SDGs不平等をなくそう(2023年3月20~24日)
*** きょうの教養(SDGs不平等①不平等とは)
今週はSDGsの「不平等」を取り上げる。10番目の目標で、「人や国の不平等をなくそう」と訴える。まず「不平等」について考えてみたい。
不平等に近い言葉に「格差」と「差別」がある。格差は客観的な違いを示す中立的な言葉と言える。「差別」は偏見を背景に特定の人を不当に区別することで、否定的なニュアンスがある。差別は国際条約で禁止されている。明確に禁止されていないという意味で、不平等は格差に近い。
国同士では先進国と途上国の間に不平等がある。国内でも年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、貧富などの理由で生まれる不平等がある。どちらもなくそうというのがSDGsの目標だ。
不平等をなくすために重要な言葉が「ソーシャルインクルージョン」だ。日本語では「社会的包摂」といい、誰をも包み込み、追い出したり排除したりしない考え方だ。どんな人も自分の能力を発揮し、活躍する必要がある。そのためには不平等があってはうまくいかない。
不平等をなくす利点が及ぶのは、差別されていたり、困窮していたりする人たちだけではない。社会全体が豊かで健康で文化的な生活につながるという視点が必要だ。
*** きょうの教養(SDGs不平等②格差の理由)
SDGs目標「人や国の不平等をなくそう」の2回目は、世界で格差が広がる理由について考える。
世界全体の経済は成長しているが、主に恩恵を受けているのは一部の人たちだ。10億ドル以上の資産を持つ人は10年で倍増し、上位2000人の資産が最貧困層46億人の資産を上回っていると言われる。一部の豊かな人はより豊かに、多くの貧しい人はより貧しくなるのが世界の現状だ。
途上国では劣悪な労働環境で働いている人も多い。先進国に輸出されるバナナやコーヒー豆など産地は貧しい地域に多く、労働者の権利保護も不十分だ。こうした人たちに適切な賃金を支払うようにする「フェアトレード」という取り組みが注目されている。先進国はただ安い商品を輸入するのではなく、公正な取引に関心を持ち始めている。
平等には機会平等と結果平等の二つがある。前者は誰でも同じ機会を与え、後者は同じ結果を与える意味だが、政府の政策では前者を求めることが多い。全員に同じ結果を保証するのは困難で、結果が同じなら誰も努力せず活力がなくなるという理由だ。ただ、不平等はそれ自体好ましくなく、拡大すれば社会が不安定になる。所得の再分配を強化し、結果平等を求める政策も併用される。国際間での経済援助が代表例だ。
*** きょうの教養(SDGs不平等③不平等の種類)
「人や国の不平等をなくそう」の3回目は、どんな不平等があるのか考える。無意識に差別していることもあり、何が不平等かを具体的に深掘りすることが重要だ。
まず男女の不平等がある。「ジェンダーの平等」は目標5でも掲げられているが、日本では男女の賃金格差が先進国では最も大きい。世界的に見ると、教育を受けられなかったり、子どもでも結婚させられたりという地域がまだある。先進国でも「ガラスの天井」という言葉があるように社会進出に関する男女差がなお大きい。
人種や民族への偏見もある。人種差別撤廃条約が1965年に採択されたが、肌の色や言葉、習慣の違いによる差別は残る。マイノリティーと呼ばれる社会的少数派への迫害もある。南アフリカはかつて、アパルトヘイトと呼ばれる人種隔離政策を取っており、1991年に撤廃したが、差別は残っている。黒人の失業率は白人よりはるかに高い。
移民への差別も似ている。欧州の先進国では「移民が失業増加や治安悪化の一因」と感じる人も多く、移民政策をめぐって社会の分断も起きている。先進国の経済低迷が中間層をやせ細らせ、分断に拍車をかけている面も見逃せない。
障害者への差別や血筋による差別もある。不平等は深刻な人権問題であり、各人の意識にまで踏み込んだ対応が必要だ。
*** きょうの教養(不平等④日本の格差)
「人や国の不平等をなくそう」の4回目は、日本国内の格差について考える。世界第3位の経済大国だが、相対的貧困率の高さが問題になっている。
相対的貧困率を上げる一つの要因が、少子高齢化だ。高齢者の収入は、年金に依存し、現役時代より少ない。医療の発達で長寿化が進んでいるが、かさむ医療費への不安も小さくない。子どもが少なくなり、支える人が減っている。個人的にも社会的にも日本が抱える最大級の課題だ。
20年ほど前から関心を集めてきた格差が、非正規雇用の低賃金だ。正規雇用は定年まで働けるが、非正規は派遣や契約社員、アルバイトなどで、雇用が不安定で、賃金が低い。好んで非正規を選ぶ人もいるが、企業は人件費削減で非正規を増やしており、望まない非正規も多い。政府は「同一労働同一賃金の原則」で格差解消に動いている。しかし、すぐには解消されず、問題は将来に及ぶ。
親の所得差による教育格差も拡大している。所得の低い家庭は、塾や習い事など学校外の教育に費用をかけられず、スポーツや文化など体験学習も限られる。親の貧困が将来に連鎖することになる。
*** きょうの教養(不平等⑤どうすべきか)
「人や国の不平等をなくそう」の最終回は、目標達成のためにどうしたらいいかを考える。SDGsのどの目標もそうだが、まず現状を知ることから始めなければならない。不平等は人の意識にもかかわる問題でもあり、各人が社会の多様性を尊重する必要がある。そのうえで、政府や国際機関の役割が問われる。
国際的な支援では、先進国が政府開発援助(ODA)や投資で途上国のインフラ整備を進めている。飢餓や貧困に苦しむ国は146あるとされる。生活や教育関連の施設、道路などのインフラ、就労支援など産業自立策などが求められる。途上国の貿易を促す取り組みや債務を軽減する仕組みも大切だ。ハードとソフト両面の支援が重要になる。新型コロナウイルスではワクチン接種の75%が10か国に集中していると報告された。途上国は取り残されたのだ。
支援の主体となる先進国では「支援疲れ」という言葉も聞かれる。先進国経済が低迷し、国際紛争があれば、支援の効果も限られる。移民が増えているが、自らの職を奪われるとして排斥する動きも見られる。しかし、移民が経済発展に貢献する例があることも事実だ。粘り強い活動が人類の未来を開くと考えられるかどうか。地球に住む一人一人の意識や覚悟も問われている。