2024年1月8~14日(教養講座:枕草子)
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あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
HPに週替り教養講座のアーカイブをアップしました。昨年1月からすべて収録したので、ご活用ください→ 教養講座 – 長谷川キャリア文章塾 (hasegawa-cwa.com)
***デイ・ウォッチ(12月29日~1月7日)
◎石川県能登地方で震度7の地震 新潟県でも震度6弱 M7.6 | NHK | 令和6年能登半島地震 石川県 能登半島地震1週間 128人死亡確認 被害の全容つかめず | NHK | 令和6年能登半島地震 →帰省客も多かった元日の午後を襲った。まだ被害の全貌がわからず、孤立集落も多い。必死の救援作業が続くが、山間部の活動に教訓も残しそうだ。最大震度は志賀原発のある志賀町。原発に大きな異常はないようだが、細かな状況やデータの分析はこれから。地震国の原発が再びクローズアップされる。
◎【2日詳細】羽田空港 日本航空JALの機体が炎上 海上保安庁の機体と衝突 海保機の5人死亡 | NHK | 羽田空港事故 羽田空港のC滑走路 8日午前0時再開へ 国土交通省 | NHK | 羽田空港事故 →能登半島の地震で新潟へ救援に向かう海保機が事故にあった。日航機の全員脱出は「奇跡」と世界でも称賛される。原因が焦点だが、事故調は責任追及に重点を置くので調査が遅れがちという指摘もある。再発防止策の速やかな確定が焦点だ。
◎安倍派池田議員ら逮捕 4800万円虚偽記載か、政治資金規正法違反容疑―パーティー収入裏金事件・東京地検:時事ドットコム (jiji.com) →予想された議員の摘発。証拠隠滅の動きがあり、逮捕したという。自民党は除名処分とし、辞職勧告はしないようだ。閣僚クラスの事務総長の逮捕はないという見方も流れている。ここまで騒いでお咎めなしとはいかないだろうから、在宅起訴になるのだろうか。
◎写真家・篠山紀信さん死去、83歳 「週刊朝日」や「激写」シリーズ:朝日新聞デジタル (asahi.com) →「激写」の言葉で知られた写真家。撮影はいつも短時間だった。女優でタレントの宮崎美子は、熊本大学時代に週刊朝日の表紙モデルに応募して合格し、撮影時間15分でデビューした。映画監督のビートたけしも短時間撮影で有名。凝るだけが巨匠ではないようだ。
◎坂田利夫さん死去 82歳 「アホの坂田」の愛称で親しまれる 間寛平さんに見守られながら老衰で | NHK | 訃報 →「アホの坂田」で一世を風靡した。凡人ではあそこまではできない。「偉人コメディアン」の伝記を読みたい気がする。プーチンとネタニヤフは、いらぬメンツを捨て、己を無にする「アホの坂田」の精神に学ぶべきだろう。
*** 「今日の名言」
◎篠山紀信(写真家。1月4日死去、83歳)
「僕にとって美しい女性とは、今、僕のカメラの前にいる人です」 「女性が生まれたままの姿で出てきてくれたら、こんなおいしい素材はない。ヌードって、写真家にとって表現の自由度が高い」 「僕の原動力は、時代の新しいものを見たいという欲望なんです。僕の写真は、時代の映し鏡」 「新しいもの、未知のものに出会った瞬間の驚きや怖さに対して、正直であることが大事です」 「思いどおりにならないことがあるから、表現することは面白い。障壁や制約こそ、新しいものを生み出すエネルギーになっていますね」 「モノを作るってね、いつの時代も大変なんです。だからいい時代はないと思っていた方がいいです」 「写真はハプニングが起きたときに面白さが出ます」 「僕はどう撮ろうかとフッと考えるときは真剣ですけど、あとはもう世間話とか、冗談を言ってみたり、和んだりしてもらって、それで、あっという間に終わっちゃったねという感じが写真の撮り方として一番理想なんです」 「いいものを見たり、おいしい物を食べたり、いい女と付き合ったり、とにかくいいものに触れること。いい時間を過ごすことが自分を変えていきます。そうすると、いろんなものを見たときの感じ方が違ってきます。ハッと感じたときに、グッと寄ってパチパチ撮るのです。これ、秘伝ですよ」
*** きょうの教養 (枕草子①)
新年第一弾の教養講座は、ご存知、清少納言の「枕草子」で始める。学生時代を思い出して、原文と現代語訳で味わって欲しい。今風にいえば「私のすきなもの、きらいなもの」というエッセイだ。参考文献は、角川書店編「枕草子」で、現代語訳は一部短縮している。NHK大河ドラマ「光る君へ」が始まったが、主人公の紫式部は清少納言と同時代の人で、清少納言を「偉そうにしている」と嫌っていたという。
◎第一段=王朝の四季絵巻をひもとけば
【原文】春は曙。やうやう白くなりゆく、山際少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。夏は、夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛び違いたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くも、をかし。雨など降るも、をかし。
秋は、夕暮れ。夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、烏の寝所へ行くとて、三つ四つ二つなど、飛び急ぐさへ、あはれなり。まいて、雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音など、はた、言うべきにあらず。
冬は、早朝(つとめて)。雪の降りたるは、言うべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでも、いと寒きに、火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし。昼になりて、ゆるくゆるびもていけば、炭櫃(すびつ)・火桶の火も灰がちになりて、わろし。
【現代語訳】春は夜が明ける時。あたりが白んで山の上が明るくなって紫の雲が細くたなびいている。夏は夜。月が出ていればもちろん、闇夜でも蛍がいっぱい飛び交っている。一つ二つほのかに光っていき、雨の降るのもいい。
秋は夕暮れ。夕日が山の稜線に沈む頃、カラスがねぐらに帰ろうと急ぎ心にしみる。雁で列を連ね、小さく見えるのはなかなかに面白い。日が落ち風の音、虫の音などが奏でるのは言葉につくせない。
冬は早朝。雪が降り積もっているのはもちろん、霜が降りていてもそうでなくても、張りつめたように寒い朝、火を起こして炭火を運んで回るのもいかにも冬の早朝らしい。昼になって寒さが緩むと、炭火も白く灰をかぶって間の抜けた感じだ。
【解説】様々な対比が特徴だ。季節、聴覚、視覚、皮膚感覚の対比があり、光と色の変化で貫かれている。「をかし」は、平安時代の文学的・美的理念。「明朗で知性的な感覚美」。室町時代になると、滑稽美を帯びてくる。「あはれ」は「しみじみとしたおもむき」、「わろし」は「よくない」。
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***デイ・ウォッチ(8日)
◎石川県 能登半島地震1週間 168人死亡確認 被害の全容つかめず | NHK | 令和6年能登半島地震 →死者が1日で40人も増えたが、まだ増えそうだ。これからは災害関連死が多くなる。被害の全容がわかるのにはまだかなりかかりそうだ。雪や寒さが厳しくなり、予想以上に長期化する大災害だ。
◎宮崎駿監督「君たちはどう生きるか」 米ゴールデングローブ賞のアニメ映画賞に選ばれる 日本作品で初の受賞 | NHK | アニメ →この賞は外国人記者の団体が選ぶが、外国人にも通用したようだ。メッセージはいかようにも解釈できる不思議な映画。私は「センソウなんかしている場合ですか?」と思ったが、それぞれの記者はどう感じたか。
◎中国 “海外コンサル会社の責任者摘発 英に協力しスパイ活動” | NHK | 中国 →どこの会社の誰で、何をやったのか、皆目わからない。「国家の安全」を理由にすれば、なんでも拘束してしまう習近平政権。摘発が海外にも広がれば、恐ろしい。
◎東京 文京区 目白台 旧田中角栄邸から出火し1棟が全焼 雑木林も焼ける | NHK | 東京都 →「目白の闇将軍」「目白御殿」とも呼ばれた歴史の舞台。コイのいる池を背景にした自宅を覚えている人も多いだろう。長女で元外相の真紀子さんが線香をたいたというが、全焼とはあまりにはかない。
◎「ダウンタウン」松本人志さん 芸能活動休止を発表 吉本興業 女性の証言の週刊誌掲載を受けて | NHK →週刊文春を読む限り、細部が具体的で、おおむね真実だと感じた。芸能活動を休止し、裁判に注力するという。真相は裁判で争えばいいが、大きな権力をたてに隠ぺいを図ろうとしたジャニー喜多川に重なる感がある。報道が事実なら、関係者と和解して早く謝罪した方がいい。
*** 「今日の名言」
◎中村メイコ(女優。昨年12月31日死去、7日公表。89歳)
「夫婦でいちばん大切なことは、二人が同じ方向を見ているかどうかね。人生の価値観が同じところにあることね」 「どんな人でも、思い出が詰まったものを持っているはずだ。しかし、やっぱりお別れ時を受け入れて、捨てていったほうがいい。そうしないと、前には進めないのだから」 「ため込んだものの処分は、できれば60代から始めた方がいい。少なくとも70代にはとりかからないと、後に残された人たちが苦労する」 「女優が舞台を降りるように、そこで人生という芝居が終わる。その先のことは知らないし、知りようもない。そんな難しいことは考えず、最後のその瞬間まで楽しく生きたい」 「老いから目をそむけない。お化粧を薄くして、ファンデーションを塗らない、白髪を染めない。徐々にご主人に慣れさせるんです」 「忘れる能力に感謝しよう。出かける時に二階の自分の部屋から玄関まで下りて、忘れ物!と戻って…昇って、降りて…物忘れこそ、いい運動!」
*** きょうの教養 (枕草子②)
◎第七十二段=ありがたきもの(めったにないもの)
【原文】ありがたきもの しゅうとにほめられる婿。また、しゅうとめに思われる嫁の君。毛のよく抜ける白金の毛抜き。主そしらぬ従者。
つゆの癖なき。容貌・心・ありさま優れ、世に経るほど、いささかの疵(きず)なき。同じところに住む人の、かたみに恥ぢかし、いささかのひまなく用意したりと思うが、ついに見えぬこそ、かたけれ。
物語・集など書き写すに、本に墨つけぬ。よき草子などは、いみじう心して書けど、必ずこそ汚なげになるめれ。男・女をば言はじ、女どちも、契り深くて語らふ人の、末まで仲よきこと、かたし。
【現代語訳】めったにないもの。しゅうとにほめられる婿。しゅうとめにほめられる嫁。毛がよく抜ける銀の毛抜き。主人の悪口を言わない使用人。
全然欠点のない人。顔立ち、心、振る舞いも優れ、人付き合いをしてきて非難を受けない人。同じ仕事場で働いている人で、互いに礼を尽くし、気を遣いあっている人が、最後まで本当のところを見せないままというというのもめったにない。
物語や和歌集などを書き写す時、元の本に墨をつけないこと。上等な本はとても気をつけて写すのだけれど、必ずと言っていいほど汚してしまうようだ。男と女とはいうまい。女同士でも、関係が深くて親しくしている人で、最後まで仲がよいことはめったにない。
【解説】古典の面白さはいろいろあるが、人間観察もその一つ。この段の清少納言は皮肉もきいている。しゅうとめにほめられる嫁、主人の文句を言わない使用人、最後まで仲がいい女性同士…。今もあまり変わらないだろう。「ありがたし=有り難し」は、あることが難しいという意味から、「めったにない」となる。「ありがとう」という感謝の意味に使われるのは江戸時代からという。
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***デイ・ウォッチ(9日)
◎株価 値上がり バブル期以来33年10か月ぶりの高値に | NHK | きょうの株価 →新年から暗いニュースが目立ったが、株価は上昇している。米国の株高に加え、春闘での賃上げとデフレ脱却への期待が高まっている。日銀の金融緩和も転換点になっており、「金利のある経済」が復活する方向だ。
◎能登半島地震【被害状況 9日】石川県で202人死亡 安否不明102人(14時) | NHK | 令和6年能登半島地震 新潟 長岡市で震度5弱の地震(17:59) | NHK | 令和6年能登半島地震 →日本海側は本格的な冬に向かっているが、道路の損壊がひどく、支援は遅れ気味。新潟では大きな余震も発生した。過酷な避難生活のニュースを見ていてつらくなる。
◎ヤマト運輸 約2万5000人との契約終了 配達員らが抗議活動 | NHK →ダイレクトメールなどの配達業務を日本郵便に任せるためという。25年も働いた人がいて、個人事業者なので団体交渉はしないという。詳しい事情はわからないが、冷たくないだろうか。
◎ソニーとホンダ マイクロソフトと生成AIシステム開発 車載へ | NHK | EV(電気自動車) →クルマがますますITへと進化している。戦後ベンチャーのホンダ、ソニー、マイクロソフトの組み合わせも興味深い。どこまでビジネス化できるかが焦点になっている。
◎八代亜紀さん死去、代表曲「舟唄」「雨の慕情」 昨年9月に病気公表:朝日新聞デジタル (asahi.com) →昨年秋に膠原病の一種で年内の活動を休止していたというが、驚きの訃報。昭和を代表する大歌手で、日本人の心情に刺さり、記憶に残る歌が多かった。画家としての活動や刑務所への慰問、地元への社会貢献でも知られ、愛された。まだ若すぎる。
*** 「今日の名言」
◎大隈重信(首相、早稲田大学創設者。1922年1月10日死去、83歳)
「諸君は必ず失敗する。成功があるかもしれませぬけれども、成功より失敗が多い。失敗に落胆しなさるな」 「大衆を侮るな」 「人間が生きるのは、社会の利益のために存在するということだ。ただ生きているのではつまらない」 「怒るな。愚痴をこぼすな。過去を顧みるな。望を将来に置け。人のために善をなせ」 「大隈重信5訓。1.物事を楽観的に見よ。2.怒るな。冷静に物を見よ。3.むさぼるな。4.愚痴をこぼすな。5.世の中の為に働け」 「道が窮まったかのようで他に道があるのは世の常である。時のある限り、人のある限り、道が窮まるという理由はないのである」 「人間の不変の志は失意のときに真理となり、人間の友情や愛情は失意の時に深まるものである」 「人間は希望によって生活している。希望そのものは人間の命である」 「(外交交渉反対派の爆弾テロに遭って)我が輩は、爆弾くらいで青くなるような腰抜けじゃない。屁とも思っていない」 「政治は、学問や科学ではない。術である。人の心を知るという術なのです」 「政治には側面がある。裏面がある。歴史はよほど浅薄なものだ」 「男性だけが活躍する社会は国力の半分を無駄にしている」
*** きょうの教養 (枕草子③)
◎第九十二段=かたはらいたきもの(はらはらして困るもの)
【原文】かたはらいたきもの。客人などにあひてもの言うに、奥の方にうちとけごとなど言ふを、えは制せで聞く心地。思ふ人のいたく酔ひて、同じことしてる。聞きいたりけるを知らで、人の言いたる。それは、なにばかりならねど、使ふ人などだに、いとかたはらいたし。旅立ちたるところにて、下衆どもの戯れいたる。
にくげなるちごを、おのが心地のかなしきままに、うつくしみかなしがり、これが声のままに、言いたいことなど語りたる。才ある人の前にて、才なき人の、ものおぼえ顔に人の名などを言いたる。ことによしともおぼえぬ我が歌を人に語りて、人の褒めなどしたる由言うも、かたはらいたし。
【現代語訳】はらはらして困るもの。客に会って話している時、奥の部屋で内輪話をするのを止めるに止められないで聞いている気分。好きな男がひどく酔っ払って、同じことを繰り返ししゃべる。当人が聞いているのを知らず、その人のうわさ話をした時。その人が大した人でなくても、使用人などでさえ、とても具合が悪い。ちょっと泊まった先で、身分の低い連中がふざけあっていること。
憎らしい顔をした赤ん坊を、親だけは可愛いものだから、いとしがりかわいがり、赤ん坊の声色で、言ったことを口真似すること。教養のある人の前で、無教養な人間が、物知り顔で人の名前などを挙げること。ことにうまいとも思えない自作の和歌を他人に披露して、ほめられたことなんかを自慢するのも聞いて気恥ずかしい。
【解説】「かたはらいたし」は、そばにいて、こちらまで気恥ずかしくて何とかしたいけど、口出しできず、はらはらしている様子。現代と通じる例も少なくない。人間の感情は当時も今もあまり変わっていない。「下衆ども」は、現代語訳で「身分の低い連中」だが、今はもう言わない。明治維新で四民平等になったためだろう。「下衆の勘繰り」という言葉は残っているが。
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***デイ・ウォッチ(10日)
◎能登 地震 孤立状態3100人余り 停電や断水続く 輪島市 珠洲市 能登町「できるだけ早くなんとかして」 | NHK | 令和6年能登半島地震 →北陸は全国で最も自民党が強い保守的な地域で、行政への批判は出にくいが、さすがに「早く救援して欲しい」という声が強まっている。行政も懸命にやっているはずだが、もどかしい。小野寺元防衛相は、「航空戦力が重要になるが、事故調査でオスプレイやヘリコプターを十分に使えない現状がある」とテレビ番組で発言していた。
◎原子力災害対策指針 地震受け “見直し必要か検討”規制委員長 | NHK | 各地の原発 →志賀原発への影響分析も動き出し、指針改定も検討する。屋内避難を原則にしているが、家屋倒壊で避難できない事態がある。規制委員長は、再稼働はあってもかなり先になるという見通しを示している。政府は原発再稼働にかじを切ったが、影響は避けられない。
◎米軍普天間基地の移設先 名護市辺野古沖 大浦湾側での代執行に伴う工事 着手 | NHK | 基地問題 →政府は辺野古工事に着手した。工事完成まで9年以上、普天間基地移行完了が12年後という。工事費はいくらになるかわからない。安全保障環境もかなり変わるだろう。いかにも政治の知恵がない。
◎自民 「政治刷新本部」設置決定 首相“最優先課題で取り組む” | NHK | 政治資金 →自民党は過去を否定するような対策を迫られているが、どこまでできるだろうか。これまでの体質では望み薄。派閥解消論者で無派閥の菅前首相らがどこまで影響力を発揮するかが注目される。
◎仏新首相 歴代最年少34歳のガブリエル・アタル氏に任命 | NHK | フランス →パリ五輪が開かれるフランスで、何と34歳の首相が誕生した。同性愛者と公表している。新首相は9日の演説で「この任命は、若者への信頼の象徴だ」と述べた。なかなか変わらない日本。フランスの大胆さに学びたい。
*** 「今日の名言」
◎山本有三(小説家。1974年1月11日死去、86歳)
「人間はな、人生という砥石で、ごしごしこすられなくちゃ、光るようにはならないんだ」 「おれは苦労をおれの先生だと思っているんだ。人間、苦労にしこまれないと、すぐいい気になっちまう」 「心に太陽を持て」 「働くというのは、はたを楽にしてやることだ」 「一年の計は麦を植えることにあり、十年の計は樹を植えることにあり、百年の計は人を植えることにあり」 「たったひとりしかいない自分の、たった一度しかない人生を、ほんとうに生かさなかったら、人間、生まれてきたかいがないではないか」 「自分が相手を愛すれば、相手もきっと自分を愛してくれる。人生は必ずしも、そんな簡単なものではありませぬ」 「学校ってものは、からだとからだのぶつかり合うところだ。先生の魂と生徒の魂が触れ合う道場だ。それではじめて、生徒は何ものかを体得するのだ。一生忘れないものを身に付けるのだ」
*** きょうの教養 (枕草子④)
◎第百二十三段=はしたなきもの(体裁が悪いもの)
【原文】はしたなきもの。異人を呼ぶに、我ぞとて、さし出でたる。物などとらする折は、いとど。自ずから人の上などうち言いそしりたるに、幼き子どもの聞き取りて、その人のあるに、言い出でたる。
あわれなることなど、人の言い出で、うち泣きなどするに、げにいとあわれなりなど聞きながら、涙のつと出で来ぬ、いとはしたなし。泣き顔作り、気色異になせど、いと甲斐なし。めでたきことを見聞くには、まづただ出で来にぞ出で来る。
【現代語訳】体裁が悪いもの。他の人を呼んだのに、自分かと思って出てしまった時。物をくれようとする時だったりすると、なおさら。何気なく誰かの噂をして悪口を言っている時、幼い子供がそれを聞いていて、当人がいる前で言い出した時。
かわいそうな話を、人が言い出してちょっと泣いたりする時、なるほどひどく哀れだとは聞きながらも、涙がいっこうに出てこないのは本当にばつが悪い。泣き顔を作り、悲しそうな表情をするが、どうにもならない。そのくせ、素晴らしいことを見聞きするとすぐに、後から後から涙が出てくる。
【解説】「はしたなし」は、中途半端で体裁が悪い気持ち。「いとど」は、いよいよ、いっそう。清少納言は、一条天皇の皇后である中宮定子(藤原定子=977~1001)に944年ころから亡くなるまで仕えた。中宮定子は宮廷サロンの中心人物で、美しさと教養、ユーモアを兼ね備えていたという。枕草子は1001年ころに成立し、中宮定子を中心とした皇室の人たちや清涼殿など御所の記述が多い。今回の教養講座では、人間関係を中心に選んでいる。
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***デイ・ウォッチ(11日)
◎自民「政治刷新本部」で初会合 岸田首相が党改革に決意 | NHK | 政治資金 →なぜか安倍派が最多の10人になった。無派閥の菅前首相が派閥解消を主張し、反対意見も出たという。議員は地元支持者の強い批判にさらされており、選挙の強弱で主張も違ってくる。本気で議論すれば内戦状態になりそうだが、再生には必要なプロセスだろう。当然ながら、首相は政治資金規正法を改正する意向という。
◎被災地のトイレ問題 仮設トイレの設置進むも.. トイレを保つための心がけ 携帯トイレの使い方は | NHK | 令和6年能登半島地震 →地震などで広範囲に断水になると、トイレが最大の問題になる。映像や写真を使いにくいので、切実さのわりに報道は多くならない。もっと積極的に伝え、教訓として共有したいテーマだ。排泄は生物として基本的な行為で、何か名案はあるのではないか。
◎OECD 日本経済の報告書公表 “政策金利の引き上げ開始すべき” | NHK | 金融 →OECD報告書は理論中心の分析だが、真っ当だ。今年は次のような指摘があった。名目賃金は上昇しているが、物価を勘案した実質賃金は大きく下がっている。先進国で日本の財政赤字は圧倒的に大きく、付加価値税率(消費税率)は低い。高齢化も先進国最速ペース…・。日本の改革はいかにも遅い。
◎“行くべき旅行先 52か所”に山口市 ニューヨーク・タイムズ | NHK | 山口県 →北アメリカの皆既日食、パリに続く3位になぜか山口市。当事者も驚き、観光には追い風になる。行ったことがあるが、山を背にした瑠璃光寺は壮観で、ザビエル記念聖堂があり、明で学んだ雪舟ゆかりの地とあって独特の国際的な雰囲気も感じられる。小さな県庁所在地で、JR山口駅の貧弱さが気になった。
◎不正輸出めぐるえん罪事件 国と都の控訴に原告側「あきれた」 | NHK | 事件 →控訴は訴訟当事者の権利だが、この裁判で政府の控訴は権利の濫用だろう。あきれるのも当然だ。国と東京都は少なくとも控訴理由をていねいに説明すべきだ。辺野古裁判や袴田事件に代表されるが、政府が国民と対決する時は謙虚に対応する必要がある。その風が最近極端に薄い。
*** 「今日の名言」
◎梅原猛(哲学者。2019年1月12日死去、93歳)
「すぐれた政治家の条件。1、政治家は、時代が要求する理想をはっきり持っていなければならない。2、政治家は、現実世界の状況を的確に把握しなければならない。3、政治家は、一つのことを決定することができる勇気と、それを粘り強く実行する忍耐を所有しなければならない」 「創造はいつも異端者の仕事である。新しい学問や新しい芸術を生み出すには、それまで権威として通用していた学問なり芸術なりを根本的に否定しなければならない」 「伊勢神宮には皇室の祖先神が祀られているが、出雲大社には皇室に敵対した前時代の支配者、オオクニヌシノミコトが祀られている。味方よりも敵を手厚く祀るというのが、伝統的神道なのである。しかるに、靖国神社は戦争で犠牲になった味方の人のみを祀り、敵の人を祀らないように見える。これは伝統的な日本の神道といえようか」 「観念だけで考えるな、もっと事実にまみれよ」 「だれも試みたことのないことに挑め」 「社会主義はなぜ崩壊したのか。マルクスの人間観に大きな無理があったのではないか。彼は資本主義のリーダーを極悪非道な人間と考え、社会主義社会のリーダーを無私の人類愛に支配される人間とみた。あまりにも空想的な人間の見方である。人間は善とともに悪をもつものである」 「日本の学界は、権威者が説こうが、大ボスが語ろうが、間違っていれば間違っていると断言する根本的な懐疑の精神に欠けているようである」
*** きょうの教養 (枕草子⑤)
◎第二百五十二段=心憂きもの(世の中で一番嫌なもの)
【原文】世の中に、なほいと心憂きものは、人に憎まれる事こそあるべけれ。誰てふもの狂いか、我、人にさ思われむ、と思わむ。されど、自然に、宮仕え所にも、親・同胞からの中にても、思はるる、思われぬがあるぞ、いとわびしきや。
よき人の御ことは、さらなり、下衆などのほどにも、親などのかなしうする子は、目立て、見立てられて、いたはしうこそおぼゆれ。見るかひあるは、道理、いかが思わざらむ、とおぼゆ。異なることなきは、また、これをかなしと思ふらむは、親なればぞかしと、あはれなり。
親にも、君にも、すべてうち語らう人にも、人に思われむばかり、めでたきことはあらじ。
【現代語訳】世の中で一番嫌なことは、人に憎まれることだろう。どんなに頭のおかしな人でも、人に憎まれたいなどと思うことがあろうか。とはいえ、自然と、宮仕え先でも親兄弟の間でも、好かれることも好かれないこともあるのは、実につらいことだ。
高貴な方の場合はもちろんのこと、下々の者でも、親などが可愛がっている子どもは、何かと目立ち注意を引いて、チヤホヤされるものだ。見た目のきれいな子はもちろん、かわいがられないはずはない。格別取り柄もない子はそれはそれで、この子をかわいいと思うのも親なればこそだと、しみじみ思われる。
親にでも主人にでも、誰かちょっとした話し相手にでも、愛されるほど素晴らしいことはあるまい。
【解説】最後の文章は「寒いねと話しかければ寒いねと答える人のいるあたたかさ」という俵万智の短歌と通ずる。源氏物語を書いた紫式部は清少納言と同時代の人で、中宮定子を苦しめた藤原道長の娘に仕えた。そのせいか、紫式部日記は清少納言について「得意気に偉そうにしている。利口ぶって、女のくせに漢字を書き散らしているが、生半可なところがたくさんある」と嫌っている。慎重で控え目だった紫式部は、才気煥発な清少納言とは対照的だった。この逸話も時代を超え、何となく2人を身近に感じられる。