議長が次期衆院選に意欲 13日会見へ、一連の疑惑説明か [自民]:朝日新聞デジタル (asahi.com) →細田衆院議長は体調不良で議長を辞めるというので議員も引退すると思った。しかし、元気だという。どうなってるんだか? 補選では与党のマイナス材料になりそうだが、有権者がどこまで気にするか。
◎「NGリスト」ジャニーズ事務所見解 報道向けとHPで一部異なる | NHK | ジャニー喜多川氏 性加害問題 ジャニーズ事務所 看板撤去の準備作業か ビル屋上からゴンドラが設置 | NHK | ジャニー喜多川氏 性加害問題 →NG記者リストは5日のワイドショーでもメインの話題で、コメンテーターの批判はヒートアップする。SNS時代、批判がスパイラル状に増幅する。鈍い動きを批判されるジャニーズ事務所だが、看板撤去は早かった。
◎水俣病訴訟 原因企業の「チッソ」が控訴 大阪地裁判決を不服 | NHK | 熊本県 →国や熊本県はどうするか。11日が控訴の期限。メンツを捨て、「疑わしきは弱者の利益に」が政府のあるべき姿だと思うが。
◎渋谷区長 “ハロウィーン目的で来ないで” 海外にも呼びかけ | NHK | 東京都 →今年のハロウィーンは今月31日で、コロナ禍明け初めて。外国人旅行者も多く、地元は相当神経をとがらせている。
*** 「今日の名言」
◎盛田昭夫(ソニー共同創業者。1999年10月3日、78歳で死去)
「モノをつくらない社会は、滅びる」 「我が社は、いつでも先駆者であります」 「個人は、決して会社の所有物ではない」 「組織の秩序に組み込もうという態度は、あらゆる個性的な能力を殺してしまう」 「アイデアの良い人は世の中にたくさんいるが、良いと思ったアイデアを実行する勇気のある人は少ない」 「学校の秀才が必ずしも社会の秀才ではない」 「黙っているほうが安全だという雰囲気は、非常に危険だ」 「ネクラな組織からは何も生まれない」 「座っていてボタモチを待っていてはダメなので、自力を発揮してボタモチを取りに行く欲がないような人間に用はない」 「私は新入社員の入社式でいつも次のように言うことにしている。君たち、ソニーに入ったことをもし後悔するようなことがあったら、すぐに会社を辞めたまえ。人生は一度しかないんだ」 「ソニーに関係のあるすべての人に幸福になってもらうことが私の念願だが、とりわけ社員の幸福は私の最大関心事である。なんといっても社員は、一度しかない人生の一番輝かしい時期をソニーに委ねる人たちであるから、絶対に幸福になってもらいたい」
*** きょうの教養 (河合隼雄の心理療法序説⑤)
◎実際的問題 日本の現代人は相当に西洋化されているが、まだまだ日本的なものを保持している。言葉では西洋流の論理を見事に駆使し一見、西洋的自我が出来上がっているように見えるが、実は本人がもともと弱いので、西洋的自我に乗っ取られている時もある。よく注意し、本物と偽物を見分ける能力を身につけるよう努力しなくてはならない。偽物はギラギラしすぎる傾向がある。近代的自我を基礎とする人間関係は「契約」を重視するが、母性原理に基づく関係では契約を理解することは難しい。
人生は母性原理だけでなく、父性原理も必要である。例えば、相談者が怒った場合、母性原理で考えると何らの限定なしにひたすら相手に尽くすのが愛情だとなる。しかし、臨床の治療者が相談者の主張を受け止めつつ、治療者としの姿勢を崩さない態度を見せれば、相談者は抑えられてきた感情を出しながら、父性原理の重要さを体験的に知っていくことがある。日本人が最初から「受容」を心がけると、途方もなく受動的になってしまって建設的な働きが生じないことがある。相談者の中には西洋的な自我確立の傾向が強く、周囲との関係がうまくいかない人がいる。そのような人には日本社会で自我を確立してゆくことの難しさとか、どのような折り合いが必要かについて話し合っていかなければならない。
日本では家族成員間の無意識的な同一化が強い。個人を引き受けることは家族全体を引き受けることと覚悟しなくてはならない時がある 。同一化とは、仲が良いとか、連絡がいいとは別次元だ。冷たい関係であっても無意識の深みでつながっている。個人が変化しようとしても、家族の全員が無意識に足を引っ張る関係もある。
家族の一人が代表になって家族の病を引き受けているようなことが多いが、その人をスケープゴートにして他の家族が幸福に暮らしている時もある。治療を開始すると、他の人は自分の幸福を脅かされることが出てくるので、抵抗することもある。治療が進むにつれて破壊と建設を繰り返しながら次元の異なる幸福を得ることになるが、この過程の家族の苦しみについて治療者はよく理解しているべきである。