12月1~5日(教養講座:三島由紀夫の文章読本)

~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年12月1日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(25~30日)

香港 高層住宅火災 146人の死亡確認と発表 地元当局 | NHKニュース →香港のマンション火災の死者は146人にのぼっている。住民側は去年から火災の危険性への懸念を当局に伝え、当局は16回にわたって現場確認をしたが防げなかった。当局追及の動きも出ているが、治安機関は「混乱たくらめば厳罰」と威嚇している→ 治安機関は「混乱たくらむもの厳罰受ける」 | NHKニュース

衆議院で与党会派が過半数 自民幹部 安定的政権運営に期待示す | NHKニュース  →元維新系の3人が与党会派に入り、与党の政権基盤が安定に向かう。野党から内閣不信任案が出ても否決でき、予算が参議院で否決されても衆議院の議決が優先される。数を頼んだ国会運営をすれば波乱も予想されるが、与党はどう動くか。

証券口座乗っ取り相場操縦か 中国籍の会社社長ら2人を逮捕 | NHKニュース  →証券界にとって衝撃となった相場操縦事件。中国籍の会社社長ら2人が逮捕された。証券口座のIDやパスワードを入手して乗っ取る新しい手口で、被害は7000億円を超えるとみられる。口座へのログイン方法が飛躍的に厳しくなり、投資家に大きな影響を与えている。

泊原発再稼働 知事“容認に前向きな考え”表明 事情や懸念は | NHKニュース →北海道知事が泊原発の再稼働を容認する。新潟県知事のように慎重な検討をしてこなかったが、再稼働で道内の電力料金が安くなることを重視したようだ。地元では突然の表面に意外感もあり、県議会などでの批判も予想される。

中国 習主席がトランプ大統領と電話会談 台湾めぐり中国の原則的な立場を強調 | NHKニュース  “米大統領 高市首相に台湾で中国を刺激しないよう助言” 米紙 | NHKニュース →高市首相の台湾有事発言が米中首脳のテーマになった。トランプ大統領は経済問題で中国との関係を重視している。電撃的ニクソン訪中のように米中は手を握る可能性が常にある。首相は大局的な外交手腕が問われている。

*** 「今日の名言」

◎白洲次郎(実業家、吉田茂側近。1985年11月28日死去、83歳)

「日本でいけないのは、すぐ人の足をひっぱることだね」 「西洋人とつき合うには、すべての言動にプリンシプルが絶対に必要である」 「我々は戦争に負けたが、奴隷になったのではない」 「今の日本の若い人に足りないのは勇気だ。そう言ったら損する、ってことばかり考えている」 「熱意だよ。日本でも明治維新の時の政治家とか実業家は、熱意があったからあれだけの仕事ができたんだ」 「我々の時代に馬鹿な戦争をして、元も子もなくした責任をもっと痛烈に感じようではないか」 「(日本国憲法制定をめぐるGHQとの攻防の際、若手大蔵省官僚の宮澤喜一に対して)自分は必要以上に(主張を)やっているんだ。占領軍の言いなりになったのではないということを国民に見せるために、敢えて極端に行動しているんだ。為政者があれだけ抵抗したということが残らないと、後で国民から疑問が出て必ず批判を受けることになる」 「マスコミの論調をそのまま世論だとお思い召さるな。国民はそんなに軽率でもないし、一方的でもありません」 

*** 今週の教養講座(三島由紀夫の文章読本①)

今週は三島由紀夫の「文章読本」を紹介する。文章論は1934年刊の谷崎潤一郎を筆頭に多く書かれている。三島由紀夫の本は1959年に刊行されたが、参考になる記述は多い。最後の第8章「文章の実際-結語」から引用する。三島は45歳だった1970年11月25日、自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺をした。晩年は政治的言動が目立ったが、30歳代に書かれた文章論は出色である。

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私は短編小説ばかり書いていた時、文章の中に凡庸な一行が入り込むことがひどく不愉快でした。しかしそれは小説家にとって、つまらない潔癖にすぎないことに気がつきました。凡庸さを美しく見せ、全体の中に溶け込ますことが、小説というこのかなり大味な作業の一つの大事な要素なのであります。

「月が上がった。屋根のひさしが明るくなった。二人は散歩に出た」というような文章を書くときに、以前の私なら、そこへさまざまな自分の感覚的発見をちりばめることなしには書くことができなかったでありましょう。月には形容がつき、ひさしの明るさには、ひさしの明るさ独特の色調の加減が加味されたでありましょう。

しかし私は、むしろ自然な平坦な文章のところどころに結び目をこしらえることに熱中します。私は、文章があまりに個性的な外観をもつことを警戒します。そうすれば、読者は作者の個性ばかりに気をとられて物語を読まないからであります。 

二、三行ごとに同じ言葉が出てこないように注意します。「病気」と書いた時には、次には「やまい」と書こうとします。古い支那の対句の影響が残っていて、例えば「彼女は理性を軽蔑していた」と書くべきところを、「彼女は感情を尊敬し、理性を軽蔑していた」と書くことを好みます。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年12月2日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(1日)

利上げ是非、12月会合で判断 遅れれば「混乱」―日銀総裁:時事ドットコム →植田日銀総裁が講演で利上げに踏み込んだ。18、19日の金融政策決定会合での利上げが焦点。昨年8月の利上げで金融市場が混乱し、日銀にはトラウマとなっていた。やっと正常化するか、円高に振れるか。株式市場は利上げを嫌って大幅に下落。利ざやで稼げる銀行株だけが大きく上昇した→ 株価 一時1000円以上値下がり | NHKニュース

高市首相 維新 吉村代表と会談 衆院議員定数 約1割削減の方針 | NHKニュース  →衆議院の定数削減は「1割減。内訳は選挙区25、比例20」が軸となった。維新は比例の50議席削減を求めていたが、自民が比例削減に反発する野党に配慮した。今後の見通しは不明。自民と維新のぎくしゃく、難航しそうな与野党調整。向こう1年、政局の大きな柱となる。

ツルハHD ウエルシアHDと経営統合 “3兆円の売り上げ目指す” | NHKニュース  →ドラッグストア業界の離合集散は激しい。ツルハがウエルシアの株を100%保有し、イオンがツルハ株の過半数を保有する。3兆円の売上を目指し、東南アジアを中心とした海外出店を強化する。「北海道のツルハ」が「世界のツルハ」になる。消費者への恩恵に目を凝らしたい。

「新語・流行語大賞」 年間大賞に「働いて働いて働いて働いて働いてまいります/女性首相」 | NHKニュース  →新語・流行語大賞は時代を先取りする言葉が選ばれると思ったが、ワークライフバランスを否定するような「働いて、働いて・・・」でいいのだろうか。それとも新しいモーレツ時代の始まりか。高市人気にあやかりたい主催者の思惑か。

高市答弁「戦争に至る道」 立民・岡田氏インタビュー:時事ドットコム →高市首相から台湾有事発言を引き出した岡田氏が「発言は戦争に至る道になりかねない。撤回は可能なはずだ。国民の約5割が首相発言を肯定しているのも問題だ」とインタビューに答えた。中国の威圧的な対応は問題だが、高市発言を容認する世論は確かに危うい。アジア太平洋戦争は軍部が主導したが、メディアがあおり、国民も支持した。そうした歴史も踏まえた冷静な思考が重要だ。

*** 「今日の名言」

◎水木しげる(漫画家。2015年11月30日死去、93歳)

「好きなことに情熱を注いで、人生を生き切ること」 「やりがいや充実感は結局、自分が好きなことの中にしか見つからない」 「成功や栄誉や勝ち負けを目的に事を行ってはいけない」 「才能と収入は別、努力は人を裏切ると心得よ」 「打ち込めることを真剣に探そうとすると、真面目な人たちには案外それが見つからないものです。見つけるには好奇心を大事にすればいい」 「成功しなくてもいいんです。全身全霊で打ち込めることを探すこと」 「運なんてものはない。あるのは突撃力だけ」 「本気で人を幸せにしようと思ったら、自分が傷つくことくらい覚悟しなくちゃいかん」 「金なんか、飢え死にしない程度にあったらええ」 「戦争で片腕を失っても絶望なんてしなかった。生きているんだから」 「私が漫画で食えるようになったのは40歳を超えてから」 「まず寝ることが幸福の基本。好きなだけ眠らずして何が人間か! 仕事を減らせ」 「寝る時間を犠牲にしていた連中は、早々とあの世に行ってしまった」

*** 今週の教養講座(三島由紀夫の文章読本②)

文章の中に一貫したリズムが流れることも、私にとってどうしても捨てられない要求であります。リズムは決して七五調ではありませんが、言葉の微妙な置きかえによって、リズムの流れを阻害していた小石のようなものが除かれます。わざと小石をたくさん流れに放り込んで、文章をぎくしゃくさせて印象を強める手法もありますが、私は小石を置きかえて、流れのリズムを面白くすることに注意を払います。

前日書いた文章を読みなおしてみると、自分が肉体的精神的に最上のコンディションにあって一種の興奮のうちに書いた文章には、二度とかえらぬ熱っぽさが溢れています。長い小説を書いている場合、そういう熱っぽさの次にだらけた心境で文章を続けようと思ったときほど苦痛なことはありません。

しかし、長い眼で見ると、人間の内的リズムは、無意識のうちに持続しているのであって、そのあいだには大いに凹凸があり、緻密と粗雑の違いがあるように見えても、あとで自分の作品を読みかえしてみると、だいたい同じリズムで起伏していることがわかります。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年12月3日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(2日)

サイクロンによる大雨の影響 インドネシアとスリランカ、タイで死者1300人超  | NHKニュース  →東南アジアで大雨の被害が広がっている。日本メディアも現地入りし、くわしい状況が伝わるようになってきた。先週からのサイクロンで、死者は少なくともインドネシア744人、スリランカで410人、タイで170人。背景に気候変動があるのは間違いなく、脱炭素は待ったなしだが。

安倍氏以外では「意味弱い」 ビデオメッセージで嫌悪と敵意―山上被告、公判で説明:時事ドットコム →安倍元首相銃撃公判が核心部に入ってきた。山上被告は「安倍氏以外では意味が弱い」と標的とした理由を証言した。韓国でも旧統一教会の韓鶴子総裁の裁判が続き、大統領が日本の解散命令の指示を検討した。反日集金マシンが日韓で裁かれている→ 旧統一教会の解散命令検討を指示 日本の例に言及―韓国大統領:時事ドットコム

高市首相、廃炉作業「着実に進捗」 福島第1原発を初視察:時事ドットコム →高市首相が福島第1原発を視察した。「廃炉や処理水の海洋放出や安全、着実に進捗している」と言ったが、廃炉のメドは立っておらず、順調とは言えない。原発視察は重要だが、人が戻れない被災地域にこそ真実がある。再稼働容認を求める人こそ被災地の苦悩を知るべきだろう。

NHKが沖縄タイムス報道に抗議 「高市政権に忖度はない」と否定:朝日新聞 →沖縄タイムスが2日朝刊1面トップで「NHKが高市政権に忖度して番組を延期した」と報じた。沖縄の米兵性犯罪に関する特集を10月22日のニュース番組「おはよう日本」で放送する予定だったが、高市政権の発足とタイミングが重なり2週間後に放送したという。NHKは抗議した。NHKは予算を国会に握られ、トップ人事も実質的に政権の影響を受けている。

産経ネット媒体で記事盗用 他社から5本、「深くおわび」:時事ドットコム →いけませんね。

*** 「今日の名言」

◎フランシスコ・ザビエル(スペインの宣教師。1552年12月3日死去、46歳)

「日本の人々は今までに発見された国民の中で最高である。親しみやすく、一般に善良で、悪意がない。驚くほど名誉心の強い人々だ」 「日本人こそ一番良い発見であった。キリスト教以外の宗教を信仰する民族の中で、日本人に勝てる他の民族はいない」 「日本の人々のなんたる温かいことか。礼儀作法はもとより文化、風俗、習慣はスペイン人に優っている。日本人ほど理性的で親切な人々を私は世界中を旅してきたなかで見たことがない」 「大部分の人々は貧しいが、武士も、そういう人々も貧しいことを不名誉とは思わない」 「人々の大半が読み書きの能力を備えている。神の法を理解させるのに、とても便利である」 「すべての仏僧には戒律を破る相手となる少年がいて、そのことを認めているうえに、それを罪ではないと言い張っている。世俗の人たちは僧侶の例にならい、僧侶がそうするのだから、我々もまたそうするのだと言っている」

*** 今週の教養講座(三島由紀夫の文章読本③)

途中で文章を読みかえして、過去形の多いところをいくつか現在形になおすことがあります。日本語の特権で、現在形のテンス(時制)を過去形の連続の間にいきなりあてはめることで、文章のリズムが自由に変えられるのであります。日本語の動詞はかならず文章のいちばん後にくるという特質によって、過去形のテンスが続く場合には「した」「た」「た」という言葉があまりに連続しやすくなります。そのために適度の現在形の挿入は必要であります。

「潮騒」のように物語的小説では「であった」という語尾をたびたび使いました。この言葉は物語的雰囲気を強めます。しかしリアリズム小説に「であった」がたくさん使われると、内容をあまりにロマネスクに見せすぎるきらいがあります。

いつか大岡昇平氏とも話したことがありますが、「彼」とは書きやすいが、「彼女」とは書きにくい、「彼女」という言葉は日本語としてまだ熟していないものをもっていて、「彼女」を無神経に乱発する小説を読むと、眉をしかめます。

女性の登場人物の場合には、努めて女性の名前を何度でも使って、なるべく彼女という言葉を避けるようにしています。小説ではない随想の文章に、「僕」と書くことを好みません。「僕」という言葉の、日常会話的なぞんざいと、ことさら若々しさを衒ったような感じは文章の気品を傷うからであります。「僕」という言葉を公衆の前で使う言葉とは思いません。会話のなかだけで使われるべき言葉でありましょう。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年12月4日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(3日)

旧姓の通称使用拡大 法制化に向け検討へ 政府 | NHKニュース  →与党はどうしても選択的夫婦別姓を導入したくないようだ。政府は旧姓使用拡大法案の検討を始めた。与党は戸籍制度(≒家父長制)を維持したいようだが、立憲民主党などは「旧姓使用拡大は選択的夫婦別姓が導入されればできる。各種団体が希望しているのにお茶を濁そうとしている」と反発している。不都合はどの程度解消されるのだろうか。アイデンティティの問題は置き去りになる。

米オープンAI、社内に非常事態宣言 グーグル台頭に危機感―報道:時事ドットコム →チャットGPTで生成AIをけん引していたオープンAI社があせっているようだ。ジェミニで台頭するグーグルの攻勢に危機感を持っている。早くも戦国時代に入るのだろうか。米国の経済と技術のダイナミズムと言える。腐ってもアメリカ?

ラグビーワールドカップ2027 日本はフランス アメリカ サモアと同組に | NHKニュース →2017年10月にオーストラリアで開かれるラグビーワールドカップの組み合わせがもう決まった。日本(ランキング12位)は、フランス(5位)、米国(16位)、サモア(19位)のグループ。6組で争い、上位2チームと勝ち点の多い3位4チームが決勝トーナメントに進む。日本は過去最高の8強以上が目標。

アスクル 法人向けネット通販の注文受け付けをきょう再開 | NHKニュース  →10月19日に身代金目的のサイバー攻撃を受けたアスクルが受け付けをやっと再開する。法人向けだけで、配送には時間がかかるという。21世紀の戦争はサイバー攻撃で日常生活を混乱に陥れることが主戦場とも言われている。デジタル化の脆弱性で、対抗策が必要だ。

高市首相「戦艦」言及、間違い否定 政府答弁書:時事ドットコム →首相が言えば、「黒も白になる」のだろうか。政府答弁書は戦艦について、広辞苑を引用して「(1)戦争に用いる船。軍艦。戦闘艦。(2)軍艦の一種」と説明し、「文脈によって意味が異なり得るため、『言い間違い』との指摘は当たらない」とした。

探偵業営み、個人情報漏えいか 豊田市元職員逮捕―愛知県警:時事ドットコム →愛知県豊田市職員が探偵として個人情報を漏洩していた。前代未聞の不祥事だ。親族が代表を務める不倫調査専門の探偵会社を実質的に経営していた。今年3月末に退職したが、市の総務部長は「市民を裏切る行為で再発防止に努める。誠に申し訳ありませんでした」と謝罪した。

*** 「今日の名言」

◎中村哲①(医師、アフガニスタンで長年支援活動。2019年12月4日銃撃死、73歳)

「大事なのは、与えられた場所でいかに力を尽すか。深く考えないようにしながら、その時、その時の仕事に全力で取り組んでいる」 「絶対に必要なものは多くはない。変わらずに輝き続けるのは、命への愛惜と自然に対する謙虚さである。その思いをとどめる限り、恐れるものは何もない」 「やっぱり、目の前で困っている人を見捨てるわけにはいきません」 「一隅を照らす。もはやそれ以外に自分の生きざまも考えられなくなっていた」 「どの場所、どの時代でも、一番大切なのは命です。子どもを亡くした母親の気持ちも世界中同じです。親の気持ちは痛切です。そういう命に対する哀惜、命をいとおしむという気持ちで物事に対処すれば、大体誤らないのではないかと私は思っております」 「地元の人が何を求めているか、そのために何ができるか、生活習慣や文化を含めて理解しないと」 「我々は日本政府から1円の援助も受けていません」 「来る日も来る日も治療していくが、追いつかない」

*** 今週の教養講座(三島由紀夫の文章読本④)

文章の目的によって、言葉の感覚はさまざまの変化をします。例えば小説のなかで、俳優の名前を出すことを好みません。なぜなら今日のマリリン・モンローは、十年後には誰かわからなくなってしまうからであります。私の文章が滅びるとしても、少なくとも十年先を考えなければ文章を書く楽しみがありません。

「マリリン・モンローのような女」ということを小説に書けば、十年後、その女の概念は読者になにもつかめなくなってしまうでありましょう。こういう潔癖さは小説作品のなかで、あるいは戯曲の中でだけ発揮されるものであって、随想や随筆や雑文の文章のなかで映画俳優の名前を出すまいと思ったら、無理というものであります。

小説以外の評論や随想の文体はどうしてもおろそかになります。わたしの好みや潔癖さを捨て、俗語も使いますし、わざとふざけた、くだけた文章も使います。その代わり論理的に正確であるように心がけ、作家としての論理に対してもつ、ある気恥ずかしさから、わざと卑俗なくだけた表現をそれにくっつけて使うこともあります。

去年書いた文章はすべて不満であり、いま書いている文章も、来年に見れば不満でありましょう。進歩の証拠と思うなら楽天的な話であって、不満のうちに停滞し、不満のうちに退歩することもあるのは、自分の顔が見えない人間の宿命でもあります。

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~~~ 長谷川塾メルマガ 2025年12月5日号(転送禁止)~~~

***デイ・ウォッチ(4日)

快活CLUB サイバー攻撃 高校生を逮捕「ぜい弱性を見つけるのが楽しかった」 | NHKニュース  →大阪市の高校2年生がサイバー攻撃容疑で逮捕された。小学生の時からプログラミングを独習。今回は会社側の対策をすり抜ける方法を生成AIで開発した。若い人のサイバー犯罪が増えているが、犯罪に手を染めた「有能な」若者を社会がどう包摂していくか。重要テーマだ。

長期金利 10年もの国債利回り1.9%台に 18年ぶりの高水準 | NHKニュース →金利がじわじわと上がっている。高市政権の拡張的な財政政策が影響している。日銀は今月の会合での利上げを匂わせ、市場に織り込もうとしている。金利が上昇すれば円高に傾き、輸入インフレが緩和する。経済事象の変化はすべてプラスとマイナスがある。それぞれの立場での冷静な見極めが必要だ。

小選挙区削減、20都道府県が対象 自民試算、党内に反発:時事ドットコム →自民党の調査で、25選挙区の衆院議員を削減した場合、20都道府県が対象になることがわかった。東京が3減で、千葉、神奈川、大阪が各2減、北海道や沖縄など16道府県が各1減。自民党内にはもともと定数削減に消極的な声があったが、自分の利害も絡むと反発も強まる。政界は右往左往しそうだ。

対米自立と中国への同調訴え 習主席、フランス大統領と会談―台湾念頭に日本けん制も:時事ドットコム →西側諸国の中で独自の立場を追求したいフランスは、中国との連携に熱心だ。マクロン大統領は「中国との対話はこれまで以上に不可欠。違いを乗り越え、力を合わせなければならない」とし、「1つの中国」政策を堅持すると述べた。来年のG7議長国で、中国との連携を図るようだ。

福井知事辞職、議会が同意 セクハラ問題で:時事ドットコム →杉本福井県知事がセクハラを理由に辞職した。古い体質が残る自治体の首長や議員ではよくあるが、知事レベルでは珍しい。自治官僚出身となれば、なおさらだ。軽い気持ちでメールを出したと言っているようだが、実態はよくわからない。

*** 「今日の名言」

◎中村哲②(医師、アフガニスタンで長年支援活動。2019年12月4日銃撃死、73歳)

「誰も行かぬなら、我々が行く」 「道で倒れている人がいたら手を差し伸べる。それは普通のことです」 「信頼関係が武器よりも大切なこと」 「信頼は一朝にして築かれるものではない。利害を超え、忍耐を重ね、裏切られても裏切り返さない誠実さこそが、人々の心に触れる。それは、武力以上に強固な安全を提供してくれ、人々を動かすことができる。私たちにとって、平和とは理念ではなく現実の力なのだ」 「私たちにとっての国際協力は、一方的に何かをしてあげることではなく、人々とともに生きることであり、それを通して人間と自らを問うものである」 「アフガニスタン人は良くも悪くも宗教的な人たち。ひとつの文化です。われわれは日本語をしゃべり、味噌汁を飲み、下駄で歩く。宗教はそれに近いものがある」 「アフガンの人たちは、親日感情がとても強い。我々は宗教というものを、大切にしてきました」 「戦争をしている暇はない」 

*** 今週の教養講座(三島由紀夫の文章読本⑤)

ブルジョア的嗜好と言われるかもしれませんが、文章の最高の目標を、「格調と気品」に置いています。例えば、正確な文章でなくても、格調と気品のある文章を尊敬します。現代作家の中でも私は自分の頑固な好みに従って、世間の評価とはまったくちがった評価を各々に下しています。

日本語がますます雑多になり、与太者の言葉が紳士の言葉と混じりあうような時代に、気品と格調ある文章を求めるのは時代錯誤かもしれませんが、しかし一言をもって言い難いこの文章上の気品とか格調とかいうことは、闇のなかに目が慣れるにしたがって物がはっきり見えてくるように、かならずや後代の人の眼に見えるものとなるでありましょう。

具体的に言えば、文章の格調と気品とは、あくまで古典的教養から生まれるものであります。古典時代の美の単純と簡素は、いつの時代にも心をうつもので、現代の複雑さを表現した複雑無類の文章ですら、粗雑な現代現象に曲げられていないかぎり、どこかで古典的特質によって現代の現象を克服しているのであります。

文体による現象の克服ということが文章の最後の理想である限り、気品と格調はやはり文章の最後の理想となるでありましょう。