未来の年表(2023年5月15~19日)

2024.01.06教養講座

*** きょうの教養 (未来年表①2017~20年)

未来の日本社会を予測した「未来の年表」(河合雅司著、2017年刊)を紹介する。人口減少で何が起きるか数字の根拠を示してまとめている。少子化は刊行時より進んでいるので、現実はもっと厳しい。今週は「人口減少カレンダー」を特集する。数字は極力少なくし定性的に紹介するが、当該年に実現するという訳ではなく、大きな方向性を示している。5月29日からの週で「処方箋」を掲載する。

2017年「おばあちゃん大国」に変化=日本は他国に比べて高齢化の早さで群を抜いている。65歳以上を高齢者というが、今後は高齢者の高齢化が進む。その主役は女性で、夫に先立たれて一人暮らしが増える。経済的に余裕があればいいが、窮乏化し、孤独死も増える。

2018年「国立大学が倒産の危機へ」=18歳人口は急減し、40%超の私立大学が定員割れをする。将来、私立大学が半減してもおかしくない。建学の精神も色あせる。深刻なのは地方大学だ。国立大学も例外ではない。就職したい地元有力企業が少なく、地域の展望も描けない。

2019年「IT技術者が不足し始め、技術大国の地位が揺らぐ」=技術者の不足と高齢化が進む。原子力技術者の不足は廃炉への不安になる。IT人材が手薄になり、成長の足かせとなる。高度成長期に作られた社会インフラが老朽化する。特に水道が心配で、値上げは必至だ。税収減で自治体の職員不足も起きる。

2020年「女性の2人に1人が50歳以上になる」=少子化対策が功を奏して出生率が倍増しても母親となる女性が減っているので出生数は増えない。1組の夫婦が5~6人の子どもを持つ多産社会に戻るなら別だが、成熟国家の日本では難しい(2020年にこの予測は現実になった)。

*** きょうの教養 (未来年表②2021~24年)

2021年「介護離職が大量発生する」=50代になるころから親の介護に直面する人は増えるが、団塊ジュニアの先頭が50代になる。介護保険の利用者が伸び、制度の見直しを進めているものの、介護スタッフの離職率の高さという問題もある。家族による介護が増え、介護離職が増えるだろう。介護休業がもっと利用され、企業は50歳代の管理職不足になる。

2022年「ひとり暮らし社会が本格化する」=団塊世帯の先頭である1947年生まれが75歳になる。夫がなくなりひとり暮らしになる女性が増加する「ひとり暮らし社会元年」だ。理由は、子どもと同居しない、未婚者の増加、離婚の増加だ。家族の消滅である。会社人間だった男性のひとり暮らしは厄介だ。孤立が懸念される。

2023年「企業の人件費がピークを迎え、経営を苦しめる」=労働力人口は減り続けるが、バブル世代、団塊ジュニア世代が、人件費が最も高い50歳代になる。ポストは少なく、処遇やモチベーション維持が課題になる。10年後には企業の退職金負担が重くなる。

2024年「3人に1人が65歳以上の超高齢者大国へ」=団塊世代全員が75歳以上になる。高齢化は地方が先行したが、大都市部で急速に進む。政府は医療・介護を地域で完結させるため地域包括ケアシステム構想を描いているが、自宅で老老介護は多くなる。晩婚・晩産で育児と介護をする女性が増え、離職の可能性も増える。未婚女性も同様だ。

*** きょうの教養 (未来年表③2025~30年)

2025年「ついに東京都も人口減少へ」=未来年表刊行後、ピーク予想は2030年に先送りされたが、いずれ減少することは避けられない。東京都はビジネス中心の街づくりをしてきたので、介護・医療基盤が弱い。地方から東京に高齢の親を呼び寄せるケースも多く、不安に拍車をかける。

2026年「認知症患者が700万人規模に」=認知症は高齢者の5人に1人が発症する国民病になっている。根治できる薬物療法はなく、老老介護ならぬ「認認介護」も登場している。介護する側は疲弊しやすい。十分な医療体制を確保できるか、ベッド数は十分か、質はどうか、という問題がある。

2027年「輸血用血液が不足する」=献血している人の76%が50歳未満、使用する患者の85%が50歳以上だ。けがに使われるのはわずか3.5%で、約80%は病気に使われ、半分はがん患者だ。血小板製剤は採血後4日しか使えず、備蓄できない。献血者が減れば、病院に行っても助からない事態になりかねない。

2030年「百貨店も銀行も老人ホームも地方から消える」=存在確率という数字がある。どの程度の人口規模なら成立するかという数字で、80%なら存続できそうとされる。人口規模で銀行なら9500人、有料老人ホームなら12.5万人、ハンバーガー店なら5.25万人。人口がこの水準を下回れば、地域から消えかねない。

*** きょうの教養 (未来年表④2033~40年)

2033年「全国の住宅の3戸に1戸が空き家になる」=単身高齢者が施設に入って管理できない住宅が増えている。6割のマンションで管理組合が成り立たない。一戸建ては倒壊の危険があり、犯罪を増やす。新築志向が一因で、政府も景気浮揚を狙っているので、空き家対策は置き去りだ。

2035年「未婚大国が誕生する」=男性は3人に1人、女性は5人に1人が生涯未婚となる。1970年には男性1.7%、女性3.3%に過ぎなかった。2011年の調査では、未婚が多いのは男性で年収300万円未満、女性で600万円以上。日本では婚外子が少なく、結婚と出産を一体で考える人が多いので、少子化は進む。

2039年「深刻な火葬場不足に陥る」=2016年の年間死亡者は130万人で過去最多だが、39年ころには160万人レベルの多死社会になり、火葬場がひっ迫する。特に首都圏で深刻だが、住民の反対や死者はいずれ減少するという見込みから、火葬場建設は進まない。無縁遺骨や無縁墓の増加、納骨堂や霊園の不足も予想される。

2040年「自治体の半数が消滅の危機に」=戦後は一貫して少子化傾向だったが、平均寿命の伸びが覆い隠してきた。しかし、消滅する自治体も出る。地方にとって若い女性が都会に流出するのは大きな痛手だが、東京都でも多摩地区や都心から遠い23区でも人口が減る。医療や介護の危機が深まる。退職後に東京から地方に移住するのも有力な選択肢になる。

*** きょうの教養 (未来年表⑤2042~65年)

2042年「高齢者人口が約4000万人とピークに」=団塊ジュニア世代がすべて高齢者になり、最大ピンチの年だ。高齢者向けサービスの絶対量もこの年にあわせないと間に合わない。非正規労働者も多く、貧しい高齢者が増えていく。年金保険料の納付も少ないので低年金になる。親に依存していた人は、親が亡くなり破たんしかねない。

2045年「東京都民の3人に1人が高齢者に」=高齢者の増加は地方から始まったが、都市部では遅れて大量に増える。自治体は財源問題を解決するため、税金と社会保険料を引き上げる一方、行政サービスをカットする。地方では高齢者が増えないので既存の施設を活用すればいいが、東京では負担ばかりが増える。住みやすい地方に移動する高齢者が増えそうだ。

2050年「世界的な食糧争奪戦に巻き込まれる」=高齢化で農業人口が減っていく。耕作放棄地は増える。しかし世界では人口が増えて2050年には97.3億人と予測され、食糧争奪戦となる。海外で水不足になれば食糧の輸出量が減り、日本の輸入は減る。食糧確保が困難になれば、国の安全保障問題と直結する。

2065年~「外国人が無人の国土を占拠する」=現在の居住地域の約20%が誰も住まない土地になる。離島の10%が無人化する可能性があり、スカスカの列島になる。若い力が必要な自衛隊、警察、消防などで人集めに苦労する。国防や治安、安全安心に大きな影響を与える。

(これまでは悲観的な数字や動きを多く紹介してきた。再来週5月29日から「処方箋」を特集する)