9月9~13日(教養講座:忘れられた日本人)

2024.09.13メルマガ

~~~ 長谷川塾メルマガ 2024年9月9日号(転送禁止)~~~

◎拙著2冊販売中→ Amazon.co.jp: 自分で考え、発言する力を養う ソーシャル・シンキング : 長谷川智: 本 本気の文章上達法を教えます | 長谷川 智 |本 | 通販 | Amazon

***デイ・ウォッチ(6~8日)

立民代表選告示、論戦スタート 野田、枝野、泉、吉田氏出馬:時事ドットコム (jiji.com)  立憲民主党代表選挙 立候補の4人 NHK「日曜討論」で論戦交わす 選挙戦の行方を解説 各候補の推薦人一覧も | NHK | 立憲民主党代表選 →立憲代表選は、女性で1年生議員の吉田氏も加わり、にぎやかになった。NHKの日曜討論にも出演し、久々に脚光を浴びた形。「政権交代が最大の政治改革」はその通りだが、民主党政権の失敗の原因を率直に語り、「過ちは繰り返さない」と訴えることも重要だろう。

メダル | NHK パリ パラリンピック2024  パリパラリンピック 杉浦佳子が2大会連続の金メダル 自転車女子個人ロードレース 結果 | NHK | #パラ自転車 →パラリンピックが閉幕した。日本の金メダルは前回東京大会を1個上回る14個、銀は10、銅は17で合計41個となり、10位だった。1位は中国の220個、2位は英国124個、3位は米国の105個だった。自転車の杉浦さんは53歳で、最高齢金メダリストになった。孫が2人いる「おばあちゃん選手」だ。

【詳細】兵庫県知事 “パワハラ疑い” 告発文書めぐり知事 2回目証人尋問「徹底調査指示」 | NHK | 兵庫県 兵庫 斎藤知事 パワハラ疑い 兵庫県議会自民党の辞職申し入れ 他の3会派も加わる方向で調整 維新の会は | NHK | 兵庫県 →兵庫県知事に2回目の尋問。公益通報者保護法違反と思われる発言を公然としている。信用失墜に並ぶ失態で、維新も含めて辞職に向けた県議会の動きが本格化する。

トランプ候補、有罪34件の量刑言い渡しは大統領選後 裁判長が発表 – BBCニュース  →不倫口止め料事件で有罪になったトランプ氏に対し、量刑言い渡しを大統領選後の11月26日にすることを裁判長が決めた。選挙に影響を与えないための判断だ。最長で禁錮4年を言い渡す可能性があるので、トランプ氏には朗報だが、有罪は決まっている。有権者はどう判断するか。 

共和党のチェイニー元副大統領、ハリス氏に投票へ 米大統領選 – CNN.co.jp →ブッシュ政権の副大統領で保守派として知られる共和党のチェイニー氏が、民主党のハリス氏支持を表明した。議会乱入事件をかねて批判しており、トランプ氏を「下劣な人間」とののしっている。

*** 「今日の名言」

◎黒澤明(映画監督。1998年9月6日死去、88歳

「人間は弱いものだからね。平穏無事に生きている時は大していい考えなんか出てこないのさ。ここを踏み外したら真っ逆さまだぞと追い詰まったとき、やっとこさっとこ、頭がフル回転し始める」 「生きているのは苦しいとかなんとか言うけれど、それは人間の気取りでね。生きているのはいいものだよ。とても面白い」 「些細なことだといって、一つ妥協したら、将棋倒しにすべてが壊れてしまう」 「自分の人生経験だけでは足りないのだから、人類の遺産である文学作品を読まないと一人前にならない」 「世界中の優れた小説や戯曲を読むべきだ。それらがなぜ名作と呼ばれるのか、考えてみる必要がある」 「ハッキリと言わなければ、かえって人を傷付けることもある」 「何もないところからものを創り出していると思っているのは、人間の驕りだよ。どこかで耳にし、目にした何かが、知らず知らずに入り込んだ記憶が、何かのきっかけで呼び覚まされて動き出す。そうやって、創造していくんだと思うよ」 「昔、映画会社は夢の工場と呼ばれていたんだ」

*** 今週の教養 (忘れられた日本人①)

今週は民俗学者・宮本常一(1907~1981)の著書「忘れられた日本人」(1960、未來社)を取り上げる。人々の営みに分け入り、「素顔の歴史」と評された同書について、NHK・Eテレ「100分de名著」のテキスト(畑中章宏著)から紹介する。

◎概説  宮本常一は1907年、瀬戸内海に浮かぶ周防大島(山口県)の農家に生まれた。15歳の時に大阪へ出て郵便局員になり、大阪や奈良で小中学校の教員を歴任。民俗学を志し、柳田国男や渋沢敬三の知遇を得た。民俗学者はよく歩く。民間伝承や民間信仰、祭りなどの風物から日本人の「心」を探ろうとした柳田国男や折口信夫と、宮本の歩き方は異なる。柳田らのように目に見えない「心」ではなく、宮本は目に見える「もの」を入り口にした。生産活動などに用いられてきた「民具」を調べることで、私たちの生活史をたどることができると考えた。

民俗学は柳田国男が主流で、宮本は傍流とされ、「歩く・見る・聞く民俗学」と言われた。傍流の民俗学の重要性に改めて私が気づいたのは、2011年の東日本大震災だった。福島第一原子力発電所の事故という未曾有の災害を引き起こし、知識人たちは人類史や文明史といった「大きな歴史」の中でこの事態をとらえようとした。そうした論評は今も絶えることがない。しかし、こういうときこそ「小さな歴史」が重要なのではないかと思う。小さな集落の多様性や、個々の人生の機微を見つめ、普通の人々が各地でどのような生活を営み、過去にどのような人生を送ってきたかを考えなければいけないのではないか。震災は広範囲にわたり、被災地域ごとにその要素も異なるし、被害と向き合う人々の感情もひとくくりにはできないような事態だと考えた。

宮本は日本列島の隅々まで歩き、地域と民衆の個別性、多様性をつぶさに探った。その成果を堅苦しい報告書や論文ではなく、難しい用語を使わない親しみやすい形式で書いた。「忘れられた日本人」は、時に私たちの常識を覆すような「生活誌」の宝庫である。そこには閉じた「共同体の民俗学」から、開かれた「公共性の民俗学」へという宮本の意志と思想が潜在している。

     ◆

~~~ 長谷川塾メルマガ 2024年9月10日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(9日)

長崎 被爆体験者の一部 「被爆者」と認定 長崎地裁 | NHK | 原爆 →広島高裁は被告全員を被爆者と認めたが、長崎地裁は一部にとどまった。「合理的で一定の科学的な根拠が必要」としたが、79年前の話であり、明確な根拠があるはずもない。財政支出を気にして線引きをしたがるのは「官」の論理。被害者救済を優先した「民」の論理が必要ではないか。

自民党 次の総裁にふさわしいのは誰? NHK世論調査 | NHK | 自民党総裁選 立憲民主党 次の代表にふさわしいのは誰? NHK世論調査 | NHK | 立憲民主党代表選 →NHKの世論調査でふさわしい党首を聞いた。自民は①石破28②小泉23③高市8。立憲は①野田35②枝野14③泉9。選挙戦はこれからだが、2位と3位の差は大きい。決選投票に残るのは、石破と小泉、野田と枝野と考えるのが妥当だろう。

斎藤兵庫知事、辞職否定 維新の要求応ぜず:時事ドットコム (jiji.com) →維新の会が兵庫県の斎藤知事に引導を渡した。維新に火の粉が激しくかかっており、かばえなくなった。「知事の説明は議会や県民が十分納得できるものとは言いがたく、県政運営に支障が生じ始めている」と申し入れで指摘したが、斎藤知事は続投の構え。しばらくニュースやワイドショーの「華」だ。

神宮外苑再開発 樹木の伐採を124本減らす見直し案 公表 | NHK | 東京都 →三井不動産などはさすがにイメージダウンも考慮し、伐採本数を124本減らす案を公表した。住民や反対を表明していた人たちの反応が焦点になる。都の審議会を経て伐採を始める見通しだが、首都を代表する緑であり、説明会でのていねいな意見集約が必要だろう。

真田さん主演「将軍」快挙 技術・美術系で最多14冠―米エミー賞:時事ドットコム (jiji.com) →エミー賞は米国テレビ界で最高の栄誉とされる。「将軍」は真田広之さん主演で2月から配信されている。今回発表されたのは技術・美術系で、最多の14冠を受賞。15日に発表される作品賞などの部門にも多数エントリーされている。ややバブル気味の感も。

*** 「今日の名言」

◎エリザベス女王(英国の女王。2022年9月8日死去、96歳

「命ある限り、私はこの身を捧げてあなた方の信頼に応えられるよう努めます」 「憎むことや壊すことはたやすいこと。築いていくことや慈しむことがはるかに困難なのです」 「平和が訪れたら、明日の世界をより良く、より幸せな場所にするのは、今日の子どもたちであることを忘れないでください」 「すべての素晴らしい家族がそうであるように、我が家にだって衝動的で言うことを聞かない若者や、家族間の意見の不一致といった変なところはあります」 「仕事とはこの地球上に存在するための家賃のようなもの」 「本当の愛国心とは他者の愛国心への理解を排除しない」 「差別は未だに存在する。自分の信仰が脅威にさらされていると感じる人もいれば、見知らぬ文化に対して不満を持つ人もいます。そんな人が知らなければならないことは、他者に歩み寄ることで得られるものがたくさんあるということ、そして多様性とは脅威でなく、確かな強さであるということです」

*** 今週の教養 (忘れられた日本人②)

◎民衆の民俗学  「忘れられた日本人」は13編からなっている。刊行時、宮本は52歳。実業家で民俗学に関心の深かった渋沢敬三が創設した研究所に所属していた。「忘れられた日本人」というタイトルには、日本人が高度経済成長という進歩と発展のとば口にさしかかり、近い過去にあった貧しさや苦労を忘れていないか。かつて歴史に存在した遍歴者や漂泊民、相互扶助の精神を持った人々のありようを忘れてはいけないと主張している気がする。

民俗学の目的は「経世済民」、世をおさめ、民を救うことだった。柳田国男は「遠野物語」で魂や死にまつわる怪異な伝承と人々がどう付き合ってきたかを描いている。潜在的な心を掘り下げて経世済民に至ろうとする道だった。折口信夫という天才肌の人物は、古代の神話や文芸に造詣が深く、新しい概念を作り出していった。渋沢は異なる方向を打ち出し、精力的に活動したのが宮本だった。民俗技術や民具の研究を進めながら経世済民を目指していくことになった。

柳田の遠野物語は「昔あるところに貧しき百姓あり。妻はなくて美しき娘あり。また一匹の馬を養う」という文だ。宮本の「忘れられた日本人」で最も有名な「土佐源氏」は「人をだましてもうけるものじゃから、うそをつくことは全てばくろうロというて、世間は信用もせんし、小馬鹿にしていった」とある。遠野物語は民間信仰が美しく幻想的に書かれ、方言を文語体にしている。宮本は馬喰のリアリティに富む語りをそのまま描いている。日常のやり取りや生業の異なる人間に対する尊敬がある。柳田民俗学が「心の民俗学」「霊魂の民俗学」となり、内面の研究にシフトする一方、渋沢や宮本は、生業や道具などを調査することによって過去の生活を見出そうとした。

宮本は渋沢から授けられた「大切なことは主流にならぬ事だ。傍流でよく状況を見て行くことだ」とう助言を守った。傍流は「オルタナティブ」と言い換えることができる。宮本は歴史を作ってきた主体として民衆や庶民を常に念頭に置いた。民衆は「愚昧の民」とされたが、宮本は名前を残さずに消えていった人々存在を含めて歴史を描き出そうとし、日本や日本人が一つではない事を示した。聞き書きにはよい老人に会うことが大切だと考えた。祖先から受け継いだ知識を「公」のもの考え、私見を加えないからだ。よい話者は青壮年時代に各地を歩き回った「世間師」と言われる人々に多く、自他の生活の比較があり、知識も豊富と考えた。

     ◆

~~~ 長谷川塾メルマガ 2024年9月11日号(転送禁止)~~~

◎きょう午前10時からアメリカ大統領選で初のテレビ討論。NHKが中継予定→ 米大統領選 両陣営が相手を批判する声明 あすテレビ討論会 | NHK | アメリカ大統領選

***デイ・ウォッチ(10日)

東大、授業料値上げを発表 来年度の学部入学者から約11万円:朝日新聞デジタル (asahi.com) →東大が授業料引き上げを発表した。国が定めた上限の64万円台とし、授業料免除の世帯年収を400万円から600万円に引き上げる。論議を呼ぶことは確実だが、政府が国立大にやたら介入したがることを考えれば、「国立大はまだ必要か。民営や公営でどうか」という本質論も期待したい。

NHK 会長ら報酬自主返納 担当役員が辞任 ラジオ国際放送問題で | NHK →NHKラジオの国際放送トラブルは、不心得者の行為というより、NHKの管理の甘さだ。本人は処遇の不満や中国政府の反応に不安を訴えていたが、十分に取り合わなかった。自民党保守派の介入も予想され、NHKは担当役員の辞任など厳しい対応で乗り切りたい構え。早くAI音声にしておけばよかったか。

デブリの試験的取り出し再開 ミスで中断、3週間ぶり―東電福島第1原発:時事ドットコム (jiji.com) →東京電力がデブリ取り出しに再チャレンジ。前日に小早川社長が前回ミスのあったパイプを確認した。形式的で政治的なパフォーマンスだ。デブリ880トンに対し、今回取り出すのはわずか3ミリで、放射線量が高ければ取り出さない。気の遠くなる廃炉だ。

EU最高裁、アップルの「追徴税無効」一転 約2兆円の支払い命令:朝日新聞デジタル (asahi.com)  欧州司法裁判所、Googleへの制裁金支持 判決確定 – 日本経済新聞 (nikkei.com)  グーグル、広告も独禁訴訟  検索に続き分割迫られる – 日本経済新聞 (nikkei.com) →米国の巨大IT企業に対する風圧が欧米で高まっている。欧州では、アップルが課税、グーグルが制裁金で敗訴。米国では司法省が提訴したグーグルの広告事業をめぐる口頭弁論が始まった。欧米に比べ、日本当局の優しさというか、取り組みの遅れが目立つ。

米 民間で初の船外活動目指す 実業家ら乗せた宇宙船が打ち上げ | NHK | 宇宙 →アメリカにはいろいろな人がいるものだ。IT企業の創業者ジャレッド・アイザックマン氏ら4人の民間人を乗せた宇宙船が、民間初の船外活動を目指す。宇宙船はイーロン・マスク氏率いるスペースX社製。アメリカの宇宙開発はすでに民間主導だ。

*** 「今日の名言」

◎湯川秀樹(物理学者、ノーベル賞受賞者。1981年9月8日死去、74歳

「独創的なものは、初めは少数派である。多数は独創ではない」 「未来を過去のごとくに考えよ。科学は絶えず進歩している。常に明日の飛躍が約束されている」 「未知の世界を探求する人々は、地図を持たない旅行者である」 「メルヘンといいますか、子供の世界というんですか、そういうところへ戻りたいという気持ちがいつもある」 「現実のほかにどこに真実があるかと問うことなかれ。真実はやがて現実となるのである」 「理論物理学は本来、哲学に近い学問だ」 「新しい真理の発見は常に少数派である。正しければ多数派になる」 「アイデアの秘訣は執念である」 「今日はあれをやり、明日はこれというように、あまり気が散ると結局どれもものにならない」 「自分の能力は、自分で使ってみなければわからない」 「君たち全員に優の成績をあげるけれども、勉強は自分でしなさいよ」 「ただ流行を追っているというのは、つまらない生き方です」 「地に空に平和を」

*** 今週の教養 (忘れられた日本人③)

◎したたかな世間の考察  本の冒頭に「対馬にて」と「村の寄りあい」の2編があり、伝統社会の合議の一例として「寄合」を取り上げている。宮本が対馬を訪れた時、古文書があることを聞き、見せてくれないかと頼んだ。区の承諾を得ないとダメだとなり、何日も時間をかけて複数の議題を同時並行しながら、みんなが納得するまで話し合って結論を出した。寄合は効率が悪くとも「熟議」と呼べるのではないでだろうか。寄合では言いたいことを言い合うが、宮本は「これは理屈ではない」と言う。過去の事例も遡上に載せ、経験や記憶をその場で持ち寄りながら話し合うことが重要であると。さらに「少なくとも京都、大阪から西の村々には寄り合いが古くから行われてきた。会合では郷士も百姓も区別はなかったようである。領主・藩士・百姓という系列の中では百姓の身分は低いものになるが、村落共同体の一員になると互角であったようである」とも書いている。

村には「年齢階梯制」もあった。同じ年齢層による横の結びつきで、若衆組、娘仲間、隠居組などがある。「講」のように信仰をともにする宗教的な集まりから発達したグループもあった。福井県敦賀の西の海岸沿いで聞いた「観音講」もそうだ。「『つまり嫁の悪口を言う講よの』と一人が言った。別の一人が、年寄りは愚痴の多いもので、つい嫁の悪口が言いたくなる。そこでこうしたところで話し合うのだが、そうすれば面と向かって嫁に辛く当たらなくても済むという」と書いてある。共同体では横のつながりも重要だった。話し合いの場では、共同体外の「世間」を旅してきた人の経験や情報が重視された。

女性ならではの世間もあった。「女の世間」の編によると、周防大島にはかつて、村の若い女性がある年代に達すると家を出て奉公などで現金収入を得て帰って来る秘密の習わしがあった。ある日突然出て行くが、父親は知らなくても母親は事情を知っていた。母親自身も娘の自分に同じことをしたからだ。嫁入り前に稼いだお金で京都や大阪をめぐることが、女性が教養を得るための社会教育で、明治以降はそれが慣習化していた。現在はひとりの人間が同時に複数の世間を持つことが必要とされているが、民族的な風習の中に今に生きる知恵がある。

     ◆

~~~ 長谷川塾メルマガ 2024年9月12日号(転送禁止)~~~

◎拙著2冊販売中→ Amazon.co.jp: 自分で考え、発言する力を養う ソーシャル・シンキング : 長谷川智: 本 本気の文章上達法を教えます | 長谷川 智 |本 | 通販 | Amazon

***デイ・ウォッチ(11日)

初対決はハリス氏「勝利」 トランプ氏、いら立つ場面も―米大統領選テレビ討論会:時事ドットコム (jiji.com)  テイラー・スウィフトさん、ハリス氏支持  – 日本経済新聞 (nikkei.com) →ハリス氏とトランプ氏の初の直接対決。テレビ討論会が注目されるのは、過去に明らかなマイナスで失速した例があるからだが、今回、双方に大きなミスはなかった。ということは経験不足で不安視されたハリス氏が優位に立ったと言える。人気歌手のテイラー・スイフトさんがハリス氏支持を公表した。

自民党総裁選、12日告示 9人が立候補表明 全国8カ所で演説会へ [自民]:朝日新聞デジタル (asahi.com) →自民党総裁選は9人の争いになり、過去最多の5人を上回る。野田氏と斎藤氏は断念した。4人の立憲民主党の代表選でもぎやかになっているから、自民の9人は27日の投開票までメディアや街頭に出まくるのだろう。小泉氏と石破氏が決選投票に残るという見方がもっぱらだ。

JR貨物が列車運行停止 ヤマトや佐川など配送に遅れ – 日本経済新聞 (nikkei.com) →貨物列車でデータ不正があり、すべての運行を停止した。不正は10日に564両、11日に300両判明。全体の1割という。宅配便などの配達に影響が出ている。自動車もバイクも貨物列車も不正だらけだ。

円相場 一時1ドル=140円70銭台まで値上がり 去年12月以来の円高水準 | NHK | 株価・為替 →円相場が昨年12月以来の140円台まで円高になった。日本の利上げ観測が強まったためだが、円高は株式市場にはマイナスで、株安が進んだ。マーケットは依然不安定だ。

兵庫県の斎藤元彦知事「自分自身に悔しい思い」と涙ぐむ…19日にも不信任案提出へ、可決の公算大 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) →あの斎藤知事が涙ぐんだ。「自分自身に対して悔しく思う。私は決して完璧な人間ではないので、間違いもあったかと思う」と述べたが、「これからも県民のためにやっていきたい」と続投を表明した。どういう神経をしているのだろうか。現状固執症候群か。

*** 「今日の名言」

◎石橋正二郎(ブリジストンタイヤ創業者。1976年9月11日死去、87歳

「禍は口からと言う。言葉をつつしみ、自分の偉さを表そうとはせず、気取られなければ人に尊敬され、親しまれ、自分も楽しみが多い」 「威張り、虚勢をはる人は他からも嫌われ、孤立し、人望を失う」 「気は長く持つが、行うときは気短でなければならぬ」 「一個人として如何に優秀でも、他人と仲良く働くことのできない人は、集団生活においていちばん厄介な人である」  「時の短縮は、私の信条である。もし他人の3分の1の時間で仕事をすれば、結局3倍の仕事ができる。一生涯の活動時間を、かりに40年とすれば、120年分の仕事量となる」 「生活向上に役立ち、人の幸福を増す製品をつくることが成功の基である」 「ゴムに手を染めた以上、将来に大きくなるのは何だろうかと頭を痛めた。自動車は将来100万台にはなるだろう。大変なものだ。アジアに目を向けても大きな市場がある。自動車タイヤだと結論が出るようになった」 「逆境こそ事業革新のとき」

*** 今週の教養 (忘れられた日本人④)

◎「土佐源氏」の衝撃  「忘れられた日本人」では、文字を知らない庶民や何ら業績のない物乞いなど、歴史の片隅に追いやられた人たちが鮮やかに描かれる。進歩や発展の名のもとに斬り捨てられてきたもう一つの日本人の姿に迫っている。その代表的な人物に高知県山間部にある土佐梼原の橋の下に住む、目が見えなくなった物乞いの老人がいる。最もよく知られた「土佐源氏」で、宮本の代表作として大変有名になった。馬喰という移動をしながら牛馬を扱う仕事を生業とした人の生活誌だ。夜這いで生を受けたというこの男は、父親がわからず、母親も早くに亡くし、祖父母の手で育てられた。成長して馬喰となり、さまざまな女性と関係を結んできたが、今では物乞いになったという。

「あんたはどこかな?長州か。長州人は昔からよう稼いだもんじゃ。この辺りは木挽や大工で働きに来て」「私の話を聞きたいといいなさっても、わたしは何も知らんのじゃ。牛や馬のことなら知っとる。しかしほかのことは何も知らん」。老人が自慢できるのは、馬喰の仕事で牛を追いながら行く先々の村で出会った後家たちや裕福な家柄の人の妻との性遍歴の顛末だけだった。馬喰という移動者の生活や感情が見事に活写されている。実はこの話には創作が盛り込まれていると指摘されている。この人物が実在したのかどうかの検証によると、モデルは確かにいるが、土佐源氏はイコールではない。目が見えず、馬喰をしていたけれど、橋のたもとに立つきちんとした家に住んでいたことが判明している。宮本が各地で会った複数の聞き書きを混ぜ合わせて作った象徴的なキャラクターではないのかと思われる。

遠野物語にある「河童を見た」が事実かどうかという話につながっていく。「苦海浄土」の作者・石牟礼道子は、宮本の文章を読み返しながら遠野物語を思い浮かべたと書いている。「優れた民俗学者は文学者も兼ね、詩的インスピレーションを併せ持っているものだとつくづく感服される」と述べている。苦海浄土も事実そのままではなく、霊感と想像力で脚色し虚構化されることで強度を増した語りの部分があることは知られている。

     ◆

~~~ 長谷川塾メルマガ 2024年9月13日号(転送禁止)~~~

◎拙著2冊販売中→ Amazon.co.jp: 自分で考え、発言する力を養う ソーシャル・シンキング : 長谷川智: 本 本気の文章上達法を教えます | 長谷川 智 |本 | 通販 | Amazon

***デイ・ウォッチ(12日)

過去最多の9人出馬の自民党総裁選、政治改革や経済政策で論戦へ…党内では「選挙の顔」に期待大 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) →自民党総裁選に過去最多の9人が立候補した。27日まで過去最長の15日間の選挙戦で連日のように政策討論会などのイベントがある。政策の競い合いは面白いが、岸田首相は「新しい資本主義」をぶち上げて何もしなかった、だから支持率も落ちた。無責任な公約は許されない。

マイナンバーカード 運転免許証一体化 いつから?強制?マイナ免許証2025年3月24日開始へ 記者が詳しく解説 | NHK | マイナンバー →来年3月にマイナ免許証が登場する。かなり普及するのではないか。2枚持つのは面倒だし、今のマイナカードは貧弱で、免許証と一体化すれば頑丈になる。マイナ保険証だって自然に使いたくなるように知恵を絞れば、もっと普及するだろう。

損保各社、営業目的の代理店出向廃止 業界団体が新指針 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →損保業界が不祥事の温床となった営業目的の代理店出向を廃止する。業界団体が主導して、業界ぐるみでやめる姿が損保らしい。個別企業の判断ではなく、談合に似た横並びだ。もっと競争をしようよ。

宮司が神社の収入一部を私的流用か 東京国税局が所得隠し指摘 | NHK | 東京都 →赤羽八幡神社の宮司が、神社の収入を7年間で2.5億円も私的に流用していた。さい銭をつかみ金のように持ち出して遊んでいたのだろう。神社は領収書の要らないカネを集められ、宗教法人の源泉徴収漏れは全国各地で相次いでいる。神社も「裏金」の温床だ。

ペルーのフジモリ元大統領死去、86歳 南米初の日系人大統領―左翼ゲリラ掃討、獄中生活も:時事ドットコム (jiji.com) →日系人大統領のフジモリ氏が亡くなった。両親は熊本県生まれで、1990年に大統領に就任し、治安を劇的に改善させた。ペルーの日本大使公邸人質事件では指揮をとり、救出に成功した時の姿は鮮烈だった。強権的姿勢が批判されて日本に亡命し、帰国後は収監された。波乱の一生だった。

*** 「今日の名言」

◎乃木希典(陸軍大将。1912年9月13日、明治天皇の後を追って殉死、62歳

「口を結べ。口を開いているような人間は、心にも締まりがない」 「勉強忍耐は、才力智徳の種子なり」 「恥を知れ。道に外れたことをして、恥を知らないものは、禽獣(きんじゅう)に劣る」 「決して贅沢するな。贅沢ほど、人を馬鹿にするものはない」 「武士道とは、身を殺して、仁をなすものである」 「武士道は、言葉ではない」 「社会主義は平等を愛するというが、武士道は自分を犠牲にして人を助けるものであるから、社会主義より上である」 「(日露戦争で敗れたロシア軍総指揮官ステッセルと会見する模様を米国人が映画に撮りたいと願い出た時)武士道の精神からいって、ステッセル将軍の恥が残るような写真は撮らせてはならない」 「(日露戦争後、時間が許せば戦死者遺族を訪問して言いたいとして)乃木があなた方の子弟を殺したにほかならず、その罪は割腹してでも謝罪すべきですが、今はまだ死すべき時ではないので、他日、私が一命を国に捧げるときもあるでしょうから、そのとき乃木が謝罪したものと思ってください」

*** 今週の教養 (忘れられた日本人⑤)

◎「世間師」の思想  宮本常一の民俗学を特徴づける重要な言葉に「世間」がある。歴史学者の阿部謹也によると、古来日本にあったのは「世間」であり、「社会」は明治以降に輸入された概念だ。日本の「世間」は、西欧の個人を前提とした「社会」ではない。世間は一枚岩ではなく、いくつもの世間が折り重なっている。1人の人間は複数の世間に属しており、世間ごとに違った自分の複数の属性を使い分けている。多様性があるのだ。

親子や支配・被支配の縦の関係は、家父長的な同族結合の強い東日本の村に多いのに対して、西日本は「非血縁結合」、つまり「地縁結合」が強く、中間的な村もあると宮本はみている。歴史学者の網野善彦も岩波文庫版の「忘れられた日本人」の解説で、そこに注目する。「戦後、寄生地主制や家父長制が封建的として批判されたことが農村のイメージを一色に塗りつぶす傾向にあったのに対して、西日本に生まれた宮本氏は強く批判的であり、それを東日本の特徴と見ていた」と述べている。

宮本は「世間」という言葉を肯定的、積極的に用いた。日本の村落共同体は固定的で閉鎖的なイメージを持たれがちだ。稲作中心で、家や土地に縛り付けられた定住民の印象が強いからだろう。しかし漁民を見れば、漁をして移動し、立ち寄る先々の港に文化を伝えたりしながら、他の土地へも移動し、戻ってきた。日本の庶民は漁民でも農民でも自分たちが豊かになるために開拓民として新たな土地を切り開き、故郷から移動した。それが宮本の根本的な考え方だった。

宮本が記録した世間師は、放浪の旅をして帰ってくる存在である。共同体の外側にある文化や産業、生活を見て歩き、その価値を自らの共同体に持ち帰る。共同体の漸進的な発展はそんな風にもたらされた。忘れられた日本人収録の13篇のうち後半の6編は、6人の老人たちのライフヒストリーが並んでいる。中心にあるのが世間師という言葉だ。近代化によって政府や教育でもたらされる「上からの制度化された変化」ではなく、庶民が努力して知識や経験を獲得し、よりよい共同体を探ろうとした。そこに地道な変化に寄与してきた世間師たちがいた。必ずしも成功した例ばかりではない。宮本が言いたかったことだと思う。そしてまた、宮本自身も日本各地を歩く世間師でもあった。