12月8~12日(教養講座:田中均の日本外交3つのタブー)

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***デイ・ウォッチ(5~7日)

中国軍戦闘機が自衛隊機にレーダー照射 強く抗議 小泉防衛相 | NHKニュース  →日中政府の対立がエスカレートしている。亀裂はさらに大きくなりそうだが、起点は高市首相の「失言」だ。政府同士のメンツ競争になっている。「高市首相は発言撤回を」と国内で言えば、「それでも日本人か」という空気が一部で生まれているが、日本は異論を認める国だ。日本政府は中国の威圧ぶりを強調することで、国内への影響を小さく見せたい思惑がある。両国政府は対立を早く解消し、民間交流を活発化させる責務がある。

ネットフリックス 米ワーナーの事業 11兆円余で買収合意 | NHKニュース  米メタ メディアと提携 生成AIに最新ニュース活用 | NHKニュース  →米国でメディアをめぐる大きな動きがあった。ネットフリックスがワーナーのスタジオと動画事業を買収。動画配信ビジネスの世代交代が鮮明だ。メタはCNNなどとニュース記事提供で提携する。プラットフォーマーとメディアは対立関係にあったが、変わりつつある。

サッカーワールドカップ 日本代表はオランダ チュニジアなどと同組に | NHKニュース →来年6月に北米3カ国で開かれるサッカーワールカップの対戦が決まった。日本(18位)は、オランダ(7位)、チュニジア(40位)、欧州予選プレーオフ勝者のF組。森保監督は「大変厳しい組になった。優勝の目標は共有できている」とコメントした。

首都圏一連の強盗事件の指示役か 千葉 市川の強盗傷害疑い 4人逮捕 | NHKニュース  →警察が威信をかけて捜査していた首都圏強盗事件で、指示役とみられる4人を逮捕した。26歳と27歳で、秘匿性の高い9つの通信アプリを使って指示を出していた。強盗事件は18件、被害額は計2000万円相当、1人死亡、21人けが。逮捕者は51人という空前の規模だ。

サッカーJ1 鹿島アントラーズ 9年ぶり9回目優勝 歴代最多更新 | NHKニュース →サッカーJ1は鹿島アントラーズが歴代最多優勝を記録した。勝てば優勝の1戦を2対1で制した。9年ぶり9回目の優勝。2位の柏レイソルは1対0で勝ったが、及ばなかった。鹿島のテクニカルアドバイザーを務めるジーコも祝福にかけつけた。衰えは隠せなかった。

高校野球 7イニング制“2028年のセンバツをめどに導入”報告書 | NHKニュース  →高校野球が様変わりしそうだ。反対意見も多く、さらに慎重に検討するが、7イニング制を2028年のセンバツ大会をメドに導入する報告書が提出された。最近の酷暑を考えれば、やむを得ないだろう。健康や教育優先が大義名分だ。

*** 「今日の名言」

◎夏目漱石(小説家。1916年12月9日死去、49歳)

「焦ってはいけません。ただ牛のように、図々しく進んでいくのが大事です」 「君、弱い事を言ってはいけない。僕も弱い男だが、弱いなりに死ぬまでやるのである」 「運命は神の考えることだ。人間は人間らしく働けば、それで結構である」 「何か素晴らしいことを達成するための努力というものは、決して無駄にはならないということを覚えていなさい」 「のんきと見える人々も、心の底を叩いて見ると、どこか悲しい音がする」 「自分の弱点をさらけ出さずに人から利益を受けられない。自分の弱点をさらけ出さずに人に利益を与えられない」 「自分が幸福でないのに、他を幸福にする力があるはずがありません」 「自らを尊しと思わぬ者は、奴隷なり」 「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい」 「愛嬌というのはね、自分より強いものを倒す柔らかい武器だよ」 「人間の目的は、生まれた本人が本人自身のためにつくったものでなければならない」

*** 今週の教養講座(田中均講演・日本外交3つのタブー①)

 小泉首相の電撃的な北朝鮮訪問を根回しした元外交官の田中均氏が10月17日、日本記者クラブで講演した。「タブーを破った外交官 田中均回顧録」(岩波書店)の出版をきっかけにしたもので、要約を紹介する。これまでと今後の日本外交について、本音を語った内容だ。詳しくは同クラブHP参照。

「新著と3つのタブー──外交の本音を語る理由」

外交の話をするときに、あまり表に出てこない「タブー」についてまず整理したいと思います。新しく出した本のタイトルを『タブーを破った外交官』としたのは、日本外交が抱えている構造的な問題を、少し遠慮なく語ってみようという思いからです。タブーと言っても怪しい話ではありません。現場で働いていると、本当は重要なのに、政治的・制度的な理由で語られにくい領域がいくつもあります。

大きく分けると3つあります。1つ目はアメリカの話。日本にとってアメリカは同盟国で、最も重要な相手ですが、その実態を語るのは案外難しい。アメリカの要求や行動が、時には理不尽に感じることもあります。ところが、日本側がその現実を正確に語ろうとすると、国内では反発を招いたり、政治的なメッセージとして誤解されたりする。だから本音の部分が表に出にくい。

2つ目は政治、つまり政官関係です。本来、外交は政治と官僚が補完し合って進めていくものですが、近年は官邸の権限が非常に強くなり、官僚が萎縮する傾向が強まっています。専門的な判断を言いにくくなる空気がある。これは、安全保障や外交の質に直結する問題です。

3つ目が世論です。外交はどうしても国民感情とぶつかります。たとえば拉致問題では、強い批判が寄せられ、冷静な議論がしにくい状況が生まれました。最近はSNSが拍車をかけていて、怒りや不信感が一気に広がることがある。こうなると、長期的な視点で外交を考える余裕が失われてしまいます。

こうした3つのタブーは、単なる「禁句」ではなく、日本外交の見えにくい土台そのものです。そこを直視しないと、日本がどこに向かうべきかという議論が成り立たない。だから今日は、まずこの3つを共有しておきたいと思いました。外交は、理想論だけでは動きません。現場で実際に起きている力学や制約を理解しておくことが、未来を考えるうえでどうしても欠かせない。ここから先の話は、その前提に立って進めていきます。

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***デイ・ウォッチ(8日)

【震度6強】八戸など青森県の被害の状況 6人けが(9日1:00) | NHKニュース  北海道・三陸沖後発地震注意情報を発表  | NHKニュース →8日午後11時15分ごろ、青森県沖を震源とする地震が発生。おいらせ町などで震度6を記録した。気象庁は後発地震情報を発表した。巨大地震が発生する可能性が相対的に高まっているという情報で、2022年12月に運用が始まって初。重傷1人、軽傷8人の情報があるが、さらに広がりそうだ。首相が官邸に入り、官房長官らが会見した。

NHK新会長に井上樹彦副会長が就任へ 内部からの起用は18年ぶり:朝日新聞 →NHK会長に政治部出身の井上氏が昇格する。18年ぶりの内部起用だが、政治部出身者で会長になった島桂次、海老沢勝二両氏はいずれも不祥事で退任した。剛腕ぶりが反感を浴びたが、井上次期会長は高市政権を支える麻生元首相が後ろ盾といわれる。NHK予算は国会承認が必要で、政治部が力を持ちがちだ。誰のためのNHKになるか。

真珠湾攻撃から84年 ハワイの記念公園で追悼式典 | NHKニュース  →真珠湾攻撃が始まった午前7時55分、約3000人の出席者が黙とうをささげた。米軍関係者や攻撃を指揮した山本五十六の出身地でホノルル市の姉妹都市である新潟県長岡市の磯田達伸市長、長崎の被爆者らが参加。米海軍ハワイ司令官が「力による平和を追求していく」と決意を述べた。米国はやはり「力」か。

中国、捜索用で正常な行為 空自機レーダー照射:時事ドットコム レーダー照射「意図的」 対中非難、与野党で相次ぐ:時事ドットコム →空自機へのレーダー照射で、中国は「正常な捜索用行為」と反論。日本の与野党は一致して中国を非難している。目撃した第三者もいないので、国民にはどちらが本当かわからない。冷静に見守るしかない。

マッチングアプリで独身装い交際は「貞操権」侵害、既婚男性に151万円の賠償命令…東京地裁 : 読売新聞 →あまり聞かない「貞操権」が争点になった。女性は「既婚者お断り」と明記してマッチングアプリに登録。連絡してきた男性と性的関係を持ったが、男性に妻子がいたことがわかった。782万円の訴えに対し、判決は151万円の支払い。少なくないか。

パナソニックHD 野球部の活動 来季で休止発表 構造改革の一環 | NHKニュース  →社会人の名門野球部がリストラで消える。パナソニック野球部は、都市対抗野球57回、日本選手権43回出場した強豪。世界の盗塁王・福本豊、首位打者2回の加藤秀司、西武の5連覇に貢献した潮崎哲也、高校野球の解説・監督の鍛治舍巧らが輩出した。

*** 「今日の名言」

◎千葉周作(江戸時代の剣術家。1855年12月10日死去、62歳?)

「極意というものは自分のまつ毛のように、身近にあるが見つけるのがむずかしいものだ」 「剣術の上達には二通りの道がある。前者は理屈から覚えようとする。後者は体で覚えようとする。どちらから入っても良いが、前者の方が後者より上達が早い」 「相手には必ず得意、不得意の技がある。試合中に相手の得意技を見つけたら、逆にこちらからその技を仕掛けてやる。そうすると、先手を取られた相手はすくんでしまい、その技を繰り出すことができなくなる」  「初心者の間は、練習方法についてあれこれ正否を論じても仕方ない。ただ一心不乱に師匠の教えに従って稽古すれば、自然と上達の域に達するものだ」 「真剣勝負の時、何も考えず、立ち合ったらすぐ相手の懐に飛び込み、そのまま腹をめがけて突けば、勝利は疑いない。心得ておくべきである」 「切り結ぶ 刃の下ぞ 地獄なる 身を捨ててこそ 浮かぶ瀬もあれ(真剣勝負するときは、捨て身の覚悟で取り組めば、危機を脱し活路を見出せる)」

*** 今週の教養講座(田中均講演・日本外交3つのタブー②)

「タブー① 米国──日米摩擦と『隙を見せない日本を』」

アメリカとの関係がなぜタブーになるかというと、日本外交の根幹を握っている相手だからです。いいことも悪いこともすべてアメリカと向き合わなければいけない。しかし、その全体像を語ろうとすると非常にセンシティブな問題になります。若いころ、日米経済摩擦の最前線にいました。自動車、鉄鋼、半導体と、アメリカの要求は非常に厳しく、時には「これは政治圧力だな」と感じるほど一方的な場面もありました。でも、日本が反論しにくい理由がありました。自分たちの市場が閉じていると指摘される余地があった。

だから私は、市場を開いて「隙をつくらない日本」にしていかなければいけない、と考えていました。外交は交渉だけで決まるわけではなく、内側の制度や構造が整っているかどうかが、相手への説得力につながる。アメリカを説得するには、日本の側が実行力と整合性を持っていなければならない。安全保障でも同じです。第一次北朝鮮核危機のとき、アメリカは本気で軍事行動を検討していました。そのとき日本は、避難誘導も防護措置もほとんど準備できていない。

これでは同盟国とは言えない。アメリカがこちらをどう見ているのか、その冷たい現実を突きつけられました。アメリカとの関係は、反発するか依存するかの2択ではありません。重要なのは、自分の立場をしっかり固めて、対等に議論できるだけの力を持つことです。アメリカは「言うことを聞く相手」を評価するのではなく、「約束を守る相手」を評価します。この原則を理解して動くことが、日本の外交の底力を支えることになります。

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