1月6~10日(教養講座:枕草子)

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明けましておめでとうございます。今年もご愛読をよろしくお願いいたします。

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***デイ・ウォッチ(12月27日~1月5日)

バイデン大統領 日本製鉄のUSスチール買収計画を禁止する命令 | NHK | バイデン大統領 →「経済安全保障」とは、自由な活動が望ましい「経済」に対して、「政治」が何らかの理由でストップをかけることだ。理由は「何でもあり」が実態だ。バイデン大統領の真意は何か。日鉄は提訴するが、勝ち目は薄い。経済安全保障はブロック経済につながりかねず、第2次世界大戦の引き金となった。

韓国 ユン大統領 拘束令状きょうが期限 再執行試みるか焦点に | NHK | ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領 →韓国では年末年始、大勢の人がソウル中心部で政治活動を繰り広げた。ユン大統領の拘束に捜査当局が乗り出したが、大統領警護庁に阻まれた。令状の期限はきょう6日。どう展開するのかを予測することも困難な事態だ。

箱根駅伝:青学大が連覇、原監督の「あいたいね大作戦」成功 : 読売新聞 青学大・原監督 自らの進退、世代交代に言及 日本テレビ→箱根駅伝は青山学院大が2連覇した。5区間で区間賞を取り、ここ11年間で8回優勝と圧倒している。毎年キャッツフレーズを作って乗せる原監督だが、科学的トレーニングや選手主体のチーム作り、モチベーション管理など合理的で戦略的な手腕の評価は高い。青学監督で終わらないだろう。

大納会株価、3万9894円 35年ぶり最高値更新:時事ドットコム →年末株価がバブル期をやっと超えた。地価と株価が回復すれば、バブル後遺症は完全に終わったことになるが、株価は35年もかかった。2024年は円安で企業業績が上向き、新NISAで個人資金が流入したことも大きい。国が私的年金として推奨しているので、個人から長期的に流入しそうだ。

カーター元米大統領死去、100歳 平和貢献でノーベル賞―ピーナツ農園主から政界に:時事ドットコム →イランの米大使館人質事件の失敗もあって1期で終わり、弱腰イメージが強かったが、「アメリカの良心」と言える生涯だった。ピーナッツ農家出身の庶民派で、在任中のイスラエルとエジプトの和解合意は大きな成果。退任後も北朝鮮やキューバと対話をし、人権・平和に一生を捧げた。1979年6月の東京サミットで来日し、早朝にジョギングした姿は強烈な印象を残した。

韓国 ムアン空港 チェジュ航空の旅客機 胴体着陸し炎上 179人死亡確認 乗客乗員181人 | NHK | 韓国 →バードストライクでこれほどの大事故が起きる。滑走路先のコンクリートに激突したためだが、対策はないのだろうか。土の堤防なら少しは変わったのではないか。政府が機能不全なので、事故後の対応が気になる。

*** 「今日の名言」

◎オリビア・ハッセー(英国の女優。2024年12月27日死去、74歳

「自分らしくいられる自信を持ちましょう」 「私は、自分の父は死んだとよく言っていました。死んだも同然だったからです。父はアルゼンチンにいて、私の人生に何の役割も果たしませんでした。父と母は、私がまだ2歳の時に離婚したのです」 「私はとても頑ななロマンチストだと思います。私の一部は、自分がジュリエットだと思っているのかもしれません」 「役者は、世界でも最も助けを必要としている人々です。金魚鉢に入ったことがなければ、その靴を履いたことがなければ、誰も分からないでしょう」 「私は常に高次の力を信じてきました。それを神と呼んでも、イエスとか、クリシュナ、仏陀、アッラーと呼んでも構いません。私たちはみな、神の一部であると本当に信じています」 「私は女優ですが、子どもたちと一緒に家にいるのが本当に好きです。仕事に行かなければならないと言われると、信じられないほどのショックを受けるんです」

*** 今週の教養 (枕草子①第一段)

新年第一弾の教養講座は、清少納言の「枕草子」で始める。参考文献は角川書店編「枕草子」(2014年)。現代語訳を中心とし、原文は一部短縮している回もある。

◎第一段=王朝の四季絵巻をひもとけば

【現代語訳】春は夜が明ける時。あたりが白んで山の上が明るくなって紫の雲が細くたなびいている。夏は夜。月が出ていればもちろん、闇夜でも蛍がいっぱい飛び交っている。一つ二つほのかに光っていき、雨の降るのもいい。

秋は夕暮れ。夕日が山の稜線に沈む頃、カラスがねぐらに帰ろうと急ぎ心にしみる。雁で列を連ね、小さく見えるのはなかなかに面白い。日が落ち風の音、虫の音などが奏でるのは言葉につくせない。冬は早朝。雪が降り積もっているのはもちろん、霜が降りていてもそうでなくても、張りつめたように寒い朝、火を起こして炭火を運んで回るのもいかにも冬の早朝らしい。昼になって寒さが緩むと、炭火も白く灰をかぶって間の抜けた感じだ。

【原文】春は曙。やうやう白くなりゆく、山際少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。夏は、夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛び違いたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くも、をかし。雨など降るも、をかし。秋は、夕暮れ。夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、烏の寝所へ行くとて、三つ四つ二つなど、飛び急ぐさへ、あはれなり。まいて、雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音など、はた、言うべきにあらず。冬は、早朝(つとめて)。雪の降りたるは、言うべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでも、いと寒きに、火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし。昼になりて、ゆるくゆるびもていけば、炭櫃(すびつ)・火桶の火も灰がちになりて、わろし。

【解説】様々な対比が特徴だ。季節、聴覚、視覚、皮膚感覚の対比があり、光と色の変化で貫かれている。「をかし」は、平安時代の文学的・美的理念。「明朗で知性的な感覚美」。室町時代になると、滑稽美を帯びてくる。「あはれ」は「しみじみとしたおもむき」、「わろし」は「よくない」。

~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年1月7日号(転送禁止)~~~

速報→カナダ トルドー首相 辞任の意向表明 少数与党 支持率低迷 | NHK | カナダ →インフレで支持率が低迷し、トランプ氏の高関税への対応をめぐって副首相が辞任し党内圧力も高まっていた。

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***デイ・ウォッチ(6日)

ゴールデングローブ賞「SHOGUN 将軍」作品賞 真田広之さん 浅野忠信さん アンナ・サワイさんも受賞 | NHK | エンタメ →新年の明るい話題。昨年9月、優れたテレビ番組に贈られるエミー賞を受賞したが、今回はゴールデングローブ賞。映画やテレビ番組に贈られる賞で、テレビドラマ部門の作品賞をはじめ真田広之さんが主演男優賞など4賞を受賞した。日本文化は好調だ。

松山英樹が優勝 男子ゴルフアメリカツアーの今季開幕戦 1983年以降のアメリカツアー最少スコア更新 | NHK | #ゴルフ(男子) →ハワイで開かれた米ゴルフツアーの開幕戦で、松山英樹が優勝した。72ホール通算35アンダーで、1983年以降のアメリカツアーの最少スコア新記録となった。大リーグの大谷ばりだ。日本はスポーツも好調だ。

石破総理大臣 年頭記者会見“野党と議論尽くし 政権運営”防災 外交 社会保障 経済 2025年の抱負は | NHK →今年は夏(7月頃)に参院選と都議選があり、衆参同日選挙の可能性もささやかれる。石破首相は年頭会見で年金改革や選挙制度改革に触れたが、野党の協力が不可欠で、「野党も責任共有を」と終始低姿勢で訴えた。新しい政治文化の創造が重要だ。

今年の10大リスク、最大は「Gゼロ」の進行…「世界の分裂は深まる」 : 読売新聞 →米国の調査会社「ユーラシアグループ」が、新年恒例の「10大リスク」を発表した。1位は世界を主導する国がない「Gゼロ」、2位がトランプ政権、3位が米中崩壊。世界は分断を深めている。本文はこちらへ→ ユーラシアグループ |2025年のトップリスク

北朝鮮が弾道ミサイル 極超音速か、昨年11月以来:時事ドットコム 「ロシアが北朝鮮に衛星技術」 核開発容認の可能性―米国務長官:時事ドットコム →ミサイル発射は昨年11月5日以来。アメリカのブリンケン国務長官がソウルを訪問しており、けん制か。北朝鮮はウクライナとの戦闘で死者を出しているが、ロシアが北朝鮮の核開発を容認する可能性を同長官が指摘した。

脱炭素連合からの離脱相次ぐ 気候対策曲がり角―米金融大手:時事ドットコム →トランプ大統領の登場が、米金融界の脱炭素熱を冷やしている。2021年、温室効果ガスの排出量を50年までに実質ゼロにする連合体を発足させたが、大手が相次いで退会している。ESG(環境・社会・企業統治)投資がブームになったが、あっさり変えていいのだろうか。機を見るに敏な金融界はそんなものか。

*** 「今日の名言」

◎アルベール・カミュ(仏の小説家。1960年1月4日死去、46歳

「われ反抗す、ゆえにわれら在り」 「勇気に欠ける者は、常にそれを正当化するための理屈を見出す」 「人間が唯一偉大である理由は、自分を越えるものと闘うからだ」 「愛されないということは不運である。愛さないということは不幸である」 「人間は、理由もなしに生きていくことはできない」 「涙が出そうになるくらいに、生きろ」 「幸せが何から成っているのか探し続けている人は、決して幸せになれない。人生の意味を見出そうとしている人は、決して生きているとはいえない」 「幸せになるためには、他人に関与しすぎてはいけない」 「自由とは、より良くなるための機会のことだ」 「生きることへの絶望なしに、生きることへの愛はない」 「未来に対する真の知性に優れた人とは、自分自身を監視できる人だ」 「最後の審判を待っていてはいけない。それは毎日くだされている」 「幸福とは、それ自体が長い忍耐である」

*** 今週の教養 (枕草子②第二段)

◎第二段=春を迎える喜び―若菜摘み

【現代語訳】正月七日、消え残る雪の中から若菜を摘む。青々としていて、いつもならそんなものは近くで見ない高貴な御殿の中でも、大騒ぎしているのは本当に面白い。「白馬の節会」(あおうまのせちえ=官位昇進の儀式)を見ようと、家庭の女たちもきれいに牛車をしたてて宮中に出かける。内裏の東の門の敷居を通る時、牛車が揺れて頭をぶつけあって、髪にさした櫛も落ち、用心していないから折れたりなどして皆で笑うのもまた面白い。

警護の詰め所のところに殿上人(昇殿を許された者)がたくさん立っていて、ふざけて舎人(召使い)の弓を取り、馬を驚かして笑う。牛車のすだれの隙間からやっとのぞいたら、目隠し用の庭塀などが見えて、女官などが行き来しているのが、とても興味深い。いったいどんな幸運に生まれついた人が、宮中で自由気ままにふるまえるのだろうと思う。

と言ってもこうして見えるのは狭い範囲だから、舎人の顔の地肌など本当に黒くて、おしろいがのっていないところは、雪の下から土がまだらに見えるようで見苦しいし、馬が跳ねて騒ぐのも怖そうに見えて、つい車の中に身を引いてしまい、よくは見えない。

【原文】七日、雪間の若菜摘み、青やかにて、例はさしもさるもの目近からぬ所にもて騒ぎたるこそ、をかしけれ。白馬見にとて、里人は、車清げに仕立てて見に行く。中のとじきみ引く過ほど、頭、ひとところに揺るぎあひ、刺櫛も落ち、用意せねば折れなどして笑うも、またをかし。左衛門の陣のもとに、殿上人などあまた立ちて、舎人の弓どもを取りて、馬ども驚かし笑うを、はつかに見入れたれば、立じとみなどの見ゆるに、主殿司・女官などの行き違いたるこそ、をかしけれ。(以下略)

【解説】当時は陰暦なので立春(今の2月初め)とともに新年を迎えるが、春とは言っても名ばかりである。冬の寒さに耐え春を待ちかねた人々は、野に出て、雪の間に芽吹いた若菜を摘む。七日の若菜摘みは今も七草粥として伝わる。この日宮中では、官位昇進の儀式があり、その後は21頭の白馬の行進があった。これを見ると、一年中の邪気が払われるという。七草は中国からの伝来。当時の女性は見物に行くといっても、牛車の中からすだれ越しにのぞくだけである。女性は表に出ない存在だった。

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***デイ・ウォッチ(7日)

日本製鉄・橋本会長が会見、USスチール買収中止でバイデン大統領ら関係者提訴 – 日本経済新聞 →日本製鉄の橋本会長が1人で会見し「バイデン大統領の違法な政治介入があった。買収をあきらめる理由はない。到底受け入れられない」と強い口調で提訴の理由を語った。裁判で議論するのは当然だが、橋本氏の歯に衣着せない剛腕ぶりは業界でかねて有名。日鉄の経営判断の幅を狭めたり、手を縛ったりする危うさもある。徹底抗戦と見せながらディールに持ち込む柔軟性も必要だろう。

韓国の裁判所、尹錫悦大統領の拘束令状を再発付 内乱容疑など:朝日新聞デジタル →ユン大統領の拘束令状が再発行された。大統領に出頭の意思はないので、再び大統領警護庁に阻まれるのだろうか。何らかの教訓を得て、拘束するのだろうか。いずれにしても韓国政治の混乱はまだ続く。隣の国だが、「このままでいいのだろうか」と心配になる。

自民が選択的夫婦別姓の議論再開へ 公明要求受け「できるだけ早く」 [自民]:朝日新聞デジタル →選択的夫婦別姓は、一定の人が「同姓では具体的な不便がある」と訴えている。しかし、自民党内の保守派だけが「家族の一体感が失われる」と反対する不思議なテーマ。イデオロギーと権力闘争を底流にはらむが、公明党も別姓に前向きで保守派包囲網ができつつある。通常国会の大きな焦点。

テクノロジー見本市「CES」開幕へ トヨタやホンダが最先端技術を発表 | NHK  →毎年ラスベガスで開かれる「CES」(セス)は、テクノロジー披露の大きな舞台。トヨタは静岡県裾野市で進めてきた実証都市「ウーブン・シティ」で秋以降、住民が入居して実証実験を始めると発表。ソニーGはホンダと開発している次世代EVを1400万円で販売すると公表した。夢は広がる。

米KKR、西友の売却検討 イオンなど関心、スーパー再編加速:時事ドットコム →西友は長く米ウォールマート傘下だったが、2021年にKKRが筆頭株主になり、構造改革を進めてきた。北海道と九州から撤退してスリム化し、売却の環境が整ったと判断。買い手には、イオンやドン・キホーテなどが名乗りを上げている。スーパー再編が加速しそうだ。

*** 「今日の名言」

◎良寛(江戸後期の僧侶。1831年1月6日死去、72歳

「花、無心にして蝶を招き、蝶、無心にして花を訪れる」 「地獄へ行こうと、極楽へ行こうと、行ったところが丁度良い。死ぬ月日さえも、丁度良い」 「自惚れることも、卑下することもない。上もなければ下もない」 「言葉はよく吟味し、しゃべりすぎてはいけない」 「何ごとにも怒らず、つらいことも我慢すること」 「他人がいる前で人を叱ってはいけない」 「心の中で怒りながら人に理屈を説いてはいけない」 「あれこれと人に講釈するのはやめなさい」 「挨拶は適当にしてはいけない」 「人の話の腰を折ってはいけない」 「その人が気にしていることを言ってはならない」 「大して重要でもないことを、大事のように論じてはいけない」 「自分が悪いのに他人に責任を転嫁して責めてはならない」 「親切そうなふりをしてはいけない」 「相手に合わないことは言わないほうがいい」 「我が生は、いずこより来たる、去って何処にか行く」

*** 今週の教養 (枕草子③第二段)

◎第二段=小正月―高貴な方も無礼講

【現代語訳】十五日、小豆粥の祝い膳をお出しした後、粥を炊いた薪をちょっと隠して、女房たちが互いにおしりを打とうとすきを狙い、打たれまいと用心して、いつも後ろに気をつけているのもおもしろい。一体どうやったのか、うまく打ったのでみんな大笑いしているのは、ひどく陽気なものだ。打たれた人が悔しがるのももっともなことだ。

新しく通い始めた婿君が、宮中に参内する支度をしている間ももどかしく、何かにつけて自分こそはと幅をきかせている女房が、のぞいて、張り切って、奥の方でウロウロしているのを、おそばにいる女房たちは分かっていて笑う。「静かに」と手まねで止めるけれども、肝心のお姫様の方は、何も気づかずおっとりと座っていらっしゃる。「ここのものを片付けましょう」などと言いながら近づいて、走りながら姫君のおしりを打って逃げてしまうから、周りの女房たちは皆笑う。

婿君もやられたなというように微笑むが、姫君は特に驚いた風もなく、ちょっと顔を赤らめているのが素敵だ。女房同士打ち合い、男をさえ打っているようだ。どういうつもりなのか、打たれて泣き、腹を立てて、呪ったり不吉なことを言ったりするのもおかしい。宮中のような高貴なところでも、今日は無礼講で上下乱れて、遠慮もない。

【原文】十五日、節供参りすえ、粥の木ひき隠して、家の殿達、女房などのうかがふを、打たれじと用意して、常に後を心遣いしたる気色も、いとをかしきに、いかにしたるにかあらむ、打ちあてたるは、いみじう興ありてうち笑いたるは、いとはえばえし。(以下略)

【解説】小正月の行事。元日の大正月に対して十五日は私的な祝いである。この日は小豆粥を食べる風習があった。十五日は望月(満月)の日なので望粥ともいう。粥を炊いた薪で女性の尻を打つと男の子を生むという。この風習は今でも「嫁叩き」などといわれ、地方に残る。この場面は、ある貴族の新婚夫婦と2人を取り巻く女房の様子である。貴族の姫君は万事につけておっとりしているのが上品でよい、とされた。当時は通い婚で、この家の姫君にもよい婿殿が通い始めたところ。よろこびが重なり、ますます明るい新春である。

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***デイ・ウォッチ(8日)

ファーストリテイリング 初任給33万円に引き上げ | NHK | 小売業 →ユニクロが30万円だった初任給を今年4月から33万円に引き上げる。年収も1割程度多い500万円超にする。前日には三井住友銀行がメガバンクでは初めて初任給を来年4月から30万円にすると発表したばかり。経済は基本的に民間が頑張らないと成長しない。企業努力で賃上げ起点の好循環を!

米メタ、ファクトチェック廃止 SNS最大手が大転換―トランプ氏との融和狙う:時事ドットコム →メタは2016年の米大統領選で偽情報が氾濫して批判されたため、ファクトチェックを導入した。21年の議会選挙ではトランプ氏のアカウントを凍結。しかし今回、トランプ大統領の就任で方針転換した。何でもOKの表現の自由か、ファクトチェックか。SNSの偽情報問題は、現代社会の大きな課題だ。

ハッカー集団ミラーフェイス、政府機関や企業に標的型メール送り機密情報窃取か…ソースコードに中国簡体字 : 読売新聞 →中国系ハッカー集団「ミラーフェイス」のサイバー攻撃が2019年以降、210件確認されたと警察庁が発表した。対象は政府機関や企業で、組織の元幹部らを装った標的型メールで攻撃する。政府は未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入する法案を通常国会に出す予定だ。

トランプ氏、GDP比5%主張 NATO加盟国の国防費負担―グリーンランド巡り軍事圧力も:時事ドットコム →トランプ氏が大統領就任を前に自説を炸裂させている。防衛費はGDP比5%、グリーンランドは米国領、パナマ運河は米国管理、メキシコ湾はアメリカ湾に変更・・・。ディールの材料にするとみられるが、改めて尋常でないと感じる。

ノーベル平和賞 日本被団協 石破総理大臣と面会も「収穫なく残念」 | NHK →日本被団協が石破首相と面会したが、「収穫がなかった」と異例の不満表明をした。今年3月に開かれる核兵器禁止条約の会議へのオブザーバー参加、被爆者に対する国家補償などを求めたが、前向きな返事はなかったという。被団協はもはや単なる表敬訪問では納得しない。

米兵が女性に性的暴行か 不同意性交致傷容疑で書類送検―沖縄県警:時事ドットコム →30代の海兵隊員が沖縄で、成人女性に性的暴行したとして書類送検された。沖縄県警はかつて、県に連絡せず批判されており、今回はすぐに伝えた。沖縄県の玉城知事は「極めて遺憾。激しい怒りを覚える。県民に大きな不安を与えるもので、断固たる対応を求める」とのコメントを出した。

*** 「今日の名言」

◎王陽明(中国明代の儒学者。1529年1月9日死去、56歳

「実行の中にのみ学問がある。行動しなければ、学問ではない」 「他人を論難しようと思った時は、一つの大きな私的感情だとみなして克服しなさい」 「君子は自身の考えを、行動をもって示すが、小人はただ口で言うだけに過ぎない」 「知識と行動を二つに分けることはできない。まず知ることが大事で、知って初めて行うことができるという考えは、間違いである。知と行はもともと一つのものだからだ」 「知るは難く、行うは易し」 「敵に勝つのは易しいが、己に勝つのは難しい」 「学問は自分の心の中に刻まれるのが第一義である。もし自分の心に照らし合せて、誤りだと思ったら、たとえ孔子の言葉であろうとも、それを正しいとしてはいけない」 「古今の聖賢のあらゆる議論の端々に至るまですべて、思いに邪なし、の一言で要約できる」 「人生最大の病患は傲慢の一事に尽きる」 「反省は病を治す薬だが、大事なのは過ちを改めるということだ」 

*** 今週の教養 (枕草子④第二十段)

◎第二十段=中宮様のまわりはいつも春爛漫

【現代語訳】清涼殿(天皇の御殿)の縁側の手すり近くに、青磁のかめの大きいのを置き、桜のまことに見事な枝で1メートル半ばかりもあるのをたくさん活けてある、それが手すりの外まで咲きこぼれている、そんなある日の昼ごろのこと。

大納言様(皇后の兄、藤原伊周)が桜重ねの直衣(のうし=平常服)のしなやかなのに、濃い紫の、模様を織り出した指貫袴(さしぬきばかま)をはき、下着は白を重ね、一番上には濃い紅のあや織り、その鮮やかな色を直衣の裾からのぞかせた華やかな衣装でお目見えになった。帝がこちらにおいでなので、戸口の前の細い板敷きで何やらお話になる。

御簾(すだれ)の中には女房たちが、桜重ねの唐衣(正装時の上着)をゆったりと着ている。ほかにも藤がさね、山吹がさねなどセンスのいい彩りの袖口がたくさん、板戸の内側の御簾の下からこぼれ出ている。ちょうど、昼のお膳を運ぶ蔵人(役人)の足音が高く、「おーしー」という先払いの声がするのも、うらうらとのどかで素敵な春の日である。食事の用意ができたと申し上げるので、帝がおいでになる。それを大納言様はお送りして、また先ほどの桜のもとに戻って座っていらした。

【原文】高欄のもとに、青き瓶の大きなるを据えて、桜のいみじうおもしろき枝の五尺ばかりなるを、いと多くさしたれば、高欄の外まで咲きこぼれたる昼つ方、大納言殿、桜の直衣のすこしなよらかなるに、濃き紫の固紋の差貫、白き御衣ども、上には濃き綾のいとあざやかなるを出だして参り給えるに、上の、こなたにおはしませば、戸口の前なる細き板敷にい給ひて、ものなど申し給う。(以下略)

【解説】清少納言にとって忘れられない、素晴らしい宮仕えの日のひとコマである。続いて帝と中宮(皇后)、女房たちの間での、「古今集」の世界そのままの雅やかなやり取りが語られる。しかし、咲き誇る桜も無常の風に散らされるようにこの栄華も長くは続かない。わずか1年あまり後、道隆は急死、伊周は関白の位を継げすに自暴自棄になり、花山上皇に矢を射かける事件に関わって太宰府に流罪になってしまう。中宮の不幸もここから始まるが、枕草子の世界には現実の影の部分は書かれない。いつもこの日のように明るく華やかである。

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***デイ・ウォッチ(9日)

仏独、トランプ次期米大統領に警告 グリーンランド支配の発言めぐり – BBCニュース →トランプ氏のグリーンランド支配発言で、フランスとドイツが激しく反応した。「トランプ氏は本気」という見方が広がっており、危機感を表明した形。グリーンランド現地には米国の武力行使を予想する声もある。現地では「自分たちが決めること」という声が大半だが、米国の関与を容認する声もあるという。

セブン&アイHD 9か月間決算 前年比65%減益 米コンビニ不振で | NHK | 小売業 →セブン&アイの苦況が止まらない。米国のコンビニ事業の不振とヨーカ堂のネットスーパー撤退で、前年比65%の大幅減益となった。米国では400店を閉店するという。最近まで隆盛を誇った同社だが、カナダ企業からの買収提案もあり、勢いが落ちている。

北九州 女子生徒殺害の疑い容疑者を再逮捕 容疑を否認 | NHK | 福岡県 →北九州市の中学生殺傷事件で、逮捕された容疑者は「殺意はなかった」と殺人容疑を否認していることがわかった。襲われた中学生との接点は出ていない。警察は再逮捕し、さらに追及する。動機は容疑者の特殊事情にあるようだ。

米LA山火事、5人死亡 1100棟焼失、大規模災害宣言:時事ドットコム YOSHIKIさんら日本人芸能人、無事報告 米LA山火事:時事ドットコム →ロサンゼルスの火災が歴史的規模になっている。1100棟が焼失。ハリウッドの一部にも避難命令が出て、17日のアカデミー賞の候補作発表は延期された。日本でも乾燥している地域で火災が頻発している。

日本ラグビー協会 「ノックオン」「ジャッカル」など一部用語を変更へ | NHK | #ラグビー →ボールを前にこぼす代表的な反則で馴染み深い「ノックオン」は、「ノックフォワード」になる。前に投げる「スローフォワード」と紛らわしいが、ラグビーはもともとルール変更の多いスポーツ。わかりにくい反則も多く、レフリーのジャッジで試合の様相はかなり変わる。明快なプレーと判定を期待したい。

*** 「今日の名言」

◎大隈重信(元首相、早稲田大学創設者。1922年1月10日死去、83歳

「大衆を侮るな」 「男性だけが活躍する社会は国力の半分を無駄にしている」 「諸君は必ず失敗する。成功より失敗が多い。失敗に落胆しなさるな。失敗に打ち勝たねばならぬ」 「大隈重信5訓。1.物事を楽観的に見よ。2.怒るな。冷静に物を見よ。3.むさぼるな。4.愚痴をこぼすな。5.世の中の為に働け」 「失敗はわが師なり。失敗はわが大なる進歩の一部なり」 「時のある限り、人のある限り、道が窮まるという理由はないのである」 「人間の不変の志は失意のときに真理となり、人間の友情や愛情は失意の時に深まるものである」 「わが輩は楽観説である。人生を重んじて、常に未来に光明を望んで行くのである」 「人間は希望によって生活している。希望そのものは人間の命である」「(外交交渉反対派の爆弾テロに遭って)我が輩は、爆弾くらいで青くなるような腰抜けじゃない。そんなもの屁とも思っていない」 「政治は、学問や科学ではない。術である。人の心を知るという術なのです」  「木は、根元を掘って自然の力や太陽光を根にあて、水を注げば、蘇生する」 

*** 今週の教養 (枕草子⑤第二十一段)

◎第二十一段=女も世の中を知ろう-宮仕え礼賛

【現代語訳】将来に望みもなく、ただ一途に夫にすがって偽りの幸せに安住しているような女を見ると、うっとうしくバカみたいだと思えて、やはり、きちんとした家の娘などは、宮中に女房として仕えさせて世の中を見せたいし、できれば典侍(ないしのすけ=天皇側近の女官)などの役目をしばらく務めさせたいと思う。

宮仕えする女を、すれっからしになって世間体が良くない、などという男は本当に憎らしい。しかし、確かにそういうこともあるのだろうけれど。恐れ多くも、帝をはじめ、高官や女房の姿を見ない人は少ない、女房のお供の者、実家からの使いの者、もっと下々の掃除人などに至るまで会わずに隠れていられようか。男性はそれ程でもないかもしれないが、宮仕えをしている限りは同じようなものだろう。

宮仕えを経験した人を、奥様と呼んで大切にしている場合、人に顔を知られていることを奥ゆかしくないように思うのはもっともだけれども、反面、典侍などという役目で時々宮中に参内し、加茂の祭りの使者などに立ったりするのも、晴れがましいことだろう。そうした役目ながら家にこもって主婦になりきっているのはなおいい。夫が地方の長官として娘を五節の舞姫(収穫祭の時に宮中で行われる五節の舞を舞う少女)として出すことでもあれば、宮中の事情に通じていて、田舎者丸出しに人にあれこれ尋ねるようなことはしないだろう。奥ゆかしくていいものだ。

【原文】生い先なく、まめやかに、似非幸せなど見て居たらむ人は、いぶせく、あなづらはしく思ひやられて、なほ、さりぬべからむ人の女などは、さしまじらはせ、世のありさまも見せ習はさまほしう、典侍などにてしばしもあらせばや、とこそ、おぼゆれ。(以下略)

【解説】貴族の女は顔を見せてはいけないという時代。自分の娘でも成人したら几帳を隔てて会わねばならない。しかも顔は扇でしっかり隠していることが多かった。恋愛も、見たこともない相手にする。結婚は男が夜、3日通って成立したので、ようやく3日目の朝の光で女の顔を見ることができた。だから、宮仕えをしてたくさんの男性や下々の者にまで顔を見られるのは、はしたないだの、すれっからしになるだの言われたわけで、女房や女房づとめの経験者はちょっと軽く見られる傾向があった。