9月8~12日(教養講座:夏目漱石に親しむ)

~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年9月8日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(5~7日)

石破首相 辞任を表明 “決定的な分断を生みかねず苦渋の決断”  | NHK →石破首相が辞任を発表した。世論の支持を頼りに粘ったが、党内の反発が強く、詰んでしまった。旧安倍派を中心とした保守派に配慮して党運営をし、最後も保守派に足を引っ張られた。「石破らしさを出せなかった」と言ったが、保守派とたもとを分かつ覚悟を持てなかった結果とも言える。また首相がコロコロ変わる時代に戻るのか。

「ポスト石破」小泉氏と高市氏が軸 自民総裁選、10月に投開票案 :朝日新聞 →政界は次に向けて動き出した。少数与党なので、自動的に首相になるわけではなく、他党の協力が欠かせない。保守色の強い高市氏では無理ではないか。小泉氏は有力だが、早すぎる世代交代を嫌う向きもありそうだ。大衆的インパクトはないものの、安定感抜群の林氏が浮上するとみるが、どうだろうか。

阪神タイガース “最も早い”セ・リーグ優勝決定 2年ぶり7回目 プロ野球 | NHK | #プロ野球 →史上最速のリーグ優勝。「ダメ虎」がたまに優勝すると盛り上がるが、圧勝・常勝ではやや違和感。クライマックスシリーズは10月15日というから1ヶ月以上先。これで日本シリーズに出られなかったら、去年の横浜のように下剋上が起きれば・・・。時間があるといろいろなことを考えてしまう。

静岡 牧之原の「竜巻」けが74人 住宅被害は少なくとも1044棟に | NHK | 気象 →日本の災害は異次元になりつつある。台風が日本近海で突然発生し、全国で線状降水帯ができて、浸水が発生。時には竜巻まで起こす。猛暑の停電で最悪だ。最近は床上・床下浸水の戸数を言わなくなったが、被害にあった家は大変だ。被害に対する公的補償の拡大も必要ではないか。これも重要な国防である。

アメリカ トランプ大統領 国防総省が「戦争省」の使える大統領令に署名 | NHK | トランプ大統領 →トランプ大統領は「国防総省」を「戦争省」とも呼べる大統領令に署名した。正式の名称変更には議会の決定が必要だが、戦争省とは物騒な名前だ。政治家はウソでも「平和のための戦争」というが、あまりに露骨だ。喜ぶのは兵器産業だけだろう。

EU グーグルに約5000億円の制裁金 ”公正な競争妨げた” | NHK | IT・ネット →公正な競争政策に力を入れるEUが、グーグルに5000億円の制裁金を課した。かねて批判的だったトランプ政権は「非常に不公平だ」と批判。EU内部にも関税交渉への影響を懸念し、反対意見もあった。独占禁止政策も米欧対立の影響を受けている。

歌手 橋幸夫さん死去 82歳「潮来笠」「いつでも夢を」がヒット 歌謡界の御三家 | NHK | 訃報 →昭和を彩った歌手がまた亡くなった。認知症を公表して歌手活動を再開するとしていただけに、意外感もある。橋幸夫、舟木一夫、西郷輝彦の御三家は、高度成長時代の代表でもあった。

*** 「今日の名言」

◎エリザベス女王(英国の女王。2022年9月8日死去、96歳)

「命ある限り、私はこの身を捧げてあなた方の信頼に応えられるよう努めます」 「憎むことや壊すことはたやすいこと。築いていくことや慈しむことがはるかに困難なのです」 「平和が訪れたら、明日の世界をより良く、より幸せな場所にするのは、今日の子どもたちであることを忘れないでください」 「すべての素晴らしい家族がそうであるように、我が家にだって衝動的で言うことを聞かない若者や、家族間の意見の不一致といった変なところはあります」 「仕事とはこの地球上に存在するための家賃のようなもの」 「本当の愛国心とは他者の愛国心への理解を排除しない」 「差別は未だに存在する。自分の信仰が脅威にさらされていると感じる人もいれば、見知らぬ文化に対して不満を持つ人もいます。そんな人が知らなければならないことは、他者に歩み寄ることで得られるものがたくさんあるということ、そして多様性とは脅威でなく、確かな強さであるということです」

*** 今週の教養講座(夏目漱石に親しむ①)

夏目漱石は日本でもっとも人気のある小説家の一人である。「西洋と東洋のあいだで揺れる近代日本人の心を描いた国民的作家」「明治の近代化と人間の悩みを描いた、日本文学を代表する文豪」と評される。代表的な小説の書き出しを現代語訳で紹介する。読んだことのある人は思い出しながら、初めての人は素直な心で味わって欲しい。

1. 『吾輩は猫である』  私は猫である。まだ名前はない。どこで生まれたのか全くわからない。ただ、じめじめした薄暗い場所でミャーミャー泣いていたことだけは覚えている。そのとき初めて人間というものを見た。後で知ったのだが、それは「書生」と呼ばれる人間の中でも一番たちの悪い種類らしい。書生というのは、時には猫を捕まえて煮て食うことさえあると聞いた。しかしその頃の私は、何も考える力がなかったので、特に恐ろしいとも思わなかった。ただ、その人間の掌に乗せられてふわりと持ち上げられたとき、妙にフワフワした気持ちになっただけである。

掌の上で落ち着き、じっとその顔を見たのが、人間というものとの最初の出会いだった。そのときの「妙なものだ」という感覚は今でも残っている。第一に、毛で覆われているはずの顔がつるつるしていて、まるでヤカンのようだ。後で多くの猫と出会ったが、こんな変わった顔のやつには一度も出会ったことがない。それに顔の真ん中がやたら突き出ている。そしてその穴から時々ぷうぷうと煙を吐き出す。どうもむせて仕方がなかった。これが人間の吸うタバコというものだと、ようやく最近わかった。

そのときに感じた奇妙さと同時に、どこか不気味な恐ろしさも覚えた。やがて「人間は猫を食うことがある」と聞かされ、その時の感覚に納得した。私はしばらくその書生に飼われていたが、やがてそこを飛び出した。というのも、その書生は猫を可愛がってくれるには違いないが、いかんせん貧乏で食べ物にも困っていたからだ。愛情はあっても、腹の足しにはならなかったのである。そこで仕方なく、私は軍人の家の裏に住みついた。そこの奥さんは猫好きで、魚の頭や骨をたくさん投げてくれた。寒い夜にはコタツに入れてくれることさえあった。しかしやがて主人に見つかり、こっぴどく追い出されることになった。彼は大の猫嫌いで、奥さんがいくらかばってくれても助からなかった。私は命からがらその家を逃げ出し、あてもなくさまよい歩いた――。