2026年7月27~31日(教養講座:半藤一利の『昭和史』読み解き)
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***デイ・ウォッチ(24~26日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎「副首都」構想関連法が成立 自民・維新・みらいなど賛成 | NHKニュース 食料品の消費税減税 高市首相が判断するとの見方強まる | NHKニュース →副首都法案が24日深夜に可決され、国会は閉会した。高市首相は、国民に関心の高い物価高対策より、国旗や皇室典範、維新法案を重視し、政治的資産をかなり食いつぶした。次は「悲願」の消費税減税が焦点で、首相判断の可能性が強まっている。減税は2年後の増税でもあり、賢明かどうか。日経新聞の支持率も10ポイント下落している→ 高市内閣支持10ポイント下落58%、無党派で不支持51% 日経世論調査 – 日本経済新聞
◎自治体、「副首都」へ動き加速 大阪、愛知、福岡、北海道―中身あいまい、戸惑いも:時事ドットコム →副首都法案が可決され、大阪だけでなく、愛知、福岡、北海道も関心を示している。「大阪ありき」は明白なので、「大阪抜き」はありえないはず。どこを選ぶかは政府の判断になるが、その過程で再び構想への非難が高まりそうだ。吉村府知事は来春の知事選不出馬の可能性に言及した。どうなるのだろうか→大阪府の吉村知事、不出馬に言及 都構想の途上、維新で異論噴出:時事ドットコム
◎曲げぬ持論、弁護士に「反省」も 植松死刑囚「死刑には値しない」―相模原市の障害者施設殺傷:時事ドットコム →45人が殺傷された津久井やまゆり園事件から10年。犯人の植松死刑囚は弁護士を通じて手紙を公開。重度障害者を「生きている自覚が全くない存在」と主張し、誰もが事故や病気で障害を負う可能性があるという指摘に対しても「どうして重症患者になってまで生き延びようとするのか」としている。何とも不可解。
◎「飛鳥・藤原の宮都」世界文化遺産に登録決定 国内で27件に | NHKニュース →飛鳥時代の遺跡群が国内27件目の世界遺産に選ばれた。奈良県明日香村を中心に広がるひなびた里山で、石舞台古墳の迫力は圧巻。古い日本が東アジアとの交流を通じて中央集権体制を形成していく時代を感じたい。
◎大相撲名古屋場所 安青錦が優勝 ことし初場所以来3回目 | NHKニュース | 大相撲、愛知県 →安青錦が優勝決定の巴戦を制し、3回目の優勝を飾った。来場所は大関に復帰する。8日目に左足の親指を痛めたが、執念と根性が光った。静岡県出身で初の優勝を目指す熱海富士は、本割で安青錦を破ったが、決定戦で敗れた。これで決定戦は3戦全敗で、「決定戦男」になりつつある。
◎野球日本代表新監督に井口資仁氏 「世界の頂点を」と会見で意気込み | NHKニュース →野球のサムライ・ジャパン監督に井口氏が就任した。2000本安打を達成し、大リーグでも活躍した名選手だが、2018年から5年間のロッテ監督で優勝はなかった。手腕はどうか。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎利根川 進(ノーベル賞受賞の生物学者。2026年7月11日死去、86歳)
「1人前になるには50年はかかる。根を深く張れ」 「科学者の一生の研究時間なんて、ごく限られている。研究テーマなんて、ごまんとある」 「エネルギーを集中させられない原因は、夢が明確になっていないからです」 「自分を本当に納得させることができれば、人を納得させることは簡単である」 「小さいうちから多言語の刺激を入れてあげたほうが、習得は早い」 「日本はムラ社会だから、この人が何をしたかという実績よりも、どこにいるのかで人が評価される。そうすると東大の教授になることがゴールになっちゃう」 「自分がやりたいことが、アメリカに来ないとできなかった。日本で研究をしたくても、分子生物学っていう分野はアメリカでしかやってなかった」 「科学者として、私たちは研究成果がどう応用されるかについて敏感になり、倫理の一線を越えないようにしなければなりません」 「新しい技術の発展には、それが誤用される危険性もついて回ります」
*** 今週の教養講座(半藤一利の『昭和史』読み解き①)
昭和史は今を生きる人の「基本的な教養」と言えます。今週は『昭和史 1926―1945』を書いた半藤一利氏の歴史観を考えます。この本が多くの読者を引きつけるのは、日本がなぜ勝つ見込みの薄い戦争へ進み、なぜ途中で引き返せず、壊滅的な敗北を迎えたのかを、人間と組織の問題として描いているからです。一方、国際情勢や経済状況の記述が少ない限界もあります。『昭和史』を読み解きます。
第1回 組織と人間と目的の弱さ
半藤は自らを「歴史探偵」と呼んだ。史料を読み、当事者に話を聞き、人物の性格や判断を探ることを重視した。文藝春秋の編集者時代から長年取材し、『日本のいちばん長い日』や『ノモンハンの夏』などを書いた。その集大成の1つが、授業のような語り口で昭和をたどる『昭和史』である。
半藤の歴史観の第1の特徴は、戦争への道を1人の独裁者や1つの陰謀によって説明しない点にある。昭和前期の日本には、ナチス・ドイツのヒトラーのように、国家のすべてを1人で動かした人物はいなかった。天皇、首相、閣僚、陸軍、海軍、官僚、政党、財界、新聞、国民が、それぞれ異なる思惑を持って動いていた。ところが、誰も全体を統御できなかった。責任主体の曖昧な組織が、互いに責任を押しつけながら戦争へ流されていったのである。
ここに、半藤史観の重要な逆説がある。日本は、強い指導者がいたから戦争を始めたのではく、政治的な指導力が弱かったために戦争を止められなかったのである。大事件の前には必ず小事件があり、それを適切に処理できなかったことが破局につながると見る。
その典型が、1931(昭和6)年の満州事変である。現地の関東軍が軍事行動を起こし、既成事実を積み重ねていった。政府は不拡大方針を掲げながら、軍の行動を止められなかった。問題は、軍が命令を無視したことだけではなく、独断行動を取った軍人が厳しく処罰されず、結果として領土や権益が拡大したため、行動そのものが成功として扱われたことである。
この前例が、軍内部に危険な学習をもたらした。中央の命令よりも現場の判断を優先し、先に行動して政府を後から追認させる方式が定着したのである。組織は、誤った成功からも壊れていく。満州事変は軍事的には成功したように見えたが、その成功によって、国家の統制を無視する体質が強化された。長い目で見れば、日本にとって大きな失敗の始まりだった。
第2の特徴は、「何のための戦争か」という目的の不明確さを厳しく問う点である。戦争には、政治的な目的が必要である。どのような条件を実現すれば戦争を終えるのか、どこまで進めば勝利とみなすのかを決めなければならない。ところが、日中戦争では、この出口が定められていなかった。
当初、日本の指導部は中国との戦争が短期間で終わると考えていた。しかし中国側は降伏せず、戦線は拡大した。日本軍は主要都市を占領しても戦争を終わらせることができず、さらに奥地へ進んだ。戦場で勝つことと、戦争に勝つことは違う。都市を占領し、敵兵を退却させても、相手の政治的意思を変えられなければ戦争は終わらない。日本は個々の戦闘では勝利しながら、戦争全体の出口を失ったのである。
撤退すれば、これまでの犠牲が無駄になる。さらに兵を送り、新たな犠牲が出ると、その犠牲を正当化するためにまた撤退できなくなる。こうして過去の損失が、将来の損失を拡大させた。すでに費やした資金や時間を惜しむあまり、見込みのない戦いから撤退できなくなる心理である。他の分野でも共通する教訓で、今でも国家も企業も個人も、「ここまでやったのだから」という感情によって判断を誤ることを教えている。
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~~~ 長谷川塾メルマガ 2026年7月28日号(転送禁止)~~~
***デイ・ウォッチ(27日/コメントも参考にしながら自分の考えをまとめましょう)
◎“消費税減税 速やかに法案提出”高市首相会見 公約実現を強調 | NHKニュース →高市首相は27日に記者会見し、注目の消費減税について、「速やかに法案を出す」と述べた。超党派の国民会議ではまとまらず、両論併記の方向だが、首相は公約を重視して減税する構えだ。2月の総選挙では、野党が減税を主張し、自民党は争点隠しの狙いもあって同調したが、今は与野党の主張が逆転したかたち。朝日新聞は「30日にも1%指示へ」と報じている。財源はどうするのだろう→ 食料品の消費税1%、政府・与党方針固める 30日にも高市首相指示 :朝日新聞
◎作家 東野圭吾さん 68歳で死去 大腸がんのため 「容疑者Xの献身」「白夜行」「ガリレオ」シリーズなど | NHKニュース →ミステリーでベストセラーを連発した東野圭吾さんが亡くなった。68歳でまだ若い。大阪府立大工学部からデンソー勤務を経て独立。1985年に江戸川乱歩賞、2006年に直木賞、2023年に菊池寛賞を受賞した。重厚な人間ドラマと鮮やかな謎解きが魅力で、作品は41か国・地域でも翻訳されている。
◎プルデンシャル生命、営業社員「完全歩合」を撤廃 再建策の全容判明 – 日本経済新聞 →営業社員の金銭詐取が表面化しているプルデンシャル生命が、完全歩合制を撤廃する。生活に困窮した社員が不正に走ったことを反省し、月30万円程度の報酬を保証するという。これでまっとうな会社になれるかどうか。収益を得られなければ、存続問題になるだろう。
◎欧州山火事 仏ボルドー市街地から約15キロの所まで火が迫る | NHKニュース →フランスの山火事が6日目になっても収まらず、ワイン産地ボルドーの15キロまで迫っている。すでに22万人が避難している。スペインでも山火事が起き、7.5万人が避難している。世界的に山火事が頻発している。
*** 「今日の名言」(気に入った言葉を探してみましょう)
◎谷崎潤一郎(小説家。1965年7月30日死去、79歳)
「名文とは長く記憶に留まるような深い印象を与えるもの。何度も繰り返して読めば読むほど滋味のでるもの」 「文章のコツ、すなわち人にわからせるように書く秘訣は、文字や言葉で表現できることとできないことの限界を知り、その限界内にとどまることが第一」 「世間はただ、私の作品をさえ見てくれればよいのであります。それが立派なものなら、私という個人に用はないわけであります」 「意地の悪い人間は、その意地悪さを発揮する相手がいないと寂しいに違いない」 「我という 人の心はただひとり 我より外に 知る人はなし」 「美は考えるものではない。一見して直に感ずることのできる極めて簡単な手続きだ」 「恋愛は芸術である。血と肉とをもって作られる最高の芸術である」 「議論を吹っかける場合には、わざと隙間を与えておくほうがいい。そうしないと敵が乗って来ない」「筋の面白さは、言い換えれば、物の組み立て方、構造の面白さ、建築的の美しさである」
*** 今週の教養講座(半藤一利の『昭和史』読み解き②)
第2回 失敗から学ばない組織と国民的熱狂
半藤史観の第3の特徴は、日本の指導者たちが失敗を十分に検証せず、教訓を次の判断に生かさなかったことへの批判である。その象徴がノモンハン事件だ。日本軍はソ連軍との戦闘を通じ、火力、戦車、補給、通信など近代戦の実力差を突きつけられた。本来ならば、その経験を徹底的に分析し、日本軍の装備や作戦思想を改める必要があった。
しかし、組織の責任を明らかにすれば、上層部にも責任が及ぶ。検証は不十分になり、失敗の原因は現場の勇気や精神力の不足へとすり替えられた。技術力や補給力の問題を、精神論によって補おうとしたのである。失敗の原因を正確に認めなければ、同じ失敗を繰り返す。組織が大きくなるほど、責任を取るべき人ほど責任を免れやすい。現場の兵士は命を失うが、誤った作戦を立てた上層部は別の地位に移り、再び意思決定に関わる。
半藤の描く日本軍の問題は、能力の低い人物ばかりがいたことではない。個々には優秀な軍人や官僚が多数いた。それにもかかわらず、組織全体として合理的な決定ができなかった点にある。優秀な人材を集めても、反対意見が言えず、失敗を検証せず、責任を曖昧にする組織では、優秀さは生かされない。組織の方針を巧みに説明し、上司の期待に合わせる能力だけが評価されるようになる。
第4の特徴は、軍部や政治家だけでなく、新聞や国民にも戦争への責任があったと見る点である。昭和史を語る際、国民を軍国主義の被害者としてだけ描くことはできない。満州事変後、軍の行動は多くの国民から支持された。不況に苦しむ社会にとって、満州進出は日本の将来を開く希望のように見えた。新聞も軍の活躍を大きく報じ、国民の熱狂を強めた。
政府が弱腰に見えると、世論は強硬策を求めた。政治家が妥協しようとすれば、「売国的だ」と非難される。新聞も読者の期待に応えようと勇ましい論調を強める。その記事を読んだ国民が、さらに強い政策を要求する。こうして、政府、軍部、新聞、国民の間に、強硬論を拡大する循環が生まれた。
半藤が警戒するのは、社会全体が一つの方向へ走り出し、異論を許さなくなることである。政策への反対が、国家への裏切りとみなされる。慎重な意見が、臆病や弱腰と非難される。複雑な問題が、敵か味方か、愛国か売国かという二者択一に変えられる。国民的熱狂は、指導者から冷静な判断力を奪う。戦争を始める決断よりも、戦争を避ける妥協の方が政治的に難しくなる。
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