2026年9月28日~10月2日(教養講座:米中首脳会談の歴史)

2026.09.28メルマガ

~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年9月28日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(25~27日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)

◎米中首脳会談でAI対話の枠組み創設、「同盟国」としての歴史を確認…中国重視の台湾問題には触れず : 読売新聞 →米中首脳会談を受けて、米国が合意事項を公表した。AIは「スーパーインテリジェンス」と呼ぶという。定着するだろうか。米中は第二次世界大戦で「同盟国」として戦ったとした。日本国内で異論が出ているが、高市首相の台湾有事発言を引き金に中国が情報戦を仕掛けている。高市首相は発言を撤回してまともな外交をするのが筋だろう。台湾問題には触れていない。極めて不自然だが、年内にまだ2回会談する。新たな方向性が出るかもしれない。1972年のニクソン・毛沢東会談の公開情報では台湾に触れていないが、実は突っ込んだやり取りがあった。

◎高市首相、トランプ氏と20分間電話会談…「同盟国」発言の習主席との会談内容「大統領から詳細に説明」 : 読売新聞 →高市首相はトランプ大統領への依存が強すぎるようだ。電話会談で喜んで連携を確認するのはいいが、トランプ大統領の言動は読めない。しかも各国首脳からの信頼も落ちている。世界全体をにらんだ自律的な外交姿勢が必要だろう。強大な隣国中国と対立しているだけでは国益を損なう。もっと自分から動かないと。岩屋前外相が北京に到着した⇒岩屋前外相らが北京に到着 経済交流通じて日中関係改善を | NHKニュース

◎大相撲秋場所 横綱大の里 6回目の優勝 安青錦との直接対決制す | NHKニュース  →大の里が安青錦との3敗対決を圧倒し、1年ぶり6回目の優勝を飾った。今場所は楽に優勝かと思われたが、終盤で思わぬ連敗。千秋楽で何とか賜杯にこぎつけた。国歌斉唱の際、涙をこらえきれず目頭をぬぐった。横綱ならではの苦労がしのばれ、感動的だった。

◎群馬女性殺害事件 長女の元夫逮捕 高崎市内のパチンコ店で確保 | NHKニュース  →元妻の母や弟を殺傷した容疑で公開手配された30歳の男が逮捕された。元妻は警察に「元夫から母親と長男を殺して自分も死ぬと言われた」と相談。警察は元妻に避難するよう助言し、男にも2回口頭指導していた。こうしたDV事件はいつまでもなくならない。

◎未成年の選挙運動禁止は「違憲」 元高校生ら、賠償は認めず―東京地裁:時事ドットコム →元高校生が未成年の選挙運動禁止を違憲として訴えた損害賠償訴訟で、東京地裁は「表現の自由を定めた憲法に違反する」とする判決を出した。未成年者が選挙運動に参加した場合の弊害について、「国として具体的な検討がされたとは認めがたい。必要かつ合理的な規制として是認することはできない」と述べた。未成年でも主権者意識を育てたい。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎安田善次郎(安田財閥の祖。1921年9月28日死去、82歳)

「才能や経験も必要だが、それは枝葉にすぎない。要は熱心さと誠実さ、それに事業とともに倒れる覚悟で取り組む人がいれば成功する」 「十分に良いと信じた事業には必要なだけ投資してやり、経営を完成せしめ得るよう努力してやるのが銀行家の本分である」 「人物を見分けて貸すのだから、担保を取る必要はない。人物が当を得ていれば、万難を排して貸すものである」 「日常の細事を大切に処理しないで、どうして物事が成功するだろうか」 「何を志すにしろ、順序正しく進むことが一番である。これを無視すると、いわゆる豪傑肌に陥り、大言壮語し、日常の些事をかえりみなくなる」 「この世に運は確かにあると信じている。しかしその運は、先方から自分の方へ来てくれるものか、または自分からその運を取りに行くものか、この2つの判断の仕方によって、人生の成功と失敗がおのずから分かれる」 「財産はいくら積んだとて、あの世へ持って行けるものでもない」

*** 今週の教養講座(米中首脳会談の歴史①)

 アメリカのトランプ大統領と中国の習近平主席が会談した。日本は同盟国であるアメリカの視点から中国を見がちだが、アメリカは大きく変わりつつある。視点を世界規模に広げ、米中関係の行方を冷静に見極める必要がある。米中は今回、第二次世界大戦の「同盟国」と強調したが、朝鮮戦争から冷戦期を除いて、超大国同士の絆は決して浅くない。日本は過去の米中の歴史を踏まえて未来を考えなければならない。1972年のニクソン訪中以降の首脳会談をまとめた。重層的な関係が時代によって変遷してきたことがわかる。

第1期 接近と国交正常化(1972~1979年) ニクソン、毛沢東、鄧小平――敵対する2つの大国が手を結ぶまで

1972年2月21日、米国のニクソン大統領が北京の空港に降り立った。出迎えた周恩来首相と握手を交わす。朝鮮戦争以来、敵対してきた米中が和解へ踏み出した歴史的瞬間だった。なぜ、反共主義者として知られたニクソンが共産主義国家を訪れたのか。背景にはソ連の存在があった。米国はベトナム戦争に苦しみ、中国はソ連との国境紛争を経験していた。両国には、思想の違いを超えて接近する戦略的利益が生まれていた。

この外交を準備したのが、ニクソンの側近キッシンジャーである。1971年、秘密裏に北京を訪問し、周恩来と交渉した。中国側では毛沢東が接近を決断し、周恩来が実務を担った。訪中初日、ニクソンは毛沢東と会談した。中国革命の指導者と米国の反共政治家が向き合う光景は、世界に衝撃を与えた。両国は訪中最終盤に「上海コミュニケ」を発表し、国交正常化を目指すことで一致した。しかし、台湾問題では立場の違いを残した。

歴史の歯車は動き始めたが、正常化への道は平坦ではなかった。1974年、ウォーターゲート事件でニクソンが辞任。後継のフォード大統領は翌年、北京で毛沢東、鄧小平と会談した。しかし、台湾との外交関係を断つ問題などで進展はなかった。1976年には周恩来と毛沢東が相次いで死去。中国は指導者交代の混乱に直面した。転機をつくったのは、米国のカーター大統領と中国で実権を握った鄧小平だった。カーターは中国との正常化を進め、鄧小平は改革開放に向けて米国の技術や資本を必要としていた。

1978年12月、両国は国交正常化を発表。翌79年1月1日、正式に外交関係を樹立した。米国は中華人民共和国政府を中国の唯一の合法政府として承認し、台湾との外交関係を断った。ただし、台湾との非公式な関係は維持した。

同月末、鄧小平が訪米し、カーター大統領と会談した。テキサスではカウボーイ帽をかぶり、米国民に親しみやすい姿を見せた。中国の最高指導者が米国社会に直接接する新しい時代の幕開けだった。もっとも、両国の利害が完全に一致したわけではない。鄧小平はベトナムへの軍事行動の意向を伝え、カーターは思いとどまるよう求めた。国交正常化は、対立の消滅を意味しなかった。

この8年間を動かしたのは、ニクソンの戦略、毛沢東の決断、周恩来の交渉、カーターの外交、鄧小平の改革構想だった。米中は理念の違いを残しながら、共通利益によって敵対関係を転換した。冷戦の構図を変え、中国が世界経済へ踏み出す外交的基盤を築いた時代である。

    ♦

~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年9月29日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(28日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)

◎台風25号の記録的大雨から1週間 死亡は14人に 2人行方不明 | NHKニュース  熊本地震2か月 被災自治体の復旧・復興に向け支援チーム設置へ | NHKニュース  →台風25号1週間、熊本地震2か月。28日夜7時のNHKニュースは10分以上、この災害に時間を割いた。復旧の遅れている地域や苦しむ人々を紹介していたが、見ているだけで心が痛む。鴨長明の「方丈記」の時代は災害が相次いだという。今も大災害時代で、11月2日に防災庁が発足する。防災・減災に多角的な取り組みが必要だろう。

◎「北の国から」脚本家の倉本聰さん死去 91歳 | NHKニュース | 訃報、文化・芸術・エンタメ、北海道 →ドラマ「北の国から」で著名だが、転機は脚本を担当した1974年のNHK大河ドラマ「勝海舟」。演出に関与してこじれ、NHKを批判する記事が雑誌に掲載された。NHK局長に謝罪したが、その日に札幌に飛んで転居し、富良野市に移住した。大自然と人々の生活に触れて「北の国から」が生まれ、21年におよぶ人気シリーズになった。若手の脚本家や俳優の育成にも取り組み、子どもら向けの自然塾など多彩な活動で知られた。人間万事塞翁が馬か。

◎東大学長に女性初・藤垣裕子教授、上位3人への投票で染谷隆夫副学長の半分…会議で総合的に考慮し決定 : 読売新聞 →東京大学の学長に初めて女性が就任する。大学院総合文化研究科の藤垣裕子教授(64)で、任期は来年4月1日から6年間。学内の意向投票では、1番手の染谷隆夫副学長(東大院工学系研究科教授)の1107票の約半数にとどまったが、学内外の委員で構成する選考委員会が選んだ。半数での選出は異例だろう。求心力はどうか。

◎横浜市の山中前市長が出直し選出馬へ パワハラで辞職、29日に会見:時事ドットコム →パワハラで辞職した山中前横浜市長が、10月18日投開票の出直し市長選に出馬する。異例の対応だが、小児医療費助成などで市民から評価されていた面はあった。市役所職員は総スカンだろう。市長選には自民党など推薦の弁護士・原沢氏ら5人が立候補を表明している。話題を集めそうだ。

◎スマイルアップ、東山社長が退任 任期満了で、藤島氏は留任―新社長は山田弁護士:時事ドットコム →ジャニーズの性加害問題が久しぶりにニュースになった。スマイルアップの東山紀之社長が退任し、山田弁護士が後任につく。前社長の藤島ジュリー景子氏は代表取締役に留任する。東山社長の就任は2023年なので、あれから3年。補償受付窓口に1047人から申告があり、587人に補償内容を通知。被害を確認できないなど231人には補償を行わないことを通知したという。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎山崎豊子(小説家。2013年9月29日死去、89歳)

「不条理に立ち向かい、虐げられた側の心を書き残すのが作家の使命」 「先の戦争で、大学生だった私は軍需工場へ動員されました。そのときの辛さ、悲しさが私の作家としての原点です」 「私には、若くして死んでいった人間たちへの責任があります。だから半世紀も作家を続けてこられたのです」 「私には青春を奪った横暴な国家というものを許さん、という思いがしみこんでいます。泣き虫ですが、気が強いんです」 「『大地の子』だけは、私は命をかけて書いてきました。自分の血で描いているという思いがあります」 「取材で得た事実を羅列しただけでは小説にはなりません。テーマをどう構成し、人間ドラマを形作って行くか。考えに考え抜き、ディテールにもこだわります」 「四六時中、小説のことだけを考えています。大きな構想のもとに、出来る限りの取材をし、事実を掘り下げる」 「人によってお辞儀の角度を変えてはいけません」 「原稿用紙と万年筆を持ったまま、棺に入る覚悟でいます」

*** 今週の教養講座(米中首脳会談の歴史②)

第2期 冷戦下の協力と天安門事件(1980~1991年)  レーガンと鄧小平――反ソ連で結ばれた協力関係の試練

1980年、共和党のロナルド・レーガンが大統領選挙に勝利した。反共主義を掲げ、台湾との関係を重視し、中国に警戒感を抱かせた。1979年に国交を正常化したばかりの米中関係は、早くも試練を迎えた。中国で実権を握っていた鄧小平にとって、最大の課題は改革開放を軌道に乗せることだった。経済建設には米国の資本や技術が必要だったが、台湾問題で譲歩するつもりはなかった。

両国の対立を象徴したのが、米国による台湾への武器売却である。交渉の末、1982年8月、米中は共同コミュニケを発表した。米国は台湾への武器売却を長期的に減らす意向を示したが、台湾関係法に基づく関係は維持した。問題は解決されず、政治的な妥協によって管理された。それでも、両国を結び付ける強い力があった。ソ連である。1979年のソ連によるアフガニスタン侵攻以降、米中はソ連の影響力拡大を警戒していた。

1984年1月、中国の趙紫陽首相が訪米し、レーガンと会談した。科学技術や経済協力を進め、同年4月にはレーガン自身が中国を訪問した。北京で鄧小平らと会談し、原子力の平和利用を含む協力について協議した。台湾問題で意見が異なっても、協力できる分野を広げる外交だった。

しかし、1980年代後半、国際情勢が変化する。ソ連ではゴルバチョフが改革を進め、米ソ関係が改善した。米中を結び付けていた反ソ連という共通利益の重要性は次第に低下した。1989年2月、米国の新大統領ジョージ・H・W・ブッシュが北京を訪問した。かつて北京の米国連絡事務所長を務めたブッシュは、中国指導部との関係を重視していた。鄧小平との会談でも、協力関係の継続を確認した。

ところが、わずか4か月後の6月、天安門事件が発生した。民主化を求める学生や市民の運動を中国政府が武力で鎮圧し、国際社会から強い批判を浴びた。ブッシュ政権は対中制裁を発動した。一方、ブッシュは中国との関係を完全に断つことを避け、スコウクロフト大統領補佐官らを秘密裏に派遣した。人権問題への対応と戦略的な関係維持の間で、米国外交は揺れ動いた。

1991年、ソ連が崩壊した。米中を接近させた冷戦構造そのものが消滅したのである。この時代は、レーガンと鄧小平が共通利益を背景に協力を拡大し、ブッシュが天安門事件後の関係維持に苦心した時代だった。米中関係は、戦略的な協力だけでは政治体制や人権をめぐる対立を乗り越えられないことを示した。

    ♦

~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年9月30日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(29日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)

◎10月電気料金、全社過去最高に 政府の補助金終了で上昇:時事ドットコム 電気料金が「過去最高」の水準へ この冬はどうなる?【Q&A】 | NHKニュース →10月から電気料金が過去最高水準になる。エネルギー価格が高止まりし、政府補助金が打ち切られるため。物価高の時期で痛いが、価格は市場のシグナルでもある。高ければ節電も進む。政府補助金は基本的にバラマキであり、有効な経済政策とはいえない。ガソリン補助はまだ続く。本当に困っている人に支援を集中すべきだ。

◎岩屋前外相が中国王毅外相と会談 日中関係悪化のなか | NHKニュース →訪中している岩屋前外相が、王毅外相、経済政策を統括する何立峰副首相と会談した。予想以上の大物との面会だ。王外相は「日本側の喫緊の課題は指導者の台湾問題についての誤った言動を速やかに是正することだ」と述べた。高市首相の発言に照準を絞っていることが鮮明だ。経団連の筒井会長は「会談を非常に高く評価している」とし、11月に小規模な訪中団を派遣する。経済界は関係正常化に向けてもっと積極的に動くべきだろう。

◎東京都心 34日連続で雨を観測 統計開始以来最長に 【なぜ?】 | NHKニュース  →今年は東日本と西日本で気候がかなり違った。昨夏酷暑だった関東地方は今年9月、連日の雨で過去最長を記録した。暑いより雨の方がいいとはいえ、ここまで太陽が出ないのはさすがにこたえる。散歩をしにくくて気が滅入るし、洗濯もできない。大きな災害が頻発した。冬の安定した気候が待ち遠しい。来夏はどうなるか。

◎ドンキ、「トイザらス」日本事業を買収 全150店舗を継承 – 日本経済新聞 →ドン・キホーテの運営会社が、玩具の「トイザらス」を買収する。国内150店舗を引き継ぎ、買収金額は100億円規模。トイザらスは米国企業で、1991年に日本に進出する際、大規模小売店舗法をめぐって日米摩擦になった。定価販売の慣行を崩し、大量のおもちゃを巨大な売り場に並べて話題を呼んだ。米国ではアマゾンの登場で2017年に破綻している。

◎ニデック社長に戒田理夫専務執行役員、岸田光哉氏の後任 – 日本経済新聞 →不正会計のニデックの首脳陣が交代した。ソニー出身の岸田社長は不適切な言動があったとして辞任。戒田専務執行役員(70)が社長に就任するが、取締役ではないので代表権がない。代表権はトヨタから2025年にニデックに入社した南井取締役が持つ。複雑だ。問題は再建できるかどうか。

◎国勢調査、富山市が人口2000人以上を水増しか 総務省が統計法違反で市職員告発:時事ドットコム →富山市の人口水増し疑惑が浮上した。国勢調査の不正で、総務省が統計法違反で告発した。あってはならないことだ。人口40万人を下回りたくなかったとみられている。この日発表された確定値は39万9197人、5月公表時は40万2133人だった。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎倉本聰(脚本家。2026年9月18日死去、91歳)

「幸せとは、どのような状況にあろうと、いまが満ち足りていると感じられること」 「脚本を書くことの最終目的は、金を得ることではなく、人様の心を洗うことである」 「問うべきは、自分は何のために、何を目的にして生きていくのか、をはっきりさせること」 「僕は人を感動させたかった。びっくりさせたかった。それが僕の人生の目的です」 「何だかわからないけれど体中の内臓が連動して、自分の意図に反して鳥肌が立つとか、ワクワクするというのが感動なんだから」 「僕は自分のところの役者にも、常々言っているんですよ。本当の感動っていうのは、子宮で泣かして、睾丸で笑わせることだ、と」 「根底で考えろ。演じることも書くことも、生きることも、すべて常識で考えるな」 「作家として、いまの自分がすべきことはふるさとをテーマに作品を作ることなのだと。それは自然に降りてきた発想でした」 「金なんか望むな。幸せだけを見ろ」 「僕は『そうは言っても』『前例がない』という言葉が大嫌い。そんなことを言っていたら、世の中も自分自身もチェンジすることなんてできません。『前例がない』ことをやるからこそ『新しい挑戦』になる」 「便利さを求め続けたことの代償は、計り知れないほど大きい」

*** 今週の教養講座(米中首脳会談の歴史③)

第3期 関係修復と経済的相互依存(1992~2012年)  クリントンと江沢民――世界の工場となった中国と米国の選択

1992年、ソ連崩壊後の世界で、米中関係は新たな方向を探していた。米国は唯一の超大国となり、中国は天安門事件による国際的な孤立から抜け出そうとしていた。中国の最高指導者・鄧小平は同年、南方視察を行い、改革開放の加速を訴えた。市場経済を取り入れ、外国企業を呼び込み、経済発展を優先する。その路線を引き継いだのが江沢民だった。

翌1993年、米国では民主党のビル・クリントンが大統領に就任した。選挙戦で中国の人権問題を批判したクリントンは、中国に与える最恵国待遇の更新を人権状況の改善と結びつけた。しかし、経済界からは中国市場への期待が高まっていた。同年11月、クリントンと江沢民はシアトルのAPEC首脳会議で会談した。天安門事件後、関係が冷え込んでいた両国の首脳が、対話を再開する機会となった。

1994年、クリントンは方針を転換する。人権問題と最恵国待遇を切り離し、経済交流を続けることを決めた。中国を国際経済に組み込むことが、長期的には関係の改善につながるという考え方だった。しかし、台湾問題が再び表面化する。1995年、台湾の李登輝総統の訪米を米国が認めると、中国は強く反発した。翌年には台湾周辺でミサイル演習を実施し、米国は空母を派遣した。経済協力が進んでも、安全保障上の対立は消えなかった。

1997年10月、江沢民が米国を公式訪問した。クリントンとの会談では、人権、核不拡散、経済、安全保障などを幅広く協議した。翌1998年にはクリントンが中国を訪問し、北京で江沢民と公開の場でも意見を交わした。両首脳は、政治体制の違いを認めながら、関係を拡大する道を探った。その成果を象徴したのが中国の世界貿易機関(WTO)加盟である。1999年、米中は加盟条件について2国間合意に達した。2001年12月、中国は正式に加盟した。中国製品が世界市場へ広がり、米国企業も中国で生産や販売を拡大した。

同年9月、米国で同時多発テロが発生した。翌10月、ブッシュ大統領と江沢民は上海で会談し、対テロ協力を協議した。米中関係には安全保障上の新たな協力分野も生まれた。2008年、世界金融危機が発生すると、米中は世界経済の安定という課題を共有した。中国は巨大な経済力を持つ国へ成長していた。

2011年1月、胡錦濤国家主席が米国を公式訪問し、オバマ大統領と会談した。経済不均衡や人民元、北朝鮮、人権などを協議したが、両国の立場の違いも明らかになった。この20年間は、クリントンと江沢民が関係修復を進め、ブッシュと胡錦濤が経済交流を拡大した時代だった。中国は世界の工場となり、米中は互いに欠かせない経済相手になった。しかし、その相互依存の裏側で、貿易不均衡や安全保障上の摩擦も蓄積していた。

    ♦

~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年10月1日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(30日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)

◎AIの安全対策でトランプ大統領と業界が合意 企業内管理導入へ | NHKニュース  →危険性への懸念が急速に高まっているAI開発について、トランプ大統領は意図しない動作を防ぐため企業が自主的に開発を管理する仕組みを導入することでテック企業CEOと合意した。アンソロピック、メタなど6社が署名した。トランプ大統領は規制に消極的だったが、まずは自主規制で様子をみるようだ。これで安心を与えられるかどうか。

◎東武日光線事故 現場責任者が指揮せず 報告書を提出 | NHKニュース →東武日光線で作業員4人が死亡した事故で、東武鉄道は報告書を提出した。当時、現場では、責任者ではない人が作業を指揮。作業員は列車到着の5分前に線路に入っていて、時間が短いと疑問を感じた人もいたが、「意見を言うと怒られる」「余計な事を言うとももめ事になる」と考えて言わなかったという。指揮系統の不徹底と心理的安全性の欠如が主因のようだ。

◎10月の食品値上げ 3153品目 ことし2番目の多さ | NHKニュース  ビール系飲料の市場に変化は 10月1日の酒税改正でどうなる? | NHKニュース  →10月1日は値上げラッシュ。3000以上の食品が値上げされる見通しで、家計には厳しい。ただし、酒税が改正され、ビールの税率が下がり、発泡酒や第3のビールと同じ税率になる。40~50円だった価格差は25~35円程度に縮小する見通し。ビール党には朗報だが、アルコール飲料の勢力図はどうなるか。あなたはどうしますか。

◎簗農水相、地元予算「カットした」 就任前、選挙絡め発言と報道―木原官房長官「調査中」:時事ドットコム →簗農水相が、首長がアンチ自民党の2市町に対する道路予算をカットしたと発言したという。週刊文春が報じた。露骨な利益誘導で、政権党の権力を振りかざしていると批判されても仕方ない。簗農水相は「記事を見ていない」と否定していない。木原官房長官は「事実関係を調査中」と述べた。改造内閣初めてのマイナス事案。どう対応するか。

◎声の無断使用は「パブリシティ権の侵害」の初判断 声優がTikTokを訴えた裁判 | NHKニュース  →SNS時代に影響を与えそうな初判断が出た。人気声優の津田健次郎さんが「生成AIで自身の声を無断で模倣された動画が投稿された」として、「TikTok」運営会社を訴えた裁判で、東京地裁は「声の無断使用はパブリシティ権の侵害」と認定した。TikTok側は「津田さんの声と混同することは考え難い」と主張していたが、裁判後に「裁判所の判断を尊重して対応を考える」とコメントした。

◎AI倫理専門家に「もう一つのノーベル賞」 独自研究、開発リスクに警鐘:時事ドットコム →もう一つのノーベル賞といわれる「ライト・ライブリフッド賞」。巨大企業と一線を画す独自の人工知能(AI)研究を進めるティムニット・ゲブル氏らが選ばれた。同氏はエチオピア生まれで、隣国エリトリアとの戦闘を逃れ10代で米国に亡命。スタンフォード大で学んだ後、米グーグルに入社しAI倫理チームを主導した。最近は独立機関を設立し研究活動をしている。タイムリーな受賞だ。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎トム・クランシー(米国の軍事小説家。2013年10月1日死去、66歳)

「変えられないことに目を向けるのではなく、できることに目を向けよ」 「勝利は、それを受け入れる準備ができている人々にのみもたらされる」 「忍耐強い男の怒りには、注意することだ」 「人生とは学ぶことである。学びを止めると、死ぬ」 「情報や知識は力である。情報を管理できれば、人も管理できる」 「だれかが良いアイデアを思いつくと、一度も良いアイデアを出したことがないような誰かが『それは不可能ですよ』と言う」 「現実とフィクションの違いは何か?フィクションは理にかなっている必要がある」 「戦争はおびえた人々によって始められる。彼らは戦争を恐れているが、それ以上に、戦争を始めなかった場合に何が起こるかを恐れているのだ」 「政府が得意なのは、税金を徴収し、自由を奪い、戦争をすることだ。それ以外のことはあまり得意ではない」

*** 今週の教養講座(米中首脳会談の歴史④)

第4期 大国間競争への移行(2013~2020年)  オバマ、トランプと習近平――協調を模索した時代から貿易戦争へ

2013年3月、習近平が中国の国家主席に就任した。中国はすでに世界第2位の経済大国となり、国際社会での存在感を高めていた。習近平は「中華民族の偉大な復興」を掲げ、中国の国際的地位を高める方針を示した。同年6月、習近平は米国カリフォルニア州のサニーランズでオバマ大統領と会談した。両首脳はネクタイを外し、庭園を歩きながら意見を交わした。

習近平が提唱したのは「新型大国関係」である。既存の大国と台頭する大国が衝突する歴史を繰り返さず、相互尊重と協力によって共存するという構想だった。ただし、米国は中国のいう「核心的利益」の範囲を警戒し、この構想を全面的には受け入れなかった。それでも、協力の成果は生まれた。2014年11月、北京で会談した両首脳は、温室効果ガスの排出削減目標を共同発表した。世界有数の排出国である米中の協力は、翌年のパリ協定成立を後押しした。

一方、南シナ海では中国による人工島の造成が進み、米国は航行の自由を重視して反発した。2015年9月、習近平が訪米した際には、サイバー攻撃についても協議し、商業的利益を目的とするサイバー窃取を政府が実施・支援しないことで合意した。協力と対立が並行する時代だった。

2017年1月、米国ではドナルド・トランプが大統領に就任した。トランプは中国との貿易赤字や不公正な貿易慣行を批判し、従来の対中政策を見直そうとした。同年4月、トランプは習近平をフロリダ州のマールアラーゴに迎えた。北朝鮮問題や貿易不均衡を協議し、経済問題に関する100日計画を始めた。

しかし、翌2018年、米国は中国製品への追加関税を発動した。中国も報復関税で応じ、米中貿易戦争が始まった。同年12月、アルゼンチンのG20首脳会議で両首脳は会談し、追加関税の引き上げを一時見送った。2019年6月の大阪G20でも交渉再開で合意したが、対立は半導体や通信機器などの技術分野に広がっていた。

2020年1月、米中は第1段階の貿易合意に署名した。中国は米国製品の購入拡大などを約束したが、多くの追加関税は残った。さらに新型コロナウイルスの感染拡大を受け、感染源や初期対応をめぐる非難の応酬が起きた。香港、新疆ウイグル自治区、台湾をめぐる対立も深まった。

この8年間は、オバマと習近平が大国間の共存を模索し、トランプと習近平が貿易や技術をめぐって対立した時代だった。経済的な相互依存を前提とする協力から、経済そのものを安全保障と結びつける競争へと、米中関係の性格が変わったのである。

    ♦

~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年10月2日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(1日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)

◎2026年ノーベル賞 5日から発表 日本から“3年連続受賞”なるか  | NHKニュース  →来週はノーベル賞ウィーク。発表は、5日が生理学・医学賞、6日物理学賞、7日化学賞、8日文学賞、9日平和賞、12日経済学賞。日本からはおととしが被団協、昨年は大阪大学の坂口志文さんが生理学・医学賞、京都大学の北川進さんが化学賞を受賞した。今年はどうなるか。毎日午後7時前に発表され、受賞を受けてメディアはドタバタの報道となる。

◎イスラエル行き旅客機 緊急着陸 副操縦士が機長を刺したか | NHKニュース  →中東でイスラエル行きの民間旅客機の副操縦士が機長を刺したとみられる事件が起きた。飛行機は1分半で5300メートル以上も降下し、サウジアラビアの空港に緊急着陸した。乗客が副操縦士を取り押さえて操縦かんを握り、乗っていた交代要員の操縦士が引き継いだという。危機一髪。中東で何か起きると、背景や影響が気になる。単なる個人間の怨恨かもしれないが、ネタニヤフ首相はイスラム過激思想犯という。

◎「次世代100人」に京都・八幡市長 産休取得で「前例作った」―米誌タイム:時事ドットコム →現職女性市長で初めて産休を取った京都市八幡市の川田市長が、米タイム誌の「次世代の100人」に選ばれた。学校給食費引き下げや産後ケアの提供拡充などに取り組んできたとし、「自身の選択と政策を通じて、家族がより暮らしやすい国にする方法を示している」と紹介した。海外メディアで改めて知る「新しい価値」。

◎小園海斗選手ら戦力外通告 「ゾンビたばこ」問題で―プロ野球・広島:時事ドットコム →広島カープのゾンビたばこ疑惑で、昨年首位打者の小園選手ら4人が戦力外通告を受けた。2024年にゴールデングラブ賞を受賞した前川選手も含まれている。使用は確認されていないが、売人とみられる外国人と写真に写っていたり、県警の家宅捜索を受けたりしていた。社会的信頼が問われる人気商売の冷酷な判断だろう。

◎「timelesz」猪俣周杜メンバーの契約解除 所属事務所が発表 | NHKニュース →芸能界も甘くない。知人の女性を殴ってけがをさせたとして逮捕された人気アイドルグループ、「timelesz」の猪俣周杜メンバーに対して、所属事務所は契約を解除した。釈放され、刑事処分も決まっていないが、もはや容赦ない。かつてスポーツ界や芸能界は「治外法権」の趣もあったが、今や世間より厳しい。

*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)

◎盛田昭夫(ソニー創業者。1999年10月3日死去、78歳)

「個人を組織の秩序に組み込もうという態度は、あらゆる個性的な能力を殺してしまう」 「アイデアの良い人は世の中にたくさんいるが、実行する勇気のある人は少ない」 「黙っているほうが安全だという雰囲気は、非常に危険だ」 「ネクラな組織からは何も生まれない」 「自分を発展させていくためには、他人と同じ考え、同じ行動をしてはいけない」 「非常に寒いニューヨークの冬に、3万台のラジオの在庫を引き取って、一日かけて倉庫に運んだ。それがソニーアメリカの一日目だ」 「私たちはプライドが強いですから、ソニーはユニークであると言い続けてきましたし、事実そうだと信じておる。かけがえのない我が社の力だと思います」 「会社が前進するためには、他人の踏んでいない道を進まなければならない。そのためには、他人の教えをそのままやっていたのでは間に合わない。他人の教えの上に自分の知恵を加えて、自分の道を切り拓かねばならない。自分の特徴を活かし、毎日磨き、向上させる努力を続けなければならない」

*** 今週の教養講座(米中首脳会談の歴史⑤)

第5期 戦略的競争と対立の管理(2021~2026年)  バイデン、トランプと習近平――対立を続けながら衝突を防ぐ外交

2021年1月、ジョー・バイデンが米国大統領に就任した。トランプ政権の対中追加関税を基本的に維持しながら、同盟国との協力を重視する政策を進めた。中国との競争を続ける一方、気候変動などでは協力する方針だった。中国では習近平が権力基盤を強化していた。2022年の共産党大会で総書記として異例の3期目に入り、米国との長期的な競争に備える姿勢を示した。

両国の緊張を高めたのが台湾問題だった。2022年8月、米国のペロシ下院議長が台湾を訪問すると、中国は台湾周辺で大規模な軍事演習を実施した。同年11月、バイデンと習近平はインドネシアのバリ島で会談した。バイデン就任後、初めての対面首脳会談だった。台湾、ウクライナ戦争、経済問題などを協議し、競争が衝突に発展しないよう意思疎通を続ける方針を確認した。

しかし、2023年2月、米国上空を飛行した中国の気球を米軍が撃墜し、関係は再び悪化した。米国は偵察用と説明し、中国は民間の気象観測用と主張した。同年11月、両首脳は米国カリフォルニア州ウッドサイドで会談した。軍当局間の対話再開、合成麻薬フェンタニル対策、人工知能のリスクなどで合意した。台湾や半導体をめぐる対立は続いたが、偶発的な軍事衝突を防ぐ仕組みの再建を進めた。

2024年11月、ペルーのリマでバイデンと習近平が最後の対面会談を行った。核兵器使用の決定には人間が関与すべきだとの認識を確認した一方、台湾や経済安全保障をめぐる意見の違いは残った。2025年1月、トランプが大統領に復帰した。追加関税を交渉手段として活用する政策を強め、中国も報復関税やレアアースの輸出管理で対抗した。両国の貿易摩擦は再び激化した。

転機は同年10月30日、韓国・釜山で訪れた。トランプと習近平が約6年ぶりに対面し、関税やレアアース、農産物などを協議した。米国は一部関税を引き下げ、中国は一部の輸出管理措置を停止するなど、双方が譲歩して貿易休戦に至った。翌2026年5月、トランプが北京を訪問した。両首脳は貿易・投資に関する協議の枠組みを設け、中国による米国産農産物などの購入拡大について合意した。しかし、合意の履行には遅れも生じた。そして9月末、両首脳はワシントンで再び会談した。関税、レアアース、人工知能、台湾などが議題になった。完全な詳細はまだ明らかになっていないが、米国の中間選挙前で中身より演出が優先されたとされている。

 これまでを貫く歴史的な変化は、米中を結びつける力が変わったことである。 1980年代はソ連への警戒、1990年代から2000年代は経済的な利益が協力を支えた。2010年代には中国の台頭に伴って競争が強まり、2020年代には競争そのものを管理することが首脳外交の重要な役割になっている。両国の関係は世界に大きな影響を与える。中国の隣国で、米国の同盟国でもある日本は、米中関係に目を凝らし、自分の頭で未来を考え、模索する必要がある。