10月16~20日(教養講座:日本の思想をよむ)

2023.10.20メルマガ

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年10月16日号(転送禁止)~~~

HPにアップしました→10月16日からの教養講座は「日本の思想をよむ」 – 長谷川キャリア文章塾 (hasegawa-cwa.com)  10月9~13日(教養講座:教養の科学史) – 長谷川キャリア文章塾 (hasegawa-cwa.com)

***デイ・ウォッチ(13~15日)

野党系無所属がやや先行 参院徳島・高知補選 朝日情勢調査 [岸田政権]:朝日新聞デジタル (asahi.com)  衆院補選・長崎4区、自民やや先行…参院補選の徳島・高知選挙区は野党系一歩リード : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)  参院徳島・高知、衆院長崎の2補選で自民が苦戦 共同通信調査 | 毎日新聞 (mainichi.jp) 内閣支持32%、過去最低 経済対策に58%期待せず (msn.com) →補選の世論調査が出た。参院徳島・高知は野党系リード、衆院長崎4区は与野党接戦。ともに与党系の議席だったが、与党は苦戦している。内閣支持も最低を記録。投開票は22日だが、岸田政権にとって極めて厳しい情勢だ。

細田衆院議長 辞任会見“打ち切り”で大荒れ 旧統一教会と接点も…「問題ない」 | Watch (msn.com) →細田衆議院議長がやっと会見をしたが、深い反省はない。口調は弱々しく、浮世離れした印象。国会議員は続けるというが、島根1区の有権者は選ぶだろうか。22日投開票の国政補選にはマイナスだろう。古代中国の思想家・老子は「功遂身退。天之道=功なり名を遂げたら引退するのが天の道理」と説いていた。

【随時更新】イスラエル首相 ガザ地区大規模地上侵攻 強く示唆 | NHK | イスラエル・パレスチナ →ハマスの攻撃を予知でなかったイスラエルのネタニヤフ首相は、自らの失態を挽回するためにも激しい攻撃をすると予想される。中国やロシアはパレスチナを支持。米国はイスラエル支援の先頭で、欧州も続く。ウクライナ情勢も絡んで世界の対立と混迷が深まっている。

マラソン代表に小山、赤崎 女子は鈴木、一山がパリへ|47NEWS(よんななニュース) マラソン MGC パリ五輪代表選考【解説】 “一発勝負”象徴する結果に | NHK | 陸上競技(マラソン)→一発勝負は面白い。男子で元公務員ランナーの川内優輝選手の大逃げに驚いて、思わず最後まで見てしまった。力尽きたが、記憶に残る激走だった。最近、誰もが知っているようなマラソン選手が出ていない。今の成績では内定した4人とも五輪は苦しそうというが、頑張って欲しい。

アフガニスタンでまたM6.3の地震 1人死亡 35人けが | NHK | アフガニスタン →7日の地震で1000人以上が亡くなったアフガニスタンで、また地震があった。ウクライナ、パレスチナ、アフガニスタンは悲劇のトライアングルだ。

*** 「今日の名言」

◎佐々淳行(警察官僚、初代内閣安全室長。2018年10月10日、87歳で死去)

「悪い情報ほど早く報告せよ」 「危機管理は、悲観的に準備し、楽観的に対処せよ」 「大きく構えて、小さく収めよ」 「大空振りはホームランバッターの証拠。逃し三振こそ、危機管理官の恥である」 「大地震が発生したときの、生き延びるための万能策はない。三日間は自力でなんとかサバイバルする工夫をしてほしい」 「国防の基本的な底力は、俺がやらずに誰がやるという、心の内なる力に駆り立てられたボランティア・スピリットである」 「国防力の根源は、愛国心、犠牲的精神、使命感、主権意識、情報力、指揮統率力、戦略眼、継戦・補給能力、法律力、制度危機感と、危機管理能力だ」 「私は後年、警視庁の警備第一課長として約2年間、990日警備といわれた第二次安保闘争で、過激派学生や赤軍派などの破壊活動と闘い、約6千回の警備実施を行い、約1万2千人の機動隊員に重軽傷を負わせてしまった。その当時、私は俺がやらずに誰がやるという合言葉もつくって、ともすれば挫けそうになる隊員たちの士気高揚に努めた。この合言葉は、墨で半紙に書かれ、すべての機動隊員宿舎に貼られていた。私が命じた覚えはない。彼らが自発的にそうしたのである」

*** きょうの教養 (日本の思想をよむ①)

今週は「日本の思想をよむ」(角川ソフィア文庫)から紹介する。著者は、仏教学・日本思想史が専門の末木文美士・東大名誉教授。「日本には多彩で新鮮な思想がある。人間や自然だけでなく死者や神仏との関係も親密にとらえてきた」と45の著作をひもとき、解説している。うち5つの文章から思想家と思想を紹介する。

◎二宮尊徳 「二宮翁夜話」

「人の道は天の理に従うものであるが、それぞれ区別をして、雑草の類を悪、米や麦を善とするようなもので、人間に便利なものを善、不都合なものを悪とする。こうなると、天の理とは異なることになる。なぜなら、人の道は人が立てるものだからである」

尊徳の思想は報徳思想と呼ばれ、儒教、仏教、神道などを融合させ、究極の「大極」に従う実践を進めるものである。抽象的な理論でなく、農業を復興させ、経済の立て直しを図る実践の中で形成された極めてプラグマティックなものであった。損得は荻生徂徠のように自然と作為を分離するのでもなく、安藤昌益のように全面的に自然に従うというものでもなかった。自然に従いながらもただ自然任せにするのではなく、人間の工夫が入り、自然と作為を上手く調和させるところに成功が生まれるのである。

尊徳によれば、自然には善悪はない。風雨や寒暑には何の意図もない。しかし人は、その自然のままでは生きていけない。家を建て、いい服を作ることによって、風雨や寒暑を避けて人間らしい生活ができる。それが天道と異なる人道である。尊徳にとっての善悪は、人間にとって好都合かどうかということで決まる。尊徳というと、封建的で古臭い道徳の権化のように思われがちだが、実際には数多くの失敗や試行錯誤の中で鍛えられた合理的でプラグマティックな思想を展開している。今日再発見が必要な思想家の一人である。

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年10月17日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(16日)

谷村新司さん死去 74歳 「冬の稲妻」「昴」など数々のヒット曲 | NHK | 訃報 →スケールの大きなシンガーソングライターだった。いい歌をたくさん残した。ファンや聞いた人に思い出と記憶も残した。『チャンピオン』:谷村新司 – YouTube 谷村新司 昴-すばる. – YouTube  加山雄三&谷村新司:サライ (1992年) – YouTube  谷村新司「リサイタル THE SINGER 2015」5.4.2015 – YouTube

ガザ地区 “エジプトとの間に人道回廊” 設置めぐり調整続く | NHK | イスラエル・パレスチナ →人道回廊の設置が焦点になってきた。イスラエル支持のアメリカも大規模な軍事作戦に反対し、人道回廊を求めている。さすがにガザの住民を見殺しにはできない。いきりたつネタニヤフ政権はどう動くか。

所信表明演説、23日に 教団財産保全で一致点模索―自・立:時事ドットコム (jiji.com) 解散請求「死刑求刑に等しい」 財産移転は「根拠ない」―旧統一教会幹部ら会見:時事ドットコム (jiji.com) →旧統一教会の財産保全で自民と立憲が足並みを揃える。協会は会見を開いて激しく反発したが、孤立している。政治的な封じ込めは決着の方向だ。

木原防衛相 補選の応援演説で「自衛隊に報いることになる」 | NHK | 長崎県 松野官房長官 “自衛隊含む政府機関 特定候補の応援ありえず” | NHK | 選挙 木原防衛相、「自衛隊に報いる」発言を撤回 補選で言及、野党は更迭要求:時事ドットコム (jiji.com) →防衛相が自衛隊を政治利用するあからさまなレッドカード。政治的センスが問われる問題に無頓着な議員は危うい。やたら元気だけいいから余計危うい。

28年ロス五輪、野球・ソフトボールなど5競技採用…IOC総会で決定 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) →毎回変更される競技種目で一喜一憂するのも興ざめではないか。五輪は「より早く、より高く、より強く」に徹し、陸上・水泳・格闘技にマイナーな球技や競技を加える簡素な大会でいいのではないか。サッカー・ラグビー・野球などメジャー球技は、ワールドカップ大会で棲み分けられる。

*** 「今日の名言」

◎谷村新司①(シンガーソングライター。2023年10月8日、74歳で死去)

「鳥は飛び立つ時、向かい風に向かって飛ぶんですよ」 「人生、うまくいかないとき、『ここ数年、向かい風続きでまいっている』なんて言うことがあります。でも、それは決してまいることではなくて、最大のビッグチャンスが来ていることなんです。追い風だったら、飛行機も飛べない。向かい風だからこそ、飛行機も凧も高く上がっていける。つまり、向かい風をつかまえているときは、すごいチャンスなんです」 「カッコつけなくなると、人ってすごくチャーミングになれると思うんです」 「過去はええのよ。人間にあるのは今だけ」 「人生と仕事は切り離すことができません。生活するためには働かなくてはいけない。それも何十年という永きにわたって。だからこそやりたいことを仕事にするべきではないでしょうか」 「自分にとって何が幸福か分からない。そういう人はきっと幸福の輪郭がぼやけているのでしょう。もしそれをはっきりとさせたいのなら、箱の中身を捨ててみることです」 「どんな場所にいたって不安はあるもの。それなら自分のやりたい場所で、夢を追いかける」 「もし自分の人生を変えたいと思っているのなら、過去の道のりに執着しないことです」 「自分のやりたいことを行動に移すかどうか。自分で答えを出すしかない。冷たいようですが、気持ちが何かに頼っていると、うまくいかなくなったとき、絶対に誰かのせいにしてしまいます。したがって、自分の気持ちでアクションを起こすことが大事。それが結果的に自分らしく生きることにつながっていく」

*** きょうの教養 (日本の思想をよむ②)

◎田辺元 「メメントモリ」(ラテン語で「死を忘れるな」)   「自己は死んでも、互いに愛いによって結ばれた実存は、他において回施のためにはたらくそのはたらきにより、自己の生死を超ゆる実存協同において復活し、永遠に参ずることが、外ならぬその回施を受けた実存によって復活し信証せられるのである」

     ◇

死は哲学上の難問だが、正面から扱ったほとんど唯一の哲学者が田辺元である。晩年の1950年代後半、「死の哲学」と呼んで最後の力を振り絞って前人未踏の世界に取り組んだ。背景には、妻を失い、死んだ妻が自らの内に生きていると実感したこと、ビキニ環礁でのアメリカの核実験で第五福竜丸が被曝し、核の脅威による死という事態に人類が直面したことがあげられる。

田辺の死の哲学は長編に詳しく展開されているが、難解である。短編エッセイの「メメントモリ」にはエッセンスが簡潔に凝縮されている。自己は死んでも、愛によって結ばれた死者は、生者の中に復活して導く。ここに「実存協同」が生まれる。同じような経験をした人も多いであろう。抽象論ではなく、日常でごく普通に起こることである。多くの哲学者たちはそれを見過ごしてきた。

復活といえばまず、キリスト教におけるイエス・キリストを思い浮かべる。田辺も最初はキリスト教によりどころを求めたが、ただひとりに起こった奇跡でしかない。田辺はそこで仏教に向かう。大乗仏教の菩薩は、死後もなお生者の心に復活して、愛に生き続ける。菩薩によって導かれた人は、今度は自ら菩薩として次に来る人を導く。ここに菩薩の実存協同の鎖が作られていく。死者という問題は初めて哲学的な議論の場に乗せた功績が大きい。

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年10月18日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(17日)

バイデン大統領 きょうイスラエル訪問へ 人道危機回避が焦点に | NHK | イスラエル・パレスチナ 【随時更新】イスラエル パレスチナ ガザ地区 18日の動き | NHK | イスラエル・パレスチナ→イスラエルに影響力を行使できるのは米国のみ。バイデン大統領が自ら動く。焦点は人道回廊の設置。確たる成算はなく、リスクを取っての訪問のようだ。ガザ住民への人道支援を求める国際世論は高まっている。米国はどう処理できるか。米国の覇権にも影響することになりそうだ。

「一帯一路」フォーラム北京で始まる 習主席 各国首脳と会談 | NHK | 習近平主席 習氏、途上国と連携アピール 中ロ首脳、18日会談―「一帯一路」会議開幕:時事ドットコム (jiji.com) →中国経済の失速で、一帯一路も失速気味。2019年には38カ国首脳が集まったが、今回は何人に減るかが焦点。一帯一路より、習近平首席とプーチン大統領との反米首脳会談に注目が集まる。

SMILE-UP. ジャニーズ事務所 | NHK | ジャニー喜多川氏 性加害問題 →ジャニーズ問題の歯車が一つ回ったが、肝心の被害者補償の動きは鈍い。水面下でやっているのだろうが、進んでいるようにも思えない。

ソニー・ホンダ、「ゲーム+EV」で課金 進むスマホ化 – 日本経済新聞 (nikkei.com)  ホンダの新型ビジネスジェット 名称は「エシュロン」に – 日本経済新聞 (nikkei.com) →ホンダが、ソニーと共同開発するEV「アフィーラ」、新型ビジネスジェット「エシュロン」を発表した。実を結ぶかどうかはこれからだが、トヨタとは異なるホンダウェイが光る。

*** 「今日の名言」

◎谷村新司②(シンガーソングライター。2023年10月8日、74歳で死去)

「何もないということは、何でもできるということ。人生を生きたいように生きられるということ」 「これまでの人生、失敗も成功も確かにいろいろあったと思うのですが、実際には失敗なんて一つもないんです。あのとき、失敗したように見えたことがあったから、気づけたことがある。そういうことがわかってくると、人生に失敗なんて実はないということがわかってくると思います」 「自分がやりたいから引き受ける。自分自身が幸せを感じられることを仕事にする。本来仕事とはそういうものではないでしょうか」 「自分を信じて動いてみる。天命と感じたものに、素直に従う。それは、とても大切なことなんです」 「僕らの年齢になると、オレはこんな感じだからと自分の形を決めつけて、新たなことに踏み出そうとしなくなってしまう人も多い。でも、そんな自分を一度手放してみると案外面白いし、何かしら気づくことがあるんですよね」 「シンガーソングライターを志す者にとって、一番大事なことは作品に心を込めるということ」 「外からの評価は気にしない。それは僕がすることじゃないから。まわりが判断することだから。僕自身が、これだ、と思えるものをひたすら出すだけ。それこそが大事なんです」 「ブレイクできたアーチストとそうでないアーチストの違いは何か。それは意志なんです。目指すものを心から信じ切れるか」 「捨てる勇気を持つ。そうやって吐き出すことで、新しい可能性が入ってくる。本当に大切なこともわかってくるんです」

*** きょうの教養 (日本の思想をよむ③)

◎世阿弥 「風姿花伝」  「芸能は、人々の心を和らげて、身分の上下に関わらず感動させ、寿命や福徳を増す基になり、寿命を延ばす方法である。究め尽くせば、どんな道もすべて寿命や福徳を増やすことであるが、ことにこの猿楽能の芸は、最高の芸の位に達し、家名を残すことは、天下に認められたことであり、寿命と福徳を増すものである」(現代語訳)

     ◇

そもそも芸能に貴賤はない。上下の誰に対しても同じ感動を呼び起こさなければならない。芸能は身分を超えてあらゆる人に平等に開かれる。「風姿花伝」を読む時、この観点を忘れてはならない。人生訓にも通じるために広く読まれている。高邁で孤独な芸道を追求する求道者のあり方というより、一生浮き草的で体を張らなければならない芸能タレントの心得として読まれるべきものだ。

能の起源論も興味深い。能の起源を日本とインドの両方に見る。日本における起源は天岩戸の前でのアマノウズメの踊りに求められる。インドの起源は、釈迦が説法しようとした時、外道たちに邪魔されてできなかったので、 仏弟子たちが外道たちの目をそらせ、その間に無事に釈迦が説法したというのである。

こんな話は経典には見えない。この二つの起源譚は、聖徳太子時代の秦河勝(はたの・かわかつ)によって結びつけられるという。秦氏は秦の始皇帝の子孫ともされ、こうして外来性と土着性が一体化する。高貴と卑賤、猥雑と神聖、滑稽と厳粛、土着と外来など、さまざまな両義性が結びつく中に古典芸能が成り立つのである。

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年10月19日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(18日)

米バイデン大統領 ガザ地区などに“1億ドル”の人道支援表明 | NHK | イスラエル・パレスチナ ガザ病院爆発 双方が非難 対立深まり人道状況改善の糸口見えず | NHK | イスラエル・パレスチナ →これからの世界がどうなるのか、各国首脳もわかっていないのではないか。バイデン大統領はリスクを取ってイスラエル入りした。病院爆発はガザ地区のテロ組織がロケット弾の発射に失敗したという見方を示した。ガザ地区への1億ドル支援を打ち出したが、先が読めない。地上侵攻が始まるか。

習近平国家主席とプーチン大統領 中ロ首脳会談 両国の結束確認 | NHK | 中国 中国 習主席国際フォーラムで演説 「一帯一路」の実績を強調 | NHK | 中国→中国とロシアがますます接近している。ウクライナ侵攻にイスラエルが仕掛ける戦争が加わりそうで、アンチ米国勢力は結束を固めている。しかし、中露首脳にも反米以外の構想はなく、先は見えていない。

中国GDP、4.9%増 不動産低迷、景気の足かせに―7~9月期:時事ドットコム (jiji.com) →中国経済がますます減速している。不動産不況はこれから本格化するから低迷は続きそうだ。中国の影響力にも影を落とす。

林理事長、副学長に辞任迫る 日大執行部、対立で混乱―アメフト部薬物事件対応巡り:時事ドットコム (jiji.com) →日大執行部が内紛状態のようだ。改革を期待されて就任した林真理子理事長の政治的手腕と胆力が問われている。

杉田水脈議員、再び「人権侵犯」認定 在日コリアンにも差別的投稿 | 毎日新聞 (mainichi.jp) →毎度の杉田議員。前回は札幌法務局がアイヌへの発言で差別認定をしたが、今回は大阪法務局が在日コリアンでも認定した。自民党が差別をあまり問題視していないのが不思議だ。「本音では応援している」と勘ぐられても仕方ない。

*** 「今日の名言」

◎三浦綾子(小説家。1999年10月12日、歳で死去)

「なぜ私たちは不満を後回しにし、感謝すべきことを先に言わないのだろう」 「きょうの一日は、あってもなくてもいいという一日ではないのです。もしも私たちの命が明日終わるものだったら、きょうという一日がどんなに貴重かわからない」 「苦難の中でこそ、人は豊かになれる」 「つまずくのは恥ずかしいことじゃない。立ち上がらないことが恥ずかしい」 「私たちは、毎日生きています。誰かの人生を生きているわけではないのです。自分の人生を生きているのです」 「秀れた人間というのは、他の人間が愚かには見えぬ人間のことだろう」 「人間として本当の生き方に立っていたならば、一生を育児に捧げようと、芸術に捧げようと、決して空しさに終わるはずはない」 「やれるかも知れないと思った時、自分でも気づかなかった力が出てくるものだ。初めから、できないと言えば、できずに終わる」 「日頃自分が恥ずかしいと思っていることが、本当に恥ずかしいことなのか、恥ずかしいと思うこと自体が恥ずかしいことなのか、よく見極めて生きたい」 「人間は弱い者である。たとえ幾多の才があっても、大きな意欲があっても、「ダメな奴」と言われれば、たちまちしぼんでしまう」 「私はまだ、死ぬという大切な仕事がある」

*** きょうの教養 (日本の思想をよむ④)

◎和辻哲郎 「古寺巡礼」  「我々が巡礼しようとするのは美術に対してであって、衆生救済の御仏に対してではないのである。たといわれわれがある仏像の前で、心底から頭を下げたい心持ちになったり、慈悲の光に打たれてしみじみと涙ぐんだりしたとしても、それは恐らく仏教の精神を生かした美術の力にまいったのであって、宗教的に仏に帰依したというものではなかろう。宗教的になりきれるほどわれわれは感覚をのり超えてはいない」

     ◇

仏像が芸術品とみられるようになった画期をなす出来事は、明治10(1884)年、アーネスト・フェノロサと岡倉天心らによる法隆寺夢殿の秘仏救世観音の調査であった。彼らはほこりだらけの包みをほどき、立ち現れた観音の美しさに感動する。こうして日本美術史という近代的な新しい学問が成立し、日本の仏像は世界に誇る芸術として称賛されるようになった。

信仰の対象から感傷の対象へ転換を決定づけたのは、「古寺巡礼」(1919年)であった。和辻が当時、 31歳の青年であったことを思うと、いかにも渋い趣味のようだが、若々しい情熱と感性に溢れた野心作であることが分かる。ニーチェやキルケゴールの先端的な研究から出発した和辻は、「偶像再興」で伝統否定から伝統的価値の再発見へと向かう。決して古めかしい伝統回帰ではない。

古色蒼然と見られていた奈良や飛鳥の寺院や仏像を全く新しい近代的な美の観点から再発見しようとした。和辻の想像力は学者としての実証を超えて羽ばたき、古代ギリシャ・ローマ芸術と東洋の仏像がシルクロードを介して通い合う。それらの作者は、狭隘で、わけのわからない宗教者ではなく、世界に開かれた感性豊かな芸術家たちでなければならなかった。和辻に導かれて多くの文学者や芸術家が古都を訪れ、高邁な芸術に酔いしれた。やがて大衆化して、今や貴重な観光資源ともなっている。

~~~ 長谷川塾メルマガ 2023年10月20日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(19日)

岸田首相 期限付きの所得税減税 自民・公明両党に検討指示へ | NHK | 税制改正 →借金を抱える政府が、「税収増を国民に還元する」いうのはどこか変。借金まみれの家庭でオヤジが少し稼いだと浪費する構図だ。所得税減税は所得税を払っている人にしか恩恵はない。最近、自民党内で給付金とか減税とかの声が出ているが、22日の国政補選の票をカネで買うような趣だ。

中国、アステラス社員を正式逮捕 スパイ容疑で3月拘束:時事ドットコム (jiji.com) →なぜ逮捕されたのかわからない。スパイ容疑なら誰でも拘束できてしまう中国の暗い闇。

トヨタ 生産ライン稼働停止 部品メーカーなどに影響広がる | NHK | 自動車 →トヨタの生産停止が長引いている。在庫を持たない「かんばん方式」が有名だが、雑巾を絞りきったようなカツカツでやっているので、不具合があると影響が大きくなる。

ホンダとGM、2026年に日本で自動運転タクシー 合弁会社設立 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →ホンダがまた、トヨタに先行する新しい試み。自動運転はレベル4で、日本では今年4月に公道走行が解禁されたという。何かと慎重な日本では「本当に大丈夫か」という声がどこかから出そうで、本当に実現するか気にかかる。

財津一郎さん死去 89歳 俳優 コメディアンで活躍 独特のギャグで人気 | NHK | 訃報 →何となくユニークな俳優だった。CMに出演していたタケモトピアノ会長のコメントがおもしろい。

*** 「今日の名言」

◎財津一郎(俳優、コメディアン。今年10月14日、89歳で死去)

「人間は、青春に必ず何か忘れ物をする」 「踏まれた麦ほど、強くなる」 「ピアノ売ってちょうだい! もっと、もっと、たけもっと! そのとーり! 頑張ってちょうだい!」 「ひっじょ〜に、世の中、厳しぃ〜っ!」 「昼間なのに、バンガロー」 「ネアカ。ネアカこそは神が人間に与えたもうた最高の武器である。本当にそう思う」

*** きょうの教養 (日本の思想をよむ⑤)

◎日本国憲法  「われわれは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」

     ◇

日本国憲法が公布されて70年以上になる。58年間の大日本帝国憲法より長い。しかし、1955年に自民党政権が誕生し、改憲を党是としながら実現していない落ち着かない状態にある。一方、普通の市民には強い護憲意識が定着している。一主婦のアイディアから日本国憲法がノーベル賞の有力候補にまでなったことは第9条が日本人の誇りとなることを示した。

日本の伝統思想を小・中・大の3つに分けることができる。小伝統は日本国憲法に代表される第二次世界大戦後、中伝統は天皇中心の明治維新から敗戦、大伝統は明治以前の伝統である。明治憲法は「万世一系の天皇」に軸を求めたが、日本国憲法はどこに思想的根拠を求めるのであろうか。憲法前文は「日本国民は恒久の平和を念願し人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚する」と格調高く謳い上げる。普遍的な政治道徳の法則に根拠が求められるが、普遍的な法則はあるのだろうか。平和を愛する諸国民の公正と信義が信頼に値するだろうか。今日では楽観論が通用しなくなっている。

日本国憲法は、戦前の体制を否定し、それ以前の伝統まで廃棄した。普遍的法則がないから日本国憲法は瓦解してしまうのだろうか。そう簡単にも言えない。江戸時代は250年に及ぶ平和な時代が続き、海外派兵をしなかった。天皇は権威にとどまり、政治は幕府が行い、象徴天皇制に似た体制がとられた。意外にも日本国憲法は近世の体制につながる面を持っている。大伝統では、王権が朝廷と幕府に二元化し、両者のバランスによって過激化を防ぐ構造だった。中伝統は天皇に一元化して極端に突っ走った。こうした過去を捉え直して行くことで、未来が開かれる。