9月15~19日(教養講座:批評理論を知る)
~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年9月15日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(12~14日)
◎ルーマニア ロシアの無人機が自国の領空を侵犯と明らかに | NHK ロシア収容所 捕虜への拷問や虐待 ウクライナ元兵士が証言 | NHK →ロシアの無人機がルーマニアの領空を侵犯した。9~10日はポーランドの領空を侵犯した。NATOの集団的自衛権の範囲に入っており、危険な兆候だ。ロシアの収容所がウクライナ捕虜を虐待している証言も出ている。ロシアの国際的評判は地に落ちている。
◎世界陸上 女子マラソン 小林香菜 7位入賞 女子100メートルハードル 福部と中島が準決勝進出 | NHK | #陸上競技 →国際的スポーツイベントは「カネで視聴率を買う」と言われる。東京開催の世界陸上はTBSが独占放映。21日までの長丁場。14日の女子マラソンでは、市民ランナー出身の小林選手が終盤、10位から7位に追い上げて入賞する健闘。日曜朝で視聴率も上がったのではないか。
◎日本生命社員 出向先から内部情報を無断で持ち出し 計604件 | NHK | 金融 →建前と本音の乖離が大きい金融界。日本生命が銀行など7つの出向先から604件の内部情報を無断で持ち出していた。不正競争防止法違反の疑いが濃厚だ。日生は「指示はしていない」というが、200人以上の役職員が共有しており、違法行為の黙認と言える。経団連の筒井会長は日生出身。
◎チャーリー・カーク氏銃撃 22歳の容疑者逮捕 州知事“政治的暴力防止を” | NHK | 事件 →米国の保守活動家カーク氏の暗殺事件で、捜査当局はタイラー・ロビンソン容疑者(22)を逮捕した。政治問題に関心を持ち、カーク氏を嫌悪していたという。主張の違う相手を殺すのは論外だが、政治的分断の激化も懸念される。指導者があおらないことが重要で、トランプ大統領の慎重な言動がカギだ。
◎天皇皇后両陛下と愛子さま 養護ホームで被爆者と懇談 長崎 戦後80年 一連の訪問を締めくくる | NHK | 皇室 →天皇一家が長崎を訪問した。戦後80年の今年、硫黄島、沖縄、広島、モンゴルと慰霊の旅を続けてきた。平成天皇から引き継いで戦争を次世代に語り継ぐ姿勢、現行憲法下で象徴の責任を果たそうという決意が伝わってくる。広く国民の支持を受けるだろう。
*** 「今日の名言」
◎吉行和子(女優。2025年9月2日死去、90歳)
「女優として一番大切にしていることは、自分の心が動くということです。自分の役が面白そうって思えなければ絶対上手くいかない。面白そうならどんな小さな役でもいい」 「子どもの頃は身体が弱くて本ばかり読んでいました。中学3年生の時に初めて芝居というものを観てハッとしました。本の中の人物が生きて、動いて、喋っている。この世の中にこんなにも私を興奮させる世界があったのかと驚きました」 「将来劇団に入って芝居を作る一員として生きて行くと決心しました。衣装係のような仕事なら私にもできる」 「劇団に入るという夢を秘かに思い続けていたら、高校3年生の時に新聞の小さな広告で劇団民藝が研究生を募集しているのを見つけました。誰にも相談せずに試験を受けたら、受かっちゃった」 「最後は舞台女優として幕を閉じる。それが最近できた私の大切な人生のテーマです。役者を続けて来たからこそ、私の人生はいつも満たされてきたと思います」
*** 今週の教養講座(批評理論を知る①)
今週は批評理論を紹介する。もともと文芸作品を批評する理論が中心だが、社会や人間に対する批評にも使われていく。価値観の多様化した現代では、自分だけの味方で判断するのはリスクが大きい。自分の視点を持ちながら、多角的に考えてみることが大切になる。幅広く応用できるので、この機会に理解を深めてみたい。
◎ポスト構造主義とは何か ポスト構造主義は、1960年代以降のフランスを中心に広がった思想潮流です。「構造主義」が社会や文化の背後にある安定した法則や構造を探ろうとしたのに対し、ポスト構造主義はその前提を疑い、「意味や真理は固定できない」と考えます。中心的な思想家にはジャック・デリダ、ミシェル・フーコー、ジル・ドゥルーズらがいます。彼らは、言葉や知識が必ずしも1つの真実を映し出すわけではなく、常に揺れ動き、権力関係によって形づくられることを示しました。
歴史的な広がり ポスト構造主義は、戦後フランスの社会状況と深く結びついていました。第二次世界大戦後の復興期に、従来の権威や制度への信頼は揺らぎ、学生運動や市民運動が社会を大きく変えました。この時代、知識や言葉のあり方そのものを問い直す必要がありました。デリダは「解体(脱構築)」という方法で、既存の概念や制度の背後にある前提を暴き出しました。フーコーは、刑務所や学校、病院などの日常的な制度の中に権力が浸透していることを明らかにしました。つまり、権力は単に国家や政府の頂点にあるのではなく、人々の生活や思考の細部にまで入り込んでいるというのです。
社会への影響 ポスト構造主義の最大の影響は、「絶対的な真理や普遍的な正しさ」を疑う姿勢です。例えば、かつては「男性は外で働き、女性は家庭を守る」という役割が自然なものとされていました。しかしポスト構造主義的な視点からすれば、それは「自然」ではなく、社会が作り出した権力関係の一部にすぎません。この視点はフェミニズムやジェンダー研究、人種差別批判、LGBTQ+運動など多くの社会運動に取り入れられました。「常識」とされるものを疑い、その背後にある力の働きを見抜く手法として広がったのです。
メディアや広告にも応用できます。ニュースや映像が「事実」を伝えているように見えても、実際には特定の立場や価値観を強調している場合がある。ポスト構造主義の視点を持つことで、私たちは「なぜこの言葉が選ばれたのか」「誰が利益を得ているのか」と考えられるようになります。これにより、情報に流されず、主体的に解釈する力が養われます。
今後の使い方 現代はインターネットやSNSの時代であり、誰もが情報を発信できる一方で、フェイクニュースや偏った言説が溢れています。ポスト構造主義の「意味は一つではなく、常に権力と関係している」という考え方は、この混乱した情報環境を読み解く上で大きな武器になります。例えば、AIが生成する文章や画像を「客観的」だと受け取るのではなく、その背後にあるアルゴリズムや企業の意図を考えることも、まさにポスト構造主義的な実践です。
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