6月16~20日(教養講座:小林秀雄の『美を求める心』)

~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年6月16日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(13~15日)

イスラエル イランの核関連施設など攻撃 イランもミサイル発射 | NHK | イスラエル →イスラエルが13日にイランを攻撃し、戦闘は拡大の一途だ。ガザ攻撃に始まるネタニヤフ首相の軍事行動は、「過剰」の一語。軍事力で中東での覇権を一気に確立しようと狙っているようだ。自らの保身もあるが、シオニズムの歴史的偉業を達成したいという野望が強い。イランも反撃しているが、空軍力の劣勢は著しい。中東全体を巻き込む大規模な戦争に発展する可能性もあるが、アラブ側の反撃は局地的で、国際社会を味方につけようと動くだろう。

米ロ首脳が電話会談“イスラエル・イラン仲介用意”プーチン氏 | NHK | プーチン大統領 →プーチン大統領がイスラエルとイランの仲介に意欲を示した。ウクライナと戦闘をしていて、「よく言うよ」と思うが、大国意識が鮮明だ。トランプ大統領も同じような感覚を持っている。「大国支配」は世界を覆う大きな潮流になりつつある。

アメリカ 大規模軍事パレード 「王はいらない」トランプ大統領に抗議するデモも | NHK | アメリカ →週末の世界を眺めていると、暗澹とした気持ちになってくる。陸軍創設記念日、トランプ大統領の79歳の誕生日にワシントンで軍事パレードがあった。34年ぶりで、費用は65億円。一方、抗議のデモが全米2100か所以上であり、500万人が参加した。「王様はいらない=ノー・キングス」は「MAGA」に対抗するスローガンになっている。超大国の分断は、世界に何をもたらすのだろうか。

全国民に2万円給付 子ども・低所得者4万円―自民参院選公約、石破首相表明:時事ドットコム →自民党が全国民に2万円の給付金を決めた。参院選挙前で「官製買収」のようなバラマキだが、朝日新聞の世論調査では「評価せず」が67%で評判は良くない。給付の事務を担うのは地方自治体だ。事務作業は膨大で固有業務に支障が出るため、「国が自分で配布すべきだ」という意見が出ている。自治体は国の下請け機関ではない。

日鉄、USスチール買収へ 米と安保協定、「黄金株」発行―トランプ大統領が承認:時事ドットコム →日本製鉄のUSスチール買収問題が決着した。拒否権がある黄金株を米政府が保有し、日鉄が100%子会社にするという。株式取得で2兆円、生産設備などへの投資も2兆円で、当初の10倍に膨らんだ。トランプ大統領はディールに成功した。投資に見合った収益をえられるかどうか、日鉄の経営力が試される。日鉄は米国市場への入場券を得た形で、トランプ政権が外国製品へのハードルを高めるほど、日鉄が得をする構図になる。

*** 「今日の名言」

◎住井すゑ(小説家。1997年6月16日死去、95歳

「勲章を受ける人は信用できない。それをありがたがる人とは付き合いたくない」 「大名とやくざは同類である」 「飲食の接待は受けない」 「なくてはならぬ職業は百姓である」 「誰がやろうと、不条理なことは不条理です」 「子どもという名の新しい生命は、生命体の必然として自ら育つのであって、決して周囲(はた)の思わくや計算や努力で育てられるたちのものではない」 「(教育の要諦は)嘘を教えない、嘘をつかせないこと」 「文化とは、平和を守ることである」 「自分の一生は一番よかったと自分で思えるように、毎日を人間らしく精一杯生きていきたい」 「芸能の中で最高のものが落語。能や歌舞伎は権力の側についている太鼓持ち的な芸だ」 「ものを書くのは40歳からだ。人間は一年増しに賢くなる。知恵は自分から生まれ出るものだ」 「定年制は資本主義の落とし子であり、それを認めるから老後になってしまう。人間の天職は人間であることであり、人間ひとすじに生きている場合は、人間という思想を持っているから生涯、現役なのだ」

*** 今週の教養講座(小林秀雄の美を求める心①)

今週は評論家の小林秀雄(1902~83)を味わう。「真贋」(世界文化社、2000)から、「美を求める心」(1957)を紹介する。字数の都合で、一部短縮している。

近頃は展覧会や音楽会が盛んに開かれて、絵を見たり、音楽を聴いたりする人の数も増えてきた。若い人たちから、絵や音楽について意見を聞かれるようになりました。近頃の絵や音楽は難しくてよくわからぬ、ああいうものがわかるようになるには、どういう勉強したらいいか、どういう本を読んだらいいかという質問が大変多い。私は美術や音楽に関する本を読むことも結構であろうが、それよりも何も考えずに、たくさん見たり、聞いたりすることが第一だといつも答えています。

絵や音楽を解ると解らないがもう間違っている。絵は眼で見て楽しむものだ。音楽は耳で聴いて感動するものだ。頭で解るとか解らないとか言うべき筋のものではありますまい。何をおいても見ること、聴くことです。わかりきった話だと読者はいうでしょう。ちっともわかりきった話ではない。おそらく、よくよく考えてみたことはないだろうと言いたいのです。

昔の絵は見ればよく解るが、近頃の絵は、例えば、ピカソの絵を見ても何がなにやらさっぱり解らないと、言いたいでしょう。昔風の絵を見て解るのは、そういう絵を見慣れているということでしょう。ピカソの絵は見慣れない形をしているからでしょう。だから、眼を慣らすことが第一です。頭を働かすより、眼を働かすことが大事です。

見るとか聞くとかを簡単に考えてはいけない。健康な目や耳を持ってさえいれば、誰にでもできるやさしいことだ。頭で考えることは難しいかもしれないし、考えるのには努力がいるが、見たり聞いたりすることに何の努力がいるか。そんなふうに考えがちですが、それは間違いです。見ることも聞くことも、考えることと同じように、難しい努力を要する仕事です。

川上選手は打撃の調子のいい時は、球が目の前で止まって見えると語ったそうだ。そんな風に球が見えてくるためには、目を働かせる努力と練習がどれほど必要だったかを考えてみるべきです。画家でも音楽家でも同じで、努力の結果、普通の人には信じられないほどの色の微妙な調子を見分け、音を聞き分けているに違いないのです。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年6月17日号(転送禁止)~~~

◎ダイヤモンド・オンラインで連載中「戦争と東京六大学」の3回目です。舞台は慶應義塾大学。戦時中に総長を務めたのは小泉信三氏です。リベラリストとして知られていましたが、戦時中は好戦家に転じ、塾生を激しく鼓舞しました。豹変の背景には深い理由がありました。終戦後、小泉氏は後悔を隠さず、反省の念は皇太子だった上皇の教育につながったようです→ 上皇を教育したリベラリスト・小泉信三が、戦中の慶大塾長時代に「好戦家」へと豹変した“止むに止まれぬ事情” | 戦争と東京六大学~異論はどう封殺されたか | ダイヤモンド・オンライン

***デイ・ウォッチ(16日)

イスラエルとイラン 攻撃の応酬続く さらなる激化懸念 | NHK | イスラエル →イスラエルとイランの戦闘は収まらない。イスラエルによるイラン最高指導者ハメネイ師の暗殺計画情報が明らかになった。トランプ大統領が反対したという。同大統領は停戦を呼びかけているが、事態は動かない。ソ連が崩壊し、米国一強から米中対立に変質した世界だが、急速に多極化が進行している。

G7サミットが開幕 初日は世界経済見通しなど討議 “トランプ関税”が焦点に | NHK | G7サミット →「法の支配」を掲げる平和勢力として期待されるG7だが、トランプ大統領の離反で影響力を弱め、結束も危ぶまれる。トランプ大統領も単独では影響力が限られる。G7サミットに大きな期待もできない。どう見ても世界は混迷に向かっている。奈落の底かもしれない。

コメ「作況指数」廃止 収穫量調査の手法変更―農水省:時事ドットコム →農林水産省の統計は伝統が長く、かなり手厚かった。組織も充実、言い換えれば肥大化していた。作況指数をいきなり廃止する前に検証が必要ではないか。小泉首相のスピード感は高く評価されているが、この問題で熟慮はあったのだろうか。コメ価格は前週比48円下落し、5キロ4176円。値下がりは3週連続。

ドジャース大谷翔平 日本時間17日 パドレス戦で先発投手復帰 | NHK | #大谷翔平 →大谷の二刀流がきょう復活する。日本時間午前11時からのパドレス戦に先発し、1イニングを投げる予定。NHKは総合テレビで中継する。予想より早い復活で、後半戦に期待が膨らむ。

食中毒で営業停止中に弁当販売し再び食中毒、ミシュラン掲載の日本料理店の経営者ら3人を容疑で逮捕 : 読売新聞 →ミシュランガイドにも掲載された日本料理店が、食中毒を繰り返していた。営業停止中に弁当を販売し、再び食中毒になった。何があったのか。転落の物語があるのか。続報を待ちたい。

日本学術会議の会長経験者6人 法律の成立を受け声明 | NHK | 日本学術会議 →学術会議の会長経験者が「石破首相が学問の自由や独立性と自主性の尊重を約束することを強く要請する」と声明を発表した。自由の問題はまず当事者が頑張ることが大切だが、学術会議は国会周辺で座り込み抗議をし、抵抗の姿勢を示した。自由は思っているよりもろい。国民も自分事としてとらえたい。

*** 「今日の名言」

◎トーマス・クーン(米の哲学者、科学者。1997年6月17日死去、73歳

「次世代のパラダイムに早くから気づくためには、多くの反証を切り捨てる必要がある。新しいパラダイムがまだ多くの問題を抱えているときに、古いパラダイムを打ち破ることを確信しなければならない。このような判断は、直感によってのみ到達しうる」 「天動説が主流を占めていた頃、天動説に根ざして天文学的な事象を予測するさまざまなモデルが開発された。地動説に立てばそれらの数式やモデルがもっと無理なく使えるということは、コペルニクスとケプラーが登場するまでわからなかった」 「いつのいかなる分野でも、科学者は世の中の動きについての基本的な見方を共有するものだ。その見方が、その時点での支配的パラダイムなのである。ほとんどの実験はその見方の枠内で行われ、いくつかの小さな進歩が生まれる」 「新しいパラダイムの基本的発明を遂げた人は、ほとんど非常に若いか、パラダイムの変更を促す分野に新しく入ってきた新人のどちらかである」 

*** 今週の教養講座(小林秀雄の美を求める心②)

私たちが生活の中で、どんな具合に目を働かせているかを考えてみるとよい。ただ物を見るために物を見る。そういう風に眼を働かすことが、どんなに少ないかすぐ気がつくでしょう。時計を見るのは時間を知るためだから、針しか見ない。りんごは食べ物だが、どんなに美しい色合いをしているかつくづく眺めたことのある人は少ない。

ロンドンのダンヒルの店で、古風ないかにも美しい形をしたライターを見つけて買ってきた。書斎の机の上に置いてあるから、今までたくさんの来客がタバコの火をつけたが、火をつけるついでに「これは美しいライターだ」と言ってくれた人は1人もいない。黙って1分間も眺めた人はいない。試みに黙ってライターの形を1分間眺めてみるといい。1分間にどれほどたくさんのものが目に見えてくるかに驚くでしょう。1分間がどれほど長いものかに驚くでしょう。見ることはしゃべることではない。言葉は眼の邪魔になるものです。

例えば、野原を歩いて1輪の美しい花が咲いているのを見たとする。すみれの花だとわかる。なんだ、すみれの花かと思った瞬間、もう花の形も色も見るのをやめるでしょう。すみれの花という言葉が諸君の心の内に入ってくれば、もう眼を閉じるのです。言葉の邪魔の入らぬ花の美しい感じをそのまま持ち続け、花を黙って見続けていれば、花はかつて見た事もなかったような美しさを、それこそ限りなく明かすでしょう。画家は皆、そういう風に花を見ているのです。花の絵は、画家が花を見たような見方で見なければなんにもならない。諸君は物の名前が知りたくて見るのです。すみれの花だとわかれば、もう見ません。これは好奇心であって、画家が見るという見ることではありません。画家が花を見るのは、好奇心からではない。花への愛情です。

美しい自然を眺め、美しい絵を眺めて感動した時、その感動はとても言葉で言い表せないと思った経験は誰にもあるでしょう。何とも言えず美しいというでしょう。この何とも言えないものこそ、絵かきが直接に諸君の心に伝えたいと願っているのだ。美しいものは黙らせます。美には人を沈黙させる能力があるのです。これが美の持つ根本の力であり、根本の性質です。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年6月18日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(17日)

トランプ大統領 中東情勢を受けG7サミットを切り上げ帰国 日本時間午後6時ごろワシントン近郊に到着 | NHK | トランプ大統領 →G7サミットに参加していたトランプ大統領は、日程を切り上げて帰国した。中東情勢への対応を理由にしているが、いっしょに議論したくないのだろう。G7は空中分解状態と言っていい。

イスラエルがイラン国営放送局攻撃 イラン“全面戦争の準備” | NHK | イスラエル →テヘランの国営放送局が攻撃された映像は衝撃的だった。空軍力ではイスラエルが圧倒している。イランは米国などに停戦の仲介を要請しているが、イスラエルは手を緩めないだろう。トランプ大統領は終結を訴えているが、これまでの言動から信用は低下している。

日銀 国債減額ペース緩める措置 植田総裁「金利変動などに配慮」 | NHK | 日本銀行(日銀) →日銀が国債買い入れの減額ペースを緩めることを決めた。長期金利が急上昇しており、沈静化を狙う。最近の債券市場の動揺は、アベノミクスの副作用だが、植田総裁は「副作用が顕在化しないように注意深く進めている」と述べた。

関税措置、合意至らず 日米首脳会談、閣僚協議を継続:時事ドットコム →日米首脳会談が開かれたが、予想通り、進展はなかった。日本が国益と強調する自動車関税をめぐり溝が埋まっていない。日本は対米投資や米国製品の購入などのパッケージを提案している模様だが、折り合わない。長期化して有利になるのはどちらだろうか。

王族の汚職巡り記者処刑 国際記者団体が非難声明―サウジ:時事ドットコム →イスラエルと接近しているサウジアラビアは、アラブでも最も強権的な国家だ。王族の汚職を報じた記者が、7年間の拘束の末、殺された。拘束中は家族や弁護士とも面会できなかった。

群馬・静岡・神奈川で高齢女性が熱中症で死亡、いずれも畑で倒れる…65地点で猛暑日 : 読売新聞 →早くも猛暑の季節がやって来た。暑さに慣れていないので、熱中症も起きやすい。暑さはしばらく続くという。ご自愛ください。

*** 「今日の名言」

◎マキシム・ゴーリキー(ロシアの作家。1936年6月18日死去、68歳

「才能とは、自分自身を、自分の力を信じることである」 「信じるのだ。こんなちっぽけな人間でも取り組む意志さえあれば、どんなことでもやり遂げられるということを」 「自分で自分を尊敬できるような生活をしなければならない」 「人間は憐れむべきものではない。尊敬すべきものだ」 「人生には二つのあり方しかない。腐っているか、それとも燃えているかだ」 「すべての物事には終わりがある。したがって、忍耐は成功を勝ち得る唯一の方法である」 「我々にとって、最も冷酷な敵は自らの過去である」 「自分の真の力を発揮できるのは、自分を信じているときだけだ」 「行動を言葉にするより、言葉を行動に移す方がずっとむずかしい」 「仕事が楽しみなら人生は極楽だ。仕事が義務なら人生は地獄だ」 「どんな些細な勝利であっても、一度でも自分に勝つと人間は急に強くなれるものだ」 「真の美というものは、真の知恵と同じく、およそ簡明で、だれにでも分かりやすいものだ」

*** 今週の教養講座(小林秀雄の美を求める心③)

音楽についてたくさんの知識を持ち、様々な意見を吐ける人が、必ずしも絵や音楽がわかった人とは限りません。解るという言葉にも、いろいろな意味がある。人間は種々な解り方をするものだからです。絵や音楽が解るというのは、絵や音楽を感ずることです。愛することです。知識の浅い、少ししか言葉を持たぬ子どもでも、何でもすぐ頭で解りたがる大人より、美しいものに関する経験はよほど深いかもしれません。すぐれた芸術家は、大人になっても子どもの心を失っていないものです。

諸君は言うかもしれない。絵や音楽の表わす美しさは、言うに言われぬものかもしれない。これを味わうには、言葉は邪魔かもしれない。しかしそれなら、詩はどうなのか、詩は言葉でできているではないか、と。だが詩人とっても同じことなのです。なるほど主人は言葉で詩を作る、しかし、言うに言われぬものを、どうしたら言葉によって表すことができるかと、工夫に工夫を重ね、成功した人を詩人と言うのです。

田子の浦ゆ打ち出てみれば真白にぞ富士の高嶺に雪は降りける

これは山部赤人の有名な歌で、誰でも知っている。「ゆ」は、現代の言葉で「から」という意味です。諸君がこの歌を読んで美しいと思うなら、諸君に美しいと思わせるものは、この歌の文字通りの意味ではないでしょうか。やはり、富士を見た時の赤人の感動が、諸君の心を打つからではありませんか。詩人の使う言葉も、諸君が日常使っている言葉も、同じ言葉だ。言葉というのは勝手に一人で発明できるものではない。歌人でも、皆が使って、よく知っている言葉を取り上げるよりほかはない。

ただ歌人は、日常の言葉を綿密に選択し、さまざまに組み合わせて、はっきりした歌の姿を作り上げるのです。日常の言葉は、この姿、形の中で、日常まるで持たなかった力を得てくるのです。赤人の歌が、どんなに楽々と自然に、まるで赤人の感動がそのまま言葉となっているように思われようとも、実は大変な苦労が払われているのです。苦心など表に現れぬところが大歌人の苦労です。

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***デイ・ウォッチ(18日)

トランプ大統領“イランへの軍事作戦 やるかも やらないかも” | NHK | イラン →「狂気」のネタニヤフ首相は、アラブ社会との戦いに米国を引きずり込もうとしている。トランプ大統領は平和志向だが、強い信念があるわけではない。イランとの交渉停滞にいらだって、核施設を攻撃する特殊爆弾「バンカーバスター」を提供し、参戦する可能性は小さくない。そうなればイランは国際的な圧力を強めるため、ホルムズ海峡を封鎖して世界経済を混乱させ、日本はじめ世界に大きな影響が及ぶ。アラブとユダヤの対立は、聖地エルサレムの争奪を巡って1400年近い長い歴史がある。力で解決しようとすれば、怨念が何世代先に残る。中東問題は武力では絶対に解決できない。

日本被団協 ノーベル賞受賞後初の定期総会 “核兵器廃絶”改めて訴え | NHK | 核・ミサイル →ノーベル賞を受賞した被団協が「核施設への攻撃は絶対に許されない。80年前のヒロシマ・ナガサキでの原爆を体験した被爆者は強く抗議し、停戦を呼びかけます」と声明を発表した。日本が背負った歴史的立ち位置といえるだろう。

別姓法案先送り、与野党調整 企業献金、継続審議に:時事ドットコム →終盤国会の焦点だった夫婦別姓と企業献金という2つの問題が、継続審議になる。先送りして雲散霧消するのか、真剣に審議を再開するのか。政治としては、重要アジェンダとして選挙で国民に問うべきだが、そこまでのスキルとエネルギーが足りない。

財金委員長解任を可決 衆院で初、ガソリン減税で対立―後任に立民・阿久津氏:時事ドットコム →衆議院常任委員会の委員長が解任された。現憲法になって初めてという歴史的出来事だが、今後にどう影響するだろうか。野党がまとまった意義は新しいが、ガソリン税の暫定税率廃止という個別事情で、会期末も迫って可決の可能性はない。

NHK発表 10月開始の新たなネットサービス名称は「NHK ONE」 | NHK | IT・ネット →NHKがネットサービスを「NHK ONE」の名称で本格化する。民放は「民業圧迫」を理由に反対していたが、ネット技術の活用を阻止する主張に世論の支持が広がらない。長い目で見ればNKH一強が進むのは確実で、民放は組織やコンテンツの改革を迫られる。

*** 「今日の名言」

◎トーマス・J・ワトソン(IBM初代社長。1956年6月19日死去、82歳

「私は天才ではないが、得意とすることもある。私は極力、得意分野を離れないようにしてきただけだ」 「早く成功したいなら、失敗を2倍の速度で経験することだ」 「エクセレントな人間になるためにかかる時間は1分だ。今、この瞬間から『エクセレントでない』ことは絶対にしないと自分自身に誓い、どんなに圧力がかかっても決して妥協しなければ、エクセレントになれる」 「IBMのセールスマンには妻子から敬われる人物になってもらいたい。母親が息子の職業を尋ねられたとき、言葉を濁したりしなければならないようでは困る」 「考える前に飛ぶことだ。ビジネスはゲームだ」 「不満や改めたいプランがあるなら、直接僕のところへ持ってきなさい。一緒に考えようじゃないか」 「完全に自信がなくても、自分の考えを論争の渦中にさらけ出すんだ。率直に意見を言い、変わり者というレッテルを貼られるよりも、従順という汚名を付けられることを恐れなさい。自分にとって重要に見える問題のために立ち上がり、どんな困難にも立ち向かいなさい」

*** 今週の教養講座(小林秀雄の美を求める心④)

日常生活でどんな風に言葉を使っているかを反省してみてください。「タバコをください」と誰かに言って、タバコが手に入ったら言葉はもう用はない。タバコをくださいという言葉が相手に通じたら、もうその言葉に用はないでしょう。相手も言われた言葉が理解できたら、もうその言葉に用はないでしょう。日常生活では言葉が用事を足りたら、消えてなくなるふうに使われている。言葉は人間の行動と理解とのための道具なのです。

歌や詩は、何かしろと命じますか。歌に接して何をするのでもない。何を理解するのでもない。その美しさを感ずるだけです。何のために感じるのか。ただ美しいと感じるのです。歌や詩は、わかってしまえば、それでおしまいというものではないでしょう。では、歌や詩は、わからぬものなのか。そうですわからぬものなのです。このことをよく考えてみてください。赤人の歌をほかの言葉に直して歌に置き換えてみることができますか。それは駄目です。そういう意味では、歌はまさにわからぬものなのです。

歌は意味の分かる言葉ではない。感じられる言葉の姿、形なのです。言葉には意味もあるが、姿、形というものもあるということをよく心に留めてください。言葉の姿といっても、目に見える一時の格好ではない。心に直に映ずる姿です。この歌の姿ということは、古くから日本の歌人が、歌には一番大切なものと考えてきたものです。西洋では詩のフォームと言い、今は形式と訳されて使われておりますが、日本に古くからある姿と訳す方がよほどいいわけなのです。

それはともかく、姿のいい人があるように、姿のいい歌がある。歌人の歌の言葉は、真っ白な雪の降った富士山のような美しい姿をしているのです。だから赤人は、富士を見た時の感動を言葉に現した、あるいは言葉にしたと、いうよりもそういう感動に、言葉によって姿を与えたと言った方がよいのです。感動というものは、読んで字のごとく、感情が動いている状態です。動いているが、やがて静まり消えてしまうものなのです。そういう強いが、不安定な感動を、言葉を使って整えて、安定した動かぬ姿にしたと言った方がいいのです。

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***デイ・ウォッチ(19日)

“トランプ大統領がイランへの攻撃計画を承認 最終的な命令を下すのは保留” 米報道 | NHK | イラン →トランプ政権が攻撃計画を背景にイランに譲歩を迫っている。イランは誇り高い中東の大国で、メンツを重視する。トランプ大統領は「無条件降伏を」と迫っているが、逆効果だろう。2週間以内に決断するという。キッシンジャー元国務長官のように裏で調整しているような人物はいるのだろうか。東洋的な根回しが必要だ。

日本製鉄 USスチール買収完了で会見「黄金株を提案し合意に至った」 “合理的な判断”強調 | NHK | 日本製鉄 USスチール →日本製鉄の橋本会長がUSスチール買収で記者会見し、「大統領の英断」「ウィンウィンだ」「経営の自由度は確保されている」と強気に成果を誇った。米国政府がどう出るかは未知数だが、実績で有無を言わせない戦略だろう。真価はこれから問われる。

全国銀行協会 “貸金庫で現金預からない” 規定のひな型を策定 | NHK | 金融 →かつて護送船団と言われた銀行業界だが、その体質は変わっていないようだ。貸金庫で現金を預からないように横並びで動き、全銀協が規定のひな型まで作った。不祥事があったのはごく一部なのに業界で動く。自行で考えて方針を決め、規定も自行で作ればいい。それもできない銀行って何だろう。

立民、内閣不信任案見送り 参院選単独、来月20日投開票―石破首相、米関税「国益懸けた交渉」:時事ドットコム →野党の内閣不信任案提出は形骸化していた。政権交代の展望もないのに提出するのは意味がないだろう。今回は賢明な判断をしたが、次につなげられるかどうか。7月3日公示、20日投開票の参院選が当面の主戦場だ。

NBA レイカーズ経営権 ドジャースのオーナーに1兆円超で売却へ | NHK | #バスケットボール →米国プロバスケットボールの名門レイカーズが、ドジャースオーナーに売却される。同じロサンゼルスで、金額は1.45兆円以上。米国のプロスポーツ史上最高額という。日本がマネできそうもないが、スポーツで社会を楽しくする経営姿勢は見習いたい。

*** 「今日の名言」

ニッコロ・マキャベリ(イタリアの政治思想家。1527年6月21日死去、58歳

「運命の女神は、積極果敢な行動をとる人間に味方する」 「大いなる意欲のあるところに、大いなる困難はない」 「好機というものは、すぐさま捕まえないと逃げ去ってしまう」 「危険を伴わずに、偉大なことは何も成し遂げられない」 「他者を強力にする原因を作るものは、自滅する」 「決断に手間取ることは、常に有害である」 「決断力に欠ける人々がいかに協議しようとも、そこから出てくる結論は常に曖昧であり、それゆえ、常に役立たない」 「継続的な成功を求める者は、時代に合わせて行動を変えなければならない」 「君主たるものは才能ある人材を登用し、その功績に対して十分に報いることを知らねばならない」 「敵に対する態度と味方に対する態度は、はっきり分けて示せ」 「個人でも国家でも同じだが、相手を絶望と怒りに駆り立てるほど、痛めつけてはならない」 「戦いを避けるために譲歩しても、戦いを避けることはできない。譲歩しても相手は満足せず、譲歩するあなたに敬意を感じなくなり、より多くを奪おうと考えるからだ」

*** 今週の教養講座(小林秀雄の美を求める心⑤)

私たちの感動というものは、自ら外に現れたり叫びとなって現れたりします。感動は消えてしまうものです。例えば、悲しければ泣くでしょう。でも、あんまりおかしい時でも涙が出るでしょう。涙は歌ではないし、泣いていて歌はできない。悲しみの歌を作る詩人は、自分の悲しみをよく見定める人です。悲しいと言って、ただ泣く人ではない。自分の悲しみに溺れず、負けず、これを見定め、はっきりと感じ、言葉の姿に整えて見せる人です。

「美を求める心」という大きな課題に対して、私は小さな事ばかりお話ししているようですが、美とは何かという面倒な議論の問題ではなく、私たちの小さなはっきりした美しさの経験が根本だと考えています。美しいと思うことは、ものの美しい姿を感じることです。美を求める心とは、物の美しい姿を求める心です。音楽は音の姿を耳に伝えます。文学の姿は心が感じます。姿とはそういう意味合いの言葉です。あの人は姿のいい人だとか、様子のいい人だとかいいますが、それはその人の姿勢が正しいとか格好の良い体つきをしているという意味ではないでしょう。その人の優しい心や人柄も含めて姿が良いと言うのでしょう。

そういう姿を感じる能力は誰にでも備わり、姿を求める心は誰にでもあるのです。ただこの能力は私たちにとってどんなに貴重な能力であるか、この能力は養い育てようとしなければ衰弱してしまうことを知っている人は、少ないのです。今日のように知識や学問が普及し尊重されるようになると、人はものを感ずる能力を、知らず知らずのうちに疎かにするようになるのです。一輪の花の美しさを、よくよく感ずるということは、難しいことだ。人間の美しさ、立派さを感じることは、やさしい事ではありますまい。

知識がどんなにあっても、優しい感情を持つとは、物事をよく感じる心を持っている人ではありませんか。神経質で物事にすぐ感じても、イライラしている人がある。そんな人は、優しい心を持っていない場合が多い。美しいものの姿を正しく感じる心を持った人ではない。ただビクビクしているだけなのです。感じるということも、学ばなければならないものなのです。立派な芸術というものは、正しく、豊かに感じることを、人々にいつも教えているものなのです