6月3~7日(教養講座:橋爪大三郎の社会学講義)

2024.06.07メルマガ

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***デイ・ウォッチ(31~2日)

政治資金規正法改正、今国会成立へ 自民党修正案に公明・維新が賛成調整 パーティー券公開基準「5万円超」に – 日本経済新聞 (nikkei.com) →岸田首相が公明と維新に譲歩し、合意が成立した。最近の自民はすべて岸田首相が一人で決めている。リーダーシップか、党内バランスの混乱か。公明の妥協は予想されたが、維新は急展開。やはり与党が好きなのだろう。自民は4日の衆院通過を目指す。

トランプ前大統領 有罪の評決「不正で恥ずべき裁判」控訴か | NHK | トランプ前大統領 トランプ氏、今後どうなる? 収監や自宅軟禁の可能性:時事ドットコム (jiji.com) →不死鳥のようなトランプ氏も万事休したと思うが、どうだろうか。陪審員の全員が有罪と評決した。量刑言い渡しは7月11日で、実刑になれば選挙活動はできない。中間派はバイデン氏に傾いていくだろう。

為替介入、過去最大9.7兆円 大型連休に円急騰―財務省:時事ドットコム (jiji.com) →4月29日と5月2日とみられる円買い介入は、市場の予測を超えて過去最高規模に上った。財務当局は介入効果の乏しさをわかっているが、何もしないと批判も浴びるので介入せざるを得ない。円安基調は覆せない。次の円安相場はいつ頃か。

プーチン政権 兵士の妻たちで作る団体を「外国の代理人」指定 | NHK | ウクライナ情勢 →プーチンはついに兵士の妻たちも監視対象にする。政権批判をする動きが背景にあるが、「批判される根源を見つめ直すべきだろう」と言っても通じないのが、今のプーチン。異論を抑え込もうとしても限界はあるはずだ。

サバやカツオも…漁獲量 去年は過去最低か 「未利用魚」に活路 | NHK | 水産業 →ウナギやサンマに続いて、サバやカツオも食べられなくなる? 海の世界は実はよくわからない。日本には300種ほどのサカナがいるが、15~20種類ほどを集中して食べているのも一因と専門家。舌は保守的だが、新しいサカナの開発が進むかどうか。

*** 「今日の名言」

◎ヘレン・ケラー(米の作家、障害者権利運動家。1968年6月1日死去、87歳)

「元気を出しなさい。今日の失敗ではなく、明日訪れるかもしれない成功について考えるのです」 「世の中はつらいことでいっぱいですが、それに打ち勝つことも満ちあふれています」 「あきらめずにいれば、あなたが望む、どんなことだってできる」 「物事をなし遂げさせるのは希望と自信です」 「自分でこんな人間だと思ってしまえば、それだけの人間にしかなれない」 「世界で最も素晴らしく、最も美しいものは、目で見たり手で触れたりすることはできません。心で感じなければならないのです」 「大きな目標があるのに小さなことにこだわるのは、愚かです」 「目に見えるものは移ろいやすいけれど、目に見えないものは永遠に変わらない」 「私は正義のために戦っている人すべてに共感を覚える」 「私は、自分の障害を神に感謝しています。私が自分を見出し、生涯の仕事、そして神を見つけることができたのも、この障害を通してだったからです」

*** 今週の教養 (橋爪大三郎の社会学講義①) 

橋爪大三郎の「社会学講義」

社会学は新しい学問である。目の前の社会を相対化し、新しい概念を切り出す鋭さが特徴だ。最近ではジェンダー平等の概念が代表的である。社会学の基本的な視点について、「社会学講義」(ちくま新書、2016年)の第1章に掲載された橋爪大三郎氏(東京工業大学名誉教授)の解説を紹介する。

◎他学問との比較

社会学はどういう学問なのか。他の学問とどう違うかを考えたい。政治学は一口で言うなら、「政府の行動を研究する学問」である。政府は主に行政という活動をする。経済学は「企業の行動を研究する学問」である。企業の他に私たちの家計もあり、経済学の対象は売買の関係による企業や家計のつながり、つまりマーケットなのだ。法学は「裁判所の行動を研究する学問」だと考えられる。このように政治学も経済学も法学もどれも社会のごく一面に注目して研究を進める。他の側面はとりあえずどうでもいい、という扱いになる。では取り残された側面は誰も研究しなくていいのだろうか。やはり社会全体を丸ごと研究する学問も必要だ。これが社会学なのである。

社会とはずばり「人間と人間との関係」である。関係を人間と切り離さないところが、社会学の物の見方の最大の特徴である。社会はあくまでも人間と人間の関係と見るのである。政治学は「人間と権力の関係」として扱う。経済学は「貨幣による関係」とし、法学は「法律による関係」として扱う。こうした関係は全て特殊なものである。こういう具合で社会学の守備範囲は非常に広くなる。研究の方法も何でもありで、柔軟である。

その他の学問との関係はどうだろうか。人類学は社会学と似ている。未開社会の政治も経済も法律も何でも扱うからである。ただ、自分たちの社会ではなく、よその社会、異文化を扱っている。心理学も社会学との関係が深いが、最大の違いは、心理学が人間と人間の関係に注意を払わない点にある。心理学は人間を1人だけ取り出して、こんな風に刺激を与えたらこんなふうに反応したという「刺激と反応の関係」を研究する。一方、社会学はあくまで社会を対象にする。

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***デイ・ウォッチ(3日)

トヨタ自動車 マツダ ヤマハ発動機 ホンダ スズキ “性能試験で不正” 国交省 出荷の一部停止を指示 | NHK | 自動車 トヨタ豊田章男会長「認証の根底揺るがす行為」 不正巡り – 日本経済新聞 (nikkei.com) →ダイハツの不正をきっかけに各社が調査したところ、5社で不正が発覚した。トヨタ、マツダ、ヤマハ発動機は生産中の車種があり、出荷停止となった。グループで不正が頻発しているトヨタから国交省は立入検査を実施する。不正は多岐にわたるが、悪質性の軽重はどうなのだろうか。

笹生、最年少2度目V 渋野2位、日本勢ワンツー―全米女子オープンゴルフ:時事ドットコム (jiji.com) →日本人がワンツー・フニッシュ。笹生は全米OP2勝目、日本人でメジャー大会2勝は初めて。父は日本人、母はフィリピン人で、コストの安いフィリピンで練習を積んだ。渋野は低迷を脱して復活。やはり日本はスポーツ・文化大国になりつつある。

メキシコ初の女性大統領 与党シェインバウム氏当選確実 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →メキシコでジェンダー平等の歯車が回った。シェインバウム氏は61歳の環境科学者で、現大統領がメキシコシティー市長時代、30歳代で市環境長官に抜てきされた。「女性」「環境」と新しい流れを象徴する。外交や治安改善が課題という。

国立競技場民営化、スポーツ大会やコンサート増で528億円を国に…優先交渉権のドコモら4者 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) →ドコモなどのグループが国立競技場の運営権を獲得した。鹿島建設などのグループ、東急などのグループに競り勝った。ドコモにノウハウはあるのだろうか、大丈夫だろうか。それとも新しい試みであっといわせるのだろうか。

オッペンハイマーの孫が来日会見 「核に限らず兵器使うべきでない」 [核といのちを考える]:朝日新聞デジタル (asahi.com) →原爆製造のオッペンハイマーの孫が来日、会見した。「大国間の緊張が高まる今こそ、国際連帯の必要性を訴えた祖父の助言から学び世界平和を考えるべきだ」と強調した。核不拡散を訴える平和主義者だ。「映画をきっかけに祖父のメッセージを伝えたい」とも述べた。

*** 「今日の名言」

◎織田信長(戦国大名。1582年6月2日、本能寺の変で死去、47歳)

「(本能寺で明智光秀軍に囲まれ)是非に及ばず(いたしかたない)」 「必死に生きてこそ、生涯は光を放つ」 「臆病者の目には、敵は常に大軍に見えるものだ」 「理想を持ち、信念に生きよ。理想や信念を見失った者は、戦う前から負けている。廃人と同じだ」 「仕事とは自ら探してやるものだ。自分が創り出すものだ」 「生まれながらに才能のある者は、鍛錬を怠る、自惚れる。生まれつきの才能がない者は、何とか技術を身につけようと日々努力する。心構えがまるで違う。これが大事だ」 「組織に貢献してくれるのは、優秀な者よりも、能力は並の上だが、忠実な者の方だ」 「用を言いつけられなかったからといって、そのまま退出するようでは役に立たない。お前は塵に気付いて拾った。なかなか感心である」 「絶対は、絶対にない」 「人間の50年の生涯ははかないものだ。死なない者は存在しない」

*** 今週の教養 (橋爪大三郎の社会学講義②) 

◎啓蒙思想からコントへ

 社会とは何かという大きな謎をめぐって、数百年にわたって議論され、どうも社会学という学問が必要だとなった。社会学が一応成立した19世紀半ばまでの議論を考えてみたい。かつてはあるべき社会の姿を考えることに関心があった。啓蒙思想の時代だ。勃興しつつある市民階級は「現実社会は封建的でどうしようもない。あるべき社会を打ち立てよう」と考えた。望ましい社会は人間が理想的な関係を結んで作り出す社会であり、キーワードが「契約」だった。啓蒙主義者たちは「社会契約」によって市民社会を打ち立てるという理想と気概に燃えていた。当時は政治学や経済学とかの区別はなかった。

フランス革命をはじめとする市民革命が劇的な成功を収めると、市民階級の間から、今の社会とあるべき社会をはっきり区別する考え方が生まれてきた。背景には、革命が終わっても理想の社会が実現しないという幻滅があったのだろう。こうした人々の中から、目の前の現実社会を見つめるべきだという実証主義者が登場し、代表格はA・コントだった。あるがままの社会には自然法則に匹敵する法則性があるはずで、それを認識し科学的に研究することが必要だとなった。社会の中の法則性については、「アナロジー=類推」によってとらえようとした。社会は、独自の運動法則を備えた全体であり、社会を「有機体=生物」みたいなものと考えた。19世紀は進化論が圧倒的な勢力を振るった時代だったので、この発想は人々に受け入れられやすかった。この第2段階は「社会有機体説の時代」と呼ぶことができる。有機体とのアナロジーは、よちよち歩きの社会学にとってまことに都合が良かった。

しかし、アナロジーは「アナ・ロジー」で「ロジックのなりそこない」という意味にすぎない。ひとり一人の人間がどういうふうに全体を作っているかをきちんと議論するものではない。社会の全体がどういう風に動いているかを個別の要素から説明する論理が欠けていた。こうした手詰まりが明らかになり、社会有機体説は下火になっていった。

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***デイ・ウォッチ(4日)

トヨタ本社を立ち入り検査 悪質なら行政処分も―型式指定不正・国交省:時事ドットコム (jiji.com) トヨタ、過信が生んだ法令軽視 情報共有進まぬ風土 認証不正 日本品質のおごり㊤ – 日本経済新聞 (nikkei.com) →高品質を誇ったトヨタへの立ち入り検査。トップメーカーだけに注目を集める。豊田章男会長はメディアとの関係がいいとは言えず、今後、多くの分析記事がでそうだ。日経記事では悪質性が高いのは、レクサスのケースで、データ改ざんがあったという。

水原一平元通訳 起訴内容認める 大谷翔平選手が声明“事件に終止符を”量刑は10月25日に言い渡しへ | NHK | 事件 →水原元通訳が起訴内容を認め、10月25日に量刑が言い渡される。大谷選手は「事件に終止符を打ち、前に進む時」、ドジャースも「問題を過去のものに」と声明を発表。関係者にとっては過去の話になり、水原通訳の茨の人生が始まる。

インド総選挙 モディ首相勝利宣言も 与党は大幅に議席減 | NHK | インド →グローバルサウスのリーダー・モディ首相の政権維持が固まった。しかし、与党議席は大幅減。貧しい農家出身で「インドの田中角栄」とも呼ばれ、抜群の実行力を誇るモディ氏だが、経済成長の恩恵を受けられない人の不満は大きい。ヒンズー教至上主義もマイナスだろう。パワーバランスの変化に注目。

政府の「金融・資産運用特区」に4地域 東京 大阪 福岡 北海道 | NHK | 金融 →「日本を金融立国に」という掛け声は30年以上も前からあったが、実現しているとはいえない。東京など4地域を金融・資産運用特区にするという。法人設立を英語だけでOKするなどが柱だが、その程度で特区として育つのだろうか。ケチをつけるつもりはないが、あまりに小粒。

「骨太の方針」骨子案 労働市場改革など重点的に 賃上げ定着へ | NHK | 働き方改革 →小泉政権時代は大きな関心を集めた「骨太の方針」。最近はほとんど注目されない。政権の位置づけ次第だが、求心力を欠く岸田政権ではどうしようもない。この結果、政府の政策が国民に浸透しない。

規正法改正案、自民が維新の反発受け「50万円超」を削除…5日の特別委での採決合意 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) →自民の修正案に維新が反発したが、自民の譲歩でまとまった。5日の特別委員会で採決の見通しだ。法案の調整過程でわかったことは①自民は政治資金改革に消極的②公明は支持層に不満がたまっている③維新の本質は与党寄り、だった。有権者が次の選挙でどう判断するか  。

*** 「今日の名言」

◎方正(中国のアスリート、民主活動家。1989年6月4日の天安門事件で両足を失う

「私は天安門事件の当事者であり、戦車で両足を失った被害者でもある」 「中国政府はデモを暴乱だとして、武力行使を正当化しているが、学生たちは反体制の目的ではなく中国を良くしたいという思いで天安門広場に集まったのだ」 「天安門事件で足を失ってからもアスリートを続け、障害者スポーツのやり投げと円盤投げで全国優勝したが、政府は天安門事件の当事者である私を表舞台に出さず、世界大会への出場権を奪った。繰り返し政府による弾圧を受け、2009年に米サンフランシスコへ移住した」 「言論弾圧、教育や情報の統制により、事件を知らない若い人が増えていることを懸念している。これは中国共産党との記憶の戦争だ」 「私は中国の真実を伝え、同じ考えを持つ仲間を増やすことで、中国を平和で民主的な政治に変えていけると信じている。国際社会の応援は不可欠であり、日本の皆さんにもご協力いただけると大変ありがたい」

*** 今週の教養 (橋爪大三郎の社会学講義③) 

◎3人の巨人

社会の要素と全体とのつながりを明確な形で問題にした3人の巨人によって、社会学が誕生した。まずG・ジンメルは、形式社会学の創始者である。人間と人間との関係には「結合」と「分離」の関係があると主張した。要素的なものの積み重ねによって全体を説明する点が新しかった。

E・デュルケムは、人間の「連帯」を考察した。ジンメルの「結合」と似ているが、その先を考え、「機械的連帯」から「有機的連帯」へと社会が段階的に進化すると主張した。単純な社会では人間の関係がワンパターンで、親兄弟の結びつきのようにずっと同種の関係がつながっている。一方、有機的連帯は異なる要素が集まって全体を構成する。例えば、家庭、学校、企業、社会、政府のように性質の違うものが集まって社会は構成されていると主張した。もう一つ、「社会的事実」という重要な概念を提出した。それぞれに意図がなくても、大勢が集まって行動していると、結果的に拘束力が生まれ、それが社会法則に転化するという。流行やバブルが典型だ。

最後の一人はマックス・ウェーバーだ。要素と全体の関係を意識し、制度はなぜ存在するのかと考えた。一つの答えは「伝統」で、昔からあって再生産されている。制度の始まりについては、「カリスマ」という概念を持ち出した。ある個人が持っているカリスマ的な能力が他の人間に大きな影響を与え、雪だるま式に膨らんでいく。カリスマは死んでしまうが、子孫や家来達が残り、官僚化したり習慣化したりして制度になる。ウェーバーの考察は、単に「全体が有機的にうまくいっている」ではなく、形成過程に関する丹念な仮説を考える画期的なものだった。最も有名な「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」では、一人の行動パターンが社会制度をどのように生み出したかを研究した。

3人に共通するのは、社会の個別要素と全体との関係を常に意識していることである。個々人が生み出した社会関係が、時代や歴史や制度をつくっていくというダイナミズムを視野に収めて掘り下げた。3人によってアナロジーの域を脱した社会学が誕生したのである。今でも社会学者を志す人々は3人の書物を必ず読むことになっている。3人が社会学者のアイデンティティとなっている。

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***デイ・ウォッチ(5日)

合計特殊出生率 2023年は1.20 出生数72万7277人 ともに過去最低 | NHK | 少子化 →出生率は8年連続で前年を下回り過去最低を更新。都道府県別で最低は東京都で、1を切って0.99。北海道、宮城県と続く。東日本が低く、西日本が高い傾向がある。子どもを持つかどうかは個人の自由という大前提を踏まえたうえで、政府は「日本が立ち行かない」と強力な改革をすべきだろう。

支援金徴収、26年度から 児童手当は所得制限撤廃―改正子育て支援法が成立:時事ドットコム (jiji.com) →児童手当の所得制限をなくし、財源を保険に求める異次元の子育て支援。支援は重要だが、国は財源を保険ではなく、正々堂々と税金で求めるのが筋だろう。長期的な見通しを示し、国民の合意をつくるのは政治にしかできない仕事だ。

4月の基本給など所定内給与 前年同月比2.3%増も 実質賃金はマイナス続く「毎月勤労統計調査」 | NHK | 物価高騰 →日本がどんどん貧しくなっている。春闘の大幅賃上げで湧いたが、実質賃金は2年以上もマイナスだ。円安による輸入物価の高騰が直撃している。夏には実質賃金がプラスに転じる可能性が指摘されるが、引き続きの大幅賃上げが求められている。

国スポ改革「聖域なし」 広域開催なども検討へ:時事ドットコム (jiji.com) →開催地が優勝する悪弊は1964年の新潟国体から始まった。反比例するように国民の関心が落ちていった。開催地は何年も前から有望選手を地元にスカウトし、国民はしらけた。多くの人が関心を持ち、ワクワクするようなスポーツ大会とは何か。知恵を期待したい。

“秘密漏えい”鹿児島県警元部長「職員の犯罪行為隠蔽許せず」 | NHK | 鹿児島県 →情報漏洩で逮捕された鹿児島県警の元部長が「県警本部長が県警職員の犯罪を隠ぺいしようとした」と拘留理由開示公判で明らかにした。元部長は本部長の隠ぺい行為をまとめた資料を記者に郵送していた。本部長の「犯罪」か、元部長の「暴走」か。常識的に前者だろう。県警はノーコメント。

*** 「今日の名言」

◎レイ・ブラッドベリ(米の小説家、詩人。2012年6月5日死去、91歳)

「崖から飛び降りるんだ。落ちていく間に翼を作る。それがリスクを取るということだ」 「あなたの中のヒーローやヒロインが望んでいることを見つけ、それが見つかったら、その望みに1日従ってみよう」 「考えてはいけないよ。考えることは創造の邪魔になる。それは自分を意識しすぎなんだ。ただやってみよう」 「自分がやっていることを好きじゃないなら、やめてしまえ」 「愛はすべてに対する答えであり、何かをするための唯一の理由だ。君がだれかを愛するストーリーを思い描かなければ、そして他者がだれかを愛するストーリーを思い描かないならば、君はなにかを成し遂げることは決してできないだろう」 「本を焼却するよりも悪い犯罪がある。その一つは本を読まないことだ」 「私たちは、信じられないような宇宙に生まれた、あり得ない存在なんだ」 「科学者になることは、子どもになることだ」 「最高の科学者は、経験したことをオープンに受け入れ、空想から始めるものだ」 

*** 今週の教養 (橋爪大三郎の社会学講義④) 

◎20世紀のキーワード「システム」

1930~50年代に経済学が急速に進歩し、過去の理論の数学化をほぼ完成した。その際のキーワードが「システム」で、社会学も含めて20世紀の学問の指導理念となった。システムの定義は「多くの要素からなる全体」である。全体は要素に分解でき、逆に要素を組み合わせれば全体が再現できると考える。特徴を単一要因説と比較するとわかりやすい。これは特定の原因を一つだけ考える立場だが、あまりに単純で科学的な批判に堪えない場合が多い。システム論は、全ての要因が互いに連関していると考える。すべての要因が相互連関した結果、現象が現れたと考える。

経済学でシステム論が成功したのは、市場が有効な構造を備え、価格という変数で経済主体の行動や市場の状態が数学的に表現できるからだ。この動きを社会学にも応用した人物としてタルコット・パーソンズというアメリカの社会学者がいる。システム論だけでは社会を説明できないと考え、「機能」という要因を付け加えた。「機能」は「目的」と考えればいい。社会のシステムには必ず何らかの目的が備わっているという主張で、「構造-機能分析」という理論にまとめた。システム論で見落とされていた個別の人間の生きる意味と社会との落差に光を当てる着眼である。

最近の社会学の特徴は、データに関する方法(メソッド)の進歩だ。3段階ある。コンピューターの発達で、まずデータ収集が進歩した。次にデータ解析が進んだ。3番目がデータの解釈で、ここが一番インパクトを持つ。個人の名人芸の世界だが、今は立ち遅れている。解釈の方法として、最近のはやりでいえばミシェル・フーコーの権力分析、アナール学派の社会史を下敷きにするやり方、消費社会論の記号の「戯れ」を流用するやり方、フェミニズムの角度から男女差別で問題を一刀両断するやり方、N・ルーマンの自己組織性などがある。これらを適用すれば、一応論文は書けるが、社会の見方を個々人の責任で練り上げていることにはならない。だから何なのか、となる。自分が何をしたいのかという方向感覚を見失っているのではないか。それが最近の社会学に関する私の現状診断だ。

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***デイ・ウォッチ(6日)

政治資金規正法改正案が衆院を通過 自公維などの賛成多数で | NHK | 政治資金 →昨年末に明らかになった裏金問題は、一つの節目を迎えた。法案に世論の支持はなく、自民党の統治や自浄の能力欠如がはっきりした。野党は立憲と共産の連携が深まり、総選挙に向けて国民民主の取り込みが焦点。維新は孤高の戦い。日本政治の長期再編はこれからが本番だ。

型式不正6車種、月内に安全性試験を完了…影響を最小限に抑えるため国交省が方針 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) スズキ本社に立ち入り検査…トヨタ・ヤマハ発動機に続き異例の3日連続立ち入り : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) →不正6車種の出荷が停止され、5社への立ち入り検査も続いている。地域経済への影響を懸念する声も出始めている。国交省は月内に安全試験を終了する予定だが、これほど頻発する自動車不正について納得感あるけじめが必要だろう。

世界文化遺産目指す「佐渡島の金山」ユネスコ 情報照会の勧告 | NHK | 新潟県 →「情報照会」は4段階の評価のうち上から2番目で、近く世界遺産に認定される例が多いという。佐渡金山をめぐっては、韓国が「朝鮮半島出身者が強制労働をさせられた場所」と反発してきた経緯がある。日韓間の取り扱いも焦点になる。

鹿児島県警“秘密漏えい”事件 内部文書は別事件の関係先に 元部長「隠蔽」本部長「確認を進めていく」 | NHK | 鹿児島県 →全国的な関心を呼び始めた。「泳がせておけ」という本部長の方針がどこまで悪質かはまだわからないが、背景がありそうだ。逮捕された元部長は文書を記者に渡したので、多くの報道がされそうだ。NHKは今朝、文書の問い合わせ先を刑事部長としていたと報じていた。

所得低いほど高血圧傾向 飲酒や肥満多く、生活習慣にも差―1億人調査・東京医科歯科大学院:時事ドットコム (jiji.com) →所得が低い人ほど高血圧で不健康な状態にあることがわかった。延べ1億人を調査したというから大規模だ。病気を予防する情報は年々増えている。広く浸透させることが重要になっている。

*** 「今日の名言」

◎西田幾多郎(哲学者。1945年6月7日死去、75歳)

「善とは一言でいえば、人格の実現である」 「善はすなわち、美である」 「花が花の本性を現したときに最も美しいのと同様、人間が人間の本性を現した時、美の頂上に達する」 「知は愛であり、愛は知である」 「知と愛とは同一の精神作用である」 「涙をもってパンを食べたことのない人の人生観は、いかほどの価値のあるものであろうか」 「苦悩なき者は、深き精神的趣味を理解することはできない」 「衝突や矛盾のあるところに精神があり、精神のあるところには矛盾や衝突がある」 「罪悪や苦悩は、人間の精神的向上の要件である」 「生命なき事業は虚栄であり、生命なき道徳は偽善である」 「人間は五里霧中に彷徨する哀れな生き物である」 「真摯に考え、真摯に生きんと欲する者は、必ず熱烈なる宗教的要求を感ぜずにはいられないのである」 「人は人 われはわれなり とにかくに われ行く道を われは行くなり」

*** 今週の教養 (橋爪大三郎の社会学講義⑤) 

◎社会学はどこへ

東西冷戦は経済体制やイデオロギーの対立だったが、社会科学の構想の違いでもあった。社会主義国はマルクス主義によって社会を構想し、アメリカなど西側諸国はさまざまな学問の共同戦線で対抗した。経済学は古典的自由主義経済をベースにする近代経済学、政治学は民主主義論、法学は主権在民の原理から出発する法律学、社会の実証的な科学としての社会学。これらが協力し合ったのが自由主義陣営のシステムだった。

主に西側の経済学が頑張ってマルクス主義が破綻したが、マルクス主義から学ぶべき点はたくさんある。あらゆる社会科学が緊密一体に結びついているという考え方が大事だ。社会科学は本来、一体だ。政治学、経済学、法学が別に成立するのは、政府や企業や裁判所が別個のものになっているからで、これらを決めたのは自由主義国家の制度を作った人たちだ。制度にどっぷり浸かっている限り、見えてこないことがいっぱいある。政治学は人権のシステムがよいと言うが、在日外国人の扱いや選挙区の一票の格差や地方自治をどうするのか。経済学は男と女が結婚して家庭や家計を構成するというが、男と男が結婚したらどうか。人に権利や法的利益を認めているのは社会慣習によっているが、社会慣習が時代とともに変わっていくならどうするのか。これらを解明するのは社会学だ。

社会学の進むべき道は、政治学や経済学の真似をして制度化された学問に収まることではなく、持ち前のゲリラ的な問題発見能力をフルに使って他の学問の領域に進出し、社会問題を掘り起こしていくことだと思う。質の高い情報を与えて社会の進むべき指針を示すのが役目だ。社会学は1世紀あまりの歴史しかなく、学問というより、物の見方だ。何事も人間の行為の産物であり、制度は絶対のものではなく、変り得る。人間が実際に生きていることをベースとし、生きにくい制度を変えるべきだと抗議の声を上げるのが社会学ではないか。社会の変化を長い目で見た上で、制度のしがらみに対して、いつ誰の責任でこういう制度に出来上がってしまったのかをはっきりさせ、制度を変える条件は明らかにしていく。社会学はこうしたスタンスで問題を研究すべきだろう。

◎次週は「吉田秀和の世界都市論」です。