8月19~23日(教養講座:千の顔を持つ英雄)
~~~ 長谷川塾メルマガ 2024年8月19日号(転送禁止)~~~
◎最終案内・今週です:朝日カルチャーセンターで8月24日(土)16時から、オンラインセミナーを開きます。有料ですが、ぜひどうぞ→ 考える力を養うソーシャル・シンキング入門 | 千葉教室 | 朝日カルチャーセンター (asahiculture.com)
***デイ・ウォッチ(9~18日)
◎【詳報】岸田首相会見 自民党総裁選挙に不出馬を表明 首相退任へ ノーカット動画も | NHK | 自民党総裁選 →不思議な政権だった。「何をやりたいかわからない」という批判の一方で、賛否が割れる防衛費倍増や原発再稼働を知らないうちに実行した。旧統一教会や裏金問題は世論寄りに何とか処理した。アベノミクスはじわりと修正したが、「新しい資本主義」は像を結ばない。今後の日本の行方次第で歴史的な評価が定まる政権なのだろうか。
◎自民党総裁選 石破氏“週内にも立候補表明” 党内の動き活発に | NHK | 自民党総裁選 →「誰が出る、誰が勝つ」でメディアジャックも狙っているようだが、自民党は本質的な再編過程にある。問われているのは、財源なき近視眼的政策からの脱却であり、世論と乖離した内向き体質の改革である。「顔」を変えるのではなく、「頭と心」を変えられるかが本当の焦点だ。
◎パリ五輪が閉幕 「開かれた大会」混乱なく―次回28年はロス〔五輪〕:時事ドットコム (jiji.com) 渡辺氏出馬で調整 IOC会長選〔五輪〕:時事ドットコム (jiji.com) →パリオリンピックが閉幕。バッハ会長は退任を表明した。五輪憲章では2期12年と定められているが、一時は憲章を変えて3選という見方もあった。後任に浮上している渡辺氏は、バッハ3選に反対を表明した硬骨漢。会長に就任すれば日本人初で、名実ともにスポーツ文化大国になる。日本は金メダル20個で海外五輪最多で、米国、中国に次ぐ3位だった。メダルランキングはこちら→ メダル | NHK パリ オリンピック2024
◎専門家「周知不十分」 自治体は次に備えた対応を―臨時情報呼び掛け終了・南海トラフ:時事ドットコム (jiji.com) →地震、台風と散々なお盆休みだった。初の「巨大地震注意」は貴重な社会実験となった。地震予知は科学的にできないと割り切り、日頃の備えがより重要になっている。
◎米メディア “司法省 グーグルの事業分割含め選択肢検討” | NHK | アメリカ →米司法省がグーグルに対して分割を検討している。すぐに分割するわけではないが、かつて巨人AT&Tを分割したアメリカのダイナミズムを思い起こさせる。巨大なグーグルが国益か、分割したほうが国益か。IT社会の行方を左右する。
◎ウクライナ、クルスク州の橋破壊 ロシア軍の補給路遮断 – 日本経済新聞 (nikkei.com) ウクライナ ゼレンスキー大統領「作戦は想定どおり」ロシアへの越境攻撃 | NHK | ウクライナ情勢 →ウクライナがロシア領内に侵攻し、新たな局面に入っている。部分停戦交渉の情報もある。不意を突かれたプーチン政権は妥協するのか、さらなる戦火拡大につながるのか。しばらく緊迫しそうだ。
*** 「今日の名言」
◎川上慶子さん(1985年8月12日に起きた日航機墜落事故で生存した4人の1人。当時12歳)
気がつくと、真っ暗で油臭いにおいがした。子供の泣き声などがザワザワ聞こえていた。自分の体中を触ってみても、みんなついていて、「生きている」と思った。叫ぶと父と咲子が返事した。母は答えなかった。その後、咲子と二人でしゃべった。咲子は「苦しい、苦しい」と言った。「足で踏んでみたら楽になるかもしらんから、やってみ」と言うと、妹の足の音がした。突然、咲子がゲボゲボと吐くような声を出し、喋らなくなった。一人になってしまったと思い、その後、朝まで意識が消えたり戻ったりした。暗闇の中、ヘリコプターの音が聞こえてきて、目が覚めた。赤い灯りも見えて、真上まで来て止まって、「あぁ、これで助かるわ」と、みんなで言ってたら、ヘリは引き返した。そのうち、みんな話さなくなった。その後、ヘリコプターのパタパタという音で目が覚めた。目の前を覆う部品の間から、二本の木が見え、太陽の光が差し込んできた。生きているんやな、と思った。人の気配がして、「生きている人は、手や足を動かして」という声がした。足をバタバタさせると、人が近寄って来た。ぼさぼさの頭、ショートパンツで、勘違いされたらしく、「男の子だ!」と言われた。
*** 今週の教養 (千の顔を持つ英雄①)
今週はアメリカの神話学者ジョーゼフ・キャンベル(1904~87)の著書「千の顔をもつ英雄」(人文書院)から、世界の神話に共通する構造を考える。NHKEテレ「100分de名著」のテキスト(戦略デザイナー佐宗邦威著)から紹介する。個人の人生の物語にも通底している。
◎概説 キャンベルはニューヨーク州の敬虔なカトリック教徒の家に生まれた。信仰が身近にあったため、神話を自身の生涯の研究対象として選ぶことになった。ネイティブ・アメリカン文化との出会いも影響している。幼い頃、父親に連れていってもらった自然史博物館で異文化に関心を持った。サラ・ローレンス大学で研究し、1949年に「千の顔を持つ英雄」として発表した。キャンベルはユング心理学の影響を強く受けていたが、神話には共通する原型があると考えた。それらは民族や宗教を超える普遍性があり固有の文化を背景に成立している。同様のパターンを世界の膨大な神話の比較研究を通して分析した。
神話の構造は大きく三つの段階に分けられる。最初は「出立・旅立ち=セパレーション」。続いて「通過儀礼の試練=イニシエーション」。最後が「帰還=リターン」となる。これらはギリシャやインドなど各地の神話や日本の「古事記」「日本書紀」にも共通する部分がある。英雄の旅は、人々が自分は将来こうありたいと思える状態、生きる上での理想像に出会っていく内面の旅だと説明している。人が根本的な自己存在を探し、内面へと向かう旅こそが神話だ。
現在は「大きな物語がなくなった時代」といわれる。各地に伝承されている神話にリアリティを感じる人はほとんどいないだろう。しかしそれでも私たちは物語がなくては生きていけない。誰かが用意した大きな物語ではなく、私たち一人一人、あるいは家族、学校、会社といったつながりの間に生まれる物語が必要なのではないだろうか。
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~~~ 長谷川塾メルマガ 2024年8月20日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(19日)
◎セブンイレブン イトーヨーカドー運営 セブン&アイHD 買収提案したアリマンタシォン・クシュタールとは | NHK | 小売業 →巨大流通企業セブン&アイHDが買収提案を受けた。当然蹴ると思われたが、特別委員会を設置して検討する。「買収提案は真摯に検討を」という経産省が昨年まとめたガイドラインが背景にあるようだ。形式的検討か、買収もあるのか。最近は市場の評価が低いとはいえ、買収なら驚きだ。
◎自民党総裁選挙 来月12日告示 27日投開票で調整 動きも活発に | NHK | 自民党総裁選 →自民党総裁選の日程が9月12日告示、27日投開票に決定。小林鷹之氏が立候補を表明した。総裁選の取材競争は激しく、報道は過熱しがち。ニュース報道は、興味優先のワイドショーとは違うので、どこまで冷静に伝えられるか。メディアも問われている。
◎立民 枝野前代表 21日に代表選立候補 正式に表明へ | NHK | 立憲民主党代表選 立民代表選 野田氏「熟慮したい」 泉氏「中堅・若手が考えて」 | NHK | 立憲民主党代表選 →立憲民主党の代表選は、7日告示、23日投開票。自民総裁選と同時並行なので、国民に選択肢を提供する骨太でスケールの大きな議論を期待したい。
◎米長官、ネタニヤフ首相と会談 ガザ停戦へイスラエルに圧力:時事ドットコム (jiji.com) →イランがすぐにでも報復すると言われたが、停戦交渉もからんで、水面下のやり取りが続いている。交渉はすべての当事者が妥協するしかない。正義は人の数だけあるが、最近は独りよがりの小さな正義にこだわり過ぎではないか。人命の重さに比べれば、個人の正義は軽いはずだ。
◎東証プライム上場企業「女性役員ゼロ」なお69社 前年度からは半減 【イブニングスクープ】 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →有料記事。政府は2025年に「女性役員ゼロ企業0%」を掲げているが、東証プライム企業でまだ69社残る。去年から比べれば半減しているが、来年までに解消できるかどうか。日本のジェンダー指数の低さは、女性の国会議員や企業役員の少なさが原因になっている。
*** 「今日の名言」
◎近藤誠(がん治療に疑問を投げかけた医師。昨年8月13日、73歳で死去)
「がんはタチの良いものと悪いものがある。どこで決まるかというと、臓器への転移があるかないか。タチが良いというのは、臓器への転移がない。転移する力がなければ、ほっといても死なないから、一種のおでき。良性腫瘍だ」 「本物のがんは手術しても治らない。それどころか、がんが暴れ出して早く死んじゃう可能性が出てくる。だから、検診で早く見つければ良くなるというのはウソ。医療というのは、特にがん治療では、患者に本当のことを言わない」 「(がんの確定検査は)受けないほうがいい。仮にがんだなんてわかっちゃうと、また悩みだすから。がんもどきの人は、5年でも10年でも生きている。手術で助かった気がするけど、放っておいても生きているんだ」 「抗がん剤は農薬や毒ガスと同じで、毒性は過酷。1回で死ぬこともある。きっぱりと拒んでください」 「長生きしているのは、やせている人より小太りの人です」
*** 今週の教養 (千の顔を持つ英雄②)
◎神話の構造「生きて帰りし物語」 神話における「英雄の旅」について、物語の構造を具体的にみていく。著書の中でキャンベルは「英雄は、ごく日常の世界から、自分を超越した不思議の領域へ冒険に出る。そこで途方もない能力に出会い、決定的な勝利を手にする。そして仲間に恵をもたらす力を手に冒険から戻ってくる」と書いている。前回説明したように3つの段階に分けられる。「出立・旅立ち=セパレーション」、「通過儀礼の試練=イニシエーション」、「帰還=リターン」である。
このプロセスの具体例を、釈迦族の王子に生まれ、仏教の始祖となったゴータマ・シッダールタ(ブッダ)で考えてみたい。シッダールタはある日、庭園に向かうと杖にすがる老人や病人、死者らに出会い、心をかき乱される。やがて出家した僧侶シャモンに出会い、その様子に心を打たれる。これらの出来事は、彼に出家を促そうとする神々の意志によってもたらされた。シッダールタは躊躇しながらも、ついに出家を決意する。ところが、邪魔しようとする愛と死の神カーマ・マーラが現れ、雷や炎、鋭い刀剣などで襲いかかる。最終的に菩提の座に座るのは自分であると主張するマーラに対し、シッダールタは指先で大地に触れ、大地の女神に「自分こそ今いる場所に座るものであることを示してほしい」と懇願した。最終的に創造神ブラフマーが降りてきて、神々と人間の指導者になって欲しいと告げ、ブッダとなる。帰還した世界で説法による教えを説いたが、「英雄の旅=生きて帰りし物語」に沿っていることがわかる。
英雄の旅は、エンターテインメントの世界に同じパターンが数多く存在する。最も有名なものがSF映画「スターウォーズ」だ。遠い昔、はるか彼方の銀河系を舞台に繰り広げられる善と悪の壮大な戦いを描いている一大スペクタクル。監督のジョージ・ルーカスは現代の神話を作ろうという明確な意思を持っていた。「千と千尋の神隠し」などスタジオジブリの作品、「天気の子」といった新海誠監督の作品にも同じ構造を読み取ることができる。名作の奥にキャンベルが述べた「単一神話論」が浮かんでくる。キャンベルは人間が持つ集合的無意識のようなものをつかみ取ったと言えそうだ。
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***デイ・ウォッチ(20日)
◎自民党総裁選 2024 小林鷹之氏が立候補表明 石破茂氏 河野太郎氏も表明へ調整 9月27日に投開票 動き本格化 | NHK | 自民党総裁選 立憲民主党代表選挙 立候補めぐる きょうの動き | NHK | 立憲民主党代表選 →自民、立憲とも立候補に向けて名前が飛び交っている。ワイドショーやBSの討論番組もにぎやかになってきた。まだ星雲状態だが、日本がよくなる選挙にできるかどうか。
◎米 民主党大会 ハリス氏 バイデン大統領をたたえ結束呼びかけ | NHK | アメリカ大統領選 米 民主党の政策綱領“バイデン氏撤退表明後 内容更新されず” | NHK | アメリカ大統領選 →米国の民主党大会が始まった。ハリス氏で結束を強め、世論調査でもトランプ氏を上回っている。しかし、政策綱領は更新されず、バイデン氏の名前が280回以上出てくるという。政策をぶつける公開討論が焦点だろう 。
◎トランプ氏、イーロン・マスク氏の閣僚起用を示唆 ロイター報道 – 日本経済新聞 (nikkei.com) トランプ氏 テイラー・スウィフトさんの偽画像をSNSに投稿 | NHK | アメリカ大統領選 →ハリス氏に対抗するようにトランプ氏が硬軟・虚実の情報発信をしている。マスク氏は閣僚に向いているのだろうか。偽画像投稿は倫理観が問われる事態で、とても大統領候補とは思えない。
◎辺野古・軟弱地盤区域の本格埋め立て着手 前例ない難工事に踏み出す [沖縄県]:朝日新聞デジタル (asahi.com) →辺野古の軟弱地盤で埋め立て工事が始まった。県知事に代わって国が承認する「代執行」で始まった異例の工事。防衛省の計画通りに工事が進んでも完成は12年後。これまでも想定外が頻発しており、計画通りにはいかないだろう。
◎気象庁「残暑厳しく、秋の訪れは遅くなる」…9月と10月は台風発生しやすい状況 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) →覚悟はしていたが、今年も残暑は厳しいという。秋がますます短くなる。「夏は6~9月、秋は10~11月」に変えたほうがよさそうだ。
*** 「今日の名言」
◎アラン・ドロン(仏の俳優。2024年8月18日死去、88歳)
「私はスターではなく、俳優です。私はただ美しい顔をした美少年というイメージを人々に忘れさせるために何年も闘ってきました」 「私は生涯、孤独でした。どの俳優組合にも参加しない唯一の人間でした。私は常に1人でいました。駆け出しだった頃から、みんな私をその性癖のために遠ざけていました。私は常に外れた場所にいました。でも、それが俳優のキャリアを妨げることはありませんでした」 「本当に愛しているのなら、相手のすべてを愛する勇気がなくてはいけない」 「我々のような好きなことを仕事にしている人間にとって、悩んでいる暇などないんだ」 「絵を買うのは、恋に落ちるようなものだ。」 「私はすべてを得てきた。だが、本当の幸せは与えることなんだ」 「私は自分が思っていることを、言いたいとき、好きなときに発言します。私が何かを言うのを止めることはできません」 「私はとてもシャイです。開放的な性格ではありません。道で人に近寄られるのも好きではありません。私の気質だと思います。すみません」
*** 今週の教養 (千の顔を持つ英雄③)
◎「出立」=冒険の合図にどう気づくか 神話は、主人公が自分だと仮定することで分かりやすくなる。そこにある「寓意」、普遍的な意味を模索して読み解き、自身の内面の成長を目指すことができる。出立のステージは次の5段階に分かれる。①冒険への召命=英雄に出される合図②召命拒否=神からの逃避③自然を超越した力の助け=思いもよらない援助の手④最初の境界を超える⑤クジラの腹の中=闇の王国への道である。それぞれをみていく。
①冒険への召命=人間の成長は、らせん階段を穏やかに登っていくように円環的に重ねられていくと言える。物語の主人公は、訪れた召命に対して迷いや拒否を示すことがある。ただ、根本のところでは旅に出たいと願っている。②召命拒否=主人公は何らかの理由で無視したり、拒否したりする場合がある。旅に出ることは、主人公にとって大事なもの、例えば財産や地位、安定した生活という環境などを手放すことになる。それに対して迷いが生じるのだ。③自然を超越した力の助け=主人公の前に現れるのが、遭遇する試練に対抗するための力=守護者(メンター)である。守護者はたいてい、小さくしわだらけのおばあさんやおじいさんだ。
④最初の境界を超える=主人公は新たな世界への境界をまたごうとするが、境界を守るものが立ちはだかり、主人公は最初の対決を余儀なくされる。主人公にとって試練のプロローグとなる。⑤クジラの腹の中=主人公はクジラのような大きな存在に飲み込まれ、腹の中という未知なる世界を経験することになる。「境界を越えるのは自己消滅のひとつの形である」とキャンベルは言っているが、これは「死と再生」に他ならない。クジラに飲み込まれる体験は現実にはありえないが、象徴的な意味での「死と再生」は新たな世界に挑戦する時には決して縁遠いものではない。新しい世界に足を踏み出すのは、非常に勇気がいるし、葛藤も迷いもある。しかし、旅に出ようとすれば必ず、守護者=メンターが現れる。自然を超越した力の助けは、偶然に現れるものではなく、行動を起こせばその過程で必ず支援者や理解者が現れるということを意味している。
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***デイ・ウォッチ(21日)
◎中国当局、昨年3月拘束のアステラス製薬社員を起訴…拘束さらに長期化へ : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) →スパイ容疑で拘束されたアステラス社員が起訴された。問題は起訴の具体的な内容がわからないことだ。ビジネスの世界で中国の国際的な信用はガタ落ち。習近平政権は経済浮揚を迫られており、大きな自己矛盾を抱えているようにしか見えない。
◎立憲民主党 代表選挙 枝野幸男氏正式表明 泉健太代表 江田憲司氏 馬淵澄夫氏 野田佳彦元首相は 21日の動き | NHK | 立憲民主党代表選 自民総裁選 小泉進次郎氏 立候補に意欲 河野デジタル相 会見へ | NHK | 自民党総裁選→立憲民主党代表選で、枝野氏が会見。他に数人の名前が上がっている。自民党では小泉氏と河野氏が立候補に前進している。連日動きが続く。
◎防衛省 来年度予算案の概算要求 過去最大約8.4兆円で最終調整 | NHK | 防衛省 →防衛費倍増の方針に沿って、来年度予算は今年度を0.7兆円上回る8.4兆円を要求する。ただ、予算を増やせば、簡単に装備が充実するわけではない。現場の人員数や能力に加え、必要な装備の供給力が必ずしも十分ではない。防衛省が予算消化に苦しむ現実もある。
◎著述家 松岡正剛さん死去 80歳「編集工学」の方法論など | NHK | 訃報 →このメルマガの教養講座で、松岡正剛氏の「探究型読書」を紹介した。ウェブサイトで始めた書評の「千夜千冊」は、1850冊を取り上げ、1冊の紹介量も膨大だ。「編集工学」を提唱した異色の知識人だった。
◎秋田 鹿角 “市長からパワハラ受けた 目撃した”市職員の約3割 | NHK | 秋田県 →地方自治体のトップで目立つパワハラ。今度は秋田県鹿角市で表面化した。知事のパワハラ問題が浮上している兵庫県では職員アンケートを実施したが、鹿角市では3割が受けたり目撃したりしたと回答した。首長は本人が自戒しないと「裸の王様」になりがち。アンケートは有力な対抗手段になりつつある。
*** 「今日の名言」
◎タモリ(タレント。8月22日は79歳の誕生日)
「座右の銘は現状維持」 「俺なんか、毎日が上出来」 「向上心なんてなかったですからねぇ。今もないし」 「人生成功せにゃいかん。ナンバー1にならなきゃいかん」 「好きな言葉は適当。コツはね、張り切らないこと。頑張ると、疲れる」 「ハングリー精神なんて邪魔。この世界、ハングリー精神じゃダメだと思うんですけどね(笑)。お笑いなんか、人間の精神の余分なところでやってるわけでしょ」 「俺が自分の番組一切見ないのは、悪いことばっか見えちゃうから。自分の番組見てたら、自分大嫌いになりますよ」 「(批判は気になりますか?)ものすごく気になります」 「人に期待などしなければ、つまらないことで感情的にならずにすむ。そうすれば人間関係に波風も立たなくなり、円満にだれとでも付き合える」 「目標をもつと、達成できないと嫌だし、達成するためにやりたいことを我慢するなんて馬鹿みたい」 「俺のやることに、意味なんかあるわけないだろ!」 「人間って『自分がいかに下らない人間か』ということを思い知ることで、スーッと楽にもなれるんじゃないかな」
*** 今週の教養 (千の顔を持つ英雄④)
◎イニシエーション=試練をどう乗り越えるか 異世界へ旅立った主人公は試練に直面する。困難を乗り越えていく段階=イニシエーションこそ、英雄の旅で最もスリリングだ。キャンベルは「この世界に来て初めて、恵み深い力が、超人的な経験をする自分をいたるところで支えてくれることに気づく」と書いている。この段階では6つの工程がある。⑥試練の道=神々の危険な側面⑦女神との遭遇=取り戻された幼児期の至福⑧誘惑する女=オイディプスの自覚と苦悩⑨父親との一体化⑩神格化⑪究極の恵み、である。それぞれみていこう。
⑥試練の道=主人公は、自然を超越した力に助けられていることに気がつく。必死になって取り組んでいると、急に打開の道が開かれることがある。シンクロニシティとも呼ばれる。ユングが提唱した概念で、「共時性」とも呼ばれる。⑦女神との遭遇=試練を乗り越えた主人公は女神と出会い、その力に包まれる。スターウォーズの主人公ルークにとってのレイヤ姫のような存在だ。主人公は世界への理解を深め、内面の成長を達成し、その結果として、異性をより理解できるようになり、融合し一体となる力を得る。
⑧誘惑する女=伴侶となるパートナーと出会った主人公のもとに、誘惑する女、異性が現れ、惑わされるプロセスが待っている。⑨父親との一体化=主人公にとって畏怖や脅威の対象である父が、大いなる存在であることを理解した上で、それを乗り越え一体化する。父同様の存在へと自分が成長するドラマである。⑩神格化=敵を打ち破った英雄が経験するプロセス。男性と女性の両方を併せ持つ神に等しい状態が、自分の中に存在すると自覚する。⑪究極の恵み=神格化を自覚した後に、主人公が手に入れるもので、すべてを回復させる「霊薬」を指す。
現代は「儀式のない時代」と言われている。だからこそ、先人の営みを範とし、自らを変えるために「イニシエーション」を積極的に取り入れるべきではないだろうか。カギは限界への挑戦にある。召命のサインを探し、自分から変容のきっかけを作り出すことに挑みたい。
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***デイ・ウォッチ(22日)
◎カップヌードルの値上げ、同意しない店に8回も要請か 公取委が警告:朝日新聞デジタル (asahi.com) →カップヌードルの日清食品が独禁法違反で警告を受けた。販売価格は小売店が決めるルールだが、引き上げを要求していた。2015年ころから続いているという。同社はすぐに謝罪したので、後ろめたい気持ちはあったのだろう。業界の古い体質が露呈した。
◎自民総裁選 意欲示す議員が発言 立候補に向けた動き活発に | NHK | 自民党総裁選 立憲民主党代表選挙 泉氏は相次ぎTV出演 枝野氏は意見交換 「熟慮」の野田氏は近く判断 | NHK | 立憲民主党代表選 →自民党では22日、林氏と高市氏が立候補に向けて前進している。加藤氏と上川氏は推薦人集めのメドはまだのようだ。立憲は野田氏の動向が焦点になっている。
◎デブリの試験的取り出し中止 手順ミス、再開時期は未定―福島第1原発・東電:時事ドットコム (jiji.com) →ミスはどこでもあり、大騒ぎすることではないが、取り付けるパイプの順番が違う初歩的ミスだという。デブリの取り出しは廃炉の中核であり、東電あげて真剣に取り組むべき課題。「大丈夫だろうか。廃炉はできるのだろうか」と心配になる。
◎ウクライナ軍、ロシア軍設置の浮橋を米供与の「HIMARS」で破壊…新たな補給路阻む : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) →ウクライナ軍のロシア侵攻が続いている。米国供与の兵器で橋を破壊し、無人機での攻撃も続いている。ロシア側の情報は乏しく、プーチン大統領も沈黙している状態。今後の展開に関心が集まる。
◎埼玉県教委 “県立高校の共学化推進”も具体的時期は示さず | NHK | 教育 →男女共同参画を進める時代、公立高校の共学は時代の流れだろう。県民の反応を見ながら実施時期を決めるとみられる。共学になれば、すぐになじむだろう。私立高校でも、進学実績があり生徒集めに苦労をしない一部を除いて、共学化が進むだろう。
*** 「今日の名言」
◎稲盛和夫(京セラ創業者、日本航空を再建。2022年8月24日死去、90歳)
「経営とは、人として正しい生き方を貫くこと」 「不運なら、運不運を忘れるほど、仕事に熱中してみよ」 「20代や30代のときには、どんなことでもいいからとことん突き詰めて究めることが大切。一つのことに精魂を打ち込み、どんなことでもいいから確信となる何かを得ることです」 「JALの再建で、私はあらゆる機会を通じて教育に全力を尽くしました。それが功を奏し、全社員が経営者意識を持って仕事に取り組んでいます」 「商売の極意とはお客様の尊敬を得ること。売る側に高い道徳観や人徳があれば、たとえ他の会社が安い価格を提示しても買って下さる」 「経営における判断は、世間でいう筋の通ったもの、原理原則に基づいたものでなければならない。常々、利己ではなく利他が重要だといっています」 「できない理由を並べ立てる人がいる。これでは新しい事業を達成することはできない」 「人々を幸福にすることを働く目的にしている限り、現状に満足することはありえない」
*** 今週の教養 (千の顔を持つ英雄⑤)
◎帰還=社会への還元 いよいよ最後のステージだ。試練を乗り越えた主人公は宝や戦利品である「霊薬」を得て、もとの世界へと帰っていく。キャンベルは「手に入れた宝が共同体や民族、地球の再生に役立つ」と書いている。帰還のステージは次の6つで構成される。⑫帰還の拒絶=拒絶された現世⑬魔術による逃走⑭外からの救出⑮帰還の境界越え=日常世界への帰還⑯2つの世界の導師⑰生きる自由=究極の恵みの本質と役割です。主な項目をみていこう。
⑫帰還の拒絶=帰還の拒否には2つの原因がある。イニシエーションを経た世界が居心地よく、帰りたくないと感じていること。主人公を元の世界に帰すまいとする何らかの力が働くことだ。⑬魔術による逃走=繰り出されるさまざまな妨害に対して、超自然的な力の助けがあらわれる。逃走劇はユニークで、世界中の神話や昔話に様々なバリエーションが描かれている。⑮帰還の境界越え=英雄は彼岸(夢の世界)から此岸(現実の世界)に戻るため、さまざまな境界を逆方向に上手に超えていなければならない。慈悲に包まれた至福の世界から、猥雑な現実へという大きな環境の変化により、苦しめられる。
⑯2つの世界の導師=旅を終えたら、それまで見ていた世界が大きく変容していた。その2つの世界を誰の目にも見えるようにする導師こそ、物語の主人公なのだ。⑰生きる自由=いよいよ最後にたどり着く。英雄が戻ったことで、その土地は全く新たな共同体として生まれ変わり、活気に満ちあふれる。旅で得た宝を還元することで、大きな恩恵がもたらされ、未来への可能性に満ちた大団員を迎える。こうして旅は完結する。
神話の物語の原型は、先の予測がつかず、大きな物語が欠如しがちな社会を生きて行く私たちにとって、羅針盤になる。いま自分の位置がどこなのか、次にどんな筋書きを作っていきたいのかをイメージできれば、自信を持って新たな一歩を踏み出すことができる。英雄の旅は未来の希望の物語を作るヒントをたくさん教えてくれる。