1月5~9日(教養講座:国際法の基礎)

~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年1月5日号(転送禁止)~~~
◎謹賀新年 このメルマガは長谷川塾の受講生のための教材です。知識や教養を磨き、自分の意見を持つきっかけとして下さい。今年もご愛読をよろしくお願いいたします。
***デイ・ウォッチ(26~4日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎トランプ大統領 ベネズエのマドゥーロ大統領拘束 | NHKニュース →ベネズエラ大統領を拘束して米国に連行する衝撃の政権転覆が起きた。中南米は「米国の裏庭」といわれ、CIAなどが介入を繰り返してきたが、これほど乱暴な前例はあるだろうか。麻薬密輸を理由にしているが、新政府を「運営する」意向で、狙いは石油利権とみられる。これではロシアのウクライナ侵攻や中国による台湾の武力統一を非難できない。大国による力の支配が進むのか。ベネズエラ国民が歓迎して「結果オーライ」になるのか。いずれも無法地帯だ。トランプ大統領のノーベル平和賞は完全になくなった。
◎アメリカのマドゥーロ大統領拘束 各国が反応 | NHKニュース 日本政府は対応苦慮 「法の支配」と米国、板挟み:時事ドットコム →「国際法違反」の声が各国から一斉に出た。西側諸国では米寄りに修正する動きもある。高市首相はXに投稿したが、邦人保護やベネズエラの民主主義を強調し、事態の是非に関する論評は避けている。中国と対立してトランプ大統領を頼っているので、正論で批判できない。これが今の日本の現状だ。
◎旧統一教会 衆院選“自民290人応援”教団に報告 韓国メディア | NHKニュース →韓国で旧統一教会と自民党の深い関係が明らかになっている。韓総裁への内部報告書を現地のハンギョレ新聞が報道。衆院選では自民290人を応援し、参院選前には安倍元首相が選挙支援について「非常に喜んで安心しているようだった」という。高市首相の名前も登場している。野党議員らの名前もあり、総裁向けに成果を誇張した可能性もあるが、韓国では総裁への捜査が続いている。反日的な集金マシンと自民党を中心とした日本政界との癒着はさらに明らかになりそうだ。
◎中国軍 台湾周辺での大規模軍事演習 終了を発表 | NHKニュース →ハードパワーで威圧するのはソフトパワーに自信がないからだろう。中国が大国になったとしても、今のようでは尊敬されない。米国はあてにならないので、日本やEU、オーストラリアなど西側各国は東南アジア各国と連携して大人の対応を求めたい。インドやブラジルなどグローバルサウス各国を巻き込む戦略も必要だ。
◎東証 終値は5万円台 年末として最高水準 記録的な株高の年に | NHKニュース →2025年末の株価は5万339円。1年間の上げ幅は1万444円、26%で、過去最大の記録的な伸びとなった。一時はトランプ関税で落ち込んだが、AIブームや高市トレードで巻き返した。2026年はAIブームの行方、米国中間選挙、世界の政治・経済、高市政権の動向などが焦点になりそうだ。
◎共産党 不破哲三氏死去“党の理論的支柱” 委員長や議長務める | NHKニュース →宮本顕治に次ぐ戦後共産党の顔だった。40歳で書記局長に抜擢され、理論的主柱となった。天皇制や自衛隊を事実上容認し、現実路線を進めたが、政権には遠かった。無謬性にこだわり、異論を認めない党体質の転換が問われている。誰もがなじむ「良い加減」にならないと。
◎箱根駅伝 青山学院大学が総合優勝 3年連続9回目 大会新記録 | NHKニュース →箱根駅伝は青山学院が優勝した。往路は出遅れたが、山登りで驚異の逆転。復路も好調で、総合成績では過去の記録を3分45秒も更新した。出雲、選手権、箱根が3大大会だが、青学は箱根で強く12年間で9回も優勝している。箱根の山の登り・下りに照準を合わせた長期戦略がある。2位の国學院も新記録、3位は順天堂、4位は早稲田、5位は中央だった。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎根津嘉一郎(東武鉄道創設者、武蔵高校創設者、衆院議員。1940年1月4日死去、79歳)
「世の中で、独立独歩ほど尊いものはない」 「人の世話をするとも、人の世話にならないという心がけが大事である」 「生涯、他人に使われたことがない(根津は生涯一匹狼を通し、人の下僚になり使われた経験を持たなかった)」 「の中の変化に応ずることも大切だが、変化の中で不変のものもあるということだ」 「会社再生の秘訣は、どこに不正と不合理があるか、その病原を退治することが一番近道である」 「不平不満は出世の行きづまり」 「売られた喧嘩は買う」 「社会から得た利益は、社会に還元する義務がある(との信念のもと、黙々とボロ会社の再建事業に取り組み、次々と成功させた)」 「内に消極、外に積極(との信念で、徹底的な経費削減と経営拡大を行った)」
*** 今週の教養講座(国際法の基礎①)
米国のトランプ政権が、ベネズエラの首都を攻撃しマドゥーロ大統領夫妻を米国に移送した。国連や各国から「国際法違反」の声が上がっているが、そもそも国際法とは何だろうか。国際法は立場の弱い国や個人を守る狙いがある。敗戦を経て平和国家を標榜する日本にとっても意義は大きい。その基礎知識を解説する。
第1回 そもそも国際法は何か――世界にルールはあるのか 最近では国際紛争があった時、「国際法違反だ」と国連で非難されても、戦争は続いている。国際社会が強く批判しても、当事国の行動は止まらない。それならば、国際法とは何なのか。本当に世界にルールは存在するのか。
結論から言えば、国際法は世界を強制的に支配する法律ではない。国会も警察もない国際社会において、国内法と同じ仕組みを期待すること自体が無理である。国際法は、国家が主権を持ったまま合意する「約束の体系」であり、その実効性は限定的である。たとえば、ロシアによるウクライナ侵攻に対し、国連総会は圧倒的多数で侵攻を非難する決議を採択した。しかし、国連には戦争を即座に止める強制力はない。安全保障理事会では常任理事国であるロシアが拒否権を持つため、軍事的措置は決定できなかった。この現実を見ると、国際法は無力に見える。
しかし同時に、国際法がまったく意味を持たなかったわけではない。侵攻が「侵略行為」と位置づけられたことで、経済制裁や外交的孤立が正当化され、多くの国が共通の基準で行動する根拠となった。国際法は、戦争を止める力は弱くとも、国際社会がどう動くかを方向づける役割を果たしている。国際法の主体は国家である。国家同士が条約を結び、国連や世界貿易機関(WTO)、国際海事機関(IMO)といった国際機関を通じてルールを運用している。貿易紛争がWTOで争われ、航空機の安全基準が国際的に統一されているのは、国際法が日常的に機能している例である。私たちが意識せずに国境を越えた取引や移動ができるのは、この仕組みのおかげである。
一方で、戦争や紛争の場面では、国際法の限界が露わになる。イスラエルとガザをめぐる武力衝突では、民間人被害をめぐって国際人道法違反が指摘されているが、即座に行動を止めさせる手段は乏しい。それでも各国は「自衛」「合法性」「国際法上の正当性」を繰り返し主張する。この事実こそ、国際法が前提として存在している証拠である。
国際法は理想論ではない。現実の力関係の中で、国家が行動を正当化し、評価され、コストを負うための共通言語である。国際法を知らなければ、国際ニュースは感情的な対立の連続に見える。しかし国際法を知ることで、なぜ国連が動けないのか、なぜ制裁が重視されるのか、その構造が見えてくる。国際法は万能ではない。しかし、現実の国際社会を理解するための基礎である。今週の教養講座では、その現実的な役割を具体例とともに考えていく。
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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年1月6日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(5日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎ベネズエラ暫定大統領、米国に協力意向 「戦争ではなく平和と対話」 : 読売新聞 →ベネズエラの暫定大統領が米国に協力する意向を示した。当初は抵抗していたが、「トランプ大統領、私たちは戦争ではなく、平和と対話に値する」と呼びかけた。米側もマドゥーロ大統領派の影響力を重視したようだ。当面の大混乱は避けられそうだが、最重要の国民生活はどうなるか。米国で裁判が始まったが、大統領は起訴内容をすべて否認した→ ベネズエラ マドゥーロ大統領 米連邦地裁で起訴内容すべて否認 | NHKニュース
◎中部電力 浜岡原発 地震想定でデータ過小評価の疑い | NHKニュース 中部電力社長、原子力部門「解体的な再構築」 – 日本経済新聞 →浜岡原発の工事発注の不祥事で副社長らが退任した中部電力。今度は地震データの過小評価が明らかになった。原発取材を長くしてきたが、原発の是非以前に、電力会社の言行不一致の体質が問題だと感じてきた。中部電力社内で権力闘争が起きているようだ。規制委は審査の中断を決めた。浜岡原発の再稼働は絶望的だろう。
◎中国 習近平国家主席と韓国 イ・ジェミョン大統領が会談 | NHKニュース →中国と韓国の首脳会談が開かれた。中国は「中国と韓国は大きな犠牲を払って、日本の軍国主義に勝利した」と連携を呼びかけた。足を踏んだ側は忘れがちだが、踏まれた方は覚えている。戦後処理は一筋縄では解決しない。日本人は過去の歴史を忘れないことが重要だ。
◎株価 一時1600円以上値上がり 5万2000円台を回復 | NHKニュース 円相場 値下がり 米経済は底堅いとの見方広がる | NHKニュース 長期金利 2.125%まで上昇 約27年ぶりの高水準に | NHKニュース →年明けの金融市場は、株高、円安、債券安(金利高)で始まった。株価はベネズエラ情勢の影響をほとんど受けず、力強かった。円安・金利高は今年の大きな流れになりそうで、影響に関心が集まる。
◎WBC、国内は録画放送の可能性 Netflix独占で NPB・榊原氏 | 毎日新聞 →地上波では見られない今年3月のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)。Netflixの独占中継が決まっているが、プロ野球コミッショナーは地上波で録画放送を検討していることを明らかにした。録画放送では盛り上がらないだろう。ファン重視の妙案はないのだろうか。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎アルベール・カミュ(仏の小説家。1960年1月4日死去、46歳)
「われ反抗す、ゆえにわれら在り」 「勇気に欠ける者は、常にそれを正当化するための理屈を見出す」 「人間が唯一偉大である理由は、自分を越えるものと闘うからだ」 「愛されないということは不運である。愛さないということは不幸である」 「人間は、理由もなしに生きていくことはできない」 「涙が出そうになるくらいに、生きろ」 「幸せが何から成っているのか探し続けている人は、決して幸せになれない。人生の意味を見出そうとしている人は、決して生きているとはいえない」 「幸せになるためには、他人に関与しすぎてはいけない」 「自由とは、より良くなるための機会のことだ」 「生きることへの絶望なしに、生きることへの愛はない」 「未来に対する真の知性に優れた人とは、自分自身を監視できる人だ」 「最後の審判を待っていてはいけない。それは毎日くだされている」 「幸福とは、それ自体が長い忍耐である」
*** 今週の教養講座(国際法の基礎②)
第2回 国家はなぜ約束を守るのか――主権と国際法の現実 国際法を理解するうえで欠かせないのが「主権」という概念である。主権とは、国家が自国の領域と国民に対して最終的な決定権を持つという原則であり、国際秩序の出発点である。国際法は、この主権を前提に成立している。一見すると、主権国家は誰にも縛られない存在のように思える。しかし現実には、ほぼすべての国が無数の条約に参加し、国際ルールに従って行動している。なぜ国家は、自らの自由を制限するような約束を結ぶのか。
その理由は明快である。主権を守るためにこそ、国際法が必要だからである。たとえば国境、領海、領空のルールがなければ、隣国との衝突は日常化する。国連海洋法条約が排他的経済水域(EEZ)を定めたことで、各国は一定の予見可能性のもとで資源開発や安全保障を行えるようになった。日本周辺の海域をめぐる問題も、この枠組みなしには議論できない。条約とは国家同士の契約である。契約を破れば、法的制裁だけでなく、政治的・経済的な不利益が生じる。世界貿易機関(WTO)では、ルール違反があれば紛争解決手続きが行われ、是正が求められる。完全ではないにせよ、「守らなければ損をする」仕組みが作られている。
主権と国際法の関係が最も緊張するのが、内政不干渉の原則である。原則として、他国はその国の内政に介入できない。しかし、深刻な人権侵害や内戦が起きた場合、国連は制裁や平和維持活動(PKO)を通じて関与することがある。これは主権を否定する行為ではなく、主権の行使には国際的な責任が伴うという考え方に基づいている。実際、国連PKOは紛争後の停戦監視や選挙支援などを行い、国家の再建を支えてきた。完全な成功とは言えなくとも、国際法と国際機関が現実に機能している例である。
国家は自由に振る舞っているようでいて、国際法の枠内で常に計算している。どこまでなら許容され、どこからが批判の対象になるのか。その線引きを意識して行動すること自体が、国際法の影響力を示している。主権と国際法は対立する概念ではない。主権国家が生き残るために選び取った現実的なルールが国際法なのである。
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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年1月7日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(6日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎ヴェネズエラで暫定大統領が宣誓就任、マドゥロ氏は米連邦地裁で無罪主張 – BBCニュース →ベネズエラ問題のような国際情勢は、海外メディアでも確認したい。日本語版もあるので便利だ。日本メディアとは違う視点も得られる。BBCはマドゥロ大統領の裁判の模様を次のように細かく伝えている。「マドゥロ氏は5日、足かせの音をガチャガチャと響かせながら法廷に入り、報道陣や市民が詰めかけた傍聴席に向かって、自分は『誘拐された』のだと主張した」。
◎東京株、史上最高値を更新 米株上昇を好感:時事ドットコム →6日の東京株終値は、前日比685円高の5万2518円08銭と続伸した。昨年10月31日の史上最高値(5万2411円)を約2カ月ぶりに上回った。米国株はベネズエラ情勢を石油インフラの修復と好感し、その流れを引き継いだ。AIブーム、好調な企業業績、カネ余りもあって、しばらくは活況が続きそうだ。
◎中国、軍民両用品の対日輸出禁止 経済圧力強める:時事ドットコム →中国が新たな対日制裁を決めた。軍民両用品が対象で、自衛隊や軍事関連機器を製造する企業への半導体やレアアースの輸出などが含まれる可能性がある。当面の影響は大きくないようだが、高市首相が台湾有事発言を撤回しない限り、新たな制裁が登場するだろう。
◎自民・鈴木幹事長「国民民主も連立に」 政権安定へ呼び掛け:時事ドットコム 国民民主の連立入り容認せず 連合会長「政権に対峙を」:時事ドットコム →国民民主党をめぐる綱引きが今年の焦点になっている。玉木代表は与党志向で、鈴木自民党幹事長も与党入りを呼びかけた。支持母体の連合会長は容認しない姿勢を示した。連合が本気で反対するなら、国民と縁を切るのが選択肢だ。
◎鳥取、島根で震度5強 5弱も続発、8人けが―気象庁「1週間注意」:時事ドットコム →鳥取・島根で震度5程度の地震が続いて起き、8人がけがをした。長周期地震動も最大の「階級4」を観測した。高層ビルの上層階や橋などの巨大建造物が大きくゆっくりと揺れ、被害が生じる恐れがある。1週間は注意が必要という。
◎「最大のリスクは“米の政治革命”」地政学的な不確実性に警鐘 | NHKニュース →米国の調査会社・ユーラシアグループが、毎年恒例の世界10大リスクを発表した。1位はアメリカの政治改革、3位は「ドンロー主義」で、アメリカ関係が4つも入っている。かつての「世界の警察官」が不安定の震源になっている。全容(日本語)はこちら→ Top_Risks_2026_jpn.pdf
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎良寛(江戸後期の僧侶。1831年1月6日死去、72歳)
「花、無心にして蝶を招き、蝶、無心にして花を訪れる」 「地獄へ行こうと、極楽へ行こうと、行ったところが丁度良い。死ぬ月日さえも、丁度良い」 「自惚れることも、卑下することもない。上もなければ下もない」 「言葉はよく吟味し、しゃべりすぎてはいけない」 「何ごとにも怒らず、つらいことも我慢すること」 「他人がいる前で人を叱ってはいけない」 「心の中で怒りながら人に理屈を説いてはいけない」 「あれこれと人に講釈するのはやめなさい」 「挨拶は適当にしてはいけない」 「人の話の腰を折ってはいけない」 「その人が気にしていることを言ってはならない」 「大して重要でもないことを、大事のように論じてはいけない」 「自分が悪いのに他人に責任を転嫁して責めてはならない」 「親切そうなふりをしてはいけない」 「相手に合わないことは言わないほうがいい」 「我が生は、いずこより来たる、去って何処にか行く」
*** 今週の教養講座(国際法の基礎③)
第3回 戦争は違法なのか――武力行使と国際法の現場 戦争のニュースに接するたび、「国際法はどこまで機能しているのか」という疑問が生じる。ミサイルが撃ち込まれ、市民が犠牲になる現実を前に、国際法の存在はあまりにも無力に見える。しかし、現代の戦争は、国際法を無視して行われているわけではない。むしろ各国は、国際法を意識しながら戦っている。
現代の国際法では、国家による武力行使は原則として禁止されている。国連憲章は、戦争を国家の政策手段として用いることを否定した。その例外として認められているのが自衛権である。ロシアも、イスラエルも、アメリカも、武力行使の際には必ず「自衛」を理由に挙げる。これは国際法が前提として共有されているからにほかならない。
しかし自衛権の解釈は常に争われる。ウクライナ侵攻をめぐってロシアは、自国の安全確保や特定地域の防衛を主張したが、多くの国はこれを認めなかった。国連総会は侵略行為として非難決議を採択し、国際社会の大勢が法的評価を共有した。この評価があったからこそ、広範な経済制裁と外交的圧力が正当化された。
国連安全保障理事会は、本来、武力行使を管理する中核的な機関である。しかし常任理事国が当事者となる紛争では、拒否権によって決定が封じられる。シリア内戦やガザをめぐる情勢では、安保理の機能不全が繰り返し指摘されてきた。ここに、国際法と現実政治の深い溝がある。
一方、戦争の「やり方」については、国際法が比較的強く作用している。国際人道法は、民間人の保護や捕虜の扱いについて細かなルールを定めている。赤十字国際委員会(ICRC)は、紛争地域でこれらのルールが守られているかを監視し、各国に是正を求めている。違反が疑われる場合、将来的に戦争犯罪として問われる可能性も生じる。
戦争は止められなくとも、その行為が記録され、評価され、責任が問われる可能性が残される。この構造こそが、国際法の現場での役割である。武力行使をめぐる国際法を知ることは、戦争を正当化するためではなく、戦争がいかに制限され、管理されようとしているかを理解するための教養なのである。
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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年1月8日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(7日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎中国 日本から輸入の半導体関連物質 ダンピングの疑いで調査へ | NHKニュース →中国の対日制裁が拡大している。政治は結果責任だが、高市失言の代償は大きすぎる。この欄では発言1週間後に「勇み足発言はさっさと撤回するのが国益。勇ましい対応をするほど悪影響が広がる」とコメントしたが、民間への悪影響はもはや計り知れない。メンツでメシが食べられるのは税金で生活する政治家や官僚くらい。民間の利害当事者は声を上げた方がいい。自民党関係者からやっと修正を求める声が出始めた →台湾有事発言「間違い直して」 河野元議長、高市首相に対応求める:時事ドットコム
◎原子力規制委 浜岡原発の審査を当面停止 立ち入り検査の方針 | NHKニュース →中部電力の地震データ不正に原子力規制委員会が激しく怒っている。「暴挙。安全への挑戦」「ねつ造・改ざん」と指弾し、審査を白紙にする。浜岡原発は、2011年の稼働停止以降も常時3000人前後の人員が張り付き、コストは管内の電力料金に上乗せされている。早期の再稼働は絶望的で、経営的には廃炉が妥当だ。
◎維新、国保逃れで処分へ 地方議員4人、法人から低額報酬:時事ドットコム →維新の地方議員4人が、一般社団法人から低額な役員報酬を受け取り、意図的に国民健康保険料の支払いを逃れていたことがわかった。「身を切る改革」「社会保険料改革」を標ぼうする維新だが、建前と本音の落差が大きすぎる。
◎前福井知事のセクハラ認定 職員に性的メッセージ1000件―身体接触も、刑法抵触の可能性・調査報告書:時事ドットコム →セクハラで辞職した福井県の杉本前知事が、総務部長だった2007年以降、1000件のセクハラメールを送り、太ももを触ることなども確認された。県庁内でチェック機能が働かず、職員は20年も我慢していたことになる。軽はずみではなく、精神が病んでいたのではないか。
◎SNS投稿 高校生殴られる動画 “いじめ視野に調査” 栃木県教委 | NHKニュース →いじめは各地で起きているが、殴られる様子を動画で見ると、衝撃的だ。栃木県教委はいじめを視野に調査するが、学校には100件以上の苦情電話があり、暴行した生徒の氏名や住所とする情報がSNSで拡散している。どちらも許しがたい社会のリンチ・病理現象だ。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎フランソワ・ミッテラン(仏の第21代大統領。1996年1月8日死去、79歳)
「私はレジスタンス(戦時中の反ナチス地下抵抗運動)で政治生活を開始した。私が初めて責任ある職務を得たのは、そこだった」 「我々の目の前を通り過ぎるものすべてが、我々が平和で調和のとれた世界に住んでいないことを証明している」 「共産主義は悲惨さから生まれてくる。西側が悲惨さに東側以上の理解を示さなければ、人々は武器を手に取り、向こう側、つまりソビエト連邦に目を向けるだろう」 「問題は、東側がミサイルを生産し、西側が平和主義者を生み出していることだ」 「フランスは、資本主義経済が採り入れることができるすべての社会主義を導入した」 「フランスには、壮大さをもつ国としての使命、君主主義の伝統、そして国民の団結への情熱、ボナパルティズム(国民の支持で選ばれた指導者を皇帝に据える考え方)の伝統が存在する」 「人は本に囲まれていないと、現実社会との接触を失ってしまう」 「(1994年の人生最後の演説で)私は霊魂の存在を信じています。私が国民の皆さんから離れることはないでしょう」
*** 今週の教養講座(国際法の基礎④)
第4回 人権は誰が守るのか――国際機関と現場の現実 人権を守るという理念は美しい。しかし現実の国際社会では、「誰が、どこまで」人権を守れるのかが常に問われている。国際法は、国家の内政に深く踏み込めないという制約を抱えながらも、人権を国際的な課題として扱う枠組みを築いてきた。
第二次世界大戦後、ホロコーストへの反省から世界人権宣言が採択され、人権は国境を越える価値として位置づけられた。各国は人権条約に参加し、国連人権理事会などの場で自国の状況について説明責任を負うようになった。形式的に見えるこの手続きも、国家が国際的評価を無視できなくなったという点で意味を持つ。現実の人権問題では、国連の動きがしばしば注目される。たとえばミャンマーでは、クーデター後の弾圧を受け、国連総会や人権理事会が強い非難を行った。しかし、安保理では対応が割れ、実効的な介入は難航した。人権を守る国際法と、主権を重視する国際政治の衝突がここにある。
一方で、個人の責任を問う仕組みも存在する。国際刑事裁判所(ICC)は、ジェノサイドや戦争犯罪などの重大犯罪について、国家元首であっても訴追の対象とする。ウクライナ情勢では、ICCが逮捕状を出すという異例の対応を取った。実際に身柄を拘束できるかは別として、「責任が問われ得る」という事実は、指導者の行動に影響を与える。また、人権の現場では国際機関だけでなく、NGOや報道機関の役割も大きい。国際人権団体の調査報告やメディアの映像は、国際世論を動かし、各国政府の対応を促す材料となる。国際法は、こうした多様な主体の活動を通じて補完されている。
人権を守る国際法は、即効性のある武器ではない。しかし、何が許されず、何が問題とされるのかを明確にし、記録を残し、責任を追及する土台を作っている。国家の内側に光を当てるこの仕組みは、現実に即した国際法の重要な役割である。
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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年1月9日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(8日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎トランプ大統領“66の国際機関・条約などから脱退や離脱指示” | NHKニュース →米国は最近までハード・ソフト両面で世界秩序を維持する国だったが、今や最大の撹乱要因になっている。今回脱退を表明した国際組織・条約には、国連気候変動枠組み条約、国連人口基金、国連大学などが含まれる。音を立てて崩れている世界システムは中国が担うのだろうか。ロシアタンカーだ捕、グリーンランド領有など、やりたい放題で世界は大揺れだ →米軍 ベネズエラ石油取り引き関連でロシア船籍タンカーを拿捕 | NHKニュース グリーンランドめぐり 米国務長官がデンマーク側と来週会談へ | NHKニュース
◎米 移民税関捜査局職員が発砲 女性が死亡 事件受け抗議活動も | NHKニュース →米国ミネソタ州で、移民当局の職員による発砲で37歳の女性が死亡した。トランプ政権は正当防衛を主張しているが、州知事は当局を強く批判している。現場近くでは6年前、黒人男性が白人の警察官に首を押さえつけられて死亡、全米に抗議活動が広がった。今回も同様の事態になる可能性もある。
◎伊藤忠商事元社長の丹羽宇一郎氏が死去 民間初の駐中国大使 – 日本経済新聞 →伊藤忠商事社長で、歯に衣着せぬ発言で知られた丹羽宇一郎氏(86)が亡くなった。4000億円の不良債権を一気に処理してV字回復を果たし注目を集めた。民主党政権だった2010年、民間出身で初めての中国大使になった。今の日中関係をどう見ていただろうか。
◎ミニストップ、60億円の赤字に 今期予想、消費期限偽装が打撃:時事ドットコム →昨年8月に消費期限偽装が明らかになったミニストップが、今年2月期決算で60億円の赤字になると発表した。再発防止のための費用がかさんだ。惣菜販売を再開しているが、2月でも4割にとどまり、影響は大きい。当初は7000万円の黒字決算を予想していた。
◎大分 中学校での暴行動画か SNSに投稿 市教委が真偽含め調査へ | NHKニュース →いじめ動画が、栃木県に続いて大分県でも投稿された。場所は大分市の中学校で、頭や背中を複数回蹴るなど約1分間の動画が「X」に流れた。市教委は調査をする。一種の流行になりそうだが、いじめに対してどんな影響・効果を与えるだろうか。SNS時代の新しいテーマだ。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎王陽明(中国明代の儒学者。1529年1月9日死去、56歳)
「実行の中にのみ学問がある。行動しなければ、学問ではない」 「他人を論難しようと思った時は、一つの大きな私的感情だとみなして克服しなさい」 「君子は自身の考えを、行動をもって示すが、小人はただ口で言うだけに過ぎない」 「知識と行動を二つに分けることはできない。まず知ることが大事で、知って初めて行うことができるという考えは、間違いである。知と行はもともと一つのものだからだ」 「知るは難く、行うは易し」 「敵に勝つのは易しいが、己に勝つのは難しい」 「学問は自分の心の中に刻まれるのが第一義である。もし自分の心に照らし合せて、誤りだと思ったら、たとえ孔子の言葉であろうとも、それを正しいとしてはいけない」 「古今の聖賢のあらゆる議論の端々に至るまですべて、思いに邪なし、の一言で要約できる」 「人生最大の病患は傲慢の一事に尽きる」 「反省は病を治す薬だが、大事なのは過ちを改めるということだ」
*** 今週の教養講座(国際法の基礎⑤)
第5回 国際法と日本――平和国家はどう生きるべきか 国際法が万能でないことは、これまで見てきたとおりである。それでも日本にとって国際法は、単なる教養や理論ではない。戦後日本は、「平和国家」を国是として国際社会に復帰してきた。その立場を支えてきたのが、まさに国際法だった。
日本国憲法は、戦争放棄と武力不行使を掲げている。国内法であると同時に、日本が国際社会に示してきた強いメッセージでもある。軍事力で影響力を行使しない代わりに、ルールと協調を重視する。この姿勢は、国連中心主義や国際協調外交として具体化されてきた。
現実には、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。ウクライナ侵攻や中東、南米情勢を見ても、力による現状変更のリスクは他人事ではない。だからこそ日本は、感情的な軍事論や二項対立に流されるのではなく、国際法の枠組みをどう使うかを冷静に考える必要がある。たとえば、経済制裁や国際世論の形成は、日本が比較的得意とする分野である。日本は軍事大国ではないが、経済力と外交的信頼を背景に、国際ルールを守る側として発言力を持ってきた。国際法違反に対して一貫した姿勢を示すことは、日本自身の安全にもつながる。
日本は国際機関への人的・財政的貢献を通じて、現場を支える役割も担ってきた。国連PKOへの参加、人道支援、法整備支援などは、武力に頼らない形で国際秩序を下支えする行動である。平和国家とは、何もしない国ではなく、ルールが機能する場を支え続ける国である。重要なのは、国際法を「都合のよい時だけ使う」姿勢を取らないことである。自国に不利な場合であっても、ルールを尊重する姿勢を貫くことが、長期的には信頼と影響力を生む。これは短期的な損得を超えた、戦後日本が積み上げてきた知恵である。
国際法は日本を守ってくれる魔法ではない。しかし、日本が平和国家として世界と向き合うための現実的な足場である。国際法を理解し、使い続けること。それが、不確実な時代における日本の生き方なのである。
