4月7~11日(教養講座:フジテレビ報告書に学ぶ)

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***デイ・ウォッチ(4~6日)

韓国 ユン大統領の弾劾は妥当 憲法裁判所 | NHK 韓国 大統領選挙“6月3日投票が有力 与野党動き加速へ | NHK →裁判官8人が全員一致で罷免を決めた。すべての主張を退け、ユン大統領は完敗。暗い軍政への拒否感が強いのだろう。現時点の支持率は、最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)氏が最多。対日強硬派だったが、選挙戦の主張はどうなるか。目が離せない。

NEXCO中日本 ETCシステム障害 7都県で一部レーン利用できず 通過できる対応  | NHK →寺田寅彦は「文明が進むと災害の被害が大きくなる」といったが、今のデジタル社会も同じだ。無料で通過させれば、渋滞も発生しなかっただろう。電車は遅延すれば特急料金が返却されるが、渋滞の「低速道路」でも料金は取られるのは変と言えば変。今回は作業トラブルのようだが、サイバー攻撃されれば・・・。復旧は未定という。

NYダウ 2231ドル下落 過去3番目の下落幅 世界的な景気後退リスク | NHK →トランプ関税で世界同時株安が止まらない。ITバブル崩壊やリーマン・ショックなど過去の暴落は、経済のひずみが徐々にたまったもので、避けがたい面があった。しかし今回は、1人の不見識な決断が引き金になった。投資家の損失は2000兆円を超えそうだ。怒りが世界でたまっている。きょうの東京株先物も暴落している。

相互関税で株価急落―トランプ氏「政策変えない」:時事ドットコム 「トランプは退陣を」 米各地で抗議デモ、最大規模:時事ドットコム →トランプ大統領は経済不安もどこ吹く風で、「政策は変えない」と言う。全米各地では抗議のデモが広がっている。石破首相はトランプ大統領に除外を働きかけるというが、「目を覚ませ。誰も得しないぞ」と同盟国ならではの苦言と忠告をすべきだろう。

財務省、森友文書を一部開示 交渉記録など2200枚―赤木さん妻に・改ざん問題:時事ドットコム →公文書は国民のものだが、やっと公開された。17万ページのうちの2200ページとごくわずか。一気に公開できないのだろうか。衝撃の事実はないようだが、弁護団らが分析して発表するという。安倍元首相夫人の関与、周囲の忖度、改ざんの経緯などが焦点だ。

*** 「今日の名言」

◎ヘンリー・フォード(米国の自動車王。1947年4月7日死去、83歳

「財産はやって来るものだ。自ら作るものではない」 「ほとんどの人が、成功とは手に入れるものだと考えている。だが、成功とは与えることなのだ」 「大抵の人は、問題を解決しようとするよりも、問題を回避するためにより多くの時間とエネルギーを費やしている」 「粗探しをするより、改善策を見つけよ。不平不満など、だれでも言える」 「見返りを期待しなくなったとき、倍の報酬がやってくる」 「障害物が恐ろしいものに見えるのは、目標から目を離すからだ」 「あなたができると思えばできる。できないと思えばできない。どちらにしても、あなたが思ったことは、その通りになる」 「大抵の成功者は、他人が時間を浪費している間に先へ進む。これは私が長年、この眼で見てきたことだ」 「成功の秘訣は、何よりもまず、準備すること」 「まだ始めてもいないことで、名声は築けない」 「小さな仕事に分けてしまえば、むずかしいことはない」

*** 今週の教養 (フジテレビ報告書に学ぶ①)

  フジテレビのトラブルをめぐる第三者委員会の報告書が発表された。273ページに及ぶが、生成AIにURLを入力すると、瞬時に要約できる。他社にも参考になる企業風土に関する部分を要約してもらい、4回にわたって報告する。最終回は報告書を踏まえた生成AIの提言を紹介する。

【要約1/“空気で動く組織”――タレント優位と沈黙の構造】 フジテレビの企業風土において、最も深く根づいていたのは「番組が最優先」「タレントは絶対」という価値観である。これは明文化されたルールではなく、現場で自然と共有されていた“空気”によって形成されていた。報告書では、女性アナウンサーAが経験した被害の背景に、この空気の存在が色濃く影を落としていると明確に指摘している。Aは当時、番組に出演中の人気タレント中居正広氏から個人的な誘いを受けたが、それを断るという選択肢を事実上持てなかった。番組出演者との関係性を良好に保つことは、番組の円滑な進行と自身の立場維持のために“当然”とされる文化があったからである。

特に若手女性アナウンサーには、「場を和ませる」「空気を読む」「男性出演者やスタッフとの距離感を程よく保つ」といった、暗黙の期待が課されていた。表面的には本人の自由であるかのように装いながら、実際には「そうする方が得」「そうしないと干されるかもしれない」といった見えない圧力が支配していた。このような“空気の支配”は、明文化された制度よりも強力で、反発すれば評価を下げられ、キャリアに影響するという無言の恐怖が社員を支配していた。

問題が生じた際にも、その空気は沈黙を生む方向に働いた。Aが複数回にわたり上司に相談した際、返ってきたのは「穏便に済ませた方がいい」「番組や中居さんとの関係を壊すのはあなたのためにならない」という“助言”だった。これは表面上、本人を思っての配慮に見えるが、実質的には会社としての責任を回避し、問題を矮小化しようとする対応である。Aが最終的に退職に至った過程でも、フジテレビ側は積極的なケアや調査に動くことはなかった。組織として、“声をあげること”を歓迎せず、“黙っていること”を暗黙に奨励する風土が根深く存在していたといえる。

報告書は、このような空気による支配が、制度やルールを形骸化させ、現場の人間関係や業務構造にまで影響を及ぼしていたことを強く問題視している。たとえコンプライアンス制度が存在していても、社員がそれを信じられず、利用しようとしなければ意味がない。社員の意見が通らず、沈黙と従属を選ばざるを得ない組織においては、不正やハラスメントは見過ごされ、繰り返される。フジテレビの問題は、個人の過ちではなく、組織が生み出してきた“空気そのもの”の問題なのだ。

    ◆

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***デイ・ウォッチ(7日)

石破首相 トランプ大統領と電話会談 担当閣僚人選進め協議継続 | NHK | 日米首脳会談 日本製鉄のUSスチール買収計画 トランプ大統領 再審査指示 | NHK →日米首脳が電話会議をし、関税問題の担当閣僚を選ぶことになった。米側はベッセント財務長官が担当する。また、トランプ大統領は日鉄のUSスチール問題の再調査を指示した。新しい手がかりを得たので、日本にとって明るい材料といえるが、先行きは見通せない。ドジャースの大谷がこの日ホワイトハウスを訪問したが、その効果もあったのかどうか。

日経平均株価 ブラックマンデー翌日に次ぐ下落幅 過去3番目の2644円値下がり  | NHK  NYダウ 一時1700ドル超値下がり 関税停止検討報道で買い戻しも | NHK | 株価・為替 →世界同時株安が止まらない。7日は日本株が過去3番目の下げを記録。NYダウも当初は大幅に下げ、関税停止の報道で買い戻しの動きが出たが、ホワイトハウスが否定してまた下げた。しばらく乱高下が続きそうだ。

「トランプ関税」は交渉の対象?、政権内でも意見はバラバラ – CNN.co.jp →関税引き下げの余地について、トランプ政権内で意見が一致していない、とCNNが報じている。トランプ大統領は「交渉の余地なし」とみられているが、IT企業幹部らとの電話で、各国が米国の貿易赤字に対処するなら交渉に応じる意向を示したという。やはりディールに使うのか。市場同様、不透明だ。

中日本高速道路 ETCシステム障害 応急復旧行い 約38時間ぶり運用再開 東京・神奈川・愛知など8都県で影響 | NHK →中日本高速のETC障害が38時間ぶりに復旧した。料金を徴収できなかった人には、HPからの支払いを求めているが、何割の人が払うだろうか。日本人の国民性も試す「社会実験」といえる。

天皇、皇后両陛下が硫黄島で戦没者を慰霊…日米2万7000人以上を追悼する「鎮魂の丘」など巡る : 読売新聞 →天皇、皇后両陛下が硫黄島を訪れた。被災地や慰霊地の訪問は、国民も支持しており、象徴としての重要な役割だろう。日本人の分断を防ぐ役割もある。硫黄島は現在、自衛隊の島になっているが、一般人が訪問できる機会もあっていい。

政府備蓄米が店頭に並び始めたのに値段下がらず…コメ平均価格13週連続上昇、5キロ4206円 : 読売新聞 →コメ価格が下がらない。備蓄米を放出したが、最新価格は5キロ4206円で13週連続の上昇となった。1年前は2000円程度だったので、2倍の水準だ。遠からず下がるはずだと期待は高まっている。見通しを見誤り続けた農水省の説明責任も高まっている。

*** 「今日の名言」

◎聖徳太子(飛鳥時代の摂政。622年4月8日死去、48歳

「和を以て貴しとなす」 「いさかいを起こさぬことを根本としなさい」 「上の者も下の者も協調、親睦の気持ちをもって論議するなら、自然と物事の道理にかない、どんなことも成就するものだ」 「真心は人の道の根本である。何事にも真心がなければいけない」 「嫉妬の気持ちを持ってはならない。自分がまず相手を嫉妬すれば、相手もまた自分を嫉妬する。嫉妬の憂いは果てしない」 「聖人・賢者と言われる優れた人材がなくては国を治めることはできない」 「部下に仕事を任せる者は、任せる仕事を熟知していなければならない」 「怒りを抑え、表に出してはならない。人が自分と違ったことをしても怒らないように。考え方は人それぞれである。自分が良いと思うことも相手にとって嫌なこともあるだろうし、その逆もある」

*** 今週の教養 (フジテレビ報告書に学ぶ②)

【要約2/制度はあるのに機能しない――形骸化した相談体制と“誰も動かない”構造】  フジテレビには、形式上ハラスメントを防止するための制度や相談体制が存在していた。人事部門やコンプライアンス窓口が設けられ、社員が安心して相談できる体制が整っていることになっていた。しかし、報告書はこれを「機能していなかった制度」と断じる。制度があっても、それを利用する社員が信頼できず、実際に相談しても組織が動かなければ意味がない。今回の事案はまさにその典型であり、制度の存在がむしろ“建前”として使われ、現場の実態は放置されていた。

Aアナウンサーは、被害を受けた後、複数の上司に相談した。内容は断片的ではなく、明確に中居氏との関係における不快感や困惑を伝えていた。しかし上司たちの反応は、「今は動かない方がいい」「あなたのためにならない」という慎重すぎる対応に終始し、正式な聞き取りや調査、被害者保護の措置は一切とられなかった。さらに人事部やコンプライアンス担当に情報が伝えられた形跡もあるが、そこで何らかの判断が行われた形跡もなく、誰も“正式な責任者”として対応に乗り出さなかった。

この「誰も動かない」構造は、責任の所在があいまいな組織でよく見られる現象である。誰かが「これは業務外かもしれない」「本人が望んでいない」といった理由をつけて動かないことで、問題は“個人間のトラブル”に矮小化されていく。実際、報告書は「制度の背後にある風土が、制度の効力を骨抜きにしていた」と述べ、コンプライアンスの文言や窓口の設置だけでは、社員の安全は守れないという警鐘を鳴らしている。

さらに深刻なのは、相談の内容が被害者の意図を離れて他者に共有されるリスクである。Aは、上司への相談が結果的に中居氏側に伝わってしまうのではないかという不安を抱え、それが二次被害や報復への恐れにつながっていた。報告書でも、相談が“筒抜けになる可能性がある”という社員の不信感が存在していたことが明記されており、それが制度への信頼を著しく損ねていた。制度が信頼されないということは、制度が存在しないことと同義である。

結局、Aは被害を受け、相談もしたにもかかわらず、正式な対応を得られないまま退職に追い込まれた。この事実は、制度を設けることと、制度を機能させることの間に大きな隔たりがあることを如実に示している。社員が安心して声をあげられる環境をつくるには、制度そのものよりも、それを運用する人間の姿勢と、組織全体の風土を変える覚悟が求められる。誰もが「これは自分の責任ではない」と思っている限り、制度は形骸化し、被害者はまた一人、静かに組織を去っていく。

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***デイ・ウォッチ(8日)

トランプ大統領 “中国 対抗措置撤回なければ50%の追加関税” | NHK  アメリカ 報道官 中国の関税率 104%に | NHK  →トランプ政権の関税引き上げの狙いは、やはり中国か。関税問題で各国がアプローチし始め、ディールの様相も出ているが、報復関税をぶち上げた中国に激しく脅しをかけている。関税率は104%で貿易は事実上できなくなる。中国も対抗する構えで、米中関税戦争が激化している。

日経平均株価、歴代4番目の上げ幅 米株下落一服で買い戻し – 日本経済新聞 NYダウ 1400ドル超値上がり一転 一時800ドル超下落 | NHK →8日は東京株が急上昇し、歴代4番目の上げ幅になった。それでもまだ3万3000円程度で、3月下旬の3万8000円に比べれば、低水準だ。NYダウは乱高下し、終値は下落した。関税引き上げの動きに一喜一憂するやっかいな展開が続きそうだ。

iPS細胞使った心臓病治療 大阪大学発ベンチャー企業が承認申請 国内外で進む開発競争 | NHK | iPS細胞 →iPS細胞が開発されて19年。大阪大学発のベンチャーが国に承認申請し、治療に向けて本格的に動き出しそうだ。心臓病の治療に使う細胞シートで、認められれば治療としては世界初という。日本発の久々に明るいニュースになるか。

村上世彰氏の長女、フジHDの実質筆頭株主に…「経営陣への助言や重要提案行う」 : 読売新聞 →旧村上ファンド系の投資会社・レノ(東京)と長女が、フジHD株の8.74%を取得し、筆頭株主に躍り出た。「物言う株主」で改革要求を突きつけるだろう。フジの動きは遅いので、同調する株主も少なくないとみられる。6月の株主総会に向けて、いろいろな動きが出そうだ。

看護師を蹴った広末涼子容疑者、高速道路で座り治療待ちの病院内を歩き回る…「一時的にパニック状態に」 : 読売新聞 →交通事故を起こして手当を受けた病院で暴れたという。高速道路の休憩施設で奇異な言動があったという情報もある。精神的に不安定になっていたようだが、何があったのだろうか。波乱万丈の人生だ。

*** 「今日の名言」

◎マーガレット・サッチャー(英国の元首相。2013年4月8日死去、87歳

「リーダーは好かれなくてもよい。尊敬されなくてはならない」 「私はコンセンサスを重要とは思わない。時間の浪費の原因のようなものだ」 「私が戦わなかった日など、1日たりともない」 「政治家は後戻りしてはならない。前進した時こそ、未来が約束される」 「懸命に働かずしてトップに立った人など、私は1人も知らない」 「お金持ちを貧乏にしても、貧乏な人はお金持ちにならない」 「お金は天から降ってこない。地上で稼ぎ出さねばならない」 「政治において、言ってほしいことがあれば、男に頼みなさい。やってほしいことがあれば、女に頼みなさい」 「女性運動を声高にやる人は嫌いです。男女の別に関係なく、人間は能力で決まる」 「ヨーロッパは歴史によってつくられ、アメリカは哲学によってつくられた」 「民主主義の根幹は、率直で力を込めた討論である」 「強者を弱くすることによって、弱者を強くすることはできない」

*** 今週の教養 (フジテレビ報告書に学ぶ③)

【要約3/“華”と“潤滑油”として扱われる女性たち――役割の押しつけとキャリアの歪み】  フジテレビの企業風土の中で、女性アナウンサーや若手女性社員に求められてきたのは、業務としての能力や専門性だけではない。報告書は、女性に対して暗黙のうちに「華やかさ」「場の空気を和ませる役割」「タレントやスポンサーとの潤滑油」としての振る舞いが期待されていたことを明らかにした。とくにアナウンサー職には、視聴者向けの“親しみやすさ”や“好感度”に加えて、現場での“扱いやすさ”や“男性社会に溶け込む順応性”までが求められていた。こうした役割の押しつけは、表立って指示されることはないが、社内の空気や配置の傾向、人事評価を通じて社員に浸透していた。

報告書では、アナウンサーAが参加を求められた飲み会や会食について、それが「業務外の私的な場」である一方、「番組関係者による“関係づくり”の延長線上にあること」が強調されている。こうした場に女性が招かれる際、その選定基準が“信頼”や“経験”ではなく、“話題性”“若さ”“人懐こさ”などに偏っていた事実は、組織が女性社員を“人材”ではなく“演出の一部”として見なしていたことを物語っている。これにより、女性自身がキャリアの軸を持てず、“期待される振る舞い”に合わせようとすることで、本来の能力が発揮される機会が奪われていた。

さらに問題なのは、女性が不快や不安を感じても、それを組織内で表明することが極めて困難であった点である。Aが不安を抱えて上司に相談した際も、「好意を持たれていたのでは」「君の勘違いかもしれない」という反応が返され、自身の感覚が疑われるような対応がなされた。これは典型的な“ガスライティング”に近く、被害を申し出た女性の心に二次的なダメージを与える対応であった。報告書は、「女性の感じた違和感が軽視され、真正面から受け止められてこなかった文化」を厳しく批判している。

また、女性アナウンサーを“人気商売”の一環とする文化も、長年の構造的問題である。ルックス、話題性、タレントとの相性が重視される傾向は、アナウンサーという職業の本質的価値を損なってきた。男性アナウンサーと比べ、女性は早期に退社し、結婚や出産を機にキャリアから降りるケースが目立つ背景にも、こうした“消費される存在”としての扱いが影響している。報告書は、女性を「職業人として尊重する視点」が乏しい職場文化こそが、今回の事件の温床であり、同様の問題を今後も生み出す可能性があると強く警告している。

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***デイ・ウォッチ(9日)

相互関税 90日間停止 トランプ大統領 中国は125%に引き上げ | NHK  中国 対抗措置を発表 米の輸入品 84%に引き上げ | NHK  →相互関税はやはりディールの材料だった。報復措置をしない国に対して90日間停止すると発表した。対中国は125%に引き上げるが、中国は84%の対抗措置を発表している。米中のヘビー級がチキンゲームモードに入ったようにも見えるが、大国同士の思惑が通じて、一瞬で手を握る可能性もある。

NYダウ 2900ドル超急騰、過去最大の上げ幅 「相互関税」90日間停止 | NHK  日経平均株価 一時1700円超の下落 相互関税発動で | NHK →相互関税停止を受けて、NY株が過去最大の上げ幅を記録した。9日に大幅下落した日本株だが、きょう10日は大幅高の見通しだ。トランプ政権が相互関税を停止した背景には、株式市場の動揺や中国の強硬姿勢がありそうだ。ディールとはいえ、世界をもてあそぶような米政権の軽い姿勢は、国際的な信義に関わり、強い非難に値する。

米ワシントンの裁判所 ホワイトハウスのAP通信への取材禁止は憲法違反 政府に仮差し止め命じる | NHK | アメリカ →当然の判決が出た。政府の方針を受け入れないメディアを排除すれば、社会の多様な意見を封じ込め、回り回って政権の利益にならない。そうした基本的なことがわからない政権だから、深刻だ。

ゼレンスキー大統領 ”ロシア側で戦闘加わった中国人兵士2人を捕虜として拘束” | NHK | ウクライナ情勢 →真実は細部に宿るという。中国人兵士がウクライナとの戦闘に参加したのは、どういう事情だろうか。中国政府が関与しているとは考えにくい。個人の資格で参戦したのだろうか。中国政府も事実上、容認しているのだろうか。見極めが必要だ。

石破首相、「地方創生支援官」180人任命 中央省庁が伴走支援開始:時事ドットコム →首相肝いりの地方創生で、中央省庁180人を地方創生支援官に指名して、自治体支援をするという。せっかくの挑戦にケチをつける気はないが、兼業というからどこまで成果が出るだろうか。中央目線でどこまで寄り添えるだろうか。成功体験をつくり、横展開できればいいが。

本屋大賞に阿部暁子さん 「カフネ」:時事ドットコム →すっかり定着した本屋大賞。阿部暁子さんの「カフネ」が受賞した。最愛の弟を亡くした法務局勤務の薫子が、弟の元恋人せつなに会い、彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うようになる物語。岩手県花巻市在住で、大谷選手が卒業した花巻東高に近い花巻北高出身。同校には大瀧詠一が1年間在籍したという。

*** 「今日の名言」

◎井上ひさし(小説家、劇作家。2010年4月9日死去、75歳

「むずかしいことをやさしく、やさしいことを深く、深いことを面白く、面白いことを真面目に、真面目なことを愉快に、愉快なことはあくまでも愉快に」 「一番大事なことは、自分にしか書けないことを、誰にでもわかる文章で書くということ」 「核兵器の存在自体が人間の精神にマイナスの強い影響を与えるものなのです。自分たちは今どういう環境を生きているのか、今後どんな地球を創りたいのか、ともに考えられればと思っています」 「被爆国がこれから増えないという約束はどこにもない」 「一つのいい芝居で人間の精神の根幹を変えられるんです」 「日本人を動かしているのは、空気です。一人一人が自立していないから、空気が変わるとみんな付和雷同して意見や態度をコロコロ変える」 「世界には自分が正しいということを信じて、他国に強制しようという原理主義的な態度を持った人たちがいますが、人は矛盾の塊だし、人であれ国であれ、良いところもあれば悪いところもある。お互いの良いところを認め合うようにしないといけません」

*** 今週の教養 (フジテレビ報告書に学ぶ④)

【要約4/制度では変わらない――“空気”を変える改革の覚悟】  フジテレビとフジ・メディア・ホールディングスは、今回の事案を受けて「再生・改革プロジェクト本部」を設置し、社内改革を本格化させる姿勢を打ち出した。人事制度や相談体制の見直し、倫理研修の拡充、女性管理職の登用推進などが検討されているが、報告書が本質的に問うているのは、制度の整備そのものではない。たとえ立派な制度が導入されても、それが職場の空気に反映されなければ、社員はまた黙り、問題は繰り返される。つまり、最も重要なのは、“制度が機能する職場風土”をつくれるかどうか、という点にある。

報告書は、「空気を変えるには、上層部の覚悟と継続的な取り組みが必要」と強調する。例えば、ハラスメントが疑われる行為があった場合、誰が責任を持って対応するのか。相談者を保護するための実効性ある制度設計がなされているか。そして、社員一人ひとりが「声をあげても損をしない」と実感できるような文化を育てていけるのか。こうした点を曖昧にしたまま制度だけを整備しても、根本的な改善にはつながらない。制度の骨格よりも、それを支える「日々のふるまい」「トップの姿勢」「同僚の態度」が組織を変える鍵になる。

現場の改革も求められる。制作現場では、番組優先の空気が根強く、「タレントとの関係を壊すことは避けたい」「スポンサーに迷惑をかけたくない」といった“忖度”が常に判断を左右していた。この空気を断ち切るには、番組責任者に対する明確な職務規律の導入と、制作現場の多様性・透明性の確保が不可欠である。報告書では、「懇親会・飲み会・私的な関係を業務と切り離すためのガイドライン」や「相談者が匿名で通報できる第三者機関との連携強化」など、具体的な提言もなされている。

ただし、こうした改革は短期間で成果が出るものではない。むしろ、「本気で変わる」という姿勢を持続的に社内に示し続けることこそが、信頼回復の道となる。社員が日常的に不安を感じず、違和感を口にできる職場――それは制度だけではつくれない。“空気”とは人がつくり、人が変えるもの。報告書は、「制度に頼るのではなく、空気に働きかけること」が最も難しく、しかし最も本質的な改革だと結んでいる。組織が変われるかどうかは、制度の厚さではなく、“現場での1対1の信頼”の積み重ねにかかっている。フジテレビに問われているのは、制度改革よりも、“空気を書き換える覚悟”である。

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***デイ・ウォッチ(10日)

株価 2900円近く値上がり 上昇幅過去2番目 相互関税一時停止で | NHK  NYダウ1014ドル安、貿易戦争激化を警戒 テック株急落 – 日本経済新聞→米国の相互関税の停止で、10日の東京株が過去2番目の上げ幅を記録。株価が高水準にあるので、上げても下げても金額が大きくなる。一方、NY株は大幅下落、きょうの東京株も下落見通しだ。相互関税の呪縛がある限り、金融市場の動揺は続く。

相互関税、わずか13時間で停止 金融市場配慮か、混乱再び―米:時事ドットコム →トランプ大統領は相互関税を見送った理由として、債券市場の動揺をあげた。中国が米国債を売ったためか、債券価格が下落し、金利が急上昇した。株と為替も下落するトリプル安だった。金融マーケットは強力な世論ともいえる。ジャイアン・トランプの独裁をひとまず封じ込めた。

「減税前提に現金還付を」 公明代表、経済対策巡り:時事ドットコム 消費税5%に引き下げ 林官房長官に申し入れ―国民・玉木氏:時事ドットコム →米国の相互関税の影響を和らげようと、与野党から減税や現金給付の声が出始めた。経済への悪影響はまだわからないが、参院選を前にバラマキ合戦の兆候だ。何かあると、現金のおねだりが政界の定番になっている。

ロサンゼルス五輪2028 36競技351種目決定 男女混合が増加  | NHK →2028年に開かれるロサンゼルス五輪の種目が決まった。日本でも関心の高い野球とソフトボールが復活。体操や陸上で男女混合種目が増える。開催地によって種目が大きく変動するのもどうなのか。商業主義や汚職や種目変動で、どうも落ち着かない。

奈良市の学校グラウンドに落雷と通報 中高生6人搬送、1人心肺停止 [奈良県]:朝日新聞 →奈良県の帝塚山学園グラウンドで、部活動のサッカーをしていた中高生が雷に直撃された。6人が病院に搬送され、14歳の中学生1人が意識不明。当時、雷注意報が出ていた。「急に風が吹くのは雷のサイン」と気象庁は注意を呼びかけている。

*** 「今日の名言」

◎孔子(中国の思想家、儒家の始祖。紀元前479年4月11日死去、74歳

「過ちて改むるに、憚ることなかれ。過ちを改めざる、これを過ちという」 「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」 「己(おのれ)の欲せざるところは、人に施すことなかれ」 「巧言令色鮮し仁(心にもないおべっかを使ったり、顔色をつくろったりする者には、本当に他人に誠実な者は少ない)」 「人格者は過ちがあるとまず自分を反省し、そうでない人は必ず他人のせいにしようとする」 「どんな人の意見でも、よい意見なら採用する。善くない人だからということで、正しい意見まで採り上げないことはしない。誰が言ったかは重要ではない」 「仁者は、難しくて骨の折れる仕事を自ら進んで引き受け、それによる利益は問題にしない。これを仁という」 「自分の利益になる三種類の友と、正直な人、誠実な人、そして多くの見聞がある人である」 「知っていることは知っていると認め、知らないことは知らないと認める。それが真の知識というものだ」 

*** 今週の教養 (フジテレビ報告書に学ぶ⑤)

【生成AIの提言:制度より“空気”を変えよ――日本企業への5つの対応策】  今回のフジテレビの事案は、ひとつの放送局の特殊な問題にとどまらず、日本企業全体が抱える構造的課題をあぶり出すものである。形式上の制度が整っていても、それが機能しないのは、職場に蔓延する“空気”――すなわち「声をあげづらい」「波風を立てたくない」「自分が損をするかもしれない」といった心理的抑圧が放置されているからだ。この“空気の支配”を断ち切ることこそ、日本の組織が本質的に変わる鍵である。以下に、そのための具体的対応策を5つ提案する。

【「空気」を可視化せよ】 企業は定期的に社員の「感じている空気」を可視化する仕組みを持つべきである。年1回の社員満足度調査や形式的なES(従業員満足)指標ではなく、匿名・自由記述型の「職場感覚ヒアリング」「空気診断」を実施し、部署単位で“沈黙の圧力”や“男女不均衡の感情構造”を可視化することが必要である。

【相談制度に“第三者の安心”を組み込め】 社内窓口はあくまで“社内”であり、当事者が「守られる」と感じるには限界がある。匿名・外部の第三者相談機関(例:弁護士チーム、産業カウンセラーなど)と連携し、内容に応じて“人事・上司を飛び越えて動ける仕組み”をつくることが信頼形成につながる。

【“空気に抗する勇気”を評価に反映せよ】 「声をあげた人」が不利益を被るのではなく、“おかしいことにおかしいと言える人”を明示的に評価するルールをつくるべきだ。360度評価の中に、「対話的姿勢」「安心安全な空気づくりへの貢献」といった項目を組み込み、行動としての“誠実さ”を昇進や処遇に反映させることが重要である。

【中間管理職への“対空気リーダー研修”を必須化】 空気の支配を生むのは往々にして“現場の常識”である。それに抗うには、部課長級のリーダーに対し、「自分も空気の一部である」という自己認識を促し、心理的安全性をどう担保するかというテーマでの定期研修(ケースメソッド、ロールプレイなど)が効果的である。

【“小さな声”をすくい上げる習慣を経営トップが体現せよ】最後に、最も重要なのは経営トップ自身が、「空気を変える責任は私にある」と宣言し、日常的に社員の小さな声に耳を傾ける姿勢を見せることである。トップが矛盾のないふるまいを続けることで、現場も変わる。改革は制度でなく“ふるまい”から始まる。

【結びに】  「空気」は日本文化の美徳でもあるが、それが人を縛るものとなった瞬間、組織を蝕む。沈黙に支配された組織に未来はない。制度よりも空気を、理屈よりも安心を。企業は「制度で守る」時代から、「空気で支える」時代へと移行するべきである。