9月15~19日(教養講座:批評理論を知る)

~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年9月15日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(12~14日)

ルーマニア ロシアの無人機が自国の領空を侵犯と明らかに | NHK ロシア収容所 捕虜への拷問や虐待 ウクライナ元兵士が証言 | NHK  →ロシアの無人機がルーマニアの領空を侵犯した。9~10日はポーランドの領空を侵犯した。NATOの集団的自衛権の範囲に入っており、危険な兆候だ。ロシアの収容所がウクライナ捕虜を虐待している証言も出ている。ロシアの国際的評判は地に落ちている。

世界陸上 女子マラソン 小林香菜 7位入賞 女子100メートルハードル 福部と中島が準決勝進出 | NHK | #陸上競技 →国際的スポーツイベントは「カネで視聴率を買う」と言われる。東京開催の世界陸上はTBSが独占放映。21日までの長丁場。14日の女子マラソンでは、市民ランナー出身の小林選手が終盤、10位から7位に追い上げて入賞する健闘。日曜朝で視聴率も上がったのではないか。

日本生命社員 出向先から内部情報を無断で持ち出し 計604件 | NHK | 金融 →建前と本音の乖離が大きい金融界。日本生命が銀行など7つの出向先から604件の内部情報を無断で持ち出していた。不正競争防止法違反の疑いが濃厚だ。日生は「指示はしていない」というが、200人以上の役職員が共有しており、違法行為の黙認と言える。経団連の筒井会長は日生出身。

チャーリー・カーク氏銃撃 22歳の容疑者逮捕 州知事“政治的暴力防止を” | NHK | 事件 →米国の保守活動家カーク氏の暗殺事件で、捜査当局はタイラー・ロビンソン容疑者(22)を逮捕した。政治問題に関心を持ち、カーク氏を嫌悪していたという。主張の違う相手を殺すのは論外だが、政治的分断の激化も懸念される。指導者があおらないことが重要で、トランプ大統領の慎重な言動がカギだ。

天皇皇后両陛下と愛子さま 養護ホームで被爆者と懇談 長崎 戦後80年 一連の訪問を締めくくる | NHK | 皇室 →天皇一家が長崎を訪問した。戦後80年の今年、硫黄島、沖縄、広島、モンゴルと慰霊の旅を続けてきた。平成天皇から引き継いで戦争を次世代に語り継ぐ姿勢、現行憲法下で象徴の責任を果たそうという決意が伝わってくる。広く国民の支持を受けるだろう。

*** 「今日の名言」

◎吉行和子(女優。2025年9月2日死去、90歳

「女優として一番大切にしていることは、自分の心が動くということです。自分の役が面白そうって思えなければ絶対上手くいかない。面白そうならどんな小さな役でもいい」 「子どもの頃は身体が弱くて本ばかり読んでいました。中学3年生の時に初めて芝居というものを観てハッとしました。本の中の人物が生きて、動いて、喋っている。この世の中にこんなにも私を興奮させる世界があったのかと驚きました」 「将来劇団に入って芝居を作る一員として生きて行くと決心しました。衣装係のような仕事なら私にもできる」 「劇団に入るという夢を秘かに思い続けていたら、高校3年生の時に新聞の小さな広告で劇団民藝が研究生を募集しているのを見つけました。誰にも相談せずに試験を受けたら、受かっちゃった」 「最後は舞台女優として幕を閉じる。それが最近できた私の大切な人生のテーマです。役者を続けて来たからこそ、私の人生はいつも満たされてきたと思います」

*** 今週の教養講座(批評理論を知る①)

 今週は批評理論を紹介する。もともと文芸作品を批評する理論が中心だが、社会や人間に対する批評にも使われていく。価値観の多様化した現代では、自分だけの味方で判断するのはリスクが大きい。自分の視点を持ちながら、多角的に考えてみることが大切になる。幅広く応用できるので、この機会に理解を深めてみたい。

◎ポスト構造主義とは何か  ポスト構造主義は、1960年代以降のフランスを中心に広がった思想潮流です。「構造主義」が社会や文化の背後にある安定した法則や構造を探ろうとしたのに対し、ポスト構造主義はその前提を疑い、「意味や真理は固定できない」と考えます。中心的な思想家にはジャック・デリダ、ミシェル・フーコー、ジル・ドゥルーズらがいます。彼らは、言葉や知識が必ずしも1つの真実を映し出すわけではなく、常に揺れ動き、権力関係によって形づくられることを示しました。

歴史的な広がり  ポスト構造主義は、戦後フランスの社会状況と深く結びついていました。第二次世界大戦後の復興期に、従来の権威や制度への信頼は揺らぎ、学生運動や市民運動が社会を大きく変えました。この時代、知識や言葉のあり方そのものを問い直す必要がありました。デリダは「解体(脱構築)」という方法で、既存の概念や制度の背後にある前提を暴き出しました。フーコーは、刑務所や学校、病院などの日常的な制度の中に権力が浸透していることを明らかにしました。つまり、権力は単に国家や政府の頂点にあるのではなく、人々の生活や思考の細部にまで入り込んでいるというのです。

社会への影響  ポスト構造主義の最大の影響は、「絶対的な真理や普遍的な正しさ」を疑う姿勢です。例えば、かつては「男性は外で働き、女性は家庭を守る」という役割が自然なものとされていました。しかしポスト構造主義的な視点からすれば、それは「自然」ではなく、社会が作り出した権力関係の一部にすぎません。この視点はフェミニズムやジェンダー研究、人種差別批判、LGBTQ+運動など多くの社会運動に取り入れられました。「常識」とされるものを疑い、その背後にある力の働きを見抜く手法として広がったのです。

メディアや広告にも応用できます。ニュースや映像が「事実」を伝えているように見えても、実際には特定の立場や価値観を強調している場合がある。ポスト構造主義の視点を持つことで、私たちは「なぜこの言葉が選ばれたのか」「誰が利益を得ているのか」と考えられるようになります。これにより、情報に流されず、主体的に解釈する力が養われます。

今後の使い方  現代はインターネットやSNSの時代であり、誰もが情報を発信できる一方で、フェイクニュースや偏った言説が溢れています。ポスト構造主義の「意味は一つではなく、常に権力と関係している」という考え方は、この混乱した情報環境を読み解く上で大きな武器になります。例えば、AIが生成する文章や画像を「客観的」だと受け取るのではなく、その背後にあるアルゴリズムや企業の意図を考えることも、まさにポスト構造主義的な実践です。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年9月16日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(15日)

TikTokアメリカ事業売却 “合意への枠組み整う” 米中貿易協議 | NHK | アメリカ 米エヌビディアの違反認定 独禁法、半導体で圧力か―中国:時事ドットコム→米中の貿易協議があり、中国系アプリ「TikTok」米国事業の売却がまとまった。19日にトランプ大統領と習主席が電話会談する。関税協議は継続する。中国はエヌビディアの独禁法違反を認定したと発表しており、神経戦も続く。

米国務長官、イスラエル首相と会談 カタール攻撃で協議か:時事ドットコム →米国の国務長官がイスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相と協議した。イスラエルはハマス幹部を殺害するため、停戦協議中のカタールを空爆したが、米国側は不満を表明している。イスラエルに対する米国の影響力はガタ落ちだ。コントロールがもう効かないのか。

「ポスト石破」党員票争奪戦へ 小泉・高市氏有利の見方―自民総裁選:時事ドットコム →自民党総裁選は昨年も立候補した5人の出馬で固まりつつある。各種調査では今のところ、小泉、高市氏の人気が高い。党員票でリードする可能性が高く、国会議員票の行方が最終的に影響しそうだ。もっとも告示は22日、投開票は来月4日。まだ先で、何があるかわからない。

スタートとゴールで珍事 世界陸上・男子マラソン:時事ドットコム 陸上 世界選手権 男子3000m障害 三浦龍司が8位入賞 | NHK | #陸上競技→世界陸上の男子マラソンはゴールまでデッドヒートとなり、2時間9分48秒の同タイムでタンザニアのシンブが優勝した。スタートでは100メートル走ってやり直しとなった。異例ずくめのレースとなった。メダルが期待された3000メートル障害の三浦は8位だった。

容疑者、トランス女性と交際 動機との関連捜査―米活動家射殺:時事ドットコム →カーク氏を射殺した容疑者が、トランスジェンダーの女性と交際していることが明らかになった。決定的な動機はなお不明だが、カーク氏は性的少数者への否定的な発言を繰り返していた。政治的ではなく、個人的な背景が浮上している。憶測に惑わされない慎重な見極めが必要だ。

*** 「今日の名言」

◎乃木希典(陸軍大将。1912年9月13日、明治天皇の後を追って殉死、62歳)

「口を結べ。口を開いているような人間は、心にも締まりがない」 「勉強忍耐は、才力智徳の種子なり」 「恥を知れ。道に外れたことをして、恥を知らないものは、禽獣(きんじゅう)に劣る」 「決して贅沢するな。贅沢ほど、人を馬鹿にするものはない」 「武士道とは、身を殺して、仁をなすものである」 「武士道は、言葉ではない」 「社会主義は平等を愛するというが、武士道は自分を犠牲にして人を助けるものであるから、社会主義より上である」 「(日露戦争で敗れたロシア軍総指揮官ステッセルと会見する模様を米国人が映画に撮りたいと願い出た時)武士道の精神からいって、ステッセル将軍の恥が残るような写真は撮らせてはならない」 「(日露戦争後、時間が許せば戦死者遺族を訪問して言いたいとして)乃木があなた方の子弟を殺したにほかならず、その罪は割腹してでも謝罪すべきですが、今はまだ死すべき時ではないので、他日、私が一命を国に捧げるときもあるでしょうから、そのとき乃木が謝罪したものと思ってください」

*** 今週の教養講座(批評理論を知る②)

◎フェミニズム批評とは何か  フェミニズム批評は、文学や文化に描かれる「女性の表象」や「ジェンダーのあり方」を問い直す立場です。単に女性作家を取り上げるのではなく、「なぜ女性の声はこれまで軽視されてきたのか」「社会はどのようにして男女の役割を作り上げてきたのか」を考える視点を提供します。背景にあるのは、19世紀末から20世紀にかけて広がった女性解放運動や男女平等の社会的な要求です。フェミニズム批評は、文化や言葉に潜む無意識の差別を可視化する役割を担っています。

歴史的な広がり  1970年代、欧米で第二波フェミニズム運動が盛んになると同時に、文学研究の分野でもフェミニズム批評が広がりました。当初は「女性作家の再評価」が中心でしたが、その後は「男性中心的な言語や物語の構造そのものを問い直す」という方向へと発展しました。代表的な批評家には、エレイン・ショウォルターやジュディス・バトラーなどがいます。バトラーの「ジェンダーは社会的に構築されるものだ」という考え方は、性の固定観念を大きく揺さぶり、社会学や政治運動にまで影響を及ぼしました。

社会への影響  フェミニズム批評の強みは、日常に深く根ざした差別や偏見を言葉で明らかにすることです。たとえば、広告に登場する女性像が「若く、美しい」ものに偏っていないか。ドラマや映画で女性が「母親」「恋人」としてしか描かれていないのではないか。こうした指摘は単なる表現の問題ではなく、社会の価値観を映し出しています。職場における男女格差や育児・介護の役割分担の偏りなども、フェミニズム批評の視点で考えると理解しやすくなります。「なぜ女性がリーダーになることが少ないのか」「なぜ家事は女性の役割とされるのか」という問いは、文化に刻まれた無意識の偏りを探る作業でもあります。この批評が広まることで、社会全体での平等意識や法制度の改善にもつながってきました。

今後の使い方  現代社会では、女性と男性の二項対立を超えて、LGBTQ+を含む多様な性のあり方が注目されています。フェミニズム批評は「性は生物学的に決まるのではなく、社会的に作られる」という視点を持つため、多様な生き方を認める基盤として重要です。たとえば、企業の広告キャンペーンでどのような家族像が提示されているか、政治家の発言にどんな性別役割の前提が隠されているかを読み解くのは、フェミニズム批評の実践そのものです。さらに、AIやメディアが再生産する「偏った女性像」を検証することも、これからの課題です。AIが過去のデータを学習する以上、そこに含まれる差別的イメージを批判的に点検することは不可欠です。

まとめると、  フェミニズム批評は「文化や社会の中に潜むジェンダーの偏りを見抜き、それを問い直す視点」です。歴史的には女性解放運動から始まり、社会全体の価値観を揺さぶってきました。そして今後も、多様性を尊重し、公平な社会を築くために欠かせない思考の道具となるでしょう。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年9月17日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(16日)

【基準地価2025】全国は4年連続で上昇 東京の伸び加速、海外の投資マネー流入 – 日本経済新聞 →基準地価が今年も上昇した。全国平均では1.5%上昇、東京圏は5.3%という高さだ。中国を中心とした海外投資家、インバウンド需要が押し上げている。一般家庭が首都圏で自宅を持つのは難しくなっている。物価高に地価高騰が追い打ちをかけている。

イスラエル、ガザ市に地上侵攻開始 「ハマス最後の拠点」制圧目指す:時事ドットコム →イスラエルがガザ市に侵攻を始めた。ハマス制圧を目指すが、人質が亡くなる可能性も高くなる。今回の衝突はハマスの攻撃から始まったが、イスラエルの反攻は予想をはるかに超え、丸腰のガザ地区を蹂躙している。最終局面に入ったのか。

自・立、給付付き控除で協議体 森山幹事長「早期に始動」:時事ドットコム →立憲民主党の立ち位置が変化する兆しか。安住幹事長が就任し、政局を動かそうという機運が出てきた。給付付き税額控除は有力な経済対策とされ、石破首相と野田代表が協議することで合意していた。連立では国民民主や維新が注目されるが、立憲も存在意義を示すべきだろう。

東京株、一時4万5000円台 連日の最高値―米ハイテク株上昇で買い:時事ドットコム →相変わらずの株価高騰が続いている。一時、史上始めて4万5000円を超えた。米国の利下げを期待する海外勢主導の相場になっている。「まだはもうなり、もうはまだなり」と言う。もう天井か、まだ天井ではないのか・・・

三重 四日市 記録的な大雨で地下駐車場浸水 車 約260台が被害 | NHK | 三重県 →12日の大雨は都市排水の課題を提起した。三重・四日市では地下駐車場が水浸しとなり、260台が被害を受けた。東京などでも地下店舗が浸水した。都市は1時間50ミリの雨量を前提に排水を整備しているが、12日は120ミリに達したという。今後もゲリラ豪雨は予想されており、都市の排水対策が急務になっている。

ロバート・レッドフォードさん死去、89歳 俳優、監督として活躍:時事ドットコム →米国を代表する映画スターだったロバート・レッドフォードさんが亡くなった。89歳。「明日に向かって撃て」「スティング」「追憶」「大統領の陰謀」など1960~70年代のヒット映画に出演。甘いマスクで知られたが、映画監督を務め、独立系映画祭も主宰した。

*** 「今日の名言」

◎ルース・ベネディクト(米国の文化人類学者。1948年9月17日死去、61歳)

「キリスト教的な欧米文化は『罪の文化』であり、日本の文化は『恥の文化』である」 「人生でもっとも幸せな興奮状態とは、大切に思う人のため、そして非常に軽蔑する悪に対して皆のために戦う価値があることだと確信することである」 「美徳とは、人に感謝することを積極的に行いだしたときに生まれる」 「人種差別とは、ある民族集団が先天的劣等を本質的に非難され、別の集団は先天性な優越に運命づけられているという教義である」 「人種差別は、今日、世界中の誰もがさらされている思想である。それに賛成するのか、反対するのか、私たちは選ばなければならない。そして、未来の歴史は、私たちが下す決定によって異なってくる」 「誰も、フィルターをかけずに世界を見ることはない。私たちが世の中を見ているフィルターは、見ることができない」

*** 今週の教養講座(批評理論を知る③)

◎マルクス主義批評とは何か  マルクス主義批評は、19世紀にカール・マルクスが唱えた社会思想を基盤にしています。マルクスは「人間の意識は社会の経済的土台によって規定される」と考えました。つまり、社会の仕組みや人々の考え方は、政治や経済のあり方に大きく左右されるという視点です。これを文学や芸術に応用したのがマルクス主義批評です。小説や詩を単なる個人の想像力ではなく、その時代の社会や経済の状況を映し出す鏡としてとらえます。

歴史的な広がり  20世紀初頭から、マルクス主義批評は世界中の文学研究に大きな影響を与えました。たとえば、イギリスの批評家レイモンド・ウィリアムズやテリー・イーグルトンは、文学を「社会の構造」と密接に結びつけて分析しました。ソ連や中国など社会主義国家では、文学は労働者のための教育や宣伝に用いられ、社会改革を支える道具ともなりました。西側でも学生運動や労働運動と結びつき、「文学は誰のためにあるのか」という問いを広く社会に投げかけました。

社会への影響  マルクス主義批評は、文学を「社会に参加する言葉」として捉え直しました。これにより、作品を読む際に「誰の立場から語られているのか」「弱者の声は排除されていないか」といった視点が注目されるようになりました。たとえば、労働者や農民がどのように描かれているか、女性や少数派がどう表現されているかを読み取ることは、現実社会の不平等を見直すきっかけとなります。今日のフェミニズム批評やポストコロニアル批評も、マルクス主義の「権力と表象を結びつける」視点を受け継いでいます。

今後の使い方  現代社会は格差や貧困が拡大し、労働のあり方も大きく変わっています。生成AIやグローバル資本主義の時代において、誰が利益を得て誰が犠牲になっているのかを考えることは、ますます重要です。マルクス主義批評は文学に限らず、映画やマンガ、SNS投稿といった文化表現にも応用できます。たとえば、人気ドラマに描かれる家族像がどのように「理想の労働者」や「消費者像」を強化しているのかを読み解くことも可能です。これは単なる学問ではなく、日常の情報を批判的に受け止め、自分の立場を考えるための「読み方の技術」と言えるでしょう。

まとめると、 マルクス主義批評は「文学を通じて社会の仕組みを読み解く方法」です。歴史的には社会運動と深く結びつき、現代でも格差や権力構造を見抜く視点として有効です。私たちがニュースや娯楽を受け取るとき、「そこに隠れた力関係」を意識することが、マルクス主義批評の実践なのです。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年9月18日号(転送禁止)~~~

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***デイ・ウォッチ(17日)

アメリカ FRB 0.25%利下げ決定 いまのトランプ政権下では初 年内にあと2回の利下げ想定 | NHK | アメリカ →米FRBが0.25%の利下げを決めた。雇用の減速を踏まえて景気を下支えする狙いで、昨年12月以来。2期目のトランプ政権下では初めて。年内に2回の利下げを想定している。政権の影響は今後、さまざまに議論されるとみられる。直前に就任したトランプ系理事は0.5%を主張した。

旧統一教会総裁が出頭 尹氏側近議員を逮捕―韓国特別検察官:時事ドットコム →旧統一教会の総裁が韓国特別検察官の取り調べに出頭した。ユン前政権との癒着が問われている。旧統一教会には日本からの献金が上納されていることが明らかになっている。韓国の捜査当局がどこまで踏み込むかはわからないが、国際的な集金マシンと化した宗教法人の透明性を高めるべきだろう。

JAL 国際線機長の飲酒問題 日本航空が社長含む37人を報酬減額の処分 | NHK | 航空 →日本航空は機長の飲酒問題で社長を含む37人の処分を発表した。当該の機長は11日付で懲戒解雇にしていた。常習だったと言われており、もっと早く厳しい措置は取れなかったのだろうか。他にも飲酒癖のある機長がいるようだ。社会の常識が通じない組織に戻りつつあるのだろうか。

「丸亀製麺」 店長の年収最大2000万円に 人材確保へ | NHK →丸亀製麺が思い切った賃金を発表した。店長の現在の年収は520万円というから、2000万円はほぼ4倍だ。影響力のある日本企業はこうした挑戦をどんどんすべきだろう。すかいらーくHDも店長の年収を現在の最大840万円から1000万円を超える水準に引き上げることにしている。

連合、芳野会長が続投 3期目へ、事務局長は神保氏:時事ドットコム →連合は女性で初めて会長に就任した吉野会長の続投を推薦すると発表した。3期目に入る。賃上げやジェンダー平等の取り組みが評価された。政治面では支持政党である立憲民主党と国民主党の距離が広がっている。細川政権を誕生させた山岸会長のような動きを期待するのは無理か。

「NHKらしくない」と見解 遺族抗議の戦争ドラマに稲葉NHK会長:時事ドットコム →NHK会長がNHK制作の戦争ドラマに「NHKらしくない」と苦言を呈した。番組はNHKスペシャルで、戦時中の総力戦研究所を取り上げた。所長は自由な言論を封殺したように描かれているが、遺族が「史実と逆」として、BPO(放送倫理・番組向上機構)に申し立てる意向。外部からの持ち込み企画で、NHK側のチェックが甘かったようだ。

*** 「今日の名言」

◎豊臣秀吉(戦国時代の武将。1598年9月18日死去、61歳)

「主従や友達の間が不和になるのは、わがままが原因だ」 「いつも前に出ることがよい。そして戦のときでも先駆けるのだ」 「財産を貯め込むのは、良い人材を牢に押し込むようなものだ」 「人と物を争うべからず、人に心を許すべからず」 「何事も、つくづくと思い出すべきではない」 「人の意見を聞いてから出る知恵は、本当の知恵ではない」 「やるべき事が明確であるからこそ、日夜、寝食忘れて没頭できる」 「一歩一歩、着実に積み重ねていけば、予想以上の結果が得られる」 「負けると思えば負ける、勝つと思えば勝つ。逆になろうと、人には勝つと言い聞かすべし」 「戦わずして勝ちを得るのは、良将の成すところである」 「戦は6、7分の勝ちを十分とする」 「敵の逃げ道を作っておいてから攻めよ」 「降参した者を殺してはいけない」

*** 今週の教養講座(批評理論を知る④)

◎ポストコロニアル批評とは何か  ポストコロニアル批評は、植民地支配の歴史やその後の影響を読み解くための批評方法です。直訳すれば「脱植民地主義批評」。ただし、単に「植民地がなくなった後の世界」を扱うのではなく、植民地支配によって生まれた価値観や差別意識が、独立後も人々の言葉や文化に深く残り続けている点に注目します。つまり「政治的には独立しても、精神的・文化的には今も支配され続けていないか?」という問いを投げかけるのが、この批評の核心です。

歴史的な広がり  この考え方を広めたのは、エドワード・サイードの『オリエンタリズム』(1978年)です。サイードは、西洋が東洋を「神秘的」「後進的」と描くことで、自らを「合理的」「先進的」と位置づけ、支配を正当化してきたと指摘しました。続いてホミ・バーバやガヤトリ・スピヴァクらが、「文化の混成性(ハイブリディティ)」「周縁からの声」といった概念を提唱し、植民地支配の複雑な影響を浮き彫りにしました。こうした理論は文学や歴史研究にとどまらず、人種差別や国際政治を考える上での大きな道具となりました。

社会への影響  ポストコロニアル批評の最大の意義は、「当たり前とされている文化的イメージや価値観を疑うこと」です。たとえば、映画や観光パンフレットに描かれる「エキゾチックなアジア」「陽気で従順な南国の人々」といった表現は、一見魅力的に思えても、支配する側が都合よく作り上げた幻想かもしれません。これを見抜く視点を持つことで、私たちは無意識の偏見から自由になることができます。さらに、この批評は人種差別や移民問題の議論にも直結します。外国人労働者や難民に対して抱く「彼らはこういう人たちだ」というステレオタイプは、過去の植民地主義の延長線上にあることが多いのです。ポストコロニアル批評は、そうした見方を相対化し、「多様な声をどう聞くか」という課題を社会に突きつけます。

今後の使い方  現代はグローバル化が進み、同時にナショナリズムや排外主義が強まっています。SNSでは国や民族に関する偏見が拡散しやすく、国際政治では旧宗主国と旧植民地の力関係が依然として残っています。こうした状況でポストコロニアル批評は、単なる学問ではなく「社会を批判的に読み解く実践知」として活用できます。たとえば、日本社会においても、在日外国人や移民労働者に対するまなざしを考えるとき、この批評の視点が役立ちます。「彼らをどう表象しているか」「そこにどんな力関係が隠れているか」を問うことは、多文化共生を進めるうえで欠かせません。さらに、AIやメディアが再生産する偏見を検証することも、ポストコロニアル批評的な課題です。

まとめると、  ポストコロニアル批評は「植民地の歴史が今も文化や社会にどのように影響しているか」を見抜くための視点です。異文化をどう理解し、共に生きるかを考える上で不可欠な方法であり、グローバル社会をより公正にするための知恵として、これからますます重要性を増していくでしょう。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年9月19日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(18日)

韓国 旧統一教会トップ 特別検察官が逮捕状請求 | NHK | 韓国 →韓国の捜査当局は本気のようだ。旧統一教会のハン・ハクチャ(韓鶴子)総裁の逮捕状を請求した。ユン前大統領夫人にバッグを贈り、大物議員に1000万円の違法献金した容疑。裁判所が逮捕を認めるか審査する。前政権の疑惑追及にとどまるか、疑惑の宗教法人に切り込むか。

トランプ大統領 英国王主催の晩さん会に出席 市民は抗議デモも | NHK  トランプ米大統領、英のパレスチナ承認に反対 :時事ドットコム →自己愛の強いトランプ大統領は国賓として2回目の訪英にご機嫌のようだ。スターマー英国首相はそこを見透かして、ウクライナ支援・反ロシアを働きかける。欧州代表として重要な政治交渉だが、英国のパレスチナ承認では対立する。利害は複雑だ。

盗撮共有疑い、グループ5人目逮捕 北海道の中学教諭「感化された」―愛知県警:時事 教室にカメラ、 小学校教諭逮捕―愛知県警:時事 →愛知県警が盗撮教諭を次々と逮捕している。1人は北海道の中学教諭で、摘発した盗撮グループの一員。逮捕は5人目だ。もう1人は女児の下着を撮る目的で教室にカメラをしかけた名古屋市の小学校教諭。飲酒のJAL機長同様、プロ意識が問われている。

ロシア大統領、最高裁長官に検事総長を推薦 三権分立が形骸化:時事ドットコム →プーチン大統領は亡くなった最高裁長官の後任に検事総長をあてる。検事出身の長官はいるが、総長からの横滑りは異例で、3権分立が形骸化するという指摘がある。前長官はプーチン氏と大学の同級生、今度の長官は同級生でもある政権幹部の信任が厚いという。お友達権力だ。

株価 終値 初の4万5000円超 史上最高値更新 米FRB利下げで | NHK | 株価・為替 →世界同時株高の様相だ。東京株は18日、米FRBの利下げを受けて、終値で初めて4万5000円を超えた。高値警戒感が出ていると言われながら、上昇し続けている。NY株は最高を更新し、きょうの東京株も上昇の見込みだ。一方、米国の利下げは円高材料で、日本では輸入物価の低下が期待される。自民党総裁選もあって金融市場がしばらく揺れそうだ。

*** 「今日の名言」

◎ロバート・レッドフォード(米の俳優。2025年9月16日死去、89歳)

「子どもの頃、誰も僕をイケメンと言ってくれなかった。言ってくれていたら、もっと楽しい時間を過ごせたのに」 「私の家にはあまりお金がありませんでした。両親に連れられて図書館に行き、自分の本を手に入れることは、大きな出来事でした」 「監督として、俳優としての自分は好きになれないでしょう」 「(ポール・ニューマンについて)『明日に向かって撃て!』 (1969)などの撮影では、素晴らしい信頼関係を築くことができました。人生で最も幸せな経験の1つでした。友情の中には、あまりにも素晴らしく、強すぎて、語ることのできないものがある」 「ストーリーテリングは重要です。人類の継続性の一部です。自分が見ている世界よりも大きな世界を見る方法であり、大きな魅力でした」 「活動家が本当に真剣に活動しているかどうかは、スポットライトが当たっていない時にどれだけ長くその活動を続けられるかでわかる」

*** 今週の教養講座(批評理論を知る⑤)

ニュー・ヒストリシズムとは何か  ニュー・ヒストリシズム(新歴史主義)は、1980年代のアメリカで広がった批評方法です。代表的な人物はスティーヴン・グリーンブラットで、シェイクスピア研究から発展しました。従来の文学研究は「作者の意図」や「作品そのもの」に集中していましたが、ニュー・ヒストリシズムは文学を歴史の中に位置づけ、同時代の社会的・政治的な力と結びつけて読み解こうとします。特徴的なのは「歴史=客観的な事実」ではなく、「権力によって形づくられる言説の集まり」ととらえる点です。

歴史的な背景  この理論が登場した背景には、ポスト構造主義の影響があります。ミシェル・フーコーが示した「権力は制度や言説を通じて社会に浸透している」という考え方を受け継ぎ、文学もその権力関係を映し出す一部だと考えました。つまり、文学作品は孤立した芸術作品ではなく、法律、宗教、政治演説、習慣といった社会的言説と同じ土俵に立つのです。

社会への影響  ニュー・ヒストリシズムの大きな社会的意義は、「歴史を多様な声から読み直す」視点を与えたことです。従来の歴史は、国王や政治家など権力者の視点から書かれることが多く、庶民や女性、少数派の声は無視されがちでした。ニュー・ヒストリシズムは文学や記録を通して、そうした「声なき人々」がどのように描かれてきたのかを掘り起こします。これにより「誰が権力を持ち、誰が周縁に追いやられていたのか」が見えてきます。この姿勢は歴史教育や社会運動にも影響し、マイノリティや植民地の人々の歴史を再評価する流れを後押ししました。

今後の使い方  私たちが日常的に接するニュース、広告、SNSの投稿も、単なる「情報」ではなく、ある価値観や権力関係を反映しています。それを「歴史の一部」として批判的に読み解くことで、隠れた力学を見抜くことができます。また、グローバル化の中で各国が自国の歴史をどう語るかは、外交やナショナリズムに直結します。日本でも、戦争や植民地支配の歴史をどう教えるかが政治的争点になっています。ニュー・ヒストリシズムの立場を応用すれば、「一つの歴史観」ではなく、「複数の語り」を意識して歴史をとらえることが可能になります。

AIやデジタル技術が発達する現代では、大量のデータが「歴史の証拠」として利用されます。しかし、それらも中立ではなく、選び方や見せ方に権力が働いています。ニュー・ヒストリシズムは、こうしたデータ社会における「歴史の作られ方」を批判的に考える手がかりとなるでしょう。

まとめると、  ニュー・ヒストリシズムは「文学を社会の歴史的文脈に結びつけ、権力の働きを読み解く」批評です。歴史の中で忘れられた声を拾い上げ、現代の情報環境にも応用できる柔軟な視点を提供します。過去を多角的にとらえるだけでなく、現在をより公正に理解するための批判的な実践でもあるのです。