6月10~14日(教養講座:吉田秀和の都市論)

2024.06.14メルマガ

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***デイ・ウォッチ(7~9日)

大津 保護司を殺害した疑い 保護観察中の35歳を逮捕 「私はやっていません」などと容疑を否認 | NHK | 滋賀県 →痛ましい事件。保護司がコンビニ強盗で執行猶予中の保護観察者に殺された。保護司は国家公務員だが、実質は民間のボランティア。罪を犯した人たちの更生を手助けする重要な役割だが、最近は人手不足という。2人の間で何があったのだろうか。

欧州議会選、極右が伸長 マクロン仏大統領は下院解散 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →欧州議会選挙は、親EU派が過半数を維持したものの、EU懐疑派の極右勢力が伸びた。720議席をめぐって6日から国ごとに投票が始まり、最終日の9日はフランスやドイツなど21か国で行われた。フランスは下院を解散する。内向き志向が強まり、世界的に国際協調派の力が弱くなっている。

イスラエル軍 人質4人救出 ハマス側“多くの住民死亡”と反発 | NHK | イスラエル “イスラエル 拘束したパレスチナ人に暴行 拷問”国連など報告 | NHK | イスラエル →イスラエルがやりたい放題だ。4人の人質を救出したが、約200人の住民が亡くなったという。イスラエルはヨルダン川西岸も含めてパレスチナ人を拘束し、暴行をしていると国連が報告した。国内外で反発が高まっている。

「つばさの党」代表ら3人再逮捕 「交通妨害」容疑で異例の立件―警視庁:時事ドットコム (jiji.com) →選挙や表現の自由もからむ事件だけに、警視庁は慎重に交通妨害容疑での立件を目指している。ユーチューブで流して視聴者が多かったので、エスカレートした。選挙というより単なる売名行為だ。

デンマークの首相、首都の広場で襲われる 容疑者逮捕 – BBCニュース →デンマーク首相が広場で襲われた。欧州では暴力的な風潮が広がり、不穏だ。背景はわからないが、欧州議会選挙の直前だけに解明が待たれる。ウクライナ侵攻やガザ攻撃があって世界がささくれ立っている。

*** 「今日の名言」

◎チャールズ・ディケンズ(英の小説家、弱者の立場から社会を風刺。1879年6月10日死去、58歳)

「この世に生きる価値のない人などいない。人はだれでも、だれかの重荷を軽くしてあげることができる」 「病気や悲しみも人に移るが、笑いと上機嫌ほど移りやすいものはこの世にない」 「愛する心は、真の知恵なのである」 「どんな規則正しい家庭でも、アクシデントは起こる」 「人生において我々が囚われている鎖は、我々が生み出したものにほかならない。今日できることを明日にしてはいけない」 「慈善を始めるのは家庭内から。正義は隣人から」 「他人に費やした時間は、自分の時間を浪費したことにはならない」 「猫の愛より偉大なギフトがあろうか」 「決して頑固にならない心を持ち、決して飽きない気質を持ち、決して感情を害さない器用さを持て」 「自分がしてほしいと思うことを人に施す努力をせよ。もし相手がそうしてくれなくても、がっかりする必要はない。あなたが相手をがっかりさせるよりはずっといい」

*** 今週の教養 (吉田秀和の都市論①) 

今週は名文家として知られた音楽評論家・吉田秀和(1913~2012)の文章を紹介する。「千年の文化 百年の文明」(海竜社、2004)に収録された世界の大都市に関する随筆を掲載する。

◎ベルリン・友情  西洋人がいかに友情を高く評価するかは、モンテーニュの「エセー」を読んでもわかる。西洋人はいつも丁寧に友情の手入れをし、「充実した生きた状態」を保つよう注意しなければならないと考えているようだ。だから自分の気持ちにだけ忠実で、好きになればべたべたとつきあい、あきたら放り出すと心得ている社会では本当の友情は成立しない。友情は愛と知性のバランスがあって初めて栄えるものだ。これを私はベルリンで得た友人から学び取った。

初めてベルリンに行った時、他とは違うものを感じた。砂地の土壌に築かれ、森と湖沼に恵まれた都会は、気象も大陸的で、大都市には例外的に乾いて澄んだ空気を持っている。住民も感傷を嫌い、知的なものへの敏感な共感を持っている。キリスト教新旧両派の争いで敗れ、フランスから亡命してきたユグノー派、大勢のユダヤ人達が大きな役割を演じたことと関係があると聞いた。ドイツには珍しい大都市的な雰囲気がある。バスに乗っていてもかつて東京の下町で耳にしたような冗談を聞く。当意即妙で口は悪いが、それほどの悪意があってのことではなく、子どもまで相手が誰だろうと臆せずものをいう生意気を持っている。相当の年の婦人がバスに乗り込んできたのを見て、若い衆が「おばあさん気をつけて」と声をかけると、老女が「おやまあ、いつの間に私にこんな柄の悪い孫ができたんだろう」とやり返す。あたりにどっと笑いの渦がまく。

この気質が強靭な合理精神の裏付けをもっている点は、江戸っ子と少し違うだろう。私の知っていた老婦人が長年の人一人暮らしの末、不治の病に倒れた。遠い国に離れていた子どもが看病に来たが、回復しない。彼女は入院すると言い出した。私が「何という勇気だろう」と言うと彼女の返事。「いや勇気じゃありません。私も悲しい、恐ろしい。でも理性が命じるのです。いつまでも世話になっていられない以上、私が自分から言い出さなければ誰が言えるだろう」。私はこういうところに人間の尊厳をみる。

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***デイ・ウォッチ(10日)

経団連、選択的夫婦別姓を求める提言 「早く法改正を」 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →経団連は政治資金では保守的だが、ジェンダーやダイバーシティでは積極的だ。グローバル展開をしていれば、日本だけの不都合や欠陥がよくわかる。別姓に反対している自民党保守派は、古い家族観や天皇観に固執している珍しい存在。あまりにイデオロギー優先で、現実の不都合を見ていない。

前国防相が政権離脱、首相に痛手 死者多数も「戦争犯罪」否定―イスラエル:時事ドットコム (jiji.com) →政権を離脱したガンツ氏は首相候補と言われる有力政治家。ネタニヤフ首相への打撃は小さくないが、政権は右派が多くなって強硬一辺倒になりそうだ。ガザ侵攻は刑事訴追を免れたいネタニヤフの「私戦」になりつつある。

旧統一教会に献金返すよう求める裁判 初めて最高裁で弁論 | NHK | 旧統一教会 →最高裁が旧統一教会に厳しい判決を出す見通しとなった。協会と信者で交わされた念書の有効性が焦点。原告の長女は「母が書ける文書ではない」と主張していたが、1審と2審(2022年)は有効とした。アンチ協会という最近の空気を反映しているのだろう。1審と2審がいかにずさんだったかわかる。

東京大学学長、授業料「改定を検討」 値上げなら支援策 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →東大は親の所得がもっとも多いと言われるので、授業料を上げても支障は少ない。国は国立大学の授業料の幅を決めているが、低所得者への支援策拡充を前提に、もっと大学の自主性に任せてもいいのではないか。国立大学がまだ必要かという根本的な議論もあっていいだろう。

東京 国立市の分譲マンション 引き渡し直前に解体へ「富士山 見えなくなる?」積水ハウス“補償含め対応” | NHK | 不動産 →10日のワイドショーをにぎわせた話題。東京都国立市の富士見通りから富士山が見えなくなるのは地元には辛いが、積水ハウスが完成したマンションを解体する方が驚き。「事前の検討が足りなかった」という。社内の風通しが悪かったのだろう。

“沙羅双樹の花”に例えられる「ナツツバキ」見頃 平家物語 冒頭に登場 京都「東林院」 | NHK | 京都府 →平家物語で有名な沙羅双樹の花。別名ナツツバキで、夜明け前に咲いて、日が暮れる頃には散ってしまう。京都・妙心寺の境内にある東林院では、咲いている花と散った花が見られた。まさに盛者必衰。ネタニヤフに見せてあげたい。

*** 「今日の名言」

◎緒方洪庵(江戸時代の医師、蘭学者。1863年6月10日死去、52歳)

「たとえ救うことができない病であっても、患者の心を癒すのが仁術というものだ」 「同業の人に対しては賞賛すべきである。決して他の人の批判をしてはいけない。人の短所を指摘するのは、徳のある人のすべきことではない。間違いを指摘するのはつまらない人のやることだ。各々の考えがあるのだから、みだりに批判してはいけない」 「老人のことは尊重し、若者のことは愛し、ほめなさい」 「人に対しては、ただその人を見るのがよい。身分や経済力を見てはいけない。お金持ちと貧しい人が流す感激の涙は、比べられるものではない」 「医の道は己のためにあらず、人のためのみ」  「医者がこの世で生活しているのは、人のためであって自分のためではない。有名になろうとは思うな。利益を追おうとするな。自分を捨てよ。人を救うことだけを考えよ」

*** 今週の教養 (吉田秀和の都市論②) 

◎ロンドン・勇気   ロンドンは英国の首府だけでなく、ひとつの思想、ひとつの精神のあり方の象徴でもあるのだ。ロンドンに行くたび、世界に向けて開かれているのを痛感する。大通りを行くと肌の色の違う世界中の人種が見られる。他の人間がどんな恰好をしていようと、誰も珍奇の目で見たり、差別を感じさせたりするものが一切ない。みんな物怖じせず、心の赴くままに歩いてゆく。他人に干渉しない。だが、この自由は無関心とは全く違う。私がロンドンで学んだことである。

私はベートーベンのスケッチ帳を調べる目的で大英博物館に行ったことがある。私は英国人と少しも変わらず、簡単な手続きだけで、かけがえのない資料をどれでも思うがまま手にとり、何度でも調べ直すことができた。英国人だろうと外国人だろうと区別しない。英国人の日常生活についても同じだ。市民の間には社会的正義感と人間同士の連帯感がどこより発達しているように見える。

第二次大戦はナチスドイツのポーランド侵攻で始まった。あの時英国は、自国の防備体制さえ整っていなかったし、国民は戦争はこりごりだった。相互援助条約があろうと、遠いポーランドを助けるために戦争に入るような愚行には出まいというのが、ナチの希望的観測だった。しかし英国は参戦した。その結果は周知の通り。負けこそしなかったが、以来大英帝国は小島に転落したも同然になった。「義を見てせざるは勇なきなり」。少なくともあの頃の英国は、この東洋の諺にことわざに照らしても、恥じる必要のない国だった。英国はただ、ナチの不正の犯罪が大手をふって世界を支配するに耐えられなかったのだろう。

英国だっていつも良いことばかりしてきたはずはない。ただ英国人は「自分だけよければいい」と考えることから遠い国民だ。彼らの政治的社会的道徳的理性が教えるのだ。もちろん私も戦争は大嫌い。英国人だって、仮に戦争が始まるとしたら、今度ばかりはどうするか私には見当がつかない。だが、今のような世界に生きていて、最小限、社会的正義を守ろうという精神の生きていることを感じさせる都市というと、私は真っ先にロンドンを思うのだ。この点でも、日本は英国とは正反対の国ではないだろうか。日本人とは「日本は日本、世界は世界」。どこまでいっても、この二つは別のものなのだ。

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***デイ・ウォッチ(11日)

iPhoneに独自生成AI搭載、メールを要約し返信内容も作成…今秋から英語で無料提供 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) →AIで出遅れたアップルが、アイフォンに独自AIを搭載すると発表。マイクロソフト系のチャットGPTも活用し、一部サービスを担わせる。生成AIスマホはまだ6%程度だが、今後伸びが予想される。イーロン・マスク氏は「チャットGPTはリスクがある」と批判。AIの世界はにぎやかだ。

国連安保理、ガザ新停戦案の履行要求 米起草の決議採択、14カ国賛成:時事ドットコム (jiji.com) →アメリカが先導して国連で停戦包囲網を作っている。安保理15カ国のうち14カ国が賛成、ロシアは反対に回らず棄権し、決議が採択された。ブリンケン国務長官が中東を精力的に歴訪中だ。国内で批判が高まるバイデン政権も瀬戸際にいる。

引き取り手のない遺体のトラブル“実態調査し対策検討”厚労相 | NHK | 厚生労働省 →高齢化・日本の新しい問題が浮上した。高齢者の1人住まいが増え、亡くなった場合の親族確認が困難になっている。親族がのちに判明して、トラブルになるケースも増えている。法律や全国的な統一ルールがないのが一因だが、自治体は連絡先届け出制度をつくるなど工夫したい。

浮体式洋上風力、初の大規模実証へ 丸紅系・中部電力系を選定 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →浮体式風力発電が始まる。風力は有望な再生エネルギー源だが、活用は十分進んでいない。日本は遠浅の海岸が少ないので、海に浮かべる浮体式への期待が高まる。丸紅系と中部電力系の2社が取り組む。電力会社は原発に固執せず、再エネにもっと力を入れるべきだろう。

バイデン大統領 次男 ハンター・バイデン氏に有罪評決 現職大統領の子供の有罪は初めて | NHK | バイデン大統領 →銃の不法購入が有罪とされた。現職大統領の子どもの有罪は初めてという。親と子は違う人格とはいえ、大統領選にどう影響するか。トランプ氏も先日、有罪になったばかり。すべてに聖人君子を期待するわけではないが、米国はどうも変だ。

*** 「今日の名言」

◎毛利元就(戦国時代の武将。1571年6月14日死去、74歳)

「一本の矢は簡単に折れてしまうが、束になれば折ることはむずかしい。お前たち、力を合わせなさい。背くことがあってはならない」 「道を歩いてつまずくのは、ありがちなことだ。少しも気にすることはない」 「言葉は、心の使い方である。言葉によって、その人が善か悪か、才能があるかないか、剛勇か臆病か、利口か愚かか、遅いか速いか、正直か正直でないか、すぐに分かる」 「一芸もいらず、能もいらず、遊もいらず、履歴もいらない。ただ日夜ともに武略、調略の工夫をすることこそ肝要である」 「中国地方の全部とは愚かなことだ。天下を全部持つようにと祈ればよいものを。天下を取ろうとすれば、そのうちに中国地方は獲れる。中国地方だけを獲ろうと思えば、どうして獲れるものか」 「私は、酒が飲めぬから、このように長生きなのだ。酒を飲まなければ七十、八十まで健康でいられて、めでたいことだ」 

*** 今週の教養 (吉田秀和の都市論③) 

◎パリ・自由  1954年パリに初めて行った時、気がついたのだが、何か事があって警官が来ると、そこに集まった野次馬が、まず警官不信というか、警官反対の態度をむき出しに示すのだった。自動車で何か違反があると、みんなはまず捕まったほうの肩を持ち、警官に楯をつく。警官は何とかして当事者をみんなの目の前から離し、どこかに連行しようとする。みんなはそれにもまた難癖をつける。日本から来た私には、珍しく不思議だった。どうしてこうなるのかと。同時に私は自分の中にできたら警官とは関わりたくないという声がするのを否定できなかった。秩序の守り手である警察官の仕事をやりにくくしたら、こっちも困りはしないかという心配もあった。

こんなことも見かけるようになる。パリでは交通信号が赤になっていても、車が来なければさっさと横断する人が少なくない。彼らには信号は一つの目安であって、命令ではない。当時のバスは車の後部が屋根と手すりだけの立ち席席になっていた。そこに何人も乗れ、車掌もそこに立っていて、出入り口に付けられた鉄の鎖をかけたり外したりして乗り降りを管理する。だが、バスが動いてからも飛び乗ったり、飛び降りたりする人が珍しくない。車掌は、車が動き出してしばらくは皆の様子を見てから鎖をかける。

この街には「規則は規則。あくまで自分たちの便宜のためにある。いつどう守るかは、自分で判断することだ。やり損なったらそれは俺の責任。干渉はしてほしくない」という精神が流れている。こういう思想の土地では権力組織は個人にとって目障りな存在になりかねない。警官即秩序の守り手という考えは、いつも正しいとは限らない。彼らが権力を厳重に監視しなければならないという考えが大衆の間にあっても不思議ではない。

私は若い頃、アンドレ・ジッドの本で「我々はフランス人には違いないが、どういう風に『フランス的であるか』というのは自分で決めることである。自由なのだから」という一行を読んだ時、強いショックを受けた。その頃は日本が、満州侵略から日中全面戦争へと深入りする時期にあたり、国体明徴とか国民精神総動員とかいうかけ声とともに「日本人とはかくあるべきもの」といった議論が声高くいわれ、それに合わないものは非日本的、西洋かぶれ、近代病と排撃されていた。私にはそれが承服できなかった。しかし自分でも完全に確信が持てず、それを書くのは楽ではなかった。そのときジッドのこの言葉にぶつかったのだ。私はフランスではどうなのかなあ?とよく思った。

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◎新著「ソーシャル・シンキング」を解説したウェブセミナーの動画をアップしました→ ウェビナー動画「思考の幅をどう広げるか」を公開 – 長谷川キャリア文章塾 (hasegawa-cwa.com)

***デイ・ウォッチ(12日)

東京都知事選挙 小池知事 3期目を目指し立候補の意向を表明 | NHK | 東京都 →小池都知事がやっと出馬表明した。政界スズメによると、事前調査では小池氏が蓮舫氏を大きくリードしているという。無党派が多いので、蓮舫氏の追い上げが焦点。40人以上出馬する見通しだが、選挙ポスターの掲示板は48人分しかない。超過したらどうするのか? 脱落者がかなり出るのか?

巨大IT企業を規制の新法 参院本会議で可決・成立 | NHK | IT・ネット 海外は新ストア参入 巨大IT規制、欧州委員会は順守を調査 – 日本経済新聞 (nikkei.com) →巨大IT企業の規制というが、今回はスマホのアプリのみが対象。EUでは通販やSNSも対象にしている。競争と規制のバランスがずっと問われる時代になった。

男女平等、日本118位 「大幅進展」も先進国最下位―国際調査:時事ドットコム (jiji.com) →毎年恒例のジェンダーギャップ指数。過去最低だった昨年の125位から118位にアップした。女性閣僚が増えたことが理由だ。しかし、まだ先進国では最下位。政治や経済の分野でクオーター制を義務化して、女性に比率を引き上げるしかないだろう。

エスカレーターの手すりの巻き込み口付近で首挟まれ80代女性が死亡 西東京市 | NHK | 事故 →痛ましい事故だが、似た事故は各地で起きているという。高齢化社会、カートの使い方、エスカレーターの危険性・・・。対応すべきことが多くありそうだ。

ことし初の猛暑日 熱中症で搬送も 梅雨時期の対策・注意点は | NHK | 熱中症 →初の猛暑日。熱中症で搬送される人が相次いだ。幼い頃、夏は楽しみだったが、最近は憂うつ。夏の到来は去年より早そうで、9月末まで暑いと思うとうんざりする。電気代がかかってもエアコンで体調を整えたほうがいいようだ。「暑さは災害」という認識が必要だ。

*** 「今日の名言」

◎大田實(海軍中将、沖縄根拠地司令官。1945年6月13日沖縄で自決、54歳)

「食糧はもう6月一杯しかもたない状況である。沖縄県民かく戦えり。県民に対し、後世、特別のご高配を賜わらんことを」 「(辞世の句)身はたとへ 沖縄の辺に朽ちるとも 守り継ぐべし大和島根は」 「(自決前に海軍次官宛ての電文で)沖縄本島に敵が攻撃を開始して以降、陸海軍は防衛戦に専念し、県民のことに関してはほとんど顧みることができなかった。それにも関わらず、私が知る限り、県民は青年、壮年が全員残らず防衛召集に進んで応募した。残された老人、子供、女は頼る者がなくなった。相次ぐ敵の砲爆撃に家屋と財産を全て焼かれてしまった。着の身着のままで、軍の作戦の邪魔にならないような場所の狭い防空壕に避難し、辛うじて砲爆撃を避けつつも風雨に曝されながら窮乏した生活に甘んじ続けている。若い女性は率先して軍に身を捧げ、看護婦や炊事婦はもちろん、砲弾運び、挺身斬り込み隊にすら申し出る者までいる。沖縄島はこの戦闘の結末と運命を共にして、草木の一本も残らないほどの焦土と化そうとしている」

*** 今週の教養 (吉田秀和の都市論④) 

◎北京・シンメトリー  中国に行ったのは1979年末、60代の半ばを過ぎていた。予想を絶して大きく、私への働きかけも予想を絶して深く広がった。中国は私の第2のヨーロッパだった。故郷に戻った心地を誘う。私には漢学者の大叔父がいて、幼い頃よく漢文素読を教えられ、彼の吟じる詩を聞かされた。老いて中国に触れ、その思い出が一挙に吹き出してきた。

私は北京の大造営物の華麗壮大に打たれたが、単に大きいということだけでなく、彼らの構造美の根本がもっぱら左右の完全な均斉にあることからくるらしかった。特に故宮の中央、太和殿の中で北を背に南面して立つと、太陽が宙点に、左手は東、右が西。宇宙が整然たる秩序に組み込まれた体系として、眼前に展開するのを実感せざるを得ない。中国の文明が、自己を世界の中心と観ずるところから出発して、一切をそれとの遠近隔接の関係に従って段階づけたことが初めてわかってきた。この自己中心の壮大な宇宙学的文明論は、中国のようにいつも無限の空間の広さに直面し、一切を一つの秩序の下に体系的につかまないと、たちまち混乱に陥れる恐れのあるところに生まれたのだ。一切を統べる原理の軸として「均斉」が建てられる。それは建築だけではない。中国は頑ななまでにシンメトリーに固執し、偉大な哲学や詩文までそこから展開したのだ。

こういったことが私の幼児の記憶と混じり合い、胸の底まで響いてくる何かを持つ。これは日本とは違った文明だろう。日本は断片的思考、均斉を嫌う美学であることは、日本の哲学や茶道、生け花など芸道に明らかだ。中国の中央集権的体系的文明に対し、日本は辺境的地方的文明の典型なのかもしれない。北京ほどそれを痛切に感じさせられたことはなかった。日本は何の秩序もないようでいて、均衡を失わずにいる文明を発展させることに成功した国。ことに処するにあたり、原理でなく即興的反応ですませながら、持続を失わずにきた。完全を嫌い、破調に美を見てきた。しかしその中でも最も強力なのは、すべては過ぎ去るという認識である。わたしの生もまた、この点では例外ではありえない。

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***デイ・ウォッチ(13日)

G7サミット、イタリアで開幕 ロシア資産活用へ新枠組み – 日本経済新聞 (nikkei.com)  G7サミット【1日目】イタリアで開幕 ゼレンスキー大統領がG7会場に到着 | NHK | G7サミット →場所はイタリア南部のリゾート。最大テーマはウクライナ支援で、ロシアの凍結資産を活用する。利子だけで年間5000億円という。かつては世界をリードしたG7サミットで、経済問題が中心だった。最近はロシアや中国、グローバルサウスと多極化し、G7の影響力が低下。西側政治同盟の様相だ。

日朝が5月にモンゴルで秘密接触か 韓国紙報道「経済・外交の突破口を模索」 – 産経ニュース (sankei.com) →日本と北朝鮮が接触しているという情報が時々流れている。日本政府は否定も肯定もしていない。岸田首相は拉致問題解決の意欲を一般論としていつも強調している。政治家として支持率回復の決め手として狙っていることは間違いないだろう。

郵便料金30年ぶり値上げへ 10月から手紙110円に | NHK | 総務省 →封書は84円から110円で、値上げは消費増税を除けば30年ぶり。はがきは63円から85円になり、7年ぶりの値上げとなる。上げ幅はほぼ3割と大きい。郵便事業は採算が厳しく、メールの普及で郵便量の減少は確実。遠からず値上げするのだろうか。

ミセスグリーンアップル 新曲「コロンブス」MV 批判受け公開停止 | NHK | IT・ネット →ミセスグリーンアップルが新曲「コロンブス」のミュージックビデオでミスった。アメリカ大陸に到達したコロンブスが「サル」にふんした人たちに出会うシーンがSNSで差別的と批判を受けた。事前のチェック・検討では多様性が重要だという教訓だ。

「ドクターイエロー」引退発表 2027年めど 新幹線の検査専用車両 JR東海とJR西日本発表 | NHK | 鉄道 →黄色い新幹線「ドクターイエロー」が消える。運行時間が明らかになっていないので、「見れば幸せになる」といわれている。今後は乗客を乗せている「N700S」に専用機器を搭載して検査するという。検査用の費用はかなり浮きそうだ。

*** 「今日の名言」

◎住井すゑ(小説家。1997年6月16日死去、95歳)

「勲章を受ける人は信用できない。それをありがたがる人とは付き合いたくない」 「大名とやくざは同類である」 「文化とは、平和を守ることである」 「なくてはならぬ職業は百姓である」 「誰がやろうと、不条理なことは不条理です」 「子どもという名の新しい生命は、生命体の必然として自ら育つのであって、周囲の思惑や計算や努力で育てられるたちのものではない」 「教育で大切なことは、嘘を教えない、嘘をつかせないこと」 「定年制は資本主義の落とし子であり、それを認めるから老後になってしまう。人間の天職は人間であることであり、人間ひとすじに生きている場合は、人間という思想を持っているから生涯、現役なのだ」 「芸能の中で最高のものが落語。能や歌舞伎は権力の側についている太鼓持ち的な芸だ」

*** 今週の教養 (吉田秀和の都市論⑤) 

◎ロシア・人のよさ  ロシアの環境を悪いと多くの人は言うが、必ずしもそうは思わない。ブーニンのような才能を生み出す力がある。クレメールというバイオリニスト、マイスキーというチェリスト。みんなロシアから生まれている。素晴らしい人たちだ。他の国では生めないような人たちがロシアから生まれている。

ヨーロッパの知恵が物事を論理化し、客観化して眺めるような形で進んできて、だんだん芸術のための余地がなくなってきているのではないか。それに対し、ロシアのように完全にギリシャ化しない国の方が、もしかしたら、今もそういうものを生み出す力を持っているのではないか。退屈が芸術の根元にある、退屈と芸術は一つのものの二つの面であるとしたら、異常な才能を持った人とそれを押しつぶそうとする環境の圧力とは案外不可欠なもので、そういうものをなくしていくと、逆に伸びる才能がかえって伸びないこともあるかもしれない。やはりヨーロッパは知的に徹底的に押しつけずにはいられない国で、芸術はあまり好きでなくなりつつあるような気がする。一番端的な例はアメリカだろう。アメリカはヨーロッパの子供でしょう。ただアメリカでは黒人がアフリカから持ってきたものがそこで生きている。それをアメリカの芸術と言っていいのか分からないが、アメリカにある芸術には違いない。

ロシアの人たちは個人的に付き合ってみると、とても人間的だ。例えば約束をして、守ることもある、守らないこともある。守らない時にどうして遅れたかという説明を聞いていると、怒ることができなくなってくる。人間はこういう風に生きている方がいい、約束通りにすることの方が、そもそもおかしいだろうと、素直に思わされてしまう。忘れるのが当たり前みたいに、「そうだね」って言いたくなる。「僕の心の中に穴があるんだよ」。そういう言い方をする。「穴が埋まらなくてね。穴の中に入っちゃったから、ついどっかに行っちゃって」「穴を埋めようとすればするほど大きくなっちゃうし」。とても日本人から聞くことができない。そのうち何の話をしているのかってことになってしまう。

(次週は「上野千鶴子の情報生産者になる」です)