9月8~12日(教養講座:夏目漱石に親しむ)

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***デイ・ウォッチ(5~7日)
◎石破首相 辞任を表明 “決定的な分断を生みかねず苦渋の決断” | NHK →石破首相が辞任を発表した。世論の支持を頼りに粘ったが、党内の反発が強く、詰んでしまった。旧安倍派を中心とした保守派に配慮して党運営をし、最後も保守派に足を引っ張られた。「石破らしさを出せなかった」と言ったが、保守派とたもとを分かつ覚悟を持てなかった結果とも言える。また首相がコロコロ変わる時代に戻るのか。
◎「ポスト石破」小泉氏と高市氏が軸 自民総裁選、10月に投開票案 :朝日新聞 →政界は次に向けて動き出した。少数与党なので、自動的に首相になるわけではなく、他党の協力が欠かせない。保守色の強い高市氏では無理ではないか。小泉氏は有力だが、早すぎる世代交代を嫌う向きもありそうだ。大衆的インパクトはないものの、安定感抜群の林氏が浮上するとみるが、どうだろうか。
◎阪神タイガース “最も早い”セ・リーグ優勝決定 2年ぶり7回目 プロ野球 | NHK | #プロ野球 →史上最速のリーグ優勝。「ダメ虎」がたまに優勝すると盛り上がるが、圧勝・常勝ではやや違和感。クライマックスシリーズは10月15日というから1ヶ月以上先。これで日本シリーズに出られなかったら、去年の横浜のように下剋上が起きれば・・・。時間があるといろいろなことを考えてしまう。
◎静岡 牧之原の「竜巻」けが74人 住宅被害は少なくとも1044棟に | NHK | 気象 →日本の災害は異次元になりつつある。台風が日本近海で突然発生し、全国で線状降水帯ができて、浸水が発生。時には竜巻まで起こす。猛暑の停電で最悪だ。最近は床上・床下浸水の戸数を言わなくなったが、被害にあった家は大変だ。被害に対する公的補償の拡大も必要ではないか。これも重要な国防である。
◎アメリカ トランプ大統領 国防総省が「戦争省」の使える大統領令に署名 | NHK | トランプ大統領 →トランプ大統領は「国防総省」を「戦争省」とも呼べる大統領令に署名した。正式の名称変更には議会の決定が必要だが、戦争省とは物騒な名前だ。政治家はウソでも「平和のための戦争」というが、あまりに露骨だ。喜ぶのは兵器産業だけだろう。
◎EU グーグルに約5000億円の制裁金 ”公正な競争妨げた” | NHK | IT・ネット →公正な競争政策に力を入れるEUが、グーグルに5000億円の制裁金を課した。かねて批判的だったトランプ政権は「非常に不公平だ」と批判。EU内部にも関税交渉への影響を懸念し、反対意見もあった。独占禁止政策も米欧対立の影響を受けている。
◎歌手 橋幸夫さん死去 82歳「潮来笠」「いつでも夢を」がヒット 歌謡界の御三家 | NHK | 訃報 →昭和を彩った歌手がまた亡くなった。認知症を公表して歌手活動を再開するとしていただけに、意外感もある。橋幸夫、舟木一夫、西郷輝彦の御三家は、高度成長時代の代表でもあった。
*** 「今日の名言」
◎エリザベス女王(英国の女王。2022年9月8日死去、96歳)
「命ある限り、私はこの身を捧げてあなた方の信頼に応えられるよう努めます」 「憎むことや壊すことはたやすいこと。築いていくことや慈しむことがはるかに困難なのです」 「平和が訪れたら、明日の世界をより良く、より幸せな場所にするのは、今日の子どもたちであることを忘れないでください」 「すべての素晴らしい家族がそうであるように、我が家にだって衝動的で言うことを聞かない若者や、家族間の意見の不一致といった変なところはあります」 「仕事とはこの地球上に存在するための家賃のようなもの」 「本当の愛国心とは他者の愛国心への理解を排除しない」 「差別は未だに存在する。自分の信仰が脅威にさらされていると感じる人もいれば、見知らぬ文化に対して不満を持つ人もいます。そんな人が知らなければならないことは、他者に歩み寄ることで得られるものがたくさんあるということ、そして多様性とは脅威でなく、確かな強さであるということです」
*** 今週の教養講座(夏目漱石に親しむ①)
夏目漱石は日本でもっとも人気のある小説家の一人である。「西洋と東洋のあいだで揺れる近代日本人の心を描いた国民的作家」「明治の近代化と人間の悩みを描いた、日本文学を代表する文豪」と評される。代表的な小説の書き出しを現代語訳で紹介する。読んだことのある人は思い出しながら、初めての人は素直な心で味わって欲しい。
1. 『吾輩は猫である』 私は猫である。まだ名前はない。どこで生まれたのか全くわからない。ただ、じめじめした薄暗い場所でミャーミャー泣いていたことだけは覚えている。そのとき初めて人間というものを見た。後で知ったのだが、それは「書生」と呼ばれる人間の中でも一番たちの悪い種類らしい。書生というのは、時には猫を捕まえて煮て食うことさえあると聞いた。しかしその頃の私は、何も考える力がなかったので、特に恐ろしいとも思わなかった。ただ、その人間の掌に乗せられてふわりと持ち上げられたとき、妙にフワフワした気持ちになっただけである。
掌の上で落ち着き、じっとその顔を見たのが、人間というものとの最初の出会いだった。そのときの「妙なものだ」という感覚は今でも残っている。第一に、毛で覆われているはずの顔がつるつるしていて、まるでヤカンのようだ。後で多くの猫と出会ったが、こんな変わった顔のやつには一度も出会ったことがない。それに顔の真ん中がやたら突き出ている。そしてその穴から時々ぷうぷうと煙を吐き出す。どうもむせて仕方がなかった。これが人間の吸うタバコというものだと、ようやく最近わかった。
そのときに感じた奇妙さと同時に、どこか不気味な恐ろしさも覚えた。やがて「人間は猫を食うことがある」と聞かされ、その時の感覚に納得した。私はしばらくその書生に飼われていたが、やがてそこを飛び出した。というのも、その書生は猫を可愛がってくれるには違いないが、いかんせん貧乏で食べ物にも困っていたからだ。愛情はあっても、腹の足しにはならなかったのである。そこで仕方なく、私は軍人の家の裏に住みついた。そこの奥さんは猫好きで、魚の頭や骨をたくさん投げてくれた。寒い夜にはコタツに入れてくれることさえあった。しかしやがて主人に見つかり、こっぴどく追い出されることになった。彼は大の猫嫌いで、奥さんがいくらかばってくれても助からなかった。私は命からがらその家を逃げ出し、あてもなくさまよい歩いた――。
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◎10月開始の「生成AI活用講座」の受講生募集中 ⇒ 初心者向け、2ヶ月コース。計8回、テキスト本と動画で解説します。双方向型(2万円。課題を提出し、講評をして返送)と単独型(1万円。自分で学び、課題提出は不要)の2コース。希望者は「受講希望」と書いて、このメールに返信して下さい。申し込み締め切りは9月12日。HPに概要がわかるチラシ、オリエンテーション動画をアップしています⇒ 生成AI活用講座 10月スタートの概要 – 長谷川キャリア文章塾 生成AI活用講座2ヶ月コース オリエンテーション動画 – 長谷川キャリア文章塾
***デイ・ウォッチ(8日)
◎自民総裁選、「フルスペック」方式で最終調整…10月4日投開票の方向 : 読売新聞 →自民党総裁選は、党員投票も実施するフルスペックで10月4日投開票の見通しとなった。これまでは関心も高く、「電波ジャック」と言われた。しかし、昨年秋にも似たような顔ぶれで実施され、今は衆参とも少数与党になってすぐに首相になるわけではない。国民の関心はこれまでほど盛り上がらないだろう。
◎元自民の豊田氏を役員起用 政調会長補佐を兼務―参政:時事ドットコム 維新 3人の衆議院議員が離党届提出 新会派の結成目指す | NHK →秘書に暴言を吐いて問題となった厚労官僚出身の豊田真由子・元衆院議員が参政党役員会のメンバーになった。落選して一時、テレビ番組に出ていたが、政界に復帰する。維新の3人が新会派結成を目指して離党した。与野党とも流動化してきたか。
◎東京株、625円高 石破首相退陣表明で次期政権に期待:時事ドットコム 実質GDP、個人消費上振れ 年2.2%増に、先行き懸念も―4~6月期:時事ドットコム →東京株が高騰した。次期政権の経済対策を期待したと解説されたが、本当だろうか。円安が追い風になった。実質GDPの個人消費が上振れし、速報値から上方修正(年率1.0%増から2.2%増)された要因もあるだろう。
◎佐賀県警の科捜研職員 未実施のDNA鑑定 実施を装う 懲戒免職 | NHK | 佐賀県 →佐賀県警の40代の科捜研職員が、DNA鑑定で7年間にわたって130件の不適切対応をしていたことがわかった。虚偽の報告も含まれている。「仕事ぶりをよくみせるためだった」というが、プレッシャーでもあったのだろうか。誤った捜査が行われていたことになる。
◎静岡の竜巻 「国内最大級の規模と推定」気象庁 | NHK | 気象 →静岡県牧之原市で発生した竜巻が、国内最大級規模だったことがわかった。突風の強さを「0」から「5」までの6段階で判定する指標で、上から3番目の「3」。2006年に北海道佐呂間町、11年に茨城県常総市やつくば市、18年に沖縄県の伊江島で発生したという。
*** 「今日の名言」
◎湯川秀樹(物理学者、ノーベル賞受賞者。1981年9月8日死去、74歳)
「独創的なものは、初めは少数派である。多数は独創ではない」 「未来を過去のごとくに考えよ。科学は絶えず進歩している。常に明日の飛躍が約束されている」 「未知の世界を探求する人々は、地図を持たない旅行者である」 「メルヘンといいますか、子どもの世界というんですか、そういうところへ戻りたいという気持ちがいつもある」 「現実のほかにどこに真実があるかと問うことなかれ。真実はやがて現実となるのである」 「理論物理学は本来、哲学に近い学問だ」 「新しい真理の発見は常に少数派である。正しければ多数派になる」 「アイデアの秘訣は執念である」 「今日はあれをやり、明日はこれというように、あまり気が散ると結局どれもものにならない」 「自分の能力は、自分で使ってみなければわからない」 「君たち全員に優の成績をあげるけれども、勉強は自分でしなさいよ」 「ただ流行を追っているというのは、つまらない生き方です」 「地に空に平和を」
*** 今週の教養講座(夏目漱石に親しむ②)
2. 『坊っちゃん』 私は親から受け継いだ無鉄砲な性格のせいで、子供の頃から損ばかりしてきた。小学校にいたとき、学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かしたことがある。「どうしてそんな無茶をしたのか」と聞かれるかもしれないが、別に深い理由があったわけではない。新築の二階から顔を出していたら、同級生の一人が「そこから飛び降りられるものか。弱虫め!」とからかったのだ。それが悔しくて、思わず飛び降りてしまったのである。
小使いに背負われて帰ると、父が目をむいて言った。「二階から飛び降りて腰を抜かすやつがあるか」。私は負けじと「次は腰を抜かさずに飛んで見せます」と答えた。親戚からもらった外国製のナイフを、日光にかざしてきらきら光らせ、友達に見せびらかしていたことがある。すると一人が「光るだけで切れやしない」と言った。私はむきになって「何でも切ってみせる」と受け合った。最初に自分の指を切り、次に友達の指を切り、三度目には掌を切り、最後にはゴザを穴だらけにして、ようやく懲りた。
また、友達とけんかして負けそうになると田んぼに逃げ込んだ。田んぼはぬかるんでいて相手は足を取られて転ぶ。そうなるとこちらの勝ちであると威張った。中学に入って剣道の稽古をしたときも、強い相手に押されてもう駄目だと思ったので、思い切って飛び込んだら、相手が尻餅をつき、結果的に勝ってしまった。私は得意になったが、実は危うく負けるところだった。こうして私は親譲りの無鉄砲のために、ずいぶん損をしてきたのである。しかも、それは勉強や遊びだけでなく、食べ物に対しても同じだった。天ぷらを三人前食べたり、饅頭を一度に二十個食べたり――。
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***デイ・ウォッチ(9日)
◎米移民当局、日本人も3人拘束 韓国現代自工場の475人摘発で:時事ドットコム →移民取り締まりを強化している米当局は、韓国・現代自動車工場の475人を摘発し、日本人が3人含まれていることがわかった。地元雇用を生む海外からの投資現場への摘発で、韓国では反発が強まっている。トランプ政権は中間選挙をにらんで、数値目標を掲げて摘発に力を入れているという。
◎イスラエル ガザ市の全住民に退避通告 攻勢一段と強める構え | NHK | イスラエル・パレスチナ イスラエル軍 カタール首都に攻撃 ハマスのメンバー5人死亡 | NHK | カタール→イスラエルがガザ北部に大規模な攻撃を始めるため、全住民に退避通告を出した。イスラエル国内でも反対行動が起きる事態だ。また、ハマス殺害を狙ってカタールの首都ドーハを空爆した。ネタニヤフの狂気はエスカレートするばかりだ。
◎フランス バイル首相の信任投票 反対多数で否決 総辞職へ | NHK | フランス →フランス・バイル首相の信任投票が否決され、総辞職することになった。日本円で7兆6000億円規模の財政再建計画を公表したが、野党が強く反発していた。フランスは昨年1月以来、少数与党になり、首相の退陣は4回目。日本の近未来図のようだ。先進国の政治は迷走している。
◎オリ首相が辞任表明 デモ混乱拡大、空港停止も―ネパール:時事ドットコム →SNS禁止を打ち出したネパールのオリ首相が辞任を表明した。禁止に反対するデモ隊と警官隊が衝突し、少なくとも19人が死亡した。SNS規制は各国で議論になっているが、内閣が倒れるほどの事態になった。
◎ハルウララ死ぬ、113連敗「負け組の星」…「ウマ娘」キャラにも選ばれ海外でも人気 : 読売新聞 →高知競馬で113連敗を記録し、「負け組の星」といわれたハルウララが亡くなった。29歳。千葉県御宿町の牧場で余生を送っていた。
*** 「今日の名言」
◎水上勉(小説家。2004年9月8日死去、85歳)
「貧しさが、私にいい球根を与えてくれた」 「動物はみな弱いものを食って生きる以上、だれかの生まれかわりだ」 「人間の平和というものは、足もとの小石一つで崩れるはかないものだ」 「ぼくらの命は大勢の命の一つだ。だから、誰でも尊いんだ」 「何かで挫折したとしても、できるだけ早く頭を切り替えて、再出発しよう。全く問題のない平坦で安定した状態が永遠に続くことはなく、誰にでも挫折はある。挫折と希望を繰り返すことで前進できるのだから、立ち止まらずに早く頭を切り替えよう」 「仏と同じ悟りをひらく、そんな境地に達するためにも、この食物をいただくのである」 「ミミズも虫も、ちゃんと石の下にいますねん。リーンリーンリーンリーン、鳴いている音がありますねん。その石の下に、“禅のわびさびの石”が、もう一つ虫を包んでいるということを書いた文学がどこにあるんだ。私はそういうものを書いていきたいと、実は思っているのですよ」
*** 今週の教養講座(夏目漱石に親しむ③)
3. 『草枕』 山道を登りながら、私は考えていた。理屈で動けば角が立ち、感情で動けば流され、意地を通せば窮屈になる。どうにも人の世は住みにくいものだ。住みにくさが募ると、人はもっと安い場所へ引っ越したくなる。しかしどこへ行っても住みにくさは変わらない。だから詩人は詩の世界に、画家は絵の世界に、茶人は茶の世界に、それぞれ自分だけの理想郷を築く。私もまた、この人の世を離れた境地に遊ぼうとする一人である。
絵を描くといっても、筆で形を写すわけではない。山や谷を目の前にして、その起伏や陰影に抱かれ、心をまるごと一つの絵に塗り込めるのだ。花があれば花を愛で、月があれば月を楽しみ、雪が降れば雪に戯れ、雨が降れば雨の音を聞く。偶然の風景をそのまま心に映して、心の赴くままに動かすのである。
山道を進むと、谷川の水がさらさらと流れ、時にごろごろと石に当たる音が混じる。空気は澄み渡り、松の梢が風に鳴る。山は青く霞み、椿の花が赤く点じている。こうした風景に包まれると、世俗のちりあくたから遠ざかるような気がしてくる。人間世界の煩わしさを忘れ、この山の静けさに抱かれると、自然と心は澄んでいく。なるほど、詩人や画家がこういう境地を求めるのも当然だと思う。私もまた筆を携えて、この境に心を写し取ろうとしているのである。
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***デイ・ウォッチ(10日)
◎自民党総裁選挙 茂木前幹事長 記者会見し立候補を正式表明 「自民党と日本経済を必ず再生の軌道に戻す」 | NHK | 自民党総裁選 →後出しジャンケンが有利とも言われる自民党総裁選だが、予想される顔ぶれで最高齢の茂木氏が真っ先に立候補した。「ペーパーを一度見ただけで記憶する優秀さ」と言われるが、テレビで見る限り、そんな感じはしない。特定政党との連立、経済再生、自治体への数兆円規模の交付金など手堅い政策を訴えた。
◎立民幹事長に安住氏 11日、執行部刷新:時事ドットコム →ぱっとしない野党1党の立憲民主党。幹事長に国会対策の経験が長い安住氏を起用する。各党とのパイプの太さが期待される。流動化する日本の民意に対応し、政党再編も求められるが、立憲は与党との対決にこだわり、新しい時代の展望を開けていない。野田代表は、連立も含む過去にこだわらない大技が必要だろう。
◎株価 終値で史上最高値更新 半導体関連の銘柄に買い注文 | NHK | 株価・為替 →株価がまた最高値を更新した。政局相場に加え、米国の利下げ観測が広がり、米国株が上昇。人工知能向けのデータ建設需要が高く、半導体株に注目が集まった。そろそろ反落の時期ではないかと思うが、日経先物はきょうも上昇を示している。
◎日本航空・鳥取社長「極めて重く受け止め」…パイロット飲酒問題、高リスクの4人を乗務から外す : 読売新聞 →日本航空がパイロットの飲酒問題で国土交通省から厳重注意を受けた。経営危機に陥って京セラ創業者の稲盛氏を招き、再建を果たしたはずだが、親方日の丸に戻りつつある。飲酒リスクの高いパイロット4人を乗務から外した。職業的倫理観の問題で、信じがたい。
◎静岡 伊東市 田久保真紀市長が市議会を解散 来月20日までに市議会議員選挙へ | NHK | 静岡県 →伊東市の田久保市長が市議会を解散した。来月20日までに市議選が行われ、新議会で再び不信任決議が可決され、失職する可能性が高い。市政はずっと混乱しており、刑事訴追を過度に恐れて自滅しているとしか思えない。市政の私物化だ。
*** 「今日の名言」
◎石橋正二郎(ブリジストンタイヤ創業者。1976年9月11日死去、87歳)
「禍は口からと言う。言葉をつつしみ、自分の偉さを表そうとはせず、気取られなければ人に尊敬され、親しまれ、自分も楽しみが多い」 「威張り、虚勢をはる人は他からも嫌われ、孤立し、人望を失う」 「気は長く持つが、行うときは気短でなければならぬ」 「一個人として如何に優秀でも、他人と仲良く働くことのできない人は、集団生活においていちばん厄介な人である」 「時の短縮は、私の信条である。もし他人の3分の1の時間で仕事をすれば、結局3倍の仕事ができる。一生涯の活動時間を、かりに40年とすれば、120年分の仕事量となる」 「生活向上に役立ち、人の幸福を増す製品をつくることが成功の基である」 「逆境こそ事業革新のとき」
*** 今週の教養講座(夏目漱石に親しむ④)
4.『三四郎』 明治の末ごろ、九州から上京してきた青年・三四郎は、大学に入学するために初めて東京へ向かうことになった。彼はまだ世間をよく知らず、田舎の空気をそのまま身にまとったような青年である。汽車に乗り込んだのも初めてで、周囲の人々の様子にどこか落ち着かない思いを抱いていた。
出発したのはまだ暗い朝方で、汽車が九州の駅を離れると、窓の外には見慣れた田園風景が後ろに流れていった。山々の稜線は青く、田畑は穏やかに広がっている。それらを眺めながら、彼は「いよいよ東京へ行くのだ」という実感を少しずつ覚えはじめた。しかし、不安の方が大きい。自分は果たして都会の人々の中でやっていけるのか。勉学についていけるのか。胸の奥にじんわりとした緊張が広がっていた。
やがて汽車は関門海峡を渡る。三四郎にとって、これは大きな境目のように感じられた。九州を離れ、本州に足を踏み入れるのだ。潮の香りとともに、知らない土地へ進んでいく列車の振動が、彼の心をさらに高鳴らせる。まるでこれまでの生活から切り離され、新しい世界へ放り込まれるような感覚である。車内にはさまざまな人々がいた。旅慣れた商人らしき男、都会風の身なりをした紳士、子どもを連れた家族連れ。彼らを眺めるたびに、三四郎は自分の素朴さを意識せずにはいられなかった。話し声や仕草の一つひとつに、自分とは違う洗練を感じ取ってしまう。そんな中、同じ学生らしき人物を見かけて、少し安心する場面もあった。
時間が経つにつれて、列車は西から東へ、少しずつ都会に近づいていく。見える景色も変わり、山あいの風景から広々とした平野、やがて工場の煙突や人家の密集へと移っていく。変化する景色は、これから向かう東京の大きさと、そこでの新しい生活を予感させた。三四郎は窓に顔を寄せ、ぼんやりと外を眺めながら、自分の未来を考え続ける。大学ではどんなことを学ぶのだろう。どんな人と出会い、どんな人生を歩むのだろう。期待と不安が交互に押し寄せ、落ち着かない。けれども、もう引き返すことはできない。
汽車は休むことなく走り続け、目的地である東京へと近づいていく。三四郎は知らず知らずのうちにまぶたが重くなり、夢の中でまた新しい出会いや出来事を先取りするかのように、うつらうつらと眠りに落ちていった。こうして、まだ世間をよく知らない一人の青年が、東京という大都市に足を踏み入れる長い旅の幕が上がるのである。
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***デイ・ウォッチ(11日)
◎チャーリー・カーク氏が銃撃され死亡 アメリカのトランプ大統領に近い政治活動家 カーク氏とは | NHK | アメリカ →トランプ大統領に近い31歳の政治活動家チャーリー・カーク氏が暗殺された。18歳で政治団体を設立し、カリスマ的な影響力を持つという日本では考えにくい存在。犯人はわかっていない。トランプ大統領は公的機関に半旗を掲げるよう命じた。直前には来日し、参政党のイベントに参加していた。
◎関東で猛烈な雨 浸水・川の増水・氾濫などに厳重警戒 | NHK | 気象 →今夏は全国各地で線状降水帯が発生し、大雨が降っているが、首都圏を直撃すると交通がマヒし、「帰宅難民」が大量に発生するから始末が悪い。便利な社会は、危機になった時に逆回転する。
◎東京株4万4372円 連日の最高値、AI関連けん引:時事ドットコム →東京株がなぜか連日、最高値を更新している。上場株の半数以上は下落しているが、日経平均株価で比重が重いソフトバンクGなど半導体関連が引っ張る構図になっている。ゆがんだ株価で、常にくすぶっている日経平均への疑念も高まる。利下げ期待で11日のNY株が上昇しており、東京株はきょうも上がりそうだ。
◎自民総裁選、小林氏が出馬表明 高市氏は重鎮に伝達―4人の立候補固まる:時事ドットコム →自民総裁選に小林氏が出馬表明をした。開成高・東大法・大蔵省を歩み、唯一の官僚出身候補になるとみられる。高市氏の出馬の意向を固めた。ともに保守派といわれ、支持層が重なる。違いをどう出すのだろうか。
◎公明 参院選総括「党存亡の危機」“着実な政策実現目指す” | NHK | 参議院選挙 →参院選で敗北したという意味では、公明党も深刻だ。「党存亡の危機」と総括し、サポーター制度や学生部をつくるという。支持母体である創価学会の高齢化も響く。中道勢力以外とは連立をしないと言明しているから、小林氏や高市氏が総裁になった場合、連立を解消する可能性もある。
◎新入社員の女性に「野良犬」と叱責…化粧品会社のパワハラで死亡、1億5000万円支払いへ : 読売新聞 →化粧品メーカー「ディー・アップ」の社長から「野良犬」「大人をなめるな」などと叱責されて亡くなった女性に対し、東京地裁は1.5億円の支払いを決定した。社長は辞任する。夢を売る化粧品メーカーでここまで乱暴なパワハラがあることに驚く。
*** 「今日の名言」
◎是川銀蔵(相場師。1992年9月12日死去、95歳)
「人の往く 裏に道あり 花の山」 「西に走る時、我ひとり東へ行かん」 「もうは、まだなり。まだは、もうなり」 「売りは迅速、買いは悠然」 「野も山もみな一面に弱気なら、阿呆になってコメを買うべし」 「銘柄は、水面下にある優良なものを選んでじっと待つ」 「経済、相場の動きからは常に目を離さず自分で勉強する」 「過大な思惑はせず、手持ちの資金で行動する」 「株は人が奨めるものではなく、自分で勉強して選ぶもの」 「2年後の経済の変化を自分で予測し大局観を持つ」 「不測の事態など、リスクはつきものと心得る」 「株価には妥当な水準があり、値上がり株を深追いしてはいけない」 「天井では欲に迷い、勝ちに乗じ、分限不相応の金額を買い重ねる」 「株価は最終的に業績で決まる。腕力相場は敬遠すべき」
*** 今週の教養講座(夏目漱石に親しむ⑤)
5.『それから』 代助は大学を卒業してから三年間、何もせずに暮らしていた。親から受け継いだ財産がそれなりにあり、母は早くに亡くなり、父は再婚して継母と折り合いが悪かったため、家を出て一人で暮らしていたのだ。それで、特に困ることもなく世間並みにやっていけた。学問も、特別な目的があって学んだわけではなかったが、成績はかなり良かった。やろうと思えば職業につくこともできたはずだ。だが彼は何も選ばず、ただ漠然とした生活を続けていた。
父や兄弟は、そんな代助を苦々しく思っていた。しかし、彼に学資がかかるわけではなかったので、強く責め立てることもなく今日まで過ごしてきたのである。代助もまた、これといった希望があるわけではなかった。何かをしようという積極的な気持ちもない。けれども、無為に日を消すだけでもなかった。書物を読み、人と議論し、音楽会や芝居を見に行く。そんな生活に、ぼんやりと満足していた。だが心の奥には、満たされない空虚があった。社会に立って働くべきだという意識はある。だがその意識は行動に結びつかない。父や兄の視線を感じながらも、代助は自分の気質と境遇を言い訳にして、気ままな日々を続けていた。
◆
6. 『こころ』 私はその人を、いつも「先生」と呼んでいた。だからここでも本名は書かない。ただ「先生」とだけ記す。それは世間に遠慮しているからというよりも、私にとって自然だからである。記憶を呼び起こすと、すぐ「先生」と言いたくなる。筆をとっても同じだ。よそよそしい頭文字など、とても使う気にはなれない。
私が先生と知り合ったのは鎌倉だった。私はまだ若い学生で、夏休みに友達から「一緒に海水浴に行こう」と誘われた。実は海が特に好きでもなかったが、勧めに従って出かけたのである。友達は毎日泳いでいたが、私は砂浜に寝転んで本を読むか、時々海に入ってはすぐ上がる程度だった。そんなとき、先生と出会った。先生はいつも一人で海に入っていた。泳ぐわけでもなく、ただ沖に行ってぷかりと浮かんでいる。そして浜に戻ると、黙って砂に腰を下ろし、じっと海を眺めていた。その姿には人を寄せつけない雰囲気があった。私は次第にその人に惹かれ、やがて言葉を交わすようになり、自然と「先生」と呼ぶようになった。
