2月19~23日(教養講座:教養とは何か)

2024.02.23メルマガ

~~~ 長谷川塾メルマガ 2024年2月19日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(16~18日)

ロシア ナワリヌイ氏が死亡 プーチン政権批判の反体制派指導者 | NHK | プーチン大統領 →まだ47歳。北極圏の刑務所に最近移されていた。当局は「散歩のあと気分が悪くなり医師が蘇生措置を行ったものの死亡が確認された」と発表したが、信じる人はいない。抗議の輪が世界に広がった。来月の大統領選を前に邪魔者を消すロシア。国としての信頼と品格を落としている。

「H3」ロケット2号機 打ち上げ成功 JAXAが発表 初号機の失敗乗り越え再挑戦で | NHK | 宇宙 →久々の明るい話題。昨年は失敗したが、見事リベンジした。涙を流すJAXAの職員もいた。現在運用しているH2Aの後継機で、国際宇宙ビジネスの切り札とされている。軌道に乗るまでまだ曲折はありそうだが、期待したい。

「裏金」全議員の弁明要求 衆参83人、政倫審へ野党―自民苦慮、週明け再協議:時事ドットコム (jiji.com) →野党が厳しいボールを投げた。政倫審に自民党の裏金関連83人の出席を要求。新年度予算を人質にとっての強硬姿勢だ。政倫審で真相が解明されるとは思えないが、激しい政治闘争になっている。政治資金規正法改正など今国会のヤマ場は今後も多い。

ブレイキン 全日本選手権 男子「ISSIN」菱川一心が初優勝 | NHK | ブレイキン ブレイキン 全日本選手権 女子は「AYUMI」福島あゆみが3連覇 | NHK | ブレイキン →パリ五輪からの新種目となるブレイキン。DJの音楽に即興で合わせ、ダンスの技術や表現力を競うが、スポーツかどうかよくわからない。五輪は「より早く、より高く、より強く」で簡素化すればいいと思うが、どうだろうか。

岩手県奥州市の奇祭「黒石寺蘇民祭」 1千年以上の歴史に幕 檀家の高齢化と担い手不足 – 産経ニュース (sankei.com) →1000年以上も続いた祭りをやめてしまうのは、いかにも残念。担い手不足というが、ニュースを見る限り、大勢が参加していた。最後だから集まったのだろうか。やめる背景まで詳しく迫った報道はなかったようだ。

*** 「今日の名言」

◎松本零士(漫画家、代表作は「宇宙戦艦ヤマト」。昨年2月13日死去、85歳)

「どんなに大きな夢でも、恥ずかしがることはない」 「あなたの体の中には、ものすごい数の先祖代々の思いと夢が詰まっている」 「ヤマトで訴えたかったのは、地球を救うために、生きるために飛ぶ――です。胸の中には、戦場で倒れていった地球上のすべての人たちへの思いがあるわけです。いつの日か殺し合いのない世界にという思いを込めました」 「ヤマトの沖田十三艦長は顔もセリフも父がモデルです。最初の方で出てくる『今日の屈辱に耐えて明日のために生きろ。死ぬな』というセリフ。そういった意味の言葉はいやというほど聞きました」 「何かがあったときにすぐ引き下がるのではなく、言うべきことをきちんと言うのは大切ですよ」 「地球上で争っている場合ではない。どこの国の人とも仲良く、お互いに敬意を払いながら、穏やかに楽しく暮らしていきたい。そのためにこの仕事をしているんだという断固たる想いがあるわけです」

*** きょうの教養 (教養とは何か①) 

今週は「教養とは何か」を多角的に考える。答えがいくつもありそうなテーマだが、一般人には学術的な教養より、実践的な教養が重要になる。それぞれが考えて自分なりに定義し、日々実行していくことが重要だろう。有識者による1話10分のオンライ講義を提供している「テンミニッツTV」などから5人の意見を紹介する。

◎橋爪大三郎=社会学者、東京工業大学名誉教授/「人類の思考を本で学ぶ」

 教養とは「人間の考えてきたことすべて」と言える。私たちは他人とともに生きていく。子どもの世界は狭いが、大人は教養を得て、大きな世界で生きていく。想定外の事態に直面して決断・行動する時、どれだけ準備をしていたかが問われる。過去の人がどんな考え方をしていたかは参考になる。それをもたらすのは本だ。特に古典は重要で、過去に伝える価値があると思ったものがリレーゲームで生き残っている。過去の人も将来を真剣に考えてきた。その考えを知ることは、人間として一回り大きくなる。本は相手に断られず、大事なことを教えてくれる。効率がいい。

教養があれば意思決定の質を高めることができ、社会がよくなる。民主主義は自分たちで決め、独裁は1人が決めるが、民主主義社会では「分断」が起きている。最近の新しい問題で、格差とも違う。異なるグループが存在し、その間で話が通じない。教養はいろいろな人が考えたことをバランスよく理解することであり、分断の反対語でもある。情報のクオリティが低いSNSの出現も関係している。本は書く人がかなりのエネルギーを費やしているので、クオリティが高い。教養とネットは、水と油と言ってもいい。

最近は答えのない問題にどう立ち向かうかが問われている。ゴールがわかっていれば先生に学べばいいが、ゴールがない場合は自分たちで考えるしかない。ものを考えるプロに聞けばいいが、本の書き手はこのプロといえる。議論に勝ち残ったものが本になっている。その時点でのプラスアルファがたくさん書いてあり、どう捉えるかが重要になる。今ある証拠より、将来の想像力が重要になる。AIの登場で人間との関係が問われているが、AIは将棋ができても、まだ本を書けない。人間が本を書けるのは、セオリーはない、雲をつかむようなことをできるからだ。モヤモヤしていることを言葉にできるのが人間だ。(テンミニッツTV)

~~~ 長谷川塾メルマガ 2024年2月20日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(19日)

官民でウクライナ長期支援 復旧から産業高度化まで―日本企業の渡航制限緩和・復興会議:時事ドットコム (jiji.com) →戦況はロシア優位を伝えられるが、日本はウクライナへの復興支援を明確にした。当然の支援だが、ゼレンスキー大統領はビデオメッセージを見送った。難しい局面にある。日本外交は水面下で停戦も含めた将来の展開を模索しているのだろうかと気にかかる。

立民 不信任決議案提出 盛山文科相“何ら恥ずべき行動はない” | NHK | 旧統一教会 盛山文科相側に旧統一教会系機関誌 地元事務所へ毎月無料、先月も:朝日新聞デジタル (asahi.com)  自民支持率16%、自公政権下最低に 裏金問題など直撃 世論調査 | 毎日新聞 (mainichi.jp) →立憲は盛山文科相の不信任決議案を提出した。きょう否決される見通しだが、機関誌を毎月受け取っている報道が朝日新聞朝刊に出ている。報道各社の世論調査では、岸田首相だけでなく自民党の支持率も急落している。4月の国政選挙補選、9月の自民党総裁選をにらんで、政局は長期的に「一寸先は闇」の状態だ。自民の復元力と野党の連携維持がカギを握りそうだ。

福島第一原発 汚染水漏れたトラブル「実施計画」違反の疑い | NHK | 福島第一原発 →東京電力のトラブルは常態化している。現場は疲弊し、士気の低下もあって綱渡りの状態ではないだろうか。メンタルも心配だ。東電は最強電力会社として君臨したが、今や原発を担う力がないように見える。政府は再稼働を求め、規制委はミスを追及するが、チキンレースに陥っていないか。

東京大学 文理融合の5年制教育課程創設へ“世界水準の研究を” | NHK | 教育 →文理融合や留学、国際交流、学部と大学院の連携という重要課題を一気に解決しようという試みだ。東大が実行すれば影響は大きいが、大きな変化を嫌う教育界だけにさてどうなるか。

矢野博丈氏死去 80歳「ダイソー」展開する大創産業の創業者 | NHK | 訃報 →父は開業医だったが貧しく、中央大学の夜間部に通った。ちり紙交換、ボウリング場勤務など9回の転職を繰り返し、のれん分けで100円均一の店を始め、業界最大手として定着させた。メディアに出ないので知名度は低いが、日本小売業の新業態を担った経営者だ。

*** 「今日の名言」

◎横井小楠(儒学者、幕末の改革先駆者。1869年2月15日暗殺、60歳)

「人は、生きるか死ぬかの状況になれば、すべてのことを決断できる」  「これからの日本は、中国の逸話に登場する高徳ある君主の心を学び、理解したうえで、西洋文化を取り入れ、国を富まし、それを世界に広めていかねばならない」 「意に染まないことがあっても人をとがめるな。人をとがめれば、品性を失う」 「自分がやりたいと思うことに成果を当てにするな。当てにすると、事は失敗する」 「立派な人物となるためには、自分の生き方、修養を積んでいくことだ」 「政治は万民のためを判断基準とする王道を歩むべきで、権謀術数による覇道を排すべきである」 「書籍はなにも一句一字の解釈のためにだけ価値があるのではない」 「何よりも著者と心が一つにならなければならない」

*** きょうの教養 (教養とは何か②) 

◎小宮山宏=元東大工学部長・総長、三菱総合研究所理事長/「行動こそが教養の時代」

教養とは、「本質をとらえる知」、「他者を感じる力」、「先頭に立つ勇気」だと思う。今は行動が重みを増している。特に日本ではそうだ。例えば世界では再生エネルギーが主流になっているが、日本の電力会社は変わらない。政府が電力会社にヒアリングすると、現状維持になってしまう。原発はすでにマイナーで二次的なものだが、改革しない。大企業は「オープンイノベーション」といって、ベンチャーとの共同作業を進めている。新しいものをつくるのには分野の違う人の議論が重要だ。カリフォルニア大学に留学していた時、週1回のドーナツパーティーがあり、自由に議論した。日本でも同じようなことをやったが、根づかない。みんな遠慮して話さない。いろんな視点を出すことによって、新しい視点が生み出されるのに。

かつてロサンゼルス地震で高速道路が倒れた時、日本では起きないと専門家は言っていた。しかし、阪神淡路大震災で倒壊した。一定の前提では起きないが、前提が違えばすべて変わってしまう。福島第一原発は五重のチェックをしていると聞いたが、津波で事故を起こした。専門家は一定の前提の中でしか議論をしない。社会を変えられないと思っている日本人が多い。無力感を感じている。しかし、スウェーデンのトゥーンベリさんは気候変動問題を解決しようと行動している。ある意味、天才だ。小さく自立した世界であれば、実感がわいてくる。シンガポールやフィンランドのような小さな国は元気がある。税金も自分たちが払ったものが、どう返ってくるか実感がある。日本でもそうした面を持てればと思う。

教養は、学問や学者の世界だけのものではなく、一般生活の中での素敵な考え方や振る舞いもある。リーダーは重要だが、フォロワーも大切である。日本にグーグルのような大企業が出なくてもいい。グーグルなどが開発したものをどう取り入れるかも重要だ。(テンミニッツTV)

~~~ 長谷川塾メルマガ 2024年2月21日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(20日)

学術会議 任命されなかった大学教授ら 文書開示など求め提訴 | NHK | 日本学術会議 →任命しない理由を説明しなかった菅政権の対応は、強く非難されるべきだ。こうした問題はまず、当事者が戦わない限り進展しにくい。提訴したのは遅まきながら前進だ。6教授は政府の安保政策などを批判していた。戦争はアカデミズムの異論を排除する「文化戦争」から始まることを忘れてはならない。

塩谷・武田氏、政倫審で弁明へ 自民回答、野党「話にならぬ」:時事ドットコム (jiji.com) →51人の野党要求に対して2人とはいかにも少ない。5人衆の西村氏も出るという。バトルはしばらく続く。今の与野党攻防は国民にかなり地味に映るが、将来の政権の行方を左右する暗闘になっている。当事者や永田町スズメは、政治家の一挙手一投足を見つめている。

元徴用工訴訟、日立造船の「供託金」を原告側が受領…日本企業に資金面で初の実害 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) →歴史認識のようにその時代で解決しきれない問題は、双方が矛盾を抱えながら前に進めるしかない。お互いが自分の主張をするが、解決を次の世代に委ねることも大切な知恵だ。

映画監督の榊英雄容疑者を準強姦容疑で逮捕 演技指導名目で性加害か:朝日新聞デジタル (asahi.com) →映画やテレビの世界で、以前からささやかれていたが、表面化する時代になった。権力関係を背景にしており、被害を訴える人は複数いるという。「事実はない」と全否定するより、まずは被害を訴える声を重く受け止めるべきだろう。松本人志の一件と似た構図だ。

高校野球 花巻東 佐々木麟太郎「覚悟をもって決断した」 アメリカ スタンフォード大学進学に向け決意 | NHK | 高校野球 →花巻東高校は今や最強ブランドだ。菊池や大谷ら優れた先輩を持っていることが、いかに後輩の進路を広げるか。大リーグは2年後に指名できるというが、日本のプロ野球には規定がないようだ。この際、4年間じっくりと野球も勉強もし、卒業して欲しい。

*** 「今日の名言」

◎マルコムX(米の公民権運動活動家。1965年2月21日暗殺、39歳)

「アメリカン・ドリームなんて見たことがない。私にとってはアメリカの悪夢だ」 「差別することは、支配することである」 「真実は、虐げられる側にある」 「この国の仕事は、黒人への弾圧と搾取、汚職である。この政府は、黒人を見捨てた」 「我々の目的は、いかなる手段をとろうとも、完全な自由、正義、平等を確立することだ」 「私は、怒りは正しいと信じている。聖書にも怒るべき時があると書いてある」 「自由のために死ぬ覚悟がないのなら、自由という文字をお前の辞書から消すがいい」 「地球上で最大の権力を持つ組織はメディアだ。無実の者に罪を着せ、罪深き者を無実にする力を持つ」 「信念を持たない人間は、あらゆることに流される」 「教育こそが未来へのパスポートだ」 「人の話を聞くのにはコツがある。相手がしゃべっているとき、じっとその声音を聞くんだ。誠実な人間かどうかわかる」 「我々は人間としての承認を得るために闘っているのだ」 

*** きょうの教養 (教養とは何か③) 

◎長谷川眞理子=前総合研究大学院大学長/「自分で考える人間を議論で育てる」

日本で教養学部廃止論が活発だった1990年代初め、アメリカのエール大学で教えた。リベラルアーツを核とする大学で、学生は4年間ずっと教養学部で学ぶ。エール大学の学生用のシラバスは教養について、次のように書いてある。

人類が集積してきた知の体系には4分野がある。哲学・文学・歴史などの「人文科学」、法学・経済学・社会学などの「社会科学」、物理学・化学・生物学などの「自然科学」、そして「語学」。世界の多様な言語を学ぶと、それぞれの言語のもとで育まれる文化も知ることができる。この4分野のいくつかに精通するメジャー(専攻)とマイナー(副専攻)を専攻する。さらに次が重要で、「一市民としてこれからの社会で直面する諸問題に対し、何ものにも惑わされることなく、自分自身の判断をくだすことができるような人間にする」と書いてある。民主主義を支えるには「自分で考える人間」「批判的思考のできる人間」が必要で、そうでなければ民主主義社会がうまく働かない。そういう人間を育てる基礎が教養だという。

欧米の大学では、おやつや夕食の時間によく知らない人同士が集まって議論する場が数多くある。お互いのやっていること、考えていることを話し、時に価値観をぶつけ合いながら、いろいろな話をする。お互いの好奇心やイマジネーションを深めていく場になっている。日本の初等教育は、変な事を言ってはいけないという同調圧力が強く、あまり自分の意見や本心を言わず、忖度して探り合い、議論をしない。枝葉にこだわり、全体感や本質に関する思考が少ない。何か反対があると、やめてしまう傾向もある。

本来ホモサピエンスは好奇心が旺盛だ。情報は断片ではダメで、自分で整理する軸が必要になる。日本では明治以降の教養人が世間の生活から離れて机上の空論になってしまい、教養を重視しなくなった。知識を構造化する軸となるような価値観を持ち、どんなことでも意見が言えるようにもっともっと議論する必要がある。(テンミニッツTV)

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***デイ・ウォッチ(21日)

ホンダ、賃上げ2万1500円 2年連続で前倒し回答 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →ホンダとマツダが満額回答で先陣を切った。過去にない高水準という。賃上げは労使にとどまらず、日本経済再生の切り札として政府・日銀・政界・世界も注目している。去年も大幅な賃上げで盛り上がったが、物価上昇で実質的にはマイナスとなった。経営陣はどんどん出そう!

他国と共同開発の防衛装備品輸出 自公の政調会長が協議開始 | NHK | 防衛省・自衛隊 →安保政策に関わる重要問題だが、今月中に結論を出すという。10日もないので、突っ込んだ議論は期待できそうもない。公明党は「下駄の雪」と揶揄されながら自民党と離れないが、平和政党の看板が泣いている。どう決着するのだろうか。

政治資金問題 自民 松野氏 西村氏ら5人 衆院政倫審出席の意向 | NHK | 政治資金 →周りをきょろきょろ見ながら穴倉から出てくるクマのようだ。政治家は究極の個人事業主で、いざという場合は信念と良心に従った行動を期待したいが、無理か?

中国人権派の娘、日本で死去 父の面会かなわず:時事ドットコム (jiji.com) →習近平政権の負の側面。ロシアのプーチン体制と通底する。異論は抑え込むより自由に言わせて社会の問題点をあぶり出し、必要な改革するほうが政権にとっても好都合のはずだが、わからないのだろう。「弱いやつほど強く出る」の好例だ。

ENEOSホールディングス グループ会社会長 セクハラ行為で解任 | NHK | セクハラ問題 →エネオスグループはどうなっているのだろうか。首脳陣のセクハラが頻発している。よほど体質が古いのだろうか。社風に焦点をあてたインサイドストーリーが読みたい。

*** 「今日の名言」

◎山下奉文(陸軍大将。1946年2月23日、マニラで絞首刑、60歳)

「イエスかノーか?」(シンガポールの戦い終結で敵将イギリス軍司令官に降伏を迫る)  「私の不注意と天性が閑曼であったため、全軍の指揮統率を誤り、何事にも代え難い御子息あるいは御夫君を多数殺しましたことは、誠に申し訳のない次第であります。激しい苦悩のため、衷心よりお詫び申し上げる言葉を見出し得ないのであります」(絞首刑直前に語った言葉) 「この戦争を防止するため、私はあらゆる努力を払いました。しかし、悲しいかな、私の微力で阻止できなかったことは、誠に慙愧に耐えない次第であります」 「兵事は、いにしえより明君賢将の深く慎み戒めるところでありました。一部の者がひとの事を断じて国民大衆を多く殺傷し、残れる者を今日の如く塗炭の苦しみに落とし入れたことは、等しく軍部の専断である」 「米国の若手記者から日本敗戦の理由を聞かれ、思わず知らず飛び出した言葉は『サイエンス』でありました。敗因はこれのみではありませんが重大要因の中の一つであったことは紛れもない事実であります」

*** きょうの教養 (教養とは何か④) 

◎納富信富=東大大学院人文社会系研究科教授/「教養重視が欧州のアイデンティティー」

古典を学び教養ある人間になることがヨーロッパの理想だった。西洋の考え方が拡張し、今のグローバル社会になったともいえる。個人主義、人権、自由、個人情報といった概念は西洋発のグローバルスタンダードである。ヨーロッパとは文化的概念で、ギリシャ・ローマの古典とキリスト教を二本柱にしている。ヨーロッパのアイデンティティーと言える。古典を学び、人格を陶冶することこそが、ヨーロッパで最も格の高いエリートの学問である。古代ギリシャ語やラテン語で古典を読むことが、文化的な伝統になっている。

日本は明治維新で近代化が始まったが、オランダに留学して法律を学んだ西周は、ヨーロッパの基本はギリシャ哲学だと気がついた。法律以前に大事なものがあると自覚し、日本はサルまねではダメだ、西洋の根本にあるギリシャ哲学を知ろうと考えた。西洋の哲学を紹介したが、「哲学」という言葉自体、西の造語である。日本の知識人は夏目漱石に代表されるように西洋文化と日本の伝統との葛藤に苦しんだ。漱石の「私の個人主義」は代表作である。

なぜギリシャが起源になったかといえば、学問のルーツがギリシャにあるからだ。アリストテレスに代表される科学や哲学などいろいろな学問が出揃った。プラトンが作った学校(アカデメイア)ができたことも大きい。学校という教育制度を確立し、後世に大きな影響を与えた。東洋にも学問はあるが、学校との連動はなかった。ロゴス(言論)が合理性を生むという考え方も大きい。ポリス社会は民主社会で絶対的な人がいないので、言論の文化や自由が発達した。今の社会のモデルになっているとも言える。

しかし今は、西洋社会の行き詰まりがいろいろな形で出ている。環境破壊、個人主義の行きすぎといった点だ。これらすべてを相対化し、何が求められているか考える必要性が生まれている。ワールドフィロソフィーとも言える世界的な哲学が必要になっている。日本は西洋の動きを相対化し、中立的に学べる位置にいる。西洋文明を基盤とし、多元的な価値を対話で創造する新しい考え方を生み出したい。(テンミニッツTV)

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***デイ・ウォッチ(22日)

東京株、史上最高値 3万9098円68銭、バブル期超え―「失われた30年」脱す:時事ドットコム (jiji.com) 日経平均株価 史上最高値更新 消費税 ゲームボーイ 美空ひばり バブル景気に沸く35年前にあった出来事は | NHK | 株価・為替 →株価がやっとバブル期を超えた。株に関係した人には感慨深い。「失われた30年以上」を振り返る報道も多くなりそうだ。大きな節目を突破したので、次は4万円を超えるかどうかが焦点。実態経済が株価ほど強くないことに注意が必要だ。

鈴木財務相 政治資金問題 “納税行うかは議員が判断すべき” | NHK | 政治資金 →無税になる政治活動に使ったことを証明できなければ、納税するのが筋。納税は国民の義務だが、今の自民党を見ていると、義務さえ果たさないだろう。「租税法定主義」といって、税法は国会の議決で決める。国民に税金を払えと決め、自分では払わない。これでは秩序が保てない。

日銀総裁 “今後も物価上昇続く デフレでなくインフレ状態” | NHK | 日本銀行(日銀) →岸田首相は最近も「デフレからの脱却を」と訴えていたが、これほどの物価高だから当然インフレだろう。日銀総裁が遅ればせながら認めた。インフレなら賃上げも当然はずむべきで、経営者の胆力が問われている。金融緩和修正も近い。

「国府宮はだか祭」初めて女性参加 愛知 稲沢 厄よけ伝統神事 | NHK | 愛知県 →これもジェンダー平等と言えるだろう。担い手不足で存続が危ぶまれる祭りは多い。「不易流行」という通り、変えるべき点はどんどん変えていくべきだろう。「生き残るのは強い者ではなく、変わる者」ともいう。

俳優の山本陽子さん死去、81歳…テレビドラマで活躍・山本海苔店CMに長く出演 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) →2月2日に「徹子の部屋」に出たばかり。これを受けて週刊文春も「2人の元彼(田宮二郎と沖田浩之)が自殺の怪 悪女の履歴書」と昔話を報じたばかり。本当に急死だった。さっぱりした親分肌だったという。

*** 「今日の名言」

◎天皇陛下(2月23日は64歳の誕生日)

「雅子さんのことは僕が一生全力でお守りします」 「コロナ禍や最近の物価高などにより、社会的に弱い立場にある人々が様々な苦労をしていることに心が痛みます。弱い立場の人々を支え、命と暮らしを守るために力を尽くしている人々が多くいることは心強く、有り難いと思っています」 「結婚してから、30年近くが経つのかと思うと、時の流れの速さを感じます。人生の半分以上を私と一緒に皇室で過ごしてくれていることに、心から感謝するとともに、深い感慨を覚えます。一緒に多くのことを経験し、助け合って、喜びや悲しみを分かち合いながら、歩んでまいりました」 「沖縄県では、沖縄戦における御遺族の方々のお話を直接伺い、お一人お一人の御苦労や悲しみに思いを致しました。激しい地上戦となった悲惨さや、人々がたどった苦難の歴史に思いを巡らせ、犠牲となられた方々の御冥福をお祈りし、現在、私たちが享受している平和の有り難さを思い、改めて平和の大切さを深く心に刻みました」 「地震を始めとする自然災害は、いつ起こるかは分からないものの、繰り返し起こってきたことを忘れずに、災害から得た知識や教訓を将来に活かしていくことが大切だと思います」

*** きょうの教養 (教養とは何か⑤) 

◎石井洋次郎=東大名誉教授、元東大教養学部長・副学長/「4つの限界超えるリベラルアーツ」

「教養人はまず専門人でなければならない」と考えている。自分の「軸」や「核」がある程度固まってきた学生や人間にとってこそ、異分野との対話を通して疑問を投げかけ、他者に向かって開き、根底から見直すことが必要だ。リベラルアーツという概念は、「人を自由にする」「解放する」というリベラルの動詞的な意味が込められている。人々を種々の拘束や強制から解き放って自由にするための知識や技能を意味する概念だ。学生や人は4つの限界を抱えている。

最もわかりやすいのは「知識の限界」だ。すべてを知っている人間はいないのだから、誰もが多かれ少なかれ無知な存在である。次に「経験の限界」がある。経験は必ずしも年齢に比例するわけではないが、若い学生が接したことのある人間や行ったことのある場所は、相対的に少ない。自分と異なる価値観と正面からぶつかる機会もそれだけ乏しい。第3は「思考の限界」である。知識も経験も努力を積み重ねさえすれば広げることが可能だが、思考はそうはいけない。限界を乗り越えるためには、ひたすら本を読み、教員や友人たちと議論し、他者の言葉と格闘することによって「思考の筋肉」そのものを鍛えるしかない。リベラルアーツの最も重要な意義は、こうした訓練を通して学生の精神を既成の価値観から解き放ち、自分を取り巻く世界とより柔軟で豊かな関係を結べるようにすることにある。

第4は「領域の限界」である。特定の専門領域に「囚われて」いない者を解放することはできないが、狭い専門性に「囚われ」かけた段階で、その領域を相対化する視野が必要になる。具体的な試みとしては、「異分野交流・多分野協力」があげられる。(「大人になるためのリベラルアーツ」=2016年、東京大学出版会から)