12月18~22日(教養講座:戦後知識人の肖像①)
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***デイ・ウォッチ(15~17日)
◎安倍派議員の任意聴取始める 東京地検特捜部 政治資金問題 | NHK | 政治資金 安倍派裏金化疑惑、週内にも強制捜査の方針…1000万円超の高額還流議員を任意聴取 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) →安倍派議員への聴取が始まった。焦点は誰が起訴されるのか。今後、政治改革の改善策の論点が定まっていく。野党の一部が主張する「今こそ政権交代を」という意見がどこまで現実味を持つかも関心事。
◎トリガー条項、3党協議に暗雲 国民「内閣不信任」に公明反発:時事ドットコム (jiji.com) →トリガー条項協議が与党税調大綱から削除された。公明が提案し、自民が渡りに船と乗った。はしごをはずされた国民民主。野党は野党らしくした方がいいという教訓だろう。やせ我慢も重要だ。
◎ガザで誤射、人質3人死亡 早期救出へ交渉模索か―イスラエル:時事ドットコム (jiji.com) イスラエル軍 “誤射の人質は白旗を掲げていた” 責任認める | NHK | イスラエル →戦闘を続ければ人質も安泰ではない。殺気立つ前線では白旗を上げていても撃つことはある。ネタニヤフ政権は戦闘を続けて何を求めているのだろうか。歴史に評価される平和共存より、目先の政権維持のようだ。
◎“米の支援停止で ウクライナ 大規模後退か敗北も”米メディア | NHK | ウクライナ情勢 →ウクライナの劣勢は予想以上のようだ。こうした時、望ましくない不都合な意見は「弱腰だ」と非難され、言い出しにくい。現実を見据えて不都合な発言や決断をするのも政治家の仕事だろう。
◎大谷翔平 会見動画ノーカット 会見全文公開 ドジャース入団の理由 エンジェルスへの思い 大谷選手全て語る | NHK | 大谷翔平 デコピン 大谷さん 愛犬の名前 由来はコーイケルホンディエ別名「ダッチ・ディーコイ・スパニエル」からか | NHK | 大谷翔平 →大谷翔平選手の言葉は、考えぬかれて配慮も忘れない。「デコピン」が週末の話題をさらった。とにかく明るい大谷ニュース。
◎元関脇 寺尾の錣山親方が死去 | NHK | 訃報 →記憶に残る力士だった。最近までNHKで解説をしていた。スリムな体格なので、もっと長生きをすると思ったが。
*** 「今日の名言」
◎相田みつを(詩人。1991年12月17日死去、67歳)
「一生勉強 一生青春」 「雨の日には雨の中を 風の日には風の中を」 「名もない草も実をつける いのちいっぱいの花を咲かせて」 「柔道の基本は受身 受身とは投げ飛ばされる練習 人の前で叩きつけられる練習 人の前でころぶ練習 人の前で負ける練習です」 「背のびする自分 卑下する自分 どっちもいやだけど どっちも自分」 「あのときの あの苦しみも あのときの あの悲しみも みんな肥料になったんだなあ じぶんが自分になるための」 「澄んだ眼の底にある 深い憂いのわかる人間になろう 重い悲しみの見える眼を持とう」 「他人のものさし 自分のものさし それぞれ寸法がちがうんだな」 「その根っこは見えない その見えないところに大事な点がある」 「七転八倒 つまづいたり ころんだりするほうが 自然なんだな 人間だもの」 「負ける人のおかげで 勝てるんだよな」 「おまえさんな いま一体何が一番欲しい あれもこれもじゃだめだよ いのちがけでほしいものを ただ一ツに的をしぼって言ってみな」 「ぐちをこぼしたっていいがな 弱音を吐いたっていいがな 人間だもの たまには涙をみせたっていいがな 生きているんだもの」
*** きょうの教養 (戦後知識人の肖像①)
今週と来週は、粕谷一希著「戦後思潮 知識人たちの肖像」(日本経済新聞社、1981年)から、10人を紹介する。粕谷氏は中央公論編集長を務めた人で、戦後に影響力を持った人たちを縦横に論じている。人物評とその表現は味わい深い。
◎ジャーナリスト石橋湛山
石橋湛山(1884~1973)は岸信介と自民党の総裁を争った。勝利して石橋内閣が成立したが、病を得て即座に辞職ししたため、戦後史の中では明瞭なイメージをもっていない。けれども石橋湛山全集が刊行された頃(1970)から、湛山再評価の声は次第に高まりつつある。
明治・大正・昭和の三代にわたって、「東洋経済」によって展開された言論活動の卓越した予見能力と一貫したリベラルな態度があった。学者はその体系的思考と原理原則の尊重によって、常識を超える場合があり、作家は感受性と直感にかけることで、時として世間常識を逸脱する。それはその役割からして必要な場合もあるのだ、といえよう。それに比べるとジャーナリストは、世間とともに呼吸している。呼吸する中で、批判的姿勢を貫くことが要請される。批判的でありつつ、実際的でなければならない。ある意味で学者や作家の歩みより困難な側面がある。
湛山の周辺にあった清沢洌、高橋亀吉、小汀利得、嶋中優作といった在野ジャーナリストの自由主義を再検討してゆくことは、むしろこれからの課題であろう。多様な雑誌ジャーナリズムの個性的活躍を、近代日本思想史の文脈の中で位置づけてゆくことは、日本の世論形成の中で、新聞ジャーナリズムと異なった次元の視野を開拓することになるだろう。戦後日本の政治は、吉田茂の設定した路線をほぼ歩んできた。それは貴族的自由主義に発した官僚政治であった。もし石橋湛山の内閣が何年かの寿命を維持していたら、その後の日本はかなり様相の違ったものとなっていたであろう。国際社会での日本の主張と与野党の対立と協調に、もう少し豊かなスタイルが成立したように思われる。
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***デイ・ウォッチ(18日)
◎安倍派・二階派の事務所きょう捜索 パーティー券問題で特捜部方針:朝日新聞デジタル (asahi.com) →強制捜査がついに始まる。立件は安倍派と二階派になりそうだ。焦点は立件される政治家で、高額の裏金を受けた政治家に加え、派閥の事務総長経験者ら閣僚歴のある大物にどこまで迫れるか。逮捕か在宅起訴かも関心事だ。
◎日本製鉄、USスチールを買収 2兆円の日米大型再編 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →USスチールは鉄鋼王カーネギーに源流がある名門企業で、1960年代まで鉄鋼業界で世界一だった。今は27位。買収額2兆円は日本企業による買収では最大規模。去年の最高額は5000億円台だった。日鉄は世界4位から3位になる。大きなリスクを取った決断といえるだろう。
◎封書110円、はがき85円に 来秋にも3割値上げ―日本郵便:時事ドットコム (jiji.com) 総務省、郵便制度見直しへ 封書・はがき値上げでも赤字:時事ドットコム (jiji.com) →値上げ幅は3割超とかなり大きい。それでも2026年度には再び赤字に陥るという。苦境の背景は理解できるが、審議会で徹底的に議論し、納得できる答申と情報公開を期待したい。
◎自民幹事長 政治資金規正法の改正含め透明性確保への措置 検討 | NHK | 政治資金 →自民党幹事長が政治資金規正法の改正やパーティー券の銀行振り込みなどに言及した。カネのかからない政治は本来、政治家にもプラスのはずだ。ガラス張りにして、政治活動を変えるべきだろう。人間が複数いれば、「派閥」はできる。派閥の弊害を洗い出し、透明なシステムに改革すべきだろう。
◎日銀 金融政策決定会合 金融政策の方向性など踏み込むかが焦点 | NHK | 日本銀行(日銀) →日銀総裁による「これからチャレンジングになる」という一言で、市場や世間が一気に盛り上がっている。常識的に見れば、大規模の金融緩和の修正は必至なので、当然の動き。焦点は手段とスピードだが、結果はきょうの昼過ぎにはわかる。
◎忘年会復活、居酒屋に活況 「5類」移行、予約3倍増も:時事ドットコム (jiji.com) →年末の話題。飲食業界には何より。職場のコミュニケーションが向上して企業業績の向上につながり、世の中が明るくなればなおいい。
*** 「今日の名言」
◎保科正之(初代会津藩主。1993年12月16日死去、61歳)
「会津藩たるは将軍家を守護すべき存在である。藩主が裏切るようなことがあれば、私の子孫ではない。決して従ってはいけない」 「普段は節約すべきだが、お金を必要なものに使うことにどうしてためらう必要があるのか」 「まつりごと(政治)は、個人の利害を優先して道理を曲げてはならない。政策決定の協議では、利己心による意見を主張して、他人の意見を聞き入れないようなことがあってはならない。そして腹蔵なく思うところを言い合い、理非を争って決定しなければいけない」 「家中は品行を良くすべし」 「賄賂を贈り、媚を求めてはならない」 「面々、えこひいきをしてはならない」 「士を選ぶ際、こびへつらう者や口先だけが巧みな者を採るべからず」 「賞罰の決定には家老の外、参加してはならない。この決まりは厳格にすべし」 「部下に人の善悪を口外させてはならない」 「法を犯した者は許すべからず」 「社倉(食糧備蓄)は民のためにこれを置き、永く活用すべきものである。飢饉になればすぐに取り崩して民を救うべし。これを他用してはならない」 「もし志を失い、遊楽を好み、贅沢な食事をとり、農民に迷惑を与えれば、何の面目あって土地を領しているのか。そのような者は君主に申し出て蟄居すべし」
*** きょうの教養 (戦後知識人の肖像②)
◎吉田茂の国際感覚
戦後日本が政治的指導者としてたまたま吉田茂(1878~1967)を選んだことは、幸いであったと言わなければならない。状況が複雑であるほど、判断と選択は簡明であることが望ましい。幣原喜重郎内閣の後、鳩山一郎の追放という予期せざる事件から首相の座についた吉田茂には、政党政治家としての経験は皆無であった。けれども、職業的外交官として国際的交渉の能力と経験を持っていた。
日独伊軍事同盟に身を賭して反対するという国際社会での日本の方向に確たるビジョンを持っていた。日本の軍事占領という未曾有の事態にあって、要請された資質はまさにそうした信条と能力であった。占領軍を相手に吉田茂の示した政治技術は不屈さと機敏さを兼ね備えたものであった。それは頑固と諧謔と韜晦に包まれて、多くの誤解も生んだ。選挙を通して民衆との接触の中から、自らのスタイルを形成する政党政治家とは異質の自由主義であったために、野党と世論の敵意が強かった。社会党育成論を唱え、多数を割ったときは政治工作を弄することなく下野した。議会政治の原則を守ったのである。
戦後における吉田茂の最大の決断と選択は、講和条約締結と日米安保条約体制の確立である。「アングロサクソンもしくはアメリカを敵に回すべきではない」という彼の歴史的経験からくる簡明な国際政治観の延長上にあったものであろう。この決断は戦後最大の反対と抵抗を受けた。野党、世論、知識人は、ほとんど反対に回った感がある。「戦争に巻き込まれる危険」「米国への従属体制の固定」「再軍備路線反対」の大合唱の中で、彼は判断を変えず、条約の署名は彼一人の責任を明示するものであった。彼の基本的判断は、日本の政治的安定をもたらし、軽武装国家を実現し、経済復興への自由な活力を解放した。
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***デイ・ウォッチ(19日)
◎日銀・植田和男総裁、金融緩和の出口「なお見極め」 時期言及せず – 日本経済新聞 (nikkei.com) →市場の期待は高まっていたが、日銀は動かなかった。いずれ緩和の修正に動かざるを得ないので、毎月注目を浴びるだろう。修正の影響は前例がないので誰も読めないが、これも安倍政権の経済政策・アベノミクスの大きな負の遺産。
◎安倍派と二階派の事務所を強制捜査 派閥の政治資金問題 東京地検特捜部 | NHK | 政治資金 →強制捜査のメスが入った。安倍政権は選挙最重視が大きな特徴だったが、カネはパーティーの裏金、票は反日団体で政治信条が異なる旧統一教会を頼っていた。検察に人事に介入したのは、今回のような摘発回避を狙ったためだろう。有権者は、次の選挙まで安倍政権の本質を忘れてはならない。
◎損保4社 独占禁止法違反疑い 立ち入り検査 東京海上日動 損保ジャパン 三井住友海上 あいおいニッセイ同和 | NHK | 金融庁 →かつて不払いで批判を浴びた損保業界だが、最近もカルテルやビッグモーターの不祥事が相次いでいる。政界の強制捜査がなければ、もっと大きなニュースになった。カルテルは長い業界慣行で、「文化」という声もある。どこも生き残りには悪しき文化の見直しが急務だ。
◎ENEOS 齊藤猛社長 解任 懇親会で酒に酔い女性に抱きつく 去年は当時の会長が女性に性的に不適切行為で辞任 | NHK | ニュース深掘り 東芝 あす上場廃止で最後の取り引き 経営立て直しへ | NHK | 東京証券取引所 →エネオス社長2人の大学生レベルのセクハラ。これも文化だろうか。コンプライアンスは詰まるところ「人間」の問題だ。ガバナンス優良企業の東芝は社長の暴走で転落し、ついに上場廃止へ。
◎サッカー Jリーグ「秋春制」移行を正式決定 | NHK | サッカーJリーグ →Jリーグが世界標準にあわせる。こちらは長い文化を全員の話し合いで変えた。スポーツの世界に見習いたい。
*** 「今日の名言」
◎井深大(ソニー創業者。1997年12月19日死去、89歳)
「他の人が既にやってしまったことは、やらない」 「ヒット商品は、時代に迎合しない新しい発想から生まれる」 「ソニーもホンダも叩かれて強くなった」 「ものをつくる苦労を知っている人は、失敗を人のせいにしない」 「一見、無駄のように思える研究、バカバカしいようなアイデアが創造の命だ。この無駄=不合理を解さない人間は欲しくない」 「日本初、世界初のものを創ってこそ、人より一歩先に進むことができる」 「枠の中からどうやって飛び出すかが重要。技術に感性を結びつけると、大きな飛躍ができる」 「人生で一番の幸福は、仕事と趣味が一致すること」 「中小企業の社長になったつもりで考えろ。彼らは自分が全責任を持って仕事をするから、創意工夫がある」 「この人にはこれだけしか、能力がないなどと決めつけては、能力は引き出せません」 「ものの種類であれ、つくり方であれ、売り方であれ、新しいものを考案しよう。人真似、猿真似はやめておこう、真似では勝利は得られない」 「育児くらい、崇高で素晴らしい仕事はない」 「0歳から始まる、よい習慣のくり返しだけが、人間をつくる最大条件であろう。しかも、親の意識と努力と忍耐だけが、それを可能にするのである」 「世界平和を真剣に希求するならば、これからの世代を担う幼児たちの教育にもっと重点をおき、むしろ、それに賭けるくらいの心がけが必要なのではないでしょうか」
*** きょうの教養 (戦後知識人の肖像③)
◎精神の修辞学・丸山真男
丸山真男(1914~1996)の「超国家主義の論理と心理」(「世界」昭和21年5月号)の出現は、新鮮な衝撃力において、坂口安吾の「堕落論」と対比される。敗戦によって大日本帝国は実態としては崩壊していた。けれども、虚脱した日本人は何が終わったのかについての明確な自覚がなされていなかった。丸山の一文によって目から鱗が落ちた青年学徒は極めて多い。文章の影響がこれほどの起爆力をもち得たことは稀であろう。超国家主義-天皇制国家の支配の構造を、論理と心理の次元にまで掘り下げて解析した手法は、脳外科医の手術に似た効果を発揮した。
戦後思想界への丸山の登場は、独自な姿勢と内容によって影響力は複雑な奥行きと広がりを持った。第一は「科学としての政治学」に示された挑戦的問題提起によって、戦後政治学と政治学的思惟の展開の出立者となったこと。第二は、思想史家として荻生徂徠、本居宣長に始まる近世思想、近代思想が、在来の文脈と異なる斬新な視点から照明を当てられ 、戦後思想史学の出立者ともなったこと。第三は、「ある自由主義者への手紙」に明快に表明されたように、急進的自由主義者として、共産党をも含めた連合戦線を志向したこと。「秩序よりも正義を!」を基本的態度とする政治的イデオロギーの役割を担ったこと。第四は、豊かな人文的素養と巧みなレトリック、ダイナミックなスタイルによって、新しい知識人・思想家の象徴的地位を獲得していったこと。
思想家丸山の魅力が、シャープな問題意識と方法意識の結合にあることは当然のことだが、文体の魅力を無視することができない。対話形式、手紙形式をしばしば採用していることからもわかるように、丸山の発想は日常的・状況的事象への実感的省察から始まり、相手への対話的・論争的論理へ展開していき、最後に認識と価値判断の禁欲的緊張関係を超えて、明快な男性的態度決定に到達する。こうした発想と思考の過程を明示することは、出発点において文士の実感的アプローチに近く、到達点において哲学者の価値判断に近い。精神の貴族主義と政治的ラディカリズムの結合を志向した見事な知識人像の典型として、存在しているのである。
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***デイ・ウォッチ(20日)
◎ダイハツ、品質不正で全工場停止 社長「経営陣に責任」 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →大きな不祥事だ。親会社のトヨタ自動車のプレッシャーもあったようで、トヨタの責任も大きい。不正は幅広くて長く、出荷解禁のメドは立ちにくい。ライバルのスズキも2010年代に不祥事が相次いだが、軽自動車の激しい競争も背景にありそうだ。今回はスズキに恩恵を及ぼすが、簡単に生産を増やせない。スズキもトヨタ傘下で、展開次第では3社間で統合・再編が浮上する可能性もある。
◎自民党二階派の小泉法相 派閥を離脱 | NHK | 政治資金 →さすがに指揮権発動はないだろうが、「李下に冠を正さず」で、当然の判断。野党は「ミシン目を入れただけだ」と批判、辞任を要求している。岸田首相が「派閥」と言わず、「政策集団」と言い続けているのも不自然だ。政策集団なら裏金作りはしないし、国民感情とかけ離れている。
◎「総理がぐらぐらしている」初の“天皇中国訪問”の内幕 ”極秘”の外交文書公開 | NHK政治マガジン →1992年の天皇(現上皇)訪中がいかにデリケートな案件だったかわかる。天皇は晩さん会で「両国の関係の永きにわたる歴史において、我が国が中国国民に対し多大の苦難を与えた不幸な一時期がありました。これは私の深く悲しみとするところであります」という言葉を述べた。外務省の原案とは違い、天皇自ら書いたようだ。天皇が最も中庸といえる。
◎沖縄 辺野古改良工事 県に承認命じる 国の「代執行」が可能に | NHK | 基地問題 →政権が思考停止している辺野古基地建設。裁判所も思考停止で、沖縄県との対立が続く。工事を再開しても地盤はマヨネーズ状態と言われ、難航は必至。辺野古基地に懐疑的な米国の意見も報道され始めている。再考すべき問題だ。
◎診療報酬改定 人件費 引き上げ 薬価 引き下げ 来年度予算案 | NHK | 来年度(新年度)予算 →介護人材の不足は大きな問題だ。人件費引き上げの方向は出たが、不十分だろう。外国人材の活用も含めて大きな枠組みで考える必要があるテーマだ。「負担と給付」は日本最大の国内問題。
*** 「今日の名言」
◎スコット・フイッツジェラルド(米の小説家、代表作は「グレート・ギャツビー」。1940年12月21日死去、44歳)
「たった一つの敗北を決定的な敗北と勘違いしてはいけない」 「忘れられることは、許されること」 「精神力とは物事をやり抜く力だけでなく、物事を一からやり直す能力にも示される」 「だれかのことを批判したくなったときは、世間のすべての人がおまえのように恵まれているわけではないということを、少し思い起してみなさい」 「他人の幸運ほど不快なものはないね」 「精神の暗黒の闇の中では、時刻は常に午前三時だ」 「天才とは、心の中にあるものを実行する能力である」 「何かを言いたいから書くのではない。何か言うべきことがあるから書くのだ」 「自分の中に意志をまったく感じられないときは、嘘でもいいから意志をつくることだ」 「恋をしているということは素晴らしい。多くの誉め言葉をもらえるし、自分を大した男だと思い始められる」 「我々は過去へ過去へと流される。だから、流れに逆らうボートのように前へ前へと進み続けなければいけない」 「秋が来て過ごしやすくなれば、いつだって新しい人生を始めることができるんだよ」
*** きょうの教養 (戦後知識人の肖像④)
◎大塚久雄の信仰と学問
大塚久雄(1907~1996)の学問と人格は、丸山真男とともに戦後思潮で光彩を放つ二つの星である。丸山の基礎が政治学と思想史学にあったとすれば、大塚の基礎は内村鑑三や矢内原忠雄らから受けた宗教的感化という信仰と経済史学の独特な結びつきにあった。大塚の人間学の魅力は、経済史というもっとも散文的領域を対象としながら、それを担う人間的主体を見失わず、歴史を動かす者としての人間類型を信仰との関係においてひたすら追求する態度にあった。
学問は存在と世界に関する体系的認識であり、信仰はその究極的根拠への問いである。人間を生かし歴史を動かすものとしての思想は、自覚的には学問を通し、信仰を介して現れる。丸山や大塚の思想が強固で持続的影響力を持ち続けるのはそのためである。大塚は状況的発言も学問的問題提起としてなされ続けた。信仰と学問への真摯な態度が、一種の信仰告白、思想表明として深い思想的感化をもった。
もう一つ留意すべきことは、昭和十年代の思想的主役が、哲学・史学・文学という領域から出たのに対し、丸山と大塚の出現によって、社会科学が思想的主役にとって代わったことである。社会学、社会心理学、法社会学といった新しい学問が続々と登場し、マルクス主義に基づく社会科学が支配的風潮となった流れの中で、有無を言わさぬ中核として、戦後思想の新しさを克服したものは丸山政治学、大塚史学の存在であったといってよい。
丸山と大塚に共通した「近代的市民意識の成熟」という日本人への倫理的要請は極めて高度であった。戦後日本の精神風土は、革新陣営も、現実に経済成長を担った経済人たちも、その要請にこたえる内実を持っていなかった。そのことが2人の思想家の、予見者としての悲劇的色調を強める。けれども、こうした精神の出現と存在自体に、我々は未来への道標を見ることが可能なのである。
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***デイ・ウォッチ(21日)
◎松野氏 高木氏 萩生田氏らに任意聴取要請 政治資金 東京地検 | NHK | 政治資金 自民 中堅議員有志 “信頼回復に向け連携” | NHK | 政治資金 →政治家レベルの捜査が本格化している。1月の通常国会が一応のメドなので、正月をはさんでスピーディーに進みそうだ。自民党若手の感度が鈍いといわれたが、動きが出てきた。リクルート事件の時は自民党を割った。どこまで大胆な改革をできるか。
◎ダイハツ 国土交通省が本社に立ち入り検査 大阪 池田 | NHK | 自動車 →国交省は今後、調査をして処分を決め、再発防止策を確認する。通常なら数カ月はかかるが、全車出荷停止をしているので、影響は世界規模で甚大だ。消費者、下請け、販売店などからの悲鳴が高まる見通しで、先行きは読めない。親会社で責任も大きいトヨタ自動車の判断が注目される。
◎“学術会議 国から独立の組織が望ましい”有識者懇談 中間報告 | NHK | 日本学術会議 →自律性を確保するには独立した方がいいが、問題はカネ。中間報告では政府が支援するとしているが、政権によっては「邪魔だ」と考えれば、カネを絞るだろう。学者は金集めが苦手なので、先細りになる。そもそも学術会議とは何か、必要性はどうかという議論になりそうだ。
◎再び日本企業の賠償確定 元徴用訴訟で韓国最高裁、18年に続き判決―政府財団から支給方針:時事ドットコム (jiji.com) →最高裁判決は変えられないが、韓国の政治財団が相当額を支給する。日韓の政治の知恵だが、同様の訴訟が少なくとも60件あり、韓国内の世論が収まるかどうか。
*** 「今日の名言」
◎上皇陛下(平成の天皇。1933年12月23日生まれ、90歳)
「国民に親しまれる皇室ということは、私は言った記憶がないんですけれども、ただ国民とともに歩む皇室でなければならないと。国民の苦労は共に味わうということを昔の天皇はしていらしたわけです。そういう意味で、国民とともに歩むという意味で私は使ったと思います」(1982年) 「(還暦に際し、最も印象に残ることは?と尋ねられ)私自身のことに関しましては、結婚が挙げられます。温かみのある日々の生活により、幸せを得たばかりでなく、結婚を通して自分を高めたように感じています」(1993年) 「天皇という立場にあることは、孤独とも思えるものですが、私は結婚により、私が大切にしたいと思うものをともに大切に思ってくれる伴侶を得ました。皇后が常に私の立場を尊重しつつ寄り添ってくれたことに安らぎを覚え、これまで天皇の役割を果たそうと努力できたことを幸せだったと思っています」(2013年) 「即位から30年、これまでの天皇としての務めを、国民への深い信頼と敬愛をもって行い得たことは、幸せなことでした。象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に、心から感謝します。明日から始まる新しい令和の時代が平和で実り多くあることを、皇后と共に心から願い、ここに我が国と世界の人々の安寧と幸せを祈ります」(2019年)
*** きょうの教養 (戦後知識人の肖像⑤)
◎今西錦司--野生の思考
今西錦司(1902~1992)の存在は、戦後思想の流れの中で、当初は極めて目立たない地味なものであった。けれどもその学風の独創性において、また人脈と影響力の末広がり的な発展において、他の追随を許さないものがある。自然を愛し、日本探検に熱中した今西は、青春の体験をそのまま学問の方法に高めたところに最初の独自性があった。実験室での死体解剖ではなく、野外での生物の生態をあるがままの形で観察すること、それを自然科学の方法とした時、独自の学問の展開は約束されたと言えるだろう。
在来の生物学における自然淘汰は、適者生存というヨーロッパ的観念であった。今西の提出した「棲み分け理論」は、生物の共生を強調する点で世界のイメージの根本的転換を要請する。独断的推測をたくましくすれば 、19世紀の帝国主義イデオロギーがダーウィニズムの世俗的解釈と無縁でなかったとするなら、今西理論はマルクス主義とは全く異なった視点から、妥協的産物でない本来的な人類の平和共存の理論的基礎たりうるはずである。
人類学はその発生過程と性格において、基本的に歴史学と対立する。歴史学的思惟が時間の学問であるとすれば、人類学的思惟は空間の学問である。歴史学が文献学であるとすれば、人類学は文献以前および以後であるということもできよう。歴史学が文献による実証主義へ衰弱するとき、あるいは進歩と発展の史観が崩れる時、人類学は逆に正気を帯び、生産性を高める。哲学・社会科学が書斎の思考に疲れ、社会的実践の中で挫折する時、あるがままの生態観察と野外思考を方法とする人類学は、一種の思考の活性化として作用する。そのスタイルの原型を確立した存在として、今西はそびえているのである。