7月29~8月2日(教養講座:子どもたちの8月15日)
~~~ 長谷川塾メルマガ 2024年7月29日号(転送禁止)~~~
◎ウェビナー動画「雑談力講座④米大統領選と河合隼雄の名言」をアップしました→ ウェビナー動画「雑談力講座④米大統領選挙」を公開 – 長谷川キャリア文章塾 (hasegawa-cwa.com)
***デイ・ウォッチ(26~28日)
◎パリオリンピック【速報中】7/28~29タイムライン 柔道 阿部一二三 金メダル スケートボード女子が金銀 | NHK | #パリオリンピック →日本勢の金メダルラッシュで始まった。第1号は、柔道女子48キロ級の角田選手。31歳で五輪初出場の遅咲きだ。柔道では阿部一二三が金で2連覇、妹の阿部詩は2回戦敗退で号泣。その他の金メダルは、スケートボード女子の吉沢恋、フェンシング男子の加納虹輝。フェンシング個人の金メダルは日本人初の快挙だ。
◎パリオリンピック開会式【詳細】 気球のような“浮かぶ”聖火台に最終走者のリネールさんらが点火し開幕 | NHK | #パリオリンピック →雨のセーヌ川と古い建物群を舞台にパリ満載の開会式。第二次世界大戦でドイツのパリ軍事総督だったコルティッツ司令官は、ヒトラーのパリ破壊命令に背いて連合軍に降伏し、パリの町並みは温存された。ヒトラーは「パリは燃えているか」とベルリンから何回も問いただした。破壊されていれば、今回のような開会式はなかったはずだ。
◎パリオリンピック開会式の前にフランス 高速鉄道TGV 設備が放火される被害 仏国鉄“大規模攻撃だ” | NHK | フランス →周到な準備を伺わせるテロ行為。人命よりも混乱が目的か。犯行声明はなく、犯人はまだわからない。大会は始まったばかり。テロには目が離せない。
◎在日米軍に指揮権 拡大抑止へ連携強化―PAC3共同生産・日米2プラス2:時事ドットコム (jiji.com) →日米軍事部門の一体化がさらに進む。中朝ロへの抑止力強化の一環だが、沖縄の米兵問題やガザのダブルスタンダードなど耳に痛いことも言わないと、ポチ化が進むだけだ。せめて、時に言うことをきかない「ミー」になり、世界から一目置かれたい。
◎「佐渡島の金山」、世界遺産に 情報照会から一転、登録決定―韓国も賛同・ユネスコ:時事ドットコム (jiji.com) →「再試験」だった佐渡金山。「朝鮮半島出身者の厳しい労働環境を展示で示してほしい」という韓国側の要望を日本側が受け入れ、決着した。最近の日韓蜜月の成果だが、日本側は一連の対応で「強制労働」という言葉を使わなかった。
◎敦賀2号機「新基準不適合」 規制委審査、再稼働絶望的に―直下に活断層「否定できず」:時事ドットコム (jiji.com) →「不合格」通告は、2012年に原子力規制委員会が発足してから初めて。規制委の独立性を証明した形だ。日本原電は株主で大口顧客の大手電力の圧力も受けて、再調査を必死に訴えるが、困難な情勢。廃炉にとどまらず、会社が立ち行かなく恐れもあり、当事者は切ない。
*** 「今日の名言」
◎李登輝(中華民国総統。2020年7月30日死去、97歳)
「新渡戸稲造と後藤新平。この2人の日本人が『強い信念と信仰心をもちなさい』と教えてくれた。2人は台湾近代化の恩人であると同時に、私の先生でもある」 「生涯をかけて台湾の民主化を大きく進展させることができたのは、私にとって最大の誇りだと思っている」 「哲学、歴史、倫理学、生物学、科学。ありとあらゆる分野の本を読んだ。高校を卒業するまでに岩波文庫だけで700冊以上は持っていた」 「西田幾多郎の『善の研究』、和辻哲郎の『風土』、ゲーテの『ファウスト』『若きウェルテルの悩み』、ドストエフスキーの『白痴』、トルストイの『戦争と平和』など、私の人生観に影響を与えた本は多い」 「指導者は理想や考えを示すだけではだめで、実践して初めて意味を成す」 「後藤新平が台湾で民政長官を務め、東京市長や満鉄総裁を歴任したように、私も台北市長、台湾省主席の時代に都市経営や農村建設を全力でやってきた。後藤が築いた基礎をもとに、私は新しい台湾を模索し、民主化を促進した」
*** 今週の教養 (子どもたちの8月15日①)
敗戦から60年後の2005年に出版された「子どもたちの8月15日」(岩波新書)から5編紹介する。敗戦当時は小さな子どもで、生きていれば現在80歳以上の著名人が登場する。それぞれの8月15日を振り返っている。
◎「松の根を求めて山奥へ」 筑紫哲也(ジャーナリスト) 8月15日を迎えたのは、私の父が生まれた大分県日田市という山奥だ。私は10歳の小学生(国民学校生)で、勤労動員として働いていた。大事な仕事は、松根油(しょうこんう)の生産・採取だった。「油の一滴は血の一滴」という当時のスローガンが示すように、油の確保が大きな比重を持っていた戦争だったが、戦況の悪化とともに戦闘用の油の確保もままならぬようになった。松の根を燃やして油を取るところまで追い込まれていたのである。
田舎の少年の中では理屈好きで、典型的な軍国少年だったはずの私だが、敗戦のショックは大きくなかったような気がする。その前に8月9日があった故だと思う。6日広島、9日長崎に投下された新型爆弾のことはよくわからなかったが、9日のソ連参戦のニュースはラジオで聞いた。自宅の暗闇の中で「これで勝ち目はないかもしれない」と神州不滅の神話が崩れていく予感に暗澹たる気分だった。10歳のガキにそんなことを考えさせる国は本当に良くない国だと今にして思う。
8月15日の衝撃が中和されたのは、それから起きた出来事が衝撃だったからだと思う。「農地解放」とかで我が家が所有していた田畑は小作人のものとなった。学校からは天皇の写真と言葉が収められている「奉安殿」と二宮金次郎の銅像、教練用の短剣が姿を消した。変化は総じていえば、好ましいものだった。戦時中、大人たちは何事にもこわばっていたが、どこか解放感があった。先生や上級生たちは何かといえば生徒たちを整列させて顔を叩いた。喝を入れるというビンタである。むやみに体罰や制裁を加えることを認めない時代の到来を意味することはわかった。うっとうしい曇天の日々から、青空の下に出てきた気分だった。相変わらず空腹を抱えてはいたが。
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~~~ 長谷川塾メルマガ 2024年7月30日号(転送禁止)~~~
◎朝日カルチャーセンターで8月24日(土)16時から、オンラインセミナーを開きます。有料ですが、ぜひどうぞ→ 考える力を養うソーシャル・シンキング入門 | 千葉教室 | 朝日カルチャーセンター (asahiculture.com)
***デイ・ウォッチ(29日)
◎【詳しく】パリオリンピック 体操 男子団体 日本が金メダル 2大会ぶり奪還 橋本大輝のミスを全員でカバー | NHK | #体操 パリオリンピック スケートボード 堀米雄斗が2大会連続金メダル 男子ストリート | NHK | #スケートボード →体操男子団体は、4種目を終わって4位だったが、5種目終わって2位に追い上げ、最終6種目目の鉄棒で3点以上差のあった中国を逆転した。金は2大会ぶり。スケートボードの堀米も1回目の演技の後、3回続けて失敗し、最後の5回目で大技を決めて逆転した。こちらは2連覇。馬術は銅で92年ぶりのメダル獲得となった。その他は→ パリオリンピック【速報中】7/29~30タイムライン 体操の男子団体 日本が2大会ぶり金 | NHK | #オリンピック・パラリンピック
◎百貨店で販売のうなぎ弁当などで130人食中毒の症状 1人死亡 | NHK | 神奈川県 →百貨店で買った弁当で死者。聞いたことがないし、うなぎ弁当だ。生モノでもないのに食中毒になるのかと思ってしまう。死亡したのは90代の女性で、因果関係ははっきりしないという。高齢者が嘔吐や下痢をすれば、死に至ることもあるのだろう。原因と再発防止策を社会で共有したい。
◎クアッド外相会合 海洋秩序の維持・強化に向け連携で一致 | NHK | 安全保障 →中国を意識した示威行動が続く。抑止力は重要だが、クアッドに参加しているインドは二股かけている。作家の林真理子さんは「世界が戦争に向けてきっちり行進し始めているような気がする」と週刊文春コラムに書いている。トランプ氏は「第三次世界大戦の瀬戸際」という。抑止と分断・対立は紙一重だ。
◎「全国学力テスト」結果公表 記述式に課題も無解答率は減少 | NHK | 文部科学省 →小3と小6の学力テストで、思考力や表現力に課題があることがわかった。日本の教育は長年、暗記中心だったが、現場では読解力や思考力をつけようとテストも変わってきた。教育と社会は表裏一体なので、社会も創造力重視に変わる必要があるだろう。長谷川文章塾は未来基礎力を養うのに最適だ!
◎25年度に財政「黒字化」 政府試算、8000億円―岸田首相、歳出改革の継続強調:時事ドットコム (jiji.com) →悪化が続く財政で、改善の兆しが出ている。2025年度は8000億円の黒字が出る可能性がある。税収増加と歳出削減が理由だ。コロナ禍後、大判振る舞いが続いたが、転換点に来ている。バラマキ政策がなければの話だが。
*** 「今日の名言」
◎杉原千畝(外交官、ユダヤ難民にビザ発給。1986年7月31日死去、66歳)
「(独自の判断でユダヤ人難民に大量のビザを発給して6千人以上の難民を救ったことについて)私がしたことは、外交官としては間違ったことだったかもしれない。しかし、私には頼ってきた何千人もの人を見殺しにすることはできなかった。大したことをしたわけではない。当然のことをしたまでです」 「私と同じ立場の人が仮に100人いたとしても、このユダヤ人たちを助けようとしないかもしれない。でも僕はやろう」 「人間としての資質をもち、この手でユダヤ人を救おう」 「私を頼ってくる人々を見捨てるわけにはいかない。でなければ私は神に背く」 「人間として当たり前のことをしよう。私がビザを書かなければ必ずこの人たちは不幸な目に遭う。命がなくなる。まったく戦争には関係ない女性だとか子どもたちだ。ここは人として当たり前のことをしよう」 「世界は大きな車輪のようなものですからね。対立したり争ったりせずに、みんなで手を繋ぎあって回っていかなければなりません。では、お元気で。幸運を祈ります」
*** 今週の教養 (子どもたちの8月15日②)
◎「橋をかける-子ども時代の読書の思い出」・美智子皇后(現上皇后、前年に開かれた国際児童図書評議会での講演から抜粋) 生まれて以来、人は自分と周囲との間に橋をかけ、人とも、ものともつながりを深め、それを自分の世界として生きています。この橋がかからなかったり、かけても橋としての機能を果さなかったり、時として橋を架ける意志を失った時、人は孤立し、平和を失います。この橋は本当の自分を発見し、自己の確立を促していくように思います。
私が小学校に入る頃に戦争が始まりました。3度目の疎開先で終戦を迎えました。教科書以外にほとんど読む本のなかったこの時代、父が東京から持ってきてくれる本はどんなにうれしかったか。「少国民文庫」というシリーズに日本や世界の名作選がありました。世界名作選を開いてみると、海外の物語や詩がたくさん載っています。インドの詩人タゴールの名を知ったのもこの本でした。このころ、日本はすでに英語を敵国語として教育を禁止していました。世界情勢の不安定であった1930~40年代に子どもたちのために広く世界の文学を読ませたいと願った編集者があったことは、幸いなことでした。
この本を作った人々は、子どもたちが美しいものに触れ、人間の悲しみ喜びに深く触れつつ、さまざまに物を思って過ごして欲しいと願ってくれたのでしょう。私は幼く、編集者の願いをどれだけ受け止めていたかわかりません。しかし、少なくとも国が戦っていたあの暗い日々に、国境による区別なく、人々の生きる姿そのものを私に垣間見させ、自分とは異なる環境下にある人々に対する想像を引き起こしてくれました。
今振り返って、子ども時代の読書とは何だったのでしょう。何よりも、私に楽しみを与えてくれました。青年期の読書のための基礎を作ってくれました。ある時には私に根っこを与え、ある時には翼をくれました。この根っこと翼は、私が外に内に橋を架け、自分の世界を少しずつ広げて育って行く時に、大きな助けとなってくれました。読書は悲しみや喜びにつき、思いめぐらす機会を与えてくれました。様々な悲しみが描かれており、自分以外の人がどれほどに深くものを感じ、どれだけ多く傷ついているかを気づかされたのは、本を読むことによってでした。読書は人生のすべてが決して単純ではないことを教えてくれました。私たちは複雑さに耐えて生きていかなければならないということ。人と人との関係においても。国と国との関係においても。
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~~~ 長谷川塾メルマガ 2024年7月31日号(転送禁止)~~~
◎思考力文章講座3ヶ月コースをこのほど修了した受講生の感想文です→ 夏の研修感想文①「添削と講評を読み直し、上達した」 – 長谷川キャリア文章塾 (hasegawa-cwa.com)
***デイ・ウォッチ(30日)
◎日銀が追加利上げ検討、0.25%に 量的引き締めも決定へ – 日本経済新聞 (nikkei.com) →有料記事。日銀会合はきょうまでだが、「追加利上げ0.25%検討」と事前報道をしている。「検討」の2字はあるが、0.25%は15年7ヶ月ぶり、国債買い入れも減額し、政府も反対しない、と踏み込んだ。為替・株式市場への影響は必至。日本もいよいよ「金利ある世界」に戻る。
◎パリオリンピック 柔道 永瀬貴規が金メダル 2大会連続 男子81キロ級 | NHK | #柔道 ウクライナ パリ五輪初メダルでキーウ市民喜び | NHK | #パリオリンピック →柔道男子の永瀬選手が2連覇を達成。ウクライナが女子フェンシングで初メダルとなる銅を獲得した。4日目を終わって日本は金メダル6個でトップに立っている。その他は→パリオリンピック【速報中】7/30~31タイムライン 柔道 永瀬貴規 体操 女子団体 サッカー 自転車など | NHK | #パリオリンピック
◎自民 広瀬めぐみ参院議員の事務所や自宅捜索 公設秘書給与詐取の疑い 東京地検特捜部が強制捜査 | NHK →自民党の広瀬議員がまたニュースになった。3月は不倫だが、今回は秘書給与詐取という犯罪。本人は弁護士だが、公人意識が低いようだ。地検特捜部は香典の堀井議員に次ぐ摘発で、一罰百戒を狙っているのだろうか。小物議員をやり玉にあげているが、眠っている巨悪は他にあるだろう。
◎8月電気料金、1000円値下がり 政府補助再開で、家庭の負担軽減―電力10社:時事ドットコム (jiji.com) →家計に恩恵になることは間違いないが、バラマキ色は否めない。3ヶ月間だから、8月に始まり10月に終わる。岸田首相が9月の総裁選をにらんだ「アメ」とも言われている。政治は困窮者に絞った賢い支出(ワイズ・スペンディング)を考えるべきだろう。
◎逮捕報告なし「文民統制で問題」 木原防衛相、辞任は拒否―衆院委:時事ドットコム (jiji.com) →閉会中審査で防衛相が追及された。自衛隊員逮捕の報告がなく、シビリアン・コントロールの形骸化を認めざるを得なかった。最近、岸田首相の支持率が上がっているが、通常国会が終わって政府追及の場面がなくなった事情も大きい。通年国会を求める声も根強いが、与党が嫌がっている。
◎不漁続くサンマ 日本の漁場に来る量ことしも低水準の見通し | NHK | 水産業 →サンマは今年も高級魚だ。大きさも3~4割小さいという。日本近海の潮流の変化や海水温の上昇、餌となるプランクトンが減っている事情があるようだ。今年春に漁獲量の上限を決めたので、将来の豊漁を期待したいが。
*** 「今日の名言」
◎赤塚不二夫(漫画家。2008年8月2日死去、72歳)
「自分が偉いと思っていると、他人は何も言ってくれない。てめぇが一番バカになればいいの」 「とにかく酒はたのしくなきゃ酒じゃないと思っているからね。たとえ人にからまれたって、すぐ謝っちゃうんだ」 「トキワ荘で俺だけ彼女がいたんだよ。ハンサムだったから」 「世の中に友情と欲情ほど良いものはない」 「俺たちの時代は親がものすごく厳しかったから、『自分は自分なりに生きなきゃ』『自分の世界をつくろう』とガキの頃から思っていた。いまの若い人には、他人に依存して、誰かが何とかしてくれると思っている奴が多いじゃない? 自分で自分をしっかり生きないと駄目なんだ」 「努力もしたよ。売れるまでは必死に勉強した。いまの漫画の世界はどうなっているのかなって、人の漫画を読んだり、手塚治虫先生のストーリー漫画を読んで、あのスケールの大きさを感じて、『あれは先生のものだから、自分は違う道を行こう』と考えたりした」 「これでいいのだ」
*** 今週の教養 (子どもたちの8月15日③)
◎「祖父の予想」・山川静夫(元NHKアナウンサー) 昭和20年4月、私は旧制静岡中学に入学した。父は静岡浅間神社の神主で、毎日戦勝祈願をさせられていた。家族も日本の勝利を信じて不自由な生活に耐えていたが、ただ一人祖父だけは、なぜか「日本は負けるじゃろう」といつもつぶやいていた。私や姉は真剣に「おじいさん、そんなの非国民だよ」と怒ったが、祖父の態度は変わらなかった。当然のことながら祖父は家族中から総スカンを食らう結果となってしまう。
ところが軍国少年に凝り固まっていた私でも、だんだん弱気になっている自分に気がついていた。「ひょっとすると日本は危ないのではないか」。そう考えだすと、それらしい雰囲気がそれからそれへと漂ってきた。まず静岡駅に到着する将兵の遺骨が際立って多くなってきた。私の母方の叔父は戦艦大和に乗り込んでいたが、死んだという公報が入った。6月19日の静岡大空襲はショックだった。防空壕の中でうずくまっていると、やがて耳をつんざく爆撃音と地響きが連続して聞える。自分の体が硬直するのがわかった。外へ飛び出した時の光景は、今も目に焼き付いている。なんという明るさ、なんという美しさ、かつて一度も見たことのない一面の火の海だ。夜空にまき散らされた照明弾は豪華な花火の如く目に映った。
広島と長崎に新型爆弾が投下されてから、何かにわかに辺りが静まり返ったような気がした。時折空から「日本の皆様」へというアメリカ軍のピンクの宣伝ビラが舞い降りてきた。8月15日は快晴だった。市街地の樹木はすべて焼け焦げたせいか、夏の蝉時雨は聞こえず、青い空だけが強く印象に残っている。正午に重大ニュースがあるというので、どんな内容なのかと家人に尋ねたが、みんな無言であった。正午になり、玉音放送が始まった。さっぱり理解できなかった。やや鼻にかかったような甲高い声に、不思議なイントネーションがついていた。それこそが初めて聞く天皇陛下のお声であった。戦争の勝ち負けばかりが気になり、祖父におそるおそる尋ねた。「負けたんじゃ」。祖父は吐き捨てるように言った。悔しいことに非国民の祖父の予想が当たってしまったのだ。鬼畜のような米軍によってどんなひどい目にあうのか、一番の気がかりだった。
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***デイ・ウォッチ(7月31日)
◎トヨタに初の是正命令 「型式指定」の不正で 国交省 | NHK | 自動車 →トヨタ自動車に初の是正命令が出た。2019年に導入された命令だが、日野自動車、ダイハツ、豊田自動織機に続いて4例目で、すべてトヨタグループ。7月5日発表の社内調査では「問題ない」としていたが、覆された。盤石だったはずのトヨタが変だ。カリスマ・豊田章男会長の長期政権で風通しが悪くなったという指摘もある。
◎【詳しい結果】パリオリンピック 体操 男子個人総合 岡慎之助が金メダル 橋本大輝はメダルならず | NHK | #体操 →体操男子個人の岡は20歳、五輪初出場で金メダルの快挙。日本勢はこれで個人総合4連覇となった。連覇を狙った橋本は6位。柔道男子の村尾が銀メダル。その他は→パリオリンピック【結果】7/31~8/1タイムライン 体操 橋本大輝 卓球 競泳 柔道 バレーボール など | NHK | #パリオリンピック
◎日銀 追加利上げを決定 政策金利を0.25%程度に引き上げ 植田総裁会見詳細も | NHK | 日本銀行(日銀) 大手銀行 普通預金の金利 今の5倍に引き上げへ 追加利上げ受け | NHK | 金融 →日経報道通りの結果になった。為替市場は一時149円の円高、株は乱高下した。銀行は早速、金利引き上げに動く。まだ低水準だが、金利のある世界に戻るインパクトは大きい。賢く生きる必要がある。FRBは据え置き、9月に利下げの可能性を示唆した。
◎ハマス最高指導者殺害 イラン訪問中、イスラエルが暗殺か―ガザ停戦交渉への影響必至:時事ドットコム (jiji.com) レバノン首都空爆 「ヒズボラ幹部殺害」主張―イスラエル:時事ドットコム (jiji.com)→イスラエルはイランでハマス最高幹部、レバノン空爆でヒズボラ幹部を殺害した。活発なスパイ活動を伺わせる。いたずらに危機をあおるつもりはないが、半年単位で見ていくと、第三次世界大戦へのピースが着実に埋まっているように見える。どこかで止める政治家はいないのか。
◎東京・埼玉で記録的短時間大雨情報、1時間に100ミリ…練馬・板橋・朝霞・和光・川口など : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) →線状降水帯の発表はなかったが、東京中心に首都圏で猛烈な豪雨となった。猛暑と豪雨は列島でさらに続きそうで、警戒が必要だ。
*** 「今日の名言」
◎津川雅彦(俳優。2018年8月4日死去、78歳)
「父によく言われた。役者は宵越しの金は持つな、と。実際、今もって貯金はない。そうするとね、いつも役者という稼業にピュアに接することができる。振り返っても後ろは断崖絶壁。その意味では、雇用を法律で守られる会社員はかわいそう。一番人間が磨かれるのは、いつクビになるかわからない環境で働くこと」 「人がやりたがらない職業は儲かるとよく言われる。実際、見てくれの良くない仕事こそ、宝は転がってるものでね。悪役をやってわかったのは、敵役は最初はいい人に見えて、後で裏切るから憎く思われる。だから善悪の両面を演じることができる。役作りのための人間のリアリティを出すアイディアや方法論をこの時期に築けたわけ」 「工夫を重ねるってことは、実は余計なところを削って、シンプルにしていく作業なんだ」 「東條英機をやったり徳川家康をやったりしたけどさ、『もしかしたらこんな人だったかもしれない』って客に思わせてナンボだからね」
*** 今週の教養 (子どもたちの8月15日④)
◎「兄の残してくれたもの」・湯川れい子(音楽評論家) 父は海軍の軍人でしたが、私が8歳だった昭和19年、肺炎で他界しました。米沢出身の田舎者でしたが、ずい分とモダンで、レコードをかけて、父と母がワルツやタンゴを踊っていました。私は父の太ももにだきつくようにして一緒に踊った時の幸福感を、覚えています。大学に進んでいた長兄は、父の尺八や母のお琴に合わせて、ピアノで合奏していました。その後、陸軍に入隊しフィリピンで戦死してしまいます。長兄が戦地に行く前、とてもきれいな口笛の曲が聞こえてきました。「何という歌ですか」と聞くと、「兄ちゃまが作った歌だよ」。兄は私を抱き上げて一番星を指差すと、「あれが兄ちゃまだよ。覚えておいてね」と言いました。兄から聞いた最後の言葉になりました。
8月15日は、母に畳の上に正座させられて玉音放送を聞きました。数日後、同じ場所で父の形見だった短刀を目の前に置いて「敵が上陸してきて辱めを受けるようなことがあったら、これで自害しなさい」と自害の仕方を教えてくれたのでした。
戦死した兄の部屋からやがて、金髪の女性が歌っている絵や、アメリカの水兵さんが踊っている絵が何枚も見つかりました。米国のレコードのジャケットデザインです。戦後、ラジオから突然兄が作ったと言っていた曲が流れてきました。ハリー・ジェームズ・オーケストラの「スリーピー・ラグーン」という曲とわかり、1942年にアメリカで大ヒットした事を知りました。兄はきっと、父に隠れて密かに好きな音楽を聴いていたのでしょう。戦後、兄の口笛の曲が聴きたくて、毎日飛んで帰って進駐軍放送にかじりつき、アメリカン・ポップスやジャズを知り、気がついてみたら今の職業についていました。
兄が生きていたら、グラフィック・デザイナーとかで成功しただろうと思うと、兄の分も生かされていると強く感じないではいられません。家の中に音楽があふれていた幸せだった幼少期と、戦争で父や兄を失った後の悲しく貧しかった日々の落差があまりにも大きくて、今も心の奥深くにぽっかりと埋めようのない空洞となって残っています。そしてそのことが、主義でも思想でもなく、憲法9条を失ってはいけないという、祈りにも似た悲願として私の中にずっしりと存在し続けているのです。
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***デイ・ウォッチ(1日)
◎円相場 一時1ドル=148円台まで値上がり 4か月半ぶり円高水準 | NHK | 株価・為替 東京株、975円下落 「日銀ショック」で全面安―円相場、一時148円台半ば:時事ドットコム (jiji.com) →日米の金融会合を受けて、マーケットが激しく動いている。しばらく新しい均衡点を探って模索する。為替が1ドル=150円前後で定着するかどうかは、疑問だ。
◎パリオリンピック フェンシング 女子フルーレ団体 日本が銅メダル フェンシングの女子種目で初のメダル獲得 | NHK | #フェンシング →女子フェンシングで初のメダルを獲得した。1964年の東京五輪に初出場して以来、60年かかった。柔道はメダルに届かず、卓球は女子の早田が準決勝進出を決めた。その他は→パリオリンピック【結果】8/1~8/2タイムライン フェンシング女子フルーレ団体 日本 銅メダル | NHK | #パリオリンピック
◎ホンダと日産、EV部品・車載ソフト統一 三菱自も合流 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →日本の自動車メーカーは、トヨタ連合とホンダ・日産連合に二分された。ホンダは独自路線を捨てて、提携に動いている。日産と三菱は、理想の提携先か、そこしかないのか。トヨタ連合は、トヨタグループの不祥事連発で大丈夫なのか。日本の自動車産業の将来が心配になる。
◎歌手 園まりさん死去 80歳 「三人娘」のメンバー「逢いたくて逢いたくて」などのヒット曲 | NHK | 訃報 →元気、明るい色気、愉快なおしゃべり、歌で楽しませてくれた「3人娘」。園さんが亡くなった。乳がんを患い、女性の平均寿命を7歳下回った。近く、「徹子の部屋」で特集されるだろう。中尾ミエ78歳、伊東ゆかり77歳。長生きして、日本を元気にして欲しい。
◎千葉県職員 生活保護費34万円余不正に多く支給 “状況に同情” | NHK | 千葉県 →不正に支出したのは、20歳代の千葉県職員。法律違反に違いないが、生活保護者の厳しい状況に同情した感覚は、公務員として大切だ。千葉県は処分を検討するが、本人の反省を前提に「口頭注意」で十分だろう。不正支出額は34万円。ねむっている巨悪を裁くべきだろう。
*** 「今日の名言」
◎本田宗一郎(ホンダ創業者。1991年8月5日死去、84歳)
「苦しい時もある。夜眠れぬこともあるだろう。俺はダメな人間だと劣等感にさいなまれるかもしれない。私自身、その繰り返しだった」 「独創的な新製品をつくるヒントを得ようとしたら、市場調査の効力はゼロとなる。大衆の知恵は創意を持っていないのである。大衆は作家ではなく、批評家なのである」 「こちらが悪ければ、悪い人間が寄ってくる。信用することによって、信用される人間が生まれる」 「チャレンジして失敗を恐れるより、何もしないことを恐れろ」 「嫌いなことを無理してやったって、仕方がない」 「悲しみも、喜びも、感動も、落胆も、常に素直に味わうことが大事だ」 「日本人は、失敗ということを恐れすぎるようである。失敗を恐れて何もしない人間は最低なのである」 「私は若い社員に、相手の人の心を理解する人間になってくれと話す。それが哲学だ」 「社長なんて偉くも何ともない。課長、部長、包丁、盲腸と同じだ。命令系統をはっきりさせる記号に過ぎない」
*** 今週の教養 (子どもたちの8月15日⑤)
◎「不変のものはないからこそ」・宮内義彦(元オリックス会長) あれは10歳の夏、暑い日でした。正午に玉音放送が始まりましたが、雑音がひどく言葉が難しいので、意味が全く分かりませんでした。父がぽつりと「こりゃ負けたんだ」とつぶやいて、どうやら戦争に負けたらしいと理解したのを覚えています。部屋に戻って昼ご飯を食べました。兵庫県作用町に疎開していた私たちは、ジャガイモに塩をふったものとお茶だけの昼食を、うだるような暑さの中、家族6人で黙々と食べたのです。
当時の新聞を8月15日から読んでみると、3~4日は戸惑いが感じられるものの、2週間ほどでの変わり身の速さに驚くばかりです。極端から極端な変化が、しかし確実に起きたのです。日本は破壊し尽くされ、食べる物もありませんでした。60年たって、今よくこれだけ変わったなという思いがします。
国家の失敗があるとすれば、まず国民を戦争に引きずり込むのは失敗です。しかも負けるのは、国家最大の失敗です。戦後平和が続いたのは300万人もの人が亡くなったからです。その犠牲を忘れてはいけません。その反省に立って戦争だけはやってはいけないとしてきた。戦後日本で筋が通ってきたことといったら、それだけでしょう。せめてあと半年早く負けたら、どれだけ多くの人が助かったでしょうか。ひどい負け方をしたのは日本のシステムに問題があったことが原因だと思うんです。軍人・官僚システムが戦争に追いやり、戦争の終結を長引かせた。日本は的確な状況判断に基づいて、ふさわしい時期に判断をくだすことが実に苦手です。
戦後は「国民の面倒は全部国が見ますよ」と180度の転換をした。今60年経って、その弊害が事なかれ主義や無責任という形で出ているのではないでしょうか。国がそういう国民を作ってしまったのです。私たちの世代は自意識が芽生えてきた頃に価値の180度大転換を経験しました。不変なものはないという体験が基礎になって、常に権威を疑う反骨精神が養われたと思います。戦争はやめるべきです。一人一人が自分の足で立ち、自分で判断する。そういう社会システムを作るべきなのです。