1月15~19日(教養講座:徒然草)
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HPにアップしました→ 森保監督と栗山監督のリーダーシップ 天声こども語紀行⑦ – 長谷川キャリア文章塾 (hasegawa-cwa.com)
***デイ・ウォッチ(12~14日)
◎台湾総統選挙 民進党・頼清徳氏 国民党と民衆党破り当選も立法院は過半数割れ 中国・習近平指導部の反応は | NHK | 台湾 →予想通り民進党の頼氏が勝った。米国や日本との関係強化に動く見通し。中国との緊張は高まるが、だからといって中国が武力侵攻する可能性は短期的にはない。民進党は議会で過半数どころか第一党にもなれず、政権基盤は弱い。米大統領選の行方もからみ、要注目だ。
◎安倍派幹部の立件断念へ 会計責任者との共謀、立証困難 地検特捜部 | 毎日新聞 (mainichi.jp) →報道通りなら事務総長ら大物立件は見送ることになる。巨額裏金の責任が末端議員や会計責任者の秘書にとどまるなら、国民にしてみれば「なぜだ!」となる。1992年、金丸信元自民党総裁が5億円の闇献金で略式起訴になった時、検察庁に黄色いペンキが投げつけられたが。
◎ラグビー全国大学選手権 帝京大3連覇 12回目の優勝 創部100周年の明治大に勝利 落雷で1時間近く中断 | NHK | ラグビー →帝京大学が100周年の明治大学を破り、また9連覇しそうな勢い。ラグビーの帝京大や駅伝の青山学院大などの強さが目立つが、他校は強さの理由をもっと研究したほうがいいだろう。雪の国立競技場は幻想的だった。
◎米英軍 イエメンのフーシ派拠点攻撃 フーシ派側“5人死亡” | NHK | イスラエル・パレスチナ →こうした時、真っ先に攻撃するのがアングロサクソンの英米軍だ。攻撃して相手が降伏するなら有効だが、報復合戦に発展し、戦闘が周辺国に波及する可能性もある。フーシ派の行為は卑劣だが、攻撃が中東全体を巻き込んだ戦火拡大を招きかねないという視点も必要だろう。
◎田中英寿氏が死去 元日大理事長 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →日大相撲部で元横綱輪島の1学年上で、77歳だった。相撲取りとしては長生きかもしれないが、2年余り前まで理事長で君臨していたので、急死の印象もある。盛者必衰の感だが、日大改革はまだ道半ば。
*** 「今日の名言」
◎高橋幸宏(シンガーソングライター、ドラマー。2023年1月11日死去、70歳)
「プロポーズとは、愛する人にログインするパスワードである」 「僕だって若いときのこと思い返して、よくやったなってことあるもん。自分のやりたいことを今の若い連中は、僕たちの頃よりもコンプレックス持たずにやれるじゃない。僕たちの頃、ロックなんて、そんなんで食っていくなんて勇気がいった。就職できないとか言ってる前に、自分の道を探せばいいと思う」 「次の音楽を作るのは君たちです。僕は君たちが作る音楽に刺激されたいんです」 「新しいツールはいつでも僕らをワクワクさせてくれるし、そこから新しい音楽が生まれますよね」 「若いうちは悩んでナンボです」 「自分らしくいられるにはどうすればいいのかは考えてきたかな。自分のことを好きでいられるためにね。自分のことが好きになれない人って、人のことを好きになれないから」 「今、ロンドンの5つの美術大学の顧問教授やってるんだけど、みんな考え方がアカデミックなの。だからハートで作ってない。頭で作ってる。これを表現しなかったら俺はもう生きてる意味ないってみたいなことをやってほしいから、アカデミックなことはやめろって言ってるの」
*** きょうの教養 (徒然草①)
新春第二弾の教養講座は、吉田兼好のご存知「徒然草」を取り上げる。前週の「枕草子」同様、原文と現代語訳で味わって欲しい。今風にいえば「カッコいい生き方」という教訓型のエッセイだ。参考文献は、角川ソフィア文庫「徒然草」で、現代語訳(小川剛生訳)は一部短縮している。
◎序
【原文】つれづれなるままに、日ぐらし、硯(すずり)にむかひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ
【現代語訳】無聊孤独であるのに任せて、一日中、硯と向かい合って、心に浮かんでは消える他愛ない事柄を、とりとめもなく書きつけてみると、妙におかしな気分になってくる。
◎第一段=人として願うこと
【原文】いでや、この世に生まれては、願はしかるべきことこそ多かめれ。御門(みかど)の御位は、いともかしこし。竹の園生の末葉まで人間の種ならぬぞやんごとなき。一の人の御有様はさらなり、ただ人も、舎人など賜はる際は、ゆゆしと見ゆ。その子・孫までは、はふれにたれど、なほなまめかし。それより下つかたは、ほどにつけつつ時にあひしたり顏なるも、みづからはいみじと思ふらめど、いとくちをし。(以下略)
【現代語訳】さても、人がこの世に生まれてきたからには、あれやこれやと願うことがあまたあろう。かといって天子(天皇)の御位は口にするのも畏れ多く、その血を受けた宮々の末裔まで人間界の種族ではない点、尊貴である。摂政・関白の御様子はいうまでもない。それより下の一般の廷臣でも、随身(警護の役人)を賜る階層は立派であると思える。その子・孫くらいまでは、没落したとしても、まだどことなく気品が感じられる。それより下になると、家柄に応じて時運に乗じ得意顔であるのも、自分では大したものだと思うのであろうが、はたから見れば実にくだらないものである。
【解説】つれづれなるままに=なすことも話し相手もいない状態/ものぐるほしけれ=おかしくなったようだ/竹の園生の末葉まで=天子(天皇)の子孫、皇族/なまめかし=優雅で気品に富んでいること
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***デイ・ウォッチ(15日)
◎能登半島地震2週間 地震活動続く 16日にかけ大雪おそれ | NHK | 令和6年能登半島地震 能登半島地震 道路・水道に甚大な被害 復旧が進まない理由は | NHK | 令和6年能登半島地震 →能登半島地震から2週間。本格的な厳しい冬を迎えるが、道路や水道は復旧が進まない。山間部の多い半島を襲った地震だけに阪神大震災や東日本大震災と比べて復旧作業は過酷だ。
◎株価 一時3万6000円台に バブル期以来 約33年11か月ぶり | NHK | きょうの株価 日経平均、一時3万6000円台 個人も買い意欲途切れず – 日本経済新聞 (nikkei.com) →株価が吹き上がっている。新NISAでニューマネーが投じられ、外国人投資家も買いに入っているようだ。日銀が一部の株を手放している。日銀がゼロ金利解除に動けば、経済は正常化する。投資立国への道が少し見え始めているか。
◎ガザ死者2万4000人 衝突100日、攻撃緩めず―イスラエル:時事ドットコム (jiji.com) →100日の節目。人質は忘れられた感もあるが、映像が公開された。何人無事だろうか。人質を全員救出するというネタニヤフ首相の発言も空々しい。
◎頼次期総統、安保協力強化に意欲 米代表団と会談―台湾:時事ドットコム (jiji.com) →台湾新政権がさっそく米国代表団や日本の窓口である交流協会と会談した。中国側は今後いろいろ発言をするだろうが、どんな行動を取るかが焦点。最後は習近平首席のハラ一つ。就任は5月なので、その前後が注目だ。
◎ブラジル版の“紅白歌合戦” 締めは八代亜紀さんの歌で追悼も | NHK | ブラジル →地球の裏側で紅白歌合戦があり、八代亜紀さんの歌が締めで披露された。八代さんは急死して、歌手としての偉大さや愛される人柄が広く称賛されている。改めて惜しい人だった、まだ若すぎた。
*** 「今日の名言」
◎小野田寛郎(戦後29年にフィリピンで投降した陸軍少尉。2014年1月16日死去、86歳)
「太平洋戦争が終結しても任務解除の命令が届かなかったため、フィリピンのルバング島の密林に29年間、情報収集や諜報活動を続けた」 「帰国の際に天皇陛下万歳と叫んだ。世間は私を軍人精神の権化か、軍国主義の亡霊かのどちらかに色分けしていた。私はどちらでもないと思っていた。私は平凡で、小さな男である。命じられるまま戦って、死に残った一人の敗軍の兵である。少し遅れて帰ってきただけの男である」 「ルパング島での一番の悲しみは戦友を失ったことだった。魚は水の中でしか、人は人の中でしか生きられない」 「負けたら死ぬ」 「戦いは相手次第。生き方は自分次第」 「恐怖の大半は自分が作り出している」 「人は生まれて死ぬ。これが道理である。生かされているのなら、とことん生きて、生きて、生き抜いてみよう」 「コンパスは方向を教えてくれるが、川や谷の避け方は教えてくれない。コンパスばかり見ていると川や谷に落ちてしまう。自分で考えて判断しなければ」 「過去は捨てることはできない。現在は止めることができない。しかし、未来は決めることができる」 「強い人ほど優しい。強い人は余力があり、弱い人を助けたくなる」
*** きょうの教養 (徒然草②)
◎第八段=色欲の魔力
【原文】世の人の心惑はすこと、色欲には如かず。人の心は愚かなるものかな。匂ひなどは仮のものなるに、しばらく衣裳に薫物(たきもの)すと知りながら、えならぬ匂ひには、必ず心ときめきするものなり。久米の仙人の、物洗ふ女の脛(はぎ)の白きを見て、通を失ひけんは、まことに手足・はだヘなどのきよらに、肥えあぶらづきたらんは、外の色ならねば、さもあらんかし。
【現代語訳】世間の人の心を惑わすことでは、色欲に勝るものはない。人の心は実に愚かなものだ。芳香などは所詮うわべを飾ったかりそめのものなのに、そしてしばらく衣装に香をたきこんだと承知していながら、何ともいえぬ良い匂いには、必ず胸がドキドキするものである。久米の仙人が、洗濯をしている女のすねが白いのを見て、人通力を失ってしまったというが、確かに手足・皮膚などが清楚で、しかも肥えてふっくらとしているのは、うわべの美しさではないから、仙人でさえ惑ってしまったのはもっともなことであろう。
【解説】久米の仙人=大和国葛城・吉野に住み神通力を得たとされる古代の仙人。今回は「色欲」の話。枕草子の時にも書いたが、時代は変わっても、人間の本質は変わらない。色欲も時代を超えている。徒然草は、伊集院静が書いた「大人の流儀」のような内容だ。
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***デイ・ウォッチ(16日)
◎アイオワ州共和党党員集会 トランプ氏が勝利、2位はデサンティス氏 CNN予測 – CNN.co.jp →トランプ氏が初戦で圧勝した。世界10大リスクを発表している米国のユーラシアグループは、今年最大のリスクに「米国」をあげ、「米国は機能不全でとんでもない状況」と書いている。今回3位だった元国連大使のヘイリー氏は次のニューハンプシャーで強いとされる。期待したいが、無理だろうか。
◎ダイハツ不正、国土交通省が是正命令 企業体質を問題視 – 日本経済新聞 (nikkei.com) ダイハツ認証不正 3車種の「型式指定」取り消しへ 国土交通省 | NHK | 国土交通省 トヨタ・佐藤社長「ダイハツの経営体制刷新」 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →ダイハツの生産再開はなお見えない。日野や豊田自動織機とトヨタグループで不正が相次いでおり、トヨタ首脳陣の対応が焦点になっている。
◎派閥存続に賛否交錯 自民刷新本部が全議員会合:時事ドットコム (jiji.com) →自民党内の議論が活発になってきた。「安倍派を介錯する」という安倍派議員の物騒な発言もあった。岸田首相は短期間でどうまとめるか。優柔不断気味だが、旧統一教会問題のように最後は世論を重視する傾向も強い。自分で決めることに高揚感を持つタイプなので、大胆な改革案を出すのかどうか。
◎【16日 随時更新】イスラエル国防相 早期の作戦縮小の考え示す | NHK | イスラエル・パレスチナ →イスラエル国防相が作戦縮小を表明したが、ハマス徹底せん滅のネタニヤフ首相と食い違うようにも見える。別の事情があるのか、閣内不一致か。早く停戦して人質解放交渉が現実的だ。
◎建て替え合意要件「4分の3」に緩和へ 老朽マンション再生へ法制審要綱案:時事ドットコム (jiji.com) →老朽マンション建て替えは、都市部の今後の大きな問題だが、「5分の4」を「4分の3」にしただけで解決するだろうか。建て替えに消極的な高齢者にとって難問は、カネと建替え中の住宅だろう。
*** 「今日の名言」
◎川路利良(警視庁初代大警視、日本警察の父。警視庁は1874年1月15日に創設された)
「警察官たるものは、声なき声に耳を傾け、表面的、外形的な現象のみにとらわれることなく、奥に隠されたモノを見逃すことなく、真実をあばき出すことが必要である」 「行政警察は、国民を罪に陥らせないように予防が第一だ。軍隊と警察は、国を守る両翼のようなもので、軍隊のヨロイカブトに対し、警察は力を養う薬のようなものだ」 「政府が父母なら、人民は子供で、警察はそのもり役である」 「酒を温めるには、その酒より暖かい湯でなければならない」 「人を導くとか、いましめるとかは、先ず自分自身が相手より勝れた存在でなければならない。その行動は『仁愛補助の心』からはみだしてはいけない」 「人民のために捕縛の役目を勤める警官は、我に対して人がいかなる無理非道の挙動があったとしても、道理をもって懇切を尽くし、忍耐強く勉強せねばならない」 「世の安寧を守ろうとする者は、無事の日においても、有事の日として怠ってはならない」
*** きょうの教養 (徒然草③)
◎第一八段=清貧のすすめ
【原文】人は、おのれをつづましやかにし、奢りを退けて、財を持たず、世を貪らざらんぞいみじかるべき。昔より賢き人の富めるは稀なり。
唐土に許由といひつる人は、さらに身にしたがへる貯へもなくて、水をも手して捧げて飲みけるを見て、なりひさこといふものを人の得させたりければ、ある時、木の枝にかけたりけるが、風に吹かれて鳴りけるを、かしかましとて捨てつ。また手にむすびてぞ水も飲みける。いかばかり心のうち涼しかりけん。孫晨(そんしん)は、冬月にふすまなくて、藁一束ありけるを、夕べにはこれに臥し、朝にはをさめけり。
唐土の人は、これをいみじと思えばこそ、記しとどめて世にも伝えけめ、これらの人は語りも伝ふべからず。
【現代語訳】人間は、簡素倹約を心がけ、奢侈を避け、財宝を持たず、名誉や利益を欲しがらない態度が立派であろう。昔から賢人が富裕であることはめったにない。
中国にいた許由という人は、所持する家財道具もさらさらなく、水さえも手ですくって飲んでいたのを見て、ある人が瓢箪を与えたところ、ある時、木の枝に欠けていた瓢箪が風に吹かれて鳴ったのを、許由はやかましいと言って捨ててしまった。再び手ですくって水も飲んだ。どれほど心中さっぱりとしたとしていたであろう。孫晨(そんしん)という人は、冬空に夜具がなくて、ワラが一束あった。夜にこの上に寝て、朝には片付けたのであった。
中国の人はこれらを立派であると思ったからこそ、記録して後世にも伝えたものであろうが、我が国の人は語り伝えることもしないのである。
【解説】つづましやかにし=質素・倹約を心がけて/許由、孫晨=中国古代の隠士(俗世を離れて静かな生活をしていた人)/なりひさこ=植物の名、瓢箪の別名/これらの人=我が国の人。最後の一文「我が国の人は語り伝えることもしないのである」は面白い。当時から外国の事例をひいて、日本が遅れているという言い方があったようだ。確かに記録を残さないと、なかったことと同じになる。
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***デイ・ウォッチ(17日)
◎JAL社長に鳥取三津子専務、初のCA出身 赤坂社長は会長に:朝日新聞デジタル (asahi.com) →ジェンダー平等の歯車がまた一つ回った。鳥取さんは東亜国内航空に入社し、日本航空社長としては初の女性、初のCA出身、初の短大出身(長崎・活水短大卒)となる。日本航空はかつて半官半民で、保守的な会社だったが、破綻して再建に稲盛和夫氏を迎え入れ、確実に変わった。今月2日の奇跡の救出劇も通底していると思われる。
◎共産・志位委員長が退任の意向 後任に田村氏浮上、初の女性党首 [共産]:朝日新聞デジタル (asahi.com) →在任が23年にもなっている志位委員長が退任する見通しになった。後任に浮上しているのが田村智子副委員長(58)。共産党では初の女性党首になる。日本航空並みのサプライズで、ここでもジェンダー平等の歯車が回る。
◎直木賞 2024 河崎秋子「ともぐい」 と 万城目学「八月の御所グラウンド」芥川賞は九段理江「東京都同情塔」 | NHK | 文芸 →文藝春秋の恒例イベント。文章塾としては評価される文章を味わって欲しい。芥川賞の九段さんの文章は「完成度が高く欠点を探すのが難しい。読者がおもしろがって読め、最近の芥川賞でもけうな作品という話も出ていた」と選考委員の吉田修一さんは話している。
◎中国 去年のGDP伸び率 +5.2% 目標達成も景気回復力強さ欠く | NHK | 中国 →中国の経済が力強さを欠いている。中国の台頭は、経済がけん引し、後を追うように軍事力が増強された。経済が落ち込めば、すべてが逆回転するリスクがある。習近平首席は経済が苦手で、今後の運営には苦労するだろう。
◎英郵便局システム欠陥「えん罪に関わったこと謝罪」富士通幹部 | NHK | イギリス →国内ではあまり報じられていないが、富士通のシステムが英国で冤罪を生んでいる。トラブル後の対応も悪かったようだ。システムのミスは避けられないが、人権問題になるような事案は、誠実に対応すべきだろう。
*** 「今日の名言」
◎ビートたけし(タレント、映画監督。1月18日は77歳の誕生日)
「萩本欽一といかりや長介を引きずり下ろしたかった、この2人の牙城を崩さない限り、ひょうきん族はありえないと思った」 「早く黒澤さんに次ぐ人が出てこなければ、日本の映画界も情けなくなっちゃう。オイラの夢は、世界に通用する映画監督になることだね」 「ささやかな幸せを確保するにもめちゃくちゃ努力しなきゃだめだよ。生半可なことじゃないよ。道には罠がいっぱい仕掛けられてるんだからさ」 「将来はさ、みんな不安なんだよ。でもそれをあえて出さないほうが、男としては、かっこいいと思わない?」 「よく生きがいっていうんだけど、生きがいなんてそんな大切なもんかね。人は生まれて、生きて、死ぬ、これだけで大したもんだ」 「人生に幸せなんて求めること自体、勘違いなんだよ」 「夢を持て目的を持て、やればできる。こんな言葉に騙されるな」 「昔から運も実力のうちなんて言葉があるとおり、おいらも所詮人間の成功なんて運があるかどうかに尽きると思ってる」 「お前にはその才能がないんだと、親が言ってやるべきなのだ」 「強さって、鈍感さかなって思う時がある。あの人は強いから全然くじけないっていうけど、それは鈍感なんじゃないかって思う時あるね」
*** きょうの教養 (徒然草④)
◎第三八段=万事みな非なり
【原文】名利(みょうり)に使はれて、閑かなる暇なく、一生を苦しむるこそ、愚かなれ。
財(たから)多ければ、身を守るに惑ふ。害を買ひ、わずらひを招く媒(なかだち)なり。身の後には、金(こがね)をして北斗をささふとも、人のためにぞわづらはるべき。愚かなる人の目をよろこばしむる楽しみ、またあぢきなし。大きなる車、肥えたる馬、金玉の飾りも、心あらん人は、うたて愚かなりとぞ見るべき。
金は山に捨て、玉は淵に投ぐべし。利に惑ふは、すぐれて愚かなる人なり。
【現代語訳】名誉欲と利欲に酷使されて、心静かに過ごす暇もなく、一生を苦しんで終わるのは愚かなことである。
財産が多いと、我が身を守ることに心を乱す。財産は危害を求め、災難を招いてしまう仲立ちである。死後には、黄金を積み上げて北斗七星を支えるほどに財産があっても、今度は残された人にとって煩いとなるに違いない。愚かな人々の目を楽しませる富も、またつまらないものである。大きな車、肥えた馬、黄金珠玉の装飾品も、心ある人にとっては、いやらしく愚かしいと思うに違いない。黄金は山に捨て、珠玉は淵に投ずるのがよい。利欲に惑うのは最も愚かな人である。
【解説】人間の欲深さはいつの時代も共通で、それを戒める警句も同じだ。人間とは何かと考えざるを得ないし、常に自分を戒める大切さも身に染みてくる。
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***デイ・ウォッチ(18日)
◎“岸田派解散を検討” 首相が表明 政治資金パーティー問題で | NHK | 政治資金 公明 政治資金監督する第三者機関設置検討 「連座制」導入も | NHK | 政治資金 →岸田首相は政治改革をリードして政権維持を図りたいようだ。派閥解消や政治資金規正法改正に積極的に対応するとみられる。連座制は公明党も打ち出した。望ましい方向だが、岸田首相は信念ではなく状況対応で動くので、唐突感がある。震源地の安倍派も解散する方向だが、麻生派や茂木派は「無責任」と反発しており、自民党の裏金・派閥問題は新たな段階に入った。
◎自民党派閥の政治資金パーティーめぐる事件 大野泰正議員を在宅起訴へ 谷川弥一議員を略式起訴へ | NHK | 事件 二階元幹事長の秘書 立件する方向で検討 政治資金規正法違反 | NHK | 政治資金 →パーティー券裏金事件の結末が固まった。末端議員3人と会計責任者を起訴し、事務総長経験者の大物は「共謀を立証できない」とお咎めなし。消極的な共謀や不作為の共謀は認定できるだろう。「大山鳴動してネズミ3匹」では禍根を残す。
◎当時19歳被告に死刑 特定少年で初、「更生の可能性低い」―夫婦殺人放火・甲府地裁:時事ドットコム (jiji.com) →改正少年法は18、19歳を「特定少年」とし、他の未成年より厳罰化できるようにした。死刑判決は初めて。「更生の可能性は低い」と認定するほどの悪質な犯行だったようだ。
◎英ビジネス貿易相、富士通との面会求める 郵便局冤罪事件で―報道:時事ドットコム (jiji.com) →富士通が関係した英国の冤罪事件で、英国の閣僚が動き始めた。富士通のこれまでの対応に不満が高まっている。間違いは謝って誠実に対応したほうがいい。
◎ひぼう中傷 ”法改正案は不十分” 元所属タレントらが意見書 | NHK | IT・ネット →ネットの誹謗中傷対策の法案が、今後の焦点になりそうだ。総務省は事業者側に書き込みの削除基準を公表し、削除要請があった場合は1週間程度で対応する方向で調整している。中傷を受けた当事者は発信者の情報開示や削除の義務化などを求めている。大いに議論すべきテーマだ。
*** 「今日の名言」
◎オードリー・ヘップバーン(英国の女優。1993年1月20日死去、63歳)
「何より大事なのは、人生を楽しむこと。幸せを感じること、それだけです」 「威張る男の人って、要するにまだ一流でないってこと」 「オランダにはこんなことわざがあります。『くよくよしてもしかたがない。どのみち予想した通りにはならないのだから』。本当にそう思うわ」 「私の最大の願望は、いわゆるキャリアウーマンにならずにキャリアを築くことなの」 「自分が控え目でいるためには、その前に何かに立ち向かうことが必要なの」 「不平を漏らさない、疲れを顔に出さない、舞台の前夜は遊びに出かけない。ソ二ア(バレエの教師)は本気で努力すればかならず成功することを教えてくれたわ」 「チャンスなんて、そう度々巡ってくるものではない。いざめぐってきたら、とにかく自分のものにすることよ」 「何としても避けたかったのは、人生を振り返ったとき、映画しかないという事態です」 「どんな人でも、不安がきれいに消えるということはないと思うの。成功すればするほど、自信は揺らぐものだと思うこともある。考えてみれば、恐ろしいことね」 「戦争を経験して、逆境に負けない強靭さが身につきました。戦争が終わって戻ってきたもののありがたみをつくづく感じました。食料、自由、健康、家庭、そして何より人の命に深い感謝の念を抱いたのです」
*** きょうの教養 (徒然草⑤)
◎第一一七段=よき友わろき友
【原文】友とするにわろき者七つあり。一つには高くやんごとなき人、二つには若き人、三つには病なく身つよき人、四つには酒を好む人、五つにはたけく勇める兵、六つには虚言する人、七つには欲ふかき人。よき友三つあり。一つには物くるる友、二つには医師、三つには智恵ある友。
【現代語訳】友人にするのには悪い者が七つある。第一は高貴な人、第二には若い人、第三には無病で頑健の人、第四には酒飲み、第五には勇猛な武者、第六には嘘をつく人、第七には欲の深い人。よい友は三つある。第一には物をくれる友、第二には医者、第三には知恵のある友。
【解説】先週取り上げた清少納言の「枕草子」は、貴族が実権を持っていた平安時代の作品で、1001年ごろに成立したといわれる。紫式部の「源氏物語」も同時代で、天皇周辺を舞台にした優雅で華麗な王朝文学の代表作である。庶民は出てこないし、重要な存在でもなかった。
鎌倉幕府が成立すると、土地を基盤とした武士の時代となり、社会も文化も一変する。農民ら庶民も平安時代に比べればそれなりに重視されるようになった。この時代に台頭したのが無常観である。存在する一切のものは流転するという仏教の教えに基づく考え方だ。文学の世界では西行(1118~90)の歌集「山家集」、鴨長明(1155頃~1216)の「方丈記」(1212成立)がよく知られる。
吉田兼好(1283頃~1352頃)の「徒然草」(1331頃成立)もこの流れにある。方丈記から100年以上も後で、後醍醐天皇による建武の新政や南北朝時代の直前ということになる。兼好は神官の家に生まれ、朝廷の武士になった後、出家したといわれているが、わかっていないことも多い。徒然草には質実さを失う武士や台頭する都市住民の様子も垣間見える。儒教の四書五経や史書の教養を基盤とし、仏教や老荘思想も取り込んでいる。日常の話題を取り上げ、平易ながら明晰な文体で核心を衝いている。今でも箴言集として通用することが大きな魅力だろう。