8月25~29日(教養講座:池澤夏樹の本の読み方)
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***デイ・ウォッチ(22~24日)
◎米利下げの検討示唆 「雇用リスク増大」―トランプ関税の影響鮮明・FRB議長:時事ドットコム NYダウ、8カ月ぶりに最高値更新 :時事→トランプ大統領が強く求めている利下げについて、パウエルFRB議長が雇用リスクの増大を理由に利下げを示唆した。これを受けて、NY株価は史上最高値を記録した。きょうの東京株も上がりそうだ。お盆に急騰した日本株は予想以上に底堅い。
◎日韓首脳会談 “関係を安定的に大きく発展”で一致 | NHK | 日韓関係 →革新派で対日強硬姿勢が心配された韓国のイ・ジェミョン大統領だが、石破首相と首脳会談を開き、関係強化で一致した。初外遊先に日本を選び、終始和やかな雰囲気。前評判通りの実用主義者の顔を見せた。予測不能のトランプ大統領の登場や北朝鮮情勢を考えれば、当然と思われる。連携の真価はこれからだ。
◎現場付近ホテルに数日宿泊 逮捕の男、後つける映像も―神戸女性殺害・兵庫県警:時事ドットコム →神戸市で24歳の女性が殺害され事件は、逮捕された35歳の男との接点が浮かんでいない。通り魔ではなく、「つきまいと魔」の犯行か。男は東京都内に勤めていたが、夏休みを取って数日前から現場付近のホテルに宿泊していた。謎の多い事件だ。
◎米FBI ボルトン元大統領補佐官自宅を捜索 大統領に批判的立場 | NHK | アメリカ →FBIがトランプ政権1期目の幹部だったボルトン元大統領補佐官の自宅を捜索した。機密情報を不適切に扱った疑い。ボルトン氏は1期目途中からトランプ批判派に転じ、暴露本も出版していた。真相は不明だが、批判封じ込めの見方も出ている。そうみられること自体、ロシアや中国と変わらない。
◎沖縄尚学が優勝 夏の甲子園は初 日大三を破る 沖縄県勢の夏制覇は興南以来15年ぶり | NHK →夏の甲子園は沖縄尚学が優勝した。2人の2年生投手を中心に固い守りが光った。今年の大会は、暑さ対策の新日程、広陵高校の途中辞退、手に障害のある県岐商・横山選手の活躍、1点差が15試合の接戦など課題や話題が多かった。8試合あった延長タイブレークは新しい魅力になりつつある。
*** 「今日の名言」
◎稲盛和夫(京セラ・KDDI創業者。2022年8月24日死去、90歳)
「すべて人生は心に描いた通りになる。どのような厳しい状況に置かれようと、否定的なことを心に浮かべるべきではない。まじめに前向きに努力していけば決して悪いことがあろうはずがないと確信して、常に堂々と明るく進まなければならない」 「人生とは『今日一日』の積み重ね、『いま』の連続にほかならない」 「人間の進歩は、素直であるかないかで決まる。自分の非を認めて学ぶ素直な心がないと人間の進歩はない」 「他人に良かれと動き、仲間のために汗をかくとき、売上は爆発的に伸びる」 「経営とは、人として正しい生き方を貫くこと」 「会社に不燃性の人は要らない。勝手に燃えてくれる自燃性であってほしい」 「商売の極意とはお客様の尊敬を得ること。売る側に高い道徳観や人徳があれば、たとえ他の会社が安い価格を提示しても買って下さる」 「動機善なりや、私心なかりしか(動機が善であり、私心がなければ、結果は問う必要がない、必ず成功する)」 「経営に権謀術数は一切不要」
*** 今週の教養講座(池澤夏樹の本の読み方①)
今週は作家・池澤夏樹氏の「本の読み方」を紹介する。時間に限りがある中で、本をどう読むかは悩ましい。世界と日本の文学全集(河出書房新社)を編集した作家の極意に触れる。「知の仕事術」(集英社インターナショナル、2017)から抜粋する。
◎速読と精読を使い分ける 本をどのくらいの密度で読むかは、本によって違ってくる。小説などフィクションの場合、最初の50頁はできるだけ丁寧に読んで文体をつかむとよい。フィクションは「プロット(筋)と文体」からなる。ミステリーなどはプロットにひかれて先へ先へと読み進めるように作ってある。それに対して濃厚なこった文体のいわゆる「純文学」の作品であれば、文体を楽しみながら読むことになる。誰もジェイムズ・ジョイスの長編「ユリシーズ」を3日で読もうとは思わないだろう。この小説はチャプターごとに文体が異なり、それが大きな読みどころとなっている。
フィクションを読む時、登場人物の名前が覚えにくい場合は、メモを取りたい。人と人の関係がわかったら、その関係も書いておく。登場人物一覧がついている本もあるが、自分で一度メモを取る方がしっかり覚えられる。その話の世界に没入できるようになる。
どのくらいの密度で読むかも本ごとに違ってくる。最初は素早くざっと最後まで読んでから、面白いと思った箇所に戻ってそこだけを味わって読むというやり方もある。言ってみれば、速読と精読を使い分けるわけだ。使い分けは、自分と本の相性で決まる。気に入った本なら、生涯2度、3度と読むこともある。毎年1回読み直す本があってもいい。
読書とはその本の内容を自分の頭に移して行く営みだ。きちんと読んだ本は、自分がものを考える時、必ず役に立つ。あの本の作者が言っていたことが今ここで応用できるなという場面が増え、言ってみれば、世間との対立の場で力強い武器になる。役に立つ本が増えるほど、物の見方が複眼的になり、うまくものが考えられるようになっていく。これはディベートで相手を負かすためでも、物知りぶって威張るためでもなく、自分なりの世界図を自分の中に構築するために必要なことだ。
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~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年8月26日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(25日)
◎スマホ「1日2時間」の目安 使い過ぎ防止で条例案提出―愛知県豊明市:時事ドットコム →愛知県豊明市が意欲的な条例案を市議会に提出した。「スマホは1日2時間以内が目安」とした。罰則はないので強制力もないが、問題提起の意味はある。地方自治体はかつて独自の取り組みを競った。議論を起こすためにもこうした動きはもっとあってもいい。
◎大川原化工機えん罪事件 遺族に警視庁と検察庁の幹部 直接謝罪 | NHK | 事件 →大川原化工機冤罪事件で、警視庁副総監と東京地検次席検事らが、拘留中に亡くなった元顧問の遺族に謝罪した。「謝罪は受け入れるが、許せない」という奥さんの言葉は思い。犯人逮捕を迫られる刑事事件と違って、公安警察のでっち上げ事件で限りなく悪質だ。さかのぼって当事者の処分をすべきだろう。
◎21道府県連、総裁選前倒し求める 首相続投に異論広がり―過半数届かず・時事通信調査:時事ドットコム →自民党の都道府県連で、総裁選の前倒しを求める組織が「21」にのぼった。続投への批判が強まっているといえるが、過半数に届いておらず、前倒し論が十分に広がっていないとも見える。9月2日ころとみられる参院選の総括をはさんで党内の攻防が激しくなりそうだ。
◎アメリカの60大学、トランプ氏の圧力受け「多様性」後退…補助金凍結で譲歩強いられ : 読売新聞 →トランプ政権が「多様性・公平性・包括性(DEI)」政策の撤廃を打ち出してから、少なくとも全米の60大学で多様性政策が交代していることがわかった。補助金凍結などで背に腹は代えられない事情があるとはいえ、米国の学問の自由は意外にあっけない。他山の石とすべきだろう。
*** 「今日の名言」
◎フリードリッヒ・ニーチェ(独の哲学者。1900年8月25日死去、55歳)
「1日を始める最良の方法は、目覚めたとき、今日は少なくとも1人の人間に1つの喜びを与えることができないだろうかと、考えることだ」 「世界には、君以外にだれも歩むことのできない唯一の道がある。その道はどこに行き着くのかと問うてはならない。ひたすら進むのだ」 「高く登ろうと思うなら、自分の脚を使うことだ。高い所へは、他人によって運ばれてはならない。人の背中や頭に乗ってはならない」 「あなたが出会う最悪の敵は、常にあなた自身だ」 「軽蔑すべき者を敵として選ぶな。汝の敵について誇りを感じる必要がある」 「あなたにとってもっとも人間的なこと。それは、だれにも恥ずかしい思いをさせないことだ」 「私はあなたに助言する。人を懲らしめたいという強い衝動を持つ者を信用するな!」 「いつか空の飛び方を知りたいと思っている者は、まず立ちあがり、歩き、走り、登り、踊ることを学ぶ必要がある」
*** 今週の教養講座(池澤夏樹の本の読み方②)
◎フィクションとノンフィクション 小説などのフィクションならば、目次はそれほどていねいに読まなくてもいい。フィクションの目次は、チャプター(章)の名前が並んでいるだけで、あまり意味がない。雰囲気がわかるだけで十分だ。登場人物一覧表や地図がついていることもあるが、読み始める前にそんなに見なくていい。読んでいる途中に戻って参照するためのものだ。
フィクションでない本の場合、目次はていねいに見るべきだ。ノンフィクションの目次は本の内容全体を表しているから、目次を読めば本の構成が大体わかる。思想書や研究書の場合、読み出す前に展開を頭に入れておくかどうかで、理解度が変わってくる。本によっては、本文の後に解説やあとがきがついている。先に読んだ方がいい場合もある。本文に取りつくのが大変な、読み手に取って難解な本を読む時に当てはまる。
文庫本の解説は、ほとんど日本特有のものだ。これは事前に読んで損をしないことが多い。もっともとんでもない見当違いのものも多く、それを分析したのが斎藤美奈子の「文庫解説を読む」という本だ。ツッコミが鋭くて、読んでいて笑ってしまう。
文庫の解説も、フィクションの場合は微妙で、注意が必要だ。いわゆるネタバレまでいかなくても、内容に踏み込みすぎた解説を先に読むと、新鮮味がなくなる。フィクションの場合、親切な解説者なら内容に立ち入る際は「ここから先は」などと警告を発した上で、話を先に進める。ともあれ、ほとんどの解説は役に立つ。手ごわそうと思う本を手に取る場合、解説で少し噛み砕いてもらってから本文に取りつくと、少し楽になる。
訳書の場合、翻訳者が解説を書いていることが多い。たいていの翻訳者は信用できる。原書の内容を理解した人の解説であるはずだから、読む際の手引きになる。著者や出版社の側から言えば、文庫本の解説は影響力のある宣伝の一つだ。上手に褒めてくれる人に頼まなければならない。
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~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年8月27日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(26日)
◎ネットフリックス 来年の野球のWBC 国内独占放送権獲得と発表 | NHK | #野球 →来年3月の野球世界大会WBCが、地上波テレビで見られなくなりそうだ。ネットフリックスが国内の独占放送権を取得した。背景ははっきりしないが、巨額の放映権料が関係しているのだろう。人気スポーツが有料テレビでしか見られないのは、歴史的に異常だ。関係者の調整が待たれる。
◎トランプ氏、不正疑惑を理由にFRB理事の一方的な解任表明…本人は「そのような権限はない」と反発 : 読売新聞 →トランプ大統領がFRB・クック理事の解任を表明した。住宅ローン不正を理由にしているが詳細は不明。黒人女性初の理事で、バイデン大統領が指名し、利下げには慎重とされている。FRBの独立性も考慮せず、気に入らない人間を排除する。「パブリック」の概念が全くない。
◎国債費、過去最大32兆3865億円 想定金利2.6%、利払い増加―来年度概算要求:時事ドットコム →来年度予算の概算要求で、国債費が過去最高の32.8兆円になる。最高だった今年度当初予算の28.2兆円を大きく上回る。想定金利を今年度の2.0%から2.6%に引き上げ、利払い費が増えている。日本の借金は深刻で、国債を引き金にした経済危機もありうる事態だ。
◎NHKスペシャルでの「総力戦研究所」ドラマ、元所長の孫が「歴史を歪曲し人間の尊厳傷つけた」と批判 : 読売新聞 →Nスペのドラマに登場した人物の遺族が怒っている。戦時中の総力戦研究所を取り上げたが、所長が自由な言論を封殺したように取り上げられた。NHKは「創作ドラマだ」としているが、史実は全く逆のようで、NHKの分が悪い。ドラマとは言え、根幹は史実に沿うべきだろう。
◎日産が「GT―R」生産終了、排ガス対応や部品供給が困難に : 読売新聞 →「技術の日産」を象徴した高級スポーツ車「GT-R」の生産が終了した。「スカイライン」のレーシング仕様車として1969年に発売。2度の生産中止を経て、2007年に現行モデルが復活した。エスピノーサ社長は「永遠の別れではない。進化し、再び登場するだろう」とコメントしているが、復活はあるだろうか。
*** 「今日の名言」
◎中野重治(小説家、詩人。1974年8月24日死去、77歳)
「偉い人間にはなれなくても、よい人間にはなれる」 「知識は能力となるときに貴い」 「私は月をながめ お前のことを考える 私はお前に逢いたい」 「未練が老醜の始まりでないだろうか」 「ない宝を求めずに、ある宝を掘り出すことだ」 「今日の問題を真面目に考えるという態度をもっていないならば、明日のことは絶対に考えることができない」 「目の前の利害にとらわれると、根本を損なうだけでなく、目の前の利益をも損なう」 「男と女とは学問においても、単純な教育においても、手を取りあって歩くべきものだ」 「40年以上を通して、私は作家としてよりも文学者として生きたいと思い思いながら来てしまったよう思う」 「何か新しいことにぶつかったら、去年の自分、おととしの自分を思い出して、今の自分と比べてみるのがいい」 「いちばん下のところにいる人々、まったく普通のところにいる人々、そこでの言葉で書き、かつ語ることを私は求める」
*** 今週の教養講座(池澤夏樹の本の読み方③)
◎古典とのつき合い 古典を読んだかと言われると、詰問されているような気分になる。会食の場で古典が話題になったとしよう。読んだ人たちは得意そうに論じているから、読んでいない自分は話についていけなくて肩身が狭い思いをする。古典は重機の運転免許のように特別な資格のようだ。
正直な話、古典はとっつきにくい。その人たちの日々の生活やものの考え方まで、全てが遠いものに思われる。ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」に出てくるアレクセイ・フョードルビッチ・カラマーゾフなんて長すぎるし、普段はアリョーシャで済ませているというのだから複雑だ。そういうことを知っていないと、先に進めない。地主と農奴、お金の単位がルーヴル、黒パンとかロシア正教の祭礼とか、社会のありようも今の日本と違いすぎる。それは「イーリアス」でも「史記」でも「古事記」でも「ハムレット」でも「白鯨」でも同じ。正当な文学全集に入っているもの、すべて読みやすくはない。
はっきり言ってしまうと、古典を読むのは知的労力の投資だ。最初はずっと持ち出し。苦労ばかりで楽しみは遠い。しかし大抵の場合、この投資は実を結ぶ。たくさんの人が試みて、うまくいったと保証されたものが、古典と呼ばれる。あなたの趣味がほかの人たちと全然違うのでなければ、最初の苦労を承知で手に取ってみるのは悪いことではない。ただし、結果が出るのはすぐとは限らない。つまらなくてダメだと思って放棄するのも読書の自由。何年も経って、時には何十年も経って、ふっと読みかけのものを思い出して再度挑戦すると、今度はものすごく面白いということもある。若い時に少しでもかじっておくと、後になって滋味がわかるようになる。
年齢とともに読む力も伸びるということだ。世間知が増すにつれて、あるいは人生の苦労を重ねた分だけ、本の内容の理解も深まる。そういうときになると、若い間にかじったことがちゃんと思い出され、ひょっとしたら今ならわかるかもしれないと改めてページを開くとものすごく面白い。そんな体験にが何度もあった。告白すればまだ、「ドンキホーテ」や「神曲」や「マハーバーラタ」や「太平記」を読んでいない。自慢ではないが、読んでいない古典は山ほどある。老いての楽しみに事欠くことはまずないだろう。
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~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年8月28日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(27日)
◎維新 石井章参議院議員の事務所など捜索 国からの秘書給与詐欺容疑で | NHK | 事件 →また秘書給与詐欺が浮上した。東京地検特捜部が維新の石井章参議院議員の事務所を捜索した。政治資金を欲しい事務所は、税金から払われる秘書給与は「蜜の味」。昨年も広瀬めぐみ自民党参院議員が在宅起訴された。厳しい規制が必要だろう。読売新聞は維新の別の議員が捜索されると誤報を出し、謝罪した。これほどの誤報は珍しく、担当者は総入れ替えだろう。7月には「石破首相退陣へ」の誤報もあった→ 読売新聞、「特捜捜査」は誤報 幹部が維新・池下議員に謝罪:時事ドットコム
◎自民 臨時総裁選 選挙の実施求める議員の名前を公表へ | NHK | 自民党総裁選 →自民党の総裁選手続きは、執行部が担当するので、石破総裁の権限下にある。総裁選を求める議員名を公表することになり、実施のハードルが上がった。参院選の総括をする9月2日以降、党内政局は激化する。「政界の一寸先は闇」といわれ、参院選以降は闇の中だが、いつまで続くのか。
◎「再生の道」石丸伸二氏 代表退任の意向 来月中旬に代表選考会 | NHK | 参議院選挙 →去年7月の東京都知事選で一躍注目を浴びた石丸氏だが、参院選は不発で、「再生の道」代表を退任する。参政党は地方組織があるので地盤は固そうだが、ブームで終わる可能性もゼロではない。有権者は一時の派手な言動に惑わされることなく、見極めが必要だ。
◎三菱商事、洋上風力発電から撤退 3海域、政府エネルギー戦略見直しも:時事ドットコム 三菱商事 洋上風力からなぜ撤退?今後どうなる?見通しは?【Q&A】 | NHK | ニュース深掘り →洋上風力は国策である再生エネルギー戦略の中軸で、国の制度が深く関係している。資材高騰を理由に簡単に撤退していいのだろうか。自治体関係者らは戸惑っている。多角的な検証が必要だろう。
◎神奈川 伊勢原 大山ケーブルカーの駅の近くでクマの姿を確認 | NHK | クマ被害 長野 松本 中心部の住宅地でクマとみられる目撃情報相次ぐ 市が注意呼びかけ | NHK | 長野県 →北海道や東北で主に見られるクマが、最近は首都圏でも確認されている。今回は神奈川・伊勢原だが、東京・奥多摩でも報告がある。長野・松本付近の住宅地にも出没している。人的被害はまだないが、気になる。
*** 「今日の名言」
◎エドワード・サイデンステッカー(米の日本学者、翻訳家。2007年8月27日死去、86歳)
「(戦後、米軍の日本語将校として佐世保に進駐して)日本の人々は、やがて必ず世界に決して恥ずかしくない国民となるだろう」 「ちゃんと日本語を勉強しよう。これは一生涯を懸けて勉強するに値する国だ」 「親鸞の『なぜ生きる』は、厳粛にして深遠な書である」 「現代文学の中で死ぬまで読み続ける作家は、夏目漱石、谷崎潤一郎、川端康成の3人以外に見当たらない」 「日本という国ほど、自然をひどく壊している国はまず外にないと言わなければならないと思います」 「知人に対しては細やかな礼を尽くす日本の同じ人物が、 電車では空席が十分ありそうな場合でも、躍起になって荒々しく人々を掻き分け、席を確保しようとしている」 「花見会場で桜の木の下の信じがたい多量のごみを目にしたことのある者なら、日本人は自分で出したごみが後から花見に来る人々の感受性に与える効果にまったく無関心であることを知るだろう」 「私にとって、日本語は外国語ではない」
*** 今週の教養講座(池澤夏樹の本の読み方④)
◎本を最後まで読むべきか 大人は子どもに対して「本は途中で投げ出さないで最後まで読みなさい」などと言いがちだが、そうではない。確かに読書習慣を身につけるために最後まで読むべきかもしれない。だが、それ以前に本と人のあいだには相性というものがある。つまらないと思ったら、それは子どもなりの一つの批評だから、尊重すべきだ。人には発達段階があり、その子にとってその本を今読むべき段階であるかどうかは親でもわからない。歯が立たないのであれば、つまらないのであれば、読むのをやめたいと思ったら、いったん投げ出していい。名著と思われている本であろうと、我慢して読む必要はない。
読む本の数が増えてきた大人が途中で投げ出した場合、それはつまらなかったということだから、放り出した本はその人の人生から消えてしまう可能性が高い。しかし子どもの場合、案外またあとで読むものだ。最初に読んだところまで内容を覚えているから、途中から読み進められる。子どもの頭はそれくらい柔軟だ。「星の王子さま」も子どもが初めて読んだときに面白いと思うとは限らない。「風の又三郎」だって「銀河鉄道の夜」だってそうだ。一度手に取った本を最後まで読むかどうかは、その本が自分に向いているかどうかを考えた上で決めればよい。面白くない本を最後まで読むよう強制され、本嫌いになるくらいなら、投げ出した方がよほどマシだと思う。
大人であっても相性はある。本屋でじっとにらんで、「これはいい本だ」と買った本であっても、残念ながら家で開いたらつまらなかったということは少なくない。本にも当たり外れがあるから、仕方がない。もちろんしばらく時をへて手にとり、面白いじゃないかと思いなおすことはあるだろう。ちょっとのぞいて合わないと思えば、ほかに行く。そういうわがままな読み方でも大事な本にいつかは行き着く。広く浅く読む方が、たくさんの本に会えるし、浅くと思っても、相性によっては深く引き込まれ、それが一生のつき合いになることもある。読書にカリキュラムはないし、卒業もない。永遠の留年状態である。
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