6月17~21日(教養講座:上野千鶴子の情報生産者になる)

2024.06.21メルマガ

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***デイ・ウォッチ(14~16日)

日銀 植田総裁会見 国債買い入れ減額は予見可能な形で | NHK | 日本銀行(日銀) →日銀は慎重に動いている。国債買い入れの減額を決めたが、金額などは次回に持ち越した。動きが遅いという指摘もあるが、早く動くと金利が跳ね上がり混乱するという読みなのだろう。利上げは功罪両面あるが、今は「罪」の方が大きいと判断している。やりすぎた金融緩和のツケといえる。

G7 首脳宣言採択 ウクライナへ新たな支援明記 ロシアを支援しないよう中国をけん制 | NHK | G7サミット ◎「平和サミット」共同声明採択し閉幕 一部の国が声明支持せず | NHK | ウクライナ情勢 →サミットはイタリアでのG7から、スイスで約100カ国が参加したウクライナ平和会議へ。共同声明は一部が支持しなかった。「法の支配」という西側の理念だけでは多数派を形成できない現実がはっきりした。米国中心の世界秩序にロシアや中国が反発し、グローバルサウスにも影響しているためだ。G7は理念だけにとどまらない多層的な政治力が必要だろう。

沖縄県議会議員選挙2024 開票結果 玉城知事を支持する県政与党 過半数を確保できず 投票率は過去最低 | NHK | 選挙 →48議席のうち自民党など県政野党が28議席を獲得。立憲や共産など玉城知事の与党は20議席にとどまった。告示前は24議席で同数だった。自民は裏金問題で選挙での敗退が続いたが、健闘した。国と厳しく対決する知事の姿勢にどう影響するか。

三菱UFJ銀行と証券2社の処分を勧告 顧客情報を同意得ずに共有 | NHK | 金融 [社説]顧客の信頼損ねた三菱UFJは猛省を – 日本経済新聞 (nikkei.com) →三菱系の不祥事は少ない印象があったが、顧客情報をグループ内でたらい回しのように共有していた。役員関与の指摘もあり、問題事案は二桁にのぼる。コンプライアンスなんて所詮この程度か、と思う。システムより「人作り」だろう。

東北大、「卓越大」1号正式認定へ 秋以降、初年度100億円―文科省:時事ドットコム (jiji.com)→文科省が札束で大学を競争させようとしても、うまくいくとは思わない。「管理!管理!」で現場を萎縮させるのが関の山だろう。「大学に任せるとサボって何もしない」という反論もありそうだが、政府が高等教育に深く関与するのは東アジアくらいではないか。カネは出すが、口は出さない。もっと自由を!

「窓ぎわのトットちゃん」 世界最大級のアニメ映画祭で特別賞を受賞 黒柳徹子さんの自伝的な物語 | NHK | 映画 →黒柳徹子の自伝的アニメ。個性的すぎて手に負えないトットちゃん(黒柳)。退学になって転校したトモエ学園の校長先生が言った「君は本当はいい子なんだよ」という一言が、世界でも評価されたことになる。文科省にはこうした励ましの教育を広げて欲しい。

*** 「今日の名言」

◎シルヴィオ・ベルルスコーニ(イタリア首相を4回、ACミランオーナー。2023年6月12日死去、86歳)

「私が政治家になったのは、未熟な勢力や政治的、経済的に破綻した過去と密接に関係している人々によって統治される、非自由主義的な国には住みたくなかったからです」 「チャーチル首相がナチズムと戦ったように、私も共産主義と戦います」 「私を汚職で告発することは、施設の少女がリンゴを盗んだという理由でマザーテレサを逮捕するようなものです」 「(2015年)プーチン大統領は他者を尊重し、思慮深く、非常にリベラルで、約束を守る人物であり、真の民主主義者です。私は彼を15年以上知っており、非常に大きな誠意を持ち、非常に大きな信頼を置いています。彼は間違いなく世界ナンバーワンのリーダーです」 「中国には当初の完全な共産主義はもはや存在せず、今では資本主義国となっており、汚職などは確実に、従来の体制に由来しています」 「私よりも多くのことを成し遂げたのは、ナポレオンだけです」

*** 今週の教養 (上野千鶴子の情報生産者になる①) 

今週は、東大名誉教授で社会学者である上野千鶴子さんの「情報生産者になる」(ちくま新書、2018年)を取り上げる。大学生や大学院生ら向けの知的生産のための教科書だが、新しい価値や事業を考えるビジネスパーソンにも参考になる。

◎研究とは  大学以上の段階では、勉強(しいてつとめる)ではなく、学問(学んで問う)が必要になる。正解のある問いではなく、答えのない問いを立て、自らその問いに答えなければならない。それが研究(問いを極める)というものだ。研究とは、まだ誰も解いたことのない問いを立て、証拠を集め、論理を組み立てて答えを示し、相手を説得するプロセスを指す。すでにある情報だけに頼っていては十分ではなく、自らが新しい情報の生産者にならなければならない。大学の授業の目的はいつも「情報生産者になる」ことだった。

世の中にはたくさんの情報が流通し、たくさんの情報消費者がいる。情報通で情報のクオリティにうるさい人を「情報ディレッタント」と呼ぶ。質の高い消費者がいるからこそ情報のクオリティも上がるのだが、情報も料理も消費者より生産者の方が偉いと断言する。グルメの消費者より料理を作る人の方が何倍も偉い。生産者はいつでも消費者に回ることができるが、消費者はどれだけ通でも生産者に回ることが出来ないからだ。

情報ディレッタントになるより、どんなにつたないものでもいいので、オリジナルな情報生産者になることを求めてきた。偏差値の高い学生たちは好みのうるさい情報ディレッタントになりがちだ。ないものねだりや揚げ足取りになる傾向がある。他人の生産物の辛辣な批評家になることは誰にでもできるし、快感でもあるが、お前がやってみろと言われて代替物を提示するのは容易ではない。情報生産者の立場に立つことを覚悟して消費者になると、消費の仕方も変わってくる。情報が生産された楽屋裏を考えるようになる。情報生産者になることは情報消費者になることよりも何倍も楽しいし、やりがいも手応えもある。

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***デイ・ウォッチ(17日)

プーチン氏、24年ぶり北朝鮮訪問へ 軍事協力拡大か ロシア発表:朝日新聞デジタル (asahi.com) →プーチンが外交攻勢をかけている。弾薬の提供を受けるなど関係を強化している北朝鮮を24年ぶりに訪問する。その後、ベトナムも訪問する。反米勢力の結集が狙いだが、国連は無力になり、世界はますます多極化する危うい状況になっている。

日赤名古屋第二病院(八事日赤)で医療過誤 適切な治療行わず高校生死亡 | NHK | 医療・健康 →名古屋・八事日赤の研修医が、高校生の脱水数値を見逃して胃腸炎と判断。症状が治まらないので翌日、救急外来で受診したが、別の研修医が近くのクリックを受診するよう指示。クリニックが緊急事態と判断して入院させたが、翌日心肺停止となり、その後亡くなった。親にしてみれば痛恨事。研修医任せにせず、真面目にやれと言いたくなる医療過誤だ。

三井住友銀行が脱年功、年収5000万円も シニア減給廃止 【イブニングスクープ】 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →有料記事。三井住友銀行が年功序列制を廃止する大胆な改革に着手する。2026年1月導入がメド。シニアの一律減給も廃止し、20代で2000万円台、一般行員で5000万円台の年収もありうるという。大きな時代の流れだが、ここまで年収が高いのはメガバンクならでは、だ。

ユニセフ「子どもに対する戦争」ガザ地区の子どもに強い危機感 | NHK | イスラエル・パレスチナ →「これは子どもに対する戦争だ」。来日しているユニセフの地域代表が、ガザで1.7万人の子どもが親を失ったとして強い危機感を訴えた。栄養失調に陥り、搾取や虐待の恐れもあるという。国連もイスラエルの後ろ盾の米国も何もできない。無法地帯が広がっている。

*** 「今日の名言」

◎トーマス・クーン(米の哲学者、科学者。1997年6月17日死去、73歳)

「次世代のパラダイムに気づくためには、多くの反証を切り捨てる必要がある。新しいパラダイムが多くの問題を抱えている時に、古いパラダイムを打ち破ることを確信しなければならない。この判断は直感によってのみ到達しうる」 「天動説が主流を占めていた頃、天動説に根ざして天文学的な事象を予測するさまざまなモデルが開発された。地動説に立てばそれらの数式やモデルがもっと無理なく使えるということは、コペルニクスとケプラーが登場するまでわからなかった。彼らが登場して、初めて天文学におけるパラダイムシフトが起こり、学問上の飛躍的な進歩が見られるようになった」 「科学者は世の中の動きについて基本的な見方を共有するものだ。その見方が、その時点での支配的パラダイムなのである。ほとんどの実験はその見方の枠内で行われる」 「新しいパラダイムの基本的発明を遂げた人は、非常に若いか、パラダイム変更を促す分野に入ってきた新人のどちらかである」 

*** 今週の教養 (上野千鶴子の情報生産者になる②) 

◎情報とは  情報はノイズから生まれる。これが情報工学の基本だ。ノイズのないところに情報は生まれない。ノイズとは何か。ノイズは、違和感、こだわり、疑問、引っ掛かりのことだ。当たり前だと思って何の疑問も感じない環境の下では、ノイズは生まれない。ノイズの中から意味のある情報が生まれることがあり、情報にならずにノイズのまま終わってしまうこともある。できるだけたくさんのノイズが発生するような環境を作っておくと、それだけ情報生産性が高くなるとも言える。

自分が当たり前だと思って何の疑問も抱かない環境では、ノイズは発生しない。これを社会学用語で「自明性」という。反対に自分から距離が遠すぎて受信の網に引っかからない場合もノイズは発生しない。社会心理学の用語で「認知的不協和」という。ノイズは自明性と疎遠な外部との間、自分の経験の周辺部分のグレーゾーンで発生する。情報の生産性を高めるには、ノイズの発生装置をまず作らなければならない。ノイズの中から意味のある情報も生まれてくる。

ノイズの発生装置を活性化するのは簡単だ。第一は自明性の領域を縮小すること。第二は疎遠な領域を縮小すること。それを通じて情報の発生する境界領域グレーゾーンを拡大することだ。どちらも自分にとって当たり前のことが当たり前にならないような環境に身を置くことによって得られる。難しいことではない。言葉も慣習も違う異文化に身を置くことや生い立ちや環境の違う人や障害を持った人と身近に接すればいいのだ。

別の言い方をすれば、情報とは、システムとシステムの境界に生まれる。複数のシステムにまたをかけたり、システムの周辺に位置したりすることは情報生産性を高める。人類学者も異文化の中ではよそ者だ。よそ者だからこそ同じ文化圏の者には見えない情報を収集してくることができる。その場に参加しながら観察者として自分をよそ者化することもできる。周辺人といえば、どの社会にも帰属を許されないのがユダヤ人。社会学者にはユダヤ人の割合が高いが、社会学とはユダヤ人の学問だといえるかもしれない。

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***デイ・ウォッチ(18日)

小池氏、第1子から保育料無償化 蓮舫氏は多子世帯の家賃支援―都知事選で公約発表:時事ドットコム (jiji.com) →明日告示の都知事選で小池氏と蓮舫氏が公約を発表。子育て支援など生活関連が柱だが、どこまで争点になるか。神宮外苑の樹木伐採で最も対立するが、関心の広がりはどうか。そうなると、与野党対決や人気が最大焦点か。NHK党からの大量立候補が批判の的になりそうだ。

安倍派会計責任者 キックバック “ある幹部が再開求めた” | NHK | 政治資金 →安倍派の会計責任者だった松本被告は、キックバックを中止した後、「ある幹部が還流再開を求めた」と述べた。名前は明かさず、弁護側も聞かなかった。また、政治家4人との会合で再開を決めたとも述べた。これまで政治家が国会で発言した内容と食い違う。裁判で明らかにすべき事実だろう。

トヨタ株主総会、豊田会長「喜んで院政する」の真意 企業統治強化へ問われる佐藤社長体制 – 産経ニュース (sankei.com) →トヨタ株主総会の焦点は、きょう発表される豊田章男会長の信認率。昨年は84.57%だったが、今年は不正事案でさらに下がると見る向きが多い。院政批判も出る豊田会長だが、どんな数字が出るか。

能登半島地震 災害関連死を新たに答申 熊本地震の死者276人を上回る見通し | NHK | 令和6年能登半島地震 →能登半島地震で災害関連死が増えている。断水が続いたり、避難状況が厳しかったり復旧の後れが背景にある。道路の寸断で現場に行きにくい半島特有の厳しい事情もあるが、復旧・復興で足りない点は何なのだろうか。

気象に関する防災情報見直し案「危険警報」新設の報告書 | NHK | 気象 →遅すぎると思うが、早く見直した方がいい。行政用語は専門家と称する人たちが厳密さを求めすぎて、一般の人に伝わらない例が多い。技術に自信を持った日本企業が、機能を詰め込みすぎて売れないことと似ていないか。最初から素人の意見を聞けばいいはずだが、これができないのが官僚行政。

*** 「今日の名言」

◎マクシム・ゴーリキー(ロシアの作家。1936年6月18日死去、68歳)

「才能とは自分の力を信じることである」 「信じるのだ。ちっぽけな人間でも意志さえあれば、どんなことでもやり遂げられる」 「自分で自分を尊敬できる生活をしなければならない」 「人生には二つのあり方しかない。腐っているか、燃えているかだ」 「すべての物事には終わりがある。したがって、忍耐は成功を勝ち得る唯一の方法である」 「仕事が楽しみなら人生は極楽だ。仕事が義務なら人生は地獄だ」 「どんな些細な勝利であっても、一度でも自分に勝つと人間は急に強くなれるものだ」 「真の美というものは、真の知恵と同じく、簡明でだれにでも分かりやすいものだ」 「幸福はその手にあるときはいつも小さく見える。なくなった時、どれだけ大きくて大切だったのかを知る」 「いかなる事業といえども、その成否は参加する全員が利益を得るシステムを作れたか否かにかかっている」 「本を読み続けなさい。でも本は本に過ぎないことを忘れてはいけない。あなたは自分で考えることを学ぶ必要がある」 

*** 今週の教養 (上野千鶴子の情報生産者になる③) 

◎問いを立てる  情報を生産するには問いを立てることが、一番肝心である。適切な問いが立った時、研究の成功は半ばまで約束されている。問いを立てることは、現実をどんなふうに切り取って見せるかという切り込みの鋭さと切り口の鮮やかさをいう。センスとスキルがいる。スキルは磨いて伸ばすことができるが、センスはそうはいかない。現実に対してどういう距離や態度を持っているかという生き方があらわれる。大学に入るまでそうしたことはないが、何事も訓練と学習である。問いを立てることも、センスのよい問いを立てることも、場数を踏めば学ぶことができる。

条件が2つある。第1は答えの出る問いを立てること。第2に手に負える問いを立てること。社会科学は形而上学ではなく形而下の現象を扱う経験科学だから、「神は存在するか」とか「殺人は許されるか」といった証明も反証もできない問いは立てない。「神は存在すると考える人々はいかなる人々か」「いかなる条件の下で殺人は許され、いかなる条件の下では許されないか」とすれば、問いに答えることができる。第2については、人間には時間も資源も限られているので、1日で解ける、1年で解ける、一生かけても解けないなどスケール感を間違えず、限られた時間の中で答えが出る問いを立てることで、問いから答えまでのプロセスを経験して「問いを解く」はどういうことかを体験する必要がある。

問いを考えていく場合、論理性や根拠が重要になる。国語の教科書の大半が文学者の作品で占められているが、人文・社会科学者の論理的な文章をもっと採用すべきだ。文章が論理的であるためには多義的な解釈を許すような書き方をしてはならない。どんな用語も一義的に解釈できるように定義し、一度用語を確定したら、最初から最後まで同じ用語で論理をゆるがせにせず、緻密に論旨を組み立てなければならない。

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***デイ・ウォッチ(19日)

改正規正法、課題残し成立 立民、内閣不信任案を20日提出―首相「信頼確保に取り組む」:時事ドットコム (jiji.com) →内容が不十分でも、与党が多数なら法案は通る。維新の会は反対に回ったが、体よくだまされた形。国民民主も同じ経験をした。「野党は野党らしく」が教訓だろう。改正法への不満は大きいが、有権者は忘れないで次の選挙でどこまで意思表示するか。有権者も問われている。

ロシア・北朝鮮が包括条約を締結 有事に相互軍事支援 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →ロシアと北朝鮮の軍事・経済同盟といえる。ロシアのウクライナ侵攻は、砂鉄に磁石を置いた時のように、世界の離合集散を引き起こしている。旧西側と旧東側に分かれ、南側が両にらみになっている。ロ朝の緊密化は旧東側結束の象徴で、中国は本音でどう思っているだろうか。

岸田文雄首相「様々な課題に専念」 党首討論、衆議院解散要求を拒否 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →3年ぶりに開かれた党首討論。立憲は解散を求めたが、岸田首相は「課題に専念する」と突っぱねた。衆院で首相と合意書を交わし、参院でこじれた維新は「仕事ができる首相にバトンを渡せ」と迫ったのは、手のひら返しの感。首相もそれなりの気合で答弁した。党首討論はもっと見たい。

「日本版DBS」法が成立 性被害を防ぐため 子供に接する仕事に就く人の性犯罪を確認へ | NHK | 国会 →子どもと接する職業につく人について、性犯罪歴を政府に照会できるようにする。小学校などは義務づけ、学習塾など民間は任意。英国の制度を参照にした。一方、性癖は簡単に変わらず、別の形で問題になる可能性があるという指摘もある。実効性が焦点だ。

トヨタ自動車株主総会 豊田会長再任の賛成比率 取締役で最低に | NHK | 自動車 →トヨタ自動車の豊田会長の再任賛成率は、71.93%で過去最低だった。去年より12ポイントほど下がった。10人の取締役でも際立って低い。グループ各社での不正行為の頻発や長い在任が影響している。

*** 「今日の名言」

◎太宰治(小説家。1909年6月19日誕生

「笑われて、笑われて、つよくなる」 「私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ!メロス」 「走るのだ。信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題ではないのだ」 「人非人でもいいじゃないの。私たちは、生きていさえすればいいのよ」 「何もしない先から、僕は駄目だと決めてしまうのは怠惰だ」 「人間は、恋と革命のために生まれてきたのだ」 「怒るときに怒らなければ、人間の甲斐がありません」 「愛することは命がけだよ」 「愛はこの世に存在する。見つからないのは、愛の表現、作法である」 「親がなくても子は育つという。私の場合、親があるから子は育たないのだ」 「夫と妻は、生涯で幾度も結婚をし直さなければならぬ。お互いが、相手の真価を発見して行くためにも、次々の危機に打ち勝って、別離せずに結婚をし直し、進まなければならぬ」 「10歳の民主派、20才の共産派、30歳の純粋派、40歳の保守派」 「自分には幸福も不幸もありません。一切は過ぎて行きます」

*** 今週の教養 (上野千鶴子の情報生産者になる④) 

◎オリジナリティとは何か  誰も立てたことのない問いを立てることを「オリジナルな問い」という。オリジナルな問いには、オリジナルな答えが生まれ、オリジナルな研究になる。オリジナリティとは、すでにある情報の集合に対する距離のことをいう。誰も立てたことのない問いを立てるには、すでに誰がどんな問いを立て、どんな答えを出したかを知らなければならない。すでにある情報の集合を知識として知っていることを「教養」と呼ぶ。教養がなければ自分の問いがオリジナルかどうかさえわからない。オリジナルであるためには教養が必要なのだが、教養とオリジナリティはしばしば相反することがある。

教養は努力すれば身につけることができるが、オリジナリティはセンスである。教養とオリジナリティどちらが大事かと言われたら、どちらかと言えば教養があってオリジナリティに欠けるよりも、オリジナリティがあって教養に欠ける方がまだマシと言ってきた。なぜなら、オリジナリティのある人は後から教養を身につけることができるのに対し、教養のある人が後からオリジナリティを身につけるのは難しい。

研究をする前の段階には、「先行研究の検討」が必要になる。なぜならある人が立てた程度の問いが、以前に他の人によってとっくに立てられていると考えるところから、研究は出発するからである。オリジナルな問いといっても全く誰も立てたことのない問いはめったにない。だが「先行研究を批判的に検討」することによって、自分の立てた問いのどこまでが解かれ、どこからが解かれていないかわかるようになる。そこではじめて自分のオリジナリティが分かるのだ。ユニークな問いとは、他に誰も立てたことのない問いだ。その問いに答えた人はパイオニアになるし、他に競合相手がいないのだから、その分野の第一人者になれる。

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***デイ・ウォッチ(20日)

藤井聡太八冠が初の失冠 将棋叡王戦、伊藤匠七段が制す – 日本経済新聞 (nikkei.com) →藤井王国が崩壊した。といっても21歳とまだ若いので、リベンジの機会はたっぷりある。伊藤7段とは同年齢で、小学校3年の全国大会でも藤井は敗れている。今後数十年間、歴史的なライバル関係になりそうだが、仕事で将棋を一生するのも大変だろうなと思ったりする。

都知事選 2024 告示 立候補者は過去最多の56人【全立候補者の一覧を掲載】投票日は7月7日 | NHK | 選挙 都知事選 掲示板が足りない…クリアファイルで貼る異例の対応 | NHK | 選挙 →都知事選告示。なんと56人も出馬する事態。掲示板の不足はアクリルファイルでまかなうという。NHKは政見放送にジャックされるのではないか、東京以外の番組はどうするのか。余計なことを考えてしまう。

内閣不信任案を否決 通常国会、21日に事実上閉幕:時事ドットコム (jiji.com) →野党は少数なので粛々と否決された。しかし、不信任決議案には「ゆ党」と揶揄される維新と国民民主も賛成した。次期総選挙での野党共闘の伏線になるかどうか。野党がまとまらないと何も変わらない。与党が勝てば、自民党は「政治資金問題でも国民に信任された。良識の勝利だ」と言うに違いない。

神奈川 鎌倉 鶴岡八幡宮 神社本庁を離脱 “組織運営が独善的な状況” | NHK | 神奈川県 →神様も仏様もけんかをする。鶴岡八幡宮と神社本庁との対立の中味はよくわからないが、いろいろな感情のもつれもあるのだろう。いかにも人間らしい。透明性を求めたいが、氏子や檀家がそこまで踏み込むのは不遜なのだろうか。

酷暑のメッカ大巡礼、死者562人に 地球温暖化で環境悪化 | ロイター (reuters.com) →気温51度というから尋常ではない。死者はエジプトからの巡礼者がもっとも多いという。毎年集まっているはずだが、今年が特別に暑いのだろうか。暑いからやめようとはならないのだろうか。宗教の力は恐ろしい。

*** 「今日の名言」

◎ニッコロ・マキャベリ(イタリアの政治思想家。1527年6月21日死去、58歳)

「危険を伴わずに偉大なことは成し遂げられない」 「優秀な指揮官が2人いるより、1人の凡庸な指揮官がいるほうが有益である」 「敵と味方に対する態度ははっきり分けて示せ」 「個人でも国家でも相手を絶望と怒りに駆り立てるほど、痛めつけてはならない」 「戦いを避けるために譲歩しても、戦いを避けることはできない。譲歩しても相手は満足せず、あなたに敬意を感じなくなり、より多くを奪おうと考えるからだ」 「やむを得ないときの戦いは正しい」 「自らの安全を自らの力によって守る意思を持たない場合、独立と平和を期待することはできない」 「決断力のない君主は、危険を回避しようと中立を選ぶ。そして大方、その君主は滅んでしまう」 「人間は恐れている人より、自分に愛情をかけてくれる人を容赦なく傷付けるものだ」 「うわべを取り繕った意見を述べる者が会議を支配する」 「民衆は無知ではあるが、真実を見抜く力はある」

*** 今週の教養 (上野千鶴子の情報生産者になる⑤) 

◎当事者研究  当事者研究とは、自分の問いを自分が解くものだ。女性学は、女という謎を女自身が解くもので、当事者研究のパイオニアと言える。問いは問題とも呼び変えることができ、クエスチョンであり、プロブレムでもある。女性学は女性問題から出発したが、女についての問題であるだけでなく、女が問う問題でもあった。私にとって、女であることは巨大な謎だった。女だというだけで社会から受ける扱いや他人から受ける仕打ちは不条理そのものだった。先行研究のほとんどは、男が女とは何者かについて教えてくれるものばかりだった。「女については俺様が一番よく知っている。だから聞きに来なさい」と言わんばかりだ。読んでも腑に落ちなかっただけでなく、男の女に対する妄想だらけで、「いい気なもんだ」と反発を感じていた。

女とは何者か、どういう経験をしてどういう感じ方をするのか、女が一番よく知っている。女による女の研究が少なかったのは、女の研究者が絶対的に少なかったからだ。それなら、と女による女のための女についての研究が始まったのが女性学の成り立ちである。できた途端に「女が女を研究すると主観的になる」「中立でないと学問ではない」と様々な批判を浴びた。学問の世界の中にある中立性、客観性の神話は根強く、「女性学?そんなもの学問かね」と面と向かって言われたこともある。

当事者研究は、自分が自分の専門家という立場だ。女性学は女が女の専門家だから女の研究をしようと、女が学問の客体から学問の主体へと転換したことによって成立した。女性学に初めて出会った時、自分自身も学問の対象にしてよいのか、と目からうろこが落ちたことを鮮明に覚えている。それまで私自身も学問を中立、客観的なものと思い込んでいたからでもある。問題とは、自分自身にとっての問題をいう。私が女であることは子どもの頃からの謎だったから、問いにした。同じように自分が障害者であること、在日であること、強姦被害者であることなどがあなたをつかんで離さない問いになるかもしれない。置かれた環境や経験の違いによって解きたい問いは様々だが、本当に解きたい問いに出会うことは幸せというべきで、研究に本気になれるものだ。